まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
ようやく救いの塔も今回でおわり。
ほとんど小説に近いです。あしからず。
次回でようやくテセアラ…にまでいけるかな?
そろそろ普通にこれの続きうちこみするかなぁ…編集でなく…
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「…ミトス…」
映し出された光景におもわず声をもらす。
面影はある。
無機生命体となったとき、加護をあたえることにより彼らの結晶化というのは防げたはずであったのに。
必要以上に無機生命体と体を継続してなしていれば体にいくら加護があろうとも負担はかかる。
下手をすればその身にとりこんだ石の精として魂自体がかきかえられかねない。
そうとも忠告はした。
無機物という特性を利用しての成長。
それはあきらかに、人としての魂の本質からかけはなれた行為。
しかし、かつてのようなその瞳に光がない。
「……闇に呑まれてしまったか。哀れなミトスよ……」
現実に目の当たりにすれば、あのとき、光のみを信じていたミトスの様子と今の様子。
ゆえにエミル…否、ラタトスクとしてはそうつぶやくしかできない。
人は愚かだ。
それでもその闇すらをもはらいのけられることができるものまた人の心だ、というのに。
今のミトスにはそれがない。
完全に心が闇に呑みこまれてしまっている。
「…ラタトスク様……」
傍にいるウェントス達からしてみても何と言葉をかけていいのかわからない。
すくなくとも、彼らもかつてのミトスをしっているがゆえ、
映し出されている映像とはいえ、そんなミトスの姿に何もおもわないはずはないのだから……
光と闇の協奏曲 ~クルシス~
最上階にまでたどり着いたロイド達がみたのは、
祭壇らしき場所に祈りをささげているコレットと、そしてゆっくりとその祭壇におりてくる光の球。
その光の球はいつものようにレミエルの姿となり、
いつもとは異なり、コレットの目の前にと足をつける。
いつもは上空から見下ろしていただけだ、というのに。
「さあ。我が娘、コレットよ。最後の封印を今こそ解き放て」
先にきているというクラトスの姿はなぜかこの場には見当たらない。
そのことにロイドは少し疑問におもうが、今はそれよりもコレットのほうが大事。
「そして、人としての営みをささげてきたそなたに残されたもの。
すなわち心と記憶をささげよ。それを自ら望むことでそなたは真の天使となる!」
高々と言い放つレミエル。
『!』
その言葉にロイドとジーニアスは息をつまらせる。
さきほどリフィルから説明はうけた。
うけたが、レミエルから直接そうきかされるのとでは衝撃が違う。
「コレット…僕たちを忘れちゃうの?」
不安そうなジーニアスの台詞。
「…コレットは、ここで人としての死を迎え、天使として再生する。
世界を再生すれば、それと引き換えにコレットは…死ぬ。死ぬことが天使になる、ということ」
リフィルの言葉に、
「それは少し違う。神子の心は死に、体はマーテル様にささげられる。
コレットは自らの体を差し出すことでマーテル様を復活させるのだ。
これこそが世界再生!マーテル様の復活こそが世界の再生そのもの!」
高々とレミエルが両手をひろげ言い放つ。
「そんな…そんなのって…」
ロイドは絶句するしかない。
そんな中。
「レミエル様。シルヴァランドには隣り合うテセアラという世界があるそうですね」
一歩前にでてといかけるリフィル。
「そなたがしるべきことではない」
「ことさらに隠すのは本当だからね?二つの世界はマナを搾取しあっているのね?」
それが知りたかった。
クルシスの…天界の真意を。
「そのような話し、だれからきいたのだ?」
レミエルの言葉には感情がこもってはいないが、すこしばかり驚いているのか、
いつもとちがい言葉に強弱が感じられる。
「天界を統べるというクルシスでも両方の世界を平和で豊かな世界にすることはできないのかい!」
しいなの問いかけ。
「…神子がそれを望むなら、天使となって我らに力をかすがいい。
神子の力でマーテル様が目覚めれば、二つの世界は神子が望むように平和になろう」
「・・・!」
「本当か。だと?なぜ自分がここにきたのか、神子はわかっておろう?」
「・・・・」
「まさか…ほんとうに、死ぬつもりかい!?」
しいなが声をふるわせるが、コレットはロイド達をみて笑みをうかべる。
そのまま一歩、レミエルの前へと進み出るコレットの姿がそこにある。
「…ダメだ!コレット!お前が犠牲になったらお前のことが好きな仲間も。
家族も友達も…俺も!みんなが悲しくて犠牲になるのと同じだ!」
ロイドが叫ぶが、ジーニアスが駆けだそうとするロイドを背後からはがいじめにする。
「!はなせ!ジーニアス!」
「ボクだってコレットが変わってしまうのは嫌だけど。それならどうすればいいの!
…シルヴァランドの皆も苦しんでるんだよ」
「それは……」
コレットか、世界か。
しかし、よみがえるのはここにくるまでにみた膨大たる棺の…神子の成れの果て。
世界再生が始まったのは古代大戦後だ、といわれている。
にもかかわらず、しいながいうには二つの世界は平行線のまま。
それくらいはいくらロイドとて説明をうけたからわかっているつもりである。
「神子一人が犠牲になれば、世界は救われる。
それともお前は世界より神子の心だけが救われたほうがいいというのか?」
レミエルが鼻にかけたようないい方で淡々と言いつのる。
「だったら…だったらどうして、今まで二つの世界が平和になっていない!」
ここにくるまでみた棺の数は尋常ではなかった。
「…今までの神子に覚悟がたりなかっただけのこと。マーテル様を復活させるにいたらなかっただけ。
さあ、コレットよ。父のもとにくるのだ」
淡々といいきり、それでいてもう興味がない、とばかりにコレットを促すレミエル。
コレットがその言葉をうけてレミエルにと歩み寄る。
それと同時、コレットの足元に魔方陣らしきものが浮かび上がり、そこから発する光がコレットの体をつつみこむ。
「コレット!」
ジーニアスをおしのけ、ロイドがかけよろうとする。
「きちゃだめ」
ふと口元をうごかすと、それまで出そうとおもっていたのに出なかった声が出る。
「…馬鹿な。…まあいい。所詮は些細なこと」
何やらそれをみてレミエルがそんなことをいっているが。
「コレット、お前、声が!」
「声が…でた!」
ジーニアスがふというが、だからといって今の状況がどうこうなるわけではない。
「うん。嬉しい。…これで最後にロイドにさよなら…いえるね」
そういい、ロイドにむかってほほ笑むコレット。
光につつまれ、体は苦痛に痛みを訴えてはいる。
それでも、声がつたえられないでお別れをいうよりははるかにいい。
「…わたし。わたしね。ロイドがいたからこの世界を守りたい、そう思えるようになったんだよ?
ロイドがいたから十六年の命をちゃんといきようって思えたの。だから…ありがとう。ロイド。ありがとう」
ぽたり、とコレットの瞳から涙がこぼれでる。
涙がずっとあれからでなかったのに。
「コレット…涙が…」
死の前に涙などが出るようになっても、それはそれであるいみ苦痛でしかないとしいなはおもう。
「!コレット!コレットォォ!」
はっと我にもどり、ロイドが名前をよびつつかけよろうとするが。
「…さようなら…ロイド…」
コレットはすっと眼をとじる。
そんなロイドにむかい
「この娘は自らの体を差し出すことにより、マーテル様を復活させるのだ。
これこそが世界再生。マーテル様の復活が世界の再生そのもの。
神子一人が犠牲になれば世界は救われる。
それともお前は世界より神子だけが救われたほうがいい、というのか?」
冷徹なまでのレミエルの声。
「クルシスって天界の名だろ!?クルシスでも両方の世界を平和で豊かな世界にできないのかい!?」
しいなの言葉。
先ほどもいったが、改めての問いかけ。
「まてよ。レミエル!他に方法はないのか?コレットはあんたの娘なんだ。
あんただって本当はコレットが死ぬことなんて望んでいないんだろ?
あんたは、あんたはこれでいいとおもってるのかよ!本当に他の方法はないのか!?
自分の娘をこんな目にあわせて、おかしいとはおもわないのか!?
あんただって本当はコレットが死ぬことなんて望んでいないんだろ!?」
ロイドの叫びに。
「…娘だと?は。笑わせる。
お前たち、劣悪種が守護天使として降臨した私をかってに父親よばわりしたのであろう?」
「な…なに?」
目の前のレミエルが何をいっているのかロイドには理解できない。
「私はマーテル様の器として選ばれたこの娘にクルシスの輝石を授けただけだ。
優劣種たるハーフエルフである私に人の娘などいようはずもない。
私はマーテル様への生贄に選ばれたこの娘に天使結晶
…クルシスの輝石とよばれるものを授けただけだ」
ハーフエルフ…
天使なのにハーフエルフ、というのが気にかかる。
だけども、つまるところこの目の前の天使はコレットの父親ではない、ということ。
すなわち、ずっとコレットは騙されていたことになる。
「!コレット!」
はっと我にともどりコレットの名を呼びつつもコレットの元にとかけよる。
「ロイド。大丈夫だよ。私…気がづいてた。
何度かレミエル様に会うたびに。この人は違うって思っていたから…」
それでも悲しいことにはかわりない。
今ほど元にもどった涙がでる、ということがわずらわしく感じてしまう。
意識していないのに、ぽたり、と涙が頬を伝わる。
「コレット!気づいていたなら、何で!」
そんなコレットをぎゅっとそのまま抱きしめる。
あいかわらず光の魔方陣はコレットの体を包み込んでいる。
そんなコレットをぎゅっと抱きしめるロイド。
「コレット…ごめん!俺、…助けてあげられなくて…ごめん!
もう、間違えないって誓ったのに…おれ、また間違えてたみたいだ……」
もう、間違えないって決めたのに…
「ううん。ありがとう。ロイド。…もう、時間…みたい…さよう…なら…」
そのままふわり、とコレットの体がうきあがり、光にとつつまれる。
しっかりとロイドとしては握りしめていたとおもっていた手がするり、とその手からすりぬける。
それとともにコレットの瞳から光りがきえる。
表情も無表情に。
まるで…人形のように。
その頬には最後にながしたであろう一筋の涙の跡。
一端上昇し、その体がもどってきたとき、コレットの瞳はもう何もみてはおらず、
頬笑みもただ唇にははりついているだけで、意味や理由は完全に失われてしまっている。
「嘘…でしょう?こんなことって……」
ジーニアスがつぶやく。
と。
「ふははは!どうだ!とうとう完成した!マーテル様の器が完成したぞ!
これで私が四大天使の空位に収まるのだ!」
「!まちな!コレットをどうするつもりだ!」
いきなり高笑いをはじめているレミエルにたいし、しいなが身構える。
「天界へ導くつもりなのよ」
リフィルがつぶやき、
「きさま!ゆるさねえ!何が天使だ、何がクルシスだ!何が女神マーテルだ!コレットを返せ!」
ロイドが何ともいえない感情をもてあましつつも、それでもだまされていた、
ということもあいまってレミエルをきっと睨みいいつのる。
が。
「そうはいかぬ。この娘はマーテル様の器。
長い時間をかけてようやく完成したマーテル様の新たなる体なのだからな!
お前の記憶どころかお前の声に耳を貸す心もない。今のコレットは死を目前にしたただの人形」
「コレット…本当に俺のこと…わすれちまったのか?」
語りかけるがコレットの表情はかわらない。
「ここまでの護衛、大義であった」
レミエルがそういい、コレットをつれてそのまま消えようとする。
が。
すばやく韻を結び、いつのまにか構えていたらしく、刹那、しいなの周囲に符がはりめぐらされる。
それと同時、レミエルの周囲にも符がくるくると円を描くように体にまとわりつく。
「いかさないよ!あたしが奴の動きをとめておく。ロイド!」
しいなの言葉にはっと我にともどり、
「ああ、コレットを…コレットをつれていかせるかぁぁ!」
また、間違うところだった。
いや、もう間違ったといってもいい。
だけどこのまま連れていかれるのは許容できない。
「アクアエッジ!」
ふと背後からジーニアスの術が炸裂する。
「ロイド!」
「ああ!」
「しょうがないわね。…でも」
今までのこと、そして今のこと。
エミルのいっていた偽りの真実。
それはもう確信。
おそらく、コレットがマーテルの器となったとしても、世界は…二つの世界は救われない。
ゆえに。
「フォトン!」
リフィルの詠唱が完了し、リフィルの術が炸裂する。
「愚かな。劣悪種風情が優良種たる我ら天使にかななうとおもってか!ホーリーランス!」
光の槍がしいなとジーニアスの上にふりそそぎ、かろうじてしいなは防ぐがジーニアスが直撃をうける。
「ジーニアス!ナース!」
リフィルの言葉とどうじ、全員に癒しの力が発揮され、やさしく彼らの傷をいやしゆく。
すかさずしいながここぞとばかりに炸力符をすばやく韻をむすんで解き放つ。
それとともに、符が直撃したレミエルの体が一瞬、爆発にと巻き込まれる。
さすがの至近距離の爆発はかわせなかったらしく、レミエルがおもわずよろけるが、
その隙をロイドがみのがさずにおもいっきり斬りつける。
体制を整えるまえの攻撃。
ゆえにたえられなかったのであろう、
レミエルはそのままがくり、と膝をつきそのままうつむきにと倒れてしまう。
「最強の力が…なぜ…。馬鹿な…最強の戦士である天使がこんな人間どもに…劣悪種どもにっ!」
翼がだらり、とその背中にのる。
どうやら今の一撃達はレミエルにとって致命傷に成りえたらしい。
「コレット。もどってこい。俺がかならず元にもどしてやるから。
しいな、おまえのところだと元にもどせる可能性があるんだよな!?」
「完全になおるとはいえないよ。けど、可能性はある」
「ならつぎの目的地はきまったもとうぜんだ!」
「ってどうやっていくつもりなのさ!」
おもわずのロイドの言葉にジーニアスがつっむが。
「コレット!…コレット…本当に俺のこと、わすれちまったのか?」
はなしかけるがコレットはういたまま、表情の一つもうごかしはしない。
と。
「無駄だ。その娘にはお前の記憶どころか、お前の声に耳をかす心すらない。
今のコレットは死を目前にした、ただの人形だ」
ロイド達にとっては聞き覚えのある声がきこえてくる。
「クラトスさん!?」
「お前、今までどこにいたんだよ!何をいってるんだ?!」
淡々というクラトスの言葉がロイドにはわからない。
「神子は世界の再生を願い。自ら望んでそうなった。
神子がデリス・カーラーンに召喚されることで初めて封印はとかれ、再生は完了する」
「…何、いってるの?クラトスさん」
ジーニアスの声がかすかに震える。
あれ?
私、なんだろう?これ?
ふわふわとした意識が自分の外からみているようで。
そこに自分の体があるのに、自分が自分でない感覚。
自分の体とは繋がっているのはわかるが、目の前の光景もありありとみてとれる。
クラトスさん?
自分をここまで想いをうけとってつれてきてくれた仲間の姿。
なのに、何だろう。
何かが違う。
そうおもう。
コレットの姿は今のこの場の者たちにはうつっていない。
それはコレットの精神体が体からぬけでて、周囲をみているからに他ならない。
ほんのりと頭のあたりが暖かいような気がしておもわずふと手をそえる。
そこにつけている蝶の髪飾りがほんのりと暖かいように感じる。
…エミルのおかげなのかな?これって?
ふと髪飾りから感じるのはエミルから感じる暖かな波動そのもの。
コレットは知らない。気づかない。
それを身につけているがゆえに、コレットの精神体…すなわち、魂そのものが守られている、ということを。
「クラトス…どういうことだ!?」
「お前たちもそれを望んだ。神子はマーテルの新たなる体としてもらいうける」
「どういうことなんだ?…クラトス、こたえろ!」
イセリアからこのかたずっと共に旅をつづけていたクラトスの言葉にロイドは混乱するしかない。
認めたくないことが目の前でまた起ころうとしている。
それが理解したくないのに理解できてしまう。
ふと、倒れ伏していたレミエルの指がクラトスのいる祭壇の上のほうにと微かに動く。
「ク…クラトス様…慈悲を…私に…救いの手を……」
そんなレミエルにたいし、クラトスは一瞥をむけただけで、
「しらんな。私も元は人間。劣悪種に救いをもとめるのか?レミエル」
淡々と冷たく言い放つ。
レミエルの指はやがて床におちそのまま動かなくなる。
「クラトス…お前、いったい、何ものなんだ!?」
ロイドの問いかけ。
信じたくない、信じていたい。
これまで自分を鍛えてくれ、さらには特訓までしてくれたクラトス。
常に自分を気にかけてくれていたのはしっていた。
そんなクラトスが敵だなんてロイドからしては信じたくない。
それでもこの状況では聞かずにはいられない。
クラトスの背があわく光る。
次の瞬間。
ロイド・ジーニアス・リフィル、しいなの目にはいったのは、クラトスの背にありえないものがある光景。
輝く青き翼。
色は違えども、コレットの翼と同じもの。
天使の…翼。
「天使の…翼…クラトス…お前……」
「私は、世界を導く最高機関。クルシスに属するもの。神子を監視するために差し向けられた天使だ」
「て…天使!?」
「私たちを…だましていたのね?!」
「あんた、ずっとだましていたのか!?」
リフィルとしいなの叫びはほぼ同時。
「だます?それは聞き捨てならんな。神子は世界の再生を願い人としての死を選んだのだ。
お前たちもそれを望んだ。望まれたからこそ神子は自ら天使になることを選んだのだ。
私は手をかしたまでだ」
昨日のクラトスの台詞がロイドの脳裏によみがえる。
覚えてないのか?お前はこういったのだ。
自分達には神子がついている。世界を再生する救世主が、と
コレットは始めから再生することは死を意味している、としっていた。
そうさきほど先生はいった。
ならば、ならばあのときの自分の台詞をコレットがどうとらえたのか…考えるまでもない。
つまり、コレットは自分達がそう望んでいるから、だから……
肝心なところで神子にすがることが守るということならば、そうもいわれた。
知らなかった、そういえば楽かもしれない。
けどそれは理由にならない。
まちがいなく、コレットをそこまで追いつめてしまっていたのは・・他ならぬ自分達だ。
と嫌でも理解してしまう、否、理解してしまった。
それでも、いわずにはいられない。
「!コレットが死ぬなんてしらなかった!」
「知ろうとはしなかったのだろう?それに、死ぬわけではない。マーテルとして新たに産まれかわるのだ」
「…なあ、クラトス。俺につよくなれって。コレットを守るために強くなれっていってくれただろ!
クルシスとか、天使とかよくわかんないけど、
でも、あんたがいってくれたことはわかってるつもりだ!だから!」
ロイドの問いかけはクラトスにとどいているのかいないのか。
「神子の護衛。ここまで御苦労だった。お前たちは帰るがいい」
「コレットをつれていくつもりか!させるかよ!」
ロイドがそういい、勝てないまでもあきらめるわけにはいかない。
それゆえに剣をかまえ、クラトスにむかってきりかかる。
が、そんなロイドをかるくいなし、剣をぬかないまま、かるく体術だけでロイドをあしらい、そのまま。
「…ひけ。傷つけたくはない」
「何をっ!」
そのまま蹴り飛ばし、ロイドをコレットの横から遠ざける。
そのまま衝撃派、であろう。
しいなたち三人もまた背後のほうへと吹き飛ばされる。
クラトスが何かしたのか、その手には剣を鞘におさめている様子が眼にとまる。
今、クラトスは剣圧により彼らを後方へ吹き飛ばしたに過ぎない。
「コレットを…つれていかせるか!」
体がいたむよりも、心がいたい。
それでも気力をふりしぼり体制をととのえる。
この場から引け。
クラトスの口元がそう何か紡いだとおもったその矢先。
上方からまばゆい光が舞い降りてくる。
それはまるでレミエルが封印の場にておりてきていたときと同じような。
異なるのは光の色の質。
こちらは桃色のような神々しいような輝きを放っている。
「…やはり、いかなお前でも本気で対峙するにはいたらなかったか……」
光がはじけ、そこにあらわれたのはロイド達は今までみたことがない青年。
輝く金髪に細身の体。
ひときわ七色にと輝く美しい光の翼をもつ一人の青年。
クラトスはそんな彼にとそのままの姿勢でひざをつく。
「…ユグドラシル様…」
「…何だ?あいつ?」
「また天使かいっ!」
ジーニアスとしいなの叫びはほぼ同時。
ふと青年はロイドのほうに視線をむけ、その眼を半目にしたのち、
「…お前がロイドか」
冷めた視線をむけてロイドにと言い放つ。
「っ!人に名前を尋ねるときはまず自分から名乗れ!」
クラトスの態度からして、彼の上にたつものではあろうが、しかしどうして自分の名をしっているのか。
それがきにかかる。
「あの男もロイドの名を知っているようね」
リフィルは何やら思案顔。
「はは…犬の名前を呼ぶときにわざわざ名乗るものはいまい?」
「何だと!?」
「哀れな人間のために教えよう。我が名はユグドラシル。クルシスを…そしてディザイアンを統べるものだ!」
こ、こいつが!?
ロイド達が驚愕するのとほぼ同時。
無言でユグドラシル、となのった男が指先を動かす。
と、それだけで先ほどのレミエルの攻撃とは比べ物にならないほど強烈な光が刃となり、
ロイド達をつつみこむ。
「うわぁぁ!」
「きゃぁっ!」
交錯する悲鳴が誰のものなのか確認する余裕すらロイド達にはない。
「!」
クラトスがそれをみてか思わず立ち上がるが。
彼が再び指先を動かすと、祭壇からひとふりの古びた剣らしきものが浮上してくる。
みたかぎり、今までそこに安置してあったものなのではあろうが。
剣から放たれる衝撃派がロイド達をその場から吹き飛ばす。
「どうなさいますか?ラタトスク様?」
目の前にあの場所にて行われている景色を空中に浮かびあがらせつつも様子をみる。
すでに飛竜達にのったレネゲード達もまたそれぞれの場所にとちっている。
神子達…ロイド達がすでに塔にいった、と教えたのは他らぬエミル自身。
宿舎の前にてやってきた彼らに問われ、教えたにすぎない。
飛竜は解き放たれ、ラタトスクの…正確にいえば風のセンチュリオン・ウェントスの指示に従っている。
「様子をみる。何。気配はすでにつかんだ。あの上空に種子はある。…ゆけ」
ふわり。
言葉とともに、手に小さな紅き蝶が出現し、それらは舞うようにして塔のほうへとむかってゆく。
「ラタトスク様。あまり分身をおつくりになられては……」
心配そうなトリトニスの声。
「問題はない」
それよりもきになるのは。
「この地には異様に負があふれているな」
悲しみ、苦しみ…そして、絶望、そして救いという小さな希望の光り。
幾多もの魂が悲鳴をあげている。
逃れることもできず、とらわれたままの魂の数。
しばし眼をとじ意識を集中。
やがて塔の最上階、そしてさらに隠されし次元空間を発見する。
コレットに渡した自らの分身体でもある擬態させた髪飾りにてかの場所の様子は手にとるように伝わってくる。
ちょうどミトスが剣の力を解放した様子も映像にと映し出される。
「…エターナルソードを確認した。この上空に種子がある。
どうやら八大達の力で周囲に結界を張っているようだが……」
分身たる『眼』にてさらにその内部へと。
映し出される光景は、やはり種子のなかに異物が入り込んでいる模様。
しかもかつて蓄えていた力がほとんどなくなっている。
今のままでは芽吹かせても大樹としての力は完全ではない。
「まったく。余計なことをしてくれたものだ」
それともやはり彼らにあのとき渡したのが間違っていたのか。
「様子などみずに一気に地上を浄化しておくべきだったか?あのとき……」
「ラタトスク様……」
そんな主の言葉にトリトニスは何もいえない。
現に、ミトス達、人は争いをおこし、大樹を枯らしただけでなく、
今まさに種子すらも奪おうとしているのだから。
その剣圧というか衝撃派でロイドは祭壇の壁の横の柱にと激突し、
衝撃のすごさをものがたるかのように、激突した柱がぽっきりと音をたてて崩れ落ちる。
うめきつつも薄めをあけると、仲間達全員が倒れているのがみてとれる。
みんな…
声をだそうにも体に力がはいらない。
「クラトス。依存はないな?」
「…ユグドラシル様。彼らは神子をここまでつれてきました」
クラトスの声はロイド達の救援をもとめるものなのか、それすらロイドにはわからない。
「…ふん。まあ、よかろう。マーテルの器さえ手にはいれば……」
ユグドラシル、とよばれしものが、コレットに手を伸ばそうとしたその刹那。
どこからともなく飛んできた光の球がユグドラシルにとあたりそうになる。
そのまま体をひねりその攻撃をさけ、大きく後ろにと後退する。
足音…ロイド達とは違う、第三者の足音。
それもかなりたくさん。
薄れる意識の中、ロイドの眼にいくつもの人影がとびこんでくる。
この場所にかけこんできたのは…あのボーダとかいわれていた男とその仲間たち、らしい。
「く!神子はすでに天使化してしまったか!やむをえん!殺さずにつれかえるのだ!」
ボーダは浮かんでいるコレットの様子をみるなりはがみする。
が、すぐさま部下たちにと指示をだす。
「は!」
ボーダの部下達であろうものたちがロイド達わひとりづつ、すばやく脇にとかかえる。
そして数名の部下達がユグドラシル達にむかって攻撃をしかける。
が、ユグドラシルの放った攻撃により彼らの体はまたたまに光りにつつまれ消滅する。
だがそんな消滅する仲間達の背後では、てばやく一人一人を抱きかかえ、
さらにはそらにういていたコレットをもどうやらひきずりおろしたらしい。
そのままロイド達を脇にかかえるように、そしてコレットをひっはるようにしてその場から姿をけしてゆく。
「…こざかしい。レネゲードが。まあいい。ひくぞ。クラトス」
そんな彼らをみて吐き捨てるようにユグドラシルが言い放つ。
「…御意」
ユグドラシルが光につつまれて、消えてしまうと、一人祭壇の前にのこされたクラトスは、
どうにか命拾いをしたロイドのことをおもい、おもわず安堵の息をつく。
「……レネゲードに助けられたか。…死ぬなよ。ロイド……」
それはクラトスの心からの本音。
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あとがきもどき:
薫:きりのいいところでくぎったら。
すこし短くなったという。
なので前回のボツシーンの続きにうちこみしてたやつをすこしをば。
あの場合、エミルがユアン達とともにでてますからねぇ…OAV版だと…
「輝く御名の下、地を這う穢れし魂に、裁きの光を雨と降らせん。
安息に眠れ、罪深き者よ。ジャッジメント!」
輝く雷がいくつも発生する。
が。
それらはまたたくまに一か所にと収縮する。
「まったく。マナの無駄遣いだな」
のんびりとトリトニスの背に横にすわりつつも、すっと手を上にかかげているエミル。
それとともにまたたくまにエミルのなかに雷は吸い込まれ、内部へと還りゆく。
エミルは飛竜達とは少し上空にと一人位置しており、
ゆえに飛竜達の影にかくれ、地上からはその姿はあまり認識できなかったりする。
「何!?」
上空にいる何か、が今の雷の術を吸収したようにみえたのはきのせいか。
いや、きのせいでもなく、術は確かに発動した。
が、何らかの理由で対象に当たらなかったのはみてとれる。
こんな真似ができるものがいるなど聞いていない。
いや、可能性があるとすれば、それは…
「まさか…エミルか!?」
もしもあれが大樹の枝ならば、それくらいのことはできるかもしれない。
大樹カーラーンはとてつもない力をひめしもの。
マーテルが貸しだされていたあの杖ですら死者を蘇らせる力すらもっていたのである。
「クラトス!」
「…ロイド。お前たちがなぜそのものたちと一緒にいる」
ロイドとジーニアスが乗っている竜がクラトスの前にと着地する。
「飛竜にのっていたのはディザイアンじゃないよ!レネゲードって……」
ジーニアスはイセリアの村にきたのがレネゲードの一員だとしらない。
「俺たちはコレットをたすけることに決めた!協力してくれ!
あんたなら…あんたならわかってくれるだろう!」
「ふ。ずいぶんと慕われているようだな。クラトス・アウリオン」
ユアンがそんなクラトスにふっと笑みをうかべいいつのる。
「え?」
ロイド達はユアンとクラトスを見比べる。
「…神子は。神子はマーテルの新たな器としてクルシスがもらいうける」
「クルシス?それはたしか天界の…」
「時間がないんだ。頼む。クラトス…わかってくれ!」
かけよるロイドだが、視えない力にクラトスの背後からはじきとばされる。
「「「!!」」」
ロイド・ジーニアス・リフィルの目にはいったのは、クラトスの背にありえないものがある光景。
輝く青き翼。
色は違えども、コレットの翼と同じもの。
天使の…翼。
「な、あれはどういうことなんだい!?」
ばさり。
遅れて到着したしいなが思わず叫ぶが。
「天使の…翼…クラトス…お前……」
「私は、世界を導く最高機関。クルシスに属するもの。神子を監視するために差し向けられた天使だ」
こんな感じの繋がりになってましたv
ちなみに、エミル、おもいっきりクラトスのはなった術のマナ、自分の中にもどしてますv
本気で隠してるつもりなんですかね?うちのラタトスク様はv(まて
2013年6月21日(金)某日
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