まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
ゼロスはアステルからいろいろと報告はうけてますよ~
アステルもこの国ではゼロスくらいしか信用できそうなのがいないので、
餌(まて)をぶらさげてうまくゼロスをつかってますv
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「あった!」
リストにはのっていない膨大な量の古書。
それを徹底してさがしていればそれらしき文書を発見した。
「大樹カーラーンの精霊、ラタトスク!これだ!」
「アステル?それには何とかいてあるの?」
「まって。…うわ。盲点!ラタトスクは精霊でもあり、魔物の王でもあるって。
えっと…ラタトスクはセンチュリオンという八体の水や火、風など、
それぞれの属性を司る部下をもち、センチュリオンによって世界にマナが運ばれ…」
そこまで解読し、おもわず眼をばちくりさせる。
「…精霊達はセンチユリオン達の運ぶマナをうけて生存し…って!?
いや、それより、ここ。…すべての世界は精霊ラタトスクによりうみだされし、
大樹カーラーンのマナによって世界は生み出され…全ての世界はラタトスクに創られしもの。
…って何これ!?」
「…エルフの伝承にあるわ。世界は世界樹によりつくられた、と」
無理やりにアステルにひっぱってこられたという一人のハーフエルフの女性がいってくる。
「センチュリオン…か。そいつらは今、どうしているんだ?」
「どうしてるって・・・そうか!わかった!」
「何がだ?」
「この異常ともいえるマナの安定だよ!そのセンチュリオンがきっと目覚めたんだよ!
それならば、センチュリオン達は魔物を従える、とかいてあるし。
だったら納得がいく!!彼らがきっとマナを魔物に命じて調停してるんだ!」
「なぜ、今さら?」
「さあ?…もしかしたら、精霊ラタトスクに関係してるんだろうけど…
もっと詳しく調べる必要がある。…精霊にきけばわかるかな?」
資料によれば精霊もラタトスクにうみだされし部下のようなものだ、
会社組織でいうならば、ラタトスクが会長ならば、それをうけて世界を運営しているのがセンチュリオン。
その下にいるのが精霊達や魔物達、といったところなのであろう。
国におきかえてみれば、ラタトスクが国王であり、センチュリオン達は国王直属の側近達。
精霊達はそれぞれの箇所を管理するものたちであり、魔物達はそれらを潤滑にうごかす影のようなもの
「精霊がおしえてくれるとでも?」
「地の精霊ノームなら。あのノーム、ものすごいお酒ずきなんだよね。
前もお酒かなりもっていったらいろいろとおしえてくれたし」
「…お前は精霊になにやってるんだ……」
おもわずうなるリヒター、とよばれし紅い髪の青年は…おそらく、間違っては…いない……
それはエミル達がここ、テセアラにくる数日前のできごと。
光と闇の協奏曲 ~王都ともうひとりの神子~
バタバタバタ。
ざわざわ。
ザッザッガシャガシャ。
街全体が騒然とする。
「ああ、もう!何もこんな街の真ん中に着陸しないでもいいじゃないか!
しかも、僕だけ噴水のなかなんて……」
他の皆はきちんと広場に着地したのにジーニアスの乗った乗り物だけが噴水の中へ。
それゆえにジーニアスは今現在、噴水の水でびしょぬれにとなっている。
「あれ?おっかしいねぇ。こんなはずじゃあ…自動操縦のプログラムは確かに……」
そういうしいなの視線はどこか泳いでいる。
「…はぁ。しいなってまさかとおもってたけどすっごいどじキャラ?峠で穴にもおちてたし」
そんなしいなをじと眼でみていっているジーニアス。
ふとみれば、さすがに街中にいきなり飛来してきたゆえに衛兵達があつまり、周囲を取り囲んでいたりする。
「みんな仕事熱心だね~」
そんな彼らをみてにこやかにいいきるエミル。
「って、エミルものんびりしてないでよ!」
「え~?でもさ。ノイシュがおびえてるんだから、僕はノイシュ担当ね?」
く~んく~ん。
たしかにおもいっきり震え、しかもぺたん、とすわりこんで震えている様は何ともいえない。
兵士達が武器をかまえるのをみておもわずロイドが身構えるが、
「ロイド」
そんなロイドをよびとめ、首を横にふる。
リフィルがコレットを抱きしめ守るようにしているが、何があるかわからない。
「しいな」
「ああ」
リフィルにいわれ一歩前にでる。
「神子をよんどくれ!みずほのしいなが戻った。そういってもらえれば通じるはずだ!」
「神子様にだと!?」
「あいつら何ものだ!?」
しいなの台詞に集まった兵士達がざわめきをますが。
「さあ!」
しいながさらに畳みかけるとほぼ同時、
「その必要はない」
いって数名の兵士達につれられでてくる恰幅のいい男。
「ちっ」
その姿をみて露骨に舌打ちしているしいな。
「しいなよ。大義であった。そのものたちの身柄がマーテル教会が。この私自らがあずかる。ふふふ」
笑みをうかべるさまは、しかしどうみても胡散臭い。
「誰だ?信用できるのか?」
そんなロイドの言葉に首をよこにふり、するどい視線のみをむけているしいな。
「くそ。テセアラの神子ってのはどこで油をうってやがる」
ロイドがつぶやくとほぼ同時、周囲にマナが満ち溢れる。
ロイド達の体にまとわりつくような、感覚として覚えのある何か。
「この感じ…まさか…!?」
それはレミエルやユグラシドルのはなった術を感じたときの感覚とよくにている。
ふとみれば、コレットの周囲に光りがたしかにあつまっている。
今の神子は防衛本能に基づき、敵を抹殺する兵器のようなものだ。
そういったユアンの言葉がロイドの脳裏をよぎる。
(ラタトスク様?いかがなさるのですか?)
「様子をみる」
まあ発動したらしたで抑え込めばいいだけのこと。
「コレット?」
ロイドがコレットの肩に手をおくが、ぱしり、とした電気が走る。
それとともに、コレットの足元に浮かび上がる桃色の魔法陣。
コレットの体から赤い光の柱が出現する。
「まさか…敵意に反応しているの!?」
「な…は!ぶ、武器をおさめて!はやく!」
ジーニアスがあわてて目の前にいる兵士達にと注意を促す。
『な、なんだ!?』
あつまってきている兵士達の戸惑いの声。
さすがに身の危険を感じたのか
あらわれていた恰幅のいい男性が兵士の後ろに盾とするように隠れているが。
だんだん光はつよくなり、マナもより強くなる。
「ちっ。ずらかるよ!」
「え?」
「煙幕をはる。その隙に!」
しいながいいつつ符をかまえる。
「でも!」
「全員、ケシズミにされちまうよ!この感じは…おそらく雷のマナ!」
ふと背後をみればたくさんの兵士、その背後には民間人達の姿。
「っ!コレットにそんなこと…そんなことさせてたまるかよ!」
「おい!」
「ロイド!」
「何がおこるかわからないわ。はなれなさい!」
しかし力の奔流につつまれはじめているコレットにたいし、
力に呑みこまれそうになりながらもかろうじてちかづくロイド。
「よせ。コレット。やめてくれ。・・・コレット・・っ!」
そのまま必至にコレットをだきしめる。
コレットをロイドが抱きしめることしばし。
と、ふとその力がよわまり、周囲に光が霧散する。
それとともに、ざっと兵士達が横にわれる。
ゆっくりとその後ろから現れるのは紅い髪をした一人の青年。
長い髪が風にとたなびく。
胸元に光るは…
「あれは…クルシスの輝石?」
きらり、とかがやくそれは、まぎれもなくコレットと同じもの。
長く伸ばした紅い髪をヘアバンドでとめているのが印象深い。
「ゼロス……」
しいながほっとした表情をうかべているのがみてとれる。
「あいつが…テセアラの…神子……」
ゆっくりとした足取りであらわれた男性は、かるく手をあげたのち、
「よっ。ここは俺様が預かる。お前たちはそれぞれの任務にもどりな」
いってそのばにいた兵士達にとそんなことを言い放つ。
「し、しかし。神子様…」
「俺様の知り合いなんでね。まあ、こいつはかなりどじだから着地地点をまちがったんだろ」
「な!ど、どじって!」
そんな彼の言葉にしいながおもわずくってかかるが。
「ならそっちの子に…って、あれ?アステル?アステルくん!?」
「え?」
エミルのほうをみてそんなことをいってくる男性に対し、エミルはしばし目ばちくりさせるのみ。
「あ。ああ。違うよ。ゼロス。そっくりだけど、この子は違う。この子はエミル。
ほら、服装もちがうし、それに髪の長さもちがうだろ?」
ちなみに今現在のエミルは長い髪をみつあみにして後ろでたばね、まるめている状態。
これでローブでまとっていたら間違いなく女の子、で十分に通用する。
「…ち。いくぞ」
神子だけでなくあのアステルによくにたものまでいるとなれば都合が悪い。
何げにアステルとよばれし人物はそのものの弱みすらにぎっていたりするがゆえの判断。
「ほらほら。皆もきちんと役目にもどらないとね~。こいつらのことは俺様にまかせな」
しばしそれぞれが顔をみあわせたのち、
「神子様がそういわれるのでしたら」
そういい、兵士達はそれぞれの持ち場へともどってゆく。
「うわ~。テセアラってすごいね!シルヴァランドじゃみたこともないものがいっばいあるよ!」
いつのまにかその場にいた兵士にことづけていたらしく、
馬車が用意されており、ひとまず一行は馬車の中へ。
ノイシュをどうするのか、という話しにはなつたが、広いので問題はない。
それにこんなかわった動物を外においておくのも問題、ということで、
ノイシュも馬車の中にいれてもらっている状態。
といっても、馬車の中心にねそべる形になってしまっているのだが。
馬車の中から外をみつつ、おもわず感心した声をあげているジーニアス。
「繁栄世界、というだけのことはあるわね」
街のどこからでもわかる巨大な城。
街全体が城壁でおおわれ、きちんと整備されているのがありありとみてとれる。
「でもこちらの世界が繁栄している限り、シルヴァランドは衰退しつづけるのよ……」
「あ…そうだったね。マナが整ってたからすっかり失念してた。
でもさ。一体どうしてそういう仕組みになってるんだろう?」
「そうね。それは興味深いテーマだわ。ふむ」
そんな会話をしている姉弟の前の席にすわっているしいな達。
「で?しいな?こいつら、もしかしてシルヴァランドの人間か?」
「あ。ああ。そっちの子がシルヴァランドの神子・・・さ」
「さっきの翼といい、この表情…感情のない様子といい…天使疾患…か」
「なぜその言葉を?」
リフィルがさしずめつけた病気の名だというのに。
「こっちにも似たような症状は記録にあるのでね。
輝く光りの翼をもち、感情を全く持たない病気が認識されてるんでね。
ゆえに輝く翼からついた名が天使疾患。で。
しいな。まだ俺様、このゴージャスな美人さんたちの名前おしえてもらってないんだけど?」
いいつつも、リフィルの手をしっかりとにぎり、
「ビューティフルでゴージャスな美人なお姉さん、あなたのお名前は?」
「あ、俺はロイド」
「野郎はどうでもいいや」
「…やなやつ」
ロイドの台詞をみもふたもなくばっさりと切り捨てる。
「…人に名前を尋ねるときは、まず自分から名乗るべきではなくて?
さきほどのお礼は一応いってはおきますけどね」
「あ、ロイドのまねっこ」
姉の言葉にジーニアスがいい、
「…人がいっているのをきくとえらそうな台詞だな」
気づいてなかったらしいロイドがそんなことをいっていたりする。
「おっと。俺様をご存じない?この俺様もまだまだ修業不足ってか?」
「馬鹿いってるんじゃないよ。シルヴァランドの人間があんたをしってるはずないだろうが」
しっていたら脅威である。
「かなしいねぇ。俺様の名はシルヴァランドにまで伝わってないのか?」
「つたわってなくて心底よかったとおもうよ。あたしは」
しいなが即座に反応する。
「俺様はゼロス・ワイルダー。ここテセアラの神子をやらせてもらってる。
で、そっちの天使ちゃんの名は?」
「コレットだよ」
ゼロスと名乗った青年にジーニアスが変わりにこたえるが。
「コレットちゃんか。うん。かわいい名前だ。きっとわらったらもっとかわいいんだろうな~」
「「…な、なんなんだ?こいつ(このひと)……」」
そんなゼロスの態度におもわずすこしばかりひいている二人の姿。
そんな会話の最中。
「おっと。そろそろ屋敷につくな。とりあえずしいな。きちんと説明してくれ。
国王に謁見を願うにしても俺様の力が必要だろ?な?」
「ぐ。ふ、不本意だけどね……」
馬車はがらがらとそのまま何やら広い屋敷の入口らしき場所へとはいってゆく。
馬車の中からでもわかるほどに、その屋敷は他の屋敷とは異なり、かなり豪華でとても大きい。
「…事情は、しいなから聞きました。私の理解に謝りがあればお教えください。国王陛下」
ノイシュを他人にまかせられないし、人見知り激しいこを知らない人達ばかりのところにおくの?
そんなエミルの指摘に、まあアステルそっくりな人物がいてもあるいみ説明が面倒、
もしくは厄介ということもあり、ノイシュのもとに屋敷にエミルが残り、
ロイド達のみ国王陛下に謁見をする運びにとなった今現在。
すぐに謁見許可がでるあたり、テセアラの神子の影響力の強さの大きさがうかがえる。
「シルヴァランドとテセアラは、次元の壁を隔てて隣り合う世界。
そして、マナと呼ばれる眼に見えないエネルギーを共有する世界。
マナは世界を構成するあらゆる生命の源。
シルヴァランドの地が荒廃の一途をたどっているのは、
マナがとめどなくテセアラへと流出しつづけているがゆえ。
マナがつきたとき、私たちの世界は…滅亡する」
マナの流れを逆転させるキーイベント。それが神子による世界再生の旅。
旅を成功させて神子が天使になったとき、マナはシルヴァランドからテセアラへの流出をやめ、
逆にテセアラからシルヴァランドへと流出する。
マナをえて、シルヴァランドは蘇る。
そのかわり、テセアラの大地はかれる。
片方が繁栄すれば片方が衰退する。
でも、誰かの命と引き換えにえられる幸せなんて、そんなのは。
それがしいなのいい分。
「しいなよ。何ゆえこのものたちをつれてまいった?」
「申し訳ありません。あらゆる秘術をもってことにあたりましたが。
力量およばず、このしいな、無念にも暗殺に失敗しました」
「無念にも・・ねぇ」
おもわずそんなしいなの台詞をきき、ゼロスがそんなことをつぶやいているが。
「しかしながら。陛下。幸い、神子はいまだ完全な天使化を果たしてはおりません。
そこで、暗殺にかわる事前の策として神子を人間にもどす方法をさぐるべく……」
「…それがそのほうのいいぶんか?」
ここは、テセアラの王都であり王城の中心たる王の間。
今、ロイド達は謁見の許可をえて玉座にすわりしテセアラ国王の前にといる。
「はっ」
国王の言葉にしいなは膝をつきつつも頭をあげずに返事をかえす。
「この子が天使として生まれ変わらなければマナの逆転は発生しない。
テセアラの繁栄はつづく。テセアラにとっても悪い話しではないとおもいます。何とぞご協力を」
リフィルが膝をついたままで礼をつくしそういうが、
「王様。力をかしてください。コレットは、僕たちの大切な仲間なんです!」
「この世界では天使疾患の研究が進んでるんだろ。どんな小さな手がかりでもいいから…」
なぜかそのまま立ちあがり、そんなことをいっているロイドとジーニアス。
あるいみで、不敬罪といわれても文句はいえない行動。
王の前にて勝手に膝をつかずに立ちあがるなど。
しかし二人はそれに気づかない。
「だまらぬか!衰退世界の野蛮人ども!陛下。このものたちは必ずやテセアラに禍をまねきます。
今すぐ断固たる処分を。おそれながら、シルヴァランドの神子の抹殺はマーテル教会の総意ですぞ?
神子様はどのようにおかんがえか?」
マーテル教会の教皇だという男性が杖をもちつつもそんなことをいってくる。
「そうねぇ。あちらさんは、自分とこの世界が滅びてもかまわない。っていってるんだろ?
手土産の一つくらいもたせてかえしてやるのが文明人のふるまいってもんじゃないの?」
神子とよばれし青年はその背を壁によりかからせたまま。
「神子様、冗談をいっている場合では……」
教皇が何やらさらに口をはさもうとするものの、
「そもそも。だ。暗殺者を送るなんて話し、俺様一つもきいてないんだよなぁ?
教会の総意…ねぇ?ひょっとして俺様、ないがしろにされちまってたりする?」
「そ…それは…っ!」
自分一人が勝手にきめて、ついでに国王にも許可をとらずに命令をだした。
それゆえに言葉につまるしかない。
「なぁんてな。俺様政治とかそんなの全然興味ないし。無駄な手間かけちゃいけない。
と気をつかってそっちで勝手に話しをすすめてくれてたりしたんだろ?な?」
「い…いかにも、そ、そのとおり…」
国王の手前そういうしかない。
「だからって、俺様に何も報告もなかったというのはなぁ……」
だらだらと嫌な汗が教皇の背をながれてゆく。
「…よろしい。この世界を旅することを許そう」
そんな二人の会話をききつつも、かるくため息をはく。
あいかわらず権力争いというか教会と王家の立場は昔から水と油といってよい。
それゆえのため息。
ここで彼らを処分といえば話しははやいかもしれないが、神子のたしかにいうとおりでもある。
自分達は衰退世界の愚かなるものとは違う、文明人なのだ、という気構え。
「「よっしゃぁ!」」
おもわず手をたたき合うロイドとジーニアス。
それをみて、リフィルがおもいっきり額に手をあててこめかみをひきつらせていたりするのだが。
「ただし。何か問題を起こされてもこまる。当然監視つきということになろうが。さて、誰が適任か……」
国王が思案しはじめたその矢先。
「は~い、はいは~い!」
「げ」
「「「え?」」」
元気よく手をあげたのは、この世界の神子というゼロス。
「神子が、か」
国王が一瞬眉をひそめるが
「適任っしょ?どのみちこいつらがシルヴァランドにもどらなければ、再生は果たされない。
生きていようが死んでいようがさ。だから俺様が監視役になる。なあ教皇さんよ。それでいいだろ?」
「む。…神子様がそこまでおっしゃるのでしたら……」
しぶしぶ、といった表情で、教皇…何でもマーテル教会、教皇らしく。
この国においてマーテル教会の最高位に位置している人物らしい。
その教皇がしぶしぶ、といった形でゼロスの提案をのむ。
「よかろう。国王の権限をもって、神子ゼロスよ。そなたにシルヴァランドの一行の監視役をもうしつける」
「たしかにうけたまりました。っと」
「さあさあ。遠慮せずにくつろいでくれや。俺様はちょ~とおきがえしてくるからな」
謁見がおわり、ひとまず再びゼロスの屋敷へ。
どうにか旅をする許可をて、リフィル達にもようやく心にすこしばかりの余裕が産まれたらしい。
「すごいや。すごい家具がいっぱいある。さっきはよくみれなかったけどさ」
いろいろあっていっぱいいっぱいで詳しくみていなかったというほうが正しい。
「ええ、本当にすばらしいわ」
リフィルが感心した声をあげる。
どうみても年代物とみられる調度品の数々。
リフィルはそれらに目を奪われていたりする。
「ふっ。そうでもないさ」
そんな二人の言葉をきき、自嘲気味にふっと笑みをうかべ、
「…どんなに身分があっても、格好よくても、望まれて産まれてきた命じゃないからな……」
「ゼロス、あんた……」
「え?」
しいながゼロスを不安そうにみて、ロイドがきょとん、とした顔でききかえす。
「よく聞こえなかったけど…今、ゼロスのやつ、何ていったんだ?しいな?」
「きにしないでいいよ」
しいなはゼロスの事情をしっている。
あのいつもちゃらちゃらとしたのが虚勢であることも。
だからといって数々のセクハラもどきは許せるのもではない、とはわかっているが。
あるいみゼロスとしいなは同士といえる。
だからこそ腐れ縁はつづいている。
あのときからずっと。
ロイドはテセアラの神子だというゼロスがみせたさみしげな表情が気になっているようだが。
「あら?これはゼロスのお母様かしらね?」
壁にかかっている大きな肖像画をみてリフィルがいう。
「ほら、ここに。ミレーヌ・ワイルダー、そうかかれているわ」
ミレーヌ、とかかれている女性は美しい紅のドレスに身をつつみ絵の中でほほ笑んでいる。
「…ゼロスの髪とそして同じ色のドレス…か」
しばしロイドはじっと神子の母親であろう肖像画をみつめつづける。
ロイド達はしらない。
命を狙われたゼロスをかばって母親がしに、その母親が息子にまだ幼い子供に何といったか。
ということを。
「なあ。言っとくけど。恩きせるつもりはないんだぜ?」
今この部屋いにるのは合流したノイシュも同じく。
ここはゼロスの屋敷らしくかなり広い。
ぺたん、と絨毯の上にノイシュはお座り状態。
「そんなつもりは全然ないってのをそこんとこよろしく。
でもなぁ。下手したら教皇の手下かなんかくっつけられて
ちくちくとじみ~~な嫌がらせされちゃう可能性が高かったりしたわけだし。
俺様にずいぶんとでっかい貸しつくったって感じがしねえ?」
どっかりとこれまたふわふわでロイド達は感じたことのない椅子…ソファーというらしい。
に座り腰をおろしていってくるゼロスの言葉の真意をはかかね、ロイド達は何もいえない。
「何がいいたいんだよ?あんたは」
「わかってんだろ?ハニー?」
そのまま無言ですっとしいなの肩をだき、自らのもとにひきよせようとするものの。
どすっ。
ものもみごとにしいなのひじの鉄槌がゼロスのお腹を直撃する。
「…な、なんか、アレだな…」
「…うん。あれだね」
「こんなのが本当に神子なのかよ?」
そんな会話をしているロイドとジーニアスだが、
ふとゼロスがつかつかとロイドのほうにとあゆみよってくる。
「お、な、なんだよ?」
「…エクスフィア、か」
そのままロイドの手をとり、そしてジーニアスの手をもちらり、とみ。
「おそろいだな」
「は?」
いきなりいわれ、ロイドの眼が点となる。
「こいつはたしかにクルシスの輝石とはいわれているが、実際はハイエクスフィア。
そうよばれているらしいぜ?」
いいつつも、胸元のそれを指し示す。
「テセアラの神子はクルシスの輝石とよばれるハイエクスフィアをその手に握りしめてうまれる。
そして三歳になったその日に神託をうけ、その体にクルシスの輝石を宿す」
「神子としての証として、な」
しいなとゼロスの交互の台詞。
「それはシルヴァランドも同じだ。ただこっちは十六になったら神託をうけることになってるけど」
輝石を握りしめて産まれる、という点ではどちらもどうやら同じらしい。
「そっちのすばらしくすてきな女性もそっちのがきんちょ、それにおまえ。
どこからどうみても一般人でしかないお前がどうしてエクスフィアをもってる?」
問いかけるが彼ら三人は無言のままで説明すらしてこない。
「…だぁ。そりゃないだろ?
俺様がぁ。どれだけ誠実で信用できる男なのかぁ。こいつらに説明してやってくれよ」
がくり、とした表情をうかべ、何やらそんなことをいっているが。
本気でいっているのではないらしい。
「嘘はいえないねぇ」
「おおい。つれねえなぁ。広場に俺さまがかけつけたときのきらきらした目は何だったのよ?!
ゼロス、私が頼れるのはあなただけよ?とかいって抱きつきたかったんじゃないの?」
「こ、コロスよ!」
何だかほのぼのとしたやり取りである。
「あ…あのぉ?お二人はどういうご関係で?」
何となく漫才のようなそんなやりとりに、おもわずジーニアスがといかける。
「「腐れ縁~」」
もののみごとに同時にはもったのち、
「俺さまはハニーになってほしいんだけどねぇ。このナイスボディーをゆっくりとあじわ…」
どすすっ。
「うわ。あれはいたい…」
もののみごとにしいなのけりがゼロスの股間を直撃する。
おもわずひくロイドとジーニアス。
「リフィル。こいつは女には眼がないんだ。ぱっくりいかれないようにコレットをよ~~くまもってやってくれ」
「ぱっくり?」
「って何?」
ロイドとジーニアスは意味がわからないらしく首をかしげるのみ。
「そう。そういうこと。よ~~くわかったわ」
「しいな、お前ここはないだろ。ここは。しかし、えっと、そっちのエミル君…だったっけ?」
「え?あ、はい?」
「…その横にいるの、何なんだ?」
すっとゼロスの眼がほそめられる。
「え?ノイシュですか?」
「いや、そっちのよくわからん生物でなくて、あんたの横にいるそれら」
しばし眼をぱちくりさせたのち、やがて納得がいったように。
「ああ。なるほど。この子達が視えてるからの台詞ですか。
姿をあらわしてもいいよ。ルーメン。イグニス」
その言葉とともに、あわく光る鳥のようなものが二匹、その場にと出現する。
それは文字通りの出現。
ゆらり、とその場の空間が揺らいだかとおもうと、そこにいるのだからそうとしかいえない。
一体は輝くばかりの白と黄金いろの光をまとった鳥であり、
そしてまたもう一体は燃え盛る炎をまといし鳥。
炎なのにまったく熱くすら感じられないのは内部に燃えているようにみえるからか。
天使化している以上、今の彼らの姿がみえても仕方ないか。
そのことにふと思い当る。
何しろ今のセンチュリオン達は普通に実体化したのち、姿を周囲からは消えているようにみせかけているだけ。
「この子達は僕の家族の一員ですよ。別にいらないっていうのに。
なんでか護衛が必要だ~とかいって傍にいるんでよすね…」
心底必要ないのに、という表情がありありとみてとれる。
「何をいわれます!エミル様!何かあってからではおそいです!」
「そうです!」
『ってしゃべった!?』
それから発せられるその声にその場にいた全員が思わず驚く。
「いつもは騒ぎになるから姿を消してもらってるんですよ。この子達は」
にこやかに、はたからみればさらり、ととてつもないことをいっているエミルだが、
それがとてつもない、とはエミルはおもっていない。
「家族?それってこの前のテネなんとかというのと同じなの?」
「テネブラエのこと?そうだけど?」
ジーニアスの言葉にさらり、と肯定。
「ほら。やっぱり驚かれるし。だから護衛とかはいらないって」
「いえ。これだけは譲れません!」
「そもそも、今、エミル様に何かあればどうなさるおつもりですか!?」
どうもしない、というのが本音である。
「魔物じゃねえな。かといって精霊ともちがうっぽい。なにもなんなだ?」
「「我らはセンチュリオン」」
「セン?」
ふとその言葉にぜろすが眉をひそめる。
先日、アステルの報告にあった、それを調べるために精霊の神殿にいく許可をもらいたい。
とゼロスのもとにという問い合わせがあったばかり。
大樹カーラーンの精霊に仕えているといわれているその名と同じ、
これは偶然か、もしくは……
「でもまあ、姿が他にも視えるひとがいたら面倒かな?
いつもように姿かえてもらっときますよ。二人とも、それでいいね?他の子達にもそう伝えとくから」
エミル…否、ラタトスくの決定に彼らは文句をいえない。
彼らからしてみれば安全なところにいてほしい、というのが本音。
「他のこって…他にもいるのかよ?たしか、あのアクアってやつに、テネなんとかってやつ」
「ここにいるのがルーなんとかとイなんとかっていったよね?他にもいるの?」
ロイドとジーニアスの言葉はほぼ同時。
「だから、アクアにテネブラエ。この子達がルーメンとイグニス。
他にはトリトニスにグラキエス、あとはソルムにウェントス。計八柱ほどいるよ」
「ちゅう?」
「この子達をよぶときは大概そう呼ぶからね」
「エイト・センチュリオンともいいますが」
ルーメンが訂正がてらに加えて説明してくる。
「そういうあんたもシルヴァランド人かい?」
「どうみえます?」
にっこり。
そんなゼロスの質問にエミルは笑って逆にといかける。
「うっ。…その顔で笑みをうかべられたらアステルの黒き笑みというかたくらみが…
ま、いっか。とりあえずここは俺様の家でもあるし。
無駄に客間もおおいから、あんたたちの寝室にもことたりるし。
今日のところはここでゆっくりとやすんでいけばいい。
俺様はちょ~と用事があるので、これで失礼するがな」
「あんた、まさかこんなときまでまた女のところにかようっていうんじゃないでしょうねぇ!」
「ちっちっちっ。やきもちとは嬉しいねぇ。ハニー。
しかし、世の中の女性全てがこの俺様をまってるのよ」
「誰もまってないよ!というか、肩に手をまわ…って、尻をなでるなぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ばちぃぃん。
ぜいは~。
息をきらせつつもそうさけぶしいなの顔はかなり真赤。
「「あ・・あははは……」」
テセアラの神子って……
そんな光景をみて同時にそうおもうロイドとジーニアスはおそらくは間違ってはいないであろう…
「ロイド。どうかしたの?」
「いや…イセリアで村の皆を傷つけて。そして、今回コレットを守ってやることもできなかった。
少しは強くなったつもりでいたけど、まったく進歩してないな、とおもってさ」
「ロイド…でも、でもロイドはいつも最善を尽くそうとしてきたんだろ?
諦めないでこうしてテセアラにまできた。他の人間とは違うよ。だから僕、ロイドが好きなんだ」
「…ありがとな。ジーニアス。テセアラ…かぁ。ずいぶんとおくまできちまったな」
「ついこの前までイセリアからでたこともなかったのにね」
「ああ」
「なんか夢みたいだ」
「ありがとうな。短い間にいろんなことがかわっちまった。正直…不安でいっぱいだ。
でも、お前は俺の親友のまま、ずっと隣にいてくれる。心強いよ。まじでさ」
「…ずっと、一緒だよ?」
「ああ。よし、せっかくここまできたんだ。あきらめずにコレットも世界も救える道を探してみせる」
「そうだよ。がんばろう!」
あてがわれた一室。
ちなみにまたまたエミルはいつのまにか周囲をみてくる、といっていなくなっている。
エミル、ロイド・ジーニアスが同じ部屋にて、
そしてまた、しいな、コレット、リフィルの三人が同じ部屋をあてがわれた。
夜、部屋のテラスにて星空をみつつもそんな会話をしている二人の姿。
一方、
「髪は女の命、ですものね」
暖炉の前でゆっくりとコレットの髪をすいているリフィル。
ふと、コレットの髪に紅い蝶をあしらった髪留めがあることにきづく。
「これは?」
いつからつけていたのだろうか。
そうおもい、それにふれるが、一瞬、ぴくり、と指がとまる。
一瞬感じた暖かなマナ。
ゆっくりと触れてみるが、やはり暖かなマナをその髪飾りから感じられる。
護符とよばれしものからかんじるマナによく似ているが、その質の差は歴然としている。
こちらのほうは、より強い、少しふれただけでもわかるほど。
しかし見ただけでは絶対にわからないほどに濃密なもの。
こんなものが普通に手にはいるはずがない。
あるとすれば…
「…エミル…かしら?」
大樹カーラーンの枝、とよぶものをもっているエミル。
エミルならばこのような加護つきのものをもっていてもありえるかもしれない、そうおもってしまう。
しかしこれはコレットにとっては助かるかもしれない。
すくなくとも、護符のような力があるのならば、コレットの身の安全だけは確保できるのだから。
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あとがきもどき:
薫:ようやくテセアラ編。しかもゼロス登場です。
いまだにこれ、打ち込みしてて、ラストどちらのパターンにするか悩み中。
またいくつかうちこみして、編集段階で決定、ということになるかな?
2013年6月23日(日)某日
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