まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

これ、原作(ゲーム等)しらないと意味がわからないかと。
何しろ人物表記が編集してみたらまったくないv(まて
まだエミルがディセンダーのやつとか、記憶喪失のやつとか(こらまて)
のほうがはるかに表記があったかもしれない…
あれはでも書きたいシーンのみしか書いてないからなぁ…メモ帳に…
ともあれ、いくのですv

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絶対に君をたすけてみせる。
嘘つき。
人はいつでも嘘をつく。
もう、地上は一度やるだけやらせ、一気に浄化しようとおもっていたのに。
そこまでいうから、猶予をあたえた。なのに……
…嘘つき。
だから、人は信用できない。

光と闇の協奏曲 ~火の祭壇、そして……~

新たに旅に同行することになった金髪の少年、エミル。
同行すると言ってもこの遺跡内だけだが。

「あれ?魔物は?」
「他の子なら帰ってもらったよ。こんなに大勢いたら連携が難しそうだったし」
いつの間にか姿を消した魔物を捜すロイドに答えるエミル。
今いるのはウルフらしき魔物のみ。
「エミルって魔物の出し入れが出来るのか!?」
「出し入れって……皆にはお願いして来てもらっているから……」
そう、ただお願いしているだけ。
驚きながら言ったロイドの言葉を否定する。
エミルは魔物を出し入れしている感覚で魔物達を喚んでいるわけではない。
それを少しでも理解してもらえるよう言葉を紡ぐ。
そもそも魔物達は自分にとって大切な子供達なのである。
ゆえにモノ扱いされるのはとても癪にさわる。
「へー!魔物さんってお願いしたら来てくれるんだ!」
「うん、皆僕の友達なんだ」
友達、とかいて子供ともいいしもべともいうが。
「魔物と友達になれるものなの?魔物なんてヒトを襲うだけじゃない」
「それはヒトと魔物の価値観が違うからだと思うよ。
  最初は確かにヒトからすれば怖いかもしれないけど。皆いい子達ばっかりだよ。
  そもそも僕からすれば人のほうがこわいよ。口ではやさしいことをいっておいて平気で裏切る。
  しつこく情にうったえて目的をたっした上でさらに手ひどい裏切りとかしてくれるし。
  人の心は愚かだけどこの子達はそういうのはないからね」

それは事実。あれだけひたすらに世界を、君をたすけたい。
そういっていたのに。そこまでいうなら、とあの種子を預けたのに。
そしてだからこそ、加護まであたえた、というのに。
結果は種の中にはいりこんでいる不純物からしてどうみても裏切っているというのが嫌でもわかる。
「そんなことないとおもうよ?」
コレット、と名乗った少女がそういうが。
「それは、君が裏切られたことがないからいえることだとおもうよ?
  人はいつでも裏切る。そうでなかったとしても
  その人にとって大切な人のたにめ簡単に他者を裏切るんだよ」

耳がいたい。少年の言葉はぐさぐさとリフィルの心にと突き刺さる。
そしてまたジーニアスにも。
事実、二人は彼らをだましている。
ハーフエルフ、ということを隠し、エルフ、と偽り。
クラトスにしてもその言葉に何もいえない。

「それは……なあ、おまえ、もしかしてものすごい人嫌いか?」
ロイドが恐る恐るといった様子でエミルにと問いかける。
「どこに人をすきになれる要素があるの?それでも絶望しないだけましとおもってほしいよ、ねえ?」
それは本音。
完全に絶望しているのならば、ヒト、という種族は生み出してすらおらず、さらには絶滅させている。
いいつつも横に控えるようにして移動しているウルフの頭をなでる。
しぃん……
そんなエミルとなのった少年の言葉にその場の雰囲気が重くなる。
「ひとはいつでも、目的のためならば手段を選ばずに簡単に信じていた他者を裏切るんだよ。
  行動には結果がともなわないと意味がない。約束もまた然り、なのに……」
と。
「無駄話はそれくらいにしておけ」
ため息とともにクラトスがその場の雰囲気をかえるべくしてか口をはさんでくる。
「クラトスの言う通りよ。今は神子の試練を終えるために先へ進むべきではなくって?」
「そ、そういえば。エミルはこの遺跡に何の用があって来たんだ?
  司祭でもないし、考古学者でもないんだろ?」
クラトスやリフィルの言葉をうけ、話題をかえようとといかけるロイド。
ロイド達は世界再生の旅のために此処に訪れているが、エミルは司祭といった人間には見えない。
また、リフィルのような考古学者ではないだろう。
尚更ロイドは疑問に思ったことをエミルに聞く。
「えっと……此処に来なきゃいけないような気がして
  ……それにこのあたりの異変を元に戻さなきゃって思って」
「え?トリエットの異変は世界再生をしないと元に戻らないんじゃないの?」
「世界再生っていうのが関わっているのかはわからないけど、雪が降っているのは別の理由だよ」
その発言にクラトスがエミルを睨む。
睨まれるがエミルはそのままその視線をさらりと無視する。
視線をあわせたらそれでも抑えている怒りが沸騰しそうであるがゆえに、
クラトスと視線すらあわせていない。
このロイドという子供はマナのありようからして子供なのであろうが。
珍しい、とおもう。
異種族同士の混血、無機生命体と有機生命体との混血。
大戦時もそういったものをつくろうとして幾人も死んでいったのを知っている。
人工的につくられし歪みがないことから自然と産まれし命であることが見てとれる。
本来ある歪みは彼の中ではそれがあたりまえ、として歪みが歪みとして存在していない。
「エミル、貴方トリエットの異変の原因を知っているの?」
「?今の僕にわかるのはあのこの力がマイナス方向に動いていることしか……」
「何それ?」
「あの子?って?」
そんな彼らの言葉にエミルは曖昧にほほ笑むのみ。
そんなエミルに対し、探るような視線をエミルに向けるリフィルとクラトス。
「何でそんなこと知っているんだ?」
「何でだろ……?はっきりと覚えているのは名前だけだったから……」
「名前だけって……まさか記憶喪失なの?」
「え?ち、違うよ!でも、違わないのかな……?」
戸惑いながら言葉を紡ぐエミル。
「何か寝起きみたいな感じで……覚えているのにはっきり思い出せない感じだから
  記憶喪失とは別のものだと思うんだけど……」
「もしかして寝過ぎちゃった後の感じ?」
「あ、うん。そんな感じ」
「寝過ぎちゃうと頭がボーッとしちゃうよね」
「どんだけ寝てんだよ……」
エミルの発言に呆れてしまうロイド達。
コレットだけは「仕方がないよ」と笑っているが。
「どれだけだろ……?随分眠ってた気がするけど……」
実際あれからどれだけたったのか把握していない。
しかし、おそらく百年以上は確実に経過しているであろう。
でなければそんな短期間にあの子たちと魔物の縁がとぎれるはずもない。
「早く目を覚まさないと怪我するぞ」
「え?そ、そういうわけじゃないんだけど……」
怪我とかはないとおもう。
まあ腕のほうは鈍っているのかもしれないが。
それでも動くうちに感覚はとりもどせてきている。
きっかけがあると、今のようにこうして記憶もよみがえってきているのもまた事実。
まあ、蘇った記憶は怒りゆえ、ともいえるのだが。
よりによって裏切りの一人と出会うなど、怒りにまかせてしまってもおそらく誰も文句はいわないであろう。
「しかし、奥にすすむにつれ、遺跡が凍り憑いてるわね…」
事実、奥にすすむにつれ、遺跡が凍っているのが顕著になってくる。
入口付近はそうではなかった、というのにである。
リフィルの言葉に。
「信じられんことだな」
クラトスがしみじみという。
ここがこのようになっているなど、報告がなかったがゆえの素直な感想ともいえる。


白い光を発する台座。
それを目にしたエミルは首を傾げる。
こんな所にこんなものがあったのかと。
否、此処にこんな場所はなかった。
此処はもっと暑く、いるだけで身体を焼き尽くすような場所だった気がする。
そこを抜ければ暑さを凌げる祭壇があった。
その中央に……
「(何かがいた……?)」
靄がかかったように思い出せない。
確か魔物ではない何かが鎮座していた。
そもそもここは溶岩に満ちた場所だったとおもう。
そのように、あの子たちの祭壇、として創った。
すとん、とそんな記憶がわいてくる。
みればロイド達は台座にとなりそのまま移動しているのがみてとれる。
この台座はどうやら転送装置らしい。
本来の転送陣はどうやらこの床の下。
とん、と手をつき意識を集中。
刹那。
あわく輝く陣が足元にと出現する。本来のこの神殿の移動用の陣。
しかし、それをつうじ視てみるとおもわず顔をしかめる。
かの祭壇はどうやら完全に閉ざされており、
その頭上に何やらあらたに改装し建造物が上書きされている模様。
「…しかたないか。こちらからいくしかなさそうだな」
気がすすまないが仕方がない。
そのままロイド達が移動していった転移装置にと足をのせる。
その場にいた魔物を抱きかかえ。


白い光が薄れ、目を開ける。
そこは聖堂の最上階とよく似ていた。
「ここがこの遺跡の最深部か……」
「違う」
ロイドの言葉を否定するエミル。
この先があるのかロイドが尋ねようとした瞬間、
「すばらしい!この場は魔科学でつくられている、そこも、あそこも!すばらし~い!」
何やらひとり、いきなり様子がかわったリフィルという女性。
「…ねえ、少しきいてもいい。あれ、なに?」
「…きかないで。お願い」
エミルの素朴な疑問にジーニアスはそういうしかできない。
「ヒトってほんとうにかわってるよね」
それは心からの本音。
「…お願いだから姉さんと他を一緒にしないで。姉さんは遺跡マニアなんだ…
  遺跡を目にするとああして人がかわったようになっちゃうんだよ……」
「ふぅん」
まあ自分も精霊としての地がでるときは
どうしても本能に忠実になってしまうがゆえにわからなくはない。
あくまでもこの姿のときにはヒトにまぎれるためにその性格をあえて演じているようなものなのだから。
「そこ!マニアではない!研究者といえといっているだろう!」
ジーニアスの呟きをめざとくききつけ、訂正の言葉をはっしているリフィル。
「…はいはい。それで、遺跡とかみるとああなっちゃうんだよ」
エミルにたいし盛大なため息をついているジーニアスの様子からは、いつも困っている、
という感じがありありとみてとれる。
そんなジーニアスにエミルはたた苦笑するしかできない。


広間の先にある円形の台座。
その中央で赤い光が揺らめきながら立ち上っていた。
「あれが火の封印かな?」
「どうすりゃあいいんだ?」
ロイド問い掛けにコレットは微笑みながら答える。
「んーとね、祭壇の前に立って祈りを捧げるの。
そうすれば封印は解けるんだよ」
「何だ、結構簡単じゃねぇか」
「マナがおしよせてくるよ!?」
ジーニアスがあせったようにいう。
その言葉が合図であるかのように地震が起こる。
祭壇からの中央から火山の噴火のように激しく赤い光が湧き出る。
室内を赤い光が全てを包み込む。
光が薄れると先程まではいなかった魔物が三体。
炎を纏ったような巨大な魔物と動物の形をした骨だけの魔物が二体。
「あれがイフリートかな?」
ロイドの呟きに、
「違う。とおもう。もっと邪悪な……」
コレットがそういう。
「…クトゥグハ。クトゥグハ・ボーン……」
その姿をみておもわずつぶやくエミル。
なぜにこれらがでてくるのだろう。
かれらはたしかイフリートの護衛たる魔物のはずなのに。
それと、邪悪、といわれておもわずいらっとくる。
何もしらないヒトが。
そう思ってしまうのは仕方がない。
絶対に。
「コイツはクトゥグハ!火の封印を守る怪物よ!」
後ろから手帳を手にしたリフィルが叫ぶ。
「つまりこれが火の封印最大の試練というわけか」
いってクラトスが剣をかまえる。

おかしい。
クトゥグハ達はどうみても何か正気をうしなっている。
「…やはり、あの子が原因かな?」
おもわずぽそり、とつぶやく。
たしかに、一番ちかしいゆえに影響をうけてもおかしはないとはおもうが。
それと同時、いくつもの鋭く長い針がとんできて、ぐさり、と目前の床にとつきささる。

「あぶない!奴はこの封印を守護しているクウゥグハだ!奴は針をとばしてくるぞ!油断するな!」
クラトスがそういい、剣をかまえるが。
クトゥグハは全身から噴き出す炎に体をつつみ、その姿を浮かび上がらせている。
見た目は長い尾をもった四本脚の獣。
「さっさと倒しちまおうぜ!こいつを倒さなけりゃ封印を解放することはできないんだろ?」
ロイドがクラトスに目で合図し、二手にわかれクドゥグハの左右に回り込む。
「いくぞぉ。魔人剣!」
剣を振り下ろした直後にクドゥグハが吠える。
グオオッ。
炎で熱せられた針がロイドにとむけられる。
「いた!」
針がロイドの肩をかすめ、その背後にまでむかってくる。
その攻撃はおもいっきりその背後にいるエミルのほうにまで。

…ぷちり。
「…いい度胸だ。様子をみていたら……どこまで正気うしなってやがる……」

低く冷たい声がエミルの口から漏れいでる。
ずん、とその言葉とともに周囲の空気が一気にひえ、さらにおもみをます。
息をするのも息苦しく、またたっていることすらもきついほど。

そのまま、とっん、と床をけり、
そのまま、くるり、と空中で一回転。
さらに距離をおいたロイドの前、しかもクドゥグハの直前にまで移動したのち、
疾空連殺剣しっくうれんさつけん
クドゥグハ達を巻き込むようにして言葉とともに旋風が巻き起こる。
そのまま空中でクドゥグハ達は目にもとまらぬ速さにて幾度も切り刻まれる。
連続攻撃にて空中に打ち上げられ、さらに真空の刃でたたき落とされる。

どすん。
そのままなすすべもなく床にとよこたわるクドゥグハ達。

『いい加減に目をさませ。お前たちが正気をうしなってどうする。…イフリートの護衛はどうした!』
それは一喝。
魔物達にしかわからないその言葉。
クドゥグハ達を見据えるその瞳は、ロイド達がしっている翡翠色の瞳ではなく、深紅たる紅。
紅き瞳の中に蝶のような紋様がみてとれる。
その言葉にびくり、と反応する魔物達。
直接、攻撃を叩き込まれれば嫌でもわかる。

『ラ…ラタトスク様……』
おびえたような魔物の声。
「ひけ」
ただの一言。
それとともに、魔物達の体が刹那、光りにつつまれ、その場からかききえる。

「つ…つぇぇ……」
何の手出しもできなかった。
いきなり自分の前に移動してきたかとおもうと、ただの一撃。
その一撃で三体同時にあっというまに撃退。
おもわずつぶやくロイド。
息苦しいのはいまだに相変わらずのままだが、それは炎による熱気のせいか。
ロイド達がそんなエミルに何かをいうよりもはやく。
そのまま、剣を鞘にとしまい、祭壇の向こうにとある壁のほうへて歩いてゆくエミルの姿。
祭壇の後ろ。
大きな一枚岩にかかれている紋章のような壁。
そのまま何もいわず、祭壇の向かい側にとある壁にと近づき、何もない壁にと手をのばす。
紅翠の入り混じった光りがエミルの手を照らす。

「!?道が!」
光が治まると先程までなかった道が現われていた。
驚くロイド達。
エミルは後ろを振り向き、静かに告げた。

「この先にトリエットの異変の原因があります」

それだけ言うと話は終わったと奥へ行ってしまったエミル。
後ろ姿が見えなくなってようやくロイド達は我にと返る。
「あ、おい!」
「ロイド!」
「あ!二人共待ってよ!」
そんなエミルを追いかけようとするが。
それと同時。

――再生の神子よ。祭壇に祈りをささげよ…

祭壇のはるか上空からロイド達に聞き覚えのある声がきこえてくる。
「この奥のこともきになるけど、今は儀式が先よ。コレット」
「…馬鹿な。この奥にまだあのような道がある…だと?」
冷静に、今にもいきたいがその気持ちをおしとどめ、コレットにいっているリフィルと、
そして驚愕な表情をうかべているクラトス。
あの壁だけはクルシスでも何をしても改装することができなかったというのに。
かの前に何かをつくろうとしても、かの壁の前はなぜか壁などが安定せず、
結局のところありのままの壁を利用してこの場をつくりあげた。
…イフリートの祭壇のみは少し沈めることができた、というのに、である。

「は、はい」
その声をうけ、エミルのむかったほうにむかおうとしていたコレットだが足をとめ、
その足を祭壇のほうにとむける。
どうやらレミエミル…旅の始まりの地であるマナの聖殿にてであった天使
…が再び現れたらしく、光が祭壇の上空付近に集まっているのがみてとれる。
「えっと…大地を護り育むおおいなる女神マーテルよ。御身のちからをここに」
コレットが祭壇に祈りをささげると、ゆっくりとレミエルがおりてくる。

「我が娘コレット。見事な働きだった」
「ありがとうございます。お父…さま」
父、と呼んで肯定されたのだが、何だか実の父親、という実感がいまだにわかない。
わかないゆえに、どうしても言葉がつまってしまう。
その冷たい声も原因、なのだろう。
まるでこの天使の声は自分を自分、としてはみていないのがわかってしまうからこそ、
無意識にも乾いた声になってしまいそうになるのを気力で抑えているに過ぎない。
「封印を守護するものは倒れ、第一の封印はとかれ、間もなくイフリートも目覚めよう。
  クルシスの名のもと、天使の力をあたえよう」

じゃあ、さっきのあの影がイフリートなのか?
光りの中に浮かんだ影。
それを思い出しふと思うロイド。

「はい。ありがとうございます」
コレットの後ろにいたロイドはあやあく叫びそうになってしまう。
コレットの周りに光りが集い、それがコレットに吸い込まれると同時、
コレットの背中から光り輝く羽がはえてくる。
羽は薄くすけており、孵化したての地洋のようにやわらかく繊細にみえる。
「天使への変化は苦しみがともなう。それも一夜のこと。たえることだ」
淡々とその姿を目の当たりにしてもレミエルはどうじることなくただ伝えるのみ。
「試練なのですね。わかりました」
苦しみ、といわれ緊張するものの、しかしそれもそうか、とおもいなおし気丈にうなづく。
たしかに試練があっても不思議ではない。
でなければ今までの神子達もあっさりと再生の旅を成功、
もしくは封印解放を成功させていたはずなのだから。
「次の封印はここよりはるか東。海を隔てた先にある。かの地の祭壇で祈りをささげよ」
「はい。レミエル様」
「次の封印でまっている。再生の神子にして最愛の娘コレットよ」
いいたいことだけいってしまうと、コレットが勇気をだして父とよんだのに
それに答えることもなく、そのまま用事はすんだ、とばかりにレミエルはきえてゆく。

「え・・・コレットに、はねが…」
「うん。それにほら、しまえるんだよ?」
戸惑いの声をあげるロイドに、にこやかに羽を出し入れして説明しているコレット。
羽がはえたときに感覚でわかった。
この羽の使い道は。
「すご~い!かっこいい!」
「ほらほら、みて!」
それまで大人しくしていたジーニアスがコレットにかけより興奮した声をあげる。
そしてまた、コレットも面白いらしく幾度も羽を出し入れしてはぱたぱたと羽をばたつかせる。

ピンク、というのがいかにもコレットらしいよな。
そんなことをロイドはおもってしまう。
コレットの雰囲気にとても似合っている、とも。
とりあえず、今は。

「それにしても海か。すっげえ。船旅だぜ!はやくいこうぜ!」
ロイドがはりきって振り向くとリフィルがなぜか目をそらすようにし、
「ふ…ふね、ねえ?このご時世に船がでているのかしら?」
なぜかあさってのほうをみながら歯切れがわるくいってくる。
「まずは、海岸線にでてみるのもよかろう」
たしかにこの最近、海はひたすらに荒れているときく。
魔物がでるとも。
そんな中船をだしているのかたしかにあやしい。
「え。まあそうね」
クラトスの言葉にあいまいにうなづくリフィル。
「二人とも。わかったからもうやめろって」
「「は~い」」
いまだに羽をばたぱたと出し入れしては、いつのまにかジーニアスをつかまえて空にういては降りて。
と遊んでいた二人に苦笑しながら声をかけるロイド。
どうやらコレットの羽は誰かをもったまま運ぶことも可能、らしい。

「あ。そうだ。エミル…って、道がなくなってる!?」
ふときづけば、いつのまにかそこにあったはずの扉はなくなっており。
そこには先ほどみたままの模様がかかれている壁が存在するのみ。
「どうやってこの奥にいくのかなぁ?」
「エミルは手をかざしてたよな。えい」
「…何もおこらないよね」
「ソーサラーリングをつかうのではなくて?」
「やってみる」
いいつつも、壁にいろいろとやってみるが、さきほどの道はどう頑張ってもでてこない。



かつん。
足音のみが静かに響き渡る。
道の奥。
ほのかな暖かな光りを発する祭壇。
その中心にある祭壇の上に、ふわり、と浮かんでいる蕾のようなもの。
その姿をみてほっとする。
祭壇の前にとたち、そのままそれをそっと救いあげ、ふわり、と空中にと解き放つ。
エミルは両手を広げると持っていた物を放す。
するとふわりと宙に浮き、上昇し始めた。
宙に浮く蕾は花が開くようにゆっくりと開く
開ききったと思った瞬間、輝きを増す蕾。
透き通る球形の宝石。
それは先ほどまで蕾の状態であったもの。
彼らが目覚める前の孵化手前のいわばサナギのようなもの。
内包する紋様を美しく輝かせながら暖かな光を発する。
「…イグニス」
『ラタトスク様……』
先ほどもよばれたが、そう、自分の名は…ラタトスクだ、とすとん、と納得がいく。
『長きに渡る眠りにより、我等はほとんどの力を失っています。
  我等の力が戻れば、あなた様の力も……』
宝石から発する光が弱まる。
どうやらかなり力がそがれているらしい。
「我がうちにとあれ。イグニス」
それは無意識からでた言葉。
そのまますっと手をかざす。
それをうけ、宝石は淡く光りをはっしたかとおもうと、
『御心のままに』
手のうちにとおさまり、それは光りをはっし、エミルの中にと吸い込まれる。
彼らの力をとりもどすためには、自分がまず力をとりもどすこと。
もしくは同じ属性の魔物達の力をあてがうこと。
取り込んだ…否、内部にと戻したことにより、それらの記憶が霧がはれたようにと思いだせる。
「ラタトスク様?」
それまでヒトの気配があったがゆえに黙っていたウルフらしきものが口を開く。
「問題ないよ。テネブラエ。姿を擬態してもらっていてごめんね」
「いえ、それはかまわないのですが……」

そもそも、姿をかえよう、と提案したのはほかならぬ自分自身。
主がかの地よりでたのをうけて、目覚めの波動となったがゆえに
あえて周囲の闇属性の魔物達と片っ端から縁をむすびすぐさにま主の気配のもとへと飛んだ。
文字通り、闇を移動して。
あきらかにみおぼえのあるヒト。
クラトスとなのりし男はかつてミトスとともにギンヌンガ・カップを主を尋ねてきたものたち。
眠りについている状態でも主の力になるためになるべく縁はキレないようにしていたはずなのに。
目覚めてみれば上位の存在達以外との縁がほとんど切れていた。
あれからどのくらいの年月がたったのか、テネブラエ、とよばれしものもわからない。

「とにかく。まずは力の充電も必要だ」
「はい。念のために彼らの前では私は普通の魔物ウルフのようにふるまいます。
  何かあればいつものように念派、もしくはかの言葉にて話しかけますので」
「わかった」
それだけいいつつ、祭壇の下にとあるそこにもたれかかる。
そこにはいくつもの根っこのようなものがみてとれる。
祭壇の下は幾得にも張り巡らされた樹の根のようなものにて構築されており、
その上にかぶせるようにして祭壇がもうけられている。
やはり安心する。
これは自らの分身の一つであり、またかつてはマナを生み出す奔流としていたものの名残。


「とりあえず、儀式はおわった。外にでるべきだとおもうが?」
「何をいっているの?クラトス。まだこの奥があるのよ?それにあの子もまだでてきていないし」
「私、エミルをまちたい」
「でもさ。先生。ここに道があったってことはさ。
  エミルのやつ別な道から外にでるともかぎらないか?」
たしかにロイドのいうとおり。
なのではあるが。
「この遺跡にそんな道があるなどきいたことはないが…」
「あら、クラトス。知られていないだけでありえるわよ。たしかに。一理あるわね。
  …とりあえず、この奥に何があったのかもきになるし」
エミルが道の奥にとはいって空気がようやくおさまった。
あの空気の変化もきにかかる。
それゆえのリフィルの提案。


「エミル!さっきの道はなんだ!?どうやって今でてきた!?」
「え?え?」
とりあえずこの神殿の中の魔物達はイグニスの目覚めとともにその縁はやはり蘇ったらしい。
そもそもこの神殿にいる魔物達はあるいみイグニス直轄たる配下の魔物たち。
ゆえに眠りについている主をまもっていたにすぎない。
しばし祭壇にともたれかかり、瞑想をしたのちに、そのまますっと横にと移動する。
この場からは様々な場所に移動することができる。
当然、この神殿内部ならばどこにでも移動は可能。
そのままエミルが壁にとたつと、そこにぽっかりとひらく、空洞。
その先につづくは長い階段。
その階段を静かにのぼってゆく。
この階段を抜けた先は正面入り口付近にとつながっている。
そのまま階段をのぼりきり、扉をひらき、外にとでると。
なぜかちょうどその先に移動しようとしていたロイド達とばったりと合流する。


いきなり壁がぽっかりと開き、そのさきにみえるは階段。
そしてその階段から気配がする、というので構えていたロイド達だが、
でてきた姿をみて驚愕する。
それはあの隠し通路のむこうにきえたエミルであったのだから驚くのも仕方がない。
「どうやって。って、道から…ですけど?」
「その道だ!なぜおまえはそんな隠し通路をしっている!?
  その通路やあの道の奥は何の意図があってつくられている!?あの奥には何があった!?」
「リ…リフィル…さん?」
「ええい!はやく説明しろ!」
ガクガクと揺さ振られるエミル。
説明しろ、といわれても。
どう説明しろ、というのか、この人間は。
おもわず冷めた目でそんなことをおもいながら視るエミルはおそらく間違ってはいないであろう。
一方で、
「出たよ、姉さんの遺跡モード……」
「エミルの奴、災難だよな……」
「…………」
揺さ振られるエミルを見守ることしか出来ないロイド達。
下手に口を出せばこっちに火の粉が飛んできてしまう。
それだけは避けたいと言わんばかりにエミルに軽く手を合わせている。
「コレット?」
いつもなら何かかならずいってくるのに。
何も言わないコレットを見たロイドは目を見開く。
荒い呼吸をし、今にも倒れそうなほどに顔色が悪い。
コレットの身体がぐらりと傾いた。
「コレット!」
床に倒れてしまう前に力の抜けた身体を支えるロイド。
目を閉じたコレットは苦悶の表情を浮かべたまま荒い息を繰り返す。
「コレット!しっかりしろ!コレット!」
痛みに耐えるコレットにロイドは叫び続けた。
「先生!コレットが!」
「ええい。今は…って、コレット!?どうした!?」
さすがにコレットが倒れているのをみて正気にもどったらしく、ようやくエミルを解放する。
「へ…いき……」
コレットはぐったりしていてその声に力もない。
「ちっとも平気じゃないよ。顔色が真っ青だよ。僕のせいだ……
  羽をだして、しまって、ってやりすぎたから……
  天使なのに遊びすぎたからバチがあたったのかも…」
「馬鹿なことをいってないの」
そんなジーニアスにたいしびしゃり、とリフィルがいう。
コレットの顔色は唇が紫いろになりこころなしか体も震えているよう。
ぐずぐずしている暇はない、そうリフィル達に判断させる。
「はやく医者にみせましょう。街にもどって……」
「いや。動かさないほうがいい」
クラトスがそんなリフィルを遮る。
「天使への変化には苦痛がともなう、とさっきレミエルが話していたではないか。
  ここで安静にしているほうがいいだろう」
「でも、このままじゃあ心配だ」
ロイドの言葉にうすく目をあけ
「だい…じょうぶ。本当にすこしやすめば平気だから…ごめんね……」
「ば~か、あやまるなよ」
「うん、ごめん……」
そんな二人をしずかにみつめているクラトス。
「とりあえず外にでましょう。それから野営の準備をするしかないわね」
たしかに下手にうごかして何かあるほうが問題かもしれない。
それゆえにリフィルが妥協する。

…ばかばかしい。
というより、同意の上でないままに無機生命体への転換をされたのか?
そのマナのありようからして、有機生命体から無機生命体へ転換させられかけているのがみてとれる。
すでに天使化しているはずのクラトスはわかっているがゆえに動じていない。
そもそも、彼らは天使云々、といっているがその意味をしっているのだろうか。
そんなことをおもうが。
『ラタトスク様?』
心にひびいてくるイグニスの声。
(イグニス、この周辺の魔物達との縁はどうなっている?)
とりあえず気になっていたことをといかける。
『それが…不可思議なことにかなりの数の縁がとぎれております。
  我らはどれほど眠りについていたのでしょうか』
(それは俺にもわからん。)
それは本音。
だが、すくなくとも。
「…約束通りでないのは確か、だな」
ぽつり、とつぶやくエミルの声はおもわず声にともれだしていたりする。

約束の期限は最低でも百年もあれば力がみちるはず、であった。
百年もそして世界をわければ人も反省するだろう、というミトスの意見。
だが、たかが百年そこいらでセンチュリオンと魔物との縁がきれるはずもない。
さらにこの神殿の様子。
あきらかにかなりの年月が…ここが滅んでかなりの年月が経過しているのが嫌でもわかる。
(…一度、俺がこの周辺の魔物と契約をかわし、それからお前に譲り渡す。)
そのほうが手っとり早い。
どうやら会話からしてここで野宿をするつもりらしいが、それならそれで好都合。
…イフリートにも聞きたいことがあるがゆえ。
『そもそも、イグニス。あなたは職務怠慢では?』
そんなイグニスにたいし、いつものように突っ込みをいれる。
『ぐ。お前はどうなのだ?テネブラエ?』
『私はラタトスク様の力をすこしでも助けるために
  意識のみは縁がきれないように、としていましたよ?
  それでもなぜか下っ端のものたちとは縁がかなりキレているようですが……』
コアの状態となり…唯一、テネブラエは孵化手前までになることなく…理由は簡単。
彼の司るのが闇であるがゆえ。
多少の地上にみちていた負たる闇の力でどうにか実体化まではいかずともコアの状態はたもたれた。
それも長くはつづかなかったが。
(…お前たち。喧嘩はあとでしろ)
『も、もうしわけありません……』
このままだといつものごとく理不尽な言い合いがはじまるのは目にみえている。
すとん、とそれだけは思いだせる。
だからこそ二人にたいし忠告しておく。
はたからみれば、ウルフががうがうと何かいっているようにしか聞こえないであろう。
このあたりの演技もさすがというか。
あくまでも姿をウルフに擬態しているがゆえに声もそのように擬態するのもわすれていないらしい……


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あとがきもどき:
薫:あるていど打ち込み、というか。これ編集はじめたの。
  実は飛竜の巣の打ち込み場所のところからこちらに編集開始しています。
  OAVとかもちらほらといれこんでます。あしからず。
  ともあれ、がんばって編集、編集…
  え?こちらに編集しなおしている理由?
  …メモだと確認したい場所にたどりつくまでかなりスクロールしなくちゃいけないのでv
  趣味サイトだからできる技v

2013年6月2日(日)某日

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