まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

今回は、基本的にはエンディングムービーシーン特集のようなものです。
つまり、戦い終わってのそれぞれの個別エンディング?みたいなものです。

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重なり合う協奏曲~新しき世界へ~

「おばあさま、ただいまもどりました!!」
「おお…おお。コレット…よく、よく無事で…っ」
声がきこえたとき、一瞬、幻聴か、ともおもった。
何しろあの光景で、コレットは確かに魂だけの存在となっていた。
もしかして幽霊となっても最後の別れにきてくれたのか。
そう一瞬おもうが、でもその懸念は取り払われた。
村人が、奇跡によってよみがえったように。
どうやら孫娘もまた、奇跡の恩恵をうけたらしい。
「――ファイドラ様。リフィル・セイジ。ここに再生の神子。コレットの護衛。
  再生の旅を果たしましたことをご報告いたしますわ」
まるで、長い、長い悪夢がおわったかのごとく。
それでも、それが悪夢ではなかった現実として、いなくなってしまった村人も確かにはいる。
「リフィル殿…よく、神子を無事にこうして使命を果たさせた上で送り届けてくださったの」
命を失う再生の旅から、世界を真実の意味で目覚めさせる、本当の意味での再生の神子、としての。
あの時。
祭司たちを失ったあのとき。
リフィルに護衛を頼んだのは今おもえばよかったのだろう。
クラトス、という天の天使の介入もあったとしても。
もしも、祭司たちとともにリフィルが出かけていたとすれば、
コレットが今のように真の意味で世界再生を果たせていたのかはかなり疑問。
それどころか伝承通り、コレットが死んでおわり、であった可能性すら。
でも、今、孫は、コレットは、今、ここにいる。
ゆえに、ファイドラの声はどこか涙ぐみ、感極まっている。
「お。ロイド。もどったか。ちょうどいい。手伝え」
そんな中。
一緒にもどってきているロイドにと、村の奥のほうからロイド達にとっては聞きなれた声がする。
「手伝えって…親父、何やってるんだ?」
ふとみれば、どうやらダイクもまた、村に滞在していたらしい。
村に戻ったのは、ロイド、コレット、リフィル、ジーニアスの四人。
他のものは、それぞれ、自分が戻るべき場所へと戻っていった。
ゼロスはメルトキオに、アステルとリヒターはサイバックに。
マルタはパルマコスタに、そしてすでに無人となってしまっているオゼットが故郷であるプレセアは、
アリシアの意見もあいまって、リーガルとともにアルタミラへ。
その前に、アリシアとプレセアの父親の墓参りをしてから、とのことらしいが。
しいなは、みずほの里へ。
ミトス、クラトス、ユアンはそのままあの場に残り、
各地に散っているであろう天使達を集め、新しい体制をつくるのに奮闘するらしい。
ミトスいわく、これまでクルシスでやっていたことを、地上で行うだけ。
そこにディザイアンという組織がなくなるだけで、とのことらしいが。
マーテルもまた、ミトス達とともに、かの地にと残っている。
「みてのとおり。村を再建しとる」
「いや、…木材抱えてるからわかるけど……」
その木材の量が半端ない。
ずるずると、ダイクが猫車のようなものをひいているそれには、
どさり、と大小さまざまな材木が積まれている。
「今回の一件で、鉄やら何やらといったもんも全部使い物にならなくなっちまってるからな。
  もっとも、それこそがドワーフとしての腕の見せ所ってやつよ」
特殊な技術の使い方は、なぜか、霞がかかったかのようにどうしても思い出せない。
でも、普通の建築技術だけは、何となくだがわかる。
さすがに建築技術まで失わせてしまえば、ドワーフ達が人々に協力しようにも、
逆にドワーフ達が咎められ、それから差別が再び発生するかもしれない。
そんな危惧もあり、ラタトスクは、建築技術の一部、のみはドワーフ達から消し去っていない。
もっとも、手先が器用であり、応用力も高いドワーフ達のこと。
本当の意味で大地とともに暮らしていく上で、再び技術を発展させるであろう。
鉄などといったものはなくなりはしたが、だが、自然のものは存在している。
鉄鉱石にしろ、そのあたりにころがっている石にしろ。
技術力がなぜだか失われはしたが、逆に力は満ちている。
それこそ気合いをこめれば、ちょっとした木々ならなぎ倒せてしまうほどに。
ダイクが今、つくっているのは簡単な建造物。
建造物、といってもいいのかわからないが、すくなくとも。
基礎さえわかっていれば、だれしも作れる簡単な”家”。
材木を切り分け、溝などを創り出すのに、釘などがないので少し手間がかかるが。
だがその釘などのかわりに、そのあたりに転がっている水晶で代用をはたしている。
例えば、石が水晶にかわってしまっているものなどは、
普通の石よりもより硬度が高いらしく、木々を削るのにはうってつけ。
しかも、これらの木々は、若木、といってもさしつかえがないもの。
何しろ、突如として成長してきた木々でしかないのだから。
元々あったはずの森などの木々はすべて水晶のようなものに覆われてしまっている。
当然、各家などに蓄えていた薪にしても然り。
組み立て式、というのもあり、説明通りに組み立てていけば、誰でも建てられる。
そのような家をダイクは考案し、そしてここ、イセリアで実際にその家を今、立てているまっただ中。
ちなみに、この家。
その気になれば、一日たらずで組み立てられることもあり、
村人たちにはそこそこ需要が出始めていたりする。
ダイクいわく、ドワーフであるならばこの程度のこと誰もがおもいつくので、
おそらくは、家を、住処をうしなったものたちに、このような技術は他のドワーフたちからも、
他の場所にドワーフがいれば提供されるであろう、とのことらしい。
簡単なつくりのものであるがゆえ、だいたい耐久年度は五年程度、であるらしいが。
でも、仮初の住処であれば、それで充分。
それだけの時間があれば、新たに鉄を生成し、本格的に木々を加工することもできるはず。
「ドワーフの民は大地の民。建築ならお手ののもってな!
  まだまだ村の人達が住む場所をつくらにゃならんのだ。さあ、ロイド。
  お前だってコレットちゃんたちがせっかく戻ってきたのに故郷なのに、野宿などさせたくないだろう?」
家々は半壊していたり、完全に消滅してしまっていたり、
どちらにしてもほとんどの家が寝起きをするのに不完全。
雨でも降ればまちがいなく、天井から浸水してしまったり、
もしくは風がふけば、野ざらしにされてしまうほどに、家屋の崩壊がひどい。
まだそれでも。
形を保っているだけまし、といえばましなのだろう。
…中には家が結晶化してしまっている家もあったりするが。
救いは服などといった代物が無事である、というところか。
「仕方ねぇな。よっしゃ。やるか!」
難しい話には自分は間違いなくついていけないだろう。
ならば、父ダイクとともに、村の再建を手伝ったほうが、ロイドもまた都合がいい。
何しろ、リフィルが説明するから、自分はいらないことをいわないように。
と散々、村にもどってくるまでに、口をすっぱくしていわれたのだから。



「お兄様!!!!!!」
「おっと。ただいま。セレス。そしてご苦労だったな。トクナガ。セバスチャン」
「「もったないないお言葉です。おかえりなさいませ。神子様」」
神子の家はかろうじてある程度の形をたもってはいはするが、
ゼロスの家は基本、レンガで作られていた屋敷。
それゆえに木造建築などといった家よりは頑丈ではあったが。
しかし、元教皇フィリプの一件のとき、家はほとんど半壊してしまっていた。
城が消えたのちは、ゼロスの屋敷はどちらかといえば、
その面影をかろうじて残しているか否か、というほどに崩壊してしまっていた。
自分が空から舞いおりるとともに、それに気づいた人々が一斉にと集まってくる。
「テセアラの神子よ。何がおこったのだ?ユグドラシル様は、四大天使の皆さまは……」
そんなゼロスにと、代表するかのように、町にのこっていたらしき、天使の一人が声をかけてくる。
どうやら先の、ユアン達の命令通り、彼らは町を守ることに力を貸してくれていたらしい。
みれば、この場にいる他の天使達もどこか困惑気味であるのがみてとれる。
「町の外にいったものの報告では、魔物の姿すら一切みえない、とのことだったが……」
あれほどまでにいたはずの、魔物たちの姿がまったくもってみあたらない。
ラタトスクが、自身のマナを感じられなくしたことで、
ラタトスクの配下であり、僕である魔物たちの姿もまた、人々が認識できなくなっただけのこと。
そして、その役割には、すべての人々、天使を含む…の体に発生した、石、の効果によるものが大きい。
認識をずらし、そこにいるのにみえていないようにする効果も、かの石は含んでいる。
魔物たちの今後の役割は、マナを調停、それらはあるものの、
だが、そのマナより、原子…いわゆる様々な粒子状態への変換。
魔物を通じ、それらはこの世界にと広がっている。
これまで直接、マナより物質や物体は産みだされていたが。
そこに、粒子、という元素が加わることによって、ヒトはマナを今後、直接認識できなくなっている。
それこそかつて、ラタトスクがこの世界に干渉する前の世界のように。
「あ~…コホン。神子、ゼロスとして。クルシスよりの神託を宣言する!」
どうやら、自分がもどってきたことによって、町の生き残っていた人々。
ほぼ全員が、この場、広場であった開けた場所…今ではその面影すらないが。
いや、あるにはある。
花壇や木々、といったものは、かろうじてだがその面影をのこしている。
それらが結晶化していたり、結晶化した草木にまじって新たな草花が生えている。
という現実があるが。
…ともあれ、この場に集まってきているのがみてとれる。
「先に触れたように、女神マーテル様は無事に救い出された!
  そして、女神たち、その血族の手によって、
  人々が産みだせし、かつて女神マーテル様が封じていた人々の心の負の結晶でもある、
  皆もきいた、あの声の主”ユリス”も再び封じられた!」
『おおおおおっ!』
『神子様、神子様!』
『さすがは女神マーテル様!』
『女神マーテル様、天界、万歳!』
『さすがはユグドラシル様方だ!』
『勇者ミトス、女神マーテル様万歳!!』
天使達から、町の人々から、それぞれ大きなどよめきとともにその場が歓喜の声につつまれる。
「しかぁっし!」
ゼロスが、手で制するとともに、ぴたり、とそんな人々の叫びは一瞬おさまる。
「すべての要因は、大樹が人々の負の思念で穢され、ユリスの封印を揺るがしていたがゆえに起こりえたこと。
  女神マーテル様は、人々が差別などといった心をもち、
  ユリスの封印を人々が緩めてしまった結果にとてもお嘆きになられていた」
ざわり。
末端の天使達はユリス、という存在を聞かされてはいなかったが。
最重要機密であったのだろう。
そのような認識、でしかない。
「そして、このたびの混乱で、マーテル様が目覚められてから後も、
  数多の命が落とさなくてもいい命を落としたことも」
『それは…』
そうつぶやいたのは、誰であったのか。
声は複数。
それぞれが、顔を見合わせる。
この場には生き返ったものたちも数多といる。
基本的に、上級貴族であった、というものたちの姿はあまりみうけられない。
いや、一人だけ。
服装が違ってはいるが、見間違えるはずのない人物が一人だけ。
ゼロスの視界にははいっている。
でも、今は。
人々に説明をするのが何よりも優先。
「すべては、人々が、ハーフエルフを、ヒトを、ドワーフを。 
  自分たちとは違うから、という理由で迫害し、拒絶をしていたがゆえに起こりえたこと。
  かの教皇の暴走にしろ、フィリプがエルフと恋におち、子をなしたゆえ、
  王家から追放されたのがそもそもの発端。
  マーテル様の教えは皆平等。だが、その教えと反するかのような王家の、人々の態度。
  それらが、敬謙なるマーテル様の信者でもあったフィリプ元教皇を狂わせた。
  その思いは、人々の負の思念を糧とする魔族をもよびおこし、そして事は起こった。
  すべては、差別する、という心がうみだせしこと。
  ゆえに、マーテル様は女神の力すべてを地上の人々に託し、
  人々に希望と、未来を授けることになさった。
  女神マーテル様の姉上であらせられる、もう一人の女神の力とともに。
  二人の女神の力において、皆も知っているように、死したものが蘇る。
  という奇跡すらおこしえた!」
女神の奇跡である、という。
死んだはずのものが蘇ったのは。
「だが、いくらマーテル様とて眠りし間に死したものに関してはどうにもならない。
  眠りから目覚め、敵に利用されそうになっていたマーテル様ができたのは、
  死せるものたちの魂を保護してゆく、ということだけであったという。
  だが、マーテル様の言葉に耳をかたむけることのなかった魂はよみがえることすらままならなかった
  魂ごと消滅させられてしまったものも然り」
つまり、生き返っていないものは、女神マーテルが目覚める前に死んだものか、
もしくは、完全に自分のことしか考えていないものか。
あるいは、何らかのかたちで魂ごと消滅しまったものか。
それらのうちのどれか、でしかない、と暗にゼロスはいっているに等しい。
本当に、よくミトスはおもいつく、とおもう。
これらもすべては、かの地での話し合いの上で、ミトスが提案したこと。
蘇ったものと、そうでないもの。
それらの違和感をなくすため、ミトスが考え出した、新たなる女神マーテル…
否、二人の女神による奇跡、の物語。
結界を創り出すのに、マナを吸い取られて死んでしまったものたちもまた、
このたびの奇跡において一部のものはよみがえっていたりする。
研究所にいたもののほとんどはよみがえってはいない。
「女神様の力とて限りがある。今あるすべての力を使ってくださってのこのたびの奇跡としれ!」
つまるところ、人々は、女神の慈悲によって、生かされたのだ。
そう、言外にいっているに等しい。
「そして、この地を大天使達の命によって警護をしていた天使達に告ぐ!
  大天使様がたより、汝らは聖地へと帰還せよ!とのお達しだ!
  かつて救いの塔があったかの場所。聖地カーラーン。そこにて汝らは詳しきことをきくであろう!」

天使化を果たしている、クルシスに所属しているものたちは、
そんなゼロスの宣言に戸惑わずにはいられない。
そもそも、マーテル様にそんな力があるとはおもえない。
しかし、マーテル教の教えというものがある。
だとすれば、神子ゼロスがいっているのは、まぎれもなく、
クルシスの、というよりはユグドラシル様からの指示、なのだろう。
そう彼らは誰ともなく理解する。
しかし、気になるのは、二人の女神、という台詞。
マーテル様の家族は、弟であるミトス・ユグドラシル様と、
そしてその伴侶である、ユアン・カーフェイ様、だけのはず。
ならば、もう一人の女神とはいったい。
そもそも、彗星から突如として地上に移動していたことといい。
確実に自分たちの予想がつかない何かがおこっていたのであろう。
マナすら感じ取れなくなり、身に着けていたエクスフィアもまた、気付けばいつのまにかなくなっていた。
もっとも、そのかわりに新しい石が、胸元、もしは額に現れはしているが。
どうもこれらの石は、エクスフィア、ではないらしく、
これまで感じていた巨大な力そのものすら、天使達は感じ取れなくなっている。
さらには、マナを紡ぐことすらできなくなっている。
自身の生命力…すなわち精神力を利用しての力はかろうじて使用可能、らしいが。
しかし、これまでのような威力を持った力は使えそうにない。
「とにかく。命令、というのであれば。我らは聖地にむけて出発すべきであろう」
「だな。神子よ。ユグドラシル様方もそこにいらっしゃるのか?」
「四大天使の皆さまはもどってくるときにはいらっしゃったが?」
名を出してはいないが、四大天使、と呼ばれているのは、マーテル様をも含んだもの。
つまり、どうやらマーテル様もご無事らしい。
そのことにほっとする。
神子に詳しいことを聞きたいところなれど、上司からの命令。
というのであれば、少しでもはやく、帰還するほうがよいであろう。
「――では、我らはこれで帰還する」
ウィルガイアに戻れるのかどうかはわからない。
だが、救いの塔がなくなっている以上、ウィルガイアも無事ではないだろう。
彗星もみるかぎり、なくなっているような。
それともまだ障壁がしっかりときいており、みえていないだけ、なのだろうか。
でも、それだとすれば。
空にみえている、ほうき星のようなものはいったい、”何”なのか。
どうやらこの地に残っている天使達の中でも、リーダー格、というものは存在していたらしく、
そんな彼の言葉を受け、天使達が一斉にと飛び上がる。
「あ、あの!天使様がた、このたびは、ありがとうございました!
  天使様たちのおかげで、助かった人達も大勢います。
  本当に、本当にありがとうございました!」
「――天の裁きをも覚悟しておりました。我が父がふがいないせいで、
  民にも、そして神子様にも。天使様方にも何といっていいのか…
  ですが、テセアラの第一王女としてこれだけはいわせてくださいませ。
  民を、テセアラの民を助けていただいてありがとうございました」
「天使様、ありがとうございました!」
「天使様がたの教えは決して、今度こそ違えません!」
「女神マーテル様の教えを今度こそ我らは守っていきます!」
バサリ、と飛び上がった天使達にむけ、セレスが深々とお辞儀をしつつも感謝の言葉をのべると、
それとともに、一歩前にと踏み出した金髪の女性が、静かに、深く頭を下げつつ言葉を紡ぐ。

全ては、父が愚かにも、叔父を信じてしまっていたがゆえにおこったこと。
叔父のいうがままに、教会との権力争いはごめんだ、とばかりに、われ関せずであった。
その結果、あろうことか天の使いの象徴たる神子の手配を容認するなど。
古の悲劇が再度、このテセアラという国そのものに襲い掛かってもおかしくはなかった。
否、自分たちが神子を手配というようなものを容認してしまったがゆえ、
このたびの騒動の引き金をひいてしまったのかもしれない。
あるいみで、この現状は天罰、なのかもしれない。
すむ場所もなく、父が君臨していた城もなく。
そして…ここ、首都メルトキオのある大陸は、他の大陸とおもいっきり離されてしまっているという。
すなわち、陸の孤島。
空をとんでゆくか、海路をゆくしか、他の大陸というか町と連絡をとる手段すらない。
国王であった父は、蘇りはしなかった。
つまりは…許されなかった、ということなのだろう。
おそらくは、きっと。
それとも、あの魔族がかかわったがためによみがえることができなかったのか。
それは、彼女…ヒルダには判らない。
それでも、父のかわりに感謝の言葉をのべずにはいられない。
自分が呪いによって小鳥にされている最中も、天使達は町の人々を助けてくれていた。
自分は何もできなかった。
姿が元にもどってもかなり衰弱しており、やはり皆の足をひっぱっていた。

ヒルダが頭をさげるとともに、民から、様々な感謝の言葉が天使達にとむけられる。
感謝の言葉は、次第に、この場にいるほとんどの民より天使達にとなげかけられる。
『――すべては、マーテル様の御心のままに』
神子の言葉を否定するでもなく、肯定するでもなく。
でも、神子の言葉がユグドラシル様の命によるものであるならば。
自分たちが変なことをいうわけにはいかない。
ならば、話をあわせるのみ。
それゆえ、無難な台詞とともに、ばさり、と天使達はこの場より飛び立ってゆく。

「さってと。天使様がたが戻られたところで。
  ヒルダ姫様。神子ゼロス、ただいま帰還いたしました。
  というか、よくぞご無事で…陛下は…残念でございました」
天使達が完全にみえなくなったのをうけ、ゼロスがヒルダにと臣下の礼をとる。
「いいえ。いいえ。すべては、王家が至らなかったがゆえのこの騒動です。
  小鳥に姿を変えられていたわたくしを助けてくださったのも、
  神子様、あなたがたなのでしょう?あの魔族を倒してくださったからこそ。
  わたくしの呪いがとけたのでしょうし」
「小鳥って…」
思い出すのは、城の中で、エミルが保護していた、という鳥かごにはいっていた小鳥。
あれが姫だったのか。
あの小鳥はたしか、セレスにと鳥かごのまま預けていた。
「さてさて。天使様方も帰られたことだし。
  とりあえず、ヒルダ姫様。国民にと今の現状を簡単に説明してもかまいませんでしょうか?」
「ええ。…お願いいたしますわ。ゼロス。わたくしたちには情報が必要です。 
  何より今後のためにも」
天使達がいない今。
これから先、自分たちだけで何とかしなくてはいけない。
目に見える脅威、はたしかになくなったかもしれない。
でも、住む場所も何もかもがなくなっているという現実は、かわりようがない。
「お兄様、改めておかえりなさいませ!壮大なる御役目、お疲れさまでした!」
「ああ。ただいま。セレス。お前も俺様の代役、お疲れさま。大変だっただろう?」
「いいえ。皆さまや、それに…天使の方々も手伝ってくださいましたので」
神子の妹、というのもあり、天使達がセレスを擁護してくれたのも功をなした。
もっとも、セレスの戦闘力に天使達も一部は唖然としていたようだが。
「さってと。型ぐるしいことはおいとくとして。だ。簡単なこれからのこと。
  今の世界のありかた、それを説明するとしますか」
ミトスの提案してきたあの話は、世界中の人々を納得させるのには、十分すぎるもの。
あの”声”と、今の現状。
本当に、よくおもいつく、とおもう。
さすがは、マーテル教を今の形に人々に浸透させたクルシスの指導者、といったところなのだろう。



「もどってきたんだ……」
何だかとても新鮮に感じる。
のどかな風景はそのまま、いや、そのまま、というのには語弊があるだろう。
トンテンカン、とところかしこから、何かをつくっているような音がきこえてきている。
畑のほうをちらり、とみればまだ収穫時期でもないのに実がたわわにとみのっている。
これが、種子が発芽した影響だ、というのだから、本当に、大樹というものはとてつもないものだ。
と嫌でも理解ができる。
あの場ではよくわからなかった。
でも、”空を飛んで”里があるであろう付近にともどってきた。
地形もまったくかわってしまっており、なかなか見つけにくかったが。
心の中より、児雷也の導きで、何とか無事に里にと戻ってこれた。
児雷也曰く、試練はおわったので、今後はしいなが血の盟約を破棄しない限り、
しいなの血族にこれまでのように仕える立場にある、とのことらしい。
「あ、あれは!しいな様だ、しいな様がお戻りになられたぞ~!」
「ひめ…でなかった。次期統領、おかえりなさいませ!」
ふわり、と誰かが降り立ってきたのにきづき、里のものが目をまるくする。
それはまさに、里につたわりし、天女、ともよばれていた古の里のものがつかえし、
とある王国の王家のものの姿そのままに。
天の羽衣、とはまさにいいえて妙といえるであろう。
翼、というよりは、羽衣のように、しいなの体をふわり、と半透明なものが覆っている。
そこに、巨大蛙の姿でもあれば、里に伝わる神聖なる絵のごとく。
わらわらと集まってくる里のものたち。
中には姿がみえないものもいる。
それらはおそらくは、くちなわとともに里をでていった、というものたちなのだろう。
比較的、女、子供の姿がおおく、若い青年の姿はあまりみうけられない。
そんな声をきき、ゆっくりと奥からでてくる二人の人物。
「お爺ちゃん…でなかった、統領。藤林しいな。ただいま里に帰還いたしました!」
その姿をみて、しいながぴしっと姿勢を正し、報告する。
「よう戻ったの。しいな…いや。しいな姫よ」
ざっ。
そんな統領であるイガグリの台詞に、その場にいる里のものが一斉にとひざまづく。
「おじいちゃん?皆…?」
いきなり態度にしいなは困惑を隠しきれない。
「しいなよ。今まで秘密にしておったが、おぬしは……」
「――知ってるよ。いや、知ったというべきか。でも、あたしはあたし。
  お爺ちゃんに育てられ、この里で育った、忍の一人。たとえその血筋が、生まれがどうであろうと。
  だって、おじいちゃん。かつてのように、国をおこそう、とかはないんでしょ?
  なら、いいじゃないか。この里が、このみずほが、あたしの国であり、そして家族なんだから」
国、とは何も巨大なものでなくてもよい。
そこに、守るべき民がいる場所こそが、国。
だからこそ。
「――でておいで。児雷也!!」
「――承知した。我が主よ」
ぼふん、という音とともにしいなの横に巨大な蛙が出現する。
具現化しているだけでかなりの精神力をもっていかれる感覚がする。
『おおっ!!これぞまさしく…まさしく…っ!!』
誰もが、一度はみたことがある。
このミズホの元となりし、古の国の皇女と、そんな皇女を守っていたという巨大蛙の絵姿を。
しいなの羽衣のような翼とあいまって、その姿は絵姿とだぶる。
「これから。この世界は大変になるとおもう。世界の現状をきちんと把握できる人達が必要となる。
  だからこそ、あたしたちの力が必要となりえる。 
  皆、協力してくれるかい?一つに戻た大陸の現状把握、そして今の現状の把握。
  それらをすべて統計し、クルシス…いや、地上に降りた彼ら天界のものとともに。
  私たちはこれから、未来を紡いでいく。それには皆の協力が必要となる。
  だから、お願いします!皆、あたしに、いや、世界のためにその力をかしとくれ!」
『おおお!しいな姫、万歳!次期統領姫、万歳!』
皇族の血を唯一引き継ぐ姫が、自分たちを家族、といいきってくれた。
真実を知る以前はしいなを非難していたものたちからしてみれば、
それはまさに慈愛の心をもってして民である自分たちをいつくしんでくれている。
そう錯覚せずにはいられない。
それほどまでに今のしいなの姿…聖獣児雷也とともにいる姿は強烈すぎる。
自然と、誰かがいいだし、姫様万歳!という大合唱へと成り代わってゆくそんな中。
「あ~…こほん。しいなよ。その前に、まずは詳しい内容をきかせてはくれぬか?」
協力することはおしまない。
というか、世界の現状を把握するというのは、みずほの、忍としてそれは必然といえること。
きちんとした情報がなければ、彼らの行動も確実なものにはなりえない。
「え?あ。タイガ様。すいません。…児雷也、もどっていいよ」
「――用があれば喚ぶがいい」
ボフン、という音とともに再び児雷也が掻き消える。
児雷也とて理解している。
今、しいなが自分を呼びだしたのは、自分の産まれを、立場をしっかりと、
しいな自身と、そして周囲に知らしめるためである、ということを。
「で?しいな姫よ…」
「お爺ちゃん。タイガ様…今までのように、普通でいいよ。それでいいじゃないか。皆も。
  …公式の場、とかならともかくさ。あのゼロスだって、神子として公式の立場と、
  普段の立場…公私の区別はきちんとつけてるんだからさ」
神子ゼロスの例を持ち出されては、タイガも、そしてイガグリも苦笑しつつ納得せざるを得ない。
たしかに、今までの態度からいきなりかえられれば、しいなもまた恐縮してしまうだろう。
どういう理由かはわからないが、姫は古の力をも得られたらしい。
皇族がもっていた聖なる力そのものを。
「里が里であるためにも。あたしからの提案もあるんだけど……」
「うむ。きこう。簡単ではあるが、屋敷も今再建しかけておるから、そこでな」
みずほの里の家などもまた、結晶化してしまっており、普通に使用は可能なれど。
だけどもそれらの家もこのたびの騒動において壊れてしまっていたり、あまり用をなさない。
ゆえに、今あるものを取り壊し、新しい家を建築し始めている今現在。
道具がなくてもつくりだせばいい。
今あるものを利用して行動を起こす。
常に何もない場所から、最善を選ぶというのもまた忍の役目。
「うん!」
皇族の血筋だと自分で自覚した。
今の態度から、イガグリもタイガもやはりそのことをしっていたのだ。
そう実感する。
でも、それが何だというのだろう。
彼らが自分を育ててくれて、里のものが自分を育ててくれたのには違いないのだから。



「な…何なんだぁぁ!これはぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
絶叫が木霊する。
「…いきなり爺様の声が聞こえてきたとおもったら…これは……」
「あははは。マクスウェル様にしてらやれたねぇ。ミラさんたち」
きゃはは、と笑っているのは、彼女たちをここまでつれてきてくれた一体の獣。
家にもどるだけ、のはずだったのに。
その家がある場所がどうして、天空、ではなく地上…しかも海上になっているのだろうか。
「理が以前のものに戻るにしたがって、空島達もこうして地上に戻されたらしいよ~?」
「というか、何なんだ、この爺様の手紙は!マクスウェルの称号は私たちに預ける。
  後は、お前たちにまかせた。って、この簡潔極まりない手紙はぁぁぁぁ!!」
しかも、そこに理由はなく、ただそれだけしかかかれていない。
「しょうがないんじゃないのかなぁ?ラタトスク様…大いなる意志様が。
  精霊達は今後、しばらくの間地上に干渉しないように、ってお達しをされてしまった以上。
  地上の未来は、君達、ヒトの手にゆだねられたってことだとおもうよ?」
「だからといって、説明まで私らにまかすなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
絶叫するしかない。
いきなり、空から地上におろされ、困惑している人々の姿がみてとれる。
さもありなん。
これまで、眼下に雲や地上がみてていたその場所が、ことごとく海、になってしまっていれば。
…どうやら、かの地すべてが、ここ、海上にそっりそのまま移動してしまっている、らしい。
「あ。ちなみに。この島々が空に浮かぶ前の名前。
  モウリョウって、呼んでいたらしいよ?
  もともとはジャパネスクっていう名のちょっとしたきとんした国家の島国だったんだけど。
  古の戦いで魔導砲を発射され、細かな島々になってしまったのが今の名残だね」
獣…成獣シャオルーンから語られる、エグザイアと呼ばれていた島々の真実。
それは、彼女たち、ミラやミュゼ走る由もないが、
ミズホの民たちがもともと住んでいた島国、その名残。
古の地図からしてみれば、どうやら今ある島々…エグザイアであったはずの大地。
それらはトリエット砂漠のある大陸…その東側にどうやら位置している、らしい。
正確にいうならば、ハイマやルイン。
そういった個所のある大陸と、トリエット砂漠のある大陸。
その間の区間の海の、さらに東側、というべきか。
結構、大陸と、一番大陸側に近い島の距離は離れており、そうそう交流がおこなえるような距離ではない。
「とにかく。ミラ。…困惑している町の人々を、私たちが導いてゆくしかないわ」
「うう。姉様ぁ…爺様、今度あったら、一発なぐらせてもらう。いや、絶対になぐるぅぅっ!」
「いや。マクスウェル様を殴るの無理だとおもうなぁ……」
世界で何が起こっているのかはわからない。
だが、世界は一つにもどり、そしてあの声のいっていた試練もおそらくおわった、のだろう。
「せめて、事情説明くらいはほしかったわね……」
「僕ら聖獣でよければ説明するよ~?この島国は本来、僕らの一人、というか。
  僕が守護していた国でもあったからね」
水の聖獣、シャオルーン。
かつてシャオルーンはこの地を守護していた。
他の仲間とともに。
四聖獣。
そう呼ばれていた古の、かつての記憶。
「頼む。いったい、何がどうなったんだ?」
「えっとねぇ……」
説明できる範囲、というものは限られている。
でも、ようやくすれば、ただひとつ。
「――新たなる契約の証となる、新しい大樹が芽吹いた、ってところかな?」
ヒトと、エルフと、狭間にいきるものと、ドワーフと。
この大地にいきる、すべてなる”ヒト”を繋ぐ、”証”としての大樹が。
「その名前はねぇ……」
聖獣、シャオルーンより、ミラとミュゼに簡単な説明がなされてゆく――



「うわ~…予想はしていたけど、これは……」
ここは、サイバック、なのだろう。
…たぶん。
ここもいろいろと騒動にと巻き込まれる地だなぁ。
そんなことを、他人事のようにふとおもう。
ほぼ、町並みはすでになく、というかまったくない。
ほぼ荒野、といっても過言でない。
「…ねえ。リヒター、僕らのお給料って…どうなるんだろ?」
「さあな。すくなくとも…研究所は綺麗さっぱりなくなってるぞ?これは?」
ついでにいえば、学院もなくなっている。
この場所にいたのはほとんどが学者気質のものか、研究者気質のものばかり。
万が一、戦闘などになってもあまり役にはたたなかったであろう。
実際、アステル達がでかけるときも、あまり彼らは戦力になりえていなかった。
「…まずは、当面の、衣食住、だな」
アステルの言葉に、リヒターも溜息をつきつつ、そういわずにはいられない。
自分たち、ハーフエルフを囲う檻である研究所はなくなった。
それこそ文字通りに。
建物の概要すら、まったく形をとどめていない。
地下室があった、という痕跡を示すかのごとく、
そこにぽっかりと巨大な穴があいているだけで。
野ざらしになっている本棚のようなそれらは、水晶のように結晶化しており、
それらの中に保管されていたはずの書籍類もまた結晶化してしまい、
閲覧するのは不可能、となっている。
そもそも、建物がないのに、本棚のみが残っている、というのが理解不能。
…壊れていたりするものも多々とありはするが。
ともあれ、本棚があるゆえに、このあたりが今はどこか、というのが簡単な目安となりえる。
学術図書館。
それは、サイバックの町にはいって、北側にあったはずの場所なのだから。
「その前に……」
「あ!アステル!アステル達がもどってきたわ!!」
ふと、聞きなれた声がする。
みれば、見知った顔がこちらにきづいてか、かけてくるのがみてとれる。
そもそも、ここに戻るまで戻る手段がなかったこともあり、
サイバックなら近いから、という理由でクラトスとユアンがこの近くまで運んでくれた。
という経緯がある。
ちなみに、リーガルはプレセアに抱きかかえられて、アルタミラがあるであろう方向に飛んでいったのだが。
実体化できたら私がリーガル様を抱きかかえるのに!
とわめいていたアリシアの姿が印象深かったのをアステルはふと思い出す。
「リリーナ!」
ふとみれば、リリーナを筆頭に、研究所で顔見知りであった人物たちが数名ほど。
「ねえ。一体全体、何がどうなったの?あなたたち、しってるんでしょう?」
今まで戻ってこなかった、ということは。
この二人は騒動の最中にいた、とみてほぼ間違いないはず。
それは、リリーナの、勘。
「そう、だね。僕らが天界、クルシスから聞いたことを伝えるよ」
あの場にて、ミトスが提案し、それを真実として後に大々的に公表する。
そう、彼らはいっていた。
それゆえに、ここまでならば、人々に伝えていいよ、という内容も。
あの、聖なる地で。
銀の大樹として生まれ変わった…ちなみに、名は、銀の大樹、もしくは世界樹。
そのどちらかになる、らしい。
いまだにその意見はわかれていたっぽいが。
今、世界はまさに、うまれかわり、人々の今後のありかた。
それをきちんと精霊達に、世界に認めてもらわなければならないのだから。
人は、過ちをおかす。
しかし、人はかわれる。
ゆえに世界にとっての害虫というだけではないのだ、というその証を。



「パパ、ママ…ただいま!!」
町は、すでに街ではなくなっている。
かろうじて、町であった面影はのこっているものの。
あれだけ頑丈とおもわれていたパルマコスタの総督府ですら結晶化し、ほとんどが崩れてしまっている。
そこに建物があったのだ、という壁の一部がのこっているのみで。
町並みもまた、足場となっている場所がほとんど結晶化しており、
コン、という固い音が歩くたびに響く。
本来ならば、ここは煉瓦が敷き詰められて足場となっていたはずなのに。
海をほぼ埋め立てる形で町、という様式をとっている、自分の生まれ故郷であるパルマコスタ。
マルタの知っているパルマコスタの位置とはかなりかわってしまっている。
目安となる、なぜか結晶化しつつも無事であった灯台がなければ、
マルタとてそこがパルマコスタである、と気づかなかったであろう。
シルヴァラントの管制官であったというクラトスから、かの地がかつてはこの付近であった。
というのを、古代の地図…否。
今では実際の世界地図、というべきか。
ともかくその一点を指し示されていたがゆえ、方角的にマルタはあまり迷わなかった。
ちなみに、聖地カーラーン、すなわち、新しい大樹が芽吹いた大陸には、
それ以外にどうやらサイバックがあるらしく、それ以外はほとんど山と森にと包まれている大陸であった。
四千年、という時間にいくつもの町が生まれ、そして消えていった。
大陸そのものの形は以前とかわっていないが、
そこにある町や村、といったものは大々的にかわってしまっている。
だが、パルマコスタのあった場所は、もともと、シルヴァラント側でも、
主要であった国があった場所でもある。
ゆえに、大陸が移動してもどのあたり、というのはクラトスとて指摘が可能。
今ではその面影は、地下遺跡、くらいしかのこっていないが。
「マルタ…マルタなのか!?」
「マルタ…よく、無事で……」
天使を数名、ひき連れている…おそらくは、以前のユアンの台詞が功を奏しているのであろう。
ユアンはあのとき。
自分たちがテセアラ王城に出向いたあのとき。
あの鏡のようなものから、王家の血筋を絶やすな、といったことを確かいっていたはず。
おそらくは、ろくに休んでいないのであろう。
両親の顔には見間違えのないほどに疲労感がただよっている。
それでも、マルタの姿をみて、かけよってくるその様子はマルタにとっても安心感を抱かせる。
「パパ…ママ。マルタ・ルアルディ。今、ここに帰還しました!
  感じたよ。パパとママの思い。…ありがとう。そして、ごめんなさい」
自分のわがままが、こんな大事に巻き込まれてゆくなど。
あのときはおもってもみなかった。
それどころか、そのわがままが、
めぐりめぐって、自分の血筋につたわっていた、という、聖獣、という輩を失ってしまった。
自分のために。
自分を助けてくれたエミルが自分の王子さまだ。
運命の人だ、とおもいこみ、無理やりに再生の神子の旅にと同行した。
それがそもそもの始まり。
…エミルの正体は、いまだにマルタの中では踏ん切りがついていない。
精霊、といわれても、マルタはエミルが精霊の姿になっているところをみたことがない。
もっとも、精霊達にとって姿形はどうにでもなるものなのかもしれないが。
エミルが大いなる意志。
この世界そのもの、否、星空をも含めたすべての生みの親。
そう、あの幻の中でもう一人の自分に言われた言葉も実感がいまだによくできていない。
自分が、勝手に運命の相手、だと思い込んで迷惑をかけた人達。
そういった人達は、自分が直接手を下してはいないが、もうすでに亡くなっている。
というのもマルタは理解している。
否、わかっていても理解しようとしていなかっただけ。
自分の行動には責任が付きまとう。
ロイドをどこか冷めた感情でみていた自分。
言葉だけで行動に移さない。
マルタはロイドのことをそうおもっていた。
でも、自分とロイドのどこが違う、というのだろうか。
自分は、自分の害になる、と判断した人達が両親に、というか父親によって排除されていた。
そしてそれに気づいていながらも、自分をないがしろにしたのだから当然。
とおもっていた自分自身。
それらも今はマルタは理解している。
あの幻の中で、心の試練、という中で、嫌というほどに理解した。
理解せざるを得なかった。
両親の思いがとどかなければ、自分はまちがいなく、自らの心の殻に閉じこもってしまっただろう。
そうもマルタは予測がつく。
だからこそ、両親には謝らずにはいられない。
「いいのよ。マルタ。…私たちの心は、無事にとどいたのね?」
「ああ。お前が無事にもどってくれた。それだけで満足だ」
ぎゅっと、マルタを抱きしめる、母の背に、無意識にマルタも手を回す。
母のぬくもりを感じ、ああ、家族のもとにもどってきたんだ。
そうマルタは改めて実感する。
町並みは、もう、ここがパルマコスタであったといわれても実感がない。
灯台があり、町並みの土台となっている一部がのこっている以上、
まちがいなくここがパルマコスタであったのだろうが。
ちらりとみえる町の人々も、こころなしか数がかなり減っている。
「それで、いったい、何があったの?マルタ?
  死んだ人達が蘇るなんていう奇跡がつい先日おこりえたのだけども……」
「もっとも、すべての死んだ人々が生き返ったわけではないが……」
母の言葉につづき、父もまた困惑したようにマルタにと問いかける。
そんな彼ら、家族のもとに、
「たしか、マルタといったな。ユアン様方は…大天使の皆さま方は……」
側にいた天使の一人が気になっていたらしくも問いかけてくる。
どうやらこの天使は女性、であるらしい。
どこか仮面じみた表情にみえなくもないが、よくよくみれば微妙な表情の変化が垣間見える。
その背に生えている真っ白い翼と、額についている蒼い宝石のような石のようなもの。
それらがかなり特徴めいている。
もっとも、父や母にもその石はついており、当然マルタにも。
あのとき。
あの銀の大樹が芽吹いた後。
ウィノナが何かをいったあと、自分たちの体にも石が忽然とあらわれた。
それこそ、エクスフィアを埋め込まれていたという牧場にいた人達のごとくに。
その変わり、体の一部が結晶化してしまっていたような現象はなくなっていたようだが。
コレットに関しては一度、肉体を失い、そしてその肉体が再生されたゆえに、かつての体の異変。
体が結晶化するなどといったことはもう、ありえないはず。
そう、あのウィノナがいっていた。
そしてそれはマーテル様にもいえる、と。
女神ではない、といわれても物心ついていたころから、女神マーテルの教えで育っている以上、
どうしても、マルタからしては、マーテルのことを様、づけせずにはいられない。
「あ。そうだ。えっと。天界、クルシスからの伝言というか、関係者に説明するように。
  って、大天使の方からいわれたことがあるんだけど。
  パパ、ママ。クララ夫人や、マーチ祭司様に時間をとってもらえるようにいってもらえるかな?」
嘘をつくのは心苦しい。
でも、たしかに。
あのミトスの提案したあの話であるならば。
人々の混乱も、そして今後また再びおこりえるだろう、ヒトによる、ハーフエルフに対する差別や迫害。
そういったものもなくなるはず。
「――混乱が落ち着いたら、聖地にて関係者をあつめ、きちんとした正式な発表が行われる。
  そうもいわれたけど、とりあえず、私から簡単な説明はしておくように。って……」
世界にむけての正式発表。
そして、これからの話は、そのためにむけての、あるいみ下準備であり、布石――



陸の孤島。
まさにそういってもいいのかもしれない。
だが、陸同士の距離はそうははなれていない。
グランテセアラブリッジがかかっていた、大陸同士の半分、といった距離くらいであろうか。
目視できる位置に相手側の大陸があるだけまし、なのかもしれない。
今や首都メルトキオがあるかの大地は、完全なる陸の孤島と化している。
それを、かの地において、彼らは古代の地図を示されつつも説明された。
アルタミラの付近にはなかった、ちいさな山らしきもの。
どうやら、火山の影響か何か、で新しい山のようなものができあがっているらしい。
「これは、立て直しが大変、だな」
しかし、初代が、この地を開発しはじめたときにも、このようなあるいみ荒野であったという。
すでに、町並みはどこにもない。
町の中を覆い尽くしていたたくさんの木々は、結晶化し、
リーガルがこの地を離れたときには半分以上が壊れてしまっていた。
そしてそれは、建物などにもいえるのだが。
もはや、どこからが町で、どこからが町の外であったのか。
かろうじて足場となっている場所が結晶化している煉瓦っぽいものがあるゆえに、
境目がわかる程度。
「…ひとまず、町の再建は、この山のふもと、のほうがよさそうだな」
これまでならば、高い建物などがあり、水害などがおこったときにも対処ができた。
だが、ここまで更地になってしまっていれば。
万が一、高潮や、水位があがったときに、人々を誘導する場所がない。
だが、この山ならば。
そこそこのどうやら標高があり、今回の奇跡によって生まれたのであろう。
すでに山は木々にとおおわれ、きちんとした”山”としての形を整えている。
たとえその山の大地がコケにおおわれたような、溶岩のようなものであったとしても。
いざ、というときに避難できる場所の近くに拠点をかまえたほうがいいにきまっている。
高さ的には、建物でいけば、三階建てより少し高いくらいであろう。
レザレノ本社ほどの高さは山はみられないが、それでもないよりはまし。
アステル達とともに、この地、アルタミラから出かけたゆえに、
アルタミラがどのあたりにあるのか、地形的には一応リーガルは把握していた。
ゆえに、あまり迷わずにたどり着けた、のだが……
「…人々の姿がみえぬ、な」
町の入口付近…だとはおもう。
あきらかに、地面の様子が変化している様子からして。
町にはいってすぐにあったはずの、ホテルレザレノもすでにない。
そこには巨大な樹が生えていたかのごとく、はぜわれた樹の残骸のようなものがあるのみで。
そんな樹の残骸、ともみえる水晶におおわれたそれには、びっしりと、
ちいさな緑の蔦のようなものがからみついている。
どうやら、蔓系植物がそういったものをまきこんでいるらしく、
ざっとみるかぎり、そのような光景は目につくところだけでも数か所、見受けられる。
もう、町にはいっているはず。
つい先日までにぎわっていたビーチの面影も今はない。
真っ白い砂浜と海はそのままなれど。
ビーチに続く階段も石を積み上げてつくっていたがためか、
その石が結晶化し、こわれすでに土がむき出しになってしまっている。
そこいらには新しく生えたのであろう、様々な草木などもみてとれる。
以前の森ほどではないにしろ。
ちょとした雑木林だ、といわれても信じてしまうほどの変わりよう。
「…みなさん、奥にいるのではないでしょうか?」
この付近は、ホテル以外に避難できる場所もなかったはず。
だが、奥のほうには、レザレノの本社や、それにレザレノに所属している人々。
そんな彼らの住まう居住区が確かあったはず。
「・・・あ」
「…慰霊碑は無事、か」
この奥に続く橋があったはずなのだが。
それすらも今はない。
折れた大木がそこある海水がながれているちょっとした水路。
水路を挟んだ陸地同士をどうにかつないでいるようだが。
海に面した位置にとある、巨大な石碑。
その周囲には草花が咲き乱れており、まるで慰霊碑に刻まれている人々の魂を慰めているようで。
『ねえ。お姉ちゃん、お祈り…していってもいいかな?』
「そうね。…アリシア」
ふわり、ふわりと半透明な女性が自分のそばにと浮いている。
基本的には、プレセアにとりついている状態であり、自分の意志でこうして外にもでられるらしい。
あの奇跡によってアリシアはよみがえることがなかった。
かの奇跡が及ぶ範囲の時間外にいたがゆえ、その構築が不可能なのだ、と。
本来の大樹…精霊ラタトスクの加護のもとの大樹であれば、
魂さえ無事ならば、無から有をつくりだす、すなわち器をうみだすことは可能であるらしいが。
だが、新たに芽吹いた大樹はそこまでの力はない。
そもそも、それらの力も人々の思いが集いて奇跡の力が起こし得たようなもの。
そう、新しき大樹の精霊となったといっていたウィノナはいっていた。

もっとも、ウィノナとて気づいている。
本来の大樹カーラーンはすでに他の場所にて芽吹かされている、ということを。
でもそれは、大いなる意志たるラタトスクの盟約のもと、彼らに伝えることはできない。
もっとも、新しく芽吹いている場所が場所であるがゆえ、普通ではたどり着くこともできないだろうが。

気になるのは、アリシアの姿は、自分たちにはみえていたが、
あの地になぜかいた、他のものたち、すなわちエルフたちといったものにはみえていなかった。
村長だというブラムハルドのみにはみえていたようだが。
他のエルフたちは、たしかにいるのに、いないもの、と認識していた。
まるで、そう。
そこにいるのに姿がみえない。
否、みようとしていないのか。
それはプレセアにはわからない。
プレセアたちは知らないが、霊を認識できる能力をかつての人々はこう呼んでいた。
すなわち、霊能力、と。
心の試練を突破しているプレセアたちだからこそ、その人のもつ可能性の力の一つ。
その力が目覚めているだけで、今をいきるものたちはほとんど忘れてしまっているその力。
今のアリシアには自力で実体化できるだけの力はない。
もっとも、姉の同意のもと、その体をかしてもらうことくらいはできそうだが。
それでもアリシア曰く、そういつまでの霊体のままではいられない、とのことらしい。
下手をすれば世界とのつながりがつよくなってしまい、生まれ変わることができなくなってしまう。
とのことらしいが。
そのあたりのことは、プレセアもリーガルもよくわからない。
「では、私が奥の様子をみてこよう」
この慰霊碑はかつて、アリシアが意図せず、エクスフィギュア化したときに殺してしまった人達の慰霊碑。
ゆえに、姉であるプレセアも、当事者であるアリシアも思う所があるのだろう。
アリシアをあのとき、手にかけてしまった自分がとやかくいえる立場ではない。
リーガルはそうおもっている。
元に戻す方法があったのだ、と理解している今は特にあのときの行動を今でも悔やんでいたりする。
話しにきいた、パルマコスタのドアという総督府の総督のように。
アリシアをどこかに閉じ込めておく、という手段もまたとれたはず。
しかしそれをするには、被害が甚大すぎた。
目の前で異形と化して、町の、観光客達にと襲い掛かっていたアリシアのあの姿は、
今でもリーガルに嫌というほど夢としてみせつけられている。
それでも昔ほどその夢の頻度がなくなったのは、
たとえ精神体…幽霊だとしても、アリシアがいる、とわかっているから、なのだろう。
…あいかわらず、自分とプレセアをどうにかして伴侶同士にしよう。
という魂胆が見え隠れているのはおいとくとしても。
今は、霊となっているアリシアとこうして話ができる。
そのことに満足するしかない。
たとえ、触れ合うことができずとも、心はつながっているのだ。
そう実感ができるゆえに。
アリシアが霊体として安定しているのは、かの地において、新たに芽吹いた銀の大樹。
その葉をプレセアがウィノナからもらい、それを首飾りにしているからにすぎない。
そのこともリーガルは理解ている。
大樹の葉は、ウィノナの加護がかかっており、ゆえに人、一人くらいの霊体ならば、
ある程度は保護できるから、ということらしい。
まだ力のない大樹ではあるが、それくらいのことはできるのだ、と。
そう、彼女はいっていた。
「ファブレ伯爵がどこかにいるはずだ。まずは彼と連絡をつけなくては、な。
  神子がいっていたが、ここアルタミラにも神子が話をつけている。
  というからそう難しくはないとおもうのだが……」
合流してくるまでに、様々な各地を神子ゼロスはめぐってたらしい。
人々があまり混乱しないように。
今の現状を、人々が納得できるようにあの声の内容とあわせ、思いついた内容を。
…もっとも、それらの内容をミトスがきき、それらも取り入れたあの”案”は、
さすがというより、リーガルも思うしかなかったが。
マーテル教の神話といい、様々な伝承、といい。
それらすべてがミトスの考え出したものだ、というのだから、その手腕は恐れ入る。
そして、それを報告するのが、クルシス…地上におりたった天界の組織。
それで疑うものなど、マーテル教の信者しかいないこの世界には…おそらく、いない。
マーテル教を信じていないものでも、確実に信じてしまうであろう。
何しろ、その”案”のような現実が、実際におこっているのだから。
「しばらくは忙しくなる、な」
各地の復興がまず先決、だろう。
陸の孤島と化しているだろう首都との連絡のこともある。
今、考えられる移動手段とすれば、飛竜の存在、くらいであろうか。
しかし、魔物たちの姿がみえなくなってしまっている今、
飛竜達も、というよりは飛竜観光が成り立っているのかどうかも怪しい。
それらもしいないわく、里にもどったのち、皆で調べて報告する、といってきたが。
ある程度の再建のメドが付きしだい、かの地において、今後のことが話し合われることになっている。
それは正式なる、天界…地上におりた、マーテル教団、としての始動。
これまでは、テセアラ側にマーテル教の教皇、というものがいたが。
今後は、マーテル教の総本部として、教皇と、そして司祭、祭司をおき、
クルシスではほとんど地上にまるなげしていた様々なこと。
それらもこれからは取り締まっていくつもり、であるらしい。
ミトスいわく、まちがいなく幻魔といわれる現象は今後もおこりえるから。
そうきっぱりいいきっていた。
それら対抗するために、マーテル教本部として、騎士団を結成する、とも。
ちなみに、大樹が銀の大樹として芽吹いたことから、銀の騎士団、とするらしい。
その騎士団長には何でもクラトスをそえるつもりだ、とミトスはいっていたが……
これまでのように閉鎖していたクルシスではなく、今度は万人を受け入れる体制をつくっていく。
そのつもり、ともいっていた。
そうすることで、ミトスが考え出した案というか、世界にむけての発表に真実味をもたせる、と。
国王が死に、今後、このテセアラもどうなっていくのかわからない。
しかし、目に見えた天界、というクルシスという組織。
その組織がある以上、人々が必要以上に不安にかられ暴動がおこることはないだろう。
ミトスが考え出した、このたびの騒動の結末を考えたとしても。
暴動を起こすこと。
すなわちそれは、女神たちの最後の力といえる奇跡をないがしろにすること、なのだから。

そして、このたびの一連の出来事は。
今をいきるものたちすべてが、新たなる歴史の一ページ。
すなわち、新しき神話の中の一員になったのだ、と自覚させるのには十分すぎる出来事――

後に、人々はこの出来事を語るであろう。
神話の中の一ページとして。
人がおこした愚かなことと、女神たちの奇跡、その慈愛の精神を。
汝ら、すべてが平等であれ。
そのために、女神の力を地上の人々に奇跡、という力でわけあたえ、
自身達はあえてヒトの身になりて差別をなくそうと地上におりた女神たちのその物語を。
女神たちの人々を愛する慈愛の心を常に人々に認識させるために――




一月後――


「ひと月、である程度の目安がたったのは、運がいいのか、悪いのか…」
「でも、復興はまだまだ、ですけどね」
溜息をつかざるを得ない。
この場に集まることができたのは、ハイマより避難していたという、
飛竜観光を営んでいたものの功績ともいえる。
周囲の魔物たちがなぜかきえてゆく中。
飛竜の中より一際大きな個体がおりたってきて、普通の場所では魔物である飛竜達。
彼らは実体を保てない、そのようなことを運営していたもの、
というか、飛竜達の飼い主の代表者に伝えられたらしい。
飛竜達をお金儲けとしてしか考えていなかったとある人物は、
騒動によって命をおとし、結局蘇ることはなかったらしいが。
そんな大き目の飛竜の言葉をうけ、彼らはこの地、
マーテル教総本部、とあらたになったというこの聖地へとやってきた。
初めてこの地にやってきたものは、そのあまりの神聖さに思わず絶句する。
真っ白い水晶のようなもので作られた町並みにしろ。
そんな町並みをおおっている透明なドーム状の天上にしろ。
透明であるがゆえ、内部も、内部から外も垣間見える。
どういった仕組みなのかはわからないが、雨などもきちんとドームの中には降り注ぐ、らしい。
が、自然のものではない力などははじく、という。
そういわれても実感はないが。
そう。
復興はまだまだ。
ドワーフ達の協力もありて、何とか人々が住まう場所。
簡単な家屋は建てられはしたが。
人がいきてゆくには食べ物も必要。
海が近い場所などは昔ながらの素潜り漁、といった方法がとられ。
海沿いの村などは、簡易的な船などは無事であったが,
色々機能のついているような船などはことごとく全滅していた。
ゆえに、あらたに船を建造する必要があったのだが。
そういったものを手掛けていた場所すらなくなってしまっていた。
イズールドなどは、近くの鉱山跡地にドワーフ達があらわれていなければ、
まちがいなく露頭にまよっていたであろう。
アルタミラもまた、ドワーフ達はかつて住んでいたという場所。
モーリア坑道にと戻ってきていた…というか戻されたというべきか。
ともあれ、天界から地上におりたのち、近くにあった街などにと状況を把握するためにとおもむいていた。
そこにて、ファブレ伯爵などから現状をきかされ、彼らのもつ建築技術。
それらを提供し、協力するにいたったのだが。
みずほの里の民の尽力もあり、今の世界の現状も何とか把握が一部のものはできた。
伊達にミズホの民は世界中にちっていたわけではない。
その独特な情報のやり取りの方法は、どうやら異変の後も使用可能であったらしく、
彼らのもつ情報網が、新しい世界にとってのあるいみ道しるべになっているといってもよい。
この場にアルタミラを代表し、現れたリーガルが思わず愚痴れば、
そんなリーガルとともにやってきているプレセアがそんなリーガルに突っ込みをいれる。
結局のところ、プレセアはオゼットに戻ることなく…
というか、オゼット、という村がどこに位置していたのか。
世界が一つになったことにより、そういった小さな村などの位置は、
一度外にでてしまえば把握しずらくなっていたりする。
みずほの民の情報でその地にいってみたが、
すでにそこは普通の森と化しており、村の痕跡はほとんどのこっていなかった。
プレセアが住んでいた家もまたしかり。
唯一、父親の墓らしきものが結晶化しているものの墓標が残っていたのが救いといえば救いか。
「お前たちのほうはまだいいぞ。私のほうなんか、爺様にいきなり押し付けられたようなものだからな」
そんな彼らに溜息をつきつつも何やらいっている金髪の女性。
「エグザイアが地上に、島国、としてよみがえったとはみずほの民の報告でしってはいたが…
  しかし、どうやってきたのだ?」
「聖獣が力をかしてくれたからな。どうやら爺様たち…精霊達は力を貸すことはないようだが。
  今のところ。だが、もともといた聖獣達ならば話は別らしい。
  もっとも、彼らも自分たちの力を悪用されないがために利用者はしっかりと見定める、
  といっていたがな」
だが、足くらいならばいいよ。
といって、この地まで、彼女…ミラはシャオルーンに運んできてもらっている。
「姫、大丈夫でございますか?」
「え、ええ。ありがとう。ゼロス……」
一方で、ふとみれば飛竜からおりたってくる男女の姿が。
護衛のもの、なのであろう。
兵?らしきものも、その背後につづく飛竜からおりてくるのもみてとれるが。
「うん?神子。それにヒルダ姫様も」
「ブライアン公爵。お久しぶりですわ。…本当にお久しぶりです。
  あれからそんなにたっていないというのに、ものすごい前のような気がいたしますわ……」

あの騒動からひと月。
父がなくなり、王家の血筋ということで、彼女、ヒルダが民をまとめる役目を負った。
自分にはできない。
そういうヒルダをそばでゼロスが支えつつ、何とかメルトキオは町、としての形を整え始めている。
…まだ木造建設などしかなく、町、というよりは村、という規模でしかないが。
貴族のほとんどが行方不明、というか生死不明。
当然、テセアラ、という国のありかたがそれで成り立つはずもなく。
それぞれの場所で自主的な活動が推奨された。
伝言などのやりとりは、ほとんどが鳩便などによって、
以前のような高速のやり取りはのぞめない。
ねこにん達の力をかりるという案もありはしたが、
そのねこにん達との連絡がつかない、というかねこにん達の姿がみうけられない。
ねこにん達とて魔物の一種。
ゆえに、人々が認識できなくなってしまっただけなのだが。
ねこにん達と仲のよかったものは、その姿をいまだに認識はできている。
だが、大概の大人たちはそう、ではない。
マナを感じられなくなった。
エルフやハーフエルフ達のいっている意味は、それまで感じる事のできなかったものにはわからない。
でも、わかることもある。
なぜか、あの一件以後。
本来ならば、マナにと還り、朽ちたものなどは消えてしまうはずのものが、
例えば、抜いた雑草であったり、きちんとした手順を踏んでいない材木だったり。
本来、木々もきちんと加工されたりしていない場合、時間とともにマナにと還り、
これまではきえてしまっていた。
雑草、などといわれている台地から抜いた草にしても然り。
ゆえに、何ごとにおいてもきちんと下地をつくっておくのが必要不可欠でもあった。
だが、このひと月、それらがなくなっている。
切り倒した木々はそのままに。
切り株などはまだ命があるかぎり、これまでは残っていたりしたものの、
倒木した幹などは違っていた。
唯一、異なるといえば小さな枝など、といった代物くらいであろうか。
つまりは一定以上の太さの枝などは確実に何らかの理由がないかぎり消えてしまっていた。
例えば、その倒木に何か別の生命体がすみついたりした、という理由とかがない限り。
でも、今ではそれがない。
いや混乱しているがゆえに、あっても見逃しているだけなのかもしれない。
救い、といえばいまだに草木の成長が普通より早い、ということだろうか。
信じられないことではあるが、トリエット砂漠、とよばれていたかの地ですら、
…草木が生え始め、今ではほとんど、サバンナ状態、といえる景色になっていたりするらしい。
逆にハイマ、と呼ばれた地を中心として荒野ともいえる荒地が広がってきている、とも。
噂でそうきいている。
「これまでのように常に行き来ができる状態ではないですし。
  水蒸気船の建造をダイクさんたちに依頼してはいますが、まだできてはいませんし…」
そもそも、材料がことごとく足りない。
ゆえに、遠出する船をうみだすにはもう少し時間がかかる。
何しろ材料を、すべて、基本となるものをゼロから作り出さなければならないらしく、
部品をつくる鉄からまずは生成する必要がある、とのことらしい。
かといって、手掛けている事柄はそれだけでは当然なく。
それらの技術提供というかやりかたを、ドワーフ達が人にと伝え、
また、そういった技術者であったヒトたちもまた協力し何とかしようとしている今現在。
今をいきているものたちの中で、それぞれが自分にできることを模索している。
そんな中、どうやらそれぞれの主要ともいえる場所で一息ついたというのもあり、
一度、それぞれの町や村などの首脳会議のようなものをひらき、
今後の話し合い、そしてこれからの世界のありかた。
そういった話し合いをもうけたい。
そう、クルシス側から…地上におりた彼らは、クルシス、という名を改めてはいるが…
だが、永らくクルシス、で信仰していたゆえに、人々の認識はそうそうかわりはしない。
天使達は、女神が人になるといって地上におり、
そんな女神を助け、保護し見守ることをえらび地上におりてきた、ということもあり、
自分たちは天のみ使い、ではなくなったのだから、もう天使ではない、といい。
彼らは自分たちのことを、今ではこうよんでいる。
”フェザー・フォルク”と。
なぜその呼び方になったのかをしる一部のものは、何ともいえない微妙な表情をするしかなかったが。
天使の翼・・・透き通った翼をもつものにしろ、鳥の羽のような翼をもつものにしろ。
透き通った翼をもつものは、より女神マーテルと、女神ピッフォードの加護が強い証として、
よりフェザー・フォルクとよばれる元天使達の間でも上位種、ととらえられているらしいが。
そんな細かなことは一般のものたちには知る由もない。
「布を新たにつくりだすにしても、まずは、綿などから紡ぐ必要があるからな」
救いは綿花も成長が早い、ということだろう。
だが、それらはどうしても服などといった需要の高いものにまわされ、
どうしても、他の用途に使える品は後回しになっている。
今では子供たちですら、時間があれば綿花より、糸を手や、木でつくられた折り機にて紡いでいる現状。
リーガルの台詞につづき、ゼロスが溜息とともにそんなことを言い放つ。
豊かさになれてしまっていたテセアラの民からすれば、今の生活は原始的、といえるであろう。
でも、生きている。
自分たちが女神の奇跡によって生かされたのだ。
そう信じているからこそ、人々はまだ頑張れている。
協力しあう大切さもあの騒動の中で、今を生き残っている人々は学んでいる。
生き返ったものたちも、基本はそういった協力しあう中、他人のために命をおとした。
そういったものが大多数。
ゆえに、今のところ自分さえよければいい。
そんな傲慢な考えをもつものは表だってはあらわれていない。
そんなことより、皆が皆、生きることにひっしで、生きるために協力しあう方法をとっている。
以前のように細かな加工をするような大がかりな建物などもいまだにつくれてはいない。
それでも、レザレノのつちかった知識と技術。
それらをおしみなくレザレノはできうるかぎり提供はしているつもり。
…もっとも、移動手段が限られているせいでその提供もごく限られた範囲となってしまっているが。
「簡単な帆船であるならばもう少しで量産が可能となっている。
  我がアルタミラのある地は、どういうわけか材木類には困っていないからな」
近くにおそらくは、というかみえている範囲の大陸に、
モーリア坑道のある山脈が位置しているのが大きいのであろう。
何しろ普通のイカダだけでも行き来がしようとおもえばできる距離。
それらの木々をつかって、さすがというか何というか。
ドワーフ達が簡単な橋をも今現在はつくりだしていたりする。
「メルトキオのほうは、ほとんどが平原、でもあるからな。
  とにかく、まずは開けた地でたべられそうな野菜類など。
  それらを量産してるってとこだな」
メルトキオそのものには、そういった農家といったものを営むものは住んでいなかった。
それが痛い。
ほとんどが輸入にたよっていたメルトキオの…首都のありかた。
貧民街にすむものたちは自分たちなりに食事を確保しようといろいろやっていたらしいが。
マナを吸い上げるためにほとんどのものが殺されてしまっていた。
蘇れたのはほんの一部。
彼らに生きる意志がなかったのか、それとも魔族がかかわっていたからなのか。
それはゼロスにもわからない。
だが、生きる意志のないものは、蘇ってはいない。
ウィノナがいっていたように。
生き返ったものにもどうやら条件というものがあったらしい。
マナを理不尽にとりあげられ死んでいったものたちは、
ほとんどが、貴族を、金持ちを助けるためにじぶんが利用されたということを認識していた。
何でもあのカプセルにいれられるとき、ご丁寧にそう説明をうけていたらしい。
それは生き帰っていたものからゼロスがきいていることなので間違いはないであろう。
生き返るか。
それとも、あらたに別のものに転生するか。
家族を、大切なものすらをも失っていたものたちは、転生、を選んだ。
理不尽な世の中に生き返ることを拒絶して。
各、主要であった町などに天使達がお告げ、としてミトスの”案”を告げにこなければ、
まちがいなく人々は大混乱に陥っていたであろう。
たとえ、かの戦いにおもむいていたものの言葉があったとしても。
信じている天界のお告げ…しかも正式な、の宣言を疑うものなど、まずいない。
「――首都を遷都しようか、という声もあがっております。
  今の状態では、たしかに。移動手段というか交通の便や様々な面で不便ですから。
  …このたびの会合の結果、になるのでしょうけどね」
すでに、シルヴァラント側の代表と、一応、みずほの民を通じて手紙のやり取りはしている。
すべての発端が、シルヴァラントとテセアラ、その二つの国の争いが原因であったのであれば。
たとえ自分たちがしらない、古の出来事であったとしても。
再び、その争いを起こさない証として。
でもその記憶を風化させないように。
クルシスが見届け役となって、新たなそれぞれの国の名をつけよう。
すでに、国…メルトキオや他の場所で新しい国の名の案はうけつけている。
あとは、どの名にするか、のみ。
テセアラ、という国だけではない。
シルヴァラント側にしても然り。
新たに国を興すにあたり、名はどうしても必要。
でも、かといって、シルヴァラント、といっていたものは、すべての大陸を称していたもの。
テセアラ側にしても然り。
たとえそれが、四千年前、それぞれの国がもっていた領土というか収めていたという大陸であったとしても。
クルシスが地上におりてきたように、自分たちもまた新しい歴史をはじめるべきだ。
女神の意志をうけ、新しい、未来を紡いでゆくために。
だからこそ、彼らはきめた。
テセアラ、という国の名を、とある”もの”に預けよう、と。
シルヴァラント側にしてもそう。
…ちょうど、ふたつになっているのだから、その象徴としては文句のいいようがない、と。
空に寄り添う、ふたつの月。
二つの月を、二つの国家にみたて、今後ともに共存してゆく。
その意味合いをこめて。
これまでも、それぞれの地で呼んでいたがゆえに、人々にも受け入れられるであろう。
そういう思惑のもと。
そして今日。
この世界の、統合されたこの世界の、新たな名が決定される会議でもある。
新しき、歴史の始まりの会議――


アセリア歴元年。
聖地セレスティザムで執り行われた聖なる会議は、
シルヴァラント王家のものと、テセアラ王家のもの、
そしてクルシス…天界の大天使の見守る中で執り行われた。
新しく芽吹いた、大樹…銀の大樹ユグドラシルの元にて。
それは、かつて、大樹カーラーンのもとで二つの国が停戦協定を結んだときのように。
今後、天使達は人に転生するであろう女神マーテル様と、その弟君であるという
勇者ミトスを探し、保護する活動にいそしむ、という。
女神マーテルと、大樹を保護するために精霊に転生したという姉神。
姉神がいうには、ユリスは完全に封じられたわけではない。
常に人のこころにユリスの種はひそんでいる。
ゆえに、人の心に悪意があれば、幻魔…あの異形のものが再びあらわれる可能性がありえる。
ならば、その悪意に元、天界の住人である我らがたちむかおう。
女神の意志に準ずるがごとく。
クルシスの四大天使の一人、ユアンという人物がそう、宣言した。
同じく、四大天使の一人であるというクラトスが人々を導く役割…
すなわち、人々を守り、導く、騎士、という立場の騎士団長になる、とも。
銀の騎士団、聖樹騎士団、とよばれる組織の成り立ちは、すべてはそこからはじまった。
最後の女神マーテルの意志を体現し、その言葉を伝える役割をもっていたという、
シルヴァラントの神子コレット、そしてテセアラの神子ゼロス。
彼らは女神マーテルが人に転生したのをうけ、というかするのをうけ、その役割をとかれた。
というより、これまでは眠っている女神の意志をうけとる融和性の高いもの。
それが神子、という存在であったという。
だが、その女神は、もはやいない。
人々の可能性を信じ、女神は人にとくだった。
ゆえに、対の神子、ともよばれる神子達はいう。
ならば、自分たちは女神マーテル様が人としてうまれてきたときに、
迫害のない、差別のない平和な世界をつくるため、自分たち自らが布教していきましょう。
すべては、女神マーテル様の意志のままに。



「アセリア…かぁ」
「えっとね。テセアラ、そしてシルヴァラントの象徴でもあったイセリア。
  その二つの名をもじったらしいよ?メルトキオの名もあがったらしいんだけど。
  ヒルダ姫様が、すべての元凶は自分達王家、というか父の優柔不断が招いたことでもあるから。
  それはふさわしくないって。ならば、歴史ある国の名をつかってほしいっていって」
そこはとある一室。
きらきらとした太陽の光がふりそそぐ。
窓からは、太陽の光に反射した銀の大樹の姿も。
ここは三階のとある一室だというのに、
ちょうど、木々の葉が始まる位置であるというのは、どれほど大樹がおおきいのか。
それを指し示しているといってもよい。
「というか。あんたら…今日が会議だって、わすれてたんだろ?まったく……」
あきれる、とはこのことでしかない。
たぶん、ロイド達は絶対に今日という日を忘れていそうだ。
そう、クラトスから報告をうけ、まさか、とおもいつつ、
…しいなも不安をぬぐいきれなかったがゆえ、
重要な会議ゆえに抜けられない、というクラトスにかわってしいながロイド達を探し出した。
…児雷也の嗅覚にたよっての捜索、であったが。
何しろこの二人。
ロイドとコレットは常に一か所におちついていない。
彼らは旅がおわり、村がおちつくとともに、世界の人々をたすける、
といって旅にでてしまっている。
正確にはロイドがそういいだし、コレットがそれについていった、のだが。
もし、エクスフィアがまだのこっているのなばそれを回収したい、とはロイドの談。
だが、重要な日まですっかり忘れている、というのは彼ららしいというか何というか。
「ゼロスに感謝するんだね。シルヴァラントの…いや、再生の神子は。
  女神マーテル様に祈りをささげるために神殿の最奥にこもってる。
  そういいわけしてくれたから、あの場にあんたがいないことを違和感もたれなかったんだから」
しいなが、二人をみつけだし、どうにかこの地につれてきた。
つれてきはしたのだが……
すでに一日目の会議はおわってしまっており、ゆえに今日の内容を簡単に二人にと説明したところ。
一応、神子、という立場もあいまって、コレットが直接、ミトスから説明をうけたのがつい先ほど。
ロイドは、やはり忘れていたということもあり、リフィルから説教をうけてようやく解放されたばかり。
リフィルとジーニアスもまた、ハーフエルフ達が迫害されることのないように。
また、マナが紡げなくなり感じられなくなった原因。
それを皆が皆、理由をしっているわけではないかもしれないので困惑しているかもしれない。
そんな人々の少しでも役にたちたい、といって、ロイドとコレットと同じく旅にでてしまっていた。
イセリアの村には、新しい教師がパルマコスタより派遣されてきており、
だからこそリフィルは安心して旅にでられていたといってもよい。
それでも、リフィルは今日という日を忘れているはずもなく。
ちゃっかりと、前日にはすでにこの聖地にたどりついていたりする。
「ロイド…あんたも一応、その翼があるかぎり、天使の一員、とみなされるんだからさ。
  …もう少ししっかりしなよ。せめて重要な日くらいは忘れないでおいとくれ。
  あたしだっていつでも都合がつくわけじゃないんだよ?」
今、彼らを見つけ出せるとすれば、ロイドの気配がする、といって、
その勘だけで居場所をつきとめるクラトスか、児雷也の探知能力をもってして見つけ出すしいな。
おそらくこの二人、くらいであろう。
もしくは、ネコニンギルドに依頼をしてみつけてもらうか。
ロイドを含め、しいなたちも一応、ネコニン達の姿は認識できている。
もっとも、他のものには認識できていないので、誰もいない場所にひたすらに話しかけている。
そのような光景にしかうつりはしないだろうが。
「そ、そういえば、せんと…って、何だ?」
「…ロイド~…はぁ。ったく、つまり、首都を、メルトキオをどこか別の場所に転移させる。
  ってことさ。今のところ候補地は、この聖地がある大陸らしいよ?」
ロイドの台詞にしいなは溜息をつかざるをえない。
というか、やはりいまだにどうやら勉強は苦手であるままらしい。
いや、リフィルの手を離れてしまっているからこそ、学ぼうとしていないのかもしれない。
希望は、山を挟んだ、この近くがいい、ということらしいが。
どうなるかはしいなはわからない。

それは、未来において、ユーグリットの都、とよばれる地の始まり。

「アルタミラも、せっかくだから名前をかえようっていう話があるそうだしね」

アルヴァニスタの都。
かの地はいずれはそう呼ばれる地。
でも今はまだ、始まりの…それぞれの地の建国の時期、でしかない。

「ロイド。この地に新しい学校というか教育施設できるらしいし。
  あんた、学びなおしたほうがよくないかい?リフィルも打診されてるらしいしね」
それらは、これまで感情を失っていた天使達のための学校であり、
また、新しい神話を根付かせさせるための教育機関。
「うげっ!?」
「とりあえず、明日の予定をいっとくよ?明日からはきちんと参加するように!」
「「は~い」」
本当にわかっているのか。
この二人は。
というか、あのロイドの告白まがいの求婚まがいの言葉をうけても、
この二人、あれからまったくの進展がない。
唯一あるとすれば、二人で旅をしている、ということくらいだろうが。
それでも…以前とかわらないようにみえるのは、おそらくしいなのきのせいでは…ない。


                          ――エピローグへ~

pixv投稿日:2018年11月○日某日(Hp編集:2018年5月6日(日)開始

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あとがきもどき:

ちょっと短い?ですけど、ひとまず区切り。次回でようやくエピローグ、です。