まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

ようやくコレット救出~
容量的に地の神殿は次回になりそうです……
今回の話し、あまり進んでないのでとばしても問題ないですよ~

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「なあ。ジーニアス。ケンダマ教えてくれよ」
ここ、みずほの里は静かでいい所ではある、とおもうが。
時間のつぶし方がなかなかすすまない。
「え~?ロイドがケンダマ?まさかロイドもけん玉でたたかうの?」
「いや。そういうわけじゃないけど。なんか楽しそうだから……」
「…別にいいけど。ロイドには無理だよ。きっと」
「なっ。馬鹿にするなよ!ドワーフ仕込みの器用さをみせてやるぜ!」
「ホッ・・ハ…グ…結構難しいんだな……」
「やっぱりね。ロイドには無理だとおもったよ」
「お?何やってんだ?お前ら?」
「けん玉だよ。けっこう難しくてさ」
「どれどれ。ちょっと俺様にかしてみな」
「ホッ。ハッ。ヌ…ヌヌヌ…ちきしょう。こんなハズじゃあ……」
「あ~あ。何やってんのさ。ちょっとあたしにかしてごらん?」
「はっ。フッ。ム…お、おかしいね……」
「なんだよ。みんな口ほどにもないな~」
「な、なんだと!かしてみろ!うりぁゃ!…あ」
「誰!?私の頭にケンダマをなげたのは!」
『にげろー!』

光と闇の協奏曲 ~救出のあとに~

レアバードが着地したのは、一面の草原。
「皆、大丈夫か?」
「俺様はいきてるぜ~?」
「皆、大丈夫そうだね」
ロイドの台詞にそれぞれレアバードからでてきた者達が口ぐちにいってくる。
いまだにプレセアのみは目覚めていないので、エミルがそのままレアバードの中に残しているが。
「プレセアは平気なのかい?」
しいなが心配そうに、レアバードの中に横たえられているプレセアをみていってくる。
「ええ。命に別条はないようだわ。あれだけのものをたちきったのですもの。
  反動も大きかったようね」
しかも逆流していた力をももろにあびていた。
あの力の反動からしてみれば、大けが…もしくは死んでいてもおかしくない、とはおもう。
おそらくプレセアの体がエクスフィアで強化されていなければ間違いなく死んでいたであろう。
とリフィルはおもうがそれは口にはださず、正確ではないにしろ真実のみをしいなにと説明する。
「しかし、あのロディルとかいう不気味な男、何が目的でコレットを誘拐したのだ?」
リーガルがふときになっていたらしく、そんなことをつぶやいているようではあるが。
「魔導砲の制御にクルシスの輝石が必要だとかいってた。
  でも私のはダメなんだって。今はつかいものにならないからって。
  器の最終調整をするにも時間がかかるとか何とかいってた」
「魔導砲?」
コレットの言葉にロイドがどこかできいたような、とおもい思わず首をかしげるが。
「前に、ハイマでエミルが助けたピエトロも魔導砲のことをいっていたわね。
  …というか、コレット、あなた、意識があったの?」
まああれは助けた、というよりは情報を求めるために、といったほうが正しいのかもしれないが。
魔血玉デモンブラッドをハイマにともちこんだ人。
その人間より情報をききだすためにあえてエミルが元にもどしたに他ならない。
あの救いの塔からずっと、コレットは人形のようであった、というのに。
相手がいっていたことをしっている、というのは意識があった、といっているようなもの。
「なんか、わかるのに行動も何もできない、っていうような感じで……」
コレットもどういえばいいのかわからない。
自分の体はたしかにそこにあるのにそれは自分の体でないようなそんな感覚。
意識と体とが離れ離れになっていた、そんな感覚。
コレットがリフィルの質問に何とこたえていいのかいいあぐねているそんな中。
心配そうにプレセアをみていたジーニアスがプレセアがきづいたことにきづいて声をかけてくる。
「プレセアが気づいたよ?」
「私…ここは…?」
リフィルに助けられるようにレアバードの中にいて身を起こしたプレセアは、
視線をさまよわせ、やがてその視線をコレットにあてる。
「コレットさん…無事…でしたか」
コレットの姿をみてほっとした表情をうかべるプレセア。
「うん。プレセアのおかげだよ?」
コレットの声はプレセアは初めてきくが、それでもほっとする。
自分のせいで誘拐された、という自覚があったゆえになおさらに。
コレットの声をきき、おもわすプレセアの顔に笑みが浮かぶ。
そんなプレセアにつづいてコレットもつられて笑顔になっているが。
「プレセアが…笑った」
ジーニアスがそんなプレセアの笑顔をみてそんなことをいい、
「やはり…にている」
リーガルはリーガルでそんなプレセアの顔を違う意味で凝視していたりする。
「さ~て、かわいいプレセアちゃんが笑ったところで。そろそろ次のことを考えようぜ」
しばしそんなリーガルをみていたゼロスであるが、ことさら明るい口調にて、
今後のことの対策をたてるためにとあえてそんなことをいってくる。
「そうだよね。コレットも戻ってきたし。これからどうするの?」
たしかにゼロスのいうとおり。
ジーニアスの素朴な疑問に、
「きまってる!世界を元通りにするんだ!あのユアンのいっていたことが本当だとすれば。
  もともと世界は一つだったんだ。なら、元に戻す方法もあるはずだ!」
雷の神殿のあと、ユアンがいっていたことが真実ならば。
精霊達も精霊の楔のようなことをいっていた。
どちらにしても、ボーダが去り際に世界を救いたいのならば精霊と契約をかわせばよい。
そういっていたこともある。
敵かもしれない彼らのいうことを素直にきく、というのも癪ではあるが、
精霊がそういっていた、という事実もある。
それゆえのロイドの台詞。
「なるほど。とりあえずは二つの世界の精霊と契約するわけだ」
リーガルもあのとき、雷の神殿でウンディーネがかたった台詞をきいている。
レネゲードのいうことを素直に信じる、というわけではないが、
精霊達がそのように話していた、という真実は疑いようのない事実。
それゆえにリーガルもうなづかざるをえない。
「なら、あたしの出番だね。わかったよ。手始めに土の精霊ノームと契約するのはどうだい?
  ここから近いはずだよ?あのノームはかなり人には甘いからね。
  たしかアステルがいうにはお酒とかもっていけばすんなりと話しがすすむとか何とか……
  あと距離的にはたぶん、フラノールも近いけど……」
そんな彼らのことばをきき、しいながいってくる。
「……ノームのやつ、何やってるのさ……」
しいなの言葉をきき、おもわずぼそっとエミルがつぶやく。
まあ気持ちはわからなくはない。
ちなみに、エミルのつぶやきは、彼が本来あつかう原初たる言葉で語られたがゆえに、
この場にいる誰にも通用していない。
そういえば、とおもう。
ソルムからヒトに献上?されたお酒につられ、自分がこうして地上にでてきている、
ということにたいし、口を滑らせそうになっていたがゆえに、ちょこっとしっかりとお灸をすえた、と。
そう報告があったのはつい先日のこと。
「・・・・・・・・・・・・・」
簡単に口をすべらすノームのことである。
自分が共に出向いた場合、あ、ラタトスク様だ~とかいいかねない。
それはもう確信をもっていえる。
ゆえにおもわずこめかみに手をあてるエミルの様子に、
「?エミル?どうかしたの?」
コレットが心配そうにそんなエミルに気づきといかけてくる。
「え?ううん。別に、何でもないよ。それより結局どうするの?」
そんなエミルの問いかけに、
「たしか、ユアンはこうもいっていたわね。精霊オリジンの力でユグドラシルは世界を二つにわけた。と。
  なら、しいながオリジンと契約することにより、世界を元にもどす方法がわかるかもしれないわ」
リフィルが思い出しつつもそんなことをいってくる。
実際はオリジンから預かったとある剣をもちいて、なのだが。
当然、リフィル達はそこまで詳しくはない。
「で、その肝心なオリジンってどこにいるのさ?」
ゼロスの最もな問いかけ。
「それはわからないわ。たしか昔よんだ書物では、ある石板がオリジンとの繋がりを示すとか。
  たしか、ヘイムダールとか……」
リフィルのよんだ書物にかかれていたのはユミルの森という名称ではなく、エルフ達が使用していた原語。
「ヘイムダール?だとすれば、エルフの里。ユミルの森に関係してるのか?」
ゼロスがそんなことをふともらすが。
伊達に神子という立場ではない。
幾度かかの里にゼロスもいったことがある。
「それより、きになったんだけど。ここにくるまで雲の上になんか街みたいなのがあったけどあれ何?」
ジーニアスの問いかけ。
たしかに雲のきれはしにみえた。
雲の上にうかびし大陸のようなものと、街のようなもの。
「まさか…伝説の飛空都市エグザイアかい?」
しいなの台詞。
「エグザイア?」
「伝説だよ。あくまでもね。空をとんでいる浮遊大陸があるってね。そこは理想郷。
  戦いも差別も何もない、選ばれたもののみがすまう伝説の地ってね」
選ばれしもの。
そういわれ、ふとおもいつくのは、ディザイアン達がよくいっていた自分達が選ばれしものだ、というその台詞。
「…一度、里にもどって報告するのはどうかな?それにノイシュのこともきになるし」
『あ』
そういえば、ノイシュは里にあずけているまま。
エミルの言葉に全員が思い出した、とばかりに声をあげ。
結局のところ、一度、みずほの里へともどることに。


「精霊のことなら、詳しいのはアステルに聞くのが一番だとおもうがな。俺様は」
みずほの里。
無事に里にともどってきた一行は、今日のところはここにて休むことにしたらしい。
預けていたノイシュは少し前より何かふさぎこんでいたらしいが、
エミルが傍により、何かをいったとたん、何やら元気を取り戻したようにみえなくもない。
それは、コリンが完全に消滅したのではなく、あらたな理のもとに再生している、ときかされたがゆえ。
「しかし、ノイシュのやつ、異様にエミルにはなついてるんだよなぁ」
それはロイドからしても不思議でたまらない。
なぜかクラトスにもなついていたが、その理由もロイドはわからない。
実際問題、ゼロスやしいなには自分からノイシュは傍にはよっていかない。
そんな会話をしている横では。
…ふにふに。
く~ん?
…ふにふに、ふにふに。
キュ…キュゥ~ン……
にこやかに笑みをうかべつつも、ひたすらにノイシュの手をさわっているプレセアの姿が。
そんなプレセアにきづき、
「む。何をしているのだ?プレセア?」
リーガルがふときづき、といかける。
ノイシュの視線は助けて、とおもいっきりものがたっているが、ロイドはそれに気づいてすらいないらしい。
「…肉球」
「……私もいいかな?」
にこやかに笑みをうかべつつ、ふにふにとさわっているプレセアをみて、
どうやらきになっていたらしい。
リーガルまでもどうやら参加する模様。
「どうぞ」
ふにふに。
ふにふにふにふに。
キュワワワァッン!
さすがに二人して肉球をさらわれまくり、ノイシュが悲鳴をあげる。
「うるさいぞ。ノイシュ。って何やってんだ?お前たち?」
ここにいたりようやくロイドが二人にきづき、声をかけているが。
「あ。いや、肉球を少々」
アゥゥッン…
「おいおい……」
いいつつも無言で肉球をさわっている二人をみておもわずひいているロイドの姿。
「王立研究院かい。たしかに。アステルなら詳しいだろうね」
精霊のことならば右にでるものがいない、というほどにあのアステルは研究を進めている。
「あまり気がすすまないけど…だけど、詳しい情報はたしかに必要だね。
  サイバックにアステルのやつ、もどってればいいけど……」
アステルが所属しているのは、サイバックの王立研究院。
「アステルって、あのエミルのそっくりさん?」
「先生と同じ人種とかいう、あの?」
その台詞をきき、ジーニアスがいい、ロイドがすこしひきつつもそんなことをいってくる。
ゼロスとしいなの台詞をききつつ、二人がそんなことをいっているが。
「王都のメルトキオ精霊研究所にいっている可能性のほうがたかくないか?アステルだと?」
「どっちかにはいるだろうけど。…どうする?アステルに話しをきくか。
  それともとっとと精霊達との契約を優先するか…あんたたちがきめとくれ」
しいなのそんな言葉におもわず顔をみあわせるロイド達。
といってもその視線はほとんどリフィルのほうへとむけられているが。
「そうね。まず王都のほうにいってみましょう。
  もしかしたら、コレットのクルシスの輝石を抑えるための要の紋。
  それの創り方がかかれているものがあるかもしれなくてよ?」
そんなリフィルのいい分に、ふと顔をあげ、
「アルタステがいっていた、永続天使性無機結晶症、という症状なのだが。
  ふと先刻思い出したのだが、勇者ミトスの即席をしめした資料館がたしかサイバックにあったはず。
  そこで何か手がかりをえることはできないのか?」
コレットが今までずっと人形であった理由。
それはさきほどリーガルはきかされた。
神子に犠牲をしいるこの制度のことも。
すべてはクルシスが…ユグドラシルが行っている、ということ、マーテル教そのものも、
ユグドラシルが世界を管理するためにつくられし偽りのものだ、ということも。


「お~い。メシだぞ~って、なんだ、お勉強かよ」
夕刻。
食事の時間だというのになかなかこないロイド達をよびにきているゼロス。
ここ、みすほの里の料理は独特で、自然の素材を分担につかった料理がおおいらしい。
「あ~。俺様のこと無視すんの?そういう態度とっちゃうわけだ?
  いいよいいよ。一人でうまいメシはみ~んなたべちゃうもんね~」
それぞれにあてがわれた部屋にいってみれば、リフィルから渡されたのであろう。
問題集…リフィル作成、のそれを目の前にして机がわりにしている台にむかっている二人の姿。
「いいから、だまって向こういってよ」
そんなゼロスをちらり、とみつつ、そのまま問題をとくことを優先しているジーニアス。
「…おい。がきんちょ」
ふとゼロスがそんなジーニアス達の手元をのぞきこむ。
「がきんちょはやめろってば!」
「三問目、間違ってるぞ?」
ちらり、とみただけの即答。
「うるさいっていってるだろ!だいたいゼロスは……え?あ!……ホントだ」
ゼロスに指摘され、みてみれば、たしかに簡単な間違いをしていることにきづき、おもわず目をまるくする。
「でひゃひゃひゃ。能ある鷹は羽目を外すってね~」
「すげ~。諺まで知ってるぞ。ゼロスのやつ」
「それは、間近ってるから。正確には能ある鷹は爪を隠す、だから」
感心したようにロイドがいい、そんなロイドにすかさずつっこみをしているジーニアス。
「ともかく、こないと後悔するぜ?」
「何でだよ?」
「今日はエミル君がなんかお世話になるんだったら、とかいって料理担当になったのさ~」
台所担当のものすら目をまるくしていたのが記憶にあたらしい。
「「?」」
ゼロスのいいたいことがロイド達にはわからない。
それゆえに互いに首をかしげるしかない。
大概、食事時にはこれまでの旅の最中でもエミルは見回りにいっており、その場にはいなかった。
まあ、料理につかったりする薪などは全てエミルが準備していたので文句の出所もなかったのだが。

「…なあ、コレットちゃんは嫌じゃないのか?」
エミルが創った、という料理は料理?というよりは芸術品。
何でも少ない材料でこれまでの料理をつくりだした、とのことらしい。
どうでもいいが、それぞれの料理に細かな細工がなされており、
厨房担当のものがエミルに弟子にしてほしい、とまでさけんだほどらしいが。
エミル曰く、昔は暇だったので一時料理に凝ったことがある、とのこと。
もっぱらそれらを食べるのはセンチュリオン、もしくは魔物達であったのだが。
かつて、デリス・カーラーンにいたころ、人にまぎれていたときは、
それなりに普通に人にも食べさせたりしたことはあるにはあったが。
この惑星に移動してからこのかた、まずなかったといってよい。
久しぶりに創るから、腕がおちてるかとおもったけどそうでなかったようでよかったよ。
にこやかにいったエミルにおもわずどこの職人だ!?と突っ込みをしたロイドは間違っていないであろう。
絶対に。
「何が?」
「何が…って、その…自分が神子だってことがだよ。
  自分の人生だぜ?自分で好きに生きたいとはおもわないか?」
それは物ごころついてほぼすぐに、神子、という立場になったがゆえの台詞。
望まれて産まれてきたわけでなく。
クルシス…教会の神託により、無理やりに結婚させられた両親。
父は自殺し、母は父の恋人にと殺された。
父は母の妹と恋仲で、神託がなければ二人は結婚間近とまでいわれていたのに。
神託がすべてをくるわせた。
「私、自由にいきてるよ?だって私が犠牲にならない方法を皆が探してくれてるもの」
物心ついたころからいわれていた。
勇者ミトスのように、自分の命がマナとなり、世界を救うのだ、と。
それが神子の役目なのだ、と。
それがクルシスの輝石をもってうまれてきた神子としての使命だ、と。
昔はこわかった。
自分は何のためにいきているのか、と。
だけどロイドとであってその考えがかわった。
彼をたすけられるのならば、自分の命もおしくはない、と。
そんな彼が…仲間が自分が犠牲にならなくていい方法を探してくれている。
たとえそれが意味のないことだとしても、自分がいきた、という証にはなる。
彼らの心にのこることはできる。
だからこそ、コレットとしてはうれしい。
「…でも…もしもその方法がなかったら……」
「…その時は、その時だよ。それに…たとえ私の体は奪われても、心は自由だから。
  だから、私の心が望むまま、世界が幸せになったらいいな」
そう。
あのときのように。
体が自由にならなくても、魂、というのだろうか。
たしかに自分の心は、そこに存在したのだから。
それゆえの台詞。
「すげぇな。コレットちゃんは。俺様にはとてもまねできねえ」
「…ううん。私、口ばっかりなの。本当にそうなったら…きっとだめなんだろうな。
  えへへ。だらしない神子だね」
絆が深くなればなるほどに、そのときはつらくなる。
それでも、とおもう。
誰もが犠牲にならなくてすむ世界ならば、誰もが笑ってくらせるそんな世界。
産まれてきてよかった、そうおもえる世界。
「…いや、本当にすげぇょ。それに比べて…俺は……」
神子、という立場から逃げたい、とばかりおもっていた。
自分の生きている意味はないのだ、と。
それでも、魑魅魍魎ともいえる中に妹を…確実に自分が死ねば妹にその地位はうつる。
神託があるかどうかは別として。
教会側はなくても、妹をあらたな神子、としてしたてあげるであろう。
幼いころより幽閉している妹ならば自分達のいいようになるお飾りになりえる、と。
妹に地位を譲り渡したとしても今の現状では妹の身もあやうい。
だからこそいろいろとやってきた。
今現在、いろいろな場所に情報を流しているのもその一環。
全ては…妹を護るために。
世界、ではない。
ゼロス…彼にとって大切なのは、唯一の肉親でもある妹。
本来ならば、両親にあいされ、産まれてくるはずであった妹。
それが、クルシス、という天界の介入で狂わされ…そして産まれた自分、という存在。
アステルからの報告により、より天界に関してはゼロス自信も疑念をもっていた。
古には、クルシスのクの字も、マーテルのマの字もなかったのだから。
世界をまもりしは、世界樹だ、と。
そして、ロイド達がいっていたあの台詞。
世界を二つにわけたのは、ユグラシドルだ、と。
アステルに同行し、かの隠れ里にまで出向いて確認もとった。
クルシスは…世界を裏切りし存在である、ということを。
今の教会という権力というか信仰をまっこうから否定する、その真実。
もしも世界がかつてのように一つになるならば、教会の権威もすくなくなるであろう。
そのときには…、そうおもう。
生きていることにあきあきしてはいるが、
それでも欲におぼれまくっているものたちに殺されてやるほど大人しくはない。
「なんか暗くなっちゃたね。とりあえずさっさとたべちゃおう?」
「だな。いきなり変なこときいてわるかったな」
「ううん。だってゼロスは私の仲間だもん。私、ずっと一人だったんだ。神子、というだけで」
「…それは、わかるな。俺様も……」
繁栄世界における神子の役割は、血筋をのこすこと、それのみにつきる。
両親のように望まない結婚をいずれはクルシスからおしつけられる。
それが嫌で嫌でたまらなかった。
しいなは知らないが、ゼロスがいくら朝帰りしようとも、最後にまで事におよんだことはない。
自分の血筋を残す、それはゼロスがもっとも嫌悪していること。
ゼロスが女性に人気なのは、朝までじっくりと彼女たちの不安や悩み相談をやさしくうけとめるがゆえ。
…しいなは完全に勘違いしまくっている、のだが。
そんな横では、
「リーガルとプレセアってどういう関係なんだろ?」
かなりきになっているらしく、食事の手をすこしとめ、
ちらり、とリーガルのほうをみてそんなことをいっているジーニアスの姿がみてとれるが。
「さあな。でもリーガルはプレセアのことかなり気にかけているみたいだったけど」
「・・・・プレセアのこと、好きなのかな?」
「まさかぁ。歳の差がありすぎるだろ?」
見た目は大人と子供。
だが、どうやらそうでない、というのはさすがのロイドも気づいている。
村の老婆の台詞、そしてみずほの里のものの台詞。
ゼロス達のいいまわし。
それらを総合してもおそらく、彼女のトキは…
「そ、そうだよね」
ジーニアスはそれに気づいていないらしい。
めずらしい、とロイドはおもう。
いつもは聡明なジーニアスなのに、なぜにそのことに気づいていないのか、と。
ロイドは気づかない。
一目ぼれをしているがゆえに、あえてその事実を無意識のうちになかったことにしている、ということに。
ヒトは、都合のわるいことからは目をそらす傾向がある。
まさにジーニアスの今がその状態。
自分と歳が近い、そう思い込むことにて、自らの恋心を正当化しようとしている。
当人が無自覚だ、としても、それは相手にとってはかなりひどいことをしている、
その事実にいつものジーニアスならばすぐに思い当たるだろうが、今のジーニアスにはそれがない。
恋は盲目、とはよくいったもの。
すべて自分の都合のよいように解釈されてしまう、その心や思考が。
「それはわからねえぞ?」
コレットとの会話にてすこし気分が沈んでいたところに聞こえてきたお子様ズの会話。
ここぞとばかりにその会話にわりこんでゆく。
「ど、どういうことだよ」
ゼロスのその台詞に、ジーニアスがおもいっきりあせる。
「愛に歳の差なんて関係ないだろ?俺のしってる伯爵夫人なんて三十歳も年下の男と結婚したぜ?」
貴族などというものに恋愛結婚、というものはほとんどありえない。
血筋がすべて。
平民…立場が違う、という理由だけで反対される。
妾などならば問題はない、と貴族の身内はいいきるが、しかし愛し合うものたちにとってはそれは苦痛であろう。
そう。
恋人をとられ、母を殺した…実の姉の子供を殺して、と依頼した母の妹のように。
「う…うう。ぷれせあは…渡さないから!」
「というか、プレセアちゃんはお前のものじゃないだろうがったく。お子様だなぁ」
どうみても一目ぼれをしているのがありありとわかるが。
しかし、恋とは厄介だ、とおもう。
いつもはゼロスの目からみても聡明な彼が真実にたどりつけていない、その事実。
それはあるいみで恐怖でもある。
恋というものは、周囲すら…真実すら歪めてしまう、その事実は。
「…そういや、今、プレセアって何歳なんだろ?」
ふとロイドがつぶやく。
時がエクスフィアによって歪められていたとしても、今の年齢をロイドは知らない。
それゆえの素朴な疑問。
「おいおい。ロイド君よ。女の子に年齢をきくのはやぼってものさ
  …特にあの子の場合…それはきついとおもうぜ……」
エクスフィアにてまだ自我がしっかりしていないときならばまだよかったかもしれない。
が、正気を取り戻している今、取り残されてしまった時間を感じているはずである。
まだ自分のように神子、という立場で無理やりに大人になれば自然と成長がとめられてしまう。
そんなものならばまだいいかもしれない…よくもないが。
彼女は違う。
ただ、適合検査に一致した、ただそれだけの理由でえらばれてしまった普通の民。
ゼロスがロイド達と会話をはじめたのをうけ、
席をたち、プレセアのほうにちかづいていき、ちょこん、と横にこしかける。
そして。
「ありがとう。プレセア」
ちなみにしっかりと自分のお茶碗をもって移動しているのがいかにもコレットらしい。
今だされている食事はあるいみ大皿にいくつももってあり、自由に好きなものをとってもいい。
という形の食事のありよう。
ゆえに席をどこにしようとも、食事の継続は可能。
「…何がですか?」
いきなり横にすわれ、しかもお礼をいわれ、意味がわからずプレセアはおもわず首をかしげる。
「私のこと、助けてくれて」
「…だって…私のせいでコレッさんが…浚われてしまったんです。だから……」
助けたといっても自分のせいで彼女は浚われたようなもの。
当時の感覚ではうっすらとした記憶しかないが、それだけはいえる。
「そんなことないよ。悪いのはロディルだよ。プレセアは気にしちゃだめ。ね?」
「……私、コレットさんみたいになりたい……」
そう笑顔でいえる彼女がすごい、とおもう。
リフィル達からきいた、神子としての制度の真実。
女神マーテルの器、という理由だけで死を強制させられるこの世界の制度と仕組み。
「え?」
「…笑って。何もかも許せるひとに…なりたいです」
それなのに、彼女はこうして笑っている。
それがすごい、とおもう。
いつ、マーテルの器、として殺されるかわからない、というのに。
「そういえば。プレセア」
「はい?」
「そのリボン、とってもにあってるね」
「似合ってる…ですか?」
「うん。とってもかわいいよ」
「それは・・・ほめられているのでしょうか?」
「もちろんだよ」
「あ…ありがとう…ございます?」
疑問系になってしまうのはしかがない。
何しろまったく話しに脈絡がないのだから……


「…私は本当に時間から取り残されてしまったんだ…
  私の時間は誰がかえしてくれるの?…戻りたい……」
夜。
寝つかれずに月夜をみあげる。
「時間移動をしたとしても、そこから新たな時間軸、あらたな平行世界が出来上がるだけで、
  今の時間とは行き来できなくなるよ?それでも戻りたいの?」
ふと、背後からいきなり声をかけられおもわずふりむくと、そこにはエミルの姿が。
どうでもいいが、一緒にいる炎のような鳥は何なのだろうか。
そんなことをふとおもうプレセアはおそらく間違ってはいないであろう。
まるで伝承にある伝説のフェニックスのごとくの炎をまといし鳥。
「平行…世界?」
「世界はいくつも、選択によってそれぞれの分岐点となりえるからね。
  たとえば、一本の木からいくつもの枝がわかれ、そこからいくつもの葉が芽吹くように」
基本たる世界の軸はありはすれど、そこから発生する時間軸、というのは多々とある。
「過去にもどったとすれば、過去の自分と融合して、今の自分がいなくなるか。
  もしくはもう一人の自分、として存在するか、その場合、同じマナをもつものどうし。
  共鳴がおこって何かが必ずおこりえるけどね」
それは事実。
世界に同じマナをもつものは二つとして存在しない。
そのようにラタトスクが理をひいている。
「エミルさん?あなたは……」
「どちらにしても、君も愚かなヒトの犠牲者でしかないからね」
それこそ成長速度を速めることも。
本来の姿にもどしゆくことも可能。
しかしそれを当人が望まぬかぎりはぜったいにするつもりもさらさらないが。
「犠牲…たしかにそう、なのかもしれません。でも……」
あのとき、選んだのは自分自身。
ゆえに恨む、というのは筋違いのような気がする。
力を望んだのは…まぎれもなく、自分、なのだから。
「これだけはいえるよ。今の君の状態は。天使化一歩手前。
  …コレットやゼロスと同じようなものだよ。まだ完全に天使化、までにはいってないにしても、ね」
まだ、プレセアは羽をだすことができない。
しかしそれも時間の問題であろう。
彼女が自らに埋め込まれた石を認めたとき、その力は解放される。
エクスフィア、とよばれしものが生成するもののひとつに、とある物質がある。
それがアイオリア。
それは彼ら、エクスフィア、とよばれし存在達の粒子といってもよい。
本来、粒子の元としてエクスフィアとよばれし存在達はラタトスクによって生み出されているのだから。


朝早く。
結局のところ地図としばしにらめっこをし、王都にいくのならば、
先に神殿にいっても問題はない、そういう解釈に落ち着いたがゆえに、目指すはまずは地の神殿。
レアバードに乗り込み、いちろ進路を西へ。
レネゲードから預かったレアバードの機体の数は、五機。
ゆえに、二人ひと組にてレアバードにのり、移動することになってはいる。
ノイシュはロイドやエミル以外ではおびえてどうにもならない、ということもあり、
たいがいロイドとノイシュが同じ機体。
もしくはエミルとともにのったときは、ロイドはリーガルと、となっている。
コレットとしいな、ジーニアスとリフィル、プレセアとエミル、そしてリーガルとゼロス、そんな関係。
ジーニアスだけがエミルとつまり異性と一緒にプレセアが乗ることに反対したが、
なら、どの子か呼べばもんだいないかな?そういうとなぜか顔をひきつらせ、
リフィルからおもいっきりゲンコツをくらっていたりしたのだが。
そもそも、エミルが呼ぶ、といった魔物は洒落にならない、というのが判り始めたらしい。
エミルからしてみればさほど強くない…とおもう魔物達でも、ヒトにとってはそれは脅威。
何しろ伝説や神話の中でかたれるような魔物をほいほいと呼びだすのだから、
ヒトの普通の精神力ではあるいみたまったものではないだろう。
…エミルは当然、無意識なのでまったくもってそのことに気付いてすらいないのだが。
「ちょ~とそこの小島によってかないか?」
ゼロスがふと、眼下にみえる小島をさしてそんなことをいってくる。
「何かあるのかしら?」
リフィルの問いかけに、
「今から神殿にいくにしても、拠点は必要でしょ?リフィル様ぁ。
  そこの小島には温泉つきの宿があるんでね。そこを拠点にすれば攻略も簡単だろうし。
  何よりも地の神殿ってことは地下にもぐるんだろうし」
たしかにゼロスのいうことにも一理ある。
「救いの小屋、みたいなものかしら?」
「マーテル教会付属、導き温泉宿っていう名前だけどね」
そんなリフィルのつぶやきにかわりにしいながこたえる。
「まあ、別に立ち寄るくらいならいいんじゃないのかな?
  それに、たしかに近くに拠点があれば楽だし」
一日で攻略できるような場所ならばいいが、たしかに地下にもぐるとなると埃まみれになりそうな気がひしひしとする。
それゆえのロイドの台詞。
「んじゃ、きまりっしょ」
そのまま、一行は眼下にみえている小島へとレアバードをむけてゆく。

地の神殿の少し上にある小島。
そこは温泉地らしく、マーテル教会付属の宿泊施設と、そして露天風呂があるらしい。
ゼロスに案内され、すすんでゆくことしばし。
やがて建物らしきものがみえてくる。
「ようこそ。導きの小屋へ。!これは神子様ではありませんか!
  教皇から神子様を捕らえるように、と通達がきておりますが……」
建物の近くまでくると、神官服をきこんだ男性がおり、
ゼロスの姿をみてそんなことをいってくる。
「またか。あのおっさんついに部下にまで通達だしはじめたのか?で?」
その台詞におもわずあきれてしまうゼロス。
どういう経緯で捕らえろ、といったものやら。
あの教皇は。
そんなことをもおもうが、まあアレが口先三寸で人を言いくるめる様は身をもってしっている。
そしてまた、教会内部にいるものたちが、そんな教皇の意見を素直にきくものたちばかりではない。
ということも。
だからこそのといかけ。
「私どもは神子様とマーテル様にお仕えする身。そもそもなぜに神子様を捕らえるように、と命令をだすのやら」
理解不能です、とばかりに首をふる。
そもそも神子は絶対的なもの。
天界たるクルシスより神託をうけた正真正銘の神の御子。
そんな神子をどうして捕らえろ、などというのやら。
ぜったいに天罰があたる、とつねづねほとんどの神官たちはおもっているのもまた事実。
「そいつは結構。さすが神の教えを護るものはちがうねぇ。あのひひ爺にきかせてやりたいぜ」
それでも理由がないままに権力の座、すなわち教皇の座から引き下ろすわけにもいかず。
これまでかわりのもの、有力候補がいたとしても、闇から闇へ、気づけば殺されている今現在。
ゆえにいまだにあの教皇はあの地位にと居座っている。
「本日も温泉療法ですか?」
そしてまた、目の前のこの神官らしき人物も教皇に対し、不満をもっているものであるらしく、
さらり、とあるいみ教会の責任者ともいえる教皇の命令をさくっと無視している今現在。
どちらにしても自らが神子をとらえたとしても、教皇は自分が命令したのではない、
かってにやったことだ、と罪をなすりつけてくるのは目に見えてあきらか。
そんな中で教皇のいうことを素直にきくものなどまずはいない。
いるとすれば、闇に堕ちた、ともっぱら噂の教皇騎士団くらいであろう。
とりあえず、捕縛の命令がでている、ということを神子に伝えられただけである程度の収穫といえるだろう。
ゆえにさらり、とその会話をたちきり、ゼロスにとといかけているめのまえの神官。
「いやいや。俺様の友人を案内してるだけよ。あと宿泊は可能か?」
「そうですか。それはよかった。
  実は現在、温泉の一部を工事しておりますので湯をご利用いただくことができないのです。
  また後日、おこしいただければ……、宿泊は可能ですが。何かご入り用ですか?」
「まあな。用事がどれだけかかるか、によるけど。
  おう。たのしみにしてるぜ。いつくらいに工事は完了する予定なんだ?」
「今日が一応最終日となっております。もしかしたら一番湯も夢ではないかもしれませんね」
「おお!それはそれは」
「つまり、どういうことなのさ?」
「よくわからないけど。つまり、用事がすんだあとここにくれば、
  もしかしたら工事がすんだばかりの温泉にはいれるかもしれない、こういうことかしら?」
リフィルの問いかけに。
「そういうこと。さすがリフィル様。よぉし、がんばっていこう!」
「……あんた、のぞく気満々なんじゃあ……」
そんなゼロスをじとめでみいてるしいなだが。
「とりあえず、神殿にいくんでしょ?地の神殿ってこの下にある大陸にあるの?」
知ってはいるが一応といかけているエミル。
幾度もいったことがあるのにこのいいまわし。
当然、エミルがいったことがある、などとはこの場の誰も夢にもおもわない。
「たしか、地の神殿の入口は山々の峰が複雑に入り組んだ麓にあるはずだよ」
しいなが里にて手にいれた地図をみながらそんなことをいってくる。
「まあ、どうしてもわからなかったらそのあたりの魔物にでもきけばいいよ」
さらり、と何でもないようにいいはなつエミル。
「レアバードで近くにまでいけないの?」
「着陸できる場所がたしかあったはずだぜ?」
幾度も地の神殿にでむくにあたり、アステルが着地地点とばかりに何やらやったらしい。
何をやったか、というのは聞くのもこわいのできかなかったゼロスだが。
ともあれ、一応、本日とまるかもしれない、という旨をつたえたのち、
一行は地の神殿、と呼ばれる場所へとむかうことに。


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あとがきもどき:
薫:最近、このパターン?にてエクシリアさんのRクロスが脳内を埋め尽くし中…
  もともと、その世界でカナンの地にて世界樹をつくってた場合と。
  あと、その世界がラタ様がうんだ種のうちの一つから芽吹いた世界で、
  悲鳴をうけて様子をみにきたパターンと…
  ともあれ、この話しを完全に全部打ち込みおわってから…ですね。メモにかくとしても…
  今現在、メモさんにはこの話し、ようやく地の神殿攻略後までしかかいてない…

2013年7月4日(木)某日

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