まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
ようやくここまできた。アルテスタさんの家~
ちなみに、これ、ゲームと順序が逆になっているところも多々とあります。
コレットが浚われるのが一回でしかなかったりとか(まて
ともかく編集、編集……
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「なあ。リーガル。あんたなんでそんな手枷をつけてるんだ?」
どうやら気になっているらしい。
いきなりぶしつけにといかけているロイド。
「…これは、我が罪の象徴」
そんなロイドに淡々と短く簡潔にこたえているリーガル。
「…手枷が象徴する罪?」
「・・・・・・」
ロイドが首をかしげしばしかんがえこむが、リーガルは無言のまま。
「わかった!手錠泥棒だな!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「…あれ?ちがってた?じゃあ。周りの人に手枷をつけてまわって迷惑をかけたとか」
「…すまない。もうすこしわかりやすく話してやればよかったな」
どうすればそのような解釈になるのか。
ゆえにリーガルとしてはため息をつくしかない……
「レアバード。うまくみつかるといいね」
あれがあれば移動が楽になる。
それゆえのジーニアスの台詞。
「ミズホの情報網は伊達じゃないよ。きっと見つけ出してくれるはずさ」
ほこらしげにきっぱりといいきっているしいな。
「ミズホの情報網はまじすごいらしいぜ。テセアラ中の財宝のありかを知ってるって話しじゃねぇか」
「そうさ。あたしたちが本気をだせば調べられないことなんてありゃしないよ」
エルフの里の情報までみずほの民は調べつくしている。
「そっか。たよりになりそうだね」
「あ~あ。テセアラ中の女の子のスリーサイズ。調べてくんね~かな」
「あほ神子!」
光と闇の協奏曲 ~ドワーフのアルタステ~
「しかし、本気なのかねぇ。ここの頭領さん達はよ」
外にでるなりのゼロスの独り言。
「しばらくふせってたっていうけど、病気なの?しいなのお爺さん?」
さずかに、お爺ちゃんとかいいかけていたのでジーニアスもわかったらしい。
「あ、いや…」
そもそもいつ目がさめたのかすら、しいなは知らなかったのである。
あの儀式のあと、一度も目覚めなかったはずの頭領。
もどってきてみれば目がさめていたことにびっくりしたのは記憶にあたらしい。
ついでにいえば、目覚めていた祖父に驚いてそれどころではなかったのもある。
さらには知り合あえるはずもない、はずなのに、エミルと祖父が知り合いであることにも拍車をかけている。
そんな中、ふとロイドが手枷の男に目をやりつつまだ聞いてなかったことにきづいて問いかける。
「あんた、名前は?」
「…リーガルだ」
「リーガル。か。あんたには悪いけどしばらくこのまま捕虜でいてもらうぜ」
「ええ~?ロイドくんよ。このおっさんにも戦わせたらどうだ?」
そんなロイドにゼロスが割り込んでいってくるが。
「裏切るかもしれないのに?コレットに傷つけようとするかもしれないじゃないか」
ジーニアスの否定のことばに、ちっちっちっといいつつ指を左右にふりつつも、
「プレセアちゃんに用事があるんだろ?このおっさんは。
だったらちびちゃんから話しがきける状態になるまで俺達に危害は加えないんじゃないか?
この際、人ではちょっとでも多いほうがいいでしょうが」
「そうね。悪くないアイデアだわ」
「!姉さん!」
そんなゼロスの提案にリフィルが賛成する。
「うさんくさい気もするけど。まあいいさ。あたしも最初は敵だったんだし」
しいなもまた賛同の意を示す。
「…と、いうことらしい。どうだ?一時的でも俺達の味方として戦えるか?」
「…よかろう。我が名とこの手のいましめにかけて決して裏切らぬと誓う」
「少しでもおかしいそぶりをしたらくろこげにするからな」
ジーニアスがリーガルを睨みつける。
「そうときまれば、リーガル。その手枷、はずしてやろうか?あたし、錠前はずしって結構得意なんだよね」
「その必要はない。これは我が罪の象徴…」
しいなの申し出をそっけなく断るとリーガルは目を伏せる。
「…あっそ。変なやつだねぇ」
しいなは肩をすくめたが、ゼロスがきょろきょろと辺りをみわたしているのにきづき、
その背中をばしっとたたく。
「いたっ!」
「あんた、里の女の子に変なことしたら承知しないからね!」
「俺様が何をしたよ!ひどいなぁ。里の景色をみてただけじゃないのよ。だってみてみなよ!
あの畑なんか魔物と一緒に人がたがやしてるぞ!?」
たしかにみれば、魔物と一緒になり人がどうみても畑仕事をしているのがみてとれる。
魔物が土をたがやし、他の魔物が土をもり、そこに人がくわをいれる。
何とも不思議な光景。
「…しんじられないわ」
リフィルがその光景をみておもわずつぶやくが。
「ついこの前まで…昔はこれが当たり前の光景だったんですけどね」
エミルがふとさみしそうにおもわずつぶやく。
いつのころからか人は無意味に魔物をおそれるようになり、
魔物達と人の繋がりがほとんど途切れてしまった。
そのころからだろう。
人が自らの欲のままに行動しはじめたのは。
「昔?僕もこんな光景みたことないよ?」
ジーニアスが首をかしげるが、エミルはただ笑みをうかべるのみ。
ちなみにエミルのいう昔とは、かるく数千年以上、もしくは一万年以上昔のことだったりする。
「お。やあ、ハニ~」
そんな会話の最中、ちょうどそこに通りかかった若い娘にたいし、
ゼロスがにこやかに笑いつつも何やら声をかけている。
『…はぁ~』
そんなゼロスをみて、まったく同時に、
しいな、ロイド・ジーニアス、リフィルの四人のため息が重なる。
気になったらしく、ロイドが畑仕事をしている人のところにいってきいてみたところ、
「畑仕事も修業となる。クワをふるって畑を耕すのは結構体力がいる。
すべての事柄に対して修業という意識をもてば何でも修業となる」
などといってくるそんな人物に対し、
「魔物がいますけど?」
「関係ないよ。そもそも世の中に不必要なものはないんだよ。
この魔物にしても然り。彼らは土を耕すことにかけては右にでない。
彼らがいることにより土がよく肥えるんだよ」
なぜか魔物達が一列に並んでそのまるっとしたいもむしのような体をまるめ、
頭らしきものを地面にこすりつけているのがロイドとしては気になるが。
他にも幾人かの話しをきいてみたが、
あまり益になるような会話はなく。
「お地蔵さんにお供えものをしていました。お地蔵さん。ご存じですか?」
「ふふ。おもったより普通の村でしょう?」
そんな中。
「皆さんのお仲間のその小さな女の子は私の諜報活動期間中には歳をとっていないと思います。
それも実験の影響なのでしょう」
「…実験?」
「ああ。あなた方はまだ御存じではないのですね。
その子はメルトキオにてエクスフィアの実験体として扱われていた子です。
何でも新しい方法をためすのに適合したから選ばれた、とのことですが。
彼女の妹さんは適合しきれずに暴走し死んだと私たちの諜報活動にて判明しています」
「死!?」
「ちょっとまってよ。ブレセアが歳をとっていない…それって、いったい?」
「彼女が実験体に選ばれたのが十四年前のはずです。それから彼女は歳をとっていません」
プレセアの見た目はどうみても十三かそこらである。
「ま、まっさかぁ」
ジーニアスがいう。
ならばもうプレセアは二十歳すぎていて、しかも姉よりも年上ということになる。
どうみても自分と同じくらいなのにそんなのはありえない。
ゆえにからかわれている、そう捕らえているジーニアス。
しいなとゼロスの顔が曇ったことに気づくこともなく。
結局のところ、いまだに兵士達が森をうろうろしている、ということもあり。
ロイド達は頭領の進めもあり本日はこの村にてやすむことに。
翌朝。
ようやく森にいた兵士達が引き揚げたという報告をきき、ロイド達は里をでる。
このままプレセアが一緒にすんでいるというアルタステというドワーフのもとにいく。
それで話しはまとまっている。
「きっと、ご両親も心配しているでしょうね」
「でもさ。この子、アルタステとかいうドワーフのところに住んでるんだろ?俺ともしかして一緒なのかも」
ロイドもドワーフに育てられているのでその可能性もなくはない。
それゆえのロイドの台詞。
「しかし、そういうことをいっていると、リフィル様、やっぱり先生って感じだよなぁ」
ゼロスがそんなことをいってくるが。
「それじゃあ、一言いわせていただくけれど。団体行動の際に単独で夜遊びはよくなくてよ?
エミルは相変わらず野宿したみたいだし……」
「い!?バ、バレテタ!?けど、俺様はただ散歩してただけだぜ?あんまりいい月夜だったからさ~」
しいなが片眉をあげる。
「ウソつけ!このあほみこ!」
「嘘じゃないってば!」
「ゼロスは普通に散歩してたよ?」
まあ、人にあっていたのは事実だが。
あれはしいなのいっていたようなものではない。
どうでもいいがゼロスに依頼をするくらいならばミトスをどうにかしろ、とエミルからすればいいたい。
切実に。
「エミルもあなたもいい加減に私たちと休みなさいな」
「遠慮します」
「即答!?」
「一人のほうが気楽なので。それにいつ何があるかわかりませんし」
何かあればすぐさまに消えて移動するのだから人がいないほうが都合がいい。
「本当にこいつ、女のところにいってたりしなかったのかい!?」
「女の人はいなかったよ?」
いたのは男である。
どうでもいいが、クラトスの考えがよくわからない。
どうやら何か決意したような感じはうけたが。
「さっきの人の名前は何ていうの?しいな?」
「え?ああ。おろちかい?一応あたしの幼馴染の一人さ」
「とにかく。急ぎましょう。また暗殺者をさしむけられてはたまりませんからね」
森閑の村、オゼットは山間にひっそりと息づく小さな集落。
村の入口についたとたん、突然走り始めるプレセアの姿。
「あ!」
ジーニアスが声をあげる。
「プレセア!まってよ!ロイド、はやくおいかけようよ」
「あ、ああ」
ロイド達がとまどっていると、一人の老婆がちかづいてくる。
「おまえさんがた、今、プレセアといったかい?」
「ええ。あなたはどうやらこの村の人のようですね。
ではブレセアのことは御存じですよね?あの子のご両親は…」
リフィルが問いかけると老婆は露骨に顔をしかめ、
「…あんな、呪われた子…」
「え?今、何て?」
ジーニアスが尋ねる。
「あの子にかかわるのはおよし。
あの子は病気の父親のかわりに、とても子供に扱えるはずのないような大斧をふるいはじめた。
そのときから歳をとるのもやめておかしくなってしまったんだよ」
「そういう考えだから差別もなくならなければヒトが争うこともなくならない」
エミルがぽそり、という。
そして。
「あなた達はその原因をつきつめようともせず、どうせ迫害することで心の安定を保とうとしたのでしょう?
おおかた、父親が生存していたときもよそものとかなんとかいって
迫害、もしくは無視していたのでは?ヒトのやりそうなことだ」
エミルの指摘に露骨なまでに顔をしかめる。
「お前に何がわかる。この村によそものがきたらロクなことにはならない。
なのにあの子の父親はこの村にすみついた。
あげくは病気なんてものになってようやく死んだとおもったのに。
せっかく厄介払いができるかとおもったら今度は村の外れにまたよそものがすみついて!
全てはあの親子がやってきてからろくなことはない!」
「ひどい。そんないいかた…」
ジーニアスがそういうが、ヒトとはそういうもの。
「そうして何でもかんでも人のせいにして、自分達だけ正しい、とおもって。
何かかわりました?何もかわらないでしょうに。本当に愚かでしかない」
「エミル。いいすぎよ」
リフィルの言葉にエミルはただそっぽをむくだけ。
「ふん。あんたらよそものもこの村にはたちいってほしくないね。
この村は神聖な場所。あんたらのようなものが達いるべきではない」
御神木などといわれている木があるがゆえに変にプライドばかりが高くなっているこの村の人々。
自分達は選ばれたものだなどと勘違いしまくっているのだからロクなことはない。
「と、歳をとらないなんて。…何馬鹿なこといってるんだよ、ねえ?」
ジーニアスがいうが、リフィルはみずほの里できいたことを思い出す。
あのみずほの民、そして今の老婆の言葉。
二人も冗談をいうとはおもえない。
ならば。
導きだされる答えは一つしかない。
おそろしいまでの答えしか。
「…もともと、ここは御神木といわれている木を乱獲から防ぐためにひっそりと暮らしていた村だからな。
ずっとあの地で生活しているやつにとっちゃ、よそものは神木を乱獲、もしくは奪う悪。
さらにはろくに話しもせずに大斧を振り回す娘が不気味でしょうがないんだろ」
ゼロスが淡々とそんなことをいってくる。
事実この村はよそものを嫌う傾向にあるのをよくしっているがゆえのゼロスの言葉。
「何だって!?そんなのプレセアがわるいんじゃないよ!」
「わかってるって。そうムキになるなよ。お子様だなぁ。一般論をいっだけだろうが。
人はわかっていても感情はわりきれないってことさ。
何かあれば自分達とは少しでもちがうものをみつけて異物と排除し差別して心の安定を図ろうとする。
ジーニアス。おまえさんだってそうだろうが。
おまえさんもよく、これだから人間は、とかいってるよな。それと同じことさ」
「そ…それは……」
ゼロスの指摘にジーニアスも言葉につまる。
たしかに自分はよくいっている。
これだから人間は。
と、あるいみ冷めた目で差別しているのは確かなのだから。
その根柢には自分達が差別されているのだから差別して何がわるい。
という思いがあるのも確かな事実。
それをぐさり、と指摘されたかのようにジーニアスは言葉がつむげない。
「まあ、エミル君の場合ははじめっからはばかることなくヒトは愚か、といいきってるからなぁ」
苦笑してエミルをみてくるゼロスだが、
「事実愚かでしかないし。なげかわしいったら。
少し譲りあえばそれぞれに互いを高めることもできるのに、
自分達のみがよければいいという変な思い違いをしまくって。
自分達が何にいかされているのか、それすら忘れ去ってしまっているヒトを愚かといって何がわるいのさ。
ヒトがたべている全てにも命はあるというのに。
その食事における命の恩恵すらヒトは忘れてしまっている」
確かにエミルのいうとおり。
人はそこにあるのがあたりまえ、とばかりに恩恵をわすれている。
「…エミルの人間嫌い、とことんだよな…でもお前だってエミル。人なんだぞ?」
ロイドの言葉にエミルは答えない。
そのかわり。
「なら。ロイドもきちんと好き嫌いはやめてよね。
せっかくだされた食事は命を奪ってそこに食料としてだされているのに。
ロイドは嫌いだからって絶対にトマトたべないよね?」
「うっ!そ、それとこれとは話しがちがうだろうが!」
「いっしょだよ。命をないがしろにしている、という点ではね」
何だか論点をずらされたような気がするが。
「確かに。好き嫌いはよくないわよ。ロイド」
「先生まで!?」
「・・・リフィルさんは料理を実験がてらに利用して食材達の命を無駄にしてほしくないんですけど」
「…う」
何だかほこさきが自分にむかってきている。
ゆえにリフィルとしても言葉につまる。
「と、とにかく。プレセアをはやくおいかけようよ、ね!」
場の空気がわるくなってきたのをうけて、ジーニアスがあわてていう。
「たしかに。今はあの子をおいかけるのが先だね」
エミルの言い回しはときどき自分は人ではないような言い回しをすることがある。
シルヴァランドでも時折感じていたがそれが最近よく感じてしまう。
きのせい…だよな?
しいなはそうおもうが、実はそれが本質をついている、などしいなはまだ気づかない。
否、気づくことができていない。
プレセアはどうやら村をぬけきったらしく、その後につづいているのは森の中のけもの道。
どうやらそちらにむかっていったらしい。
しばらくすすむと険しい山道にとさしかかり、そこにつづく道のようなもの。
その道をしばらくすすむとやがて山肌に張り憑いている玄関らしき扉がみえてくる。
一本道であったことから、おそらくプレセアはこの中であろう。
扉をノックしても返事はない。
まつことしばし。
郷をにやしてロイドが扉に手をかけると、ゆっくりと扉が内にとひらかれる。
その反動でおもわずロイドが尻もちをついてたりするのだが。
「ドチラサマデスカ?」
カタコトのような言葉で扉からでてくる緑の髪に緑の瞳をしている少女。
薄緑色の長い髪は後ろでひとつにみつあみにされており、ヘアバンドをつけている。
長けの短い服からはすらりとした足がのぞいているのがみてとれる。
「あのう。ここにドワーフが住んでいる、ときいたんですけど」
ロイドの問いかけに娘はゆっくりとうなづき、
「マスター、アルテスタへ御面会ですね。どうぞ!」
抑揚のつけかたがどこかおかしい一本調子な話しかたで答えてくる。
「一風かわったハニーだなぁ」
「し」
しいなはゼロスをにらむとロイド達につづいてそのまま家の中へ。
「あ、プレセア!」
ふと壁のところにプレセアがたっているのをみておもわずジーニアスがかけよる。
ロイドは部屋の壁にさまざまな道具類がかけられているのをみて、
ダイクを想いだして胸があつくなっていたりする。
「うん?なんじゃい。お前たちは…と、神子ゼロス様ではないですか」
その奥にいる人物がこちらにきづき・・・ゼロスに気づき声をかけてくる。
小柄な男性が一人、そこにいる。
「よ。アルタステ」
「ではまたブレセアをここまでつれてきてくださったのですね。そっちのものたちは?」
いいつつも、コレットにと視線をとめ、そしてその胸元にと目をとめ思わず目をみひらく。
「それは…まさか、クルシスの輝石!?」
「この子はシルヴァランドの神子さ。どうも天使疾患にかかってるみたいなんだ。
あんたなら何とかできないかとおもってね。アルタステ」
しいながコレットをちらり、とみながらも説明してくる。
「あなたが、アルテスタさんですか?私はリフィルといいます。
どうか、この子が元にもどる方法を教えてください。
王立研究院で特殊な材質によりつくりし要の紋が必要、ということはききましたが」
リフィルの問いにアルテスタはただ無言のままで、
そのままコレットのほうにとちかづき、しばし観測する。
「…たしかに、天使疾患のようじゃな」
そうつぶやく様はどこか憂いを含んでいる。
「気になってたんだけど。何でここでも天使疾患という言葉があるのさ?
あれは姉さんがいいだしたとばかりおもってたけど」
ジーニアスの素朴なる疑問。
「歴代の神子のなかには体とクルシスの輝石が融合してうまれちまった神子が幾人かいる。
そうきかされてる。そいつらは、皆感情をもたず、常に美しい光りの翼を表したという、
すなわち、名づけて天使疾患」
ゼロスがそんなジーニアスに答え、
「それを直してきたのが細工師の血統、ドワーフ族。
そのやりかたをうけつぐ最後の一人がアルテスタ。といわれてるのさ」
ゼロスにつづいてしいなが説明する。
「この石…エクスフィアとは微妙に構造が違うようにおもえるが。
だが、現れている症状は天使疾患そのものだ。おそらくこれは神子と同じくハイエクスフィア。
エクスフィアの進化系にあたるものだろう」
「ってことは、直す方法があるってことだろう?」
ロイドの質問。
「いかにも。特殊な鉱石でエネルギーの流れを調節すればいい。
一般に要の紋、と呼ばれているが。普通の要の紋ではおそらく進行をただ止めるしかできまいて。
完全に制御するには特殊な鉱石や材料が必要のはずだ。マナの欠片に…」
「マナの欠片とジルコンをユニコーンの力で調合されたルーンクレスト。
それを元にしてつくられしもので中枢にマナリーフの繊維を利用。
これが王立研究院で私たちがきいた材料ですわ。何か他に必要ですか?」
さすがに詳しく覚えているらしく、リフィルが追加で説明をつけくわえる。
「いや。どこでどう調べたのかはわからぬがな。
ハイエクスフィアの制御に必要なものはたしかに。
マナの欠片とジルコンをユニコーンの術で合成し、マナリーフで結ぶルーンクレストを作成する。
その中枢にマナリーフの繊維を利用したものを要の紋となしとりつけることで、
ハイエクスフィアの力を制御、抑えることができる。失われし技術じゃ。
すでにユニコーンは絶滅し、この世にはおらぬ。マナリーフはどこにあるかわからんしの。
ゆえに正しき要の紋をその子に取り付けることは不可能じゃ」
この世界においてすでにユニコーンは絶滅しすでにお伽噺の中でしかみられないもの。
それゆえの台詞。
「ユニコーンの角ならありましてよ」
「そうだよ!ユウマシ湖のユニコーンの角!」
今まで使うことがなかったのでずっとリフィルがもったままのそれ。
「角があってもな…今のわしには要の紋をつくることはできぬ…」
「何でだよ!?」
そんなアルテスタにたいし、ロイドがさけぶが。
「…わしはかつて、クルシスの元で、人造ハイエクスフィアの研究にかかわっていた。
クルシスは人を仮死状態のまま培養し、命を苗床にしてハイエクスフィアを創っていた。
だが、研究ははかどらなかった。その後に牧場とかよばれるところで新たな試みがなされた。
それは通常のエクスフィアを埋め込みしものを母体となし、
あらたなエクスフィアを埋め込み直す、という計画。エンジェルス計画と呼ばれていた。
仮死状態にて培養したエクスフィアはほとんど意識がある培養体と比べ、
成功率は低く、ハイエクスフィアになりしものもありはしたがすぐさまに限界が訪れていた。
…あたらしいやり方が試されることになった。地上においてエンジェルス計画を起動させるのに、
まずは先にクルシスが率先し。…サイバックの研究施設に儂はうつされた。
その地下施設にて、連れてこられた娘…それが、そこのプレセアじゃ」
いってプレセアをちらり、とみて。
「…その子のエクスフィア自体は珍しいものではない。
ただ、要の紋に特殊な仕掛けがしてあっての。その要の紋は抑制鉱石ではつくられておらん。
本来なら数日で行われるエクスフィアの寄生行動を数十年単位に伸ばしているにすぎん。
それでエクスフィアはクルシスの輝石に突然変異することがあるらしい。
仮死状態において命をのばせしものの中で突然変異する石もいくつかあった。
それゆえに新たな実験として選ばれたのが…」
その声には後悔の色が浮かんでいる。
「…まさか、プレセアの感情反応が極端に薄いのは……エクスフィアの寄生がはじまっているからなの?」
「それじゃあ、コレットと同じじゃないか!」
リフィルの問いとロイドの叫び。
「…幸い、要の紋に細工を施した実験は完全には実を結びはしなかった。
その前に地上においてクヴァルというものがハイエクスフィアの人工製造に成功した。
という報告があった。
じゃが、成功していたはずのエクスフィアは培養体の女とともに消失したときく」
その言葉にロイドがおもわず息をのむ。
それが誰を示しているのかいわずともがな。
「このままだと、この子はどうなるんだ?」
「このままでゆくと…この子は、死んでしまう。マナの結合が不完全で長くはもたんじゃろう。
…やがて、砕け散る。エクスフィアの寄生が終わるということは、
その全てのマナを喰らい尽くす、ということじゃからな。
成功していたとしても、失敗していたとしても、この子は…長くはもたぬ」
「そんなのひどいよ!たすけられないの!」
ジーニアスが叫ぶが制御できないものを創ろうとしているのもまたヒトにすぎない。
「助けられるならとうにしておる!じがわしは、この子を監視する、という名目のもと、
この子をあの施設から救いだすことができたのがやっと。
クルシスの…サイバックの研究施設からわしが出てゆくための条件、としてな。
今の儂は…要の紋をつくることは、もうできん。要の紋が壊れていようとも、な。
新たな要の紋を身につけることができればせめて感情くらいは取り戻させられるかもしれんが」
「そんな!プレセアがいったい何をしたっていうのさ!」
いまだに理解できていないのかさらにジーニアスがわめく。
「何もしとらん。ただ適合検査にあっていただけ。
ここ、テセアラでは適合検査が適合しているものは、何かと都合をつけて実験体にまわされておる。
…よりよいエクスフィアをつくるためにの」
今のこのテセアラのありよう。
教会に洗礼をうけるとともに、適合検査までここ近年では組み込まれているときく。
そして、適合検査に的していたものは、理由をつけて旅業や、
もしくは話しをつけて実験体にされたり、もしくは旅業の中で行方不明扱いとなり、
そのまま実験体として浚われていたりするのがここ、テセアラの実情。
「一応きくが。それを命じたのは?」
ゼロスもそのことを調べてはいるがなかなか尻尾をつかませない。
また証拠をのこしていないのでどうにもできない、というのが今の実情でもある。
それゆえのといかけ。
「…ユグラシドル様の命をうけた教皇だときいておるが。国王陛下はたぶんしらんじゃろう」
「やっぱり。あのひひ爺のさしがねかよ」
アルタステの返答に吐き捨てるようにいいはなつゼロス。
その言葉には嫌悪感がありありとみてとれる。
「教皇とディザイアン達は繋がっている…そうおもって間違いなさそうね。どうなのかしら?ゼロス」
「あのひひ爺が何をかんがえてるのかはわかんねえけどな。
まあ、昔から俺様を目の敵にして、暗殺者なんてよくしむけてきやがるからな。あいつは」
リフィルの問いに頭をかきつつもこたえているゼロスだが。
「穏やかでないわね」
「俺様をなきものにして、妹を神子の座につけたいのさ。素直にいうことをきくお飾りがな」
そんな会話をしているリフィルとゼロスとは対照的に、
「まてよ!どうしてあんたが要の紋をつくらないんだよ!」
怒ったようなロイドの声。
「ロイド君。すこしは頭をつかおうぜ?クルシスに捕われていたはずの爺さんがここにいる。
というその意味をな。少しは疑問におもおうぜ?」
「…あ」
ゼロスにいわれるまでおもいもつかなかった。
「…そう。もう爺さんは要の紋をつくらないんじゃない。創れないんだ」
「…その通りだ。…クルシスから逃れるには…それしか方法がなかった……」
自らの手の骨をこなごなにと砕いた。
二度とつかいものにならないように。
「だ、だったら!創り方をおしえてくれ!」
「人間には無理だ」
「俺はドワーフに育てられたんだ。細工くらいできる!普通の要の紋のまじないならば直すこともできる!」
「…その剣……」
「え?これは、親父が…旅にでるときに選別だっていって……」
「だろうな。他に何か腕を証明するものは?」
「ロイド、ほら。あのペンダント」
ジーニアスが何かにきづき、そういうが。
しかしあれはロイドの腕がまだまだ、と証明してしまうようなもの。
それゆえにロイドの顔は暗い。
「これはダメかしら?この子が壊れていたまじないとかいうのを修理してくれたのだけども」
いって要の紋をはずしアルタステにとてわたすリフィル。
「…なるほどな。まじない原語は完璧だな」
それをしばしみるが、そこにかかれている天使言語に誤りはない。
「クルシスはエクスフィアをあれほど量産して何につかうつもりなんだろうね?」
シルヴァランンドで牧場などというものをつかい製造していただけでなく、
こちらの世界でも行われていたことに戸惑いをかくしきれない。
それゆえのしいなの台詞。
「通信販売でもするんじゃねえの?
真実、レザレノ・カンパニーはエクスフィア鉱山で一気に財をさらに広げてる。
エクスフィアがとれる鉱山はかのカンパニーしか所有してないからな」
「他に心当たりはなくて?」
「ないな。ないない。ドワーフの技術は門外不出。
ロイド君があのバザーで手にいれた要の紋を修理できたとしても、
あれでプレセアちゃんのほうはどうにかなるにしても。コレットちゃんのほうはね」
何でもあの要の紋もかなり古いので打ち直しする必要があるらしい。
ロイドがそういっていたがゆえのゼロスの台詞。
「…みろよ。この世界にもあるんだな。救いの塔…改めてみるのは初めてのような気がする」
夕闇の中、遠くにみえるは救いの塔。
コレットをつれて夕焼けをみるが、あいかわらずコレットは無反応。
ふと背後に気配をかんじみてみれば、いつのまにかアルタステがこの場にやってきている。
「…この手を潰してしまったが、プレセアは救えない…
あの子はそれでも失敗したとはいえ融合は成功した。そのせいで家族も選ばれてしまったというのに」
淡々と背後からそんなことをいってくる。
「…ブレセアの家族?」
「……融合に失敗した、ときいている」
「それって…まさか……」
エクスフィアの融合に失敗、もしくは暴走したものの成れの果てをロイドは知っている。
「…だからといってあのままサイバックで研究をわしが続ければ、
これから先ももっと多くの罪もないものたちが犠牲になったはず。
あの施設だけで行われていたというのではないとは知っているが、じゃが……
すまん。お前にも迷惑をかけてしまったな」
うなだれるアルタステにロイドは何といえばいいのかわからない。
しかし、選択はたしかに自分も迫られた。
「…そういうときって…そういう時ってどうすればいいんだろうな。
どっちか一つしか選べない。どっちを選んでも誰かが不幸になる。でも、選ばなくちゃいけない」
「…おまえさんは何を選んで何をきりすてたんだ?」
それは問いかけ。
「……何もきりすてない。…でも、答えにならないのかな……
…どっちを選んでも誰かが不幸になる。だったら、誰も不幸にならない道をさがす。
探して見つからなかったら、自分で道をつくる。
…なあ、それってもしかしたらすっげえいい答えだったりしないか?」
「質問の答えになっていないなぁ」
答えになっていないゆえにアルタステが苦笑する。
「何でだよ!・・・いや、俺馬鹿だから、質問の答えになっていないのかもしれない。でも、ほら、な」
「ぶ、はっはっはっ。強いのだな」
まっすぐでいて、それでいて迷うようでいて迷いがない。
かわった人間だ、とおもう。
「・・・・強くなりたい、そうおもってる。・・・約束したんだ。一緒にかえるって」
いいつつ、首飾りをとりだし、コレットをみる。
「・・・みせてみろ」
「半人前以下。いや、四分の一人前以下。だな」
うけとったそれから感じるのはあきらかに力不足。
だがしかし、思いは強くかんじられるそれ。
「・・・・親父にもそういわれた」
「だが、心のこもったいい仕事だ。
・・・エレメンタルカーゴを使えばトイズバレー鉱山まではそう時間もかからないじゃろう」
先ほど話しをしいなからきいたところ、水の精霊と契約を結んでいる。
そうきいた。
それゆえの台詞。
「アルテスタさん?」
「抑制鉱石がなければ要の紋をつくれん」
「抑制鉱石…って、それじゃぁ!」
アルタステの言葉にロイドが目を丸くする。
「創り方をおしえたとしても、お前がつくれるという補償はない」
「ありがとう!アルテスタさん!ありがとう!」
「こ、こりゃ、はなせ、はなさんか!」
そのままアルタステをがっしりとはがいじめにし、おもいっきりだきついているロイドの姿。
アルタステの体格とロイドの体格ではロイドがはがいじめにするような格好となっていたりする。
しばしそのような光景が夕日の中でみうけられてゆく。
そんな光景をふわふわとうかびつつみながら、
いいな~…楽しそう。でも…
すっとロイド達にふれようとするが、その手は彼らの体を素通りしてしまう。
自分の体と心が別れている、そんな不思議な感覚があれからずっとつづいている。
ときおり、きづけば自分の体の中にいて、みえているのに何もできない、というような状況もあるにはすれど。
だけど。
自分のために頑張ってくれているロイド達の姿をみていると、自分もがんばらないと、とおもう。
とにかく今の現状、すなわち、体と心が完全にわかれているこの現状をどうにかし、
はやく自分の体を自分のままにしないとね。
そう自分自身に言い聞かせるコレットの姿。
だが、その姿はロイドにもアルタステにも視えてはいない……
「どうなさるおつもりですか?ラタトスク様?」
「ミトスの動向も気になるしな。それに、あのロイドという人間が堕ちるのか。
それともそのまま何も考えず本能のままに突き進もうとするのか。
それを見極めてからでも遅くはないだろう。すでに種子は捉えてある」
分身体たる蝶をすでに種子の元にたどりつかせている。
何かあればすぐにそちらにと出向くことも可能。
「・・・地上の浄化はいつでもできる」
まだあがくようなヒトがいるのならば、もう少し様子をみても問題はない。
「例の書物のありかはわかったか?」
「いえ。それがうまく隠れているようで。まちがいなくしかしテセアラ側にはあるかと」
「おそらくヒトのやることだ。本という形態であるがゆえに、
本がたくさんある場所にまぎれこませているだろう。
当事者が動けばすぐにわかるのだが、巧妙に隠れているな」
今の自分に気配を悟らされないように。
大樹たる依代としていた分身体がない以上、かつてのように一気にマナを生み出す。
というのはまだできない。
そもそもこの世界においては封印と空間の隔たりの門番のほうに力をそいでいる。
ゆえにどうしても依代となりし大樹は必要。
「あちら側で動きがあった。ミトスが何やら話しをしていたからな。
・・・わが眼たる蝶を彼らにつけて動向をさぐる」
そう、行動を起こすのはいつでもできる、のだから・・・・・・
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あとがきもどき:
薫:次回でようやく鉱山ですv
それがすんだらコレット誘拐シーンにようやくいける…
ちなみに、誘拐された先の飛竜の巣さんは、ゲームでなくOAVのほう参考にしてます。
あしからず……
2013年6月27日(木)某日
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