まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

ようやく人間牧場、INパルマコスタ、の箇所にきた~…先はながい~る~る~…
ともあれ、いきまーす……

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総督夫人であることはひとめでわかった。
総督は、とといかけるとリフィル達は暗い顔で。
ゆえにこそ何となく判断してしまう。
五年前から異様にディザイアン達にむかっていったドア。
そして死んだとおもわれていたドア夫人。
おそらくは、彼らに連れ浚われても死んだ、ということにして必至に抵抗していたのであろう。
ねがわくば、妻をたすけだすことを目的に。

「…いえ、何もおっしゃらないでください。あなた達の顔をみればドア様がどうなったのか。想像はつきます」
牧場へともどると、ニールがロイド達の顔をみてそんなことをいってくる。
彼も覚悟はできていたのであろう。
ゆえに何もきいてはこない……

光と闇の協奏曲 ~パルマコスタ人間牧場~

ディザイアンの施設の内部は東側と西側にと別れているらしく、棟がわかれている。
ニール曰く、何か施設の中であったのか、少し前。
…ロイド達がここを離れた直後、見張りのものたちも中にとはいり、それから誰もでてこない、とのこと。
異様に鎮まりかえっている施設内。
ただ、じ~という機械音がどこからともなくきこえてくる。
天井のいたるところには監視カメラが設置されており、
管制室において全ての部屋の様子がわかるようにとなっている。
すでに街に入って少しして、今現在いた施設のものたちは、責任者以外全て粛清しおわった。
そう報告はうけている。
そしてまた、捕らわれていた人々より、かのものたちを解き放った、ということも。
ゆえに誰もいない、ということ自体はエミルにとっては不思議ではない。
だが、
「誰もいない、というのが不気味ね」
ニール曰く、まだ軍隊は到着していない、とのこと。
ならばやはり罠だろう、とはおもうが行動しないことにはどうにもならない。
リフィルがぽつり、とつぶやきつつも、とりあえずリフィルの提案でまずは西の棟へと足を運ぶ。
西側の部屋にはいるとそこはどうやら捉われていた人達の住まい兼牢となっているらしく、
数え切れないほどの牢やの中に一人づつ入れられている彼らの目にはなぜか生気がなく、
どちらかといえば恐怖、といった感じがみてとれる。
ロイド達はしらないが、いきなり魔物が目の前にあらわれ、その手にした鎌にて自分達を切り裂いていった。
死を覚悟したが、魔物達の狙いはどうやらうめこまれていた宝石っぽい何かだったらしく、
魔物が鎌をふるうとどうじ、うめこまれていた宝石がころん、と切り離された。
そしてまた、外よりきこえるディザイアン達の悲鳴。
牢の中からでもわかるほどの魔物の数。
それはある程度の時間とともに魔物達の姿はいなくなったが。
嫌でもわかる。ここが魔物の襲撃にあったのだ、と。
次は自分達だ、そうおもい恐怖に震えていたそんな最中、部屋にはいってくる気配。
おもわずびくついた彼らはおそらく間違ってはいないであろう。
「ショコラは…いないみたいだね」
一通り牢を覗いていたジーニアスが首を横にふる。
「ここにいる人達も早くたすけなくちゃ」
コレットがいい、
「じゃあ、二手にわかれるか……」
ロイドが考え始めるのと同時、
「いえ。それでしたら神子様達が手薄になってしまいます。ここは私におまかせください。
  パルマコスタ軍も間もなく到着するはずです。
  私は彼らと合流してこの人達をたすけますから神子様はショコラをお願いします」
「なら僕もこのニールさんと残るよ。ニールさん一人じゃ心配だし」
「…そうね。エミルは治癒術がつかえるようだし。たしかにそのほうがいいかもしれないわ。
  あなた、剣のうでもかなりのものみたいだし」
自分よりも年下の子が自分より高度な治癒をつかえる、というのにすくなからずのショックはうけるが。
「たしかに。エミルならば大丈夫だとはおもうが…
   先の火の封印でも、そしてさきほどの戦いにおいても、腕はかなりのものだとみた。それに……」
レイズ・デッドはかなり高度な治癒術に位置している。
それをあっさりと使用し、しかもその術には迷いがなかった。
「……これがロイドなら危うくて任せられんがな」
いいかけた言葉をのみこみ、別なことをいいだすクラトス。
「な、何だよそれ!」
「お前もエミルに負けぬよう、精進するのだな」
「くっそー! 偉そうに! エミル! 絶対負けねぇからな!すぐに追いついてやる!」
「あ、うん…。頑張って?」
「何気に疑問系!くそぉぉ!」
「どうでもいいけど、ここが敵地、というのわすれてない?ロイド?」
そんなロイドにあきれた視線をむけているジーニアス。

結局のところこの場にのこるのはニールとエミル、ということで話しがまとまり、
ロイド達はマグニスの元にとむかってゆくことに。

「さてと。…エミルさん、何をしてるんですか?」
「え?」
そこにあるパネルに触れ、そこから情報を読み取り、暗証番号らしきものをそのまま入力する。
ここの施設はほとんどが暗証番号制となっているらしく、
実はセンチュリオン達が、
ディザイアンを倒したときに手にいれた、というカードキーなるものをエミルは手渡されていたりする。
それはリフィル達が教会にクララを預け、神官達と話していたその間の出来事。
少し彼らと離れた場所にて、センチュリオン達からの報告をうけたまで。
シュイイン。
音とともに牢の中と道の間にある扉が開かれる。
ガラス張りになっているそれはエミルのロック解除により一斉にと解き放たれる。
「えっと。ニールさん。すいません。この人達に事情をいってもらえませんか?
  ニールさんが説明するほうがいいとおもうので」
見知らずのものがいうよりも、やはり彼らがしっているもののほうが説得力はます。
それゆえのエミルの台詞。
「皆さん。私は総督府のニールです。皆さんをたすけにきました」
その言葉にそれまで震えていた人々の表情に光がさしこむ。
「ここにいるのはこれだけですか?」
「他は、もう……」
それだけでもうわかってしまう。
それゆえにニールとしても押し黙るしかない。
そして。
「エミルさん、この牧場に収容されているのはここにいる人たちだけのようです。急いで脱出しましょう!」
「あ、はい」
ニールは素早く全員をまとめていたようである。

「魔物が襲撃してきたときにはどうなるかと」
助けだされた人々がそんなことをいっているが。
「魔物?」
「私たちは牢の中で壁みたいなものにさえぎられていたけど。
  それでも牢の中にまで魔物がでてきて…鎌をもった…あれはおそらく死神……」
ひとりがいい、その場にいた全員がうなづく。
しばらく悲鳴などといったものがきこえていたが、やがてしずまりかえった施設内。
次は我が身、と震えていたところに牢がひらかれ、そしてニールの口からでたのは、総督府のもの。
すなわちそれは、やはりドア総督が助けてにきてくださった。という人々からすれば救いの光。

収容されていた人々を連れ、エミルとニールは出口を目指す。
弱っている者が大勢いるため素早くは移動できなかったが、相変わらずディザイアンに出会わない。
このまま上手く脱出できると思えた、その時。
エミルたちの目の前で、鉄製の頑丈な扉が音を立てて閉まった。
あわてた人々が押しても引いてもびくともしない。
後ろを見れば、今来た通路とも完全に扉で分断されていた。
全員、小さな部屋の中に閉じ込められてしまった形となりはてる。
「やっぱり罠だったんだ!」
「どうしましょう、ここまで来て…!」
余程頑丈な扉なのだろう、ニールが途中で拾った剣で叩いても傷が付くだけでびくともしない。
誰ともなく叫んだそのことはに、ニールが戸惑いの声をあげる。
しかし、エミルは動じない。
目をとじ、そして小さくつぶやく。
「・・・・・・・・・・・」
その呟きはその場で混乱しはじめた人々の耳にはとどかない。
もしもきこえていたならば、エミルが魔物の種族名をいったことに気付いたであろう。
すなわち『ランバージャックロード』と。


エミル達が牢より人々を救出し、外にとむかっているそんな中。
壁際に一人、震えていたショコラと再開をはたす。
何でもいきなり魔物が襲ってきたらしく、ディザイアン達も気づけばいなくなっていたらしい。
ひたすらに壁の隙間にかくれていたが、見知った顔をみたのででてきた、とのこと。
「神子様…みなさん、たすけにきてくださったんですか?」
魔物もこわいがディザイアンの姿もみえない。
あれから静まり返った施設内ではあったが、一人で行動するのは怖すぎた。
「あなただけではないわ。総督府のニール。しっているでしょう?
  彼らが今、ここに収容されている全ての人達を救出しているわ。
 問題がなければそろそろ外にでたころじゃないかしら?」
「本当に!?ああ、いよいよドア様が動き出したんですね!」
「え?」
「話しはあとだ」
何と説明しようか声につまるロイドにかわり、クラトスがその会話をさえぎり、
「マグニスの意場所をしらないか?奴はここにいるはずだ」
「施設全体の管制室でもよくってよ」リフィルの言葉に、
「いえ。すいません、どっても…あ、もしかしてあそこのことかしら?」
「しっているの?」
「ディザイアン達につれていかれそうになっていたときに、ちらり、とみえた場所がもしかしたら」
何でもみたことがない、機械とかいうそれらがたくさんおいてある部屋をちらりと確認したとか。
そのまま彼女の案内のままに歩きだす。
いまだにこれまでロイド達はディザイアン達のデのじともあっていない。
ショコラにつれられて移動する。
ショコラがみた、というのは光る壁、とのことらしく、それはスクリーンのことであったらしい。


何枚ものスクリーンに施設内の様子が映し出されているのがみてとれる。
部屋にはいると同時、
「ようやく到着か。待ちくたびれたぞ。天にみはなされた神子と豚どもが」
そんな声が上のほうからふってくる。
「天から見放された…だと?」
クラトスがその言葉におもわずつぶやく。
ロイド達がはっとして天井をあおぐと
移動用シートに腰をかけたマグニスが、ウィーン、という音とともにワープゾーンからおりてくる。
「天から見放されたのはお前だ!マグニス!ここでたたきのめしてやるぜ!」
ロイドがいいつつも、
「きゃっ!」
ショコラが驚いてリフィルの背中にしがみつく。
「所詮は豚の浅知恵よ。
お前たちの行動はつつぬけよ。劣悪種達がにげようとしているのもな」
おもわずロイドがあっと声をあげる。
一枚のスクリーンはおそらく牧場の外、到着したパルマコスタ軍達がうつしだされ、
そしてまた、もう一つのほうにはニールとエミル、そして助けだした人達が、
狭い部屋の中らしき場所に閉じ込められている様子が映し出されていたりする。
「何であんなところにニール達がはいっているの?」
コレットが首をかしげ、
「あれは投影機。魔科学の産物だ」
淡々とクラトスが説明をする。
「遠くな人やものを映し出す装置よ。私たちの行動はまるみえだった、ということね」
リフィルが淡々と追加のようにいってくる。
「ああ、閉じ込められちゃってる。せっかくうまくいくとおもったのに」
「無駄無駄、無駄。お前たちの行動は何もかも無意味なんだよ!」
「…そうともいえなくてよ。ほら」
リフィルが別なスクリーンを指差す。
みればカマキリのような魔物がかたっぱしから壁という壁を切り裂いているのがみてとれる。
やがてそのカマキリはエミル達がとらわれているのだろう、その壁までをも切り裂き。
そのまま中にいる人には興味がないのか、
ひたすらにただひたすらに壁をきりきざんでいる様子が映し出されている
「馬鹿な!まだ魔物がいたのか!」
施設にいた全てのディザイアン達は魔物に駆逐された。
中には転移装置にて救助を要請にいったものもいるが、要請にいったものはまだ戻ってきていない。
ようやく二人ほど、たまたま魔物の襲撃時に外にでていた仲間が戻ってきているだけで、
実は今現在、この場にはディザイアン達はほとんどいなかったりする。
「あの魔物…なんで、壁ばっかりきってるの?というか壁…きれるんだ……」
おもわずそれをみてジーニアスがつぶやくが。
「外にでたいんじゃないのかなぁ?」
コレットがそういい、
「まさか。…でもそうなのか?」
たしかにそこにいる人にめもくれず、
かたっぱしから壁という壁をきっては、その穴から別の場所へと移動している。
どうやらエミル達は魔物があけた穴から無事にでれたようで、
魔物が通ったあとなので安全と判断したのかその後ろからついていくことにしているらしい。
魔物はどうやらまっすぐに外にとむかってすすんでいるらしく、ことごとく壁をきりきざんでは穴をあけてゆく。
やがて外にでると魔物はそのままその羽をはばたかせて空にととんでいった。
『・・・・・・・・・・・・・・・』
しばし無言でそんな信じられない光景をスクリーンごしにみていたロイド達。
マグニスにしてもまた然り。
「と、とにかく残念だったな。
あとはお前をたおせば全ておわりだ!悲劇はおこさせない!」
とりあえず、今のは見なかったことにして、あらためてマグニスにと向き直るロイド。
「ふ…ふはは。魔物の介入は想定外だったが。そもそもお前が悲劇をおこせない、とよくいえたものだな。
  ええ?ロイド・アーヴィング。イセリアの悲劇は誰のせいだ?
  しかし、人質が逃げても問題はない。奴らにはエクスフィアが埋め込まれてある。
  離れた場所からも奴らのエクスフィアに介入することは可能だ。
  そうだ。投影機に映っている連中であのときの再現をしてやろうか?
  培養体に埋め込んだエクスフィアを皆暴走させてやろうか?み~んな化け物にかわるぜ?」
「や、やめろぉ!」
ロイドが叫ぶが。
「遠慮するなよ。お前がころした、あのばばあ。マーブルのようにしてやるよ。ガーハッハッハ!」
「マーブル?マーブルって…まさか……」
ショコラが震える声でつぶやく。
「そうなんだ。気の毒になぁ。ショコラよ。
  お前の祖母マーブルは、イセリアの牧場におくられて、あげくの果てにロイドに殺されたんだ。
  それはそれは無残な最後だったそうだぜ。死体の欠片ものこっちゃいねえ!」
「う…うそ…」
ショコラがよろよろとあとずさる。
パチン、と指をならしたマグニスの指示をうけ、ショコラの背後に二人のディザイアン達が出現する。
「まって!ショコラ、誤解だよ!ロイドはね。マーブルさんを助けようとしたんだ。
  でも、ディザイアンがマーブルさんを化け物にして…」
「ロイドが殺した」
「う…そ……いや…いやぁぁ!」
ジーニアスの叫びも耳にはいらない、というか聞く耳持たず。
そんなショコラの体をディザイアン二人ががっしりと確保する。
「ショコラさん!」コレットが叫ぶが。
「くそ!ショコラをはなせ!」
いいつつ駆け寄ろうとするロイドにたいし、きっと怒りのまなざしをむけ、
「放っておいて!おばあちゃんの仇になんてたよらない!それくらいならここで死んだほうがましよ!」
「死ぬなんてことをいっちゃだめだよ。どんな状況だって死ぬより生きていたほうがいいよ。絶対!」
コレットがそんなショコラに必至に説得をするが。
「私のことはドア様が助けてくださるわ。放っておいて!
  あんたたち、おばあちゃんの仇だったなんて…二度と顔もみたくない!
  やっぱり信じられるのはドア総督だけだわ!」
「・・・・・・・・」
ロイドは茫然と立ちつくす。
「ふははは。ドアになぁ。馬鹿で愚かな娘だ。さすがは劣悪種。おい、お前たち、その娘をつれていけ」
マグニスの言葉をうけ、ディザイアン達がそのままショコラをつれてゆく。
マグニスでもわかる、どちらを信じれば正しいか、ということくらいは。
それでも、ショコラは自分達の方の言葉を信じた。
それが愚かといわずに何とする。
「さて。お前たち、生きてかえれる、とはおもっていないだろうな」
マグニスはひらり、とシートから飛び降りると粗野な笑いをうかべ、
大斧をもってロイドたちの前にと立ちふさがる。


『外まで道をつくれ』
「何がどうなってるんだ?」
「あの子も外にでたいんだとおもいますけど?」
そういう問題でもないような気がする。
だがしかし、目の前にいるカマキリのような魔物はこちらに目もくれず、
かたっぱしから扉を切り裂いていっている。
おそらくは自分達がいた扉を切り裂いたのもその結果の一つでしかなかったのであろうが。
まさかエミルが命じている、などと一体誰がおもうであろう。
そんな魔物が道をひらいていっている様子を管制室でロイド達に
逆に人質達の様子をみせてあせらそうとおもっていたのにまたまた魔物により目的がたっせられず、
いらいらとしたマグニスの姿がそこにあったりするのだが。
「しかし、ディザイアン達の姿がみあたりませんね……」
「もしかしたら撤退したのかもしれません。魔物の襲撃があったのは事実ですから」
ニールのつぶやきに、助けだした一人がそんなことをいっている。
万が一応援をマグニスが呼んだ場合をうけて姿をけして待機していた魔物達からは、
マグニスの今の様子が手にとるようにエミルにと伝わってくる。
ここを襲撃したのはほとんどが闇属性の魔物達。
何ごともなく、かまきりのような魔物が切り開いた外までの近道・・をとおり、無事にと施設の外にとでる。
そのまま牧場の出口までは罠もなく、これまでと同様ディザイアンにも出会わなかった。
牧場の出口までくると待機していたパルマコスタ軍達の姿がみてとれる。

そんなパルマコスタ軍に収容されていた人々を預け、エミルはロイドたちの脱出を待つことに。
軍は一足先にパルマコスタへと帰還させ、ニールも共に残った。


「お…おかしい。なぜだ。
  優良種であるハーフエルフである俺様がこんな小僧達に負けるなど…馬鹿な……」
戦闘ののち、負けたマグニスががくり、とひざをつく。
そのまま立っているのも無理らしく、そのまま床へと倒れ込む。
信じられない、というマグニスにたいし、
「愚かだからだ。マグニスよ。クルシスはコレットを神子として受け入れようとしている」
「な…なに!?」
だらだらと血をながしながら、上体をおこそうともがく。
が、それはかなわない。
「そうだ。コレットは世界を再生するんだ。おまえらなんかに負けるかよ!」
ロイドがクラトスの言葉を勘違いしてそんなことをいいはなつ。
「そうか…お前が……そういうことか…俺は…だまされたのか……」
マグニスの様子を冷静にうかがっていたリフィルは反撃の余地なし、と判断したらしく、
そのまま急いで操作パネルにとむかうとボタンを操作しはじめる。
そして。
「さてと。これでよし。…時間は、十分後でいいわね」
「十分後…って、先生?何してるの?」
コレットがきになるらしくリフィルの手元を覗きこむ。
「ここはまもなく自爆します」
「「「えええ~!?」」」
ロイド・ジーニアス・コレットの声がかさなる。
「叩くなら徹底的にやるべきでしょう?少しはディザイアンの力もよわまってよ?」
リフィルは倒れているマグニスにとちらり、と目をやり、
「ジーニアス。間違えてはだめ。彼らと私たちは違うのよ」
いいつつも、起爆スイッチをかちり、と起動させる。
び~び~
それとともに警報がなりひびく。
「は、はやくいこう!いそがないと俺たちまでふっとんじまう!」
ロイドの言葉にあわててその場をあとにするロイド達。

ロイド達が部屋からでてまもなく、
「ぐう…フォスティス様に…知らさなければ……俺が…いきているうちに……」
「それはこまりますなぁ!」
突然響き渡る甲高い声にマグニスは霞む目を宙へとうかせる。
立体映像装置にうかびあがる一つの人影。
「…ロディル…か」
「わしのやろうとしていることがフォスティス様にしられてしまっては困るのですよ」
「て…テメェ…だまし…たな!この俺様を…神子抹殺命令がでていたのではなかったのかっ……」
マグニスは立体映像でしかないそれとわかっていても手をのばそうとせずにはいられない。
「ふぉほほ。金塊集めといい。神子抹殺といい。あなたは本当によくやってくれました。でももう用済みです。
  すっかりね。あの世にいってもどうかお元気で
  では牧場と一緒にこっぱみじんに吹き飛んでください。ではごきげんよう」
ロディル、とよばれた男の映像がぶつり、ときれる。
「て…てめえ…まちやがれ…くそ……」
マグニスの腕はむなしく空をつかみぱたり、と床にとおちる。
「ゆ…ユグラシドル様…我らハーフエルフの千年王国を…必ずや…」
それだけいいつつ、マグニスの意識は深い闇の中へとおちてゆく。
彼はその身に直接エクスフィアをつけてはいない。
つけていたのは自分の武器たる斧にであり、ゆえに死んでしまっても石の中に魂を移動させる。
というようなことができない。
文字通りの…死。
やがて、振動が施設全体をおそいかかる。
が、すでにマグニスは意識もなくただただその流れに身をまかすのみ。


び~び~
何となく異様な音がここにまできこえてくる。
「な、何があったんでしょうか?」
「なんか警戒音みたいだけど…」
爆破スイッチを起動させた、とは魔物達の通信で把握した。
それをうけてその場にいた魔物達は全て撤退命令をだしている。
出現したときと同様にテネブラエの闇移動により元いた場所にともどされる魔物達。
だが、それをしっているそぶりはまったくみせずに、ただ首をかしげて事実のみをいいはなつエミルの姿。

しばし一時後、やがて入り口からロイドが飛び出してくる。
みれば、後に続く四人にも目立った傷は見られない。
ショコラはマグニスが転移装置で別な場所へと送っていってしまっている。
そもそもマグニスについていくのを選んだのはショコラなので自業自得、といえるであろう。
「エミルも無事か…!収容された人達は!?」
「皆、パルマコスタに移動させました」
ロイドの問いに、ニールが素早く答える。
「じゃあ、エミルとニールさんも急いで逃げて!」
「は?」
「爆発します~」
一人だけ事態が分かっていないニールは、ジーニアスの言葉に首を傾げるが、
続くコレットの言葉に顔色を変え、慌てて走り出した。

全員がその場を離れて間もなく、激しい轟音が辺り一帯に響き渡り、牧場が火を噴いた。
一瞬で上空に巨大なキノコ雲が浮かび上がり、それが爆発の規模を雄弁に物語る。
『人の手にて歪められしもの 人の手にくられしものにてその歪みをただせ』
それとともにエミルがぽつり、とつぶやく。

それは周囲の歪みそのものを施設、という建物自体にぶつけて相殺させるもの。
この周囲に道いていた人為的に歪められしマナ、そして負の力はその言葉とともに、施設にと集中する。
 建物はそれらの力にたえられるはずもなく、
相殺されるかのようにその建造物、としての姿をゆっくりと消してゆく。
狂わされしマナ、または負の力は時として全てのものをマナにと還す。
本来ならばそのまま具現化などして負の力や歪みをまきちらすのだが、
エミルが導いたことにより、その対象物が建造物、となっただけのこと。
キノコ雲のその下においてそこにあったはずの建造物が
もののみごとに完全に消滅していっていることを当然、リフィル達が気づくはずも…ない。

「ふう。何とか脱出できたな」
森をぬけ、ひとまず一息。
額の汗をぬぐいつつもそうつぶやくロイドの姿。
「皆さん、お怪我はありませんか?」
今さらながらのニールの問いかけ。
「ニールさんのほうこそ、大丈夫でしたか?」
「はい。なぜか一人もディザイアンはいませんでしたので…
  捉われていた人達がいうには魔物の襲撃があったとか……」
その台詞にクラトスが眉を一瞬しかめる。
これまで施設が魔物におそわれる、ということは時折はあったが、
それでも大規模なものはなかった。
大概は施設侵入前にと撃退されていた。
それゆえのクラトスの懸念。
「あのぉ?ショコラは?」
きょろきょろと周囲をみわたすが、ショコラの姿がみあたらない。
それゆえにニールがといかけるが。
「力がたりなくて…おそらくは、他の牧場へ移されたのだとおもうわ」
リフィルが申し訳なさそうにいってくる。
まあ、あれは自業自得とおもうけど。
エミルはそうおもうが口にはださない。
本当にどこまでも愚かなヒトだ、としかおもえないがゆえ。
「それより、収容されていたものたちにはエクスフィアが埋め込まれていたのではないか?
  要の紋なしのエクスフィアはいずれ暴走するぞ?」
「エクスフィアをとればいいんじゃないの?」
「要の紋なしのエクスフィアは取り外すだけでも危険だ。扱えるのはドワーフだけだろう」
さりげなくクラトスが話題をかえ、エクスフィアのことを進言してくる。
「じゃあ、ダイク叔父さんにお願いすればいいよ。ね。ロイド」
「そうだな。親父に連絡をとろう」
「エクスフィア、ですか?」
ニールには意味がわからない。
「あの?とりあえず街にもどりませんか?ここにいても何ですし?」
エミルの至極もっともな提案に、誰も反対するものなどいるはずもなく。
とりあえず一行は一度、街にともどることに。


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あとがきもどき:
薫:ようやく牧場完結です。完全消滅させているので、後世に施設の残骸すらのこってませんv
  のこるのは、ただの更地、ですよ~。
  別作品においては、そこに魔物よんであらたな森つくってたりしますが(まて
  ちなみにそっちのパターンはロイドとジーニアスのみエミルが精霊だ、と知っているパターン。
  さらに、大樹の精霊、というのも知ってるパターンですv 
  でもリフィル達は知らされてません(笑

2013年6月8日(土)某日

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