まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

今回はかなり象徴的?な言い回しのみ、となってます。
あまり重要シーンではない(でもあるいみ重要)なので。
おおまかにかいているだけです。
なのでこの回はよみとばしても問題ありません、…たぶん。
とばす、というひとは次へ
終わりのあとがきににちょっと、
別作品?エミル=ラタトスク様のイセリア滞在の冒頭をいれときますv

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野営をする、ということで、一応薪などは集めておいた。
そして周囲をみまわってくる、とその場をあとにし、出向いた先は自分が拠点としている場。
ギンヌンガ・カップ。
かつては魔界へ繋がる次元の裂け目…そのように認識されていた。
が、今はそれらは次元の裂け目というよりは次元の繋がりを隔てている扉、といったほうが正しい。
かつて自らがつくりあげし扉はいまだに健在で。
かつてと違うのは、かの魔界は今はこの地上にある次元ではなく
別の惑星に移動させている、ということくらい。
この扉はラタトスクの存在そのものによって護られている。
ラタトスクがいるかぎり、第三者がどうあがいても扉を開くことは不可能。
逆をいえばラタトスクがいなくなれば、この地表全ては魔界ニブルヘイムの領土と成り果てる。
目の前の扉にはエイト・センチュリオン達のコアにやどりし彼らの特性をしめす紋章が記されている。

巨大な円形の広間の中心。
その奥にあるのは巨大な扉。
その前にぽつん、とあるのは蝶をかたちどったシンプルながらもどこか神々しいというか、
畏怖感をおそらく生き物ならばもつであろう椅子…玉座がそこに存在している。
そのまま、すっと手をあげる。
手の平から発せられた光りがセンチュリオン達の紋章を一つ、一うちつけるように叩いてゆく。
それとともに扉の紋章が激しくひかる。
そしてまた、傍に…背後にひかえるエイト・センチュリオン達の体も呼応する。

元々、この惑星にはマナというものが存在していなかった。
分霊体としてつくった彗星によって視ていた旅の最中、
その彗星を通じてほどよい恒星たる太陽をみつけたがゆえに、
この場あらたな世界を、とおもったのがそもそものはじまり。
だが、集めた力は形をなさず、惑星そのものは瘴気の塊でしかなかった。
それでもすこしづつ、彗星をつかい、この星を命あるもの、にかえていっていたその矢先。
百年毎にやっていた作業にふとかげりがみえた。
人による…争い。
マナを使いし愚かなる争いは、大地を、人々を疲弊させていっていた。
ようやく停戦がなされたときにはすでに大地は疲弊しきっており、
ゆえに一部のものたちはあらたな新天地を目指すことにした。
残されしものにも希望をたくすため、大樹に願い、その枝を株分けし、
そこにあらたな精霊を宿すことにし、世界の要となしたのち。
大樹はもともとラタトスクがうみだせしもの。
コア、というありようをもっているラタトスクであるからこそ移動は可能。
ノルンも精霊として安定したのち、ラタトスクも人の願いにこたえることにしたのは、
かの地のことがきになっていたのもあるがゆえ。
かの地とはもじどおりこの場所であり、次なる時にはこの場に世界を、とおもっていた場所。
自らがこの地に大樹をうみだし、世界の理をあらたにかきかえた。
もともと、この世界はラタトスクが創りしものでもあったがゆえに理の書き終えはスムーズにいき、
もともといた魔界とよばれしものたちを次元を隔てて彼らにも自分達にも害がないようにした。

「ふむ。封印には問題がないようだな。地表にて一部では負があふれているが…
  お前たちをつうじ、穢れを還元できないほどではない」
扉の前にたち淡々と言い放つ。
「ここ。ギンヌンガ・カップには何ものも達いることはできないようにする。
  お前たちセンチュリオンとこの俺、そして縁を結びし魔物達以外はな。
  魔族の媒介となる件の書物が流出しているのがわかった以上。
  魔族の力をもってしてここを訪れよう、とする愚かなるものがでてきかねないからな」
それだけいいはなち、かるく手をすっとふる。
刹那。
きぃん。
地下…正確にいえばこの惑星すべての地下にはりめぐらされている大樹の根による、
それらすべてをふくめた空間が瞬時にあらたな理にとつくりなおされる。
「種子における歪みはいまだに健在。互いの空間の安定も整ってきたようだな」
あからさまに偏っていたマナの隔たりは、センチュリオン達に命じてととのえさせている。
どうやら精霊達の力をつかいマナを流すようにしていたらしいが、
センチュリオン達にとっては彼らの力のほうが上なのでそれを上書きすることなどまったくもって問題ない。
いちいち、空間を移動するのも面倒であるであろうから、
トリトニスに命じ、彼の祭壇そのものを空間の扉となし、移動できるようにしている今現在。
「ラタトスク様、いつまであのヒトどもと行動をともにするおつもりで?」
センチュリオン・テネブラエの問いかけ。
その問いかけはどうやら全員の想いであったらしく、
全員が同じ意見だ、とその姿勢が真摯にかたっている。
彼らからしてみれば、裏切る可能性があるヒトとともにいるのが心配なのであろうことも容易に予測がつく。
「ミトスのたくらみがわかるまで、だな。うまくすれば種子にたどりつけるだろう。
  できればミトスがかわせし精霊達との誓約を別のモノに上書きさられれば一番いいのだがな」
素質があるのはあのしいな、となのりし女性のみ。
ふと。
「そういえば、アクア」
「は、はい?」
「お前がみずほの里とよばれし場所できいたところによると、
  あのしいなとかいうものは、その里のものであるらしいな?」
「らしいです。何でも頭領とかよばれているあの迷子のヒトがユミルの森で拾った子供らしいですけど」
「あのものたちは依頼をうけてうごく。か、精霊との契約を依頼してみる、というのも一興かもな」
依頼内容は最低でもミトスとの契約を破棄することを望む、というのも。
ちなみにアクアは人の形体でいっているので彼らに人でないことを気づかれてはいない。
まあ、あまりにうるさい人にたいしては配下たるしもべをけしかけたので、
式神使い、となぜか認識されていたりするようだがそれはそれ。
「お前たちはそれぞれ、マナの調停にむかえ。俺はしばしこの場にて世界の理の乱れなどがないか確認する」
いいつつも、そのまますとん、と扉の前にある玉座らしきものにとすわる。
その姿はエミル、としてのものではない。
彼が本来よくとる精霊、としての本来の姿。
「ゆけ」
そのことばとともに八柱たちの僕達はまたたくまにその場からかききえる。
意識を世界そのものに同化させる。
しばし静寂がその場を支配してゆく……

光と闇の協奏曲 ~ユニコーンと悪意の欠片~

パラグラフ王廟をぬけて、とりあえずは分岐点たる救いの小屋へ。
「それにしてもあのしいなって奴のいってたこと、よくわかんねぇよな」
「うん。あたしの国っていってたよね?」
救いの小屋に戻る途中、ロイドとジーニアスが幾度もしいなについて同じ話しを繰り返す。
が、考えても答えがでるものでもなく。
ロイドはコレットの約束をまもり、彼女がどんな状態になっているのか、
仲間には一言ももらしていない。
食事のときにはコレットの分までさりげなく自分の胃におさめて異変をけどられないようにしよう、
とどこかちがう決心をしていたりする。
「…それにしても、エミル?」
「……はい?」
「あなた、大丈夫?」
なんだか朝からエミルはぼ~としている。
寝ずの見張りをしていたクラトスがいうには、結局エミルはもどってこなかったらしく、
おそらくは別の場所で野宿をしたのでないか、ということだが。
この様子ではまともにねているのかどうかすらあやしすぎる。
「あ、すいません」
ギンヌンガ・カップにて意識全てを世界に同調させ、
自分が眠っていた間の大地に刻まれし記憶を読み取った。
それはあくまでも自然が感じていたことなので漠然としたことしかはわからないが。
すくなくとも、この四千年にわたり、互いの世界にて神子、とよばれしものが旅にでて、
そして一人ももどってこなかった、というのは大地の記憶に刻まれていた。
あとは久しぶりにエイト・センチュリオン達が勢ぞろいしたのをうけて、
毎度のことながら喧嘩を始めてしまい、それをいなすのにも疲れた、といってもいいかもしれない。
「えっと。次はたしか、ルインでしたっけ?」
「ええ。マナの守護塔にいくためには、おそらく封印の鍵が必要よ。
  話しにきいたことがあるわ。ルインの長が代々その封印の鍵を護っている。と」
再生の書がしめす封印の場ははまぎれもなくマナの守護塔であろう。
そこにいくためには鍵がいる。
それゆえに次の目的地はルイン、という街ということにとなっていた。
「…本当にへいきなの?」
エミルをみていれば心ここにあらず、というような感じをうけてしまう。
いまだに意識を世界と同調させているがゆえに傍から見ればそう感じてしまうのは仕方がないこと。
「なあ。先生。救いの小屋でちょっとやすんだほうがよくないか?ほら、コレットも心配だしさ」
「そうね。そうしましょうか」
たしかに昨日また倒れたばかりのコレットにこの峠超えはきついかもしれない。
ロイドのめずらしくまともな提案に、リフィルが否定するはずもなく。
結局のところ、一時、救いの小屋にて一行は休むことに。


「あのね。ユウマシ湖ってところにはとても綺麗な綺麗なお馬さんがいるんだよ?」
救いの小屋にいた旅業に参加している、という女の子の台詞。
「綺麗な馬?」
「うん!とても綺麗なおうまさん!真っ白で、とても綺麗で。頭に角があるの。でもいつも水の中にいるの」
「こら。すいませんね。旅の人。この子ったら、水の中に馬がいたってきかないもので」
「水の中の馬かぁ。先生、みたいです?…だめです?」
「ゆうまし湖なら、ルインにむかう途中でちょっと寄り道するくらいね。
  …まあ、私も興味があることだし、いってみましょうか?」
「めずらしい!姉さんが寄り道をみとめた!?」
「もしかすれば、白い馬、というのでぴんときただけです。ひょっとして伝説のユニコーンかもしれなくてよ?」


ユウマシ湖。
そうよばれているそこは、泉をたたえた自然豊かな場所。
森がおいしげり、その奥にとある泉は清らかな水をたたえている。
「あれは!?」
ロイドがその湖の底に白い影をみつけ思わず叫ぶ。
「…綺麗……」
「ユニコーンだ…ユニコーンだよね!あれ!姉さん!」
「ええ。でもどうしてあんなところに……」
たしかに救いの小屋で話しはきいた。
だが本当に湖の底にいるとはおもわなかったのもまた事実。
「……ユニコーンに接触できないかしら?」
「ユニコーンの角にあるという癒しの力を利用するつもりか?」
「ええ。そのとおりよ。ユニコーンの角があれば癒しの力も向上する。
  何があるのかわからないのだから、回復力はあってこしたことはないでしょう?」
「たしかに。真理ではあるな。治癒術はユニコーンの角を研究したことから始まったときく」
「それなら何とかしてユニコーンに近づけないかな……」
「でもどうやってあそこに近づいたらいいの?」
「…もぐれないかな?」
「…息がつづかないよ。きっと。かなり深いよ?」
「何とかならないのかなぁ…」
「とりあえず、今は先をいそぐとしよう。道がてらかんがえればいいのではないのか?」
確かに今はユニコーンに急いであわないといけない、という用件はない。
「でも、ユニコーン。彼の力があれば…」
それは治癒の力の向上に役立つ。
ゆえにリフィルからしてみれば機会があればどうしてもユニコーンに直接交渉してみたい、
そうおもう。
自分にその資格がない、とわかってはいても。

とりあえず、一行は何ごともなくルインの街へと進んでゆく。


ルインにてマナの守護塔の鍵をうけとり、そのまま守護塔へと向かっていた最中。
突如として飛来した飛竜の子供。
かなり大けがをおっており、息も絶え絶えであったが、エミルの回復術において持ち直したらしい。
なぜか魔物と会話ができるらしいエミルがいうには、ハイマ、とよばれし場所で何かがおこったらしい。
突如として人が異形に変化したあげく、魔物達も狂ったようになり、
息をするのも苦しいほどの何かがみちた、とのことらしい。
子供は親が子供だけでも、と逃がしたらしいが、たまたま近くに気配を感じ、助けをもとめやってきた。
それは巧妙に隠されてはいたが、すぐさま大地と同調してみれば、感じるのは瘴気の気配。
すぐさまにエイト・センチュリオン達に現場に赴くように命令をくだし、
エミルもエミルできになるので、僕はハイマにいきます、といったところ。
リフィル達もきになるのか、なぜかついていく、といいだし、そして今にいたる。

「飛竜の子ってかわいい~!みてみて。おめめがくりくりしてる!」
「うん。子供のころは皆かわいいよね~」
おもわず遠い目をしながらもなつかしさでおもわず同意をしめすエミル。

彼ら八柱をつくったとき、始めから完成した形ではなく、あえて幼生体からうみだした。
それはコアが時とともに成長するように。
それは遥かなる記憶。
マナを調整するにあたりおっかなびっくりしている様は、みていてほほえましいものであり、
精霊達からもかなり人気があったのもまた事実。
連れ去りたい!という輩もかなりいたが、しかしさすがにラタトスクの直属の僕としてうまれしもの。
力は並はずれており、そういうものはもののみごとに小さな子供達にと撃退されていた。
ちなみにしっかりと、小さな竜はエミルが抱きかかえていたりする。

飛竜の子供がいうには、ハイマで異変かおこっている、とのこと。
エミルのみでいこうとしたが、コレット達が困っている人がいるならほうっておけない。
といいだし、結局のところ全員にてハイマへと向かうことに。


冒険者が集う街。ハイマ。
むき出しの赤土の周囲はほとんど断崖絶壁。
「な、なんだ!?これ……」
息をするのも苦しい。
何か霧のようなものが立ち込めており、それにふれるとがんがんと体力が削られているようなそんな感覚。
一行で平気な表情をしているのはエミルのみ。
そのエミルですらすこしばかり眉をひそめている。
クラトスは平気なような顔をしてはいるがこころなしか顔色がわるい。
「!エミル様!」
ふと、エミルの声をよびつつも、かけてくる水色の髪をしている少女の姿。
「アクア。状況は?」
「はい。街の人達はとりあえず宿屋に集まってもらっています。
  一か所のほうが護りやすいですから。それと陰険がどうにか原因となるものを抑えています」
「いいかげんに、あの子のことをそう呼ぶのはやめようね?」
「これだけはゆずれません!だってあれはほんとうに陰険じゃないですか!」
「…喧嘩するのも仲がいい証拠、とはいうけどね。他の皆は?」
「それぞれに。指示どおりに」
いってかるく礼をとりつつ手を胸の前にてかかげてエミルたいしかるくお時儀をする。
「エミル?この子は?」
「えっと、僕の家族の一人」
そうとしかいいようがない。
まさか直属の配下です、などといえるはずもない。
「あら。エミル。あなた親戚も親もいないっていっていなかった?」
「家族はいますよ」
「兄弟か何か…かしら?」
「失礼な人間ね!私たちとエミル様はそんな関係じゃないわ!もっとこう深い繋がりがあるのよ!
  だって、私たちは!」
「アクア」
ぎろり、とアクアをにらみだまらせる。
絶対にこの子は僕だ、といいかけた。
しかもセンチユリオン、ということまで。
それだけは確信できる。
それゆえにだまらせただけのこと。
「そんなことより、何だ?この魔物の多さは…」
しかもこの気配。
あきらかに覚えのある気配。
それは瘴気。
覚えがあるからこそのクラトスの呟き。
「ここは、今、魔界の瘴気に侵されかけてるのよ。だから魔物達も正気をうしなっちゃって。
  力の弱い子達なんかはとくに。…本当ならばエミル様の手をわずらわせることなく、
  私たちだけで解決できたらよかったんだけど…申し訳ありません」
しゅん、となるアクアの頭をぽん、となでる。
「君たちのせいじゃないよ。…アクアは彼らを人々がいる場所に案内して」
「エミル様は?」
「原因を排除しないことにはどうにもならないからね。…この地を元にもどさないと」
「お気をつけてくださいね?」
「うん。アクアもね。じゃあ、リフィルさん達はアクアについていってくださいね」
「エミルはどうするんだよ!?」
「僕は僕のすることがあるから。それに君たちだとこれ以上、上にいくことすらできないよ?」
今ですら今にも立っているのがやっと、というような形なのに。
エミルが小さくマナを操り彼らの周囲に風をおこしていなければ、
まちがいなく彼らはまたたくまに瘴気に侵されているであろう。


案内された宿屋にはどうやら避難してきた村人でごったがえしており、けが人もかなりの数でみうけられる。
コレット達にも警戒していた一行ではあるが、
いきりたって村人がコレットをつきとばした衝撃にてコレットの背に翼が出現し、
それをみた人々が態度をころり、とあらためる。
それはこの世界にいきているものならば、マーテル教の祭典をよんだもの。
もしくは話しをきいたことがあるものならば誰でもみおぼえのある羽。
それはまぎれもなく天使の翼。
「ついに人間牧場の呪いがこの地にも…
  これまでは牧場から逃げ出したものだけに呪いはかかっておったのに……」
一人の老婆がそんなことをつぶやいている。
「どういうこと?」
ジーニアスの素朴なる疑問に、
「この地は人間牧場から逃げ出してきた者達がよくたどりつくんじゃ。
  牧場から逃げ出した人には呪いからかけられており、ついには死んでしまうのじゃよ。
  その呪いは当人にしか影響をおよぼさなかったのじゃが…このたび、ついに街にも…」
「ここは、冒険者が集う街、ハイマです。といってもあるのはこの宿屋だけですが…
  しかし、この魔物の数は異常です。しかも魔物同士で争うなど…ありえないことです」
きけば、魔物同士でいきなり狂ったような魔物たちに、これまた魔物がそんな魔物達をとめるかのように、
いたるところで戦いが今現在、このハイマでは繰り返されていたらしい。
少し前にようやくそんな魔物達の攻防がおちついたものの、
「…落ち着いたとたんに、こんどは墓場にはいれなくなっちまったからな…」
一人がぽつり、とつぶやく。
「?」
「いきなり墓場全体に闇がかさなり、まったくもってはいれなくなっちまったんだよ」
いわれて窓から上のほうをみてみれば、異様に真っ暗な空間がぽつん、とあるのがみてとれる。
「マーテル教の教えのとおりに旅をはじめたんだけど。こんな怖い目にあうなんてきいてないわ!」
一人の旅業の女性が何やらかなきり声をあげている。
どうやらしばらくこの場にあるいみ閉じ込められている状態ゆえにいっぱいいっぱいになっているらしい。
「お墓のところでぶつぶついっている男が目撃されていたが、前兆だったのではないのか?」
「君たちも救いの塔をみにきたのかい?しかし不幸だったね。
  今、頂上付近は危険なので誰もちかづかないのさ。
  たしかに救いの塔はこの街の頂上からが一番よく見えるが。
  近づこうとしたもののことごとくはその場にたおれ、いきなり…いや、それはいうまい」
どうやらこの人物はコレットが神子だ、ということに気づいていらいなしい。
「みたところ君たちはまだ子供だ。絶対にいってはだめだよ?……大切なひとを失いたくなければ、ね」
目の前で異形の姿になってゆく妻をどうすることもできずにみるしかなかった。
魔物により倒され、妻は元の姿にもどったが、それは一瞬のことで。
正気をとりもどしたが、妻の体はそのまま大気へ…大地へと還っていった。
「アスガードやルインからも救いの塔はよくみえるが、一望できるのはここだけ。
  ゆえにここにきていたのだが…まさか魔物の襲撃にかちあうとはな」
冒険者らしき人物がそんなことをいっている。


「テネブラエ」
闇の結界により、瘴気はどうやら抑えられている模様。
ここは墓らしいが目の前や足元すらみえないほどの暗闇に今は覆われている。
それとともに、目の前の闇がまたたくまにと形をなす。
「もうしわけありません。ラタトスク様のお手をわずらわすことになってしまいまして…」
心底もうしわけなさそうにいってくるが、彼らセンチュリオン達のせいではない。
「それか」
墓の上に黒々としたあかぐろい何か、がまがまがしい気配を放ちつつ存在している。
元々は土の中にあったらしいが、土の周囲を消して風にて吹あげたのち、
特殊な葉の上にそれをおき、大地にこれ以上の浸食がなされないように配慮しているのがみてとれる。
視たかぎり、感じる感覚ではこれは古からあるのではなく、つい最近つくられしもの。
人の念がつい最近であるかをしめすかのごとくかなり負の念が強くあらわれている。
「愚かなものが人工的にどうやらつくっているらしいな…」
眉をひそめつつも、それを手にし、一気にマナを押し込める。
それとともに、パキンっ、というおととともに、そのあかぐろい石はまたたくまに、光りとなりて周囲に霧散する。
「今のは五十人ばかりの念でつくられていたが…どこで手にいれたのか確認する必要があるな。
  お前たちも瘴気を抑えるのにそれでなくてもまだ力が完全でないのに御苦労だったな。
  問題があるようならば一度我が内部にともどり、力を補充しておけ」
霧散すると同時、アクアも含めた八柱が瞬時にこの場にと出現する。
それゆえのセンチユリオン達への言葉。
自らの内ならば瘴気などもマナに変換することが可能。
センチュリオン達が瘴気に侵されるようなことはまずないが、
それでもヨドミを自らの力で排除するには彼らの力はまだまだ完全ではないがゆえの台詞。



「では、質問をかえます。これをどこで手にいれたんですか?
  この服もそうですが、中にはいっていた球のようなもの。
  それが全ての原因です。他にももしも同じようなものがあったら大変に危険なんですよ?」
危険といわれても、どういえばいいのか。
かれらは直接はみていない。
エミルの手ににぎられしは、しかし彼らにとってはみおぼえがありすぎる囚人服。
「アレの原因がそれとともにあったものだ、というのか?君は?」
「間違いないですね。そもそもどうしてこんなものが地上にあるのか……」
本来、地上にあってはならないもの。
「…ピエトロのやつがおそらくは知っているだろうが…
  あいつは、呪いとやらできちんと説明ができないからな」
村人の一人がそんなことをいってくる。
彼らは目の前で知り合いが異形になるのをまのあたりにしてしまっているものたち。
瘴気に侵され、そのまま異形のものとなりはて…知り合いにと襲いかかってきた。
飛竜達がすばやく瘴気に気づき、撃退したものの、飛竜達まで瘴気に侵されかかり、
それゆえに子供だけでもこの場かに逃がした。
飛竜達とて意地がある。
自分達の縄張りをよりによって瘴気に侵されたくはない。
それでなくても先日、センチュリオン・ウェントスが目覚めたばかり。
彼らにとっての直接の上司が。
縄張りなどを改めて頼まれていたというのにそんな失態をみせたくはない。
「なら、元通りに元気になってもらって聞きだすまでです」
ほうっておくわけにはいかない。
アレから感じられたのはつい最近つくられたものということ。
数十人異常の生き血により産みだされし…魔の石。
蟲毒の製法と同じようにしてつくられしそれは、時として魔族の力の源となりえるもの。
魔血玉デモンブラッド
まだ使われている人の血と命が十数人単位だから効果は低いが、これがどこでつくられたのか。
下手にソルム達にさぐらせたとしても、もしも魔族のしかも上位のものがいれば、
まだ力が完全でない彼らはコアにもどされる危険性すらある。

問題のピエトロという人物は宿の二階にかくまわれており、
宿の娘が何やら反対してきていたが、そのまま黙らせ二階へと。
アクアが人々の治療はしていなかったゆえにリフィルが怪我をしたものたちの治療にあたっており、
いまだに混乱し動揺している彼らのもとにロイド達はのこっている。
本当にヒトというものはすぐさま何かあれば態度をころっと変化させる。
愚かとしかいいようがない。
コレットが羽をだすまでは、魔物達の仲間だの、このたびの出来事の首謀者だのといっていたくせに。
しかもセンチュリオン達の活躍で彼らは助かったというのにあの子達すら敵扱い。
クラトスに姿をみられても何なので街の入口に差し掛かると同時に、姿を消すようには命じたが。
ちなみに、文字通り、気配を隠すだけでなく、ヒトの目には完全に視えなくなるようにする方向で。
普通に姿を消しただけ…
すなわち、実体化したままで姿をけした場合、天使化したものにはその姿が認識できる。
だが、実体化していないものの認識はできないゆえの命令。


あまり長居をしては余計に混乱をまねきかねない。
そんなクラトスの意見にて、当初の目的、マナの塔へと移動する。
それぞれの胸に何ともいえない想いを残したまま。


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あとがきもどき:
薫:まえがきにもかきましたが。エミルが初期記憶喪失バージョンをば。

ちなみに、この設定。
セネル・クーリッジ=海の精霊メルネス、だったりしますのです。
マイソロジー設定。すなわちほぼ?オールキャラ出演話しになってます。


かつて、世界の中心にマナを生み出す大樹があった。
しかし、争いで樹は枯れ、かわりに勇者の命がマナになった。
それを嘆いた女神は天にきえた。
このとき、女神は天使をつかわした。
私が眠れば世界は滅ぶ、私を目覚めさせよ
天使は神子をうみ、神子は天へつづく塔をめざす。
これが…世界再生のはじまりである。


「きゃあ!」
「もう。コレットっておっちょこちょいだよね」
「てへへ。こけそうになっちゃった」
放課後の教室。
本日の掃除当番である彼らはそれぞれが手に掃除道具をもって教室を掃除していたりする。
「また壁に穴あけないでよ…」
「というか、何でこけただけで人型の穴できるんだ?」
去年の大掃除にてこけたコレットの人型の穴はいまだに教室に健在。
「しかし、何だって私まで……」
「文句をいわない。テネブラエ」
そんな会話をしている横ではもくもくと箒をてにしはいている金髪の少年の姿が。
「しかし。慣れたけどさ。何で犬もどきがしゃべるんだ?」
「犬ではありません。センチュリオンです!センチュリオン!」
器用にもその口元になぜかちりとりをもって、横にいる金髪の少年の手伝いをしながらそんなことをいっている。
「エミルがここにきてからもう半年かぁ」
半年前、いつものようにノイシュと散歩にでていたロイド。
いつもより森が騒がしい、とダイクがいっていたのもきにかかったが。
森の中、少し開けた場所に倒れていた少年。
固く目をとじ、その傍らには犬のような猫のようなものがいた。
一瞬、魔物、かとおもったが。
「ヒト、ですか。申し訳ありません。この御方が休めるところをしりませんか?
  無理をなさったので倒れてしまったのです」
いきなりそれが話しかけてきてさらにびっくり。
少年が着ている服もみたことがないもので、その腰には剣、のようなものがみてとれる。
問題なのは、目の前ではなしている生物。
どうやら敵意はなさそう、というのもあり、そしてまた、困った人はたすけるべき、
というドワーフの誓いを思い出し、とりあえず家にと案内した。
一番の理由はノイシュが彼に対し、またその魔物のようなものにまったく動じなかった、というのもある。
あの人見知りのノイシュが彼の傍から離れなかった、というのもある。
目覚めた少年は、自分の名前のみしか覚えておらず、ついでに横に控えていた動物のようなものの名前はいえた。
が、出身地やどこからきたのか、などまったくもって覚えてすらいなかった。
村にいけば誰か何かしっているかとおもってきいてみても何も手掛かりはえられず。
強いていうならばこの少年はなぜか動物たちとすぐさまうちとけているくらい。
しかもどうやら話せているっぽい。
ついでにいえば魔物達までなついているのにはおどろいたが。
しかし半年も一緒にいればもうなれたもの。
記憶がないことから世間事情にまったくうとく、ヒトの常識もあやしかったがゆえに、
ロイドが担任であるリフィルに相談したところ、リフィルが村長に話しをつけて、彼もまた学校に通うことになった。
その間も、はじめ季節外れの雪が降りだしたかとおもったそれは、年をえるごとにどんどんひどくなり、
今ではもう雪景色が当たり前の光景にまでなっていたりする。
噂では砂漠地帯もすっかり雪景色に覆われてしまっているらしい。
さらに突風なども加わり、すでに吹雪なども珍しくなくなっている今日この頃。
ちなみに、ロイドがノイシュを犬、と言い張っているように、
テネブラエはなぜか、センチュリオン、という生物だ、といいきっている。
まあ、猫の一種だろう、というなぜかそんなずれた考えを村人はもってしまっているのだが。
何しろエミルにノドをなでられるとごろごろいうのである。
これが猫でなくて何という。
まあ、世の中には話せる猫がいても不思議ではないか、という変な感想を村人がもってしまったのもまた事実。
リフィル曰く、魔物ではなく、精霊でもないが、魔物に近いような感じがする、とはいっていたが。
当事者がセンチュリオンだ、と言い切っているのだからどうにもならない。
しかもエミルも、そうだよ、といっているのでらちがあかない。
詳しくきこうにもエミルに記憶がない以上、どうにもならないのもまた事実。
テネブラエにきこうとすればいつのまにか論点がすり替えられ、逆にいじられているこの現状。

「起きなさい。ロイド、アーヴィング!」
教室の午後の光が差し込む窓を背にして立っていたロイドは
突然頭に飛んできた黒板消しに驚き、はっと目をさます。
十数人の級友たちのくすくす笑いが低く、響く。
「ロイド。たったまま眠れるなんて、器用ねぇ」
「リ…リフィル先生……」
ロイドは鳶色の髪からチョークの白い粉をはたきおとしながら、つきつかと歩み寄ってくる女教師の、
リフィル・セイジをちらりとみる。
いけね。
俺、宿題忘れてたたされてたんだっけ。
あらためてその事実にきづき苦笑してしまう。
まあ彼にとっては立たされるのはいつものこと。
「先生。もう授業、おわったの?」
「……もういいわ。エミル?エミル!あなたまで何ぼ~としてるの!」
ふとみれば、横の席のエミルまでもが何やらぼーと外をみているのが目にはいる。
「え?あ。すいません、なんか呼ばれてる気がして……」
「エミル様?」
横で控えていたテネブラエがそんなエミルの様子に心配そうな声をだす。
ちなみに、教室に動物はだめ、とリフィルがいったが、テネブラエがリフィルをいい負かし…
というかどうやらリフィルとかなり意見があうらしく、その意見を子供達に役立ててほしい。
という理由からテネブラエも一緒にこうして教室内にいることが許可されていたりする。
「じゃあ。今の問題。古代大戦について、ジーニアス。あなたが答えて」
「はい。姉さん」
ジーニアスはすぐに立ち上がるとよどみなく唇をうごかしはじめる。
「古代大戦は勇者ミトスによって、聖地、カーラーンにて停戦されました」
そう。
自らの下にて。
ヒトの心とはこれほどまでに動かすことができるのか、とおもったあの当時。
もっともとある介入があって、のことではあったが。
どうやら自分がこれまでによくやっていたことに彼も感化されていたっぽい。
…まあ、鬱憤がたまっていた、というほうが正解、なのだろうがそれはそれ。
「よろしくてよ」
リフィルはそんなジーニアスの言葉にうなづく。
ジーニアス・セイジはまだ十二年だが、村では一番の秀才。
教室の中心あたりにたっているコレットが振り向き、ロイドをちらりとみる。
そんなコレットにちいさく肩をすくめているロイドの姿。
「その後、勇者ミトスは女神マーテルとの契約によって、戦乱の原因であるディザイアンを封印しました」
「…違う」
「?エミル?どうかして?」
「…それ、違う。間違ってる。…頭が…いたい……」
「エミル様。無理は禁物です!」
力をすべて安定と封印にそそいでいるがゆえにこちら側にまわせていない。
ゆえに記憶もあいまいになっているのを知っている。
それゆえのテネブラエの言葉。
たしかに古代大戦はミトス達が停戦させた。
というかあまりにふがいないのでゲーテが率先して介入してきた、というもある。
人は、統一した敵がいればなぜか手をとりあう。
だけど、そのあと…そのあとは……
「彼は…あの子達は…」
「エミル?あなた大丈夫?またいつもの頭痛ね。
  いつもこの話題になるとあなたそうなるわね。すこし休んでおきなさい」
「は、はい。すいません」
「いいのよ」
「でも、先生。封印したっていったって、ディザイアンはとっくの昔に復活して、俺達を苦しめてるじゃないか」
それもロイド達が産まれるよりも前に。
「ですから、封印が弱まるとディザイアンが復活するのよ。前に授業でやったでしょう?」
「…っ!違うっ!」
がたん。
『エミル?』
いつもと違うエミルの口調。
違う。そうではない。
ディザイアン、とよばれているアレは、あの子が…闇におちてしまったあの子が……
思いだしそうになると頭がいたくなる。
今…ここではこれ以上はだめだ、と心のどこかで叫んでいるのもわかる。
「エミル様!おちついてください!」
そんなエミルをあわててたしなめているテネブラエ。
このままでは彼が抑えている気配すらあふれだしてしまいかねない。
立ち上がりおもわず叫ぶエミルにたいし、あわててテネブラエが修正の言葉を発する。
「エミル。あなたもきっと今日が大切な日だから神経がたかぶってるのね。
  いいこと、みなさん。今日は大切な予言の日です。
  マナの神子が女神マーテル様の神託をうける大切な日です。そうですね。神子コレット」
「は、はいっ」
ロイドのほうをうかがいつつも、エミルに心配そうな視線をおくっていたコレットはあわてて返事をし立ち上がる。
「エミルは座りなさい。そのままとりあえず安静に、ね?さて、コレット。世界再生の旅について答えて」
「えっと。世界再生の旅とは、ディザイアンを封印するたびのことです」
これも、違う。
ただ因果律を…強制的に狂わせている因果律をただ変換させるだけの作業。
歪んだ思いのもとにつくられた、いびつなる制度と理。
ゆるされざるものではないもの。
「女神マーテルの試練をこなすと、世界を護る精霊が復活してマナも復活します」
「その通り。完ぺきよ」
そりゃそうだ。
そんなコレットの言葉にロイドはおもわずそんなことをおもってしまう。
そもそもコレットは神子として誕生した。
産まれたときににぎっていたクルシスの輝石が神子である証らしい。
それゆえに物ごころついたころから世界再生、そして神子の使命などそのように教育をうけている。
そう、コレットからロイドはきいている。
ゆえに旅のことでコレットが説明できないはずはない。
「…このたびの異常気象は皆、マナの涸渇が原因だ、といわれているわ。
  ディザイアン達が牧場でマナを大量消費しているせいだ、といわれているわ」
「それにしても、先生。異常気象がおこりはじめたのは数年前ですよね?」
正確にいえば四年と少し前。
ひどくなったのはここ一年ほど。
「それは、ディザイアンの主が復活する前兆、ともいわれているわ」
と。
そのとき、一瞬、戸外が真っ白にと光る。
まばゆい光がどっと窓からおしよせる。
「きゃあ!何これ!」
「まぶしい!」
口ぐちに騒ぎだした子供達にむかい、リリフィルは声をはりあげる。
「静かに!どうやら神託が下るようね。私は聖堂の様子をみてきます。
  皆は自習を。…エミル、つらいようなら保健室にいきなさい」
さきほどからエミルはずっと頭をおさえている。
いつもそう。
この話題…否、授業をするときエミルは原因不明の頭痛になやまされている。
この半年の間、ずっと。
おそらくエミルの失われた記憶に何かがあるのだろうが、しかしリフィル達はわからない。
真実をそれは本当は知っているがゆえの拒絶反応だ、ということを。
「先生。私も一緒にいきます。だって……」
立ち上がるコレットにたいし、
「あなたはここでまっていなさい。本当に神託なら聖堂の祭司の方々がこちらまでいらっしゃるはず。よろしい?」
「はい…わかりました」
リフィルが緊張した面持ちで足早にでていってしまうと、再び教室の中が騒がしくなる。
「おい。今の光……」
「うん。とっても綺麗だったね」
「そうじゃなくてさ…なぁ」
ロイドは窓際から聖堂の方向を眺めているジーニアスの背中にむかって声をかける。
「ジーニアス。あの光りってコレットが産まれたときもってたっていう、アレだろ?」
振り向いたジーニアスはうなづきながら、
「うん。神託のときにはクルシスの輝石が輝くんだって。
  姉さんがいつも授業でいってたじゃない。輝石は祭壇に安置されてるんだって」
もっとも毎日のように神子のみは祭壇にいくことが許可されているのだが。
そして許可さえとればその輝石を家に持ち帰ることも可能。
「そうか」
今さらながらに神託についてよくわかっていないな、とつくづくおもう。
というより授業をうけても頭にはいっていない、というのが本音。
幼い時から神子と一緒に遊んで育った彼は、どこか当たり前のように感じていたのだが、
今の光のまぶしさはどうだろう。
「いこう。聖堂へ」
「ええ!?ダメだよ!姉さんがおこる!」
ジーニアスはとんでもない、というようにふるふると首を横にふる。
「お前もいっしょにいくよな。親友なんだから」
「…話し、きいてる?」
「……大気が、ざわついてる……」
「エミル?」
時折エミルはこういうことがある。
エミルは突発的な嵐がくることなどもどういうわけか感知することができたりしている。
「少し、外の空気でもすわれてきてはいかがでしょう?エミル様?」
「うん。そうだね。そうするよ。僕少し外にでてくるね」
「あ、エミル!…っていっちゃった」
エミルはどうやら外にでて少しばかり気分転換をするらしい。
彼はいつも頭痛のあと、自然豊かな場所にて横たわっていたりする。
そのとき、まるでエミルがそこにいないかのように一体化しているような気がしているのは、
何もロイドだけではなく村人全員が感じている事実。
「エミル…大丈夫かなぁ?」
コレットが心配そうにいうが、
「それより、コレットもいくだろ?」
「え?」
エミルを心配そうにみていたコレットはいきなりロイドにいわれおもわず驚いてロイドをみやる。
「え?えっと…どこへ?」
「どこ。ってなんだよ。お前は当事者だろうが。さっきの光がきにならないのか?
  のんびりしてるにもほどがあるぞ?」
「ロイドはきになるんだ。だったら私も気にすることにするね?」
にっこりとほほ笑むとコレットはおっとりした動作で立ち上がる。
「ほれみろ。どうする?」
「わかったよ。行けばいいんだろ?」
言い出したら聞かないのはいつものこと。
ゆえにジーニアスは肩をすくめるしかない。

とくん、と伝わる大地の悲鳴。
…愚かなるヒトが、大地の力を利用している。
触れた大地からそんな波動が伝わってくるのが判る。
それにともない、風がひたすら強くなる。
面倒なのは人の愚かさでアレが流失してしまい、小窓がひらいてしまったこと。
なぜにここと同じ惑星をあたえたというのにここにもその勢力を伸ばそうとするのやら理解不能。
「…エミル…様?」
「…呼ばれてる。いかないと。ううん、そろそろ皆を起こさないと。ようやくすっきりした。
  セネルいるかな~?そもそもなんで新しい理にしてるのに、また古と同じようなことになるのか……」
ぶつぶつとう彼の気持ちはまあわからなくはない。
どうやらこのあたりに満ち溢れる気配で自分が何、なのかしっかりと思い出したらしい。
「はい。メルネス様ですか?」
どうやら大分力も補充できているらしい。
ここで半年のんびりしていたのもどうやら無駄ではなかったらしい。
そんな主の姿に心底ほっとする。
まあこれほどまでに負が満ちていればそれを取り込み力となすことなど『彼』とっては造作もないこと。
今はまだ、無意識でそれを行っているよう、ではあるが。
というか彼にとってはそれはもう呼吸をするがごとくなので意識せずともできるのであろう。
「それでしたら、前からいっているように。旅についていくのが最善、ですね」
あの子の手にて、無理やりにとらえられている子のために、そして眠りについているセンチュリオン達のためにも。
「ゲーテのやつもここしばらくはあっち側で対処しまくってたし……」
思いだしてきたら腹がたってきた。
たしかに時間率はあの場はかえてある。
が、あれから四千年も地上世界でたっていたのにまた驚いたのも事実。
そうおもうエミルの気持ちはまあわからなくはない。
だけども、時は満ちた、のだとはおもう。
古と同じような歴史をたどっているのは明白。
ならばおそらくこのたびにて、ようやく彼女にあの役目を渡せられる、ともおもう。
よもやまた自らが大樹にならないといけない、などとはゆめにもおもわなかったが。
まあ精霊達を全員救うにはそれしかなかった、というのも事実。
すっと大地から受け取る光景は、何ものかがここに攻撃にこよう、としている光景。
『……ち。面倒な。…侵略者を排除せよ』
ざわり、と空気がゆれる。
紡がれた言葉とともに、一瞬、エミルの瞳が緑から深紅へと変化する。
「…なるほど。身の程しらずのものがここに攻撃をしかけようとしてるのですか。
  我が配下のものにも伝えましょう」
エミルの横でしっかりと配下の礼をとりつつも、うなだれつつそういっているテネブラエ。
許可がでたのであれば何の遠慮をすることもない。
「―我らが王がいる場所を争いの場と化そうとするものを排除せよ!!」
テネブラエの声は声なき声となり、特定のものにのみ聞こえる声となり周囲に響き渡ってゆく……



こんな感じの始まりの冒頭でしたv
ちなみにこれ打ち込みというか編集予定はありません。
書きたいシーンだけかきなぐってるやつなので・・・v

2013年6月15日(土)某日

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