まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

ようやく石舞台、アスカードが完了v
しいな合流まで先がながい…くすん……

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アスカードの街に夕闇の気配が漂いだしたころ、一行は石舞台にむけてライナー達の家より出発する。
もっとも空に雲がおもくたちこめているせいか、時間間隔がどうしても早まってしまうことは否めない。
アイーシャは心配そうにリフィルの後ろをあるき、衣装の背中をみつめていたが、
たった一度説明しただけで儀式の手順と踊りを完璧に理解してしまった彼女に内心舌をまいていたりもする。
石舞台の傍らでは先にやってきていたらしい町長達がまっており、
古めかしい儀式用の衣装をまとったリフィルを出迎えてくる。
そのまま黙ってうなづくと、リフィルは石舞台にとのぼり、その手順のままに舞いを踊りだす。

風がほのかに香り走り抜ける。
ロイドはふと、先ほどは感じなかったかすかな香りを流れる風の中にとかぎ、
風の精霊を現している、というオブジェをみあげ、
もしかしたらこれが先生のいっていたマナの匂いってやつなのかな?
などとそんなことをおもっていたりする。
が、すぐに風むきがかわり、香りもすぐさまに霧散してゆく。

光と闇の協奏曲 ~石舞台~

リフィルが手にもった杖をあげ、儀式の始まりをつげる。
すでに暗闇は差し迫っているものの、石舞台がほのかに光っているので視界はわるくはない。
踊りの手順はいたって単純。
石舞台に描かれた円陣の数か所を杖で示し杖を床にとつけたのち、
最後に中央にひざまづきながら杖と額をこつりすけるかのように礼をする。
最後までその動きを正確に行った刹那、淡く円陣が輝きはじめる。
「あ!精霊があらわれたぞ!」
ハーレイが円陣の上の白い光をみとめ叫んでくる。
鋭い角、コウモリのような羽。
大きくまがった刃のような足。

「……は?」
(ウェントスの気配?)
おもわずそれをみて目をぱちくりさせるエミルと、
こちらもこちらでしばし目をまたたかせいてるソルム。
ちなみに今のソルムの姿は鳥の姿。
土属性のエビルオニルス。
ちなみにその幼生体なので大きさはさほどでもない。
「…ああ。なるほど」
しばし考えたのちに、あることにきづき、一人納得しているエミルに対し、
(ラタトスク様?)
首をちょこん、とかしげつつもといかけてくるソルムの姿。
(お前たちがこれほどながく眠りにつくことは滅多となかったからな。というかこの惑星では初だな。
  眠っていてもお前たちの力は俺と繋がっている。
  それゆえにその波動は少しづつではあるが漏れていた。その余波でおそらく新たに誕生した魔物だろう)
いくら眠りについていたとしても、ラタトスクそのものは完全には眠りについてはいなかった。
世界の安定全てに力をそそいでいたがゆえ、
センチュリオン達の眠りはそんな主を手助けするためにあえて眠りについていたにすぎない。
しかし、問題なのはそこではなく。
(…うまれし器に人の精神体が入り込んでいるものか……)
純粋なる力のみで形のみが先にうまれ、そこにどうやら人の精神体がはいりこみ、
ゆえに魔物としての性質すらも失ってしまっているらしきそれ。

ソレ、は低くうなると、
「我はツァトグ。娘をもらいうけにきた」
こちらに…正確にいえば舞いをまったリフィルにむけてそんなことをいってくる。
長い腕が認められるが胸から下には巻きつくような風の流れがみてとれる。
「ちがう、ちがいます!先生!それは邪悪なもの!精霊でも…封印の守護者でもない!」
コレットがそう叫び、
ロイドが石舞台に飛び上がろうとしたその刹那。

ごうっ。
ツァドグ、となのったものを中心にしていくつもの渦巻きたる風が発生する。
それは巻き込むようにしてうなりをあげ、ツァドグも何がおこったのかわかっていないらしい。

(…きたか)
まあ、くるとはおもったが。
よりによって自分と同じ気配をまといしそれをうけ、こないはずもない。
瞬時に感じるしもべの気配。
(ウェントス。話しかけるときは必ず念派のみで。いいな?
  どうやらそれは、人の精神体がはいりこんでいるらしい。お前の力の余波でうまれし器にな)
とりあえず、センチュリオン達はそこまでまだマナの流れをつかめないであろうから、
あらわれし風のセンチュリオン・ウェントスに念派で念のための説明をしておくエミル。

「な、なに?」
リフィルがいきなりのことにとまどが。
「…先生、うえ!?」
コレットが叫び、そのいくつもの竜巻の真上。
竜巻は、なぜかリフィル達のほうこうに風のひとつもとどかせることはなく。
それがリフィル達にとっては理解不能。
よくよくみればツァドグ、となのったその真上に白い何か…動物のようなものがみてとれる。
『我が分身体もつくっていないのに我が気配を感じてきてみれば……
  我の力によりしうまれし器になぜに愚かなるヒトの精神体がはいりこんで好き勝手している?』
それは深く、ひびくような声。
風にのり、それは響くようにその場にと響き渡る。
「あれは…まさか……」
クラトスのみがその姿を視界にとらえ、おもわずつぶやく。
真っ白い虎のような姿に、蛇の尻尾。
その足には白き翼がはえており、その体には不思議な紋様らしきものがきざまれ、
そして服装っぽくみえるのは、着物?のようにみえなくもない。
白い体にまとわりつくようなそれは、まるでベールのようにふわり、と風にまっている。
それと同時、竜巻の中に、幾匹もの魔物達が瞬時にと出現する。
「…ひっ!?」
目に視えておびえるツァドグとなのったそれ。

(まあ、アレは元、人だから我らのことはしらないようだな)
(ですね)
それをただ冷静にみているエミルとソルム。
どちらにしろ、このまま捨て置くつもりはさらさらない。

だが、リフィルからしてみればきになるのはそこではない。
「人の精神体…ですって?どういうことなの?」
戸惑いを隠しきれないが、そんな中、ロイド達も石舞台の上にあわててとびのってくる。
やはりツァドグの周囲には近づくこともできないものの、こちら側には一切の風すらふいてこない。
風はまるでツァドグ、となのったものをからめとるようにして内部にのみ発生している。
「リフィルさん。質問いいですか?封印っていってましたけど。それっていつごろのことなんですか?」
「エミル。お前なぁ。こんなときに何そんな歴史の質問してるんだよ?」
そんなエミルにあきれてロイドがいってくるが。
「パラクラフピラーの象形文字のことかしら?」
「その象形なんたらというのはよくわかりませんけど。大体いつごろなのかなぁ、と」
「かつてのパラグラフ帝国、二十三世の時代、当時帝国を脅かしていた厄災たる精霊。
  今からだと…そうね、大体三千年前…かしら?」
そのころはたしかもう完全に地表から意識を大地のにみむけて力を確保していたころである。
どうりで覚えがないはず。
そんな会話をしている彼らとはまったくもって対照的に、
『愚かなるもの。精神体となりてもどこまでも愚かなるヒトよ。
  その力はなんじら人にすぎたもの。我がもとにかえしてもらおう。我が僕達よ。いけ』
風属性の…どうやら真っ先に上位のものたちとの縁をつむぎなおしたらしい。
ヴィーグルやスフィンクス、ついでにティアマット、さらにファフニールというものがその場に出現する。

常識では、魔物同士では襲わない。
なぜか魔物達は魔物同士で争わない、そういわれていたのに。
目の前のこの光景は何なんだろうか。
リフィルやジーニアスはその常識をしっているがゆえに唖然としてしまう。

「な?!まさかあれは伝説といわれる竜の一体では!?」
リフィルがティアマットにきづいて驚愕の声をあげているが。
伝説とされている竜のうちの一体。
最強ともよばれて名高い竜。
「馬鹿な…ファフニール…だと?」
白い竜の巨体をみてつぶやいているクラトス。
現存している天竜の中では最凶の竜とよばれしもの。
その血は不死の力をもつとさえいわれている魔物。

「がっ!ばかな、このツァドグ様が…なぜ、なぜ魔物が我を攻撃する!?」
それすら理解できていないような愚かなるもの。
『愚かな。いくら仮初めの魔物の体をえて、我らにかなうとでもおもっていたのか?
  汝は魔物にあらず。魔物としての世界の理すらはずれた愚かなるもの。
  汝は世界にとって害にしかならず。ゆえに…滅せよ』
その言葉とともに、数体たちが一斉にツァドグにおそいかかる。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
ぱっん。
言葉とともに、ツァドグの体が瞬時にと消滅する。

それはきらきらとした緑の光りとなり、そのまま上のほうにいる白い獣らしきものにとすいこまれ。

カラッン。

それと同時に、周囲にみちていたいくつもの竜巻…ゆく手をさえぎっていたそれがかききえる。
そのあとには上空から何か石板っぽいものがおちてきて、しずかに石舞台の上にからん、ところがる。
それとともに、石舞台の上の陣がひときわ強い輝きをまし、
ふと足元をみれば先ほどまでなかった円陣の中央に
紋様を描いたもう一つの模様が浮き出ているのがみてとれる。
どうやら今のアレの存在により、この下の神殿への入口そのものが封印されていたらしい。
最も、反応したのは他でもなく、そこにセンチュリオンが二柱もいれば、ラタトスク当人もいる。
それゆえに入口が反応した、のではあるが。
しかしこのまま地下におりられては面白くない。
ゆえに。
(閉じろ)
すっと目をとじ意識をかるく自然のようにかがみ、石に手をおき命令を下す。
それとともに、すうっとかききえてゆく新たにうかびあがっていた陣の模様。
(ラタトスク様。私はどうしましょうか?)
(追求されるのも面倒だ。お前は再び縁を回復にいけ)
(御衣)
それとともにつたわってくるウェントスの声。
ゆえに即座に命令を下し、この場からの撤退を伝えておく。
その場にあらわれていた魔物達が光りとともにかききえ、
それとともに、ゆっくりと浮上してゆくしろき虎。

「あ、まって!」
リフィルがよびとめるが。
その姿はまたたくまに風と一体化するかのごとくにかききえる。
「まさか…今のは…風のセンチユリオン・ウェントス…なのか?」
クラトスの茫然としたつぶやき。
その声をききとがめ、
「クラトス。あなたあれが何なのかしっているの?」
「いや」
「でも、今、あなた……」
たしかに名?らしきものをいった。
それゆえにリフィルからしてみれば疑念をかくしきれない。
魔物を使役し、さらには虎のような姿。
四千年前に記憶にありし、風を司りしラタトスクの僕たる八柱のうちの一体。
もしも本当にセンチュリオンだとすれば…かの精霊が目覚めをむかえている可能性が高い。
そして、とある可能性におもいあたる。
かの精霊はマナを司る精霊である。
この異常気象ももしかすればそれにかかわりがある、ともいいきれない。
ミトスに報告すべきか、それとも。
クラトスはおもわず思考の中にはいりこんでゆく。

その様子を石舞台の下でみていた村長達三人と、ライナー達三人は
何がおこったのか理解できずに、唖然としていたりする。
魔物が魔物をおそう。
それだけでも信じられない光景であった、というのに。
あの風の精霊とおもっていたものがもののみごとに消滅…そう、まぎれもなく消滅した。
それも断末魔のような悲鳴をのこし。
村人六人はゆえに唖然とするしかない。

「あれ?何かおちてる」
とりあえず話題をかえるために、そこにおちてきた石版をひろい、それを手にするエミル。
「リフィルさん。これ。なんか地図みたいなのがかかれてますけど?」
いってリフィルに手渡すが。
「こ、これは!?」
どうやらさきほどのウェントスのこともきになるようだが、
今は目の前の石版のほうに興味がうつったらしい。
ばっとそれを手にとり目をらんらんとがかやかせるリフィルの姿。
そして一方で、
「す、すばらしい踊りでした!」
…どうやら、今の現象はみなかったこと、にしたらしい。
人というものはよく現実逃避をする。
このライナー、というヒトもどうやらその分野らしい。
「兄さん、踊りもよかったけど、そのあとがきにならないの?」
「魔物が魔物を…?いや、そもそもあの上のほうにいた白い何かは…」
魔物のことを、聞き間違いでなければ我がしもべ、といっていなかったか。
それは魔物達を束ねる何かがいる、ととらえて間違いないであろう。
アイーシャがそんな兄にあきれた口調でかたりかけ、
ハーレイはハーレイでそんなことをつぶやいていたりする。
「そんなことよりも。今手にいれた石板だが。この石板には古代バラグラフ文字が書かれている」
じっと石板をみつつそんなことを石舞台からおりつついっているリフィルの姿。
そんなリフィルの手にある石版をみて、目をおもいっきりかがやかせ。
「これはすばらしい!さっそく解読しましょう!僕の家に資料がそろっています!」
「ああ、いこう!」
「「・・・・・・・・・・・」」
勝手に二人でもりあがり、これまた勝手に二人してこの場をあとにしてゆくリフィルとライナー。
そんな二人を唖然とみつめているアイーシャとハーレイ。

「あ…あの。ありがとうございまし…た?」
疑問系になってしまうのは仕方がない。
「でもさ。さっきのあれ、何だったんだろ?」
「ありえないことだよね。魔物が魔物を襲うなんて。常識ではありえないよ」
魔物同士ではあらそわない。
これは誰もがしっているあるいみ常識。
それがおもいっきり覆された。
そもそもエミルもこの旅において魔物を呼び出して戦わせたりはしていない。
ゆえにそんな光景を彼らはいまだに目の当たりにしたことはない。
簡単にいえばエミルが傍にいるだけで魔物はまったく襲ってこない。
魔物達は今現在、センチュリオン達の命にてみだれたマナを整えるのに忙しい。
「…あいつは、風の精霊じゃ…なかったんだな」
きになるのは、ヒト云々、とあのしろい魔物?でもない何かがいっていたこと。
かなり上空にいたので完全にはわからなかったが、
だがそのマナのありようからして、魔物ではない、というのはわかった。
魔物のようでいてマモノでもなく、みたことのない、感じたことのないマナ。
それなのに、大地…否、自然と一体化のようなそれほどまでに調和していたマナ。
離れていてもそれだけのことくらいは手にとるようにとわかった。
だからこそのハーレイの台詞。
「あいつの正体なら、きっと姉さんとライナーさんが調べてくれるんじゃないかな?
  あの白い虎?のようなものまでわかるかどうかはわからないけど……
  魔物のようでいて魔物でもない。自然と一体化したようなあんなマナ、初めてだよ」
いや、初めてではない。
ふとおもう。
エミルがあの枝をつかったときに感じた波動とよくにている。
母なる大地と同じような暖かな波動。
ふとそれをおもいだし、ちらり、とエミルをみるが、エミルはその場にたち目をつむっているようで。
どうやら何か考え事をしているのか、はたまた疲れているのか、それはジーニアスにはわからない。
時折口元が何かづふやいているようにうごいているが、
その声のようなものはジーニアスには聞き取れない。
「ああ。あのリフィルとかいう先生。ハーフエルフだしな。知識は確かだろう」
ハーレイがさらり、とそういい、
「ち、ちがいます!姉さんはエルフです!僕もエルフです!」
ジーニアスが叫ぶ。
ハーレイが驚いてその小さな…彼にとっては小さな少年をみつめる。
「おいおい。冗談だろう?この俺が同族のマナを見間違えるわけが……」
人とエルフのいりまじったマナは独特でわからないはずもない。
だが、ハーレイは必至の形相で自分を見上げているジーニアスの目をみて言葉をうしなう。
顔の輪郭すらあやふやになるときがある長い髪。
それが何を意味するのか、彼にわからないはずもない。
「……いや。違うな。違った。違った。
  よくみりゃ、あんた達は生粋のエルフみたいだ。俺の勘違いだ。悪かったな」
そういって笑うとジーニアスはあきらかにほっとした顔をうかべる。

いまだに種族云々で差別があるヒトの心に嫌気がさす。
本質をしろうともせずに自分達とは違うから、という理由だけで差別する人の心。
歩みよれば手をとりあうことも可能なのにそれすらしない、
ただ種族が違う、という理由だけで毛嫌いする人の心が愚かとしかいいようがない。
その心がやがては戦争、というものをうみだし、大地を穢し、自らをおいつめてゆく、というのに。
そのことすらきづいていない、愚かなるヒト。

「アイーシャ。かえろうぜ」
そのまま何ごともなかったかのようにくるり、と背をむけアイーシャをうながしその場をあとにする。
「あ~あ。なんか疲れたなぁ。結局精霊にはあえなかったし」
戦いになるとおもったら、まさかの魔物?の乱入。
しかも魔物が魔物を襲うとうありえない光景。
上のほうにいた白い虎の正体は結局ロイドにはわからない。
白い虎らしきものがいっていたことの意味すらも。
「…宿をとるとするか。バラクラフ文字の解読は当分おわるまい」
あれが人の精神体がはいりこんでいた、などとクラトス達ですらしらなかった。
暴れていた直後はそのような復讐云々、といっていたのであるいみで怨霊化したものではないか。
とは一説にはいわれていたが。
しかしそれを口にすることはできない。
そもそもそれは三千年以上前のこと。
なぜ知っているのか、という当然突っ込みがくるであろう。
ゆえに沈黙をつらぬきつつ、無難な台詞をつむぎだすクラトスの姿。
「あ。じゃあさ。あの宿がいいな。ほら、すげ~でかい車がなんかこわれてたとこ」
「風車でしょ。ロイド」
ジーニアスが笑う。
「どうちがうんだよ?同じだろ?」
「……まあね」
どうやら説明するのをあきらめたらしい。
ジーニアスは先にあるくと石段の上にとでる。
そこからはちょうどアスカードの街全体が一望できる。
街にはいったときに感じていたあれほどの突風は今はまったくもって感じられない。
それどころかここちよい風がつねに吹いているのが肌にて感じ取られる。
ここちよい、風のマナの優しさが周囲にみちている。
街にはいったときはマナがなぜか乱れたというか強く奔流しているような感覚がした、というのに。
「…世界再生の旅は世界を回る旅。イセリアで平和にくらしていたときとは違うんだ。
  …僕は、どこで何をいわれても姉さんみたいに強くいなくちゃ……」
ひとりつぶやき独白をするジーニアス。
そのまま右手に装備しているマーブルの肩見のエクスフィアにと目をおとす。
そのままぎゅっとそれをにぎりしめる。
どれだけ仲良くしてくれていても、ハーフだとわかったとたんに自分達を迫害、差別してきたのは経験ずみ。
ロイドは…ロイド達は違う、とおもいたいが。
なかのよかった子が手のひらをかえしたように
嫌悪と侮蔑な表情を昔むけてきたことをジーニアスは忘れていない。


「テネブラエ・ルーメン・イグニス・アクア・ソルム・ウェントス」
『ここに』
宿をとり、そのまま外に散歩にでてくるね。
そういい、宿を一人あとにする。
クラトスがこちらに気づいたようでついてこようとしたようだが、
それよりも神子の護衛を優先したらしく、ついてこられないのがとても助かる。
石舞台のある場所。
さすがに夜ともなれば危険なのでこのあたりに人の気配はまったくない。
名を呼ぶとすぐさまに六柱たる僕達がもともとよくとる形状の姿にてその場に出現する。
「あとは、グラキエスとトリトニスだけか。ある程度、俺の力ももどった。ゆえに二人をむかえにいく」
彼らが率先して魔物との縁を結び直しているがゆえに力が満ちてきているのがわかる。
あと二柱がめざめるより、はやめに回収しておいたほうがいい、とおもうのはさきほどの件があるがゆえ。
礼をとる六柱をそのままに、そのまますっと手をかざす。
「開け。扉よ」
その声とともに石舞台のうえに黒き渦ができあがる。
その渦はまたたくまにエミルと…そして六柱をつつみこんでゆく……


「…そろそろ、特訓を始めるが、お前もくるか?」
宿をとり、ひとまず今晩の安全を確保したのち、ロイドにと話しかけているクラトス。
「ああ。いくよ」
「よし。では場所をうつそう」
場所は街の少し離れた場所にある、石舞台の下にとある開けた広場らしき場所。

「…前よりは少しましになっただろ?」
旅をしはじめてときおり、クラトスに稽古をつけてもらうようになってある程度はましになっている。
そうロイドはおもいたい。
「…そうだな。だがまだまだ未熟だ」
「…ちぇ。なかなか上達しないなぁ」
「いや。私の教え方にも問題があるのだろう。私は二刀流ではないからな」
「でも、クラトスのおかげで基本の大事さとか。いろいろ勉強になったぜ」
そもそも基本をおさえてもおらず剣をつかっていたことにクラトスはあきれざるをえなかったのだが。
「それにさ。俺、うれしいんだよな」
「何がだ?」
「俺、一人っ子だからさ。兄きにあこがれてたんだよな。二人で剣の稽古とかしてさ」
それはクラトスも息子がうまれたときにおもっていたこと。
この子がおおきくなると、二人で剣の稽古をさせたい、といい、アンナによく怒られていた。
まだこの子は赤ん坊よ!あなた!と。
「…そうか」
二歳になり木刀をもたせ、きゃいきゃいとふりまわし、花瓶や家具をこわし、
こんな小さな子供になにをわたしているのですか!あなたはぁぁ!
またまた怒られていたかつての暖かなる記憶。
ゆえに、剣を教えるのも最低でも六歳から!そうしっかりと念をおされ、
さらには誓約書までかかされてしまったという思いですらあったりする。
「へへ。ても俺の兄きにしてはクラトスは老けてるけどな」
「…そ、そうか…」
「クラトスって今いくつだ?」
「…たしか二十八くらいだな」
それに四千、という言葉がつくが。
「そうかぁ。三十代とかなら、お父さん、でもつうようするな。クラトス父さん、な~んて」
「な!?」
「?クラトス?おーい?」
不意打ちともいえるその台詞にクラトスはそのばになぜか硬直中。
おと~さ~ん、たかいたかいして~!
目をきらきらとしていってきていた三歳になったばかりのロイドと、今のロイド。
その表情がおもいっきりかさなる。
「ろ、ロイド。その、お前がそうよびたいのなら、わ、わたしのこ……」
「よし。クラトス。もう一度だ!」
「あ、ああ」
私のことを父とよんでもかまわない、というかむしろよんでほしい。
そう願いをこめてそういいかけるが、ロイドの言葉にさえぎられる。
「ロイド。強くなれよ?」
「ああ。やってやる!あんただけでなくエミルにも絶対にちかづいてやる!」
「…エミル、か」
あの子供の強さははかりしれない、とおもう。
戦闘を幾度もみたわけではないが。
あの火の封印のときの戦いぶりをみるかぎりそうとうにできる、というのだけはわかる。
みためはほんわかとした普通の少年にみえる、というのに。
なぜか魔物を常に傍につれている、ということをのぞけば。


翌朝。
朝になってもリフィルはもどってこず、きづけばエミルもいなかった。
そういえば、寝るときになってもエミルはまだもどってはきておらず、
まあ街からはでていないだろう、という判断のもと、疲れていたがゆえにそのまま眠りにとついた。

コレットは一人眠れないものの、一応ねようとして横にはなったが。
考えるのはさきほどのこと。
あの白い虎さんのようなもの、は、人の精神体がはいりこんだなどといっていた。
あきらかに、あの虎もどきは魔物を使役していた。
我がしもべ
そういっていたのはそのなぜか異様にするどくなった聴覚がとらえている。
クラトスが言っていた言葉。
風のセンチュリオン・ウェントス。
その言葉もきにかかる。
クラトスはあの虎さんと知り合いなのかな?そうおもうがきくにきけない。
精霊、ではないとおもう。
かといって魔物でも。
コレットもあのようなものをみたものは初めてで、何といっていいのかはわからない。

食堂にて、朝食をとりながら
「リフィル先生。かえってこなかったみたい」
だされているスーブのみすこし口に含んだ後、コレットが手をおきつついってくる。
「しょうがないなあ。先生。わざわざここにいるって知らせたのに。エミルもいないよな?」
「街のものにきいたが、街の外にはでていないようだ。街のなかにはいるだろう」
いちおう、街の入口をまもっている人にクラトスは確認をとっている。
きけば昨夜から街からでたものは一人足りとていないらしい。
「姉さんは仕方ないよ。きっとまだライナーさんのところで研究してるんだとおもう。
  食事をすませたら迎えにいこうよ。ついでにエミルをさがしがてらさ」
ジーニアスの台詞にだれともなくうなづき、
「コレット?」
コレットがスープにだけすこし手をつけただけなのをみて立ち上がる様子をみて声をかけるロイド。
「あ。私。ノイシュにご飯あげてくる。い~い?」
コレットの手には朝食にだされているパンの籠が。
「いいけど…おまえ……」
「ふふ。最近は私の手からも食べてくれるんだよね~。ずるいよね。
  エミルなんか所見でもすぐに手からたべてたのに。だから食べてくれるようになってうれしいんだ~」
いわれてみれば、エミルは初対面どきからノイシュはまったく畏れていなかった。
むしろなついていた、といってもよい。
コレットがすこし拗ねたように、それでいて嬉しそうにわらいながら、そのまま裏口へとむかってゆく。
「そりゃ、四六時中傍にいて、いつもたべものをもらっていればあいつもなれるさ」
「めずらしい!ロイドが四字熟語をまともにいえた!」
「どういういみだよ!ジーニアス!」
おそらくここにリフィルがいても同じような感想をもらしたであろう。
そんなわいわいとさわぐ二人をそのままに、コレットは裏口から外へとでてゆく。
ふときづくとすでにコレットは裏口からでており、
「…なあ、ジーニアス?さいきんコレットのやつ、食事がすくなくないか?」
「ん~。ロイド、でもそれいったらだめだよ?」
「何でだよ?」
「コレットも女の子ってことさ」
ジーニアスからしてみれば、きっとだふんダイエットだな。
そんなことをおもっていたりする。
そういうときに指摘した姉の怖さを身をもってしっているがゆえの台詞。
リフィルいわく、女性はつねに自身の体系を維持、もしくはよりよくみせたいもの。
それが女としての務め、そういいきっていたのである。
あのコレットも…どうみてもロイドを好いているのがまるわかりなコレットがそんな思考になってもおかしくない。
というよりそういった指導を姉からうけていたのを見ていたことがあるがゆえにジーニアスは口をだせない。
だしたくても怖くてできない。


ライナーの家につくと、リフィルはアイーシャが入れてくれたお茶をちょうど呑んでいるところ。
「あら。ちょうどよかったわ」
ロイド達をみるとテーブルの上におかれた石板に視線をあて、
「たった今、解読がおわったところよ」
満足そうにいってくる。
ジーニアスが見つかった、という石板に近づこうとするが、
そこにいたハーレイの視線に気づき、思わず足をとめる。
「リフィルさんはすばらしいですよ!この複雑なパラクラフ語をたった一晩で解読されたんですから!」
何やら力説しているライナー。
この人、先生と同じ人種だ…
そうおもい、おもわず乾いた笑いをあげているロイド。
「あの魔物は古代バラクラフ帝国を襲っていた災厄の原因だったようね」
「そうなんです。それを当時の召喚士が風の精霊シルフを使役して封印し、
  厄災を鎮めるためにあの石舞台をつくったようです」
「つくった、というよりは利用した、という解釈だとおもうわ。これは。
   そして、後の世で厄災が復活したときのため、風の精霊を使役できるようこの地図を安置した。
   とこれには描かれているけど…」
「そして長い時間のうちに厄禍と精霊は混同されてしまった、というわけです」
じっと聞いていたジーニアスがそんな二人の会話をききながら口をひらく。
「じゃあ、風の精霊がいる場所がわかったってこと?」

当時、彼らの手でもどうにもならなかった力をもっていた魔物。
ゆえにミトスがちょぅどいいから、というのでかの地にかるく封印した。
封印の道しるべにするために。

「精霊のいる場所が次の封印よ。おそらくバラクラフ王廟にあるはずだわ」
「わあ。よかった。これでようやく世界再生ができるんですね~」
とびあがったコレットの言葉に首をかしげたのはアイーシャ。
「世界再生?そういえば、あなたがたはどうしてこの街にいらしたんですか?
  観光や旅業ではないようですし…まさか……」
「先をいそごう。いくべき場所がわかったのだからな」
クラトスはにこりともせずにアイーシャの言葉をさえぎる。
「そうね。それでは協力ありがとう。また是非とも歴史をかたりあいたいわ」
「是非に!いつでもお待ちしております!リフィルさん!あなたのような素敵なかたなら大歓迎です!」
「…うわ~…また姉さんのファンが増えたよ……」
「魔性の女だな……」
つぶやくジーニアスとロイドをつれ、彼らはそのまま家の中をあとにする。
「それじゃあ、ありがとね」
「あ、あの…」
身分を明かさぬでてゆく一行にアイーシャ達はただ首をかしげるしかすべはない。
後にのこされた三人はは、ただただ意味がわからず肩をすくませるのみ。


アイーシャ達の家から外へと。
「そういえば、エミルは?」
「あ。エミルを今度はさがしにいかないと」
ジーニアスとロイドの台詞。
「少しいいかしら。エミルをさがすついでにもう一度石舞台を確認しておきたいのよ。
  まだ何か見落としがあるかもしれないからね」
石板にかかれている以外の何かの手がかりがあるかもしれない。
そういわれ、ロイド達からしてみても断る理由にはならず。

街をでる前にもう一度石舞台をみておきたい。
ついでにエミルがどこにいるのかきかないと。
そんな意見のもとに、石舞台のもとにまで街をでるまえに一応おもむくことに。

ふと昨日きたばかりの石舞台。
たどり着いたその先にて、そこに見慣れた姿をみとめ、
『エミル!?』
おもわずそれぞれが声をあげるロイド達。
「あれ?どうしたの?皆?」
「どうしたの、じゃないよ!何でエミルここにいるのさ!?
  昨日、結局宿のひとにきいたけど。もどってこなかったらしいよね!?」
「でもさ。この子といっしょに宿は困るでしょ?」
いいつつも、すりよってきている鳥をなでる。
たしかにエミルの横にいる魔物の幼生体をみて宿の人が困惑していたのはしっている。
いるが…
「まさか。それでわざわざ宿にもどらず、野宿した…とかいわないよな?」
ロイドのまさか、という思いとともに、
「そうだけど?」
さらり、と何でもないようにいいはなつ。
「ここは気持ちいいよ。風がとってもおちついてる」

ウェントスがどうやら完全に調和を担いらしたらしく、マナがとても落ち着いている。
昨日のうちに残りの二柱も目覚めさせ…なぜかトリトニスのもとにいったとき、
トリトニスの波動にて捕らわれていた人の魂をみつけたが。
あのまま神殿においておくのも厄介、ととらえ、
アクアにそれを元の場所につれていくように、とは命じたが。
何でも正気にもどしたその人の魂いわく、
みずほの里、といわれし場所の頭領をつとめている、とのことらしい。
そこ、雷の神殿にはヴォルトとの契約できていた、とも。
ヴォルトに念のために確認をとってみれば少し前に子供と大人たちがたしかにきたらしいが。
こちらの言葉すら理解していなかったがゆえに、契約の資格なし。
と判断し排除したらしい。
問答無用で排除せずに、この場からたちされ、といったのに、それすら理解していなかったという人。
そもそも契約云々をもとめるのならば最低限、言葉が理解できなければ意味がない。
もっとも、ミトスとの契約に縛られている以上、ミトスとの契約を破棄させるように人が願わなければ、
あらたな契約の上書きなどは精霊のことわりとしてできはしないが。

「エミル。野宿はいただけないわよ?宿があるのだから」
「外のほうが楽ですよ?」
そもそもヒトにきをつかわなくてすむのである。
リフィルの言葉に即座にいってくるエミルの様子に嘘はない。
この様子では今までほとんど宿をとらず外で夜をやはり自分達と合流するまではすごしていたのだろう。
そんな予測すらたってしまう。

「しかし、とんだ風の精霊だったなぁ」
「でもおかげで本当の封印の場所がわかったんだからいいよね」
「そうだな。次の封印はどんなところだろうな」
「ちょっと怖いきもするけど。ロイドがいるから大丈夫だよね?」
「おう!俺にまかしとけ!」
「うん!」

ともあれ、一行は、次なる目的地にむけて、街をでてゆくことに。
再生の旅の一行だ、と誰にもおしえることもなく。


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あとがきもどき:
薫:ようやく石舞台完了vウェントスががんばってますv(笑
  クラトス達四英雄達はセンチュリオン達の数柱にはあったことがあります。かつて。
  連絡係りになってたのが主にアクア(これはマーテルになついてた)や、
  ウェントス、あとはテネブラエだったりするので。
  ウェントスは風ゆえに伝達が便利、という理由でv

2013年6月13日(木)某日

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