まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
やはり、メモ帳にこの話しの雷の神殿シーン。
それらをかいてていてもふと涙をさそわれます。
あのシーンは幾度みても泣ける。ゲームにしても小説にしろ…OAVにしろ…
コリン…でも、精霊って精神生命体ですよね?基本。
あれで死んだ、ということはやはり人工精霊だったから器の関係だろうな。
とおもったり。
何しろヴェリウスとして生まれ変わったし…コリン……
基本、本来あるべき精霊達は精神体を自らの力にて具現化しているにすぎない。
とおもうんですよね…
某、お役所仕事神官よろしく。
エクシリアさんの世界の理さんでは精霊の器=化石、になってしまってたけど。
でもあれ、ぜったいにかの地にある生命の場さん。
あの力をつかってやりたいほうだい、クロノス達がしてるのが理由っぽい、とおもう私です…
なので私のところのあの設定さんは、あの世界の産みの親がラタトスクの場合と。
あの世界そのものにラタトスクの分霊体として意識がそこにあったり。
といろいろと考えてたり。(世界に本体ごといく、という話しも構想あり)
某ゲームではラタトスクの間なんてものがあってラタトスクがでてこなかったしな…
ぜったいにいるはずなのにぃぃ!コアの状態になってたのか?でなかったのは……
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「うわ~い。おさけだぁ」
さすがは交渉し…わいろでもらったともいうが、手にいれたレアバード。
旅の移動がその日のうちに住むのはとても助かる。
「それでね。精霊ラタトスクのことなんだけどさ」
「ラタトスク様のこと?ようやく目覚められて僕らはとてもうれしいよ!
ほんと、ミトスったらさ。なんで四千年もの間ラタトスク様をうらぎってくれてるんだか。
そもそもなんで君たち人はいつもひともラタトスク様をうらぎるんだよ、といいたいんだよね?
でも君たちはすきだよ?こうして僕の好物のお酒をもってきてくれるし」
いや、まて。
いま、さらり、とこのノームは重要なことをいったような気がする。
ひしひしと。
「精霊ラタトスクに会うにはどうすれば…」
「え?会いたいの?だったら今なら簡単だよ?だって、ラタトスク様は……」
「…ノーム?」
低く、鋭い声がする。
「・・げ!?ソ…ソルム様ぁぁ!?」
「定期審査にきてみれば…あなたは、何をヒトなどに話そうとしているのですか?
ラタトスク様に怒られたいのですか?」
「す、すいません……」
みれば亀?のようなものがふわふわとういている。
精霊ノームが様づけをしている、ということからただものであるはずがない。
ちらり、とそんな彼らをみつつ、
「…おや?そこの人間は……ああ、なるほど」
なぜかそう勝手に納得をしたのちに、
「しかし、ヒト風情がよくもまあラタトスク様の存在にきづいたものですね。
お初にお目にかかります。私は土のセンチュリオン・ソルム」
「「センチュリオン!?」」
アステルとリヒターの声がかさなる。
「まああなた達がどれだけラタトスク様のことを調べようともかまいませんが。
我らが主の邪魔だけはしないでください。ノーム。
あなたも口をすべらせ余計なことをいわないように」
「は~い……」
「あまりにおいたがすぎましたら、ラタトスク様のお仕置きがまっていますからね?」
「そ、それだけはいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「わかればよろしい」
いや、精霊がおびえるおしおきって…思わず二人してそうおもうが。
「まだどうも口をすべらせそうですので。僕をしばらくおくとしますか」
「ま、まって!おねがい!それだけは、ソルム様ぁぁ!」
「問答無用です。いでよ、我が僕よ」
それと同時に、四体の魔物が出現する。
「しっかりお灸をすえてやってください」
「た、たすけてぇ!そこの人間でもいいからさぁぁ!」
どうたすけろ、というのだろうか。
どうみても現れた魔物はとてつもない力を秘めている。
視ただけでわかる。
かかわったら、死ぬ、と。
「あ、僕まだ仕事があるから。お酒はおいていきますね~」
「あ、おい。アステル、まて!」
「ひ、ひど!人間のうらぎりものぉぉ!」
・・・・・・・・・・
「…本当にいたのだな。センチュリオン。という存在は」
「…地のセンチュリオン。といってたね。土の精霊ノームが様づけしてたし。間違いはないね」
亀のような姿であったのがきになったが。
しかしあれは亀でありながら亀ではない、不思議な生体といってよいだろう。
なぜかノームの間につづく扉はとざされ、うんともすんともいわなくなっている。
中で何がおこなわれているのか二人は考えないことにする。
「あの言い回しから確実に、大樹の精霊、ラタトスクが目覚めているのは間違いがない。
だけど、精霊が宿っていた大樹カーラーンはない。精霊がどう行動にでているのか……」
「きになるのは、今ならば簡単だ、といっていた言葉もきにかかるな」
「…は?シルヴァランドからここテセアラにシルヴァランドの神子一行がやってきた!?」
研究施設に戻った彼らがきかされたのは、先日、ここテセアラに神子一行がやってきた。
というその事実。
彼らが交わる日は…ちかい。
光と闇の協奏曲 ~学園都市サイバック~
きょろきょろと周囲をみているロイド達とは対照的に、落ち着いた色調の建物の前までくると、
勝手しったるといった様子でそのまま建物の中へとはいってゆくゼロス。
そして。
「よ~う。メルトキオから連絡、きてるかい?」
受付にすわっていた男がこちらにきづいたらしく、
「これは神子様!お待ちしていました!こちらへどうぞ!先にいただいた報告書は確認済みです」
どうやらここの研究院らしい、とロイドは思う。
分厚いレンズの眼鏡をかけ、オールバックになでた髪がいかにも学者、という印象をうける。
案内された部屋に重厚な机と椅子が何組かと立派な表紙のついた研究書などが無造作におかれている。
研究院はロイド達を行儀よく見て、それからコレットをみつめるとほほえみ、
「こちらのかたがコレットさんですね。ええと。それではご説明いたします。
我々はかつて神子ゼロス様のクルシスの輝石を調査した資料に着目いたしました」
「ほうほう。俺様の輝石をあずけたあのときのが役にたったんだな?
こりゃあ、コレットちゃんが元にもどったらたっぷりお礼をしてもらおうv」
「あんたはぁぁ!コレットにへんなことしてみな!命はないともいなよ!」
「ってしいなさん?その手にもっている符は何でしょうか?」
おもわず丁寧ないいまわしでといかけるゼロスはおそらく間違ってはないのではあろうが。
「女の敵を葬るのにきっとウンディーネも喜んで力を貸してくれるとおもうよ。あたしは」
しいなの手にしている札はまぎれもなく精霊ウンディーネ召喚用の札。
「水の精霊ですか。興味深いですが…」
「研究には利用させないよ?」
「わかってますよ。さて、とりあえずこちらをごらんください」
いいつつも、机の上においてある機械のスイッチをいれ球体の資料を投影する。
「クルシスの輝石は、一部においてハイエクスフィアと呼ばれていたことからもしや。
とはおもっていましたが。やはりエクスフィアの進化系にあたるようです。
ふたつの結晶体はともに無機生命体ですので」
「何ですって!?」
リフィルがおもわず声をあげる。
「…むき?何だ、そりゃ?」
「無機生命体。つまり、エクスフィアも生きてるってことね。
ああ、だからあの子、エミルがあんないいまわしを……」
この子達を利用しているのもヒトでしょう?
そういっていたその言葉に違和感を感じていたが。
魔物すらも子、といいきるエミルならばありえるのだろう。
そうすとん、と納得がいくものがある。
「そうです。二つの結晶体はどちらも他の生命体に寄生し、融合する性質を兼ね備えています。
しかし、不思議なことに本来ならばその他の生命体にあたる寄生する生物は基本、魔物が主なようですね。
エクスフィアとよばれているものは何らかの形でむりやりに何かに融合させたあげく
眠っていた命を覚醒させている、そんな感じをうけました」
実験において魔物にあてがってみたが、すんなりと魔物とエクスフィアは融合した。
しばらくするとエクスフィアは何もなかったかのように魔物の体から消えてしまっていたが。
だいたい周期的には数年から長くて数十年あまり。
「寄生か…ぞっとしない話しだな。というか基本、魔物?」
「ええ。何もしなかったら普通はエクスフィアは人にも他の生命体にも身向きもしないんですよ。
ただ、魔物の場合のみは吸い寄せられるように融合いたしましたが」
すでに幾度も実験して確かめています。
そういう研究院の台詞に、おもわず顔をみあわせるリフィル達。
あの子たちを利用しているのは、ヒトでしょう?あの子達はわるくない。
むりやりに勝手に利用しているのはヒト。
きっぱりエミルはそういっていた。
ということは、つまり、エミルはエクスフィアの性質をしっている、ということになる。
「人体に直接影響をあたえるとなれば直接体に埋め込めば融合するようですけどね。
ほとんどの確立で・・いえ、これはいいでしょう」
「・・・まて。まさかあんたら、そんな実験…してる…とかいわないよな?」
「いえ、私たちはしてませんよ?」
しているのは別の部署のものなので嘘はいっていない。
しかし、人の体に直接埋め込めば融合する、それを知っている、ということは。
あきらかにどこかでそれをしている、もしくはみたことがある、ということ。
「まあ、ともかく。人がエクスフィアを扱う場合、このとき、要の紋がなければ、
体内のマナが暴走しバランスを崩す、と考えられています。
マナのバランスが乱れたというのはすでに実験結果からも得られていますので間違いはないです」
「実験…結果?」
「いえ、こちらの言葉のあやです」
「…だから、要の紋なしのエクスフィアは人間を化け物にかえてしまうんだね」
ぽそりというジーニアスの言葉に、一瞬目をぱちくりさせたのち、
「ああ、ご存じでしたか。なら別に隠す必要もなかったですね。ええ。そのとおりです。
マナのバランスを整えられればいいのですが、あいにくとそのような方法は……
エルフの里で聞いた話しによればレイズ・デッドなる治癒術でバランスを整える。
それは可能らしいですが、それらも実験してみましたが、
術者の意思の力に比例するらしく、完全には……」
完全に確信をもち、また相手をたすけようとする心がなければ今まで成果は表れていない。
「まあ、つまるところ。クルシスの輝石がエクスフィアと同じもの、または同じ性質をもつ以上、
現在のコレットさんはクルシスの輝石に寄生されていると推測されます」
研究院の台詞に、
「なるほどね。だとすると、封印解放の儀式は
クルシスの輝石による融合を促進させる効果があるのかもしれないわね。興味深いわ」
「先生。そんないいかた、やめてくれよ。コレットばっかりこんなひどい目にあってるっていうのに」
「そんじゃあ、要の紋があれば彼女は元気になるんだな?」
そんな二人のやり取りを見つつも、ゼロスが研究員にとといかける。
「進化系のエクスフィアにどこまで通用するかわかりませんが。
神子様は神託をうけたときにその台座とともに埋め込まれましたよね?」
「おう」
クルシスからの神託をうけたあの日、クルシスの輝石はゼロスの胸元にと収まった。
「それが……以前に神子様の体を調べさせてもらったことがありましたが。
かわった形の要の紋であることはそのときに判明しております。
どうやら、特殊な物質でその要の紋はつくられております。
おそらくは、クルシスの輝石はその特殊物質で要の紋をつくる必要性があるのかもしれません」
「その、特殊物質、というのは何なのかしら?」
「マナの欠片とジルコンをユニコーンの力で調合されたルーンクレスト。
それを元にしたらしきもので中枢にマナリーフの繊維を利用。
ちなみに、これはアステル殿が以前興味本位で調べたカーラーン大戦の中にあった、
クルシスの輝石の浸食、という名目の内容から説明させていただいています。
…どちらにしても手にはいらぬ希少すぎる物質ばかりですね。
ちなみに、その書物には、こうかかれていたそうです。
すなわち、永続天使性無機結晶病…と。全身がクルシスの輝石になってしまう病らしいです。
最終段階の皮膚結晶化の症状からおよそ数カ月で全身が輝石にと変化する。
完全に皮膚が輝石化すると次は内臓器官が輝石化し最終的には死に至ります」
そこまでいいつつ、
「まあ、まだ症状が初期の初期のようですし。普通の要の紋でも抑えることは可能かと。
クルシスの輝石を自由にあやつれるようになれば症状もなくなるはずです。
その間に必要な品々を手にいれられれば……」
「要の紋。か、どこかで手にいれられないかな」
一通りの説明はロイドにはよく意味がわからなかったが。
すくなくとも、応急処置として要の紋があればどうにかなるかもしれない。
それだけはわかった。
「要の紋か。よっしゃ、俺様にまかせとき!」
ゼロスの台詞にロイド・ジーニアスは顔をみあわせ首をかしげる。
「何かあてがあるのかしら?」
「ちょうど今日はバザーがひらかれてるからな」
何でも定期的に広場においてバザーというものが開催されているらしい。
ときおりかわったものも出品されているので可能性があるかもしれない、とのこと。
たしかに今は少しでも早い方がいいのも事実。
ゆえにゼロスにいわれるまま、一行はバザーへと向かうことに。
「なんだよ。ここは。ジャンク品ばかりじゃないか。こんな店に本当にあるのかよ?」
ゼロスに案内されてやつてきた、バザーの店先でロイドが絶望的な声をあげる。
ここなら、要の紋が売られているかもしれない、ときいていたのだが、
視た限り、がらくた以外の何物でもない。
「すばらしい!すばらしいぞ!ここは!ああ、これは古代魔科学のカーボンか!
ふはははは!こっちのものはなんだ!?」
「…まただよ」
手当たりしだいに売り物をひっくり返しているリフィルにたいし、
ロイドとジーニアスはただ、やれやれ、と首をすくめる。
「お、おい?リフィルのお姉様はどうしちまったんだ?」
ゼロスが唇をひきつかせつつも、横にいるしいなにとといかける。
「…きかないどくれ」
しいなももはや諦め顔。
「もう、たのむからさ。要の紋らしきものを探してくれないかな?」
いってもむだとわかってはいるが、とりあえずいいつつも、そのまま捜索することしばし。
「あった!要の紋だ!」
箱の上に無造作に置かれているのは古びて汚れてはいるが
紛れもなく要の紋。
「なんだい。あんたこのガラクタがほしいのかい?」
「ああ。いくらだ?」
「そうだなぁ。五千…いや、一万ガルドだな」
「足元みやがって……」
「こっちも商売だからな」
ロイドが文句をつけると男はうすら笑いをうかべる。
「よし。今すぐここのバザーの責任者を呼んできて。こいつが商売できないようにしてやろう」
「な、なんだよ!あんたは!」
そんな台詞をきき、男があせったようにいってくるが。
「は。神子ゼロス様をしらないたぁ、いい根性してるじゃねぇか」
「!み、神子様!?ど、どうぞ、このがらくた…
いえ、これは差し上げますので御許しくださいませ!」
げ、という表情をおもいっきりうかべ、
そのまま要の紋をひっつかみ、ぐいっとおしつけるようにしていってくる。
「うむ。いい心がけだ。覚えておくぞ」
「はは~」
「…権力の無駄遣い……」
ぽそっというしいなに、
「ここでの神子の立場ってすごいんだね」
ぽそり、とジーニアスがいい、
「もう、姉さん、用事はすんだんだからいくよ!」
「ああ、まだ調べて…!」
姉を無理やりその場からひきはがす。
「ありがとうな。ゼロス。助かったよ」
「な~んの。ロイド君のためじゃないから気にするなって。
かわいいコレットちゃんのためだもん」
そんな会話をしている最中。
「あ、ここにいた」
ふときづけばエミルがこちらにやってきているのがみてとれる。
「あれ?エミル、どうしたんだ?」
「どうしたも何も。遅いから迎えにきたんだよ。
そもそもあまりここは長居はしないほうがいいとおもうよ?
ロイドだってノイシュを生体実験材料にされたり、誘拐とかされたくないでしょ?」
さらり、というエミルの台詞に、
「ああ。たしかにあれは珍しい生物だから、そういう輩がいても…」
「ってちょっと!ここってそんな物騒な人達がいるの!?」
おもわずジーニアスがひく。
「なんでか僕をみては皆が遠巻きにしてるけど。
けどノイシュの特徴わかる人にはわかるからね」
あるいみでは貴重すぎる生体材料といえるであろう。
この世界で初めてうまれし生命体、なのだから。
「あと。プレセアって子の住んでるところはアルタステさんって人のところだって」
「アルタステだって!?あのドワーフの!?」
その言葉にしいながおもわずくいついてくる。
「ドワーフ?こっちの世界にもいるのか?ドワーフって」
ロイドの素朴なる疑問に、
「いるよ。そもそもアルタステは要の紋にかけては右にでるものはいない。
というかそのやり方をうけついでいる最後の一人とまでいわれているドワーフなんだ。
アルタステならさっきいっていた材料とかもどうすればいいのかわかるとおもう」
そんなロイドにと説明しているしいなの姿。
「ロイド!希望がみえてきたよ!」
「あ、ああ!よし、ならいこう!」
しいなの言葉をうけて何やらはしゃぎだすジーニアスとロイド。
「…研究院にもどらなくてもいいのかい?」
ゼロスの問いかけに、
「完全なる要の紋があるにこしたことはないしな」
「たしかに。下手に症状を緩和する要の紋ができたとしても、
逆に症状を悪化させかねないわね。ロイドの意見に私も賛成よ」
リフィルも思うところがあるらしく、ロイドの意見に同意する。
「たしか、オゼットだったよね?プレセアの住んでるところ」
ジーニアスがいってきて、ふと。
「そういえば、今はプレセアは?」
「ノイシュ達といっしょにいるよ。今はルーメンに頼んでる」
ちなみに光の結界をほどこしているのでノイシュが人々に気づかれることはない。
街をでてからエミルがいったのか、ルーメンというセンチュリオン、となのっていたそれは、
真っ白い鳩?のような姿にかえ…どうやら姿は自在に変化可能、らしい。
リフィルがかなり興味深い、と目を輝かせてはいたが。
常にエミルの肩にとまっていた状態であったのにそういえば今はいない。
イグニスはなぜかハムスターのようなものになり、
エミルの腰の鞄の中にちょこん、とはいっているのだが。
「そういえば、さっき背後の方で悲鳴…きこえなかった?」
「さあ?」
まあ、こちらにむけて敵意丸出しでつけてきていたのだから当事者の責任である。
そもそもこのあたりにいる魔物達もエミルのことに気付いている。
そんなエミルにたいし敵意をむけているとなれば魔物達とる行動はおのずときまっている。
「しかし…何だ」
「何だい?ゼロス?」
「しいなも何だって疑問におもわないんだ?魔物達がよってこねえ……」
いつもなら道をあるいていればかならず魔物と遭遇する、というのに。
まったくもって魔物が近寄ってもこなければ、当然のことながら戦いにもなりはしない。
「しばらく前からこんな状態がつづいてやがる。しいな、そっちのほうはどうだった?」
それは今現在、国でも不思議がられていること。
目の前に魔物がいても魔物が人をあまりおそわなくなった、と。
それでも恐怖にかられ、人が攻撃をすればさすがの魔物達も反撃していたりするのだが。
報告にはこうもある。
魔物達が以前よりも強くなっている、と。
王が目覚め、そして力を取り戻しつつある以上、それに比例して配下たる魔物達の力もつよくなるのも当然。
魔物の王たる精霊ラタトスクが目覚めていることをしらないがゆえに、人々はわからないままにとまどうしかない。
「そういえば…コレット達が風の封印を解放してからこのかた、
魔物達の動きがほとんどなくなってはいるよ?あっちのシルヴァランドでもね」
しいなが思い出すようにゼロスにと説明する。
「研究院からの報告でもマナが今まで欠けていたはずのものまで安定している。
という報告があがってきてるからな。いまだに研究院では研究中で正式発表にまでいたってないが」
「そうなのかい?」
「エルフの里に調べにいっている奴らもいるようだが。情報は得られてないらしい」
エルフ達はかたく口をとざしたまま、何もかたろうとしない、らしい。
「まあ、アステルのやつが、マナの流れをつかめるのはエルフ、もしくはハーフエルフなんだから!
とかいって、教皇やら陛下をまめるこんだらしく、
彼らも異常の原因解明にかりだされてるくらいだからな。彼らも今は外で原因究明に駆り出されてるはずだ」
「え?国が許可したのかい?ハーフエルフ達があの場からでるのを?
本来ならばあの研究施設に軟禁…もとい、収容されたハーフエルフ達は一生、
あの場から他の研究院の護衛やらで連れて行かれないかぎり
死ぬことでしか出ることもできないのに?」
ゼロスの言葉にしいなが驚きの声をあげる。
それはしいな達にとっては常識で、あの場におくられているハーフエルフ達は文字通り、
あの施設から死ぬまで外に何か特例や事情がないかぎり出ることができなかったというのに。
ぎょっ。
そんなしいなの台詞におもわずぎょっとするジーニアス。
「一つきいてもいいかしら?こちらでは、種族の差別とかどうなっているの?
シルヴァランドでも確かに差別などはあったけど。
こちらのように貴族とかそういうのはなかったから」
ジーニアスとは違い、こちらはその態度を表にみせないものの、
気になるらしくそれとなくといかけているリフィルの姿。
「それにしては、あんた、目上のひとにたいする態度、しっかりしてたね」
「あら。それくらいはあたりまえでしょう?」
「あたりまえなんだ」
ロイドがおもわず徹底していらないことをいわないように、といわれていたのに、
おもわず国王とよばれしものの前でたちあがったことをおもいだし遠い目をしてつぶやくが。
あのあと、リフィルにロイドとジーニアスはこっびどくおこられた。
不敬罪とかいってあのまま処罰されても文句はいえない行動。
それが眼上の人の前で許可もなくいきなりたちあがり、勝手に発言する、という行為である。と。
「身分制度、とよばれているものがある。国王、教皇、神子。
これが国にとって最高峰だね。そして」
「まあ、ぶっちゃけ、公爵やら子爵やらとかもいるけどな。
簡単にいえば、一番最下位の身分層はハーフエルフだ。
ちなみに、罪人は死罪。例外はほぼない。あるとすれば今の研究院の関係施設に一生幽閉、だな」
交互せ説明してくるしいなとゼロス。
「何だよ!それ!命を何だとおもってるのさ!」
そんな彼らの説明にジーニアスが思わず叫ぶが。
「あんたらのほうではどうかはわからないがな。
こっちではハーフエルフは百害あって一理なし、とまでいわれてるんだよ。
俺様からしてみれば、関係ないような気もするんだがな。
何といってもハーフエルフのお姉様達は美人がおおい!
ハーフエルフは愚かで野蛮でけがらわしい生き物だ、と産まれたときから教育をうけるがな
実際にあってみれば、どこが。けがらわしいどころか綺麗などころよりどりみどり!」
しかもスタイルがいい。
何をされても文句をいわないのがゼロスとしてはあまり面白くはないが、
ぼがっ。
「…ってぇ…」
そんなゼロスにしいなの鉄槌がふりおろされ、はぁ、と息とともに
おもいっきりゲンコツをくらわせたのち……横ではゼロスが頭をかかえているが。
「この馬鹿はほっといて。…まあ、…あたしもあれには賛成しかねるよ。
でもまあ、あの街から早くでた、というのはあるいみでよかったとおもうよ。
あの地下にはね。むなくそがわるくなるくらい、ヒトをつかった実験とかも行われてるんだよ。
このコリンもその実験の結果うまれてきた子さ。
…身分の低いものの命がかるくあつかわれる。それがここ、テセアラなのさ。
中には親が子を、すこしばかりの資金をえるために生体実験の道具として
研究院に売り払うものすらいるくらいだ」
みためは華やかで豪華といえる繁栄世界テセアラ。
だが、その裏ではかなりあるいみでやんでいるらしい。
「何だよ…それ。ディザイアン達みたいじゃないか……」
ジーニアスのつぶやき。
「あるいみでディザイアン達よりたちがわるいよ。
こっちは国ぐるみで許可してやがるからね。しかも国公認の奴隷制度ってやつまである。
奴隷とされたものは、人とみなされない。家畜以下でしかない。
使い捨ての道具として、その命はヒトとはみなされない。
あの研究施設に幽閉されているハーフエルフ達も同じ扱いさ」
そういうしいなの表情は硬い。
「何でそんなのほうっておいてるのさ!」
ジーニアスからしてみれば信じられない。
それゆえの叫び。
「どうにもできないのさ。一人がさわいでも、さわいだやつが罪人とされる。それがここ、テセアラの現状だ」
絶句、するしかない。
「何だってそんな…皆、いきているのに。どんな命だって、皆同じだろ?かわりはしないのに」
「…ロイド」
さすがに完全には理解できなくても、家畜以下、使い捨ての道具などいわれ、
さすがのロイドもある程度は理解できたらしく、理解にくるしむ、とばかりにおもわずつぶやく。
「まあ、あんたたちシルヴァランドでは差別があっても、
種族同士が案外一緒になって過ごしているみたいだしね。
特にロイド、あんたはドワーフに育てられていたみたいだし」
「そうなのか?このロイド君は」
それまで頭をおさえていたゼロスが反応し、ロイドにと問いかける。
「あ。ああ。親父が俺が幼いころに母さんと俺を拾ってくれたんだ。
…母さんは俺をみつけたときはまだ息があったらしいけど……」
「…そっか」
おもわずぽん、とロイドの頭をなでる。
「ゼロス?」
「何でもねえよ。さて、じゃあオゼットにむかっていくとするか」
思い出すのは真っ赤な雪。
子供の前で殺される親。
その共通点。
違うのは、あのとき、ゼロスが母親からいわれた台詞であろう。
おまえなんか産まれなければよかった。と。
あのときからゼロスの時はとまっている。
「…移動中の会話による、移動速度の低下……」
ぽそり、とプレセアがそれまで黙っていたが口をひらく。
「いつの時代も、いつの時もヒトは己と違うものをなかなか受け入れようとしない。
それゆえに差別というものが産まれている。それだけのことでしょ?
受け入れれば共に生存し互いに高め合っていくことが簡単なのに。
それが世界の本来のあるべき姿なのに、ヒトはそれにすら目をそむけて。
己達のみの利益のみで他者を、そして自然をないがしろにしてゆく。
自らが住まう大地すら穢し、マナをも無意味に消費してね。
その結果がかつての大戦。ヒトは愚かにも大樹を枯らした。
無意味に消費しまくるマナをつかった兵器の多様で。
本当に、ヒトとはどこまで愚かになれば気がすむんだろうね…
いずれ世界がヒトは必要ないもの、と切り捨てるかもしれない、ともおもわないで」
「伝説の古代大戦、のことね」
エミルの言葉にリフィルがため息をつく。
「それはあたしらもならったよ。古代大戦によって枯れた大樹カーラーン」
幼き日にだれもがきく、勇者ミトスの英雄話。
「古代大戦の結果、大樹カーラーンが枯れて、マナを生み出すものがいなくなり
その後、世界は二つにわけられた。マナの均衡はあやういが・・・テセアラは繁栄している。
子供でもここ、テセアラでは誰もが知っている事実だな」
しいなにつづいてゼロスが答える。
「こちらでは世界が二つにわけられた、というのは教えられてはいないわ。
マナを生み出すものがいなくなり、までは同じだけども」
「こっちにはディザイアンの伝承はないの?
僕たちのところでは勇者ミトスが女神マーテルとの盟約によりディザイアンを封じた。とあるけど」
それすらもユアンの話しからしてみればかなりあやしい、と今では理解しているが。
リフィルとジーニアスの問いかけに、
「そんなものはないよ」
しいながそういえば説明してなかったとばかりにいい、
「そもそも、ディザイアンって何だ?そりゃ?」
ゼロスも初耳ゆえに首をかしげる。
「…やはり、あのユアンが言っていた通りみたいね。偽りの真実…ね」
ちらり、とエミルをみるがエミルは先ほどの台詞をいっただけで無言のまま。
本当に、おもってしまう。
人を全て一度消してしまったほうが楽なのでは、と。
そしてまた一からまっさらな状態で初めていけばいいのではないか、と。
それでもそれをしないのはごく一部にまだ救いがあり、あがくヒトがいる、と知っているから。
「僕たち、シルヴァランドにいる人を家畜同然にしてエクスフィアの材料としている存在達だよ。
彼らはマナを大量に消費してシルヴァランドを衰退させている、といわれている。
女神マーテルの封印で、その封印が弱まるとディザイアンが活動を再開する。
そういわれてるんだ」
「そういえば、八百年以上前にもそんな奴らがいた、という古書があったっけ?」
八百年の間、常にディザイアンはシルヴァランド側にいたがゆえに、
すでにテセアラにおいては伝説に近い。
「ディザイアンにつかまった人達はおそらく今までも全員が、
エクスフィアにさらられたのでしょうね」
「…つまり、あの橋はシルヴァランドの人達、三千人分の魂の結果ってわけさ」
視界の端にうつるは、海をまたぐ巨大な橋。
しいなのそんな台詞に、
「だぁ。やめやめ。暗い話しはともかくとして。
それより、コレットちゃぁん。…本当に反応がねぇな」
「こら!ゼロス!あんたどさくさにまぎれてコレットにいたずらしてるんじゃないだろうね!」
「あほ!そんなことするか!ただ、今の会話をきいてて反応があればな。
とかおもって話しかけただけだろうが!」
「はん。どうだか。あんたならやりかねないからねぇ」
「俺様なら、ってどいう意味よ」
「あんた。前にあたしがシャワーを浴びているのを覗いていたじゃないか」
「そ、それは未知なのものへの探究心ってやつよ」
「…探究心がきいてあきれるよ」
「…しいな、水浴びのときは必ず見張りが必要なのね?」
「できたら外での水浴びするときはこいつをぐるぐるの素巻きに…
いや、素巻きにしてもこいつはどうやってか抜けだすから…」
「そのあたり、詳しく話しあいましょう。旅は長いのだから。身の安全は確保しないとね」
「ああ。そうだね」
何やら二人して会話をはじめるリフィルとしいな。
そんな二人をよこめでみつつ、
「…にしても、天使化…か…俺様は、…こんなの、ごめんだぜ」
自分だけでなく、妹にもこんな目にはあわせられない。
神子としての役割を妹にゆずればすべてがおわる。
そうおもっていたが、ゆずったばかりに妹がこんな目にあったとするならば、
死んでも死にきれない。
自分が神託をうけたときにこの要の紋とともに体に埋め込まれなければ、
自分もこのようになっていた、というのがわかる。
誰にもみせたことなどはないが、ゼロスは天使の羽をもっている。
それゆえの台詞。
だからこそ、ルーメン達、センチュリオンの姿がみれた。
天使化は、無機生命体に近づいた証でもあり、
また大自然の一部と認識されるがゆえに、視ることが可能なのである。
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あとがきもどき:
薫:うわ。W上にて確認してなかったせいか、画像UPをわすれてたー汗
プレビュー画面では確認してたんですけどね。
まともにウェイブ上で確認おこたってた…あう…
なのであらためて画像あげと、あと4話の改行失敗してたので改めてあげなおしました。
2013年6月25日(火)某日
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