「エレメンタルカーゴをお前たちに貸しだそう」
アルタステがいうと。
「エレメン…何だ?それ?」
意味がわからずにロイドが首をかしげる。
「エレメンタルカーゴ。通称エレカー。エクスフィアで制御された運送用の小型乗用車さ。
現在は主に輸送会社による宅配便事業につかわれている陸の乗り物さ」
「俺達は小包か」
おもわずのゼロスの突っ込み。
「どういう原理なのかしら?」
きになるらしくリフィルがといかける。
「ああ。それはだね。たしかエレメンタルカーゴは通常、
空気中のマから地のマナを取り込んで大地に噴き出すことで、
反発の力を生み出して推進力にしてるんだよ。それで陸を浮いた状態で進むのさ」
ちなみに、海に関するものも開発されかけたが、なぜかそれは断念された。
それより普通の船のほうが能率がいい、という理由にて。
最も、一番の理由は海に住まう魔物達に普通の小さな乗り物で対処できるか、といえば答えは否。
それゆえに船におちついた、というのもある。
「そんな乗りものがここ、テセアラにはあるのね。本当シルヴァランドとは技術の差も違うのね」
おもわず感心した声をだすリフィルであるが。
「何だ?これ?」
ロイドの手に、ぽん、とのせられる小さな何か。
手の平にのるほどの小さな容器らしきもの。
「うん?ウィングパックじゃが?中にエレカーがはいっとる」
「これに!?エレメンタルカーゴってこんなに小さいのかよ!?」
どうみてもはいるような代物ではない。
仕組みを理解していないがゆえにロイドが叫ぶ。
「そうか。シルヴァランドにはウィングパックがないんだな。さすが田舎もの!」
どうでもいいが、一般的に普及しているフードパックも似たようなものだ、というのに。
原理はほぼ同じなのだから。
そんな彼らをあるいみあきれたようにみているエミルにロイド達は気づかない。
「田舎者でわるかったな!」
「でひゃひゃ。おこるなよ。あとで使い方をおしえてやるから。さ、いこうぜ」
どちらにしても、家の中で中身を取り出すわけにもいかないであろう。
ゼロスにいわれ、仕方なくロイド達も一度、外にとでることに。
「よ~し。ロイドくん。さっきのパックをつかってみ?」
「えっと、こうか?」
いわれるまま、さきほどわたされた小さな何か、をもって空にとかかげる。
どうやら小さな何かにはスイッチらしきものがあり、それを押す。
と。
「「うわ!?」」
目の前にいきなり何かの乗り物らしきものが出現する。
「す、すげえ!」
「うわぁ。どうなってるんだろう!?」
ロイドとジーニアスの驚愕の声。
「…みおぼえがあるのは……」
リフィルだけがそんなことをいっているが。
「?先生?」
「いえ、何でもなくてよ」
「な、それにきちんとはいってたろ?」
「すげえ!消すこともできるぞ!」
調子に乗ってしばし出し入れ。
目の前にあるエレカーが一瞬でパックに吸い込まれたり、出たり、と幾度もくりかえす。
が、それで手にしているパックというものが重くなったり、ということもない。
「ようし、エレカーか!もりあがってきたぜ!」
「どうせすぐにあきるくせに」
一人はしゃぐロイドに冷静につっこみをいれているジーニアス。
「エレカーってすげぇ!」
そんなジーニアスの台詞をさらり、と無視し、さらにはしゃいでいるロイドの姿。
「地上をはしる乗り物。ね。たしかにすごいわ」
こんなのが一般的に普及しているテセアラと、いまだに馬車での移動が主流、
もしくは歩きが主流のシルヴァランド。
文明の差のあまりの違いにリフィルからしてみれば、
これが衰退世界と繁栄世界の差か、と納得するものの、
しかしどこかでたしかにかつて昔、みおぼえがあるような気がしてしかたがない。
「これで海とかわたれないのかな?」
ふとジーニアスがいい、
「元々これは地上を走るのりものなのでしょう?それは無謀というものよ」
リフィルがぴしゃり、といいはなつ。
「そう?たらいよりずっと安全そうだけど」
ジーニアスの言葉はあるいみ真実。
どうでもいいがなぜにあの地ではあれを観光の目玉にしてるのだろうか。
いまだにエミルは疑問のまま。
「たらいぃぃ!?おいおいおい。シルヴァランドじゃたらいで海をわたるのか!?」
ゼロスが驚いたようにいい、
「…ああ。たらいのことを思い出したら気分がわるくなってきたわ……」
あのときのことをおもいだし頭をかかえているリフィル。
「ウンディーネの力をかりればできそうだとおもうけどね。とにかくいくよ」
しいながいい、エレカーにと乗り込んでゆくが。
「それは、さっきから気になっていたのだが…もしや、プロトゾーンでは?」
ふと、そこにいるノイシュにきづき、アルタステがエミルにといかけてくる。
「はい。そうですよ?」
「おお。まだ生き残っていたのか」
何やらそんな会話をしているアルテスタとエミルの姿。
「かつての戦いでこの子達はほとんど愚かな人に殺されてしまいましたからね」
「うむ。しかしまだ生き残りがいたとは」
「地上で今いるのはこの子とあとすこししかおそらくいませんけどね。
あのときほとんどの子は原初の姿に一度戻ったはずですし」
それから進化していっていたとしてもまだこの姿になるまでは時間がかかる。
もっとも、扉の間を守っているムーという存在もいるにはいるが。
「伝承では大樹の精霊様の手により、プロトゾーン達は愚かなるヒトの手からのがれ、
産まれた海にともどった、といわれておるな」
よもやエミルがその精霊だ、とはゆめにもおもわずに、
ドワーフにつたわる伝承を思い出しそんなことをいっているアルタステ。
そんな彼らをそのままに、エレカーに乗り込み状態を確認し、
操縦席にと移動しているしいなの姿がみてとれる。
「あんた、狭いからってへんなことするんじゃないよ?」
「ひど!しいな、いくら俺様でも傷ついちゃう。リフィル様ぁ。俺様をいやしてぇ」
「なら、私の料理でも…」
「おお!リフィル様の手料理!…って、これ、何ですか?」
いつのまにつくっていたのか。
リフィルの手にしている箱のようなものの中につめられているソレら。
「あら?機能性を追求したレモンづめごはんよ?」
「うわ!また余計なものを姉さんいつのまにつくってたの!?」
「いっただっきま~…ぐぇっ」
「あら?グリーンローバーを刻んだものを隠し味にいれたのだけど……」
「それって毒状態になるからぁぁ!毒消しそうはどこぉぉ!」
ジーニアスが叫んでいるのがみてとれる。
横ではぴくぴくとしているゼロスの姿も。
「…カオスだね」
何やら乗り込む前から騒がしい。
そんな光景を傍目でみつつ、おもわずつぶやくエミルはおそらく間違っては…いない。
アルタステの家をでてすぐ。
エレカーにのり、北にあるという残橋に向かう途中。
「なあ。さっきのタバサって人、ちょっとかわってたな」
「そう?」
ふとロイドが何かにきづいたようにいってくる。
「何というか。コレットに似てるというか」
どこがどう、というわけではない。
だけども似ている、とロイドは感じた。
「そういえば、今のコレットに何となく雰囲気的に似ているものがあったわね」
リフィルが彼女のマナのありようをみて、たしかに今のコレットに似ているものがある、とおもう。
しかし彼女から感じたマナは…今までみたこともないようなマナであったのもまた事実。
「ちょと似ているような感じがしたんだけどさ」
「…呼吸をしていないからではないか?」
ロイドのそんな素朴なる疑問にリーガルが淡々といってくる。
「え?あのこ、息をしていなかったの?」
「本当かよ?息してなくてどうやっていきてるんだよ」
ジーニアスとロイドの言葉はほぼ同時。
「そのようだったな。まあ、よほど鍛練していて静かに息をしていたのかもしれぬが…」
しかしそう鍛練をしているようなものにはみえなかった。
あの娘からは命の息吹が感じられなかった、というのもリーガルからしてみればある。
「まさか、あのタバサも天使なのかなぁ?」
「悪い人にはみえなかったよ?」
ロイドにつづき、ジーニアスが首をかしげるが。
「油断は禁物だろう」
リーガルからしてみれば相手がわからない以上、油断はしないほうがいい。
それゆえにそんな台詞を発していたりする。
そんな彼らの会話をききつつ、
「あの子はどちらかといえば無機生命体だね。正確にいえば機械生命体」
さらり、とエミルがそんな彼らにと言い放つ。
『え?』
「え?って、マナのありようや、オーラをみればそれくらいわかるんじゃぁ……」
普通、彼らのような有機生命体と無機生命体たる彼らのマナはあきらかに異なっている。
そのマナの仕組みのありようが。
根本となっているマナは同じものではあるが、そのありようを構成しているものの根本から異なっている。
(ラタトスク様、普通の人間にはわかりません)
さらっというエミルの言葉に、なぜか影の中にといるルーメンから突っ込みがはいってくる。
「わからないんだったっけ?」
(はい)
おもわずそんなルーメンに声をだしてといかけているエミルにたいし、もどってきた答えは肯定。
意味がわからずに目をばちくりさせているロイド。
そして何か考え込んでいるリーガル。
ジーニアスに至っては目をかなり見開いていたりする。
「エミル。あなた、マナがわかるの?」
そんなエミルにたいし、リフィルがするどく観察するかのごとくの視線でといかけてくるが。
「僕からすればどうしてわからないのか、といいたいんですけど……」
エミルからしてみればどうしてわからないのか、といいたいのが本音。
マナはともかくとして感覚としてわかりそうなものなのに。
「マナはともかくオーラも感じ取れなくなってるって一体……」
それは心からの本音ともいえる。
かつての四千年前ですらある程度のものたちはオーラくらいは感じ、また操ることができた、というのに。
その結果あのような戦いにまで発展していってしまった、というのもあるが。
…どうやらこの四千年において、ヒトはかなり退化していってしまっているらしい。
しかも主に自然界に繋がる分野にて。
それは人が自分達だけでいきている、とおもい自然との共存をないがしろにしている証拠。
そんな彼らの会話を横でききつつも、
「エクスフィア鉱山、ねぇ……」
この中でエレカーをまともに操縦できるとすれば、しいな、もしくはゼロスくらいであろう。
ゆえに二人して操縦室にいる今現在。
しいなからすれば一人で操縦するよりはたしかに補佐がいたほうがたすかることはたすかる。
が、動かすところがみたい、といって全員がこの操縦室にそろわなくてもいいだろうに、という思いもある。
今この場にいるのはしいなとゼロスだけでなく、なぜかロイド達全員もこの場にいたりする。
「なんだい。うさんくさそうな声をだして」
「お前だってしってるでしょうよ。
アルタミラの方にあるエクスフィア鉱山といえば、トイズバレー鉱山のことだろ?」
「ああ。隣のモーリアと坑道でつながってるっていうあれかい?」
「だとしたら、あの付近の山の持ち主がだれかを考えてみろよ」
そこを所有せしはここテセアラではしらないものがいない有名な企業。
一個人の財産。
「…レザレノ・カンバニーだろう?でもそれがどうしたんだい?」
「…ちぇ。しいなが立派なのは胸だけか」
そこまでいってもわからないしいなにおもわずがくりとなるゼロス。
「殴るよ!」
「殴ってからいうなよ。も~」
当人も隠しているようだし、それに意味があるのかはわからない。
が、おそらくプレセアに執着していることから、あの騒ぎの原因となった彼の恋人…
身分違いでもあったという、あの奉公人に関係があるのかもしれない。
ならば自分が口をだすことではない。
そうゼロスは自分の中で結論をだす。
どちらにしろ、レザレノとかいってもロイド達には通用しない、というのはわかりきっていることなのだから。
「ダイクおじさんとアルテスタさんってどっちがいい職人なのかなぁ?」
海の上をすすみつつ、ふと思いついたようにつぶやくジーニアス。
「しるかよ。そんなこと」
どうでもいいとおもうロイド。
そもそもどうしてクルシスなんぞに協力していたのか、という思いのほうがつよい。
「僕がみたところ技術的にはアルテスタさんのほうが上だとおもうな」
「職人に大事なのは技術じゃなくて心だ!親父だったら困ってるひとを放っておくもんか!
絶対におどされても屈せずにクルシスなんかに協力なんてするものか!」
おどされたとはいえ他者の命をもてあそぶ行為に彼が手をかしていたのはまぎれもない事実。
「ふふ。ムキになって。やっぱり親子だねぇ。まあアルタステさんにも事情があったんだよ。
今はもう協力してないみたいだし。…たぶん。そういえば、しいな」
そんなロイドの姿をみてため息まじりにいったのち、ふとしいなにとといかける。
「何だい?」
ジーニアスの問いかけにしいなが振り向きざまに返事をかえす。
「テセアラでもドワーフってめずらしいの?」
「あたしが知っているのはアルテスタだけだよ」
「じゃあ、一人ぼっちなの?きっとさみしいだろうね」
ジーニアスの台詞に他意はない。
ないが。
「・・・・・・・」
その言葉をきき、ふとロイドがだまりこむ。
「あれ?どうかした?ロイド?」
「い、いや。親父のやつ、どうしてるかなっておもってさ」
「あはは。ロイドがホームシックになってる」
「ち、ちがうぞ!断じてちがう!」
むきになっていうが、顔を真っ赤にしていえば説得力は皆無である。
オゼットの北にとある桟橋からウィングパックにしまってあったエレメンタルカーゴにと乗り込む。
問題の鉱山にいくためには海を渡る必要がある。
それゆえに。
「ウンディーネ」
しいながウンディーネを召喚する。
ここからは海をこえなければいけないゆえに、しいながウンディーネを召喚し、
精霊の力をつかい、本来ならば大地をすすむための乗り物にて海をこえることとなる。
それとともに、ウンディーネが一瞬、うやうやしくおじぎをしてくるが、
それが何を意味するのかはロイド達はわからない。
ただ、召喚されたから手を前にと胸のまえにあて、頭をさげているのかな、というくらいの認識しかない。
「ウンディーネ。このエレカーが土のマナでなく水のマナを問題なくとりこめるようにしておくれ」
本来使用しているのは土のマナ。
それをすこしばかり水のマナに変換してしまえば海の上でも移動は可能、とはアルタステ談。
「リーガル。ちょっといいか?」
エレカーがアルタミラ沖を通過するころ、
ロイドは隅に腰をおけし、じっと眼をとじているリーガルにと話しかける。
「何だ?」
「あんた、プレセアとはどういう関係なんだ?」
「・・・・・・・・」
リーガルは眼をあけると黙ってロイドをみあげる。
そのとき、窓から島を眺めていたゼロスが、
「おお!アルタミラだ!いいなぁ。アルタミラ。楽園だぜ!なあなあ、ちょっとよってかねぇか?」
「こんなときに何いってんだい!あほ神子が!」
しいなに一喝され、ゼロスはしゅんとしてみせる。
「なんなのさ。あそこに何かあるの?」
たしかにエレカーの窓からもそこに街らしきものがみてとれるが。
「いわゆる、リゾートってやつだよ。こいつの好きそうなちゃらちゃらした娘がいっぱいいるのさ」
しいながいまいましそうに説明してくるが。
「えっと…おい」
窓際の騒ぎに気をそがれたロイドは再びリーガルに問いかけようとする。
が。
「関係はない」
きっぱりい、ふたたび唇を引き結ぶ。
「関係ないって…なんか関係ないにしちゃ、プレセアのこと熱心すぎるんだよなぁ」
かといって聞くタイミングを逃してしまった以上、これ以上はおそらくきけないであろう。
「そういえば、エミルはまた外?」
「…みたいね」
ちなみに、今エレカーを操縦しているのはしいなであり、リフィルは小さくなっていたりする。
よくもまあ、海の上をすすんでいるのにエレカーの外にでれるものだ、とおもう。
船でいうならば甲板にあたる場所に。
そうこうしているうちに、やがて南の大陸らしきものがみえてくる。
エレカーは東周りにすすみ、エクスフィア鉱山近くの残橋にまでたどりつくと、そこでとりあえず上陸する。
陸にあがり、進むことしばし。
陸にあがってからずっと先にたって歩いていたリーガルが、
ぽっかりと暗い口をあけている鉱山の入口までくるとようやくロイド達を振り返る。
「ここに抑制鉱石があるのか。よぉし!」
ジーニアスはプレセアを助けたい、という意思を満ちた眼で中を覗きこむ。
「すっげえ!ここか!閉鎖された鉱山ってのは! ひゃぁ、何かでそうだな。なあ?なあ?」
「あ~もう。あんた少しはだまってられないのかい!」
「何だよ~。怒るなよ。しいな~」
場の空気をなごませようとしていったゼロスの言葉にしいなが突っ込みをいれる。
こういうときのゼロスの想いやりはしいなは本気でわからないらしく、本気でおこる。
それが面白くてゼロスはよくこういった冗談がてらに本気ともいえない台詞をいう。
あるいみこの二人の日常的なやりとりともいえる。
「いこうぜ。ジーニアス」
ロイドは親友の肩をたたき、一緒に鉱山へと足を踏み入れる。
が、いくらかも進まないうちに、
「…いかん」
リーガルが足をとめる。
「どうしたんだ?リーガル?」
「扉のガードシステムが暴走している。何ものかが無理に侵入しようとして破壊したのだろう」
「だったら、もっとこわしちまおうぜ。持ち主がみているわけじゃないし」
「さっすがロイド君。それわかりやすいぜ!」
ロイドがそういうと、ゼロスはおもわず笑みをうかべるがそれ以上は何もいわず、その台詞に賛同する。
「そうだな。あたしもそれでいいとおもう」
「…ほんとにそれでいいの?僕しらないよ?」
それと同時、ガードシステムのオービッドがビームを発射しながら襲い掛かってくる。
「やぁ!」
ロイドがすばしこく飛び回るオービットをたたき落とすと、
「そこにあるペア装置をこわせ。でないと再生する」
淡々とリーガルがいってくる。
ゼロスとジーニアスが装置にかかっている間にゼロスとしいながガードシステムにと接近する。
ガードシステムが作動し、二人を押しつぶそうとするが、
ロイド達の執拗な体当たりと剣さばきにやがて敵はあっけなくシステムダウンする。
「…で、またエミルは手伝ってくれないんだもんなぁ」
「おびえてるノイシュを一人にはできないよ」
みればノイシュが壁のはしっこにより震えまくっている。
そんなノイシュのよこにのんびりとたっているエミルの姿がみてとれる。
「僕は外でノイシュとまってるね」
「…仕方ないわね。ノイシュをつれて中にはいるのも」
ちなみにリフィルの荷物は、ウィングパックの中にエレカーとともにおいてある。
開いた扉からエミルとノイシュをのこし、ロイド達は坑道の中へとはいってゆく。
「よ~し。みんな御苦労。さあ、何とかっていうやつをとりにいこうぜ!」
「抑制鉱石!」
「そうそう。それよ、それ。カモ~ン、レッツゴー!」
そんなことをいいながら扉の向こうへきえてゆくロイド達。
リーガルはめちゃくちゃに乞われておちているオービットを横眼でみ、一瞬複雑な表情になる。
「…乱暴…いや、血気盛んというのだろうな。…?」
ひらり、
「…蝶?」
この場にはふさわしくない真赤な蝶。
それがひらり、と舞っているのが視界にとまる。
その蝶はすいこまれるように扉の向こうにときえてゆく。
やがて蝶は封じられし扉へと吸い込まれるように消えてゆくのだが、そこまでリーガルは気づかない。
トイズバレーの採掘場は古く、ランプの灯りで視る限り、坑木もかなり古びているようにみえる。
「これが採掘の機械…ずいぶん頑丈そうね」
リフトを使った運搬機に触れてみてリフィルがひとりごとをいう。
「何で機械がかってに一人でうごきづけてるんだ?」
「ここの鉱山はオートメーション化されている。当然だ」
「へぇ。よくわからねぇけど、便利なんだな」
「すばらしいっ!」
ひとりリフィルが異様にはしゃいでいるようにみえるのはおそらく気のせいではないであろう。
「…ってのはほっといて。抑制鉱石はどこにあるんだ?」
そんなリフィルをさらり、と無視し、ロイドがリーガルにとといかける。
「抑制鉱石の坑道はこの先だ。そこにあるリフトに乗れば連れて行ってくれるはずだ」
リーガルが淡々と説明するが、普通、そこまで詳しいはずがないというのに、
ロイド達はその疑問に気づかない。
しばし周囲の機械を徹底的に調べたあげく、ようやく少しは気がおさまったのか、
「この鉱山の機械はずいぶんと頑丈なのね」
いつもの口調にもどり、リーガルにとといかけているリフィルであるが。
「ここは元々古代の採掘場なのだ」
「え?!」
古代、という言葉にリフィルが反応したことにリーガルは気づかない。
「その機械もそうだが、この鉱山ではほとんどその当時の設備のものをつかっている。
古代大戦のときに使われていた採掘場といわれているが」
「何だと!?古代の遺産を保存するどころか浪費しているというのか!」
リフィルがいきりたち、いきなり口調をかえていいつのる。
「ま、まあ、そのようなものだが」
「冒涜だ!こんなことが許されるわけがない!一体誰がそんな馬鹿な判断を!責任者をだせ!責任者を!」
「す、すまん……」
あまりの剣幕におもわず謝るリーガル。
たしかにいわれてみれば、考えもせずに使っていたのは事実である。
メンテナンスなどをしようにも、この仕組みはよくわからない。
こわれたらそのまま、というものもざら。
「ご、ごめん。リーガル。きにしないで!」
そんな姉の様子にきづき、あわててジーニアスがあやまってくる。
「う、うむ」
「さあ、姉さん、いくよ!」
有無をいわさず、いまだにわめいているリフィルをひっぱってゆくジーニアス。
あるいみ手慣れている。
「馬鹿だってさ~。誰だかしらないけど、ひどいいわれようだな。そいつ。でひゃひゃっ」
ゼロスがそんなリーガルによってきて笑いつついってくる。
「私は……」
リーガルが何かいいかけたとき、ロイドとリフィルがかけよってくる。
「リーガル。大事なことを聞き忘れてたんだけどさ…いたっ!」
「おい。詳しく聞きのがしたがどうしてここの機械は動いているんだ?今や採掘はしていないのだろう?」
たしか閉鎖された、といっていた。
それゆえのリフィルの問い。
さきほどのオートメーション云々、というのはここの機械に夢中で耳にはいっていなかったらしい。
ロイドを勢いよく押しのけたリフィルの迫力に対し、
「オートメーション化してあるからだが」
おもわず退きつつももう一度何とかこたえる。
「何!?自動的に動き続けるのか!?ああああ。分解したい。ここの設備のすべてを分解したいぃぃ!」
さっきからどうもいつもとリフィルの様子があきらかに違う。
それゆえに多少ひきぎみになりつつも、
「それはやめた方がいい。抑制鉱石の坑道へはリフトを使って奥へすすまねばならないからな」
「それだよ」
身をよじっているリフィルの前にロイドがでて、
「肝心の探し物がどこにあるのか、聞くのをわすれていたんだ。そのリフトとかいうのってどこだ?」
進みはしたが肝心の品物がどこにあるのかきいていない。
それゆえのロイドの問いかけ。
「心配するな。私が案内する」
「助かるよ。けど、何でこんなにくわしいんだ?」
ロイドの質問と、
「ねえ。ここにも扉があるよ」
ジーニアスの声はほぼ同時。
どうやら何かの装置らしきもので封じられているっぽい扉らしきものがたしかにそこにはある。
「…安心したまえ。抑制鉱石はこの先にはない」
その奥にあるのはエクスフィアの採掘場であり、目的の場所ではない。
だからこそのリーガルの言葉。
「何でそんなことしってるんだ?」
先ほど訪ねそびれたことを改めてといかけるロイド。
「…この鉱山で働いたことがある」
「…そう。じゃぁ、先をいそぎましょう」
リフィルもどうやらおちついたのか、いつのまにか元にともどり淡々といってくる。
「ふ~ん。あんたが鉱山でねぇ……ま~たまた。あんたが坑夫を?そんなわけないでしょうよ」
ここにはいれて内容もくわしく、さらにリーガルという名。
ここ、テセアラでしらないものがいないというのに。
なぜ、しいなは気づかないのか、そうおもいつつもゼロスがさらり、といいはなつ。
「ゼロス?」
「いやいや。こっちのことよ。ささ。いこうぜ。ロイド君。
か~わいい、プレセアちゃんとコレットちゃんのためにv」
ゼロスがどうやらリーガルの正体に気づいている…まあ知られているとはおもってはいたが。
ともあれ、そういってくる台詞をさくっと無視し、そのままリーガルは慣れた様子で坑道を進み始める。
途中にいくつか巨大な落石などもあったりはしたが、リーガルの指摘で、
そのあたりにとある箱の中に爆弾らしきものがはいっており、
それをつかうと岩はおもいっきり粉々に吹き飛ばされる。
「ここにある爆弾ってマナでできてるんだね」
「ああ。原理はわからないが、そういうことらしい」
爆発から感じたのはマナの奔流。
水のマナがこめられし爆弾。
激しい水圧はときとしてものすごい破壊力をうむ。
「いいな~。僕もこんな魔法がほしいよ」
ジーニアスのそんなづふやきに、
「お前のファイアーボールじゃ、岩も壊せね~し、ボタンも押せないもんな」
「…でもね。あんたをくろこげにするくらいはできるよ?試してみようか?」
軽口をたたいてくるゼロスを横眼でみて、ジーニアスが詠唱をはじめる。
「わ。馬鹿。やめろぉ!」
「馬鹿なことをやってないの。こんな狭い場所でそんな術をつかったらこちらが窒息してしまいかねないわ」
空気の流れがある程度はあるがゆえにそこまではならないであろうが。
そうこうしていると、また行き止まり。
「うわ。ここにも岩がある」
「さっきみたいに爆破しちゃおう!」
幾度目かの爆音が、周囲にとこだまする。
幾度か岩を爆発しつつすすんでゆくことしばし。
リフトをのりつぎつつすすんでゆくと、ロイド達の前に三角帽子をかぶった小さな男の子が一人あらわれる。
それは本当に手の平くらいの大きさの男の子。
「…何だ?こいつ?」
「おい。おめえら」
「わ!しゃべったよ!?」
ロイドがいい、その言葉に反応するかのようにそれがこたえ、ジーニアスが眼を丸くする。
「しゃべれるにきまってるだろ。なめんじゃねぇぞぉ。おいらはクレイアイドルだ」
「なんかガラわるいなぁ」
口調が悪い、どこの誰とはいわないが、何となく似ているとおもいちらり、とゼロスをみるロイド。
「おいらはお酒っていうものがくいたくて旅をしてるのさ」
「鮭?こんな山にあるのか?魚なんて?」
ロイドのあるいみ素朴なる突っ込み。
素でいっているのだからあるいみすごいといえるであろう。
「大人専用のいい気分になれるものってきているのさ~」
「…どうやらお酒のことをいっているようね」
お、をつけているのにどうして魚の鮭を連想するのか。
教え子のその思考にリフィルは頭がいたくなってしまう。
「おめえら、もってねぇか?」
といかけてくるクレイアイドル、となのったそれの台詞に、
「誰かお酒もってない?」
ふりむきざまにといかけているロイドの姿。
「ないわね」
「こんなことならもう一本くらいパルマコスタワインかっとけばよかったね」
もうパルマコスタのことが遠くに感じるが、ここはテセアラ。
もっともあのときかっていたとしても今までワインの瓶が無事であったかどうかは怪しすぎるが。
ジーニアスがそれにきづいていないのか、そんなことをいってくる。
「酒ならフラノールにフラノールバーボンという名酒がある」
淡々とリーガルがいい、
「ミズホ名物大吟醸 和誉 もわすれないどくれよ?」
しいながいうと、
「ほまれ!」
ゼロスがさけぶ。
「何だよ。びっくりするじゃないか」
「悪い悪い。いやその酒なら俺様がもってるぜ?」
彼は小さな
それからとりだす。
「あきれた。みずほ土産にかったのかい?」
しいながいうと、ゼロスはへらへらと首を横にふる。
「違うよ~。あの晩。どうしてももってけっていうから。俺様それだったらちゃんとお金を払うっていったのよ?
けど、どうしても受け取って♪の一点バリでよぉ…てぇ!」
正確にいえば、うけとれ、といっておしつけられたのだが。
ついでに厄介なことまで依頼された。
なぜにいちいちロイドを気にかけてやってほしい、など依頼してくるのか、あの男は。
そうおもうゼロスはおそらく間違ってはいないであろう。
「なぐるよ!あほ神子!」
「殴ってからいうなよ!」
黙ってそんなやりとりをみていたジーニアスがゼロスの手からさっと
「もっていないほうが安全みたいだから、あげちゃうよ。はい。どうぞ」
ジーニアスは大人の身長ほどもある大吟醸の酒んの壜をクレイアイドルにと渡してやる。
「おお~。これがお酒かぁ。かたそうだな~」
「中身をのむのよ?」
どうも入れ物そのものがたべもの、とおもっているのかそういうクレイアイドルに、
リフィルはまたまたため息をつくしかない。
そのまま、その小さなからだでよくもまあもてるもの。
とおもうが、それをひょいっと両手でかえ、そのまま坑道の闇の中へときえてゆく。
「ここが抑制鉱石の採掘場だ」
リーガルがようやく告げたのは、鉱山の最深部らしき場所にきたあたりにて。
ロイド達がみると、たくさんの木箱が無造作に積み上げられているのがみてとれる。
岩肌にも鉱石らしきものの姿が多少はみられるが、それは水晶であったりと様々。
「で、どれが抑制鉱石なの?」
ジーニアスにはどれがどれだかわからない。
「親父のところで幾度かみたことがある。探してみるよ」
ロイドはダイクが細工をしているときに現物をみたことがある。
そもそも、その抑制鉱石を採掘にいくのにもつれていかれた経験がある。
ゆえに原石もみれば一応はわかる。
「もしかしたら箱の中にとりもらしがのこっているやもしれん。
抑制鉱石があるとすれば、鉱石自体はおそらくは頑丈な箱にはいっているはずだが…」
そうでなければ底がぬける。
「なら俺は岩肌を調べるからジーニアス達は箱のほうを」
ロイドが岩肌をしらべ、ジーニアスが箱の中身を調べる。
箱の中身を調べるのが面倒になったのか、ジーニアスが近くにあった爆弾にて、
全部の箱を吹き飛ばしていたりしたようだが、どうやら鉱石自体はみつからなかったらしい。
「ああ。これだ」
鉱山の一番奥。
この中で唯一、現物を見たことがあるのはロイドくらい。
ここは、トイズバレー鉱山とよばれし場所。
今は閉鎖されたらしいが、岩壁をみるかぎり、まだどうやら鉱石はとれるらしく、
ところどころ鉱石の原石が岩肌よりのぞいているのがみてとれる。
それは鉱石の結晶体。
その中の一つにみおぼえのある結晶体をみつけロイドがしゃがみこむ。
「傷をつけないようにとらないとな」
こういう鉱石の発掘はダイクに鍛えられている。
それゆえにロイドが手なれた手つきで鉱石の結晶体を岩肌より掘りだしてゆく。
「ほう。手際がいいな」
「親父にいつも必要な鉱石はとりにいかされてるからな」
そして少しでも傷がつけばおもいっきりおこられて、あげくは食事抜きにまでなる。
あるいみロイドの手先の器用さは必要に応じて…さらにいうならば食欲にまけて培われた、
といっても過言でない。
ロイドが器用にもそれをほりだし、もっていた皮袋の中へとしまいこむ。
簡単な要の紋だけでいいのならばこれにちょくせつまじないを加えればどうにかなるであろうが。
とりあえず。
「もういっこのほうに、直接まじないの言葉を刻みこむよ。プレセアのほうはそれでどうにかなるかもしれない」
失敗してもいいように、ちょっとした両の…数個の原石を掘り出しつつ、
そのうちの一つに器用にもそのあたりにある鉱石をほりだし、その先にて文字を刻みこんでゆく。
ざっとみたかぎり、この鉱山にはいろいろとあるらしく、ダイヤの原石らしきものまでみてとれる。
するどくとがっているそれをみてロイドが刻むのに便利、とおもい掘りだしたもの。
ちなみに色は青。
加工すればブルーダイヤ、としてそこそこの価値はでる品であるが、ロイドはそれにきづいていない。
急ぎ足にて坑道ので出口付近までもどってくると、
「…だめだ。このあたりにもエクスフィアはない……」
声が坑道の中にひびいてくる。
わん、とした声がひびくのは、ここが洞窟の中だから、であろう。
「あれは…」
顔見知りなのかゼロスがづふやく。
「…!ヴァーリ!」
「!」
ヴァーリ、とよばれた男はリーガルにするどく名をよばれ驚いたような顔をうかべる。
そして。
「!リーガル!そうか。外のガードシステムを破壊したのはお前だったのか」
リーガルの表情はとても厳しい。
「誰だ?あれは……」
ロイドの疑問に、
「あいつは…エクスフィアブローカーのヴァーリだ」
ゼロスが淡々とこたえる。
「そんなのがここにはいるの!?」
ジーニアスのおもわずの叫び。
つまりは、仲立ち人。
エクスフィアをつかい、商売をしているもの。
「何でこんなところに……」
ゼロスがいうが、すぐさまにおもいあたる。
数年前にここが閉鎖されてからこのかた、ヴァーリはこの鉱山を手にいれようといろいろとしていた。
そのために彼の恋人まで利用したくらいなのだから。
「きさま!なぜここにいる!教皇はなぜおまえを野放しにしてるのだ!私との約束が違うではないか!」
いつもとは違うリーガルの様子にロイド達はおもわず声を失う。
どちらかといえば寡黙な印象でしかなかったリーガルの印象がまったく覆されたといってよい。
「ハハハ。教皇様がいくら無罪になったとはいえ、人殺しの罪人と本気で約束をなさると思ったか?
お前こそコレットをつれてくるという約束をわすれて仲間になりさがってるじゃねぇか?」
「だまれ!教皇が約束を果たさぬというのならば、私がみずから貴様をうつ!」
リーガルの顔は怒りからか蒼白になっており、怒りのあまりか重たい手枷までがぶるぶると震えている。
「冗談じゃねぇ。ずらかるぞ!」
ヴァーリは手下、であろう部下たちをうながすと、そのまま鉱山の外へと逃げ出してゆく。
「リーガル。今のヒトは何なの?」
リフィルの問い。
「それに、人殺しの罪人っていってたけど……」
ジーニアスの問いかけ。
「…私は人を殺めた罪をつぐない中だ。裁判で無罪になったが罪がきえたわけではない。
ゆえに自らを戒めるためにもこの手枷ははずせぬ。…軽蔑してくれてかまわん」
「無罪、ということは何か理由があったのね?」
リフィルの問いかけにリーガルはしばし無言になり、そして
「……手をかけたのは事実だ。それは何ものにもかえられない事実でしかない」
「何があったんだ?」
「いえばいいわけになる。私は罪を背負ったのだ。それでいい」
問いかけたロイドにたいし、そういいうつむくリーガルにロイドは何といっていいのかわからない。
「…俺さ。俺…俺の馬鹿な行動のせいでたくさんの人を…殺しちまった。
…あんたが何をしたのかしらないし、罪は消えないけど。
苦しいとき、苦しいっていうくらいはいいとおもうよ」
「この子ならきっとこういうわよ。人の心の中に神様はきっといるって」
「神様も一緒になって罪を背負ってくれる、そういいそうだな。こいつは」
こんな光景をみてもコレットは身動き一つすらしない。
それが…ロイドからしてみれば悲しい。
「絶対にコレットをたすけよう。ね。ロイド」
「ああ!」
「…いずれ、話す機会が与えられれば、その時には……すまない…、今はそれよりオゼットへもどらねば」
抱えているものを再び胸の中へしまいこんだのであろう。
さきほどまでの激怒していたリーガルの姿はどこにもみられない。
リーガルがなぜこんなにもプレセアのことを気にかけているのだろう、とロイドはおもう。
訪ねたいことは次から次へとうかんでくる。
ロイドとて自分のせいで人をあやめてしまった、という自覚がある。
話しをきけばどうにかできるわけではないが、すこしでもわかる…とおもいたい。
それに教皇とも何かあった模様。
無罪などといわれていたので何か理由があっての正当防衛のようなものなのかもしれないが。
そんな中、ぽそり、と
「…あんたは…人を…殺したんだ……」
ジーニアスがそんなことをいってくる。
「…そのとおりだ」
「・・・・・・・・」
「すまないな。罪人と旅をするのはつらかろう。
しばし我慢してほしい。プレセアをエクスフィアの呪縛から解き放つまでは。
できうればあの娘をも助けてやりたいところだが、無理はいうまい。
お前たちと私とのような罪人が一緒にいてもいいことはないだろうしな」
周囲のものは仕方がなかった、という。
あのようになったものをたすけるのには殺すしかなかったのだ、と。
それでも、彼女を守ってやれなかった心の傷は大きい。
はじめて心をゆるせた女性であった。
身分など関係なく、傍にいるだけで心が温かくなり、穏やかになれた。
なのに……
だからこその、枷。
だからこその罪。
愛するものを手にかけてしまった…罪の象徴とした、己の手の枷。
「…僕は…僕も人殺しだ」
そんなリーガルの想いはジーニアスにはわからない。
わからないが、ジーニアスとて思うことはある。
「…?どうしたのだ?」
「身をまもるために…たくさんの人を傷つけてきた」
それも同胞ともいえる同じハーフエルフ達…ディザイアン、となのっていても、彼らは同胞。
そう、同じ血…ヒトとエルフの血をもつ同胞。
その考え方の違いはあれど。
「・・・・・」
「あんたがやったことがどんなことかはしらないけど…
でもあんたが人殺しただから。それでここから出ていけとはいわないよ」
それに、しらなかったこととはいえ、マーブルに攻撃をしかけた。
自分が彼女にかかわったゆえにマーブルはあのような最後をむかえた、というジーニアスには自覚がある。
だからこそ人を責められる立場にない、と十分に理解してのその台詞。
「…そうか」
「みんな…同じだから」
この旅の中、誰かを傷つけていないものはいないであろう。
世界再生の旅、そういえばきこえはいいかもしれないが。
それでも傷ついたものは数しれず。
それに何より、コレットをたすける、ということはシルヴァランドの人達をあるいみ見捨てたも同意語。
それが偽りの平和であったにしても、あのときの自分達はそのことを知らなかったのもまた事実。
それでも、コレットをたすけたかった。
…レミエルがコレットのことを娘だ、と偽っていたことに憤りを感じた。
コレットは父親のために頑張っていたのをジーニアスはしっている。
そして、村の中で両親…として育てられた親達からも天使の子としてあつかわれ、
意場所がなかったコレットのことをジーニアスはしっている。
それは、ハーフエルフの自分がいつも一人であったそれとおもいっきり重なった。
神子ときいて畏縮していた当初だが、話してみれば普通の女の子で…かなり天然であったが。
それでもロイドがいなければジーニアスは自らコレットに話しかける勇気すらなかったのもまた事実。
「すまないな」
リーガルがそんなジーニアスにと謝罪をのべる。
「でも!それとこれとは別!僕はあんたのこと好きじゃないからね!」
プレセアとどんなかかわりがあるのかはわからないが。
すくなくとも、異様にきにかけるこのリーガルというヒトをジーニアスは好きにはなれない。
その感情をジーニアスは理解していない。
「そうか」
だがジーニアスのそんな台詞にも、リーガルは淡々と答えたのみ。
それがいらだつ。
プレセアとの関係もそうだが、彼、リーガルがプレセアのことを気にかけているのがわかるから。
そのいらだちが八つ当たりだとわかっていても、ジーニアスには初めていだいたこの感情をとめられない。
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あとがきもどき:
薫:そろそろ雷の神殿です。CSS設定さん、もしかして半角あいてるのが映らない理由か?
タグをよくよくみてたら半角あいてる箇所が…なぞ・・・
2013年6月28日(金)某日
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