まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

ようやくしいな登場シーンv
ときおりどうでもいいような書きたいものがふとうかび、
そんなのもいれこんでいるので、
そういうのはときおり、まえぶりにもってきてます。
何だろ?というのはきにしないでくださいな。
…アステル視点もかいてたりするからそのあたりにいったら、
前振りにのせる予定です。

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式神、といえども所詮は世界の微精霊達が具現化したもののうちの一つ。
ゆえにそこにある気配にきづき動くことができない。
もっとも術者の命令は絶対で。
だとすれば、できることはといえば。
このままもしも戦闘になれば、とおもって彼らからしてみてもはらはらしていたのだが。
どうやらそれは避けられたらしい。
そのことにほっとする。
紙はあくまでも媒介であり、ゆえに常にその気配は彼女の中にいる、といっても過言でない。
だからこその安心感。

光と闇の協奏曲 ~山道での出会い~

目的地は海の向こう。
ならば少しでも前衛がいたほうがいい、という提案もあり、
クラトスはかなりしぶっていたが、コレットがごり押しした形となり、
結局のところ一緒にいくことにとなったのはつい先刻。
エミルからしてみれば、ワイバーンロードでもよびさくっと大陸移動をする気だったのだが。
ミトスが何をしようとしているのか、というのが気にかかったのもあり同行を認可したのだが。
なぜか一度も魔物におそわれることもなく、すいすいと移動はすすみ、
昼より手前にオサ山道へとたどり着く。
「ここって。今は草ぼうぼうだったけど、昔は鉱山だったんでしょう?」
ジーニアスがリフィルにと訪ねている。
「ええ。とても栄えていた、ときいているわ。
  坑道やその設備はまだのこっているんじゃないかしら」
「それにしてもいい天気だなぁ」
昨日までの雪が嘘のように、空は澄み渡っている。
木々もこころなしかいつもよりもいきいきとしており、
ゆえに大きく深呼吸をしながらいっているロイド。
「そうだね」
結局、昨日のジーニアスがつくってくれた食事はほとんどもどしてしまった。
だがそのことはコレットはいっていない。
今朝は、エミルが創ったというハーブティーをのんだだけ。
それが異様においしかったのはおいとくとして。
まるで口にいれるたびに体にしみわたるようなそんな感覚のおいしさではあった。
クラトスですらおいしい、とおもわず絶賛していたほど。
エミルのつくりしものは、どうしても過剰なマナが摂取される傾向がある。
それはエミルがマナを司りしものであるのとどうじ、生み出すものであることから、
食材につかわれるものたちもはしゃいで全ての成分をだしきるからに他ならない。
たかが、ハーブティ。
されどハーブティ、としみじみおもった一行であることはいうまでもない。
大気や自然界がいきいきしているのは当然のこと。
そもそも世界の守護者たるものが目覚めたのである。
世界が喜びにひたるのもあたりまえ。
世界にとって彼…ラタトスクは産みの親、なのだから。
そんな会話をしているロイド達の戦闘にたちつつも、しんがりをつとめていたクラトスが足をとめる。
ゆく手に一人の若い女性がたっているのがみえる。
髪を無造作にゆい、胸元が大きくひらいた服をきている。
短い上着は帯のようなもので結ばれているのがみてとれる。
「…この中に、マナの神子はいるか!?」
凛、とした声で女が尋ねてくる。
(何ものでしょうか?)
(それよりも、あのものの傍に…わかるな?)
(珍しい。これは人工精霊の気配ですね)
かつてのヒトが人工的に微精霊達をあつめ、形としたもの。
気配からしてうまれてそうそう経過していないそれ。
今はエミルの真横にウルフの姿をしたテネブラエが常に従うような形でついてきており、
他の魔物はつれていない。
「あ。それ私です」
コレットがかるく手をあげると、女きっと眦をけっし、
「覚悟!」
「え?あ、あ、、きゃ」
いきなり攻撃してこようとしたらしいその様子におどろいたのか、その場に尻もちをついているコレット。
その時、コレットのひじが草にうもれていた何か固いものへとふれる。
がこんっ。
短い、それでいて鈍い音。
それとどうじ、女の姿が…かききえる。
「「「あ」」」
呟きはおもわず子供達三人の口からどうじにもれる。
「…あれ?」
戸惑い気味の声をあげるジーニアスに。
「あ~。ど、どうしよう。やっちゃった」
あわてたように、そこにいきなり開いた穴・・・にかけよって何やらいっているコレット。
「気にすることはないわ。ここで相手がおちなければあなたが殺されていたのかもしれないのだから」
「だ、だけど……」
みれば、女がたっていたというかコレットの前の位置にぽっかりと四角い穴らしきものがあいている。
心配そうな声をあげるコレットに真実のみを淡々といっているリフィル。
「まあ…ちょっと可哀想ではあったけど」
ロイドが素直な感想をもらす。
「たしかに」
そんなロイドにたいしおもわず同意をしめすエミルの姿。
「死んじゃったりはしてないかなぁ?」
心配そうに穴をのぞきこむコレットに、
「仮にあの人の体重が45KGとして、
  この穴が10Mだとすると重力加速度を9,8として計算しても、死ぬような衝撃じゃないよ」
ジーニアスがそんなことをいってくる。
「?じゅーりょく加速度?よくわかんねぇけどいきてるんだな」
「たぶんね」
「打ちどころがわるければ死ぬよ?」
しごく最もなエミルのつっ込み。
「……しっかしまあ。運のわるいやつだなぁ。落とし穴の真上にいたなんて」
考えないことにしたらしい。
一時の無言のにちに、そんなことをいってくるロイド。
「落とし穴ではなくてよ。山道管理用の隠し通路ね」
リフィルが草むらの中にあったレバーらしきものをみつけ、説明してくる。
「そもそもなんでわざわざどうみても何かがあるような場所の上にあの人たったんだろ?」
(さあ?)
それはテネブラエにもわからない。
どうみてもそこには扉ですよ、というような地面があったのは一目瞭然だったというのに。
「あ。死んではないみたい。久しぶりのお客さんだからって仲にいる子達がなんかたわむれてるみたい」
「いや、ちょっとまて。中にいる子達って……」
ロイド達とともに穴をのぞきこみつつもそんなことをいっているエミルの言葉におもわず突っ込みをするロイド。
「それって……」
エミルが今まで…というかまだ一日だが。
どうもこのエミルは魔物達のことを、子、と呼ぶ傾向がある。と短いながらも把握した。
それゆえに言葉につまるロイド達。
「いいなぁ。あのこ、中にいる誰かとあそんでるんだ。なら心配ないね!」
「「いや。違うような気が……」」
エミルの言葉ににこやかにそんなことをいっているコレット。
そんなコレットに対し、同時に顔をみあわせおもわずつぶやいているロイドとジーニアス。
エミルからしてみれば、それに気になる気配をつれていた。
それゆえに。
『とりあえず殺すなかれ』
一言、地下にいるであろう魔物達にと命令を下しておく。
とん、と大地に手をつきつつも、小さく自分達の言葉で一応言葉を発しておく。
その呟きは当然のことながらこの場にいる誰しも…否、ノイシュ以外誰にも理解できるはずもなく。
「…は~。そろそろいくぞ」
「おい。あの女の正体をつきとめなくてもいいのかよ」
「どうせまたむこうからくるだろう。ここは狭いし足場もよくない。場所をうつしたほうが賢明だ」
「そういえば、この穴。他のひとがおちたら大変だから、しめとこうか」
「そうだね」
そこにあるレバーをそんなことをいいつつも
にこやかにもどしているエミルとそれに賛同しているコレットの姿。
「「おいおいおい」」
そんな二人におもわずふたたびつっこみをいれているロイド達。
みればクラトスは額に手をあて盛大にため息をつき、
リフィルといえば何か達観したような表情を浮かべていたりする。
「うん。これで大丈夫。穴があったらぼ~としたらおちゃうしね」
「そうだね。このレバーもあぶなくないかな?」
「そういえば、安全装置がないね。そのあたりの岩でももってこようか?」
のんびりと会話をしているコレットとエミル。
「あ。なら僕がロックブレイクで…」
そんな二人の会話に何かきづいたように、すかさず詠唱をはじめているジーニアス。
「「まて!レバーを壊す気か!!」」
のりつっこみはクラトスとリフィル、ほぼ同時。
どうもこの子供達はほっといたら何をしでかすかわからない。
それをさらに痛感した出来事、といっても過言ではない…であろう。
「でも、ここは坑道の管理道ということは山道を抜けるにちかみちになりそうね。
  わざわざ山越えをしなくてもすぐに抜けられるはずよ?」
たしかにここをとおればわざわざいくら険しくない、とはいえ山ごえする必要はない。
「コレット。どうする?」
リフィルの問いかけに、
「え?えっと……ここを降りる、んですか?ならここからいきたいです」
いまおちた女の子のこともきになる。それゆえのコレットの台詞。
「なら、きまりね」

近道をするために、今はつかわれていない坑道を進むことがコレットの一言により決定される。
「どこもかしこも。まだしっかりしているわね。鉱石をとりつくしたというわけでもなさそうだし」
「じゃあ、どうして誰もいないのかな?」
ジーニアスの素朴な疑問に、
「さあ。ここはドワーフ達の鉱山だったようだけど……」
そう答えるリフィルも曖昧でしかない。
異常気象がはじまってからきづけばここのドワーフ達は消えていたらしい。
彼らはマナの異常に敏感。
そもそもソルムなどといった土を司るものの波動も含まれているのである。
地下は危険、そう判断し一時撤退した、というのが実は正解。
「しかし。平和だなぁ」
「というか魔物が襲ってこないことに驚愕だよ」
魔物達の気配はある、というのにまったくもって襲ってこない。
それはあるいみ驚愕にあたいする。
魔物達が人を襲わない理由は、センチュリオンの命令によりマナを正しく紡ぐのに忙しく、
人にかまけている暇はない、というだけの理由だったりするのだが。
当然、ロイド達がそのような事実をしるはずもなく。
一行はなにごともないままに、やがて坑道の出口付近へとたどり着く。

「まてぇ!」
坑道を抜け、太陽の光をまぶしくかんじ、ロイド達が目をほそめていると、背後から声がする。
「え?ああ!お前はさっきの!追いかけてきたのかよ!?」
さきほど穴におちてしまった女性がそこにいる。
地上にもどるのにてこずったのか、
顔も服も真っ黒に汚れており肩にて粗い息をしているのがみてとれる。
「よかった。あえて。たいへん!怪我してる!」
「う、うごくな。ちかづくな、何にもふれるなぁぁ!」
…どうやらさっきのことがトラウマになっているらしい。
というより、コレットが街でとある家屋の壁をぶちやぶった跡をみているがゆえに警戒しているといってもよい。
と。
「ん?あああ!アステル!?なんだってあんたがこんなシルヴァラントなんてところにいるんだい?!」
ふとその背後にいるエミルにきづき、驚愕な声をあげてくる。
「え?」
「あたしだよ!しいな、さ。忘れたとはいわないだろ!」
「しいなさん、ですか?すいません。人違いでは?僕はエミルっていいます」
おもいっきり指をさしているので誰を指し示しているのかはいわずもがな。
首をかしげつつ、とりあえずかるくおじぎをしながらひとまず返事。
「人違い!?いやそんなまさか…ん?アステルはそんなに髪はながくない…ということは、本当に?
  …そ、そうだよね。でも…双子みたいにそっくりなんだけど…?」
何やらぶつぶつとそんなことをいっているしいな、となのった少女。
「知り合いか?エミル?」
「さあ?」
「名前が違っていることから、おそらく世界には似た人が三人いる、というものね。
  彼女の知り合いがあなたによくているんじゃなくて?もしくは親戚とか」
「え?僕に親戚とかいっさいいませんよ?」
さらり。
「「「え?」」」
一切いない、
そういいきるのも何か不思議というかおもわずその言葉にそこにいた女性までもがおもわず固まる。
「そういえば、きいてなかったわね。エミル。あなたのご両親は?」
「両親?そんなのはいませんけど?」
いるはずもない。
『・・・・・・・・・・・・』
なぜかその場に異様に静かな空気が張り詰める。
リフィルなどはまずいことをきいた、というような表情となり、コレットは何かさみしそうな表情をし、
女性のほうもバツがわるそうな顔をしているのがみてとれる。
(まあ、いませんよね。普通に考えても)
(そもそもここを創ったのは俺だからな)
それは思い出せている。たしかにここにある命全ては自分の子、といっても過言でないかもしれないが。
両親、というものがいるはずもなく。
彼らにとってはしごく当然な会話を念派にてしているエミルとテネブラエ。
何しろ始まりのときよりラタトスクは気づいたらそこにあった、のだから。
「あ…う…き、今日のところは見逃してやる!だが次にあったときは神子、覚悟するんだね!」

空気が重い。
あのアステルはたしか家族に売られたような形であの研究施設にと移動した、
そうは聞かされてはいるが。
何でも彼を売ったお金で両親は自由を得たらしい。
研究施設内部の会話でそのことを彼女は知っている。
彼女が知っているアステルの髪は短いが、エミル、と名乗った少年の髪は腰にとどくほどある。
短期間でそんなに長く髪がのびるのか、といえばふつうに考えれば答えは否、なのだが。
あの彼がへんな研究をもよくしているのをしっているのでいちがいに否、といえないのもまた事実。
何しろ今まで毛はえ薬の研究とか成功させ、つけたら最後、延々と脱毛薬をつけるまで、
伸び続ける薬などといったものもあの彼は開発しているのである。
興味があったらたらとことん研究をしきつめる。
それが何でも彼…アステルの持論らしい。
それにまきこまれているリリアーナという女性と
ハーフエルフたるリヒター、という人物がある程度のストッパーとなっていることも彼女は知っている。

それだけ言い放つと同時、白い煙がぽん、と音をたてたかとおもうと、その中に女性の姿はかききえる。

「…何…今の?」
おもわずジーニアスが目をばちくりとさせる。
「あいつ、俺達を…コレットを狙っているのか?何でコレットを狙うんだ?世界を再生させようとしているのに」
場の空気がなぜかおもいがそんなことにはおかまいなしにおもったことを口にしているロイド。
「ディザイアンの一員なのかな?」
「さあな。救いを拒絶するものはいつでもいる。
  我々は相手が誰であれ常に狙われているのだ。それを忘れるな」
淡々とそっけなく言い放っているクラトス。

よくいうよ。
自分をいまだに裏切っているものがよくもまあそんなことをいえるとおもう。
こちらに気づいているのかいないのか。
まあ姿を完全に…精霊としての姿をみせたわけでもなければ、
センチュリオン達がいつも本来とっている姿をみたわけでもない。
ゆえに気づいていないのではあろうが。
気づいていればとっくにまちがいなくミトスに連絡をつけているであろうことは予測がつく。

「あの服、あれは……」
どこかでみたことがある。それも昔に。
まだ里にいたころの文献と、そして里にきていたものたちの中で。
リフィルが過去を思い出しながらおもわず立ち止まり考えに思考をゆだねていたりするのだが。
「先生?服がどうかしたのか?」
ロイドがふとその言葉をきききょとん、と首をかしげといかける。
「そんなことより早くいこうぜ。先生」
「あの服、どろんこだったから、綺麗にしてあげたかったな~」
どこかずれたようなロイドとコレットの台詞。

力が完全であれば全ての世界を視ることも可能だが、今はまだそこまでの力が満ちていない。
ゆえにエミルも彼女が誰なのかはわからない。
ソルム、もしくはウェントスでも目覚めていればまた話しは違うであろうが。
まだ目覚めていないものをどうこういってもどうにもならないのもまた事実。

「さっきの女、なんだったんだろうな?」
「またあえればいいね」
「何いってるんだ。あいつはコレットのことを殺そうとしていたんだぞ?」
「お友達になったらわけをきかないとね」
「そういう問題じゃないだろう。大体どうやって友達になるんだよ」
「あ。どうしよう」
「どうしよう、って俺にいわれても……」
「今度会う時にまで考えておいてね」
「俺が考えるのかよ……」
道をいきつつもそんな会話がきこえてくる。

「…うわ~……」
おもわず遠い過去と記憶がリンクする。
ゆえにおもわずつぶやくエミルは間違ってはいない。

あの人達、何だったのかしら?またあえるかしら?
甘いぞ。マーテル。あいつらは俺達のことを殺そうとしきている国の刺客だ。
あら、話しあえばきっとお友達になれるわ。
うん、僕も姉様に賛成!
そもそもどうやって話しあいの場をもつつもりだ。あいつらは問答無用だぞ。
あら、ユアンがきっといい案を考えくれるわ。ね?
え!?わ、私がか!?

分身体たる蝶の目を通じて垣間見た彼ら四人の旅の様子。
思いっきりそのときの光景と今のコレットとロイドの光景が重なってしまう。
「…ねえ。ジーニアス。もしかしてあのふたりっていつもああなの?」
「…うん」
「……もしかして、ジーニアスって……苦労してる?」
「いわないで……」
クラトスはどうおもっているのだろうか。
ミトス達の心根にうたれ、国に進言したあげく、国を出奔したという彼は。
今はもうかつてのような志はない、というのだろうか。
それがわからない。
本気で自分を…世界を裏切っているのか、それが知りたい。
何よりも。


坑道をぬけるとすぐに山のふもとへとたどり着く。
ふもとに近づくにつれ、風に運ばれてくる潮の香りがただよいはじめる。
これから大海原を渡り、別の大陸へいくのだ、
という期待でわくわくしているロイドとジーニアスとは逆に、リフィルはなぜか押し黙り気味にと歩いている。
イズールドは小さな漁港をもつ港町、ということらしい。

(さすがに眠りにつく前と地名も何もかもかわっているな)
それまでは全ての世界を常に視ていたので地名などは全て把握していた。
それゆえの素直な感想。
このあたりはかつての大戦において人がすめない地になっていた記憶がある。

「やけに人がおおいいな」
イズールドについたのはお昼前。
いたるところに木造だての漁師小屋らしきものがたっているのがみてとれる。
ときおりなぜかこげている小屋もあったりするのがきにかかるが。
波の音はすすむ狭い路地にも響いてくる。
路地をぬけた先、市場らしきその場の隅に男たちがたむろしているのが目にとまる。
よくよくみれば豊富に並んでいるはずの魚類もほとんど見当たらない。
「もしかして、漁にでていないのかな?」
ジーニアスがつぶやくと、それを耳にしたらしき一人の男が話しかけてくる。
「そうなんだよ。最近海にでっかい魔物がでるようになってな。異常気象のしばらくあとに。
  先日、ようやく雪がやんだかとおもったら今度は原因不明の放火騒ぎ、やってられないよ」
「放火?」
リフィルがそう問いかけるのとほぼ同時。
「うわ~!!」
何やら悲鳴らしきものがきこえてくる。
それと同時、向こうのほうからまばゆき光と、そして何かが燃えている様が遠目にみえる。
「またか!」
「消火をいそげ!」
それをうけてばたばたとはしってゆく男たち。
それにともない、焦げくさい匂いが彼らの場所にまでただよってくる。

「いってみようぜ!」
「あ、まちなさい!」
止めるまもなくかけだす子供達三人。
野次馬根性とはよくいったもの。
どうやらきになってしかたがないらしい。
「やれやれ。こまった子供達だな」
クラトスがそういうが、のこっているエミルをみつつ、
「お前はいかないのか?」
「え?」
エミルからしてみればそれよりきになることがある。
何でここに、光属性のノストロビアの気配があるのだろうか、とふとおもう。
魔物の気配を間違えるはずがない。
あの魔物は基本的に寒い地方にて光のマナを循環させるためにうみだしている魔物である。
ここにいる、ということはイグニスのマナの乱れをうけて突然変異で変異種したものか、
はたまた別のところから偶然にやってきたものか。
「とにかく、神子をおいかけましょう」
「だな」
クラトスからしてみればエミルのこともきになるが、優先順位はあくまでも神子コレット。
ゆえに、ちらり、と横目でみつつも、コレット達をおいかける。

その場にしばしたたずみつつも、そんな彼らを見送りつつ、
「…テネブラエ。わかるよな?」
「…はい。なぜここにノストロビアの気配が?」
「…気配をたどる。直接きいてみるしかないだろう。このままここにいればあの子の体に負担がかかる」
そもそも暖かい地方に耐性はもたせていない魔物である。
ここにいればまちがいなくしんでしまう。
クラトス達の姿が見えなくなったのを確認し、横にいるテネブラエにと声をかける。
ちなみにウルフの姿をとってはいるが、見た目は犬のようなもの。
そもそも犬とはもともと狼を人間がかいならし、人が改良したもの。
ゆえに狼そのものを飼いならすものもすくなくはない。
理由は、犬よりも狼のほうが猟師をするにあたり約にたつから、という人のあるいみ欲にまみれた理由と、
さらには合理的な理由にて。


「ちょっとよろしくて?何があったのかしら?」
子供達三人においつくと、そこには人ごみであふれており、
その中心には消し止められたばかりなのであろう、ぷすぷすとくすぶっている木箱のようなものがみてとれる。
そんなリフィルの問いにちらり、と視線をむけ、
「そこにおいといたかまぼこグミが燃やされちまったんだよ」
忌々しそうにいってくる。
「ああ。それでおいしそうな匂いがしたのか!」
野次馬にまじってみていたロイドがぽん、と手をたたきながらそんなことをいっている。
「あなたたち。かってに走り出したらだめじゃないの」
そんなロイド達三人にきづき、そちらのほうに視線をむけ注意をしつつも、
「燃やされた?それは?どういうことなのかしら?」
さきほどの村人も放火だの何だの物騒なことをいっていた。
それゆえのリフィルの問いかけ。
「放火だよ。今、この村にはたちのわるい放火魔が…
  って、あんたたちがまさかその放火魔じゃないだろうな?」
ざわり。
その言葉にその場にいた村人たちが一斉にむいてくる。
「な。俺達はさっきついたばかりだぞ!」
「犯人は現場にもどる。ともいうしな。そこの男が眼付がわるい。放火魔っぽい顔をしている」
いって男がゆびさすはクラトス。
「それはないですよ~。たしかにクラトスさんは無愛想で眼付もわるいし。
  表情が表にでにくいかもしれませんけど。そんなことはしませんよ?」
「コレット。それ、フォローになってないよ?」
天然でさらり、というのであるいみタチがわるい。
「私たちはパルマコスタにいこうとおもっているの。マーテル様への旅業のためにね。
  この人は私たち、さすがに女子供達だけなら危険なので雇った傭兵よ」
ため息とともにリフィルがそう説明する。
「え?姉さん?」
何かいいかける弟を視線だけできっとにらみ黙らせる。
「しかし、あんたたちが犯人でない、という証拠はないしな。
  どちらにしても、この放火事件がおわるまでは船はだせない。
  どうしても、というのならあんたたちが放火犯人を見つけ出せば少しは優遇できるだろうが。
  もっとも、逃げられても困るのでその場合はあんたたちのうちから二人ほど、
  念のために牢の中にはいってもらうぞ?」
「ちょっとまてよ!何で何もしてないのに牢なんだよ!」
「よそものはお前たちだけだからだ!」
そうだ、そうだ、という村人の台詞。
どうやら漁にもでれず、そこにこの放火騒ぎ。
かなりいらついているっぽい。
ここでコレットがマナの神子とわかっても、逆に偽物とかいっていちゃもんをつけられかねない。
「他に大陸にいく方法はないの?」
「ないわね。仕方ないわ。私たちでその放火魔というか事件を解決するしかないわね。
  誰か詳しい人はいないのかしら?」
「それなら、ベルグさんだね。でもベルグさんは放火にまきこまれてそれからずっと寝たきりだよ」
「あいつは自宅養生中だよ。アレ以降意識がもどらないんだ」
他の村人がそう説明し。
「あんたたちが逃げないように、誰かえらんでもらう。誰にする?」
「仕方ないわね。クラトス。ロイド、あなた達にたのむわ」
「ええ!?何でだよ!先生!」
「ここは村の中だし。いくら何でもコレットを牢にいれるわけにもいかないでしょ?
  ロイド、あなたが頭をつかえるともおもえないし。消去法ね」
がくり。
ロイドがうなだれる。
「私も、なのか?」
クラトスの問いかけに。
「ロイドに何かあるといけないから護ってちょうだい」
「…わかった」
たしかに殺気だっている村人が何をしてくるかわからない以上、牢に入れられるものに護衛もまた必要。

「あれ?そういえば、エミルは?」
「そういえば、おいついてこないわね。まあここからしか移動はできないんだから。
  いずれ合流してくるわよ。今は聞きこみが先決よ」
話しはついたとばかりに、ロイド達は村の牢やがあるという洞窟へとつれていかれ、
残されたリフィル達は文字通り、聞きこみを開始する。


一方。
「やはり突然変異か」
ノストロビアはすぐにとみつかった。
気配をたどり、みつけたはいいものの、相手はこちらの気配にきづいてなぜか硬直。
まあせっかくなのでとりあえず契約を交わしたのちに、話しをきく。
元々、カンベルト洞窟、というところに住んでいたらしいが、
異常気象によってそこの食料としていたコケ類がはえなくなり、
しかたなく人里近くまでやってきていたところ、たまたまグミを食べる機会があったらしい。
問題なのはそのグミに使われていた材料が、おもいっきり影響で狂ったジェリーフィッシュを使っていたらしく、
それらをたまたま全部食べてしまったこのゲコゲコを瞬時に突然変異をおこさせてしまったらしい。
まあ、光属性になったがゆえに狂いの波動に惑わされなかったといえばいいのだが、
そのときに覚えてしまった味にてここしばらくはグミを喰いたべていたらしい。
やはりいきなり突然変異をしてしまい、さらにはセンチュリオン・コアの暴走の影響をうけたマナ。
それを摂取したのもあり、異常食欲になりつつも、普段よりも格段大きく育っていっているっぽい。
このままの大きさでは不都合もあるので、
とりあえずマナを正すためにも十数匹の魔物にと分離させることに。
ちなみに数体あつまれば合体機能がついた魔物、という形ならば一つの魔物を分離することは可能。
「お前たちがもともと住んでいた洞窟に案内しろ」
王たる彼にいわれれば案内しないわけにはいかない。
それに何よりも直接契約を施されたことが誇らしい。
新たな種族たる魔物なので種族名まで冠された。
これ以上の誉れはない。
安直なれど、ノストロビアロード、というのが彼らの種族名――



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あとがきもどき:
薫:ちらほらと、ラタ様回想において、ミトス達の様子がでてきたりv
  当時、ラタトスクは分身体たる蝶をつくって、彼らの旅を身守ってました。
  そんな設定です。
  あまりに人が血をながすので、扉をしっかりと管理するほうを優先してたので。
  ラタ様は封印の間、ギンヌンガ・カップからでてはおりませんよ~v

2013年6月4日(火)某日

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