まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

ようやく?コレット誘拐シーン。
当然、いまだに意識もどってないので、あの体の痛みとかはないです。
そもそも、魂自体はエミルの分身体たる蝶の髪留めにまもられているコレットなのでv
いまだにそのことにコレット自身も周囲も気づいていませんがv
ともあれ、いっきますv

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「あれ?皆、どうしたの?」
ほっとする。
のんびりと…といえるのか。
エミルののんびりとした声はロイド達にほっとした安堵をもたらす。
が。
「おいおいおい。何だ?これは?」
レットローパーやロックゴーレム、あげくはバジリスクなど。
なぜエミルの周囲にいるのやら。
おもわずゼロスが身構えるが、ロイド達はといえばため息をつくしかない。
魔物達に敵意がまったく感じられず、しかもほとんどのものがきちんとお座り状態しているのである。
「用事はすんだの?」
「すんだけど、エミル。あなたは何をしていたの?」
「ただ、この子達と話しをしていただけだよ?ね?」
そういわれ、魔物達は一斉にこくこくとうなづいた…ようにみえるのはロイド達の気のせいか。
「じゃあ、そういうことで。お願いね?」
それだけいうと、魔物達は一斉にこれまた頭をさげたよう・・・にみえ、
そのままその場からばらばらと散らばってゆく。
「少しきくけど、何を話していたのかしら?」
ときおり、今までも経験したが、どうみてもエミルは魔物達と会話をしている。
始めのころは気のせいかとおもったが、こうもつづけば嫌でも確信がもてる。
それが確定したのはかの施設のとき。
あれはどうみてもエミルが何かをいったがゆえに、あのアスガード牧場での魔物達の襲撃になった、とおもう。
それゆえのリフィルの問いかけ。
「え?ただこのあたりの様子をきいていただけですよ?」
ついでにここのエクスフィアとよばれしもの達がこれ以上、人の手にわたらないように、
と彼らに命じただけ。
侵入者があれば害意ありと判断したものは駆除するように、と命令を下しただけのこと。
分身体たる蝶にて内部を把握し、センチュリオン達に命じ、
他者がはいりこんだときのためにこの地に魔物達を配置するようにと命令を下した。
ただそれだけのこと。

光と闇の協奏曲 ~さらわれた神子~

「変なの。海をいくのが嫌…というから呼んだのに?」
エミルが首をかしげる。
ちなみに、また海をわたってエレメンタルカードで戻る、というのにげんなりした表情のリフィルにたいし、
なら、空からでもいきますか、とエミルがいい。
どうやって、といえば空をとべる子をよべばいい。
といわれ。
なぜかエミルが呼んだのは空の王者ともよばれしシムルグ、という優雅な魔物。
全員がのってもありあまるほどの巨体にて一気に上空にとびたち、
一時もしないうちに再び一行はオゼットの村の外れの空き地へとたどり着いたのはつい先刻。
唖然とする大人たちをさっさとうながし、正確にはシムルグが風にて自らの背に吹きあげた。
ロイド達が疲れ切った様子で…特に大人たちが、ではあるが村の近くにまでもどってきたのはつい先ほど。

なぜか精神的に疲れたらしい…といっても大人たちに限る、だが、
ロイドとジーニアスは逆に鳥にのれたことで喜んでいたりしたが。
ともあれアルタステの家にもどるべく一行は村にと一度はいってゆく。
家にいくためにはこの村を抜ける必要性があるがゆえ。
村にはいると、なぜか、がしゃがしゃという鎧の音がきこえてくる。
「うへ~。また教皇騎士団かよ」
ゼロスがその姿をみてわざとらしいため息をつく。
みれば鎧の音をたてながら騎士達があらわれ、あっという間にロイド達を取り囲む。
「ち。何だってこいつら、あたしたちのいくさきにさきまわりしてるんだい!」
しいなが騎士達をにらみつける。
が、敵はそれにはかまわず、
「これはこれはゼロス様。ご無事でしたか。
  皆のもの、コレットは生け捕りにせよ。ゼロス様は不幸にもここでシルヴァランドの野蛮人に殺される。
  我らはゼロス様の仇のためにシルヴァランド人達を排除する。エミルとかいうものはいるか?」
いけしゃあしゃあとそんなことをいってくる。
「俺様は死んでないっての」
ゼロスがおもわず突っ込みをいれるように吐き捨てるが。
「僕ですか?」
きょとん、とした声で首をかしげるエミルの姿。
「きさまがエミルか。教皇様はお前の身柄をも欲している」
そのことばにおもわず眉をひそめるエミル。
「…魔物使いの能力、か」
さずかに魔物を使役しているのを目の当たりに…しかも伝説級の魔物を、である。
ゼロスがすぐさまそのことに思い当たる。
どうみてもそれだけではない理由がある、とさずかのゼロスも思っているが。
魔物達のあの様子、あれは魔物使いという種族だから、と説明がつくものではないとおもう。
それゆえにつぶやくが。
「神子様はここで死ぬのですからしる必要のないこと。
  コレットとエミルというその少年以外は必要ない。やれ」
その言葉とどうじ、教皇騎士団といわれしものたちが一斉に刃をむけてくる。
「ったく。教皇のくそ爺。いい加減にしろってんだ。本気で身境がなくなってやがるな」
ここ、オゼットでたしかに問題が発生しても、それは闇から闇へですまさせれるであろう。
刹那、あわく輝きだすコレットの体。
不必要に淡くかがやくコレットの体。
しかしそれは敵意に反応しているとかそういうのではないような感じであり、
完全にコレットの動きを制限していのようなそんな感覚。
それをみて、騎士団達があわててその場から距離をとる。
「…どいて」
ふとみればプレセアの姿が村の入口のほうからやってくるのがみてとれる。
「プレセア」
ジーニアスが思わず声をかけるが。
「どいて…わたしに…まかせてください」
そういい、プレセアは一瞬、騎士団へとむきなおる、が、
すぐさまにひるがえし、その手にしていた斧をロイド達にむける。
ビュン。
プレセアがロイド達にむかって大きく斧をふる。
ロイド達が飛びのいたその瞬間、コレットの体がぐらり、とかたむく。
「よくやった。ブレセア」
みれば騎士男の後ろからいつのまにか近づいてきていたらしい、
丸眼鏡をかけている男がコレットの口元に何やら布のようなものをおしあてている。
くたり、とコレットの体が力をなくす。
男はそらに向かって手をあげる。
と。
それを合図にしてなのか、上空より二匹の飛竜の幼生体がとんでくる。
幼生体といえるのはその体にまだ幼生体をしめすぶち模様があるがゆえ。
飛竜はそのままロイド達の目の前にとおりたち、そのうちの一頭がコレットの体をツメでわしづかむ。
そして男はプレセアとともにその場からはなれろうと飛竜へとむかおうとするが、
「くそ。コリン!」
コリンが連れて行かれそうになっているプレセアに体当たりし、
ブレセアはその場にたおれふす。
が。
「あ、コレット!」
飛竜のその首には何か首輪のようなものがつけられているのがみてとれるが。
プレセアが倒れ込んだとき、男を背にのせた飛竜は太陽を背にはばたき、すでに浮上していたりする。
あっという間の出来事に、ロイド達はなすすべもない。
エミルはといえば機械で魔物を操っている様をみてかなり不機嫌になりかけていたりするのだが。
「くそ!コレットをかえせ!お前は一体……」
ロイドの叫びに。
「わしの名はロディル!ディザイアン五聖刃、随一の知恵者!
  再生の神子はいただいていきますぞ!ふぉっふぉっふぉっ!」
ばさり。
飛竜にまたがり、そういいはなち、そのまま竜をあやつり東の空へ。
「ディザイアン?!どうしてテセアラにディザイアンが!?」
二頭の竜が高度をあげる。
コレットは飛竜のツメにとらわれたまま、くったりとうごかない。
「まて!コレット!」
走るがすでにそこは崖の近く。
切り立った崖になっているそこからは、眼下に広がる澄んだ湖と豊かな山並みのみがみてとれる。
当然、空をとぶ手段がないロイドはそこからうごくことはできはしない。
「くそ!」
ロイドの眼にうつる飛竜が次第に小さくきえてゆく。
「コレットぉぉ!」
声をかぎりにロイドはさけぶが、付きだした腕はむなしく風をつかむのみ。
そんなロイドに戸惑いがちに、
「…ロイド。プレセアを頼めるか?」
リーガルがいうが。
「だけど、コレットが!」
ロイドの声にはあせりと、そして何もまたできなかった後悔。
護れなかった苦痛がにじんでいる。
「いつまでつったってるつもりだい!フムレセアをほうっておくきかい?
  コレットがどこに連れ去られたのか、情報集めはあたしが請け負う。
  あんたはアルタステのところにもどりな」
しいなのそんな言葉に、
「いや!俺もコレッ…」
何が優先順位かわかっていないらしい。
「土地勘もないあんたに何ができる!」
しいなの叫びはしごく最も。
「でも……」
「めぇさましな!コレットやプレセアを救えるのは要の紋だけ!
  しっかりしなよ!それをつくれるのはここではあんただけ!違うのかい!」
そこまでいわれ、はっとする表情をみせるロイド。
がくん、といきなり胸元をつかれ、ぐいっとひっぱりつつ、
「何のためにあたしら仲間がいる。コレットのことはあたしに任せて。
  あんたはあんたにできることをやりな!男だろっ!」
あせりをみせるロイドのむなもとをがしっとつかみ、いっきにつきあげがてらに言い放つしいな。
「情報収集はあたしらみずほの民の役目だ。あんたはあんたのすべきことをする!
  あんたにしか、この子も、あの子もたすけることはできないんだよ!」
しいなの言葉に目がさめる。
ここで叫んでいても、そしてまた。
鉱石にて要の紋をつくらなければ、コレットは…いずれ死ぬ。
そう、あの研究施設にて教えられた。
このままコレットをおいかけたとしても、肝心なクルシスの輝石を制御するものがなければいわずもがな。
「・・・・・・・・・・・・・・・・わかった」
また、感情のままに動いて間違うところだったということに今さらきづく。
あのまま動いていても、それは確実にコレットを殺してしまうだけの結果になりかねない。
そしてまた、プレセアも。
「よおし。それでこそロイドだ」
本気で俺、進歩してないな…そんなことを思い、つくづく自己嫌悪に堕ちいてしまう。
目の前にいたのに守ってやれなかったコレットに対しても、そして自分が何をすればいいのか、
という行動に対しても。
目の前のことにとらわれすぎて、大局がまったくみえていない自分に嫌気がさす。
「まずはアルタステのところにいきましょう。…要の紋。それがつくれないと意味がないわ」
リフィルの指摘はしごく最も。
「僕も手伝うよ」
「食事は私にまかせてちょうだい」
『いや、それはちょっと』
リフィルの言葉に、ロイド・ジーニアス、しいなの声がかさなる。
いまだ気絶しているプレセア。
今、優先することは、プレセアの要の紋と、そしてコレットの要の紋。
それをつくること。
「あいかわらず、ロイドって状況にふりまわされて流されるままだよね」
「…きついことをぐさっというな。エミル。だけど…ああ、そのとおりさ。
  俺はいつも選択を間違ってばかりみたいだ……皆がいないと何もできない……」
いつもいつもからまわり。
それがこの旅にて嫌でも理解できている。
それゆえのロイドの言葉。
「まあ、それが理解できはじめてるんなら少しは進歩してるとはおもうよ?
  それより、許せないな。魔物をあんな装置で操るなんて…」
しかもあれには魔血玉デモンブラッドの欠片が組み込まれていた。
魔物の正気を狂わせ、あやつりしもの。


カン、カン、カン。
鎚の音が鳴り響く。
鉱山からもどり、ロイドはすぐにアルタステの家にともどり、
アルタステに師事し、要の紋の作成にととりかかっている。
残されたものたちにできるのは、ただまつことのみ。
「ねえ。姉さん?」
「何かしら?」
「どうしてプレセアって毎日木をきりにいくのかな?今日なんか雨なのに」
昨日の出来事を嘆くかのように、今日は朝から雨がふりつづいている。
椅子にとすわり、窓のそとをみなからそんなことを目の前の椅子にすわり本をみている姉にとといかける。
「心をなくす前の習慣なのかな?でも、女の子がきこりなんてきいたことないしな。
  家族がそういう仕事をしていたのかな。家族は…」
そういうジーニアスは足をぷらぷらとさせている。
しいなはコレットの居場所を探す、といってでていったっきりもどってきていない。
「ずいぶんと。ずいぶんと彼女に興味があるみたいね」
ぱたん。
手にしていた本をとじ、目の前のジーニアスをみる。
「え?ああ…うん」
「ジーニアス」
「…うん?何?姉さん?」
「……何でもないわ」
それだけいいつつ、ふたたび本をひらき視線をおとすリフィルの姿。
「はい。おまたせ~」
「あ。エミルの飲み物。これはなんて飲み物?」
「いつものハーブティーだよ?」
そのハーブティーの中にういている花が薔薇のようで小さくコップの中をくるくるとまっている。
リーガルはプレセアがでていってすぐに、外の様子をみてくるといって外にでていったっきり。
そのままプレセアをおいかけて、彼女を手伝っていたりすることをジーニアスは知らない、気づいていない。

一方。
「…はぁ。ロイドにまかせろ、と大見えきったはいいけど」
情報あつめはまかせな、とはいったが。
相手は飛竜。
やはりわかるのは、東のほうにとんでいったという目撃情報のみ。
「コレット、どこにいるんだろうね」
「どこなんだろうねぇ」
研究院にいけばわかるかもしれないが、しかしそれも危険だとおもう。
「アステルでもいればねぇ……」
彼なら嬉々として協力してきそうな気がする。
…その対象に何をもとめられるのかは別として。
しかし、彼の口からケイトに万が一つたわり、教皇の耳にはいれば意味はない。
「ねえ。みずほにいってみたら?頭領やタイガさん、くちなわさんたちに情報あつめ手伝ってもらおうよ、ね?」
たしかに情報集めでは随一というみずほの民なれど、一人では限界がある。
ましてや今は一刻をあらそう、そうおもう。
それゆえのコリンの提案。
「しいな、いつまでも昔のことひきずってちゃ……」
「いくよ」
「いくって、どこに?」
裏路地にて座り込んでいたしいなが、コリンの言葉をうけていきなり立ち上がる。
「みずほ。あんたがいったんだろ?」
「…ごめんね。しいな」
いろいろな意味で謝るしかない。
エミルと名乗っているあの御方のこともいえなければ、自分のことも。
今はまだいい。
しかし、さいきん、自分のこの仮初めの器が不安定になっているのも自覚している。
精霊として確立してゆく上において、器が事をなさなくなってきている。
心が育つにつれ、精霊として自分自身の存在が確立してゆく。
だが、人がつくりし器とそれとはまた別もの。
理をもてば今いるかつての人工精霊達のようにそのままでいられるであろうが。
だが、コリンはまだその決意がわかないのもまた事実。
今ならば、しいなとともに一生を終えることができるが、精霊となればそれはない。
それこそ自らの存在意義が失われるそのときまで、永遠と存続することになる。
だからこそ、コリンは決意がもてない。


徹夜にて幾度も幾度も打ち直した。
すでに夜はあけ、外はあかるい。
ようやくできた要の紋。
それをアルタステがゆっくりとプレセアにちかづき、エクスフィアにと装着する。
「プレセア?」
「…たのむ……」
眼をひらいたプレセアの瞳には光がもどらない。
「はい。お疲れ~。気持ちだけじゃどうにもならないことって世の中にはあるってことさ」
ゼロスが淡々といい、そんなゼロスにたいし、ジーニアスの肘の鉄槌がくだされる。
「な、なんだよ。皆の気持ちを代弁しただけだろ!?」
エミルはまた夜も外にいるノイシュとともに一夜をあかしたらしく、
完成した、という言葉をうけて、ノイシュをつれて部屋にとはいってきているのだが。
「僕は、ロイドの腕と根性を信じてる!」
「友情、眩しいねぇ……」
続けざまに武器にもしているケンダマにてゼロスをつきとばし、高々といいはなつジーニアス。
そんなジーニアスにあきれたようにいっているゼロスの姿がそこにはあるが。
「アルテスタさん、わるい。もう一度最初からつきあってくれ!」
ダメだったからといっておちこんでいる時間すらもったいない。
それゆえのロイドの台詞。
太陽はすでにのぼりきり、昼をまわっている。
「うむ」
それをうけてロイドが工房へはしっていこうとするが。
「…その必要はありません」
いちど眼をとじゆっくりとひらいたプレセアの瞳にはあきらかに光がともっているのがみてとれる。
「フレセア!もとにもどったの!」
ジーニアスが声をあげ、
「やるじゃん!ロイド君!」
めずらしくゼロスまでも同意する。
「ああ!やったよ!アルテスタさん!」
「うむ。上出来じゃ」
「よっしゃぁ!」
アルタステに認められたことにより、養父ダイクに褒められたような感覚におちいり、ロイドは喜ぶ。
が。
「次はならコレットの要の紋ね。マナの欠片とかジルコンとかがあればいいんだけど……」
たしかに一番の問題はコレットの要の紋。
「エミル、もってない!?」
リフィルの言葉をききなぜかエミルにきいてくるジーニアスの姿。
「何で僕にいうのさ?」
「エミルなら何でもありようなきがして」
「ジルコンはたしかこの工房にもあったでしょ?他はどこかの資料にどこにあるかかかれてるんじゃない?」
どこに何があるかはしっているが、それをしっている、いうのはあきらかにおかしい。
それゆえに言葉をにごし、彼らが調べるようにと言葉を選ぶ。
「あるとすれば、王立図書館じゃろうな。古代の勇者ミトスの資料もそこにあるはずじゃ」
アルタステの台詞。
「なら、その王立図書館ってところにいけばわかるのかな?」
「もしくは、サイバックの学術資料館くらいじゃねえのか?詳しい内容があるとすれば」
ジーニアスの台詞にゼロスが追加説明をしてくる。
「学術資料館……」
それは盲点だったとおもう。
アレを探すために王立図書館はセンチュリオン達に…特に闇属性の魔物達にと探らせてはいたが。
一番瘴気にあまり狂わされないのは闇属性の魔物達。
他の魔物ではすぐに狂わされる恐れがあるがゆえのその選択。
「…まあ、とりあえず、これで代用でもしてみたら?」
いいつつも、エミルが腰からとりだした小枝…
……この前みたときには、ただの枯れ枝でしかなかったはずなのに、
そこにはなぜか数枚の小さな葉っぱらしきものがついているのがみてとれる。
「エミル?これは?」
「葉っぱだけど」
ちなみに枝から芽吹いているのはいうまでもなく、世界樹カーラーンの葉の新芽。
枝から一枚の葉をとり、ロイドに手渡す。
手渡されたロイドはそこからとても暖かな力をかんじ思わず目をまるくする。
ロイドにもわかるほどの暖かな何か。
「ロイド、すこしそれ、もたせてもらえるかしら?」
「あ、うん」
ロイドがリフィルにそれを手渡すとどうじ。
リフィルの中をものすごいマナがかけめぐる。
一瞬、脳裏にうかびしは巨大な大樹。
完全なるマナの…塊。
「エミル…これ、まさか……」
リフィルの声は震えているが。
「え?ただの小枝から芽吹いた葉っぱでしかないので本来の世界樹の葉ほどの効果はありませんよ?」
本来の世界樹の葉は死者をもよみがえらせることが可能。
「…十分すぎるでしょ。これは…」
下手なマナの欠片、とよばれているそれよりもよほど価値がある。
「おいおいおい。世界樹…って、まさか世界樹カーラーン!?」
ゼロスがいうが。
「まさか…大樹はすでに…」
震える手でアスタルテが葉にふれるが、そこかに感じるはあきらかにマナの奔流。
「宝石に使う液体にこれをくみいれれば少しは役にたつんじゃないのかな?」
(…何だかんだといって甘いですよね。ラタトスク様は……)
横でため息まじりにいっているグラキエス。
文句をいいつつも、あがくものにたいしては結構甘いことを彼らセンチュリオン達は理解している。
まあ、気持ちはわからなくもないが。
でなければ、世界そのものを生み出す、などということを延々と繰り返してはいないであろう、ということも。
そんな主だからこそ、彼らエイト・センチュリオンは常につき従っているのだからして。
その創られしありようとは関係なく、自らの心、において。

「…大体の記憶はあるんです。私…みなさんにご迷惑をかけていたみたいですね」
あの施設からアルタステが自分をつれだしたことも記憶している。
だから謝る彼に対し、いかりをぶつけることもできない。
「プレセアのせいじゃないよ。でもどうしてあんなエクスフィアをつけていたの?」
ロイドの創った要の紋。
それを身につけたことによりどうやら制御に成功したらしい。
感情を取り戻したプレセアにジーニアスが問いかける。
続けざまにコレットの要の紋をつくる、とロイドがいきこんだが。
まずその前にプレセアに話しをきこう、ということになり話しをきいている今現在。
「病気のパパをたすけたかったんです。パパの変わりに斧をつかえるようになりたかった。
  そしたら、ヴァーリという人がロディルを紹介してくれて……」
それでもそのあと、父親は死亡した。
妹を育てていくにしても妹はまだ幼い。
自分とは三つ違いの妹。
妹が貴族の屋敷に奉公にいく、といったときプレセアもとめることができなかった。
自分も一緒にといわれたが、父のあとを継ぎたかった。
「…やはり、ヴァーリか」
リーガルが唸る。
「…それから、サイバックの研究所につれていかれて、それでエクスフィアを……」
「…プレセアちゃんの実験はおそらく教皇がからんでやがる。
  あいつが自分の娘に命じてやらせているのは知っていたからな。
  だがあいつは巧妙にそれをかくしやがって……証拠すらつかませやしねぇ」
証拠があればつきつけて断罪できたであろうに。
しかし、その直後に国王が病気になり…原因は教皇による微量な毒薬によるもの。
それをアステルがつきつめて、どうにかそれは事なきを得はしたが。
それらの敬意をしっているがゆえに、
ゼロスはプレセアをどうにかして助けたい、とおもいかまっていたのもまた事実。
だからこそ、プレセアを助けたいというアルタステにも協力した。
その脱出にはしいなも手をかしたがゆえに逃げ出したことはしいなもしっていた。
彼女のことをしったのは、アステルの協力がかなり大きい。
九歳からかの研究施設にとはいっているアステル。
今現在は七年間、かの研究院に所属しているゆえにかなり内情も把握しているらしい。
プレセアが実験に使われたのは十四年前。
巧妙に隠されてはいたが、ことばたくみにアステルが、教皇の娘であるハーフエルフの女性、ケイトからききだした。
その結果、ゼロスの耳にとはいったのだが。
「…あのロディルとかいうディザイアンと教皇は確実にグル、ね」
リフィルのため息。
必要にこちらの世界の神子というゼロスを狙っているのがわかっていた以上、
何があってもおかしくない、とはおもってはいたが。
よもやディザイアンと通じているなどとは思ってもいなかった。
そんな中、リーガルはおちつきなく、プレセアの顔に視線をあてていたが思い切ったように口をひらく。
「プレセア。君には姉がいなかったか?」
「え?姉、ですか?いえ、妹が一人。でも奉公にでてそれきりです……ママは、早くになくなりましたし……
  あの、私、みなさんについていってもいいですか?だめでしょうか?」
顔をあげロイド達に訪ねてくるプレセア。
そういえば、みずほの里にて彼女の時がとまっている、ときかされた。
ならば、彼女がいっていた、たった一人の姉…というのは。
リーガルは言葉をつまらせる。
「な、どうして?」
いきなりいわれロイドがとまどい問いかけるが、
「コレットさんが連れ浚われたのは私のせいです。これから助けにいかれるんでしょう?
  だからコレットさんをたすけるお手伝いさせてください。でないと、私……」
「便乗するようだが、私もつれていってくれ。お前たちの敵は…私の因縁の相手でもあるようだ」
そんなプレセアにつづいてリーガルもいってくる。
「もちろんだ。コレットをたすけるためにも二人とも力をかしてくれ」
「…はい。かならず」
「ありがとう。感謝する。わが力全てをもってしておまえのまことにこたえよう」
そんな彼らをまっすぐにみて答えてくるプレセアとリーガル。
そんな中。
「さあ。次のコレットの要の紋ができたら。いそいでコレットをおいかけましょう」
プレセアの要の紋はどうにかなった。
ならば次は問題のコレットのもの。
「材料がそろわないのが不安だけど……」
できれば完全なものを創っておきたいところだが、
コレットが浚われてしまっている今現在はそうはいかない。
簡易的でも彼女の感情を取り戻すことが先決であることに間違いはないる
それゆえのリフィルの台詞。
「そうだな。みたところあいつらは東にむかっていたよな、よし、次はコレットの要の紋を」
リフィルの言葉をうけ、ロイドがアルタステのほうにむきなおる。
アルタステがこくり、とうなづき、あらたな作業を開始しようとしたその刹那。
そんな彼らの会話を黙って聞いていたエミルがふと顔をあげ、
「…まって。誰か外にいるよ?」
外をみつつ彼らにと話しかける。
エミルにいわれ、ふと外に気配を感じる。
まさか追手か、とばかりにゆっくりと外を確認する。
と。
「…神子をうばわれたか」
家の外には、そこにいるはずのない人物がみてとれる。
「クラトス!また現れたな!コレットをどこにやった!」
その姿をみとめ、おもわず家からとびだして、ロイドがそんなクラトスにとつっかかる。
「ロディルは我らの命令を無視し、暗躍している。私の知るところではない」
どうでもいいが、どうしてここにクラトスがいる、というのをロイドは疑問におもわないのか。
リフィルですら疑問におもっているらしく、眉をひそめている。
まるでわざわざ事情を説明しにきた、とばかりのこの行動。
…実際にそう、みたいだが。
しかも昨夜、ゼロスの報告をうけてここまでやってきているらしい。
そのことをエミルは『視て』しっている。
「内部分裂というわけ?愚かね」
そんなクラトスの真意をはかりかね、リフィルが相手の意図をはかろうとわざと挑発するものの、
「否定はしない。しかしやつは神子を放棄せざるを得ないだろう」
腕をくみながら淡々とどうでもいいとばかりにいっているクラトスの姿がそこはある。
「どういうことだ?」
クラトスに今にも挑みかかろうとしていたロイドだが、そのことばをきき、ぴたり、と動きをとめる。
「神子は…あのままでは使いものにならんのだ。すておいても問題なかろう」
「冗談じゃねえ!何としてもコレットは助けるんだ!邪魔するつもりなら…」
その台詞をきき、クラトスの口元がすこしばかり笑みをつくりだす。
それはほんのわずかの口元の動きではあるが。
彼をしっているものがみれば、完全に笑みをうかべた、と断言できるほどのもの。
そして…かつて、分身体たる蝶にて彼らの様子を視ていたがゆえにエミルにもそれは判る。
「…ならば、レアバードを求めろ。そして東の空へむかうがいい。
  みずほの民もレアバードを発見しているころだろう。飛竜の巣。やつの拠点はそこだ。
  おそらくそこに神子もつれいてかれたはずだ」
コレットがつれていかれた方向をちらり、とみて、それからみずほの里のほうにと視線をむける。
そのままいいたいことだけいい、その場から何もせずにたちさってゆくクラトスの姿。
そんなクラトスの姿をみおくりつつ、
「…あいつ、いったいどういうつもりなんだ?」
ロイドの疑問もしごく当然。
「まあ、いいじゃないのよ。役にたつなら利用しとけって」
ゼロスはロイドとクラトスの関係をみずほの里にてきかされている。
それはあの依頼をうけたときに、無理やりというか依頼をうける過程として聞きだした。
きいたときには口をあんぐりとしてしまったが。
なら自分がやればいい、といったのに自分にはすることがある、の一点パリ。
そのかわりクルシスのことを教える、といったその提案にのったのはほかならぬゼロス自身。
「…しいなと合流して、みずほの里にいってみましょう」
クラトスの思惑がわからないが、たしかにみずほの里にいく、というのはあるいみ正しいかもしれない。
だからこそのリフィルの台詞。
「じゃぁ、改めて。これからよろしくね。プレセア!」
「よろしくおねがいします」
「プレセアちゃん。俺様のことはゼロス君ってよんでね」
「はい。ゼロス君」
そういえば、あらためて挨拶していなかったことにいまさら気づき、そんな会話をこの場にしていている彼ら達。
「あ、あ、僕のことは…」
「とにかく、一度家の中にもどろう。ほら、いくぞ」
「僕はジーニアスって…もう、ロイドの大馬鹿やろう!」
そのまま家の中にとはいってゆく彼らにたいし、ジーニアスの叫びがむなしく響き渡る。
…まだ、ジーニアスは、あの村の老婆がいったこと、そしてみずほの里の民がいったその意味を理解していない……


「ついているな。ちょうどお前をさがしにでようとおもっていたところだ」
みずほの里にともどってきたはいいものの、なぜに里の前に彼らがいるのだろう。
おもわずみがまえるしいなの前にあらわれたのは、レネゲード、となのっていた男たち二人の姿。
「私を!?」
「そう怖い顔をするな。神子の居場所を教えてやろう」
そういい、青い髪の男性…レネゲードのユアンは笑みをうかべる。
「コレットの…居場所を?」
真意はわからない。
が、彼らが神子の器化を阻止しようとしているのはしっている。
だからこそ…
「どういう、ことだい?」
それはかけひき。
利用できるものは利用する。
それはみずほの里のものにとっては絶対的なる真理。


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あとがきもどき:
薫:次回にて、ふたたびみずほの里~
  OAV版ではヴォルトの契約依頼してきたのレネゲードでしたしね。
  この話しもそちらを参考にしております。ではまた次回にて~

2013年6月29日(土)某日

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