まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

まえぶりさんは、ドラマCDののりでクラトスがついてきている、という裏設定です。
ゆえに当然エミルというかラタトスクやセンチュリオン達はきづいてます。
が、何もいわないのはいまだに自分との約束を反故にしてくれているクラトスへの
あるいみ意図返しともいえますv

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「…ラタトスク様、あれどうします?」
「面白そうだからほっとけ」
何か混乱しているというか別方向にむかいつつあるそのクラトスの思考。
マナの乱れから彼がそこにいるのはわかっている。
いるがみているほうが面白いのでロイド達にはいっていない。
というよりこちらにきてからこのかた、ずっとほぼ後方からついてきていることに苦笑せざるをえない。
「…ロイドを盾にすればオリジンの解放もさくっといくか?これは?」
「しかし。あのクラトスがあそこまで親ばかになっているとは…不思議なものです」
「あいつは昔から家族にあこがれていた節があったからな。
  ミトスたち姉弟についていくことにしたのも、あの家族の絆を守りたいというのがあったようだしな」
そんな会話をいつもの原語でしているエミル達とは対照的に、
水汲みにいっていたロイドとしいながもどってくるのがみてとれる。
「水くんできたぞ~」
「ごくろう。ごくろう」
「何であんたはそんなにえらそうなのさ!」
「ちょっ!何で俺様なぐられたのさ!」
「コレット、大丈夫か?」
「怪我はなおったわよ。けど…はやく元にもどってほしいわ」
「…ああ」
「そろそろ出発しましょうか」
コレットがこけて怪我をし、しばし休憩している今現在。
なぜか背後からついてきているクラトスがかなり面白い思考というか行動をしているのがきにかかる。
それにきづいているものが他にいない、というのもきにかかるが。
まあ別に問題ない。
それにみていてすこしばかり楽しんでもよいだろう、というのはエミルの思考。
何しろいまだにクラトス達は彼を裏切っているまっただなか、なのだから。

光と闇の協奏曲 ~ガオラキアの森と隠れ里~

「ね、ねえ。プレセア?」
今はちょっとした休憩中。
さすがにずっと歩き続けるというのも体力の消耗を促進してしまう。
サイバックからガオラキアの森にいくまでにはちょっとした距離があり、
サイバックからガオラキアの森につづく道には救いの小屋はないらしい。
ガオラキアの森は広大で、別名、それゆえに迷いの森ともいわれている。
座っているプレセアの横にそれとなく移動し、声をうわずらせつつも話しかけているジーニアス。
「そそそそその斧、もたせてくれないかな?きになってたんだ」
ジーニアスからしてみば、重いようならば自分がかわりにもつから、という意味合いでの問いかけ。
「……」
そのまま無言で斧を目の前におく、ということはもってもいい、ということなのだろう。
そう解釈しジーニアスが斧をもとうとする。
が。
「よいしょ…っと、うわ、お、おもい?!」
そのまま持ち上げることもできずに、そのまま背後にとのけぞるジーニアス。
「何やってるのさ。ジーニアス。プレセアはエクスフィアの力で力がかなりついてるからね」
「ええ?僕だって使ってるのに。エクスフィア……」
「プレセアちゃんは力もちだからね~♪」
がくり、とうなだれるジーニアスに、かろやかにいっているゼロス。
たわいのないやり取りではあるが、コレットはいまだに無表情のまま。

プレセアってすごいんだ~。
ふわふわ、ふよふよ。
そんなロイドの想いとは対照的に実はふよふよとうかびながら…どうやら自分の体から少しくらい離れても、
移動は可能らしいことにきづき、意識が浮上したときにはこうして周囲をとびまわっているコレット。
あるいみ現状になれて状況を楽しんでいるといっても過言でない。
しかしその事実をロイド達は知らない……

「そろそろいこうぜ」
少しでもはやくコレットを元にもどしてやりたい。
手にいれた要の紋はかなり古く、すこしばかり細工をほどこしてもどうにもならないのがみてわかった。
何しろ劣化していたのである。
打ち直しをしなければ使いものにもなりはしない。
「そうね。そろそろいきましょうか。しいな、この先に野営できるような場所があるのでしょう?」
「ああ。もう少しさきにいくとちょうどいい場所があるよ。水場もちかいしね」
どちらにしてもガオラキアの森にいくまでは…正確にいえば、
森はすでにそこにあるのだが、オゼットの村にいくのに一番いい入口があるらしく、
…きちんとした道からはいなければ間違いなく、かの森では迷う、とのこと。
そこにむかっているこの一行。
リフィルの問いにしいながこたえる。
「ええ~?今休み始めたばかりなのにぃ?」
ゼロスが何やら文句をいうが、それは口先だけですぐにかるい動作で立ち上がる。
「コレット、いこう」
コレットの手をひき、立ち上がらせる。
今のコレットはこちらが促さないかぎり、何の行動もしはしない。
まさに人形。
「…コリン?」
ふときづけば、いつのまにかコリンがあらわれ、しいなの肩にとぴょん、とのってくる。
それゆえにしいなが首をかしげてといかけるが。
「ううん。しいな、たのしそうだな、とおもって」
「べ、別にあんたのことを忘れていたわけじゃないよ!?」
ただ、なぜかエミルがいるとコリンは異様に緊張しているように見えるがゆえの配慮といえる。
なぜかコリンはエミルにたいし、常に敬語。
理由をたずねてもコリンは話しをはぐらかせるばかり。
「いいの。こっちにかえってくる前からおもっていたんだ。
  しいな、明るくなったよね。仲間ができたからだよね?」
それはコリンにとっても嬉しいこと。
「そ、それは、そんなこと…あたしには、コリンが一番の……」
顔をあからめ、しどろもどろになったしいなにコリンは小さな歯をみせて笑うと、
「ありがと。でもしいな。コリンには気をつかわなくていいよ。
  しいながうれしいとコリンもうれしいの。わすれないで」
それだけいって、ぽんっという音とともにコリンは姿をいつものようにとけしてゆく。
「あ、コリン!?」
薄く消える煙をしいなはしばしぽかんとみつめる。
「…あたしがうれしいと、コリンも。か、そんなこというためにでてきたのかい?ったく」
そういうしいなの顔はほほ笑んでいる。
コリンと出会って、しいなの心は救われた、といっていい。
しいなこそ、コリンがうれしいと自分もうれしくなる。
ゼロスとはたしかに腐れ縁のような友人関係ではあるが完全に心許せる相手、とまではいかなかった。
ゼロスにもゼロスの役目があるし、しいなは村ではつまはじき。
そんな中でコリンとの出会いはしいなにとっては救いといえた。
「お~い。何やってんだ?」
ゼロスの声が前方からきこえる。
ロイドと一緒にあるいていたノイシュもく~ん、と心配そうな声をあげてくる。
「何でもない。今いくよ!」
すでに歩きはじめた一行にしいなはあわててかけだしてゆく。



ガオラキアの森、といわれし深い森の奥。
そこをぬけたさらに先に、プレセアの住まうオゼット、という村があるらしい。
「すごく暗いな」
薄暗い森の中。
樹木の根がよく発達しているために地面がたいらなところがほとんどない。
それでもエミルからしてみればここの空気はここちよい。
自然が豊かだとエミルもまた力がみちるような感覚となる。
それは大自然そのものがエミルそのものだから、といっても過言でない。
「はぁ。シルヴァランドでは俺も親父と森にすんでるけどさ。
  ここほどじゃないぞ?こんなところにすんでて不便じゃないのか?」
ロイドが足元に気をつけつつもそんなことをおもわずぼやく。
「おおっと」
ふと目の前から武装した兵士らしき姿がみてとれる。
前方からやってきた騎士のような鎧に身をつつんだ男たちはどうみても友好的な態度ではなさそうっぽい。
「ち。教皇騎士団かよ」
ゼロスがそれをみて舌打ちする。
「神子ゼロス様。教皇はあなたが邪魔なのだそうですよ」
「そんなのこたぁ、ガキのころからしってるよ」
「では、話しがはやい。死んでもらいましょう」
「今ならばあなたはそこの野蛮人たるシルヴァランド人に殺された。
  と、そういう大義名分もできますからね」
口ぐちにそんなことをいってくる騎士もどきたち。
「あいかわらずあんたの周囲は穏やかじゃないね!ゼロス!」
「け。いってろ。お前もなれてるだろうが!」
「まあね!」
慣れているがゆえのかけあい漫才をしているしいなとゼロス。
「ど、どういうことなのさ!?」
「…つまり、どうやらこの神子とマーテル教教皇は敵対してるみたい、ね。
  確かに、今ならば、私たちシルヴァランド人とともに行動している神子が死ねば。
  その罪は私たちにかぶせることができて都合がいいのでしょう」
「って姉さん、何冷静にそんなことをいってるのさ!」
こちらはこちらでそんなことをいっているジーニアスとリフィル。
「うひゃひゃ。さすがリフィル様。そのと~り。まあ俺様は殺されてやるつもりなんかないけどな」
そんなやり取りをみてかるくため息を吐いたのち、
「…面倒だな」
ぽそり。
エミルがそうつぶやいたその刹那。
ぽごっ。
騎士達の足元が一瞬くずれ、そのまま地面の中へとすいこまれてゆく。
そして、
何やら悲鳴のようなものがきこえてくるのは気のせいか。
『・・・・・・・・・・・・』
「土の中の魔物達がちょうど穴をほったみたいだね~」
にこやかに何でもないようにさらっといいはなつエミルに、なぜかその場にいる全員が思わず無言。
「…何とかかてたけど。どうするのさ?」
とりあえず、気にしないことにしたらしい。
あまりにタイミングがよすぎるとかいろいろといいたいことはあるが。
そんなジーニアスの台詞に、
「きまってる。応援を呼ばれる前に」
ロイドがいい、
「ずらかるんだね。でもどこへ?」
そんなロイドにジーニアスが首をかしげる。
地面の下からは何かがしゃくれるような音がしているがそれもすぐさまにかききえる。
「とにかくプレセアを送り届けないと」
「…こっち、です」
プレセアが足をすすめる。
「しかし、あいつら何だったんだ?」
ロイドの素朴なる疑問にたいし、
「ああ。あいつらの狙いは俺様だよ。教皇のひひ爺のやつは俺様が邪魔で邪魔でしょうがないのさ」
いって肩をすくめつつ、
「産まれたときからずっとな。っていうかもともと俺様は産まれないほうがよかった。
  とそう思われていたわけだし」
そういうゼロスにおもわずリフィルがしいなをみるが、しいなはただ無言でうなづくしかできない。
いつもちゃらちゃらしたような言動をしているがそういう理由があるのならば、
リフィルとしても納得せざるを得ないものがある。
「ゼロス……」
ロイドもそんなさらっといいきるゼロスの言葉に何といっていいのかがわからない。
「ロイド君よ」
「え?」
「お前は望まれてうまれてきたんだろうな?」
「さあ…そうだといいけどな。俺、実の両親の記憶、ほとんどないから。
  顔も覚えてないし。記憶っても家族で夜空をみあげてたくらいの記憶くらいしかないしな」
それも満点の星空と暖かな父親の背中とその頭。
それくらいしか記憶がない。
「とにかく。ここからはやくずらかろう。
  先行していってやつらがもどってこなくて、新手がやってきたら厄介だよ」
たしかにしいなのいうとおり。
「そうね。とにかくここを離れましょう」
今のタイミングはやけに偶然にしてはおかしかった。
そもそも魔物がもしも攻撃というか穴をあけたならばどうして自分達のいた場所でなく、
敵がいた場所のみの真下、にしかも穴をあけたのか。
少し前でのエミルによるであろう施設襲撃?を目の当たりにしているがゆえにリフィルの疑問はつきない。
今のももしかしたらエミルが何かしたのではないか、と。

「昔は、このガオラキアの森も普通の森だったんだぜ」
森をすすみつつ、ふといきなりゼロスがそんなことをいってくる。
「ふぅん。そうなの?」
首をかしげるジーニアス。
この森はたしかにはたからみれば暗く鬱蒼としており、
ついでに闇属性の魔物達がかなりの確率でいたりする。
「ところがな。ある日。盗賊が盗んだ財宝を森の奥に隠したんだ」
「財宝かぁ。どんな財宝なんだ?」
どうみても目がからかっている、というのがわかるいうのに。
それすら気づかずにロイドが逆に問いかけているのがみてとれるが。
「時価数十億ガルドって宝石だよ。で、そいつを狙ってくる連中を片っ端から殺していったんだ」
「うわ。残酷……」
「いつしか森は血で汚れ、殺された人々の怨念が巣食う呪われた場所になった」
「うえ~…まじか?」
「…ま、またぁ。どうせからかってるんでしょ?」
確かに、この森にあるものが隠された、というのは事実のようだし、
またこのあたりにいる魔物がいうにもそういう事実もあったのも事実のようだが。
怨念よりうまれし魔物もいるのもまた事実。
「今でも森にはいると、盗賊の幽霊が旅人を殺そうとするんだ。
  そして盗賊に殺された人々も仲間を増やそうと……」
その仲間を増やす、というのはありえないのだが。
「「うわぁぁ!」」
「…いまどき、こんな話し、三歳児だって信用しねえって」
おもわず走り出す二人をみてゼロスがそんなことをいっているが。
…こんど、人の念よりうまれし配下のものたちを呼び出してみたらおもしろいかも。
そんなことをふとおもうエミルはかなりあるいみ余裕があるのかもしれない……


(ラタトスク様。何ものかがこちらにむかってやってきているようです)
「?ソルム?」
ふといきなり話しかけられ、思わず問いかける。
「エミル?」
「ソルムがいうのに、遠くのほうから足音がしているらしいですね」
たしかにそちらに意識をむけてみてみれば、幾人かの武装した者たちの姿がみてとれる。
「俺様には何もきこえないけどな」
「大地のことはソルムにかなうものはないからね」
そもそもソルムは土に関する全てを司りしもの。
「センチュリオン、ね。いったい何なのかしら?あなたの傍にいるそれらは」
「え?この子達はこの子達ですけど?」
エミルの返答は説明になっていない。
「あちらのほうから、みたいですね」
「…あっち…家…」
プレセアがそういうが。
「え?つまり、アルタステっていうドワーフがいる方向ってことなのか?」
その台詞におもわずロイドが眉をひそめる。
「…まずいわね。もしかしてさっきのゼロスを狙っている一派が先回りしたのかもしれないわ」
リフィルが思案し、
「け。あのひひ爺のやりそうなこって」
ゼロスが心底あきれたように言い放つ。
「コリンを偵察にむかわせるよ」
しいながいうとほぼ同時。
木の上から一人の男性が飛び降りてくる。
髪を長くのばしており、体にぴったりとした服をきてはいるが、その上着はほとんど意味をなしていない。
奇妙なことに綺麗に筋肉がついている男の手にはなぜか手枷がしっかりとはめられている。
「次から次へと、教皇のやつ!そんなに俺様が邪魔かっつ~の。
  俺様がこいつらと旅にでたのをいいことに自重してこなくなってやがるな。
  それはそうと、あんた、神子にこんなことをしてもいいとおもっているのか?」
「…世界の滅亡をたくらむものなど神子ではない」
淡々と男がいってくる。
「教皇にこりゃ、何か騙されて吹きこまれてるな。こっちの話しをきくつもりは…」
男は無言でそのままゼロスにと攻撃をしかけてくる。
しかも足蹴りで。
「ないってか。しかし、あんた…どこかであったことがないか?」
たしかにどこかで見覚えがある。
それゆえのゼロスの台詞。
と、プレセアがいきおいよくもっていた斧を男にとふるう。
「お…お前は!?」
それまで無表情でしかなかった男の顔にあからさまに動揺がみうけられる。
「……私はお前たちと戦うつもりはない。他のものはどうかはしらないが。
  私が命じれたのはコレットという娘の回収だ。神子ゼロスの暗殺はその後だ」
「って暗殺っていいきってるよ。おい」
ゼロスのおもわずつっこみ。
「私はとりあえずその娘と話しがしたい。今はお前たちに危害は加えぬ。
  プレセア…といったか。その娘と話しをさせてくれ。
  …!エクスフィア!?お前も被害者なのか!?」
男がプレセアの胸元にあれそれにきづき、驚愕の声をあげる。
ほんの短い間ではあるが男の体が一瞬硬直する。
と。
「がっ」
どさり。
そのまま男はたおれふす。
みればいつのまにか男の背後にはエミルがたっており、にこやかに手を振り上げていたりする。
かるく首元をエミルとしては叩いただけなのだが、それだけでもののみごとに男は気絶。
「あ、あいかわらず何したのかわかんねぇ…エミルのやつ」
ロイドがあきれたようにいい。
「へぇ。今の手の動きは俺さまにもわからなかったぜ。エミル君。もしかしてかなりできる?」
ゼロスがそんなことをエミルにと問いかけてくるが、
「さあ?対象になるものがいままでいませんでしたからね~」
エミルとしてはそういうしかない。
そもそも今まで対象になるようなものがいなかったのは事実。
「この男…ブレセアをみて驚いていたようだったけど、何だったのかしら?プレセア、知り合い?」
ジーニアスの問いかけにたいし、だがブレセアは無言のまま。
「どうやら事情がありそうね。捕虜にしたらどうかしら。いろいろ話しもきけそうだわ」
リフィルがそういうと、
「しいな!たくさん兵士がいる。皆こっちにむかってきてるよ!いそいでにげて!」
偵察に向かっていたコリンがあわててもどってきてそんなことをいってくる。
「うわ、まじかよ」
「おいおいおい。教皇のやつ、いっきにカタをつけるきだな!見境がないな、おい!」
「あなたどれだけ恨まれてるのよ!」
「あのひひ爺のことをとやかくいってもはなしになんねえよ!
  あいつは昔、国王にすら毒をもって国をのっとろうとしたことすらあるんだからな!」
「「まて(まって)」」
さらっというゼロスの台詞におもわずひくしかないロイド達。
それはリフィルとて同じこと。
「それをアステルがつきとめて教皇の弱み握ってるからなぁ。あいつは」
「「だから、アステルっていったい……」」
おもわず同時につぶやくロイドとジーニアスはおそらく間違ってはいないであろう。
「どうするんだよ。さすがに大人数を相手にするのは」
「何ならここの子たちにお願いしようか?」
さらりというエミルのその台詞に。
「…しかたない。みずほの里に案内するよ」
「おいおいおい。しいな。みずほの里は外部に秘密の隠れ里なんだろ?」
「だけどこのままじゃ、はさみうちだよ?里に逃げこむしかないじゃないか。  
  エミルのお願いはぜったいに洒落にならないような気がひしひしするからね!」
それはもう断言をもっていえる。
絶対に。
あの施設の中でその様は目の当たりにした。
だからこそのしいなの決定。
「じゃあ、ゼロス。そのでっかい男をはこんどくれ」
しいなの台詞に、
「俺様が!?こんな大男、一人ではこべるかってんだよ」
何やら情けないことをいっているゼロスの姿。
「しょうがない。ソルム。そうだな。いつもの形体でいい」
もつことは簡単だが、それでは手がふさがってしまう。
エミルのそんな言葉に、
「はい」
それとともにちょこん、と鞄からとびだし、姿をゆらめかす。
次の瞬間、ソルムの体はちょっとした大きさの亀のようなものになりはてる。
黄金色の甲羅のようなそれらには不思議な紋様が描かれているのがみてとれる。
そのまま、ひょいっと片手で華奢な体からは信じられないが…
とりあえず倒れている男のくびねっこをひょいっともちあげ。
そのまま姿をかえたソルムの背中にそれをどさり、とおいているエミルの姿。
「エミルって…力もつよいんだ」
力の強さはまのあたりにしてはいなかったのでおもわずロイドがつぶやくが。
「その姿はソリテアに近い…のかしら?」
魔物の中でとある地方では神とすらあがめられている亀の魔物に似ていなくもない。
「だね。とにかく、とっとといこう。からまれても面倒だ」
下手に教皇騎士団に手をかければそれを理由にしてあの教皇のこと。
何をいってくるかわかったものではない。
それゆえのしいなの台詞。

「なあなあ。ミズホって里は森のどこらへんにあるんだ?」
どうやらかなりきになっているらしい。
横をあるくしいなにとといかけているロイドの姿。
ちなみにまだ森は抜けてすらいない。
「そいつはいえないよ。どうせもうすぐつくんだから我慢しとくれ」
「あいかわらずミズホの連中は秘密主義だな」
そんなしいなの台詞に苦笑しつついっているゼロス。
「独自の文化を守るためだよ」
彼らの成り立ちというかありかたをみればたしかに独自の文化、というよりは、
自分達のことを外部にあまり知られないようにするため、というほうが正しいだろうが。
「いやならあんたはガオラキアの森でまっているといいよ」
さらり、といいきるしいなの言葉はある程度は本気っぽい。
「じょ、冗談でしょ~。死の森においてけぼりなんてごめんだぜ」
そんなしいなの言葉の真意をはかったのか、ゼロスがあわてていっているが。
「ガオラキアの森に一人残った場合の生存確率、25%セント」
二人の会話をききつつも、ぽそり、とつぶやいているプレセア。
「くはっ。やなこといわないでよ。プレセアちゃぁん」
「大丈夫だって。ゼロスって殺しても死なそうだぜ?」
「同感」
しみじみといっているロイドとジーニアス。
「ちぇ。美男薄命っていうだろ?」
「…用法ミス、確認。訂正の必要あり」
「…ブレセアちゃぁん……」
「…この人間達ってわざと漫才してるわけ?」
そんな彼らを傍目でみつつ、おもわずつぶやくエミルだが。
(まったくもって同感ですね)
横でソルムも同意してきていたりする。

ともあれ一行は、しいなにつれられ、しいなの里だ、というミズホの里へとむかうことに。



そこはロイド達がみてきたどの街ともその容貌から何から何までが違ってみえる。
実際に違うのだが。
外部との交流を完全にたち、ミズホの里は独自の伝統を守り続け、
静かに存在している。
木材を組み合わせた簡素な門をくぐり、まず目につくのは里をめぐるように流れる小川。
そのほとりにつくられている小さな畑の数々。
作物はせせらぎを聞きながら豊かに実っている。
どの家々もつ地の色をした壁と枯れ草を並べたような屋根…わらぶき屋根をもっている。
「ああ、やっぱりここはいいね。ヒトと自然が共存、きちんとできてる」
こういうところのマナは穏やかで、とてもここちよい。
ふっとそのまま手を口元の前にもっていき、息をふきかける。
エミルの息は加護となり、風にのりこの周囲全体へとひろがりをみせる。
それと同時、この地にある全ての自然に大樹の加護がかせられる。
きらきらと、植物達が喜びにみちるかのように、一瞬太陽の光を反射したかのようにきらりと光る。
しいなの服によくにたようなものをきた子供達が入口付近にいるロイド達にきづき、
目をまるくしてあわてて家の中にかけこんでゆくが、
その背後にいるちょっとした黄金色の亀に興味津津らしく、目をきらきらさせていたりする。
ちなみに、神、とあがめている地域、というのはほかならぬみずほのことであり、
ゆえに今のソルムのこの姿はあるいみこの里のものにとっては神にも等しい姿といえる。
どうやら第三者よりもそちらのほうが驚愕らしく、大人たちがきづき、
中にはひざまづいて祈りをささげだしているものの姿もみえる始末。
と。
「しいな!外部のものを里に招きいれるとは、どういうつもりだ!」
見張り役なのであろう。
村の入口にいた男がしいなにむかっていってくる。
「ああ。処罰は覚悟の上さ。副頭領につたえてくれ。シルヴァランドのもの達を連れてきた、と」
ちらり、と背後をみればなぜか黄金色の亀のような存在の姿が。
一瞬目をばちくりさせたのち、
「シルヴァランドの?では、きこうらは、シルヴァランドの?」
どうやら一行のはここの神子もいるようだが。
「俺様はちがうぞ?」
「みたらわかる。テセアラの神子はよくもわるくも有名だな」
どうやらいろいろな意味で有名らしい。
「あのな!」
そんな彼の台詞にゼロスが何やら抗議の声をあげているが。
「…わかった。しいな。お前は俺とこい。きこうらはそこでまたれよ」
ゼロスの抗議の声はさらり、と無視される。
「わるいね。すこしまっててくれ」
そういいしいなは村の中へ。

「もどったか。しいな。お前の仕事…あちらでの神子暗殺が失敗したことはすでにきいている」
屋敷にむかいがてらでてきたくちなわがそんなことをいってくる。
「あいかわらず情報が早いねぇ」
しいなは苦笑する。
「この始末、どうつける?」
「おろち!」
しいなとともにいたおろちがしいなをいさめるが。
「テセアラ王家とマーテル教会がどうでてくるか、だな。しいな。頭領のところへいけ」
その言葉にしいなははっと顔をあげる。
その表情からまだ彼女はあのことをしらないのだ、と瞬時に理解するが。
まあ、先にあわせたほうがかなり話しがはやい。

「ソルム」
エミルの言葉をうけて、背中にのせていた男をそのまま振り落とす。
どさり。
とした音とともに男が地面にころがる。
「優しくないねぇ」
おもわずゼロスがいうが。
「別に問題ないでしょ?ソルム。姿をまたかえといてね」
「御意に」
そのまま、すっと姿を揺らめかせたかとおもうと、またたくまにその姿は
先ほどまでとおなじ小さなハムスターの姿にとなり、
そのままちょこまかとエミルの手をつたい、そのまま腰のポーチの中へと体をおさめる。
はたからみれば、姿が一瞬のうちに消えた、としかみえないであろう。
実際に遠目でこちらをみていたものたちなどは、感極まったかのように、
おもいっきりお祈りしている姿がちらほらと実はみうけられているのだが。
それに気づいているのはエミルと、そして視界の端でとらえたリフィルのみ。
おもいっきり落されたからか、はたまた衝撃からか、地面に転がった男が低くうなる。
男はゆっくりと目をひらき、周囲をみわたし驚いたような表情をうかべる。
「こ…ここは?」
「あんたは俺達の捕虜だ。暴れたりするなよ?あんたにはいろいろと聞きたいことがある」
「状況もわからないまま、やたらに暴れるような無粋存在ではないつもりだが」
そんな会話をしている最中。
「頭領達がお会いになるそうだ」
しばらくすると案内のものがやってきてロイド達を村の中へと招き入れる。
「このみずほの里に部外者を招きいれるなんて。しいなのやつはいつも厄介事をまねいてくる」
あるいてゆく最中、村人の数名がそんな会話をしているのが耳にとはいってくるが。


「シルヴァランドの旅人よ。はいられよ」
頭領の家、という場所は里の奥にとあり、一番大きな屋敷となっている。
もっともこの里自体が壁で覆われて外部からはちょっとやそっとではみえないようになっているが。
その一番奥にある広い屋敷。
庭もそこそこさることながら屋敷の大きさもそこそこ。
もっとも、ロイド達にとっては大きいことにはかわりなく、
興味深々といった形できょろきょろとしまくっていたりする。
「あ。そこで靴はぬいでよ?ロイド達」
「え?」
「畳の上では靴をぬぐ。文化は場所が違えば異なるからね」
いいつつもエミルが参考とまでに靴をぬいでその場におく。
ちなみにエミルの今の靴はいつかえたのかわからないが、
簡単なものにとなっているのがみてとれる。
「エミルはこの文化はしってるの?」
「ここの文化ににたものは昔からあるからね」
昔からある、といわれてもロイド達はみたこともきいたこともない。
エミルのいう昔とロイド達のいう昔。
おもいっきり時間率そのものが異なっていることをロイドは知らない。
ヒトがいう昔とは数年から十数年単位であろうが、
エミルにとっては数千年も数万年も、それ以上も昔、にあたる。
いわれるままに靴をぬぐ。
畳、とよばれしものからは草の匂いなのであろう、どくとくな匂いがただよってくる。
床のかわりに草のようなものがあみこまれた何かが床にとひいてあり、
そこがどうやら床がわり、になっているらしい。
壁には紙でできているらしい行燈のようなものがつるされており…
もっとも今は灯りがともされてはいないが。
それらの横には護符のようなもの、そしてまたロイド達には判別できない文字がかれている
掛け軸?のようなものが中央の壁にとつるされているのがみてとれる。
「わしがここの頭領、イガグリじゃ。わしの孫娘しいなが世話になったようじゃの。…うん?」
ふとエミルに視線をむけておもわず目をぱちくりさせるものの、
エルミがすばやく口元に手をもってゆく。
それだけで何か察したらしく、そのことに触れないようにし、
「こっちが副頭領のタイガじゃ。しばらくわしは十数年ばかりふせっておったからの。
  タイガ。ここの交渉はまかせる」
「は」
タイガ、とよばれし男性は決して大男ではないものの、それでもしっかりと腰をすえている。
「我ら頭領イガグリの命により、この交渉は我、副頭領タイガが受け持つ」
こころなしかしいなの顔が涙でぬれているような気がするのはロイドの目の錯覚か。
「しいながおぬしらを殺せ何だことによって、我らみずほの民は
  テセアラ王家とマーテル教会から追われる立場となりかねている。それはご理解いただこう。
  しいなが謁見により国王の許可をもらったといえど一度うけた依頼が失敗したことに変わりはない」
「そんな…本当なのか?」
エミルのようにきちんと膝をおり座ろうとするものの、
幾度も挑戦してもできなかったがゆえに足を崩した形でその場に腰をおろしているロイドの姿。
この場できちんと座っているのはエミル、そしてリフィルのみ。
コレットはかるく膝をついた形で座っている形となっている。
「間違いない。そのような話しになっていた。特に教皇がな。
  国王はおそらく許可をだしてはいまいが、
  教皇はこれをきにみずほの里を支配下におくつもりらしい」
淡々とリーガルがそんなことをいってくるが。
どうでもいいが、他人の前でそんな話しをする教皇はかなりあるいみ抜けているとしかいいようがない。
「かぁ。あのひひ爺。どこまで強欲なんだか」
ゼロスの言葉は誰もが同意するところであろう。
「そこで、問いたい。シルヴァランドの民よ。おぬしらは敵地テセアラで何をするというのか?」
ロイド達の顔を順番にながめ、といかけてくるタイガとなのった男性。
「…俺もずっとそれを考えてた。ある人にいわれたんだ。
  テセアラまできて何をしているのかって。俺はどうしたらいいのかって。
  俺は皆が普通に暮らせる世界があればいいとおもう。
  誰かが生贄にならきゃいけなかったり、誰かが差別されたり、誰かが犠牲になったり。
  そんなのは…嫌だ。コレットのような神子がうまれるこの制度が嫌だ。
  こんな誰かが犠牲にならいといけない世界は間違ってる。とおもう。だから」
「お主は理想論者だな。テセアラとシルヴァランドは互いを犠牲にして繁栄する世界だ。
  その仕組みがかわらぬ限り、何をいっても詭弁であろう」
いって笑うタイガだが、たしかにその通りといえるであろう。
詭弁。
行動のともなわない、ただのたわごと。
「だったら、その仕組みをかえればいい!この世界はユグラシドルってやつが創ったってそうきいた!
  だったら人やエルフにつくられたものなら、俺達の手でかえられるはずだ!」
おもわずその場にたちあがり、そういいきるロイドの姿がそこにある。
「ふはははは。まるで英雄ミトスだな。
  けして相いれなかった二つの国に共にいきていく方法があるとさとし、
  古代大戦を終結させた。…もっともその方法が今の世の中の在り様らしいがな。
  気高き理想主義者。おぬしはそのミトスのようになれるというのか?
  かのミストですらその理想の前に闇に落ちたときく」
「ミトスが・・・闇に?よくわからないけど。だけど俺はミトスじゃない。
  俺は俺のやりかたで、仲間と一緒に世界をすくいたんいんだ!そして、コレットを!」
「…なるほどな。古いやりかたにはこだわらない、というわけか」
「堕ちた、というのがきになるのですが?」
リフィルがそこにきづき問いかける。
「お主たちは真実をしらぬのか?…我らとてエルフの里より伝え聞いただけのこと。
  オリジンに愛されし英雄ミトス、だがそれは堕ちた勇者の名でもある。
  このようないびつな世界をつくりあげたのは、ほかならぬ勇者ミトス。
  ミトス・ユグラシドルなのだからな」
彼らの情報網は伊達ではない。
すでにエルフの里の歴史伝承者にも繋ぎをとり確認はとっている。
『!?』
タイガの言葉にロイド達は絶句する。
ユグラシドル、とはクルシスの責任者とよばれている名ではないのか。
それが英雄ミトス?
意味がよくロイド達にはわからない。
しかもロイド達はそのユグラジトル、となのったものにあったことがある。
それゆえに混乱も大きい。
「ふむ。では、我らもあたらしい道を模索するとしよう」
「!副頭領、まさか…おじいちゃ…いえ、頭領も!」
しいなが驚きの声をあげる。
「うむ。我らは我らの情報網にてお前たちに仕えよう。
  そのかわり、二つの世界が共に繁栄するその道筋ができあがったとき、
  我らは我らに住み家をシルヴァランドに要求する」
「要求するっていわれても。俺に決定権があるわけじゃあ……」
「なに。我らミズホの小さな引っ越しをお主らが手伝えばそれでいいのだ」
淡々というタイガであるが。
しかしそれよりは、
「それより、ユミルの森のほうがよくないかな?どうせ今までのように隠れ里にするんでしょ?ここの人達は」
エミルからしてみればそっちのほうがはるかに助かる。
「しかし、あそこはエルフの聖域」
「オリジンの許可があれば問題ないとおもうけど」
さらり、と何やらとてつもないことをいっているエミルであるが。
「僕からしてみたら、君たちのように自然とともにいきるものがあの地にいたほうがいいとおもうけどね。
  エルフ達も最近はどうも信用できないというか」
それは事実である。
しかもエルフ達は嘆くばかりで行動をおこさない。
彼らのようなものがいれば、オリジンも封印などという目にあわなかったであろうに。
「エミル?あなたどうしてこちらのことを詳しくしっているの?
  ユミルの森なんて。一部のものしかしらないのではなくて?」
リフィルのといかけに
「いろいろと情報ははいってくるので」
嘘ではない。
どちらにしてもかの場所の空間をいじり、
あの地に大樹をめぶかせることにしたのはすでにエミルの中では決定事項。
「ユミルの森?よくわかんねぇけど。とりあえず、先生達はどうおもう?
  しいなの里の人達…ミズホの人達と手をくんでもいいかな?」
ロイドは意味がわかっておらず、首をかしげるが、
とりあえず確認をこめてリフィルにと問いかける。
「それで二つの世界の関係がかわるのならば。悪い取引ではないわね」
リフィルからしてみても、こちらの国のことは何もわからない状態。
情報収集のプロだ、という彼らの協力があるのはありがたい。
「さっさと話しをまとめて、プレセアを送り届けて、コレットをたすけてあげようよ」
そんな彼らにジーニアスがいい、
「俺様は、テセアラが無事ならとはおまえらの好きにすればいいとおもうぜ」
しごくもっともなことをいっているゼロス。
「よし。きまった。俺達も二つの世界を変える方法を探す。協力しよう」
そんな彼らの言葉をきき、ロイドが勝手に決定事項を下しているが。
…いつのまに決定権がコレットからロイドにかわっているのやら。
そうはおもうがエミルは口にはださないでおく。
所詮人が考えること。
考えるだけ無駄、というものである。
「ふむ。ではしいなにはあらためてお主達との同行を命ずる。
  話しはきいておる。まずはアルタステのところにいき、その娘を直す、とのことらしいな。
  しいな、ただし今度は連絡役だ。存分にはたらけよ」
「は、はい!」
しいなが副頭領タイガの命令をきき、ぱっと笑みをうかべ返事をかえす。
「しかし、タイガさんよ。そうすっと王国はともかくとして。教皇を完全に敵にまわさなないか?」
ゼロスの至極もっともな問いかけに、
「そもそもあの教皇がなぜあのように地位にずっといるのだ?
  国王を暗殺しようとして、さらにはその姫をも暗殺しようとして。
  あげくは娘を利用して姫の替え玉をつくろうと人を操る生体実験を繰り返しているという」
「しかたないだろ。あのひひ爺は周囲にたいするとりもちだけは半端ないんだからな。
  てっとりばやく魔物にでも殺されてくれないかねぇ。ほんと。
  俺様とて五歳のころからずっと命をねらわれつづけて辟易してるんだぜ?」
正確にいえば妹がうまれてからこのかた、ともいえるが。
さらり、というタイガの台詞にぎょっとしたのはロイド達。
どうみてもさらり。というような内容ではない、絶対に。
「あの教皇の周囲にはハーフエルフやエルフもいますからな。
  そもそもあの教皇の妻がエルフであり娘もまたハーフエルフ。下手に出たしはできますまい。
  ちなみに、神子様にではお尋ねしますが。
  神子様ならば、二つの世界の片方を犠牲にする勢力と、
  二つの世界を生かそうとする勢力。神子様ならどちらにつかれる?」
「有利なほう。といいたいが、普通はまあ生かすほうに力を貸してやりたいわな。
  俺様は強いものの味方だがな」
「そういうことです。我らの情報網では、あなた方が首都に不時着したレアバードは。
  教会側が回収した模様です。それらをどこにもっていったかは不明ですが。
  当面はその発見に全力をつくしましょう。
  幸い、しいながレアバードに式神をつけていたようなので、
  そちらからたどればすぐに発見できるでしょう」
「わかりました。よろしくおねがいします」


「…本気、なのかねぇ?」
部屋をあとにしてゆくロイドたちをみつつ、のこれたゼロスがぼそり、とつぶやく。
「本気だから面白いとおもうよ。僕からしてみればね」
そういうエミルであるが。
「おお。エミル殿。あのときはお世話になりました」
「いえ。僕はたまたまでしたし。アクアが迷惑かけませんでしたか?」
「「え?」」
どうやら面識があるらしく、頭領と話し始めているエミルの姿。
ゆえに思わず顔をみあわせるゼロスとしいな。
「エミル?あんたおじいちゃんと知り合いなのかい?」
どうすればずっとねたきりだった祖父と知り合えるのだろうか。
しいなの疑問は至極当然。
「では、頭領。このものが?ヴォルトの神殿で頭領をたすけてくれた、という?少年ですか?」
精霊とも知り合いっぽかったという目の前の少年。
たしかに、あのアステルという人物とよくにている、とはおもう。
「たまたまですけどね。あそこにちょっと用事があったので」
まあいったさきに人の魂がいたことには驚いたが。
「いえ。かなり助かりましたよ。アクアさんでしたか?
  彼女が周囲の魔物達に何かいってくれたらしく、最近では魔物達も畑仕事を手伝ってくれていますからね」
「…そ~いえば、そんなこといってたっけ……
  まあ、畑仕事が好きな子たちもかなりいますからね。
  最近のヒトは魔物とみるだけで毛嫌いしてそれらができない、となげいてた子もけっこういますし。
  みたところパペトロットの子達が主ですね。ニューロテカも喜んでるみたいですし」
いわれてみればそう報告をうけたような気がする。
魔物達に害がないのならば、といって許可をだした覚えもある。
すっかり失念していだか。
ちなみに魔物達が全員喜んでいる、というのは事実である。
さらり、と魔物の種族名がでてくるあたり、普通ではない、というのがよくわかるが。
エミルにとってはそれは当たり前なのでその異常さにきづかない。
黄金色にかがやく姿は畑の神とまで崇められている魔物。
「こういう場所がのこっていることに僕からすればほっとするんですよね。
  まだヒトもすてたものじゃないっておもえるから」
それは心からの本音。

アステルの報告には、かの精霊は魔物の王、とあった。
センチュリオンといい、いまの言い回しといい。
やはりこのエミルという子はあの精霊とかかわりがあるのでは。
という疑念がゼロスの中で大きくなる。

「エミル。あんたどこでうちのお爺ちゃん…でなかった、頭領としりあったんだい?」
「え?たまたまトニトルスを迎えにいったときに迷子になってたんだよ」
「迷子?」
エミルの年齢はどうみても十六かそこら。
そして頭領が眠っていた時間はしいなが七歳からこのかた十九歳の今まで、
十二年間。
あきらかに年齢があわない。
エルフのようにはみえない。
エルフならば見た目と年齢があわない、というのは常識。
かといってハーフエルフでもないであろう。
と。
「お~い。エミル達。何してんだよ!」
家の前のほうからロイド達がよぶ声がする。
「では、僕はこれで」
「恩人に何もできずに心苦しいですがな」
「きにしないでいいですよ」
そんな会話をしたのちに、エミルもそのまま家の外へ。
「おじいちゃん?エミルとどこでしりあったの?」
「ほっほっほっ。秘密じゃ」
こけっ。
どうもずっとねたきりだったのにかつての…いや、しいなの中で祖父はかなり神聖化していた。
想い出、というものは美化されるものなのである。
こんなお茶めな面おじいちゃんにあったっけ?
そうおもうしいなの気持ちを代弁してくれるものは、ここには、いない。


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あとがきもどき:
薫:タイガさんのあの台詞。
  みずほの民の情報収集力は半端ない、といいきるくらいなら、
  絶対に、かの伝承者にも接触とってるとおもうんですよね…
  ならば、ミトスが闇に堕ちた、というのもしっていても然り、だとおもうわけで…
  エルフの中ではミトスが闇堕ちしたのは有名みたいでしたしね。
  ならばこそ、さらり、とタイガさんからミトスが闇堕ちしたことを一度、暴露させてみましたv
  でもまだ、ロイド達はあのユグドラシルとミトスが同一人物。
  というのは半信半疑…というか信じ切れてませんvあしからずv

2013年6月26日(水)某日

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