まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

ようやくソダ間欠泉だぁぁ
ちなみに、魔物達の名前はきちんとテイルズシリーズさんの一覧、
もしくはラタトスクの騎士のモンスター図鑑からとってますよ?念のため。
ロードとか勝手につくってるのものありますが…種族名はかえてないですv

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世界は悲しみにあふれている。
でもそれ以上に喜びも。
そんな世界を守りたい。
全てが消えてしまう、というのは悲しいから…
……そういっていた、君たちの心は、今はどこに?

光と闇の協奏曲 ~ソダ間欠泉へ~


「ここから海をわたれば、ソダ間欠泉にいけるらしい」
小屋の前にいる旅装束の男性がこちらにきづき説明をもとめていないのにそんなことをいってくる。

小屋の中にはいるとどうやらそこが遊覧船乗り場の受付となっているらしく、
広い部屋の横にぽつん、とひとつの受付場らしきものがみてとれる。
その奥には祭壇らしきものがあり、何かをまつっているらしい。
よくよくみれば、それは救いの小屋でみたあの祭壇とよく似ている、とエミルはふと思う。

「こんにちわ。ソダ島遊覧船乗り場にようこそ~。
  そだ間欠泉への観光はこの遊覧船が便利で~す。というかこれしかいく方法がありませ~ん」
小屋の中にはいると、うけつけ、なのであろう。
どこかまのびした受付係りらしきヒトがそんなことをいってくる。
「往復で200ガルドになりますがご利用になりますか?」
小屋の中には何もなく、ちょっとした空間と、その奥には何かを祀っているらしき祭壇があるのみ。
「のります」
「ありがとうございま~す」
どうやら受付をすませたらしく、小屋からでてくるロイド達。

ソダ島間欠泉遊覧船乗り場。
そうかかれている看板。
だがしかし、そこの桟橋におかれているのは何といっていいものか。
「たらい…だよな?」
「たらい…だよね?これ?」
「たらいだ…」
「たらい、か…」
順に、ロイド、エミル、ジーニアス、クラトス。
海に浮かぶ丸い木製の乗り物は、どこからどう見てもたらい以外の何物でもない。
縁におざなりに固定されているオールを見るからには、これで漕いで行けということなのだろうが、
大海原をたらいで行くのもどうなのだろうか。
それともこれは一種の娯楽なのか、ヒトというものは本当にわからん。
おもわずエミルは首をかしげてしまう。
あのクラトスでさえ、心なしか声に戸惑いが含まれているようにみうけられる。
まあ、仕方のないことなのかもしれない。
テセアラの方には蒸気船があるというのに、この差は一体なんなのだろう。
ここまで文明の差が開いていては、世界を元通りにしても人は間違いなく争うな。
そんなことをふとおもう。
「うわぁ。面白そう!」
一人それをみてはしゃいでいるコレットの姿がみてとれる。
「船はないの?」
周囲をみわたしてみてもそんなもは見当たらない。
せめてカヌーくらいあってもよさそうだというのに小さなボートすらみあたらない。
「ソダ島までどれくらいあるの?」
「あっちの方向に」
「火山島がみえるんだけど…わかる?」
「…遠いね」
それは素直な感想。
ジーニアスが指差す方向をみればたしかに水平線の向こうにうっすらと島影がみえる。
「無理だろ。これ……」
ロイドがそんなことをつぶやくが。
普通に考えれば無理に決まっている。
こんな安定性の全くないたらいで大海原を進むなど、自殺行為に等しい。
海流に流されて目的地になど着けないだろうし、
それ以前にうねりに巻き込まれて転覆するのがオチだろう。
そういえば、激流下りなんてものをヒトはかつて好んでいたな。
ふとそんなことを思い出す。
「ヒトって何かんがえてるんだろ?なんでせめてカヌーとかないの?」
もしくはカヤックでもいい。
あまり人に生活に干渉するのは好ましくはない、とはおもうが。
…後からカヌーなどの創り方でも渡しておこうかな。
などとふとおもってしまうエミルはおそらく間違ってはいないであろう。
おもわずそうつぶやくエミル。
クラトスですら、
「それは私も同感だがな」
なぜかそんなことをいってくる。
どうやら思うことは同じらしい。
『・・・・・・・・・・・』
暫し六人で沈黙する。
否、一人だけ、コレットだけ目を輝かせて残りの五人を窺っている。
「何でよりによってソダ島なのよ…」
リフィルが頭を抱えている。
ルーメンですら目をぱちくりさせている雰囲気がありありとわかる。
(…人ってかわってますね)
おもわずそうつぶやいてくるが。
まったくもって同感である。
(ボートにでもなりましょうか?)
ルーメンがそういってくるが、しかし皆の前でそれを命じるわけにもいかないであろう。
他のセンチュリオン達を呼んでボートになれ、ということも可能だろうが。
クラトスにセンチュリオンのことを気づかれても面倒だとおもう。
「知ってるか、エミル」
「?」
ロイドがエミルの肩にポンと手を置く。
「大昔、海を割って現れた海底を歩いて海を渡った人がいるんだってさ。
  名前は忘れたけど、マーテル協会の偉いおっさんらしいぜ」
「…それで?」
「……それだけ」
「……」
エミルには聞いた事のない話だったが、ただの現実逃避だろう。
ロイドもたらいに戸惑っているらしく、目が泳いでいる。
どこか遠くをみながらいってきているので現実逃避なのは間違いなさそうである。
「ともかく、こうしていても仕方がない。他に方法がない以上、これに乗って行くしかないだろう」
「そうですね~」
クラトスの言葉に、コレットが嬉々としてたらいに飛び乗る。
待ち遠しかったらしい。
ふと、ぴょこん、と海とを隔てた大地にはりついている魔物にときづく。
「ここには他ののりものは?」
とりあえずかがみこみ、そちらに問いかけるが。
(ラタトスク様。…海中にオルカの気配がありますのでそちらにいってみれば?)
いわれてみればたしかに。
少し先にどうやらオルカの群生がいるらしい。
『ソダ島にまで用事がある。こい』
そのまますっとかがみこみ、水にと触れたまま、言葉をつむぎだす。
その言葉はオルカ達が使用する言葉。
超音波ともよばれるそれらは、振動となり、その先にといるオルカ達にとつたわってゆく。
ざざっ。
「まて。あれをみろ」
ふとクラトスが海面をみておもわず構える。
海の上に三角の何かが突起して、こちらにむかっているのがみてとれる。
それは数個は確認でき、その下にうっすらとした影も。
そのまま、ざばり、と残橋の目の前にきたかとおもうと、
一斉に。
きゅ~きゅ~きゅ~!!およびですか?ラタトスク様!
波動で伝わったがゆえに嫌でも『誰』、なのかわかったらしい。
数は八頭。
「うわ~。これってもしかしてイルカさん!?かわいい~!」
コレットが一人はしゃぐが。
「まちなさい!コレット、それはイルカではないわ!オルカという魔物よ!」
リフィルがあわてて、杖をとりだし警戒態勢をとろうとするが。
「この子達には敵意はありませんよ?ねえ、僕たち、あっちの火山島までいきたいんだけど。
  のせてってくれるかな?」
顔だけ水面からのぞかせて、こちらをみつつずらり、と並んでいるオルカにたいし、
手をのばすと、すりすりとすりよってくる様がとてもかわいい。
エミルの言葉にこくこくとうなづき、
オルカ達は残橋の横の海と陸との境界線にずらり、と並ぶ。
「この子達がつれてってくれるみたいですよ?」
にこやかにいうエミルであるが。
「イルカさん……」
しばし、タライとオルカを見比べどちらでいくかを考えぬいたのち、
「私ものる!」
目をきらきらとかがやかせそういってくるコレットの姿。
どうやらオルカに乗るという誘惑のほうがかったらしい。
「少し聞くけど。ノイシュはどうするの?」
「…おいて…」
「がうがうがう!」
ロイドがいいかけるがすぐさまノイシュが抗議の声をあげてくる。
「ノイシュは嫌だっていってるから。ロイドはじゃあノイシュとこれで移動だね。
  この子達に囲んでもらっていけば問題なく島までつけるとおもうよ?」
しかしすでにお金はしはらっている。
一人あたり二百ガルドで六人分で千二百ガルド。
ゆえに。
「ちぇ。しかたないか。さすがにノイシュはイルカにのれないもんな」
「ロイド。これ、イルカでなくてオルカだってば」
「にたようなもんだろ?」
異なるは、野生生物か魔物か、だけの違い。
ロイドの認識としてはそんなもの。
「わ、私はここでまっています。さあ、いってらっしゃい」
リフィルがかなりひきぎみ。
魔物に警戒していたが、魔物達に敵意がないのをみてとり、
そういえば、オルカという種族の魔物は人がかいならし調教しているものもいる。
それをおもいだし、ここの遊覧船乗り場のものが調教しているものなのだろう。
と一人勝手に想像していたりするのだが。
「どうしたんだよ、先生」
「別に…なんでもありません。よくって? 私は乗りません」
「イルカさんかわいいですよ?…タライも面白そうですけど」
コレットがそういい。
「いきはイルカさん、もどりはタライに決定!」
なぜか一人そんな決定をしていたりする。
「そうだよ、姉さん。いこうよ」
いってジーニアスがリフィルの手をつかむ。
が。
「きゃ!」
おもわず悲鳴をあげているリフィルの姿。
一瞬そんなリフィルの様子に全員がだまりこみ。
よくよくみればクラトスですら口をあんぐりとあけていたりする。
「…きゃ?先生…まさか、水がこわい…とか?」
「ああ……姉さん、カナヅ、」
バシンッ!
と爽快な音を立ててリフィルがジーニアスの頭を叩く。
それもう爽快すぎる音で、ジーニアスは叩かれた頭を抑えてたらいの中で蹲った。
「きゃあ、楽しみ、といいかけたんです!」
リフィルはつかつかと残橋をあるくと、そのままタライにと飛び乗る。
どうやらオルカでの移動とタライとではタライのほうがまだまし、と捕らえたらしい。
「意地っ張りだなぁ…」
「ほ~ら、ちっともこわくなくてよ!ほ~ほっほっほっ」
しかしそれがたらいのはしにしがみつき、びどうだにしないままでいっていれば意味はない。
「…むりしちゃって。声がうらがえってら」
ジーニアスはオルカでの移動を選択したらしい。
「私がリフィルとのろう」
ため息とともにクラトスがそういい、動こうとしないリフィルがのったタライにと乗り込む。
当然のことながら、今のリフィルにはいつもの教師らしい威厳は全くない。
本来なら護衛であるクラトスがコレットと同じたらいに乗るべきなのだろうが、
この状態では到底無理そうだった。
そもそもコレットはオルカでの移動をきめている。
大きさ的に三人一緒にのれる子を選らび、他の子には誘導をお願いする。

そのままとりあえず話しもまとまり、一行はソダ島へ。

たらいを漕ぎ出してもずっとしがみ付いているリフィルのせいで、
クラトスはたらいのバランスがとりにくいのか随分と苦戦しているのがみてとれる。
それでも周囲をオルカ達がかこんでいるのである程度安定はしているであろうが。
「うぉ~ん、くうぅん。くぉぉぉん!」
「うるさいぞ!ノイシュ。せめてじっとしててくれ!」
ノイシュが怖い、こわいといいつつも狭いタライのなかで足踏みをする。
そんなノイシュにロイドがいっているのがみてとれる。
「クゥゥン……」

「…あれ、わすれてるよね?」
(忘れてますね)
元々が海中にて産まれた単細胞生物であるプロトゾーン。
進化の過程で海に生息するものにもなりえるが、
進化とはもじどおり元の性質をうけついで進化してゆくもの。
ゆえに今のアーシスたる形体のノイシュもまた水には強い、というより水中でも実は息ができるし、
その足元に空気をまとえば水面すらもかけてゆくことが可能。
しかしどうやらこのノイシュはその事実をすっかり失念しているらしい。

平行しつつもゆっくり進んでいたエミル達はそんな彼らの後ろからついてゆく形になっている。
オルカの巨体は子供三人をのせても余裕があり、海水にぬれるとしても、
ときおりはねてくる海水くらいなもので、移動自体はかなり楽。
コレットとジーニアスはイルカ(まだそうよんでいる)に乗るのが初めてらしく、
目をかがやかせ、きゃいきゃいとはしゃいでいるが。

「やれやれ。ここにも怖がりがいたよ……」
ロイドはそういいつつも、必至でどうにか船をこぎつづけてゆく。
が、クラトスとリフィルの乗ったたらいからは常にリフィルの悲鳴が飛んできている。
「大丈夫かな、リフィルさん…」
「平気平気。死ぬわけじゃないし。あの姉さんが殺しても死ぬはずないし」
「転覆してもきっとこの子達がたすけてくれるんじゃないのかな?」
エミルのつぶやきに、なぜかさらり、と確信をもっていいきってくるジーニアス。
一方で、にこやかにそんなことをいっているコレット。
「まあ、そうだけどね」
しかしヒトというものはショック死、というのもあるんだけど。
そうはおもうが口にはださないでおく。
「それに大丈夫だよ。クラトスさんが一緒なんだから」
コレットはどうやらクラトスを完全に信用しているらしい。
おそらく彼がここにいるのはミトスに何かをいわれたからであろうに。
信頼が深ければ深いほど裏切られたときのショックは大きい。

当初危惧していた海流に流されることも転覆することもなく
無事にソダ島に到着したのは二時間ほど後。
このあたりの海流はひかく的穏やかで、しかも海流が常に島のほうにむかっているがゆえに、
流れにまかせたままでも自然と島につくようにとはなっているらしいが。
「…やっと着いた…のね…」
「面白かったね~、帰りはわたしもタライにのる!」
一人元気なコレットの姿。
「海水が入ってきて転覆するかと思ったよ」
ロイドがげんなりとした口調でいってくる。」
「ほら、先生」
先に桟橋に上がったロイドがリフィルに手を伸ばした。
リフィルももう余裕がないらしく意地を張ることなく素直にロイドの手を取った。
「あ、ええ、ありがとう」
「……貴重な体験だったな」
最後に降りたクラトスがリフィル以上にぐったりしていたのは気のせいではないだろう。
「じゃあ、スピリチュア像を探すか」
「も、もう行くの? せめて休んでから…」
「先生はここで休んでてもいいぜ」
「い、行きます! こんな海の近くで待つなんて…」
「無理しなくても…」
「してません!」
強い口調で言い放ち、リフィルは早足で先行する。
一秒でも早く水場から離れたいと、その後姿が明らかに語っているのがみてとれる。
そんなリフィルをみてロイド達はただ苦笑するしかない。


ソダ島はあるいみで殺風景、とまちがいなく人はいうであろう。
観光地ではあるのだが、ただ間欠泉があるだけで他に見物するところも、宿泊施設もない。
それがヒトの認識。
桟橋をすこしすすむと、小さな看板がたてられており、
そこには。
この先、ソダ間欠泉。
と簡易的にかかれているのがみてとれる。
みれば他にも見物者がいるらしく、ここにいるのはどうやらエミル達一行だけではないらしい。
それでも人数的にはそうはいないが。
「あ。人がいる。すいませ~ん」
ロイドが観光客にきづいて声をかける。
「おや。君たちも観光かい?ここにくる人のほとんどは間欠泉をみにくるのじゃなく、
  タライを体験したい人らしいね。君たちもそのくちかい?」
「いや、タライ自体をしらなかったんだ」
「それはそれは。びっくりしただろう。かくいう僕もたらいを経験したいからきてるんだけどね」
話しかけた男がからからとわらってくる。
ふとみれば、ツアーというか旅業の途中だろうか。
案内人らしき人物が数名の人にこの間欠泉の説明をしているのもみてとれるが。
どうやら内容は間欠泉の説明がかかれたものしかいっていないらしく、
人々から不満の声があがっているのがみてとれる。
「すげえ!本当に熱湯がふきでてる!」
直後、一気に地下より吹き上げる。
シュー、という音とともに何本ものお湯の柱が岩場からせりあがる。
ロイドは興奮したかのように、転倒防止用のローブから身をのりだし、
そんな様子を眺めながらもそんな感想をもらしていたりする。
「間欠泉っていうのはね。周期的に熱湯や水蒸気が噴き上がる温泉のことなんだよ」
ジーニアスがそんなロイドに説明をするが、
「お、おう。しってるぜ?」
忘れてた、という表情をおもいっきりだしつつも、言葉のみではいいつくろうロイドの姿。
湯はひとしきり噴き出してはやみ、少したつとまたでてくる、を繰り返している。
「ずいぶんと間隔が短いのだな」
クラトスが腕組みをしていってくる。
「あれ?ねえ。あそこにあるの、もしかして例の像じゃないのかな?」
コレットがふと何かにきづいたらしく、とある一点をゆびさしいっくてるが。
「え?どこだよ?」
「あ。ほんとうだ。というかよくあんな場所にちょこん、としかも二年もの間あったよね」
そもそもよくもまあ塩分を含んだお湯にて朽ちなかったものである。
「いわれてみればそうね。普通は塩分を含んだしかも水蒸気をあびていたら、
  まちがいなく朽ち果てるでしょうに。ずっとあそこにあったのかしら?」
リフィルがつぶやき、
「まあ、考えられるのは水分が木造である像にとたまり、それが温められて、
  水分の中に含まれている鉄分がそのまま内部にて固まったから、とかですかね?」
「ありえるわね」
そんなエミルとリフィルの会話に、
「?」
意味をまったく理解していないロイドはただ首をかしげるだけ。
「せっかくみつけたんだし。あれをもっていってあげようよ。
  どちらにしてもここがおわったら救いの小屋にいくことになるし」
たしかに、道なりにすすめばもう一度あの小屋にはいくことになる。
あの日はそろそろ日がくれてきたから宿をとるためにあちらに足をむけたのだから。
コレットの言葉に、
「よし。僕が間欠泉をとめるから、その間にロイド、とってきてよ」
「わかった」
湯の噴出が終わったところでジーニアスが剣玉をにぎり、
「アイシクル!」
間欠泉の吹き出し口…像がある場所の、が氷で一瞬かたまる。
ロイドが器用に間欠泉の中をぴょんぴょんとぶと、スピリチュア像を手にとりこちらにともどってくる。
二年もの間間欠泉の中で暮らしていたマーテル教の創始者、
をかたどっているといわれている像は生温かく湿っていたりする。
「やったね。ロイド」
コレットの拍手でむかえられ…なぜかそれをみていた他の観光客の拍手も追加され。
ロイドがこちらの岸にたどりつくのと、氷がとけたために背後で湯が噴き上がるのはほぼ同時。
「いやぁ。いいものみせてもらったよ」
「おとしものかい?大変だったね」
口ぐちにそんなことをいってくる観光客達。
「怪我はないか?…ならばいい」
ロイドの身を案じ、ちいさくつぶやいているクラトス。
「なあ。ふとおもったんだけどさ。この像にもなっているスピリチュアは世界を救済したんだよな?」
手にしている像をみつつもロイドがふといってくる。
「そうだよ?」
「スピリチュア様のおかげで世界にマナが満ちて人々が救われて。スビリチュア様は天界へと導かれたの」
コレットがそんなロイドに説明をしているが。
そもそも、天界?
そのことばにエミルがおもわず眉をひそめる。
そんなものはつくっていない。
移住してきた当時、彗星ネオ・デリス・カーラーンをそう呼ぶものはいるにはいたが。
「なんでその時救われた世界にディザイアンがまた現れたりマナが減少して皆苦労するようになったんだ?」
ロイドの素朴な疑問。
「救いの塔がきえてしまったから、その恩恵をうけられなくなった……って教わったけど」
「あら。ロイド。珍しく勉強かしら?」
リフィルの問いに、
「そんなつもりはないんだけどさ…ただ、きになってさ。
  塔なんだから誰かがつくったものだろうし。ってことは誰かが何かしてるのかな?とか思っただけで」
確実にミトスが何かやっている。
それはもうエミルは確信をもっていえる。
「レミエル様のような天使のみなさんがマナをあたえてくれてるのかな?」

そもそもマナを生み出すような力はヒトにはない。
マナをうみだせるものは世界樹とそしてその精霊であるもの。
すなわち世界をうみだせしものしかその力はありえない。
もっとも、世界をうみだせしものがその役割を担う何かをうみだしていれば一概にはいえないが。
当然そんなものをラタトスクは創ってはいない。

「なるほど…興味深い考え方ね。
  今までは単に救いの塔を救済の象徴、とのみ受け止めていたけれど……」
「我々ではたどりつけぬ答えではないのか?結局救済を完遂せねば導きだせぬ答えだ」
どうやらこの話題はクラトスにとってはあまり好ましくないらしい。
無表情ながらもびくり、と反応し、しかもマナが乱れたのが手にとるようにとわかる。
あの救いの塔には精霊達の結界が施されていることをエミルはつかんでいる。
力が完全でない以上、あの結界をすり抜けて確認するのはあるいみ危険。
そうセンチュリオン達がいうのでまだ内部までは確認していない。

「コレットが天使になったら救いの塔にもいくのかなぁ?
  だったら、その時にコレットに聞いたほうが早いかもな。コレットの土産話に期待するとするか!」
「う、うん。…そうだね」
そういうコレットの表情はしずんでいる。
みればリフィルの表情も。
この試練とかいうのにはどうやら何かがあるらしい。
あからさまに二人のマナが今、感情でみだれた。
戸惑いと、そして嘘をついている罪悪感。
そんな感情が乱れたマナから感じ取れる。
「あれ?」
「どうした?」
ふとコレットがその先にある展望台のほうへと視線をむけ、
「あの展望台みたいなところのあの看板……」
「看板がどうかしたの?」
ジーニアスが観光客にもみくちゃにされかかりつつもどうにか脱出してコレットにとといかける。
「何かみおぼえが…先生。
  私、なんだかあれにみおぼえがあるようなきがするんですけど…きのせいでしょうか?」
彼女の視線の先には古ぼけた作りの石版がある。
その奥には同じく石造りの巨大な扉。
だが二つの間には大きな間欠泉が開いており、周期的に水蒸気を吹き上げている。
さらに展望台の上の岩壁はちょっとした足場になっており、上のほうから間欠泉をみられるように、
と人の手がくわわっているのがみてとれる。
もともとそこにはたしかに道はあったが、そこにどうやら手をくわえられているらしい。
もう一つの隠れた観光名所、としてその岩壁に様々な紋様が刻まれていることから、
昔の遺跡ではないか、とまで言われているその場所。
コレットは首を傾げて思い出そうとしているらしい。
しかしエミルの視線はその先にある紋様が刻まれている、といわれている壁の一部にむけられる。

あの奥には祭壇がある。
センチュリオンが眠る祭壇。
その上にどうやらクルシスとやらが上書きするかのように神殿を建て加えたらしいが、
間違いなくあの奥にはアクアが眠っている…いや、もう目覚めているというべきか。
曰く、何でも神子がマーテルの試練をこなすと精霊が目覚め、マナが復活するらしい。
未だにこれは理解が出来ないが。
ただ精霊が眠る場所というのはセンチュリオン・コアの眠る祭壇とイコールである。
つまり、神子の試練が行われる場所は
センチュリオン・コアの眠る祭壇のある地である可能性が高いということには気付いていたのだが。
そもそもセンチュリオン達の祭壇にあわせ、彼らの神殿もかつて創った。

コレットが首をかしげつつもリフィルにとといかけているのがみてとれる。
間欠泉の横にとある展望台にと視線を注いだリフィルは、
「おお!」
いきなり大声をあげる。
そこにいた観光客達がおもわずぎょっとしてこちらを注視してくるが、
リフィルはおかまいなしとばかりに展望台へとかけよってゆく。
よほど興奮しているのか石段を三段とばしでかけあがる。

「こ、これは!神託の石板!コレット、早くこい!」
いわれて互いに顔をみあわせたのち、とりあえず全員で展望台へとむかってゆく。
コレットが旧トリエット遺跡でみたものとよくにている。
「あ。これ、何とかって石板じゃないか?」
ロイドがリフィルがいる前にある石板をみてそういってくるが。
「神託の石板だな」
すかさずクラトスがそんなロイドに追加突っ込みをいれてくる。
「そうか。ここが水の封印なのだな。再生の書にあったとおりだ!くくく。うはははは!」
「…観光客のみんなが何ごとか、とおもってこちらを遠巻きにしてるよ?」
「いわないで。エミル……」
みればこの場にいる観光客の幾人かがこちらを遠巻きにそれでもきになるのだろう。
こちらをちらちらとみているのがみてとれる。
中には気にはなりはすれど無視することにしてあえて普通をよそおっていているものも。
「本当ですね~。だからみたことがあるとおもったんだぁ」
のんびりとそんなことをいっているコレット。
「のんきだねぇ。コレットは」
しかし、水の封印、だの再生の書だの、おもいっきり大声でいっているがゆえに、
この場にいる観光客たちの耳がもはやこちらに注目していることすらリフィルは気づいていないらしい。
「さあ。コレット。はやくここに手をおくのだ!」
「はい。じゃあ、さっそくやってみますね?」
コレットが石板のくぼみにと手をおく。

ズバーン!

音とともに間欠泉の向こう側の岩場に洞窟の入口が開く。
コレットの足元から入口へつづく水の橋が間欠泉の真上にとかかる。
「くっくっくっ。いいぞ。さっそく向かおうではないか、続け!さっそく調査にむかうぞ!」
リフィルが先頭にたち、問答無用で水の橋にとそのブーツをのせる。
「…海よりこっちのほうがよほど危険じゃないのか?というか、調査じゃないだろ、調査じゃ」
しごく当然ともいえるロイドのつぶやき。
「ああ。また遺跡モードに…あの状態になった姉さんには何をいっても無駄だよ…」
すでにジーニアスは諦め顔。

『おおおおお!』
それをまのあたりにし、観光客達が何ともいえない歓喜の声。
水の封印とかいっていたのでまさか、とはおもっていたが。
どうやらあの一行は再生の神子一行である、とさすがにこのような現象をみれば嫌でも人々は理解する。

「え?エミルはいかないのか?」
ふときづけばエミルが水の橋に足をのせずにノイシュの傍にたたずんでいるまま。
ゆえにロイドが問いかけるが。
「あの人達のところにノイシュ一人をのこしていける?」
今さらながらにエミルの指摘にきづいたらしい。
観光客のほとんどがその場にひざまづいて祈りをささげているその様に。
「うげ!?何でばれたんだ!?」
ロイドがそういうが。
「…あれだけ大声でいってたら普通きづくとおもうよ」
至極当然なエミルの突っ込み。
全員で移動すれば残されたノイシュがどのような目にあうか…考えたくもない。
エミルに…否、ラタトスクにとっては、
ノイシュは初めてこの惑星にてうんだかわいい子のうちの一人なのである。
「僕はここでこの子とまってるよ。皆は用事をすませてきて」
「でも……」
「神子一行とバレテしまった以上、たしかにノイシュに危険がおよぶともかぎらない」
クラトスの言葉にロイドもしぶしぶ納得する。
興奮した民衆はどんな行動をおこすのかクラトスは今までの経験でよくわかっている。
それゆえの台詞。
一行はそれぞれ水の橋にと足をかけ、そのさきにとある入口へとむかってゆく。
それと同時。
駆けだすひとつの気配。
展望台をかけあがり、そして橋のほうへといこうとする一人の女性。

「あれ?君は?」
「あ、あんたは!?」
ふと駆けあがってきた女性にきづきエミルが声をかけるが。
「君も観光?」
「いや、って、ああ!?」
ふとみれば、いつのまにか一行は入口らしき向こうに姿をけしており、
いつのまにか水の橋らしきのも姿をけしていたりする。
「偶然だね。君もここの間欠泉をみにきたの?」
にこにこというエミルのその様子には邪気をまったく感じられない。
「あんたは…あんたはなんであいつらと一緒にいるんだ?」
アステルによくにているがゆえにどうも邪剣にできない。
彼のあるいみ腹黒さをしっているがゆえ、心理的に警戒している、というのもあるのであろうが。
「え?たまたま?」
それ以外に何といえばいいのか。
あとはミトスが何をしようとしているのか、というのがきにかかるから、という理由もあるが。
「しいなっていったよね?」
「あ、ああ」
「僕はエミル。よろしく」
「よ、よろしくされるすじあいはないよ!」
しいながあわてていってくるが。
ぐ~
なぜか彼女のお腹がこんなときだというのに盛大に音をならす。
「…たべる?」
携帯していたサンドイッチ。
ちなみにこれはセンチュリオン達に食べさせようとエミルが自ら創りしもの。
ゆえに簡単にいえばマナそのものでつくられているものなのでかなりマナの量が豊富ともいえる。
人体に多少の影響がでるかもしれないので渡すときにはそこかにマナをかなり削ぐことにはなるだろうが。
「ほ、ほどこしなんてうけないよ!」
そのままそっぽをむき、またまた石段をかけおりてゆくその様子をみつつ、
「何だかなぁ。…さてと。アクアをどうやって迎えにいこう?」
ノイシュをなでつつも、入口である壁をみながら思わずつぶやく。
と。
「は~い!お呼びですか!ラタトスク様!お久しぶりです!ざっと四千年ぶりですね!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
何、口を開いただけで待っていた、とばかりに姿をあらわしているのだろう。
この子は。
突如として吹き上がる間欠泉の湯の中より青き光が出現したかとおもうと、
それはやがて人型をとりエミルの前にてびしっと元気よく片手をあげてそんなことをいってくる。
こちらをうかがっていた観光客達がぎょっとした視線をむけてきているのが嫌でもわかる。
「…ソルム」
一言。
それだけで瞬時にエミルの周囲に幻影がヒトの目にはうつりこむようにと変化する。
そしてため息をつきつつも、
「アクア。くるのはいいが、人目も考えろ……」
おもわずそうつぶやく彼は間違っていないだろう。
絶対に。
もしもクラトス達の前でつぶやいていたとしたら…考えるだけでもおそろしい。
センチュリオン達の力の充実とともに記憶もたしかなものとなってきているのが実感できている。

一方で。
「えええええ!?」
「どうした?コリン?」
石階段を駆け降りると同時、間欠泉の中から青い光がとびだし、
それが一つの姿をとったのを確認したのかコリンがなぜか姿をあらわし驚愕の声をあげてくる。
「あ、う、ううん。な、何でもない、なんでもないよ!しいな!」
あ、あれって、センチュリオン様だよね!?
人工的につくられし精霊とはいえ世界につながりがあることはかわりがない。
さらに驚愕することに、今、あのセンチュリオン様はあの少年のことを何とよんだ!?
コリン、とよばれしリスのようなそれはただただ混乱するしかない。
「?あれ?なんか今、光りが人型になったような気がしたけど…きのせいか?」
しかもその人型は石段のうえの石板のもとにいる少年のところにむかったような気がしたが。
みるがそこにはただ少年が犬のようなへんな動物とすわっている様子しかうつらない。
それはソルムによるヒトの目にはそうみえるように、という幻影なのだが。
しいなはそれに気づかない。
否、気づくことができない。


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あとがきもどき:
薫:ゲームでもおもったこと。なぜあれだけいた観光客が。
  水の神殿にはいるときにいなくなってるのか、とか。
  ぜったいに騒動になりますよね。あれ。
  しかも再生の神子の旅立ちは偽物がでるほどに知れ渡っているわけでv
  エミル…ラタトスク様、コリンに正体がばれかけてますv

2013年6月10日(月)某日

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