ドーム状となっている透明な通路を抜けてゆくことしばし。
やがて、先ほどの天使が言った場所なのであろう場所にとたどり着く。
「あ、このエリアにたしか、自動販売機とかあったとおもいますよ」
「とりあえず、物資補給ができるかどうか確認して、
あとは、ここにあるというこのウィルガイアの全貌。
それがみれる管制システムにリンクできる装置をさがしましょう」
エミルの言葉をうけ、リフィルがざっと周囲を見渡す。
このあたりは先ほどの円状の足場が透明な橋でつづられている場所。
それとは異なり、しっかりとした足場が形成されているらしい。
階段は最低限だけあり、それ以外は移動式の床で上下に移動するようになっている。
もっとも、ここにいるのは全て翼を生やしたものたちばかなりなので、
彼らがその移動式の床を使用することはほぼ皆無、なのであるが。
「?なぜ人間がいる?私の思考対象外だ。問い合わせる必要があるな」
ふと、近くにいた天使がたちどまり、
何やらそうつぶやきつつも、小さな箱?のようなものを小さくいじる。
そして、
「む。現在、送信ラインはクラトス様により使用制限がかかっている。
効率をなすため、制限解除までお前達のことは思考から消去する」
何やら淡々といいはなち、まるで一行をみなかったかのように、
そのままふわふわとその場からいなくなってゆく男性体の天使。
「何ですの?今のヒトは?」
そんな姿をみてセレスが思わず首をかしげるが。
というか、一方的にいって、一方的に納得した、というような感じをうけた。
そのまま進んでゆくと、
「うん?人間か。しかし捕獲の命令をうけていない以上、私の行動に影響するものではない」
ふと擦れ違った天使の一人がふりむきながらそんなことをいってくるが、
そのまま興味をうしなったといわんばかりにそのまま何ごともなく通り過ぎてゆく。
そんな天使達の様子をみて、
「…何だか、このあたりにいるやつは、心を失っているかのようだね。
命じられたことしか実行しない。っていう感じをうけるよ」
実際、命令をうけていないから、という理由で我関せず、という印象をうけた。
それは確かに助かりはするが。
さきほどやけに人間臭い天使に出会っているがゆえに、
そのギャップがとてつもなく印象深い。
もしもしいなたちの世界、テセアラに機械人形などがよりよく普及し、
しかも言葉を話すようなものがあったとするならば、
まちがいなく、ロボットのようだ、というであろう。
心をもたない、インプットされたままのことをもくもくとこなすもの、として。
「さっきの天使はともかくとしてさ。コレットが今の二人のような天使。
あんな天使みたいにならなくて本当によかったよ」
しいなの言葉に思うところがあったのか、マルタもしみじみとそんなことをいってくる。
今、この場にいるものたちはゆっくりとではあるが自我を取り戻していっているが。
もともと彼らはその自我を精霊達に取り込まれかけ、完全に失っていた。
どれくらいの時をここで過ごしていたのかはわからないが。
自分で何かを考える、という思考をもっていたものはほとんど限られた数しかいなかった。
だからといってそんな事実をエミルは教えるつもりはまったくない。
こうして天使化しているものでもきちんと自我はあるのだ。
とロイド達におもわせる。
それが一つの今回のもくろみでもあるのだから。
どうもロイド達は天使、というだけで敵、というイメージをもちすぎていた。
確かにロイド達からしてみればそうなのかもしれないが。
しかしもうすこし、今後のためにも柔軟な思考をもってほしいという思いもある。
そしてそれはミトスにおいてもいえること。
ミトスがこの変化に気付くかどうかはわからないが。
常にミトスが組織のものたちの変化に気をくばっていたとするならば、確実に気付くであろう。
彼らが、天使化しているものたちが自我を取り戻していっている。
というその事実に。
そして理解してほしい。
無機生命体化に強制的に変化させたとしても、必ず自我は芽生えるのだ、と。
そして、幾度もいっている差別というのは心が生み出すものであり、
ゆえに、同じ無機生命体に変化させたとしても意味がないのだ、と。
この部屋の隅にはいくつもの機械らしきものがみてとれる。
しかしどうやらリフィル達がもとめているものではないらしい。
注意深く観察しつつ、すすんでゆくことしばし。
ふと。
「ユグドラシル様はなぜ、大地延命計画を終了なさらないのか?」
「やはりマーテル様の復活がまだ確定していない今。
その時期ではない、ということではないのか?」
何やら少し先のほうで天使達が世間話をしている会話がきこえてくる。
「ふむ。なるほど。確かに」
「ユグドラシル様が千年王国をおつくりになるためには、
マーテル様の復活は必要不可欠だ」
「なるほど。それまでは大地延命計画を続行しておかねば、不安要素が増えるということか」
「然り。マーテル様さえよみがえれば、世界は一つにもどるのであろう。
ユグドラシル様の威光のもとに、な」
そんな彼らの会話をききつつも、そのままその横をすり抜ける。
「これは…おそらく、これ、ね」
ふとリフィルがそれらしき装置をみつけ立ち止まる。
と。
「ぷはぁ。ようやく口がきけた」
どうやらリフィルが先ほどかけたサイレントの効果。
それがとけてしまったらしく、ロイドが大きく息を吐き出しつつも、
何やらいきなりそんなことをいっているが。
「ロイド。いらないことをいうようなら、またサイレントをかけるわよ?」
そんなロイドをちらり、とみて淡々といいきるリフィル。
「げ。勘弁してくれよ。先生」
もうあんなのはごめんだ。
話そうとしても言葉がでないそのもどかしさ。
でも、ともおもう。
それをコレットは経験しているんだよな、とも。
自分が言葉を話せなくなってからあのとき自分がコレットにいっていた言葉。
それが時折ひどく残酷であったのではないか。
と今さらに理解できる言動がいくつかあった。
言葉ではどうとでもいっていたが実際のもの、として感じていなかった証拠だよな。
ふとロイドはそんな思いに囚われるが。
「どうやらこれでこの都市の情報がひきだせそうよ。
天使言語でかかれているわ。この装置が情報バンクだと」
モニターにそのような言葉がかかれている。
それは壁際におかれたちょっとした鏡台のようにみえるもの。
画面そのものは手前にある大きめの画面に映し出されるらしく、
手元にあるタッチパネル式の文字をうちこむことにより、
様々な情報をどうやら取りたすことが可能、らしい。
「先生、うごかせそうか?」
「やってみるわ」
いいつつも、リフィルがかちゃかちゃとその装置をいじりだす。
それとともに、ピッ、という音とと、ヴッン。
という音ともに正面にある大きめのモニターに画面が映し出されてゆく。
「成功よ。これで情報が引き出せるわ」
いって、かちゃかちゃとリフィルがいじると、どうやら地図らしきものが映し出される。
どうやらリフィルはこのウィルガイアの地図。
それにアクセスしたらしい。
今現在いる位置、そして目的の場所。
モニターに映し出されるそれをみながら、しっかりと確認をする。
「どうやらこの先に、緊急用の出入り口があるようね」
いってリフィルが指し示すのは、階段から降りた先にとある足場。
そこからこの地図によれば、
移動する床のって転送装置のある場所まで移動することができる、らしい。
「まって。…これは」
場所がわかればこっちのもの。
そんなことを思いつつ、リフィルがふと別の項目にと目をとめる。
そこには、何やら重要っぽいようなことがかかれている文章が三つ。
「これは重要かもしれないわ。画面に映し出すわね」
ぴっ。
リフィルがいいつつ、映し出された画面には、何やら項目っぽいものが映し出されており、
しかしロイドにはその言葉の意味はわからない。
「これって?」
「天使言語だね」
ロイドがひたすらに首をかしげている横で、ジーニアスがぽつり、とつぶやく。
「天使言語でかかれてるんですね。
えっと、項目一、デリス・カーラーンについて。
項目二、大地延命計画とは。項目三、エターナルソードについて
…って、先生、これは?」
とまどったようなコレットの台詞。
そこに書かれている項目の三つは天使言語でそのように書かれている。
「重要なことかもしれないわ。一つ一つみていってみるわね。
皆にもわかるように、音読しつついくわね」
ちらり、と周囲をみてみるが、この場にいる天使達はこちらのことを気にかけていないらしい。
どうやら命令されていないから、という理由なのか、そのあたりはリフィルにもわからないが。
しかしこの状態を利用しない手はない。
デリス・カーラーン
デリス・カーラーンはエターナルソードが発する力場に守られている
この力場が消滅した場合、デリス・カーラーンは惑星の引力から解放され
再び彗星として宇宙をめぐることとなる
大地延命計画
マナの消費量を最低限に抑え、大樹の種子と世界を維持するためには、
世界を二つにわける必要があった。
さらに精霊の力によって楔を守護させ、マナの流れを調整することで
世界が必要以上に繁栄をすることも抑えられる
大きな繁栄は魔科学の発展と、無意味な戦争を引き起こす可能性がある
指導者ユグドラシルによって提案、実行されたこの大地延命計画は
世界を維持するシステムとして大変すぐれたものとなっている
エターナルソードを有し、力としている指導者ユグドラシルだからこそ、為し得たといえるだろう
エターナルソード
オリジンが契約者である指導者ユグドラシルに与えた魔剣
その力は強大で時間と空間を操る力を有し
指導者ユグドラシルの力の源といえる
指導者ユグドラシルが世界を二つにわけることができたのも、
エターナルソードの力によるものである
もしこの剣がうしなわれれば指導者ユグドラシルの力は大きく低下し、
塔の内部に位置しているここウィルガイアも崩落の危機を迎えることだろう
それぞれの項目をクリックし、表示させたリフィルがそこにかかれている天使言語の内容を朗読する。
そこにはそれぞれそのようなことがかかれているらしく、
どちらかといえば彼らの主観的なことが書かれている模様。
そもそそも、エターナルソードに関してはかなり間違った解釈といえる。
魔剣、ではなくて精霊そのものだ、というのに。
どうやらこの情報ではそれに触れてはいないらしい。
というか、この様子ではその事実をミトス達以外は知らされていない可能性が高い
どうりで、ともおもう。
先ほどの天使の一人がレインのことをモノのような物言いをしていたが、
本当の物質でしかない、とおもっているのならばあの言動もうなづける。
それらを確認しつつも、リフィルはすばやく懐からメモ帳をとりだし、
どうやらテセアラで購入していたらしい…
それにとしっかりと、今の言葉をかきだしていっている。
みれば、アステルも同じようにメモ帳をとりだし、
それらの言葉を一字一句間違えないようにと記入しているのがみてとれる。
「とりあえず、自動補充機はこの先のようね」
メモをし終え、そしてそれらの場所も確認したリフィルが奥のほうをちらりとみる。
自動補充機はこの奥にある動く床にあがった先にある二階にと位置している。
今後何があるかわからない。
念のためにさきほど、自動補充機という項目をクリックしたところ、
取り扱い商品の一覧もデータとして含まれていた。
グミ系統が全てあり、またライフボトルやバナシーボトル。
そしてスペクタクルなど。
ライフボトルのほうは気絶したものを瞬時にきつけるための薬であるが、
それらはまあリフィルの術でどうとでもなる。
パナシーボトルは状態変化を全て解除させるもの。
スペクタクルに関しては敵の情報を調べるのにうってつけ。
もっとも、魔物とまったく戦闘にならない以上、必要がなくなり、
ゼロスが別の意味で使用しまくっているようではあるが。
まさか、スペクタクルで相手の情報、
すなわち、個人のスタイルの鑑定などもできる、などとリフィルは思ってもみなかった。
ゼロスいわく、スペクタクルを使用するときに、何が知りたいのか。
強く念じればそれらもかの力でみることができる、という。
実際リフィルも以前試してみたが実際にみえてしまい、
即座にゼロスにリフィルが使用禁止令をだしたほど。
はっきりいって教えてもいないのに、体重、スリーサイズ。
その他もろもろがみえるとわかった以上、ゼロスには使わせられない。
絶対に。
主に女性の安全のためにも。
リフィルがそのように判断したがゆえのゼロスのにみ対しての使用禁止令。
もっとも、ゼロスはことばたくみにロイドをだまし、
どうやらそれでも懲りずに情報をあつめようとしていたらしいが。
「グミが充実しているようだもの。ここで手にいれられるだとたすかるわ。
滅多に手にはいらないレモングミやパイングミ。ミックスグミにミラクルグミ。
それらもどうやらあるようだしね」
ガルドが必要なのかどうかまでは書かれていなかった。
しかし、みるかぎり、天使達はそういった何かを買ったりする。
というのがみてとれない以上、無料、という可能性のほうが高い。
ならばここで補充できるだけというか手にいられるだけ手にいれておいたほうが、
後の旅にかなり有利になるのは必然。
そのまま、その奥にいき、動く床にとのりて、二階部分へと。
「とりあえず、これですね」
いいつつ、エミルがぴっ、とその装置らしきものを起動する。
【必要なものを選んでください】
それとともに、目の前にある補充装置から機械的な音声がぽつり、ともれいでる。
「うわ!?それ、しゃべれるのか!?」
おもわずロイドが驚きの声をあげているが。
「音声付なんでしょ。で、リフィルさん。どうします?
一応、それぞれ最高二十個まで可能みたいですけど」
どうやらこの場につかわれているものは、
99の部類ではなく、最高20個の部類であるらしい。
これらは品物を選ぶときちんと内部にて袋に内装されて
一つ一つの銘柄別にでてくるようにとなっている。
そして一気に様々な品を頼んだ場合はそれぞれ小袋にわけられた形で、
大きめの袋にいれられでてくるようになっているが。
その袋も簡易的な空間拡大の術がかかっているものが使用されるがゆえ、
袋的に大きさはさほどない。
片手の上にぽん、と乗る程度の大きさの袋にまとめられでてくるようになっている。
中身が全てきえたとき、袋もまたマナに還るように設定してあるがゆえ、
あるいみかなりエコといえばエコ仕様。
ちなみにこれらのアイデアも彗星にて移動するときラタトスクがおもいつき、
面倒なのでシステムに簡単に選ぶだけで設置できるように、と組み入れていたまでのこと。
他にもトリートとかいろいろといれていたものがありはしたが。
それらはさすがに優遇しすぎです、というセンチュリオン達の意見もあり、
ラタトスクの許可がないかぎりは使用不能、というようにしていたはず。
ここに設置されているのはその初期段階に試しにてつくったもの。
そうとみて間違いないであろう。
何しろ品物の種類がほとんどグミばかりで、他のアイテムが少なすぎる。
ちなみにこれらのグミもこの彗星におけるマナを利用しているがゆえ、
マナを凝縮し、この機械そのもので製造しているので材料費は無料。
そもそもこの機械における理そのものをラタトスクがそうしているがゆえ、
どうやってできているのか、という原理などはとことん無視されているといってもよいこの機械。
これらの機械の中には数多の微精霊達が常に活動しており、
正確にいえばこれらが具現化された瞬間から、というべきか。
使用者が選んだ品をそれぞれ作成するようになっている。
たしか、初期段階のそれらは、元々固定した品をいれており、
それらを複製した品々を取り出し口からだすようにしていたはず、だが。
エミルがそんなことを思っているとは夢にもおもわず、
「とりあえず、全種類、いけそうかしら?」
「わかりました」
そのまま、ボタンの下のほうをクリックし、全種類、○○個づつ。
そのようにぽちぽちとエミルが入力するとともに、
【全ての商品。二十個づつ。数が複数なので子袋にわけ、一つの袋にて配布します。
なお、中身がなくなりしだい、この配布した袋はマナにと還ります】
そんな音声とともに。
ガコン。
下にある取り出し口から一つのちょっとした袋が出現する。
「「「いや、袋がマナに還るって……」」」
今機械から紡がれた言葉に何やら反応しているアステル、リヒター、マルタの三人。
「?つまり、どういうことなんだ?」
ロイドはよく意味がわかっていないらしい。
「たしかに」
リフィルが袋の中をのぞきこむと、小さな袋がいくつもみえ、
念のために一つの袋をとりだせば、空間の術でもこの袋にはかかっているのであろう。
小さな袋からまた同じくらいの大きさの袋がでてきて、
その袋をのぞきこめば、きちんとグミがしっかりとはいっているのがみてとれる。
「さあ。長居は無用よ。いきましょう」
いいつつも、その場から離れ、歩きだすリフィル達。
歩いてゆくことしばし。
「あら。めずらしい。ディザイアン階級のひとたちね。
あなたたち、そこの下級天使の子達はどうして人間形態でいるの?
ここ、ウィルガイアは天使形態でないとつらいでしょうに」
ふと、一行に気がついた、のであろう。
女性らしき人物がそんな風に声をかけてくる。
「人間がいるのはいったい…」
「とある役目にて護送中よ」
とまどったような台詞にきっぱりとリフィルがいえば、
どうやらそれ以上は考えることを放棄したらしく、
「それにしても、あなた達の服装、それぞれかわっているわね?それだと、こんがらない?」
すこし首をかしげ何やらそんなことをいってくる。
「?どういうことなんですか?」
そんな目の前の天使、女性形態の天使、ちなみにその服装は、
どちらかといえばマーテル教会の祭司の服を白と基調にしたようなもの。
そんな服をきている女性にとコレットが首をかしげつつといかける。
「ああ。あなたはまだ部署がきまってないのかしら?
だって、私たち天使形態のものにとって、服装なんて階級。
そして所属部署を示す記号のようなものでしょう?
だって、天使体となれば暑さや寒さは感じない。
それらの機能を自力で調整しコントロールできるようになるのだから。
あなたがたはまだ服が支給されてないのかしら?」
ちょん、と首をかしげコレットとゼロス、そしてちらり、とプレセアをみつつ。
「そっちの子はまだ完全に天使化を果たしてないようだしね」
プレセアの気配も天使に近いが、まだ完全ではない。
しかし、天使化しているものにはわかりはする。
それゆえの問いかけ。
それに、とおもう。
このピンク髪の少女は表情が硬い。
だとすれば、おそらくハイエクスフィアの影響をうけているのは間違いない。
「もしも忘れられていたらいけないから、所属部署の服装担当者に話すべきよ。
ときどきあるのよね。上が新人の服を用意しわすれることって」
どうやら、そういうことが時折、あるらしい。
あるがゆえにあまり不信感を抱かれていないらしい。
「ま、用事がすめば考えてみるわ」
そんな女性の台詞にゼロスがさらり、と何やらいっているが。
「ぜひともそうして頂戴。あと、その人間形態はやめたほうがいいわよ。
デリス・カーラーンほどじゃないけども。
ここ、ウィルガイアも人間形態で過ごすには厳しい環境でしょうし。
だってその形態のままだと、食事や睡眠。排泄が発生するでしょう?
そこにいる人間にあわせている、というのなら、
この先にあるリフレッシャーで体力を全開するのもお勧めよ。じゃあね」
それだけいいつつも、ふわり、とその場から飛び立つ女性天使。
彼女なりのどうやら善意であったらしく、忠告をしてきたということは。
完全にゼロスやコレットを下級天使、と信じてやまない証拠といえる。
「…あまり擦れ違うのも問題がおこりかねない、わね。いそぎましょう」
いいつつも、先ほど確認した緊急脱出用の転移装置。
それがあるであろうこのエリアの階段下。
そこにある足場にとリフィルがいい、一行は足早にと移動することに。
階段を降り切った先。
その先にあるのは下がまったくみえない吹き抜けの空間。
その遥かなる反対側に道らしきものがみてとれる。
「地図で示されていたのは、あそこよ」
いいつつ、リフィルがそちらを示す。
そして、その先にある動く床。
その床に乗り込むようにと指示をだし、そこにあるボタンをぽちり、とおす。
ちなみに、ボタンは床の中心にはめこまれており、
強く踏むことにより床の移動が起動する仕組みとなっており、
リフィルが全員乗り込んだのを確認し、ぽちり、とおもいっきりボタン、
正確にいえば模様のようにみえるそれ、少し突起となっているそれを踏むとともに、
ウィィン。
ちょっとした音とともに、ゆっくりと足元の床が動きだす。
そのまま床が移動しおえ、やがて反対側にあった足場にと接続される。
このあたりはどうやら完全に居住区からはかけはなれており、
下をみおろせば、やはり吹き抜けの穴、そしてその横には壁しかみあたらない。
まっすぐにのびている廊下を進んでゆくことしばし。
やがて突き当たりにとたどりつき、
そこにみおぼえのある転送陣のようなものがみてとれる。
「おそらく、ここが緊急用の出口だね」
しいながまじまじとそれをみつつ、周囲を確認しながらもそんなことをいってくる。
「よし。みつからないうちに急ごう」
「そうね」
いつリフィルのいった嘘がばれるかわからない。
通信システムが制御されているとか天使たちがいっていたがゆえ、
そう簡単にばれる、ともおもえないが。
あの天使たちがクラトス、そしてプロネーマに直接確認すればともかくとして。
下っ端のものが普通直接上のものに問い会わすことなどまずありえないだろう。
それがリフィルなりの予測。
「念のため、周囲をみてくるね~」
ふわり、とその背に翼を展開し、コレットがその場に浮き上がる。
「あ、コレット!ちょっとまちなさい!」
リフィルがとめるよりもはやく、ふわふわとコレットは飛び上がる。
「ん?何だ?」
「おい。あれはもしかしてマナの神子じゃあ!?」
ふと上空からそんな声がきこえてくる。
「ふ、ふぇぇえ!?」
「コレット、もどれ!」
すばやくロイドが思わずさけび、わたわたとした様子でコレットもあわててもどっくてる。
「まずいわね。みつかったわ。いそぐわよ!」
本当ならば安全性を確認してから移動したいが。
どうやらそうはいってられなくなってしまった。
コレットをみて神子、とわかったのは見知ったものがいたからなのか。
ここまできて運がわるいというか何というか。
「私は神子のあとをおう。お前はユグドラシル様に報告しろ!」
「わかった!」
それぞれがあわてて転移陣にはいったその直後。
そんな声がロイド達の耳にととどいてくる。
彼らが転移陣から消える直前、ばさばさと飛び降りてくる天使達の姿がみてとれるが。
しかし、彼らがたどり着くよりもはやく、一寸の差ではあったものの、その場から姿をかき消してゆく。
「ここは?」
転送陣を移動して、たどり着いたはどこかの部屋らしき場所。
円形状の部屋の中心にどうやら転送陣があるらしい。
それぞれ無事にたどり着いているのを確認しつつ、
周囲をみわたしながらもロイドがぽつり、とつぶやいてくる。
「それより。こんなところでのんびりしてたら。追手がくるんじゃないの?」
マルタがさきほど消える間際にみた光景。
たしか、天使の一人が自分が追うとか何とかいっていたような。
それゆえに懸念事項をぽつり、とつぶやけば、はっとした表情をうかべるロイド達。
ざっとみるかぎり扉は三か所。
手前の壁は透明なアクリルで創られており、外が完全に透けてみえるようになっている。
うち、二つの扉はしっかりとしまっているが、もう一つの扉はひらかれ、
その先に階段らしきものがみてとれる。
「とにかくいきましょう。ここでじっとしていてもつかまってしまうわ」
たしかにリフィルの言うとおり。
リフィルの促しをうけ、そのまま階段のほうにあるきだす。
「エミル?」
「あ。ううん。何でもない、いこっか」
ふとみれば、その場にちょこんっとかがみこんでいるエミルの姿。
靴のあたりに手をかけていたのをみるのに、紐でもとけていたのかもしれない。
マルタはそうおもうが、実はそうではない。
少しの時間、この転送装置の起動をエミルが干渉し、とめたまでのこと。
これで少しの時間がかせげるはず。
エラーのようにしたがゆえ、まさかこちらが何かした、とは思われないであろう。
機械というものは、何事もいきなり壊れたり故障したりする、というのもはつきもの。
もっとも、ここらにある全ての機械類はマナを主体としてつくっているがゆえ、
エミルの意識一つでどうとでもなる、という理由があるにしろ。
階段をそのまま降りてゆくと、ウィンウィンという音が周囲からきこえてくる。
みれば、サイビットやハンマーナックル達の姿が。
彼らもまた機械生命体。
こちらにきづいたのか、それぞれが立ち止まり、壁際にそっと移動しているのがみてとれるが。
本来ならば彼らは侵入者を排除するように、とここに配置されていたときに命令をうけていたらしいが。
しかし、命令の優先度からいけば、当然、王に勝るものはない。
「ここも、仕掛けがあるようなら、行く手の仕掛け、解除してもらえるか?」
横にずれたそれらにエミルが声をかけると、こくこくとうなづきつつも、
その場から飛び立ってゆくサイビット達。
そして、一方、浮いているサイビットとは別に、ハンマーナックルはといえば、
ウィンウィンと音をたてつつも、一行を先導するかのようにゆっくりと歩みだす。
「あ。リフィルさん。この子がどうやら先を案内してくれるようですよ」
そんなハンマーナックルの体をなでつつ、くるり、とリフィル達にむきなおり、
にっこりとほほ笑みつつエミルがいえば。
「…それは助かる、けど。エミル、それはいったい……」
さきほどの機械のようなアレに似てはいるが。
二足歩行で歩く機械の塊のようなものをリフィルはこれまでみたことがない。
おそらくは、足の上にある大砲のツツのようなものからは、
まちがいなく攻撃がくりだされる武器、なのであろうことは用意に予測がつく。
つくが、エミルに害をなすどころか、そのままなされるままにしかも、
どうみても何となくうなだれているようにみえるのはこれいかに。
この機械のような何かも魔物だ、とでもいうのだろうか。
この機械の様子は魔物達のそれらによくにているといって過言でない。
事実、これらも機械生命体であるものの、魔物の一種として理をひいている。
もっとも、これらは警備をするためだけ、に生み出した魔物達なれど。
片方の壁は普通の壁というか、マナが固定化された壁でしかないが、
その反対側の壁は青白い光を放つ透明なガラスのようなもので通路は隔てられている。
透明な壁から上下を覗き込めば、そこにあるのは漆黒の闇。
どこまでもつづく闇しか存在していない。
「え?さっきの子がサイビット達で、この子はハンマーナックルですけど」
「いえ。聞きたいのはそうでなくて…頭がいたいわ」
そういえば、この子はこうだったわね。
これまでもそうであった。
魔物の種族名や名をいってきても、きょとん、と首をかしげるばかりで。
リフィルが聞きたいことを聞き出せたことは一度たりとてなかった。
だとすれば、今回も同じようなものだ、と理解せざるをえない。
「この子はこのエリア担当みたいですから。
下の階にいくまで案内してくれるらしいですよ」
ちなみに、案内できるのは、かの通路まで、らしい。
彼ら機械生命体にとって、無重力空間はあるいみ動きにくいもの。
障壁を展開さえしていれば問題はないが。
少しでもスピードをだしたりすれば壊れる可能性がある場所は、彼らとて好まざる場所。
それにしても、とエミルはおもう。
本来ならば彗星上、もしくはその内部においていたはずのものたち。
それらをここに配置している、ということは、
あちら側の警備がどうりで薄くなっていたはずだ、と。
「よくわかんねぇけど。案内してくれるってなら、お願いしようぜ。なあ、先生?」
ロイドがそんなエミルの言葉をうけ、リフィルに懇願するかのようにじっとみつめる。
「…ああもう。わかりました。たしかに、のんびりはできないでしょうしね」
いつ、背後から追ってがかかるかわからない。
これまでの経験上、おそらくエミルがいうのならば、この機械のような何かも、
まちがいなくエミルに従うのであろうが。
しかし、ともおもう。
こんな場所にいるようなものがどうしてエミルに従うのか、と。
一人でここまでやってきたエミル。
普通は考えられない。
クルシスの拠点に一人で乗り込むことができるなど。
信じられるはずもない。
一行を先導するかのように、がしゃがしゃとハンマーナックルが移動する。
通路を右にいき、左にいき、やがて、いくつかの階段を下りたさき、
その先にある扉の前でぴたり、ととまり、背後をふりかえってくる。
ここにくるまで、幾度もナックル達などがいはしたが、
ラタトスクに気付き、彼らはそのまま道をあけるようによけているがゆえ、
何ごともなくここまでたどり着けていたりする。
「どうやらこの先が次のエリアにつづいているようですけど。
ここに注意書きがありますね」
そこには古代エルフ語、とよばれしもので、この先の忠告がかかれている。
どうやらミトスはこの施設をつくるにあたり、原語設定はそのままでいったらしい。
たしか、原語を変換する機能もつけていたはずだが。
まあ、基本、かの地において使用されていたのが
この言語だから仕方ないといえば仕方ないのかもしれない。
ぱっと見た目は何かの模様のような記号のような何か。
そこには、【この先、無重力状態。注意すべし。なお酸素あり】
そのようにかかれていたりする。
まあ、酸素がなければそれで生きているロイド達は確実に死亡するであろう。
その場合、ロイドを守っている彼女が何らかの行動をし、
ロイドもまた半精霊、として覚醒する可能性があるにしろ。
どうやら永きにわたり微精霊に寄生されていた彼女からうまれたロイドには、
半ば精霊の力もやどっているらしい。
いうなれば、自然体の彼ら人がいうところの【天使】というべきか。
精霊とヒトの間に生命を誕生させることは、
かつてそれで世界を消滅させる結果に発展したがゆえ、ここでの理には許可を出していない。
しかし、人と交わったことにより、
その理のあるいみすりぬけのようなことが起こっているらしい。
相手が普通のヒトならば、子供も設けることはできなかったであろうに。
相手がアイオニトスを取り込んでいたクラトスだからこそなしえたのであろう。
半分は同族であるがゆえになしえたあるいみ奇跡。
これがマナを操る微精霊の力、すなわち彼らいわくの天使の力。
それが産まれたときから発現していなければ、
まちがいなく産まれた瞬間に死んでいたであろうが。
幸か不幸かロイドはどうやら生まれながらにその力を宿していたらしい。
今、その力に目覚めていないのは、かの意思の中にロイドの母親がやどり、
その力を全力で封じているがゆえ。
そのことにラタトスクは気づいている。
このままずっと封じているつもりなのか、それとも成人とともに解放するつもりなのか。
まあかの力はたしかに幼き成長してきっていない体には負担がかかるであろうが。
まあそのあたりに感してはラタトスクが気にすることではないな、ともおもう。
かつてのときですら、ロイドはあのとき、まだその力をきちんと掌握できていなかった。
それはそのまま、アンナという人間が宿りし精霊石を使用していたからであろう。
…どうもアンナとともにいる微精霊もまた、自分が宿りし人間が、
子供を産み育てていたことから、情がうつっているっぽいのも問題といえる。
…害がないのならばいいのだが。
ある意味、ロイドはヒトでも精霊でも、ましてや天使でもない。
この世界でただ一つの新たな生命体、といえる存在。
「…まあ、酸素があるなら皆問題ないか」
ぽつり、とつぶやきつつも。
「この先でまた誰かにたのむから、もういい」
エミルがそういうと、その機械の胴体を深く床につけるまでおしつけたのち、
その場からガシャガシャという音とともに立ち去ってゆくハンマーナックルの姿。
「あれって、頭をさげてるのかな?」
「ある意味礼儀正しいよね。きちんと別れるときに頭をさげるなんて」
ジーニアスがつぶやき、にこやかにコレットがそんなことをいってくる。
どうみてもあれはエミルに対してとおもうのだ(けど)(が)。
一部のものはそんなことを思いはするが、
「そうね。ロイドにも礼儀というものを見習ってほしいわ」
どうやらリフィルは今のコレットの言葉にのることにした、らしい。
「うげ。何でここにきてまでそんなことをいわれ…と、とにかくこの先にいこうぜ!」
いいつつも、ロイドがぐっと扉に手をかけるが。
「あ、あれ?この扉、あかないぞ?」
ロイドが押してもひいてもそこにある扉はぴくともしない。
「普通の扉のはずがないでしょう。おそらく、これね」
リフィルが扉の横にある小さな箱のようなものにきづき、
そこに先ほどたまたま拾ったカードのようなものをすっと通す。
そもそも、この道を通るたび、リフィルはかわったものが落ちている?のをみると、
ひたすらに集めていたりした。
どうみてもそれは落ちているのではなくて設置されているのでは?というようなものまでも。
どうやらそのうちの一つが鍵、ときづいたのか、
そのままそのカードキーをカードを通す小さな細い穴にとかるく通す。
ピッ。
それをうけ、
【認証いたしました】
「うわ!?」
それから声がもれ、思わずロイドが驚きの声をけあげ周囲をみわたすが、
どこにも自分達以外の姿はみあたらない。
それは目の前の認証装置から発せられた声であることをロイドは気付かない。
シュッン。
それとともに、目の前の扉が小さな音とともに消えるようにと開かれる。
【これより先は無重力空間です。一定の時間とともに念のために扉は閉じられます】
そんな声も同時にきこえてきてはいるが。
どうやら扉はいつも開ききっている、という状態にはなっていないらしい。
「とにかく、いきましょう。というか、無重力空間って」
アステルがその言葉に目をみひらきつつも、
そのままなぜかリヒターと顔をみあわせたのち、そのままだっと扉の向こうにかけだしてゆく。
それとほぼ同時。
「「うわっ!?」」
アステルとリヒター。
二人の悲鳴のようなものがきこえてくる。
みれば、勢いよくかけこんだから、であろう。
二人の体はふわり、とうきあがり、その反動のまま、おもいっきり体制をととのえるまもなく、
空中をすべるように移動しているのがみてとれる。
「な、何だぁ?これ!?」
ロイドも思わず一歩足をふみだし、何をおもったのかかるく足を踏みしめるような動作をしたのち、
そのままそのロイドの体がふわり、とうきあがる。
「どうやら、先ほど扉のところで忠告がはいったのはこのこと。ね。
知識ではしっていたけども、これが無重力……」
リフィルがいまだにういているアステルやリヒター、そしてロイドをみつつ、
感慨深そうにそんなことをつぶやいているが。
「何なんだ?それって?」
ロイドはその意味がわからないのか、そのままふわふわとうかんだまま、
それでも何とか体制をととのえよう、としているのであろう。
なぜかその場にて面白いまでにくるくるとまわりはじめていたりする。
はっきりいってみているだけで結構面白くもあり、
また、
「…ロイドさん、目が回りそうです」
ぽつり、とそんなロイドをみてプレセアがそんな突っ込みをいれていたりするほど。
「えっとね。地上には土の精霊ノームのマナがあって。
それが重力っていうものを産んでいるんだ」
そんなロイドをあきれたようにみつつも、ロイドにもわかりやすいように説明しているジーニアス。
というか、きちんと授業で、しかも理科の時間におそわっただろうに。
わかっていない、というのはまたロイド寝てたんだね。
という呆れしかジーニアスの中にはない。
「はぁ。きちんと教えたはずなのだけども。
とにかく、高いところから飛び降りてもきちんと地面におちるのは。
ノームの力が私たちを引っ張っているからなの。
でもここは大地からあまりに離れているからノームの力が届いていないのね」
ちなみにラタトスクはノーム達を惑星限定の精霊、として生み出しているがゆえ、
ある程度の高度になればその威力はほぼ失われる。
まあ、そこにソルムのようなセンチュリオン達の補佐があれば別にしろ。
「まあ、このあたりは地表から百キロメートル以上はは離れてるでしょうしね」
ちなみに、正確にいうならば、この付近は外気圏とかつてはよばれし範囲内。
惑星における最も外側の大気圏のあたりに今現在はいたりする。
さらにいえば、レインの力で彗星をとどめ置いているのは、
どうやら表面境界外気圏のあたりらしいが。
九百キロ離れている、と詳しくいわないのは、正確な数値をいうのは違和感がある、
と判断したがゆえのエミル。
たしかにここは地表から何キロ、いう表示がない以上、
詳しくその数値をだせば不審がられるのは目にみえている。
ゆえにエミルは多少の言葉をにごしつつも、そんな簡単な説明にとどめおいているのだが。
もっとも、かつての人々は、空中戦艦などをつくっていた時代においては、
高度百キロメートル以上を完全に宇宙空間、と定めていたようだが。
ついでにいえば、高度百キメメートル辺りにまでいけば、
ある程度の無重力状態になり、ついでに空気もあるがゆえ、
今現在のこの空間の現状にあてはまる、といえば当てはまる。
「うげ。そんなに地表からここってはなれてるのか。
でも、それでこんな風にういちまうのか。
ノームって口はわるかったけど、重要な精霊だったんだな」
何やらロイドがふわふわとうかんだまま、腕をくみながらいっているが。
あと、ついでに口が軽い、というのもあのコに関してはいえるんだが。
ふとラタトスクは思うがそれは口にはださず。
「気をつけないと。一度動きはじめたら何かにぶつかるまでとまらないよ?」
マナの扱いに長けていれば可能であろうが。
ちなみに、大気の流れがない空間にてそのような行動をとった場合、
それこそひたすらに宇宙空間に流されてしまう、という特製があったりする。
その場合、大抵太陽風にながされる、というのが定番、なのではあるが。
エミルがそう指摘しているそんな中。
「うひょ~。たのしいな。これ!」
何やら面白かったのか、ゼロスがふわり、とうきあがり、
くるくると回転しつつも、通路の中央付近にうかびつつロイドの横を通り抜ける。
そして、
ゴッン!
「うぎゃ!?」
『・・・・・・・・・』
ものすごい音がしてふとみてみれば、ゼロスがどうやら何からぶつかったらしい。
どうやら天井からでている通気口をかねた突起。
それにぶつかってしまったらしく、そのまま頭をおさえつつ、
再びふわふわとその場にうかんでいたりする。
「…き、きをつけるよ」
「ここで翼だしたらどうなのかなぁ?」
いいつつも、ふわり、とその場にうきあがるコレット。
「あ、この感じ、とても楽」
いつもは体をそのまま持ち上げるような感覚があったのに。
それがまったく感じられない。
「感覚的にはお水の中にはいっているような感じかなぁ?」
それこそ深い水の中にふわり、と浮かんでいるような、そんな感覚。
体の重さが感じられない。
「きをつけないと。ふわふわとして歩みすらあやしいかもしれないね」
しいながゼロスの様子をみつつも、警戒するかのようにいってくる。
「ま、とりあえず。ひたすらに進んでいけば。
この空間もそのうちになくなるんじゃないですか?」
「そうね。実際、さっきの居住区にはきちんと重力が発生していたし。
おそらく、ノームの力を発生させる何かがあるのでしょうね」
エミルの言葉にリフィルもうなづく。
ここよりおそらく高かったであろうあの場所は、こんなにふわふわすることはなかった。
多少の浮遊感は感じていても、ここまでひどくなかった。
だとすれば、重力発生装置のようなものがあった、とみておそらく間違いないであろう。
それは確信。
「ここは救いの塔の中、みたいだしね。
あの塔は雲をつきぬけてあったし。かなり高いんだろうね。ここ」
「そういえば。さっきまで外にみえていたのは、
透明な壁の向こうにあったのは星空だけ、でしたね」
ふとアステルがそのことを思いだしたかのようにいってくる。
あのウィルガイアとよばれていた場所にて、たしかに外が見える窓らしきものがありはしたが、
そこにはひたすら星空ともいえる漆黒の空間が広がっていた。
そんなアステルの台詞に、
「ってことは、ここって雲よりも高い位置にあるの?」
コレットが首をかしげ、ロイドやアステル、そしてリフィルをみながらもといかける。
コレットからしてみれば、雲より高い、といわれてもピンとこない。
たしかにさきほどみた窓の外にみえていたのは、
青空、ではなくて星空しかなかったが。
「そうだな。たぶんここは救いの塔の中なんだろ。
だったら、あの高い塔の中なんだったら、雲より高くても納得できる」
ゆっくりと、しかし恐る恐る、ゼロスの様子がよほどこりたのか、
その手を壁につけ、ゆっくりと床に足をつけようとし、
そのまま体制をととのえつつも、床の上にゆっくりと足をつけているロイド。
恐る恐るといった動作の中で、コレットの質問にこたえていたりする。
「雲よりも高いんだ……不思議。
いつもは星をみると安心できるのに、今は、何だか…怖い」
ふと視線をむければその先にある通路の一角。
どうやら外がみえるようになっているらしい。
そこからみえるのはひたすらにつづく漆黒の闇。
遠目に光る星のようなものがみえていることから、夜空にみえている星空。
なのだろう、とコレットも納得せざるをえない。
コレットがふと沈んだようにいえば、
「大丈夫だ。お前は俺が守るから。絶対にクルシスなんかにわたさないから」
「うん。ロイドがいてくれるから、こわくない」
そんなロイドの言葉に、こくり、とうなづいているコレットの姿。
「あ~。お二人さん?二人の世界にはいるのは後にしてくれないかな?」
そんなロイドとコレットをあきれたようにジーニアスがみつつ、
そんなことをいっているが。
「しかし。プレセア、大丈夫か?何か顔色がわるいようだが…」
「え?あ、本当だ!?プレセア、大丈夫?!」
ふとリーガルが後ろをあるくプレセアの変化にきづいたのか、気づかう声をなげかける。
そんなリーガルの言葉にジーニアスもようやく、
プレセアの顔色がこころなしか悪いことにきづいたらしく、あわてたようにいってくる。
「何だか、頭がいたい、です」
「仕方ないわ。高度が高い。ということはそれにともなう重力変化もあるし。
それだけじゃないもの。実際、無重力における人体への影響。
それはいまだに解明されていないのだもの」
地上で無重力状態を発生させる研究がはるかなる過去にあったとはきくが。
しかしそれは伝説でしかなく、実際にそんな研究をしていた痕跡はない。
というのが学者達の定説。
真実は、それらを研究していたものたちは、そのまま暴走にまきこまれ、
その身をぷちり、とつぶして消滅してしまい、跡形なく消えてしまったがゆえに、
それらの痕跡は後世にのこっていない、というだけなのだが。
当然そんな事実をリフィル達が知るはずもなく。
頭をすこしおさえつつ、そして周囲をすこしばかりみて、
そうこうしているうちに、どうやらいつのまにか窓がある場所にたどりついたらしい。
そこからみえるのは、漆黒の空間。
その空間をみつつ、
「それに…ここは、嫌い、です」
ぽつり、とそこにあるガラスのような何かに手をつけてぽつり、とつぶやくプレセア。
どこまでも静寂でしかない空間。
草木の匂いも、虫の声も何もない。
ひたすらに静寂。
「まるで、死の世界のよう。はやく地上にかえりたいです」
「ヒトのいうところの死の世界の概念ってきにはなってるんだよね」
冥界、というものをかつてつくりだしてはいた。
死者の魂が集う場所。
いくつかの世界でもそのような場所はたしかにつくっていた。
この地においてはそういったものはもともとあったし、
また魔界があるいみその役割を果たしていたので手をつけてはいなかったが。
その点でいえば、あるいみ死の世界とも兼用している魔界のほうが、
ここよりかなりにぎやか、ではあるであろう。
プレセア達ヒトが、死の世界、という概念をどのようにもっているのか。
それは気になるが。
何もない静寂の空間、とでもおもっているのだろうか。
それこそ様々な思念がかつてもただよう界でしかなかった、というのに。
プレセアの台詞に、
「死の国。かぁ。黄泉の国ともいわれてるよね。
かつてあたしらの祖国であったという島国には、
その黄泉の国に通じる岩の洞窟があったっていう話しだけどさ」
しかし今ではその国は海の底。
エミルやプレセアの台詞に思うところがあったのか、しいながしみじみといってくる。
「でもさ。プレセア。逆に死の世界のほうがここよりにぎやかかもしれないよ?
あたしらの里では、地獄というのが死の世界の一つにあってね」
生前、罪をおかしたものがそこで罪をつぐなうために、
さまざまな苦行をしいるといわれていた死者の住まう地。
「うむ。しかし、あれはマーテル教の教えにそわない、という理由で、
たしか、その書物や関係文書も教会から禁書扱いになっていなかったか?」
リーガルがふとそんなしいなにと何やらいっているが。
「まあね。でもうちらの里には地獄の風景をかいたっていう巻物もつたわってるよ。
それを考えたらこんなところは死の世界なんてもんじゃないとおもうけどね。
ただ、静かなだけだし」
「興味があるわ。その巻物」
「まあ、あれも里の門外不出のものだからねぇ」
リフィルがすかさずそんなしいなの言葉に反応し、目をきらり、と光らせているが。
「それにしても。あたしもこの無重力ってやつはどうも苦手だねぇ。
プレセア、頭がいたいようなら、いっとくれ。
きくかどうかわからないけど、里直伝の丸薬ももっているからね」
「お気づかいありがとうございます」
そんな会話をしているしいなとプレセアをちらりとみつつ、
「しかし。しいなじゃないけど。俺もこの無重力っていうのやっぱ苦手だな」
体がとにかくふわふわする。
気をぬけば、そのまま天井付近まで浮かび上がってしまうかのごとくに。
「そうか。なれちまえば結構たのしいぜ?女の子を誘ってここにきてみろって。
あ~んなことやそ~んなこと。普段できないようなことまでいろいろたのしめる~ってもんだぜ?」
いつのまにか、その背に翼を展開し、その体制を元にもどしたらしいゼロスがいってくる。
「?何だ?ゼロス。鬼ごっこでもやるのか?」
「はぁ。つくづく夢のない男だねぇ。ロイドくんは」
ロイドとゼロスがそんな会話をかわしているのがみてとれるが。
「まあ、たしかに。無重力下でしかできない、というのはいろいろとある。
といわれていますしね。たとえば」
いいつつも、
「ロイド。もってる水筒、ちょっと横にしてみて?」
「?何だよ。エミル、いきなり…うお!?水がでてこない!?」
ふっても、水がまったくでてこない。
それにロイドが驚愕する。
「重力がない、ということは、そういうふうに。
普通、水がその場合、地上ならこぼれるでしょ?でもここは重力がないから、水も移動しない」
「ちょうどいいわ。ここで無重力の勉強会、としましょう」
「えええ?!そりゃないよ!先生!」
「あら。実験をしつつ覚えられる状況なんてまずありえないわよ?特に無重力に関しては」
リフィルが腕をくみつつ、どこか納得したようにうんうんとつぶやいていたりする。
「ああもう。リフィル。ここは学校じゃないんだからね。とにかく先をいそぐよ。ったく」
いいつつも、しいながずんずんと先を進みだす。
「しいな、たすかった~」
しいなの機転に心底たすかった、というように笑顔を浮かべるロイド。
「何をいってるの?ロイド。あるきながらもしっかりとお勉強はさせるわよ?」
「げっ。…勘弁してくれよ~。先生~」
「だめ、です。そもそも授業中ねていたあなたがわるいのよ」
きっぱりとそんなロイドの懇願を否定しているリフィル。
「…何だか追われている、という緊張感の欠片もないな」
「まったくだ」
そんな彼らのやり取りをみながら、しみじみいうリーガルに、
ものすごく同意、とばかりにこくこくとうなづいているリヒター。
「まあ、機会があれば実際に経験しつつ実験するようなこともあるかと」
どちらにしろ、このまますすんでいけば暗闇の空間にいやでもたどりつく。
ならばそこで、リフィルがいまいった実験をそれとなくしてしまえばよいだけのこと。
そんな会話をしつつも、廊下のような通路を進んでゆくことしばし。
やがて、ようやく次なる部屋の入口であろう扉の前にとたどりつく。
リフィルがあらためて先ほどつかった認証カードを横にある機械の差し込み口。
そこに通すとともに、シュン、と扉が開かれる。
扉の先にありしは、様々な機械らしきものがいくつも並んでいるちょっとした部屋。
しかしこの部屋も完全に重力発生装置がきいていないらしく、ふわふわとしてしまう。
ついでにいえば機械から発生している微弱なる風により、
少し気を抜けばその風に流されふわふわと移動してしまうほど。
「いくつかリフトらしきものがみえるわ。おそらく、これらのリフトでさがるのね」
念のために調べてくる、といって、アステル、リフィルが周囲を、
うまく無重力状態を利用して文字通り飛びつつも周囲を探索する。
やがて結果としてわかったのは、
ここにあるリフトはほとんどが下に移動する、というようなもの。
どうやらこの部屋の下にも別の部屋、があるらしい。
ちなみに、リフィルはまだ知らないが、この部屋にある二つの扉。
たしかに移動はできるが、どっちにしろ行き止まりの通路にたどりつく。
正確にいえば扉のロックを解除するエリアに、というべきなのだが。
仕掛けはさきほど、命令を下したので、彼らの共有通信にて解除されているはず。
ならば、ここから一階だけおりて、そこから移動すれば普通に塔を下降してゆくことは可能。
「…ここは、塔の中、なんだから。さがっていくのが正解、なのでしょうけど。
まずは、ひとまずそのあたりにあるリフトで下がってみましょう」
いまだに追っての姿がみえないのがきにかかる。
しかし時間はあまりない、ともおもうがゆえ、
リフィルが待たせているロイド達をみながら声をかける。
そして。
「どうもここはおそらく機械から発生している風、だとおもうけど。
ふきとばされないようにそれぞれ気をひきしめて」
リフィルの言葉をうけ、それぞれが慎重になりつつも、
ひとまず、下につづいているであろう、リフィル曰くのリフト。
それを目指し、ロイド達は進んでゆくことに。
~スキット・無重力状態、部屋の内部にて~
ロイド「だぁ!ここ面倒!」
少しきをぬけば、部屋の隅から隅までとばされてしまう。
かといって、普通にあるこうにも体がふわふわしてしまい、
足をきちんと床につけることすらままならない。
ジーニアス「…扉があったから、そっちにいってみたら、行き止まりだったしね…」
何やらボタンのようなものがありはしたが。
オンとオフ。それらがオン、にすでになっていたので意味がない。
心底うんざりしたようなジーニアスの台詞。
リフィル「このあたりの地図までしっかりと確認しておくべきだったわ」
緊急用の脱出口だというのだから、これほど複雑とはおもっていなかった。
そのことがリフィルからしてみれば悔やまれる。
アステル「僕がきになるのは、何かあの装置らしきもの。
何でオンになっていたのか、ということですけど」
リヒター「というか、周囲にいる機械のようなやつら。
俺達をみてもまったく襲ってくる気配すらないな」
しいな「それどころかきちんと道をあけてくれるからねぇ。助かるといえば助かるけど」
アステル「…あれって、警備ロボットで普通は侵入者排除なんじゃないのかな?」
リヒター「おそらくは、な」
一同(エミルを除く)『・・・・・・・・・・』
じっと、皆の視線がエミルにむけられる。
エミル「え?え?あの?みんな?」
エミルの背後にいるは二機のサイビット。
ロイド「…おれ、それ、囚われていたときにみたことあるんだけどなぁ。
あのときひたすらに俺、襲われた記憶があるんだけど」
ジーニアス「…だね」
リフィル「いえ。みるかぎり、あのときのあれとは、これは改良されているようよ?
しかし、ああ、興味深い!分解したい!」
エミル「させませんよ!というか、リフィルさん、このコたちを殺すきですか!?」
リーガル「…案内係りを分解するのはやめておいたほうがいいとおもうぞ。リフィル…」
実際、彼らが迷わずに移動できているのは、エミルに同行することになった、
この二機のサイビット達の案内ゆえ。
ゆえにリーガルの台詞はおそらく間違って、いない。
しいな「…はぁ。リフィルはあいかわらず、だねぇ」
アステル「でも確かに興味深いですよね。研究すればかなりの成果が……」
エミル「…おまえたち。そこの人間達は絶対にちかづくな。いいな?」
こくこくこく。
エミルの言葉をうけ、サイビック達は素直にこくこくとうなづいているのであろう。
そのふわふわとうかばせている機体を上下にふってくる。
ソルム「(…ラタトスク様。けっこうこの人間達に染まっているような……)」
その横で姿をけしたままのソルムが何やらそんなことをおもっていたりするが。
ちなみにこのソルムに気づいているのはこの場においてはゼロスとコレットのみ。
コレットは皆がいってこないので別にいっていないだけで、
ゼロスに関しては、おいおい、あれってまさかセンチュリオン?
などとおもっていたりする。
しかしそのあきらかに突っ込み所満載の水晶のような甲羅をもちし亀。
それにリフィルが追求をしていない、ということは、彼らの目にはみえていない。
ということなのだろう。
ゆえにゼロスもいらないことはいわないようにしていたりする。
何しろ水晶の甲羅…茶色に輝くその甲羅の内部。
そこにたしかにとある紋章のような模様がみてとれる。
たしか以前、アステルがいっていたセンチュリオンの紋章とおもえるもの。
そしてリフィルが海賊船でみたという紋章からしてまず間違いはない。
ゆえに、かるくため息をつきつつ、
ゼロス「ま、そんなことより、案内係りもできたんだし、とっとといこうぜ」
ロイド「そうだな。というわけで、よろしくな!」
ジーニアス「…ロイドって、あまり動じないよね。こういうときって」
マルタ「だね」
コレット「そのコたちともお友達になれるかなぁ」
一人、コレットが何やらものすごく的外れのようなことをいっているが。
ともあれそんな会話をしつつも、一行はサイビットの案内によって進んでゆく――
※ ※ ※ ※
「そういえば、体が大分楽になったな」
さきほどまで感じていたものすごいまでの浮遊感。
それがいくつかのエリアを抜け、転送陣を超えてゆくにしたがいなくなってきた。
それでもまだ体はふわふわとしているが。
「この辺りは、おそらく重力空間と、そして無重力、その空間あたりなのね」
今現在、どこまで塔を降りてきたのかはわからないが。
しかし、体に重身を感じ始めたということは、
ある程度はさがってきた、ということなのだろう。
リフトがある部屋をぬけ、サイビットの案内にて今現在は再び通路のような場所。
転送陣を通じてはゆっくりと、しかし確実に地上にむかっているのであろう。
体の浮遊感の変化が何よりの証拠。
「うわ~、みてみて、ロイド、すご~い」
コレットが転送陣を抜けた直後。
周囲をみつつ、思わず感嘆の声をあげる。
「これは……」
「綺麗……」
抜けた先の空間は、周囲が透明な壁でおおわれており、その先がしっかりとみてとれる空間。
そこからみえるは、青く輝く、ゆるなかな孤を描いているかのような、大地の姿。
高い位置だからこそわかる。
眼下にある惑星が球体のような姿をしている、ということが。
思わずそれぞれが初めて目の当たりにする惑星、という姿をみて、誰もが言葉をうしなっているよう。
眼下にみえるは漆黒の闇の中にうかびし、まるで青き水晶のごとく。
かつてはもっと青さが際立っていたのだが。
今はその色がかなりくすんでいるのがみてとれる。
それをみて思わず顔をしかめているエミル。
やはり、まだマナが完全ではない、か。
この惑星におりたったときの、あの赤茶けたような惑星とは雲泥の差、とはいえ。
惑星そのものの自然がまだ完全に蘇っていない証拠。
どうやらこの空間からは、シルヴァラント、そしてテセアラ。
互いの世界がみわたせるらしく、よくよく目をこらしてみれば、
左右によって、みえている眼下にみえている地形がことなっているのがみてとれる。
その境目らしき場所には柱が存在し、それが区切り、として機能しているらしい。
つまり、柱から右側にいくか左側にいくか、において、
シルヴァラントにいるか、テセアラにいるか。
そういった判断がこの場においてはなされているようではあるが。
眼下には海がひろがり、そして大陸、そして雲。
成層圏内にはいりかけているがゆえ、
うっすらとした空気の膜すらもここからは目視で可能。
「あれは…雲?まさか?」
戸惑いの声をあげるマルタは眼下にみえている光景がどうやら信じられない、らしい。
「外からみた世界、というのはこんなに綺麗、なのね。
あれはおそらく、大陸、海、そして雲…私たちはあの地表で生きている、のね」
宇宙空間にぽっかりと浮かぶ青き星。
それがこの惑星。
かつて、この地にすまいしものたちは、この惑星のことをこう呼んでいたという。
すなわち、命あふれる星、地球、と。
思わず吸い込まれそうなほどの綺麗な景色にそれぞれがそれぞれ、
どうやら我をわすれたらしく、じっと眼下の光景に見入っているのがみてとれる。
「あれが地表?」
ロイドはいまいちピンとこないらしく、ひたすらに首をかしげていたりする。
「簡単に説明したら、ロイド、アリからみれば、ロイド達もおおきくて、
全貌がみえないでしょ?それと似たようなものだよ」
そんなロイドにジーニアスがあきれつつも説明するが。
ジーニアスとて知識ではこのようにみえるのではないか、
といわれていたので知ってはいたが、こうして目の当たりにするのは初めて。
ゆえに自分達が生きている星、という存在を初めて目の当たりにし、
何ともいえない思いに囚われていたりする。
宇宙空間の中にぽっかりとうかんでいる青き球体。
なのに、その地表では、日々誰かが虐げられている。
周囲をみてみるが、このような綺麗な球体のようなものはみられない。
少し先に青くかがやいているおそらくは月、なのであろう。
それらしきものもみてとれるが。
この光景をみてしまえば、日々のつらさなど何と小さなことか、
そんな思いがふとよぎる。
この漆黒の空間に浮かぶこの青き球体はあるいみ奇跡のようにもみえている。
そんな奇跡のような場所に住んでいる自分達は、日々何らかの争いをしている。
それが何ともむなしくはある。
「ここは、展望台を兼ねている、のかしら。…ここから惑星を見下ろすことができるのね」
リフィルも周囲をみつつ感嘆なような声をだす。
さすがのリフィルもこの光景をみて、感動のほうが先にたち、
彼らいわくの遺跡モード、という変貌は遂げていない。
人は思考想定外のことがおこったとき、それぞれ素の行動をすることがある。
今まさに、彼らはこの光景をみてじっと惑星、という始めてみる自分達が住んでいる地。
その姿を直接みることにより、様々な思いにとらわれているようではあるが。
「どうやら、この先に移動エレベーターがあるみたいですよ」
ここからはどうやらエレベーターで下に移動ができるらしく、
ある程度一気に下降することができるようになっている。
この塔の内部の構造はすでにエミルは視て把握しているので理解しているが、
しかしリフィル達はそうではない。
何やらふときづけば、カシャカシャという音がしているが。
ふと見れば、アステル達がいつのまにかとりだしたのか、写真機を取り出しているのがみてとれる。
たしかあれはテセアラで今現在開発されている、対象の姿の残像を特殊な紙に刻みつけるもの。
リヒターなどは、何やら荷物から水晶、のようなものをとりだし、
それをじっと外にむけていたりする。
…どうやら彼らは記憶球(メモリーオーブ)をもっていたらしい。
それにより、この光景をどうやら刻みつけているもよう。
「景色に見とれるのはいいとして。いきません?」
はっ。
エミルにいわれ、ようやくそれぞれ我にともどるリフィル達。
どうやらそれほどまでに惑星、という星の形に魅入っていたらしい。
「そうね。名残惜しいけど…いきましょう」
ずっとここにいていろいろと調べてみたいことは多々とあれど、
今はここから抜け出すことが何よりも先決。
そのまま、扉をくぐれば、そこはエレベーター室になっているらしく、
ここにくるまでになぜか所どこにある宝箱。
そのうちの一つから入手した、いくつかのカードキーをとりだして、
どれがあうのか確認し、予測をつけたものを部屋の一角のある装置にと通す。
なぜに塔の内部に手つかずの宝箱などがあるのか、という疑問をリフィル達は浮かべているが。
ミトスのやつはたぶん、知らずに宝探し用のプログラム。
どうやらそれもこの塔をつくりだすときに併用してしまったんだろうな。
そうエミルは解釈していたりする。
大体、こういった設備をつくるときは、そういったものがあったほうが、
何だか探索とかしたり、把握するのに助かるとかよくわからない理由が、
数多とかつてはあげられていたので、
建物などをあのアプリケーターで作成するときは必ず付属として起動していた。
おそらく、詳しくプログラムを確認しないまま、ミトスはこの塔を作りだしたのであろう。
まあ、あれは概要さえイラストにおこせばそれなりにそったものが作成できるゆえ、
あるいみラタトスクの手間を省くためだけ、の装置といえば装置だったのだが。
リフィルがいくつかあるカードの中からあったカードキーらしきものを指しこむと。
ピッ。
【下に移動しますか?】
そういった音声がその措置から発せられる。
その原語もやはり古代エルフ語であり、しいなはいまだにそれが何といっているのか理解不能。
そのまま、リフィルが下降、を選ぶとともに、
床が一気にがくん、とゆれ、床の周囲が青白い光の帯にとつつまれる。
どうやらこの床は青白く光る柱のようで支えられているらしく、
それらを軸、としてゆっくりとエレベーターは下降を始めてゆく。
エレベーターにのって移動することしばし。
やがて、がこん、と床がぴたり、と制止する。
どうやら別の場所というか部屋になっている場所にたどり着いたらしい。
どうやらたどり着いた部屋はエレベータールームでしかないらしく、
その先に一つの扉。
『うっ』
扉から出ようとし、思わずその場で立ち止まるロイド達。
扉の先にみえるは、漆黒の闇。
かろうじて遠くのほうでところどころ青白いような光がみえ、
床?というかこれまで進んできたような足場があるのはみてとれるが、
しかし、目の前はひたすらに闇がひろがっており、下手に移動するのがはばかられてしまう。
「うわ~。ものすごい暗闇だよ。これ」
マルタが扉の向こうをみつつ思わずげんなりしたようにいってくる。
「人間は不便だな」
そんなマルタやロイド達の様子をみてしみじみとリヒターがいってくるが。
リヒターの目には一応かろうじてではあるが、周囲の様子はみえている。
それはエルフの夜目がきく、という特性をリヒターが受け継いでいるがゆえ。
そしてその特製は当然、リフィルやジーニアスも受け継いでいる。
「なんか、ここって、さっきとまた体に感じる感覚が違うような……」
ロイドが体の違和感をかんじながらも、首をかしげ。
「この先にすすんでも大丈夫なのか?」
何やらそんな不安をいってきていたりする。
「まあ、このあたりは、様々な物質濃度が異なってるみたいだし」
ついでにいえば空気密度すらも。
そこまでいい、ふと何かを思いついたように、
「そういえば。さっき、リフィルさんがいってた無重力状態のことなんですけど」
「あら。どうかして?エミル」
「ちょうどいいから、実験をかねてロイドにもわかりやすく説明ができるかなって」
いいつつも、ちらり、とロイドをみながら、
「物質の濃度が場所によって異なるとき、
時間とともに物質の濃度は一様になっていく。
ロイド、そういう現象を何、というのかしってるよね?」
「え、えっと……」
いきなりリフィルではなくエミルに問われ、ロイドはたじろいでしまう。
リフィルにいきなり何かいわれるのは覚悟はできているが、
こうしてエミルからいわれる覚悟はできておらず、ゆえにロイドは戸惑いを隠しきれない。
「あら。エミルが先生ね。お手並み拝見、ね」
そんなエミルの様子をみてリフィルは傍観することにきめたらしい。
というかエミルが何しようとしているのかのほうが興味が勝ったらしい。
「はい!エミル先生!それは拡散、です!」
マルタがノリがいいというか何というか。
ぴしっと手をあげつつも答えてくる。
「うん。マルタ。正解。でも無重力状態だと、じわり、じわりとしてしか、
その拡散はみられない。たとえば、ここで蝋燭とか燃やした場合……」
いってどこから取り出した?というか何故にもっている?
という思いを思わずその場にいる全員が抱くが。
「あれ?ブルーキャンドルは…まだわたしてないよね?」
アステルがふと首をかしげそんなことをいっている。
たしかに手にいれてはいるが、まだ彼らにわたしてはいない。
「これは普通の蝋燭だよ。アステルさん。で、炎をつけると」
どうやってつけたのか意味不明。
というか、その手の平の中にマッチでももっていたのだろうか。
エミルの体で死角になったがゆえにわからないが、火のついていなかった蝋燭に、
ぽっと炎がともされる。
この付近までくると、微小重力状態となっているがゆえにできる実験。
「このように、通常は上昇気流が発生して
常に酸素がロウソクの炎の下部から提供されて燃え続けるんだけど。
このあたりは多少ながら重力が影響してるしね。
こういう場所のことを微小重力状態っていうんだけど。
このあたりもそういった気流の流れが発生しないんだよ。
なので、このように、常にロイド達が目にするような、
縦長のいつもみるような炎でなく、半球体状になるんだよ。
ちなみに、この状態となると、周囲から酸素が供給される速度が
地上で重力がある場合の対流があるときとくらべて著しく低下し、
ついでにいえば反応速度も低下する。
無重力下での拡散による酸素の供給速度は小さいために、
地上にくらべて結果的に炎の温度が低下して、このように青くなってるんだよ」
「それって普通の炎、なんだよね?ブルーキャンドルの明かりみたい」
まじまじとエミルがもっているそれをみてアステルがいっているが。
ちなみに、半球状態になっている炎の中心にみえるは蝋燭の芯。
「この先、みるかぎり真っ暗だし。ついでにこれで明かりをとろうね」
「…たしかに。この扉の先は漆黒の闇、ね」
足元すらみえない暗闇。
リフィルがエミルの台詞に賛同するかのように、じっと扉の先をみつめる。
リフィルの目にはかろうじて周囲の様子がみえているが。
しかしエルフの血をひかないものではそうはいかないであろう。
「コレット、ゼロス、あなたたちはこの先みえているかしら?」
「薄暗くはあるが一応はみえてるぜ?」
「私も~」
「俺はまったくみえない」
「かなしいかな。あたしもよ~~く目をこらして、何とかってところかねぇ」
暗闇でも視界がきくように、しいなたちみずほの民は訓練している。
そんなしいなですら、この先の空間は漆黒の闇で、
かなり意識を集中させなければまったくもって見渡せない。
「闇の神殿の暗さに匹敵しそうですね。ならこんなときのために!」
「…アステル。ここでブルーキャンドルをつかうのか?」
アステルが何やらいいつつ、荷物をあさりだしたのをみて、リヒターがといかけるが。
「ここでつかわないでどうするのさ。どこに敵が潜んでるかもわからないし」
「そうか。エルフの血がはいっている俺やそこのセイジ姉弟はみえているが。…不便だな」
実際、ブルーキャンドルがもったいないから。
という理由で先行隊としてハーフエルフはかの神殿の探索のときには導入される。
そしてそれは雷の神殿においてもいえることで、
かの地で雷に打たれ命を落としたリヒター達の同族であるハーフエルフは少なくはない。
特に神殿に異常がみられはじめた、という段階にて、
リヒターが知っているだけでもかるく十人以上は死んでいる。
そんな会話をしつつも、ブルーキャンドルに火をともす。
それとともに、エミルが手にしている蝋燭の炎にちかしい、
青く輝く炎があわく周囲をてらしだす。
アステルのもっているブルーキャンドルの炎もまた、半球状、になっており、
それら二つの蝋燭の炎はゆらゆらとゆれることなく、ぴたり、とそのまま制止しているかのごとく。
それらを用意していた蝋燭台にのせつつも、どうやら蝋燭台を余分にもっていたらしく、
「はい。エミル」
「え、あ。すいません」
アステルからそれをうけとり、エミルが手にしていた蝋燭もまた、その蝋燭台にととりつける。
かすかに周囲はみえてはいたが、しかし明かりがあるのとないのとでは話しは別。
「どうやら、ここもさっきまで移動していた場所とかわらないようね。いきましょう」
ざっとみるかぎり、道の創りはこれまで移動してきた場所とさほどかわらないらしい。
本来ならばここも、通路に扉があり、ロックを外さないかぎり先にすすめない構造なのだが。
すでにエミルの命令でそれらの解除を警備ロボット達が解除しているがゆえに、
そういった扉による行き止まり、そういう心配をする必要はまったくない。
そしてまた、そこに扉があったことすらきづくことなく、
リフィル達はそのまま、ゆっくりと先にと足をすすめてゆく。
暗闇を照らし出す青白い光。
いくつもの階段を下りてゆくに従い、蝋燭の炎が半球場からゆっくりと変化して、その形状をかえてゆく。
やがて、本来いつもロイド達がみなれた蝋燭の炎にその炎が変化するのがみてとれる。
つまりは、それだけ地表に近づいている、という何よりの証拠。
エレベーター室からおり、ひたすらにすすんでいき、階段を下りてゆくことしばし。
「もう、大分おりてきたんじゃないか?」
ロイドが周囲をみつつ、それでもあまりに変わりはえのしない道。
そんな周囲をみながらロイドがぽつり、とそんなことをいってくる。
「そうですね。あの嫌な感じはもうしません。
それに、エミルさんたちがもっている蝋燭の炎も普通になっています」
プレセアもまたそんなロイドに同意するかのように、
ちらりと先頭、
そして後方を歩いているアステルの手にしているそれをみてそんなことをいってくるが。
ちなみに、今現在エミルは先頭にたち、二機のサイビックとともに先導しており、
彼らの一番後方にアステルとリヒターがついてくるような形でひたすらに道をすすんでいる。
もしこれが、エミルが後方にいてサイビックとともにいれば、
まちがいなく前方にいる一行は連行されているんだろうな、と誤解されてしまうであろう。
「問題は、クルシスがここまま、私たちを返してくれるかどうかね。
追ってがここまでまったくおいついていない、というのも不気味だわ。
出口で待ち構えている可能性も考えていたほうがいいわ」
そんなロイドやプレセアの台詞に目をつむりつつ、
自らに言い聞かすように、そんなことをいってくるリフィル。
そう、ここまで何の介入もなかったことこそが、リフィルにとっては不気味でしかない。
「まあ、あと少しなんだろうし。慎重にいくしかねえんじゃねえの?」
そんなリフィル達にとゼロスがさらり、と何やらいってくるが。
「あんたは軽いねぇ。でもたしかに。慎重にこしたことはないさ。って、あの先」
「あ。先生。みてください。この先の道に転送装置らしきものがありますよ?」
これまでのものとは異なる、ちょっと大きめの転送装置。
コレットが道の先にあるそれをみつけ、そんなことをいってくる。
ちなみにこの転送装置はレインの元に続いている。
それをエミルは知っている。
緊急用、というだけのことはあり、直接レインのもとに繋がっている転送陣。
転送陣にのるとともに、淡い光にとつつまれる。
そして光がきえてたどり着いたその先は。
とてもみおぼえのある光景の場所。
足元には空中に浮かんだ円陣のような魔方陣らしきものがあり、
それらは横にある少し高い台となっている足場につづいているらしい。
そしてその場所はロイドにとってもとてもみおぼえがある場所。
「こ、ここって……」
「ここ、私がレミエルにいわれた……」
ロイドが思わず茫然とつぶやけば、コレットもまた周囲をみわたしつついってくる。
かつて、コレットはこの場所で、レミエルとなのった男性に、
その心を明け渡せ、そのようにいわれた。
あのときはそれしかない、とおもっていた。
世界を救うためにはそれしかない。と。
エミルにそれとなくそれは違うというようなことをいわれていたにもかかわらず。
コレットは自分が産まれ育ったときからかきされていることを信じ、そして実行した。
その結果、コレットの心は完全に封じられる形となってしまったのだが、
しかし、完全にコレットの心が壊れたり、もしくは封じられたりしなかったのは、
コレットの体を侵していた穢された微精霊達。
本来ならば穢されていた微精霊達はコレットの感情というか心すらをも破壊するはずであった。
だが、日々、王のマナをうけていた微精霊達は正気にともどっていた。
ゆえに、コレットの症状がひどくなることはなく、
コレットが望んでしまったがゆえに、コレットは自らの心を封じることになってしまった。
周囲をみれば、この場所はまぎもなくい、あのときと同じ場所。
先刻、ロイド達が囚われ、そしてまた、コレットがレミエルから最終試練。
そのような通達を受けた場所。
すなわち、救いの塔の封印の間。
「あの剣は、たしか……」
ふとロイドがそこにつきささっている剣に目をとめぽつり、とつぶやく。
「たしか、その剣っぽいのとあのユグドラシルが会話していたような……」
ロイドがふと床につきささっている虹色に輝く刀身をもちし剣をみて
ぽつり、とつぶやけば、
ジーニアスがあのときのことを思いだしたのかそんなことをいってくる。
薄く青く輝く床の中央にざっくりとつきたてられているそれは、
時の精霊ゼクンドゥスこと通称レインの物質形態。
レインは時間と空間を司るために生み出せし精霊。
もっとも、時間に関しては止めることくらいはしても、時間移動。
それらはラタトスクの許可がない限り、絶対に作動させたりはできなかったりするのだが。
その点でいけば、今現在ラタトスクがこうして過去にもどってきているのは、
それこそあのときの惑星の意思がかなりむちゃをした、というのがよくわかる。
それこそ全ての力をなげうってラタトスクを過去に戻したというのは明白。
全ては、彼女を、マーテル達の末路を憂いた星の意思。
そしてまた、このままだと誰も救いがない、とおもったがゆえの星の意思。
別にラタトスクとしてはあのままでもよかったのだが。
こうして過去にきてしまった以上、できることはしているつもり。
もっとも、その事実をセンチュリオン達にいってもいなければ、
彼らの記憶を統合、すなわち継承させてもいないゆえに、
センチュリオン達からしてみれば、
なぜこの惑星におりたってから一度も外にでたことがなかったのに、
こうして外にでてしかも人とともに行動をしているのかいまだにもって理解不能。
「あのとき、おそらくこの剣から言葉らしきものがきこえていたとして。
…まさか、これがエターナルソード!?」
さきほど、かの都市で入手した魔剣の名。
リフィルがはっと気付いたように何やら叫ぶが。
「おいおいおい。そんな大事な剣ならこんなところにほったらかしにしてないだろ」
そんなリフィルにゼロスが突っ込みをいれている。
というか、ここにいるからこそ、世界を二つにわけたまま繋ぎとめ、
ついでに彗星ネオ・デリス・カーラーンにも障壁をはることができているのだが。
この地はかつて大樹があった場所であり、地下にその痕跡たる根ものこっている。
ゆえに、マナを大樹の根からうけとり力を行使する場としてはうってつけ。
ミトスがそれを理解してこの場にこんな塔をつくり、レインをここにおいたのか。
そこまではエミルもわからないが。
まあ、あのミトスのことだから、そこまで予測をつけていた可能性もありえる。
そんなふうに思えてしまうのもまた事実。
「これをもってかえって、調べてみてもらったらどうだろ?」
「賛成!きっととてもいい実験材料になります!」
「…アステルさん、僕としては、それ断固として拒否しますからね?」
レインを何だとおもっているのやら。
ロイドの台詞にアステルがすかさずそんなことをいってくるがゆえに、
エミルがそんな彼らにおもいっきりため息をつきながらそんなことを言い放つ。
「何でだよ。エミル」
むっとしたようにロイドがいえば、
「とりあえず。そこから抜けられるかどうかが問題じゃないのかな?」
マルタがまじまじと透明な青いガラスのような板がある場所に、
よくよくみれば床に穴があいており、そこにガラスのような何か、がはられており、
その中心に二色の剣がつきたてられている。
つまり問題はそんなところに突き立てられている剣が普通に抜けるのかどうか。
ということ。
マルタが首をかしげてそういえば、
「まあ、とりあえず、気にはなるね。これがもしも魔剣なら。
さっき調べたとおりなら、これを手にいれることによって相手の力を削ぐことができるし」
しいながいいつつも、一歩前に踏み出すが。
『資格なきものはされ。そこにいるものは召喚の資格をもちしものだな。
我はミトスと契約せしもの。汝は何用か?』
『!?』
剣からそんな言葉が発せられ、その場にて驚きで固まるロイドたち。
「け、契約って。どういう…」
かすれたようなジーニアスの台詞。
そしてまた、
「…まって。まさか、とおもったけど、それ、普通の剣、じゃないわ」
はっと気付いたようにリフィルがつぶやく。
見た目にすっかりだまされていたが。
じっとよく観察してみればそのマナは見間違えることなく、とある特徴と一致している。
「まさか…剣の姿をしている…精霊?」
戸惑いの声をあげるリフィルの声に、
『え!?』
さらに戸惑いの声をあげているロイド達。
剣の姿をしているから惑わされていたが。
たしかによくよくみてみれば、剣から感じるマナの気配は、これまで契約した精霊達と同じもの。
『我はオリジンとの盟約に従い、ミトスと契約せしもの。
召喚の資格をもちしものといえど、
オリジンの盟約があるかぎり、あらたな契約の上書きはできないものとしれ』
淡々とそんなことをつむいでくる。
実際、レインはオリジンとミトスに協力する、という旨の盟約をかわしている。
かつてそのようにラタトスクが命じたがゆえにそれは仕方がないといえば仕方がないこと。
この場に【王】がいるがゆえに、一応ヒトにもわかりやすくいっているまで。
そうでなければ、問答無用で【資格なきものはされ】とレインは切り捨てていたであろう。
詳しくいっているのは彼らとともに【王】が同行しているがゆえ。
「え?もしかして……」
ロイドが何も考えていないのか、レインがそんなことをいっているのにもかかわらず、
そのままレインのもとに近づいていこうとするが。
キッン。
レインの周りに発生している障壁が、問答無用でロイドをそのまま跳ね返す。
そこに収まっていることで救いの塔、そして彗星への障壁。
それらを発生させているがゆえに、この場にはちょっとした力場ができあがっており、
簡単にいうならば、レインの周囲にはちょっとした力があふれかえっている状態。
つまるところ、無造作に近づいていけば手ひどい痛みをともなう結果と成り果てる。
どうやらレインはこの場にいるラタトスクに配慮して、なのであろう。
それらの力場よりも手前に結界を瞬時に張り巡らせ、
ロイドをそれらに近づけないようにはじき返したようではあるが。
すなわち、ロイドは視えない壁…ロイド達の目には視えていない、が。
コレットやゼロス、そしてエミルやソルムの目にはしっかりと、
そこにマナの障壁がほどこされているのがみてとれる。
その障壁にぶつかるようにしてはじかれ、そのまま尻もちをついているロイドの姿。
ロイドがおきあがりつつも、おもいっきり打ちつけた腰をさすっているそんな最中。
「――資格なきものはエターナルソードに触れることすらかなわない。無駄なことはやめるんだな」
先ほどロイド達が降り立ったその先。
すでにロイド達は台座から降りているがゆえに、自然的に見あげるような形になってしまう。
その声にきづき、はっとして振り仰ぐロイド達。
その声とともに、光りがふってきたかとおもうと、瞬く間に光が収束し、
その中から一つの影が躍り出る。
『――ミトス……』
その声と同時素早く自らに幻影をかけているソルム。
幻影をかけることにより、姿をこの場から消す、という方法をとらなくてもいいようにしたらしい。
ソルムもミトスに対し色々と思うところがあるらしく、
何ともいえない表情をうかべ、現れたミトスの姿をじっとみつめていたりする。
「ユグドラシル!?資格…だと?」
その声にはっとし、そちらをきっとにらみつけつつも現れた相手。
すなわちミトスに対しそんなことをいっているロイド。
「きっと、オリジンとの契約のことだよ。
あたしはその剣はオリジンがだまされて渡された、とおもってたんだけど。
それが精霊、というのなら…」
剣の姿をしているがゆえに、どうしても精霊、という感じはないが。
「ほう。精霊、というのに気がついたのか。
気がついたのはそこにいる我が同胞達であろうな。
いかにも、この魔剣エターナルソードといわれているものは、精霊ゼクンドゥス。
精霊が我が力を振るうために姿を変化してくれているに過ぎない」
いいつつも、すっとその視線をレインにむける。
「何でお前なんかに力を使わすためにそんなことを精霊がする必要があるんだ!?」
ロイドがそんなユグドラシル、と呼んだ相手に喰ってかかるように叫べば、
「…お前は本当に愚か、だな。…まあいい。
オリジンはクラトスが封じている。
どの道、おまえに、いや、お前達にその剣は装備できない」
ふわふわとその背に虹色のマナの翼を展開しつつ、淡々とそんなことをいってくる。
「……なぜ」
やはり、とおもう。
まさかとはおもった。
なぜクラトスがオリジンを封じているのか、と。
クラトスから感じたオリジンのマナの波動。
つまるところあの封印はクラトスのマナを解放しなければ解除されないであろう。
封魔の石を応用してかつて考えられたことがあった、ヒトのマナによる檻。
おもわずぎゅっとエミルがその手を強く握りしめる。
クラトスにミトスが強制したのだろうか、それとも。
エミルがそんなことを思っているそんな中。
「エターナルソードの力がなければ、二つの世界を元通りに統合することもできない。
お前達の旅は無駄なのだよ」
淡々とつむいでくるその言葉には、しかしその表情にいくばくかの変化がみられる。
それはミトスの癖。
その瞳の奥の光がいつも不安があるときには揺れていた。
それはよくよくみなければわからないほどの小さな変化。
しかし、傍から見れば無表情で淡々といっているようにしかうつらない。
「無駄…だと!無駄なことをしているのはお前だろ!
死んだ人をいきかえらせるなんて!」
そんなミトスの台詞に、ロイドがぐっと手を握り締め、思わず叫び返す。
「第一、そのことと、世界を二つにわけることにどんな関係があるんだ!」
『・・・・・・・・・・』
どうやらロイドは頭に血がのぼり、その理由を綺麗さっぱり失念しているらしい。
というか思いついてすらいない、というべきか。
思ったままを口にし、幾度も説明をうけていたりしたというのに、
まったくそのことに思い当たっていないらしい。
「…僕、幾度か説明したとおもうんだけどな……」
「…頭がいたいわ。この子、頭に血がのぼったら、考えなしに言葉をいうのよね。
どうにかならないかしら……」
ぽつり、とエミルがつぶやけば、リフィルも額に手をやりつつも、
あきれたように深くため息をつきながらそんな台詞をいっていたりする。
世界が二つに分けられた理由。
それはこれまでの旅でも幾度かロイド達は説明をうけている、というのにもかかわらず。
ユグドラシルに対する怒りで完全無欠にどうやら綺麗さっぱり失念してしまっているらしい。
「・・・・・・・・・・・・・世界が二つにわかれているからこそ。世界は存続している」
そして、ミトスもまた、ロイドが幾度もそういった説明をされている。
そのことは旅の中で一行の会話から見知っている。
にもかかわらず、そんなことをいってくるなどとは。
というか、こいつ本当にクラトスの息子なのか?
あまりにも思慮がなさすぎるだろう?
そんな思いを抱きつつも、それでもロイドにもわかりやすく説明してくるミトスは、あるいみで律義といえる。
「違う。二つにわかれているからマナが欠乏して、数えきれない人々が犠牲になってるんだ」
「…ロイド、ほんとぉに忘れてるんだ。
かつての世界、世界が一つのままだと、大地がどうなっていたのか。
ロイドもエグザイアとかできいてたはずだよね?なのにそんなこというんだ。
というか、考えがなさすぎる、とかよくいわれない?」
呆れたようなエミルの台詞はまさに的をえているといってよい。
「どういう意味だよ!エミル!」
まさかエミルにそういわれるとはおもわずに、エミルにまでくってかかるロイド。
「卵が先か、鶏が先か、の理論だよね。あれでいえば」
ジーニアスもしみじみとそんなことをいっているが。
そんなエミルやジーニアスの態度にロイドはよりイライラをつのらせる。
まるで自分が責められているような、そんな感覚。
実際にせめているのだが、ロイドはユグドラシルが全部悪い。
そう今は思いこんでいるがゆえに聞く耳をまったくもってもっていない。
感情が高ぶり、きちんと理性的に考えることができなくなっているらしい。
この辺りの感情の制御できなさも、もしかしたら障害、なのかもしれない。
ヒトでもなく精霊でもない、どこにも属さない種族、としての。
ふとエミルはそんなことを思いはするが。
「本当に愚か、だな。よく冷静になって考えてみるのだな。
なぜマナは欠乏しているのだ?そうだな、そこの同族の少年に答えてもらおうか」
「え?ぼ、僕?」
いきなり話をふられ、戸惑いの声をあげるジーニアス。
だが、ロイドのこの勘違いだけはどうにかしなければ、とジーニアスとて思いはする。
ゆえに。
「えっと、魔科学の発展でマナが大量に消費された、から?」
「それもあるし、ついでに、ヒトが精霊石を無駄に消費しまくったからでもあるけどね。
ヒトは無意味に微精霊達を穢しすぎた。
微精霊達が大気中に解き放たれない状態にするなんて、
世界の循環を止めてしまうというようなものでしかなかったのに。
君たちがつかってるエクスフィア。精霊石をヒトの命や血、そして負で穢し、
かれらの力すらをも狂わせた結果、世界のマナは循環しなくなってしまった」
ジーニアスにつづき、無意識のうちに、ぽつり、とつむぐエミル。
そう、かつてはそのようになっていた。
人々がエクスフィアとよびし石、精霊石を利用しはじめたあのころから。
いくら魔物達がマナを循環させても、それらを利用すべき微精霊達。
彼らがことごとく穢され、そして周囲にもその穢れは広まっていった。
その結果、地上に新たな魔界の窓が開いてしまうほどに。
「それだけじゃないよ。精霊石…なんでか名までかえて、エクスフィアとか呼んで。
それらをヒトにうめこんで兵器となしたり、様々な装置をつくったり。
その結果、発展していった魔科学による大規模な戦争。
ヒト同士だけならばともかく、そこにいる全ての命すら巻き込んでいった」
「…エミル、あなた、くわしい、のね?」
「…教えてくれる人がいましたからね」
正確にいえば、視ていたからこそ知っているが。
でも、それを力説したのもまた目の前にいる……
あのとき、リビングアーマー達を自分達で封じる。
そういってきたミトス達に反対したラタトスクに、そういったことをミトスは力説し、
自分達にまかせてほしい。
そうラタトスクにいってきた。
自分達、ヒトがおこしたことはヒトの手でどうにかすべきなのだから、と。
リフィルがじっとエミルを探るようにみていえば、
エミルはふっと視線をおとし、つぶやくようにぽつり、と答える。
ミトス、お前はあのときの台詞すら忘れてしまっている、というのか?
あんなに自分が反対したのに、絶対に意見をまげなかったミトス。
なのに。
エミルの言葉に思わずミトスは目を大きく一瞬見開きつつも、
そのおしえたという相手がかなりきになりはする。
するが、
「…そう。戦争はマナをいたずらに消費する」
少しの無言ののち、エミルの言葉に肯定するようにうなづくミトス。
今のエミルの台詞にて、当時のことがミトスの脳裏にふとよぎる。
それゆえの一瞬の沈黙。
「というか、お前ら、話しをすりかえるな!」
ロイドはいまだに何がいいたいのかわかっていないらしく、
話しをすりかえている、ととらえたらしい。
「すり替えじゃないよ。というか、ロイド。もう少し理論的にならないと。
感情のままにうごいて、いずれは後悔するのは絶対にロイド、君だよ?」
「何!?」
きっぱりといわれ、きっとエミルをにらみつけるロイドだが。
「そういうことがなかった、とはいわせないよ?」
「そ、それは……」
じっとエミルにみつめられ、ふとロイドの脳裏によみがえるのは、
マーブルの最後、そしてコレットに対してのあのときの選択、そして、そして。
脳裏に浮かぶのは数えきれない数々のこと。
「・・・・・・・・・・・・・・」
ゆえにロイドは黙りこむしかできない。
でも、とおもう。
「…今の話しのどこが関係があるっていうんだよ。
だって、世界が二つにわかれてるから……」
「で、大樹がないまま、世界が一つになって。
ロイドはほとんどの大地が海に還ってもいい、っていうんだ」
まあ、それでいいならとっととそのようにするだけだけど。
あのときミトスがあまりにも熱心にいってきたがゆえに、それをしていないだけ。
「海に還る?それは?」
そんなエミルの台詞にリーガルが気になったらしく問いかけてくる。
「マナが不足した大地は存続できるはずもないでしょう?
なら、おのずと母なる海に還る、とおもってもおかしくはないでしょ?
この大地からうまれし生命は、始まりはすべて海、なんだから」
そこから始めて誕生したプロトゾーン、のように。
そもそも、全てが瘴気におおわれ、地表という地表はすでに存続していなかったあのとき。
星の悲鳴をうけ、介入をはじめ、マナをそそぎ、百年に一度づつ、ゆっくりと、しかし確実に。
瘴気の海をはじめにマナでうみだせし海でつつみこみ、
あらたな膜、とし、そこからこの惑星の新たなる歴史は始まった。
本来ならばゆっくりと、水の浄化作用で魔族達をも本来あるべき姿。
それに戻すはずであった。
しかし、彼らの軸となってしまっていた欲。
それはすざましく、なかなかそうはいかず、結果とし、
惑星を維持するために彼らを隔離せざるを得なかった。
水の惑星から、大地を産みだし、そして…
そして、エルフ達とともにこの地に移住したときは、
彗星より移住船を利用し、この地に降り立った。
マナを活性化させ、精霊達をうみだし、そして大地をうみだし、そして生命を。
それは遥かなる過去の記憶。
「でも、そいつが大いなる実りを発芽させないから、マナ不足も解消されないんじゃないか!」
そんなエミルの台詞にくってかかるようにロイドがいってくるが。
「たぶん、発芽させても、ヒトは同じことをするとおもうよ?
というか、大いなる実りの存在をしれば、
自分達の力にしよう、とおもって武力行使でもするんじゃない?」
それこそ、あのときにそうであったというように。
「…そう。あのときもそうだった。
私は、きちんと大樹を復活させる旨を二つの陣営にきちんとつたえた。
当時はかの二つの国がそれぞれの小国を束ねていた代表だったからな。
なのに、あいつらはマナの独占をねらい、よりによって戦いをしかけてきた。
マナの力を自分達が独占するために、な。
大樹の種子が助かったのは、我が姉マーテルが命をかけて守ったがゆえ。
なのに、ヒトは……」
ミトスの脳裏によぎるのは、あのとき。
デリス・カーラーンに出向いていた自分にもたらされた連絡。
精霊達からの連絡であわててもどったミトスがみたものは、人に殺されてしまったマーテルの姿。
まだ、あのときにはマーテルは意識があった。
それでも、ミトスの腕の中で、マーテルは……
「今のままで発芽させたとしよう。しかし、おそらくはテセアラの国。
そしてシルヴァラントのものですら、それらを独占しようとし。
芽吹いたばかりの大樹を必ず枯らしてしまう」
ミトスのいい分は一理ある。
というかまちがいなく人々は枯らす。
それはもう確信をもってエミルはいえる。
マナを必要としない世界にしても結局ヒトは世界樹ユグドラシルを枯らしたのだから。
「そんなこと、やってみなけりわかんないだろ!」
「やってみて、枯れました。ではダメなことくらいわからないのか?おまえは?
種子は一つしかない。
その種子が完全に芽吹かなければ、二度と世界に大樹は蘇らない。
その結果、地表はかつてのような世界。
魔界ニブルヘイムにと変貌してしまうだろう。
……精霊ラタトスクの存在がある以上、そこまでならないにしても。だ。
ヒトがそこまで愚かなことをすれば、かつての決定。
地表の浄化をその前にしてくる可能性も否めないがな」
それはかつてラタトスクがミトスにいったこと。
地表を浄化する、ということはかつてのミトスにいってある。
その結果、しつこく、しつこくそれはもうしつこいくらいに考えなおしてほしい。
自分達がどうにかするから、とミトスに懇願されまくった当時の記憶。
記憶が上書きされているせいか、そのあたりも鮮明にラタトスクは思い出せる。
そこまでミトスはいい、少しばかりその口元に笑みをうかべたのち、
「大樹がよみがえったとしても、戦いが起これば樹は枯れる」
淡々と言葉を選ぶように、そしておそらくは、ロイドにもわかるように、
言葉を紡ぎだしてくるミトスの姿。
そう、あのときですら、ヒトはまた魔導砲をつくりだした。
その結果、ユグドラシルは枯れていった。
力をもとめたあの愚かなる国のものたちのせいで。
「戦争は対立する二つの勢力があるからおこるのだ。
だから、私は世界を二つにわけた。
あのまま戦争がつづき、再びマナを消費しないように。
続く戦争を終結にもっていき、彼らに争うことのない世界を提供した。
世界を二つにわけ、彼らが直接干渉しあうことのない世界を。
…あの愚かなカーラーン大戦を引き起こした二つの陣営を分けるために」
テセアラとシルヴァラント。
天地戦争時代までその争いはさかのぼる。
名こそ違えども、あのころから彼らの争いは延々と続いていた。
「今、戦争もなく互いの世界が争いを知らずにいられるのは、
シルヴァラントとテセアラ。二つの勢力が互いの世界に閉じ込められているがゆえ」
というか、本当に、ともおもう。
わざわざ閉じ込めることをしなくても、なぜにいいにこなかったのか、と。
彼は誰も傷ついてほしくない、という理由で世界をわけるという行動をおこした。
それはラタトスクもしっている。
あまりに愚かなので、互いの勢力をきれいさっぱり、
各自の上層部を消してしまおうか、そうおもっていたというのに。
とことんやらすだけやらし、彼らが疲弊したそのときに、
天変地異でもおこしてやれば、彼らはたやすく表舞台から消えていたはずなのに。
それで他のものたちもまきこまれるかもしれないが。
そもそも、上の行動をいさめられない時点であるいみ同罪。
ゆえにそこまでヒトの命を重要、ともおもってもいなかった。
魔物達さえ無事ならば、どうとでもあらたに動植物は創りなおせるのだから。
その魂さえ保護をしておけば。
そんなミトス、否ユグトラシルの台詞に思うところがあったのであろう。
一歩前に進み出ながら、
「そして、マナを搾取しあい、繁栄と衰退を繰り返すことで
魔科学の発展も抑えられている。…というわけね」
リフィルがすっと自分達よりも
少し上のあたりの高い位置にいるユグドラシルにと問いかける。
「魔科学そのものは地表から消してしまったほうがいいとはおもうが。
豊かさになれたヒトはやすやすとそう力を手放しはしない。
ならばそれしかないだろう?知性あふれる同族よ。
…最も、今は少々テセアラに傾きすぎているがな。
おかげでかつてのような兵器がいつ開発されてもおかしくない段階にまできている。
そこのものの会社のせい、もあってな」
そういい、ぎろり、とミトスがみるのは、リーガルの姿。
「我が社が…か?」
いきなり話しをふられ、困惑したような声をあげているリーガル。
「しらぬのか?お前の会社の一部のものは、その技術を力に兵器に運用しようとしているものがいる」
それは呆れたようなミトスの台詞。
「まさか、そんな…!?」
リーガルは根耳に水、とばかりに驚愕した声をあげているが。
「だまされるな!リーガル!
どうせこいつが動揺をさそうために嘘をついてるにきまってる!」
そんなミトスの台詞にロイドは嘘、ときめてかかって叫んでいるが。
というか、嘘ではないようなんだが。
それらは世界を視たときにラタトスクも感じていた。
実際、裏でそういった研究をしていた施設もあったのも事実。
もっとも、それに気付いたがゆえにさっくりとそれらの施設はラタトスクが、
魔物達に命じて消させてはいるが。
「嘘だ。お前はマーテルを助けるために大いなる実りを犠牲にしてるんだ」
そこまでいわれてもどうやらロイドは納得ができないらしい。
まあ、たしかに。
マーテルを助けるために種子の力を利用しているというのは否めないものがあるが。
というかすでに種子にはそこまでの力はもう残っていない。
それほどまでに、人の負、そして死という穢れにおかされ、
それらの力はすでに失われているといってよい。
しかしそんなロイドの言葉を否定するでもなく。
「そうだ。お前がコレットを救うため、衰退するシルヴァラントを放置しているようにな」
逆にロイドにつきつけるように淡々とした言葉をつきつける。
「…それは…」
コレットがその言葉に反応して思わず声をあげるが。
「やっていることは同じだ。犠牲?お前達は何も犠牲にしていないとでもいうのか?
お前達がつかっているそのエクスフィアは誰の力をもってしてできている?
それらはヒトの体にて培養されたもの。つまり人の命の犠牲にうえになりたつもの。
それでお前達は何の犠牲もなく行動している、とでもいうつもりか?笑わせてくれる」
「ち…ちが…」
違う、といいたい。
しかし、事実、エクスフィアの製造方法。
それをしってしまっているがゆえに、ロイドは言い返すことができない。
「違わないだろう?ヒトはかならず何かの犠牲のうえにいきていくものなのだ。
お前達が日々食べる食べ物。それらにも命はある。
お前達は他者の命の上に命を繋げているのだ。
それを意識しているか意識していないか。
それなのに、お前達は何の命も犠牲にしない、といいきれるのか?」
「そもそも、ヒトって忘れがちだからね。全てのものに命がある、というの。
たとえば、魚。あれだって釣ったときには命があるけど、それを料理するでしょ?
鶏などでもそう」
ミトスにつづき、エミルが首をすくめてさらり、と言い放つ。
そう。
人はわすれてしまっている。
命は命の上になりたっている、ということを。
自分達だけが頂点なのだ、とおごり高ぶった考えをもってしまった愚かなるヒト。
そうでないものもいるではあろうが、ほとんどのものが、
自分達が命を消費してもあたりまえ、無駄にしてもあたりまえ。
そんな考えに囚われてしまっている。
「……エミル。エミルはどっちの味方、なの?」
エミルのいいたいことはわかる。
わかるが、エミルにおもわずマルタが問いかける。
「僕?僕はもともと、ヒトはあまり信用してないからね。
だって、いつもヒトは…裏切るから。信じたくても、ね。
人は些細なことで変わってしまう。でも変わることもできる。
たとえその道を踏み外して、当初の思いを歩み間違えたとしても」
「…?エミル?」
すっと目をとじるエミルにたいし、マルタは戸惑いの声をうかべるしかできない。
「で、でも。ロイドは世界もコレットも救える道をさがしてる!
エミルも迷わすようなことをいわないでよ!」
ジーニアスがエミルを非難するかのようにそんなことをいってくるが。
そして、きっとミトスを睨みつけるように、
「ロイドは皆が幸せになれる方法を探してる。
なのに、お前はそれを諦めたいくじなしだ!勇者ミトスがきいてあきれるよ!」
目の前にいる、視線の先にいるミトスにむかって高らかにいいはなつジーニアス。
そんなジーニアスの台詞に思うところがあったのであろう。
「……私もかつては、そうおもっていた。全て救う道がある、と。
だからこそ、地表を浄化しようという精霊を説得し、猶予をもらい、
そして、世界にはびこる戦争を終結させた。しかし、その結果。
人々はかわった、とおもうか?その結果にもたらされたのは姉の死。
しかも信じていた両勢力の陣営によって。…お前が姉をそのようにされたら。
お前ならばどうする?ジーニアスよ?
信じていたものに裏切られ、たった一人の大切な姉をころされたとして、
お前はあきらめることなく、まだヒトは平等で全ての命に価値がある。
そんなことをいいきれる、か?」
「・・・・そ、それは……」
ジーニアスはさりげなくぽつり、といわれた自らの名にきづかない。
なぜ目の前のユグドラシルが自分の名をしっているのか、という違和感に。
「――でも。ミトス。でも、どうして。
どうしてそこで、微精霊達を犠牲にする必要があったの?
あの子達が穢されたら、世界がどうなるか。…わからなかったわけでもないだろうに」
それはずっとエミルがおもっていた疑問。
ミトスが率先してエクスフィアとよばれし石を、
人間牧場と呼ばれる地で生産…つまり、精霊石を穢しているというのをしったとき。
あのときから思っている疑問。
「…何ものも差別されない世界をつくるため。全てが同じ種族なってしまえば。
戦争の根源ともいえる種族間の隔たりはなくなる。
そうすれば、差別もなくなり、平和な世界がおとずれる。
それが世界を救う道。
しかし、そんなことをなしえる力をもったものは……」
「…精霊石の力、って?でも、それは……」
ミトスはわかっていたはず。
あのとき、魔界の窓が開かれたあの一件。
あれはあまりにも人が精霊石を大量に穢し、そして死にて穢し、
さらには生贄という名の大量なる奴隷ととぼしめたものたちの処刑。
それらを糧として、あのものたちは地表に召喚されてしまった、ということを。
幾度も話しあえばきっとわかってもらえるから。
そういっていたあのときのミトスの心に嘘はなかったはず、なのに。
「何ものも差別されない、国?それは……」
エミルの言い回しもきにはなるが、ロイドにとって気になるのは別のこと。
今、ユグドラシルがいった、何ものも差別されない国。
それがひっかかる。
「人は異端のものに恐怖し、それを嫌悪する。
自分と違うものがおそろしいのだ。
幼い子が自分と少し違うところをみつけ、必要にその相手をとぼしめるように、な。
たとえば外的要素。幼い子は純粋というが、残酷でもある。
そしてその残酷さがヒトの心をよりあらわしているといってもいい。
少しの違いをみつけただけで平気で子供達は相手を傷つけ、時には排除しようとするだろう?
神子、お前達もわかっているはずだ。自分達とは違う。
そういわれ、お前達はそだってきたはず。そしてロイド、お前も、な」
ロイドもイセリアの人々に、特に村長にドワーフ風情に育てられたよそものが。
そういって常にそだってきている。
「なら、そういった外的要素も含め、全てが同じになってしまえばいい。
エクスフィアを…微精霊達の力をつかい体に流れる人やエルフの血をなくせば、
この地上のものは全員、無機生命体化する。差別はなくなる。
それが私の望む千年王国」
「皆が…同じ……」
その言葉にぽつり、とジーニアスがつぶやく。
たしかに、同じであればハーフエルフ、というだけで迫害はされないだろう。
だからこそその言葉に心動かされてしまう。
「そうだ。ディザイアンもクルシスも、そのために組織されている。
差別をうみ種族の争いはきえるのだ。
我らハーフエルフが迫害されることのない、世界がやってくる」
「…差別されなくなるの?本当に?」
「っ!だまされるな!ジーニアス!
そのためのエクスフィアはどうやってつくられていた?
マーブルさんみたいに誰かの命が削られてエクスフィアができるんだ。
そんなの…おかしいじゃねえか!」
一歩前にでそうとするジーニアスにたいし、ロイドがすかさず反論する。
「でも、ロイドは面とむかって差別されたことがないから!
ロイドにはわからないよ!絶対に!仲のよかったヒトも、
僕らがハーフエルフだから、という理由だけで、諸悪の根源扱いし、
ずっと定住すらできなかった僕らの気持ちは!」
「…ジーニアス……」
でも、ジーニアスとて黙ってはいられない。
ロイドにあたっても意味がないのはわかっている。
でも、わかってほしい。
自分達がどれだけその種族の差、というものに苦しめられていたのかということを。
「たしかに。俺達はハーフエルフ、というだけで、いるだけで悪とされる。
エルフと通じたという理由で殺され、ハーフエルフを匿った。
また話したりしたこどかある、というだけで処罰の対象となる。
国に所属するのをこばめば問答無用で生体実験の材料か処刑。
ロイド。お前はそんな経験をしてはいないだろう。
身近なものが常に命の危険にさらされている、そんな生活は、な」
「…リヒター……」
淡々とつむぐリヒターの台詞にアステルが心配そうに声をかける。
リヒターのいった言葉こそが、まさにテセアラでのハーフエルフの現状。
「何か少しでも異常とか、何かの被害とかあったら、
ハーフエルフだ、という理由だけで全て僕らのせいにされる。
そんな経験、ロイドにはないでしょ!?」
「……ジーニアス、お前……」
魔物の襲撃があっただけでも、ハーフエルフがいたから、という理由で迫害される。
エルフと偽り生活していても、ばれれば一環の終わり。
だから、ジーニアスはロイドに真実をきりだすことができなかった。
ずっと。
友達だ、とおもっていても、ハーフエルフだとしってしまえば、
これまでもあっさりと態度を変えられていたがゆえに。
ロイドはそこまで深く考えることをしなかったのであっさりと認めてはいはしたが。
ジーニアスの魂からの叫びにロイドは戸惑いの声をうかべるしかできない。
親友、とおもっていた彼がずっとそんな思いを抱いていたなど。
ロイドは気付くことができなかった。
否、気づこうとしなかった、というべきか。
「…ジーニアス」
鬱憤がたまっていた、のであろう。
そんな叫ぶジーニアスの肩にリフィルがぽん、と手をのせる。
「…ごめん。ロイドにあたってもどうにもならないのに。
でも、もしも差別が本当になくなる世界になるなら……」
「改革に犠牲はつきものだ。
私の改革など、当初行われる予定かもしれなかったことにくらべれば」
なぜか含みがあるようにいってくるミトスの台詞。
…ミトスの奴、もしかて、まだ根にもってるのか?
あっさりと、あのとき。
ミトス達がやってきたとき、
あまりにひどいので、すきなだけやらしたのちに、地表を浄化する。
といったあのときの台詞を。
でも、だからといって。
「……てっとり早い方法をとって、そこに伴うリスクは考えない、っていうの?
精霊石の力は確かに強大。何しろ孵化前の微精霊達の集合体だもの。
でも、微精霊達を穢す、その行為によって得られるものは何もない。
そんなことをすれば…地表は、世界は……」
ミトスのいい分もわからなくはない。
ないが、そこに微精霊達の卵といえる精霊石をつかわなければ、という注釈がつく。
しかも魔物達まで魔科学の装置であやつって。
それらはラタトスクからしてみれば許容の範囲内を超えている。
ぎゅっと手を握り締めミトスをみながらいうエミル。、
「…エミル、お前は、いったい……」
そんなエミルの言葉をうけ、めずらしく視線をさまよわせるミトス。
そこまで詳しく知っている、というかそのそぶりでは。
かつてのまるで、あのときおこったこと、魔界の禁書が産まれた経緯。
あのときの事件をしっているかのようなエミルの態度。
ゆえにミトスはとまどわずにはいられない。
これ以上、エミルと話していれば、考えが揺らいでしまう。
それゆえに、
「神子はわたしてもらおう。そしてロイド。
お前のその身ももらいうける。
お前はその人為的につくられしクルシスの輝石。
それにもっとも融和性の高い素材。研究体としては申し分がないからな」
「なっ!」
「お前と神子が素直にこちらにくるならば、他のものはいかしておいてやろう」
「ふざけるな!」
ミトスのその台詞にロイドが思わずその手を剣の柄に手をかける。
「ロイド!私もたたか…う…」
そこまでいいつつ、その場にかくん、と膝をつくコレット。
「コレット!?」
「いけない。まだ完全にこの子の症状はあくまでも簡易的に抑えられているだけ。
症状がすこしばかりまた進行してしまったのかもしれないわ」
そんなコレットの様子にきづき、驚きの声をあげるロイドに、
あわててコレットにちかより、コレットの脈などをたしかめそんなことをいっているリフィル。
「はやく神子をわたせ。わがクルシスで神子の病は治療しよう」
「させるか!」
ロイドがそんなユグドラシルにたいし、そのままつっかかっていこうとするが。
そんなロイドを片手ですっと制するエミル。
「エミル!?何でとめるんだよ!」
今の状態はミトスにつっかかっていこうとするロイドを、エミルが片手を横にし、制している状態。
「…ごめん。ロイド。でも、ミトス。これだけは教えて。
どうして、どうして微精霊達を穢す方法を選んだの?
そんなことをしたら……」
絶望なんてしない。
どこかにかならず道はあるはずだもの。
いつも彼がいっていた言葉を思い出す。
「道はあったはず。いや、その道を探してたんじゃなかったの?」
僕はその道を絶対にさがしだしてみせるんだ。
そうしつこくも毎回のようにいっていた。
だからこそ、聞きたい。
なぜ、再び魔界の扉が、新たにくつられるような方法。
それをとっているのか、ということを。
「……なぜ……」
ミトスがそんなエミルの視線をうけ完全に戸惑いをみせる。
そしてそれは背後にいるリーガル達とて同じこと。
ゼロスなどは、思いっきりため息をついていたりする。
確実に面識がある、とはおもっていたけど、これは……
そんな思いがゼロスからしてみれば捨て切れない。
おそらく、エミルは、否、ラタトスクはミトスを救おうとしているのだろう。
それはエミルがほぼラタトスクだと理解してしまっているがゆえに思えること。
でなければ、世界の主要たる役目を担うセンチュリオン達が、
エミルに従っているはずもない。
と。
「ユグドラシル様を迷わすものはゆるさん!」
ふと、別なる方向から第三者の声がきこえてくる。
はっとみれば、この場に別のもの。
すなわち第三者の姿が現れたらしく、
その顔はにくにくしげにじっとエミル達というかリフィルに注がれている。
「よりによって、我の名すら使用するなど、ゆるせん!」
何やらそんなことを憎々しげに一行をみつついってくるが。
…どうやら、かの地で自分の名がつかわれたことを知らされたがゆえに立腹しているらしい。
そんな声とともに、現れたプロネーマが魔法を紡ぎだす。
その魔法はエミルにむけて。
プロネーマからしてみれば、目の前の金髪の少年?が、主であるユグドラシルを惑わしている。
そのようにしかみうけられない。
「!?」
「ミトス!?」
それは一瞬の出来事。
エミルに標的が絞られている、と理解したミトスは、
すばやくエミルの前にとまわりこむ。
直後、プロネーマの放った術がミトスに直撃してしまう。
「くっ」
その場に直撃をうけて倒れ込むミトス。
ぐらり、と倒れ込んだミトスはそのまま反動のまま、台座の上から転がり落ちる。
「ちっ。よりによって……ソルム!」
そんなミトスにあわててかけよりつつ、すばやく状態を確認したのち、
姿をけしているソルムを呼ぶエミル。
「…よろしいのですか?」
「しかたない。よりによって、石に攻撃が炸裂している」
しかも、今の攻撃は、闇属性のもの。
ミトスの負の力におかされはじめているかの石は、
闇の力によってさらに方向性を間違いかねない。
そこにはたしかに微精霊達は宿してはないとはいえ。
ミトスの体、そして魂に負担がかかるのは必至。
エミルの言葉とともに、その場にみたこともない亀のような何か。
その姿は亀のごとく、しかしどこからどうみても亀、ではない何か。
水晶のような茶色い透明な甲羅をもちて、ふわふわと空中にういているそれ。
「……セン……」
「話すな。ったく…」
甘いのはあいかわらず、か。
あのときにしろ、今にしろ。
あの程度の攻撃など、力を取り戻している自分ならば、
直撃する前に消すか反射してしまうことが可能であったのに。
本当に、とおもう。
「……いつも、予測がつかないことをするよな。お前は」
それはぽつり、と小さくつむがれたエミルの言葉。
その場に膝をついたのち、崩れ落ちたミトス。
そんなミトスの脇にかがみこむようにして座っているエミル。
その声は小さすぎて、倒れているミトスの耳にかろうじて聞こえる程度。
その声はいつもミトスが旅の最中きいている声、ではなく。
どこか深く、そしてなつかしいような、そんな深く、しかもしみわたるような声。
ぽうっとエミルの手が淡く輝くとともに、一瞬、
ミトスの胸元にある石もまた淡く輝く。
この石こそ、かつてミトスが自分達が魔族を封じる。
といったときに、ラタトスクがミトス、そしてマーテルに授けた石。
石という形をとっている以上、この石もまたソルムの庇護下にあるといってよい。
だからこそ、ソルムの力をより多く注ぎ込み、
ヒビがはいりかけたそれを瞬時に再生させる。
「…う……」
ミトスが意識を失いそうになるそんな中、ふわり、と感じる暖かな力。
そしてふと目をあければ、気のせいか一瞬、緑の瞳、のはずなのに。
その瞳の色が深紅にみえたのは。
一瞬、何があったのか理解に苦しむが。
すぐさまに状況を思い出し、あわててその場におきあがる。
そして。
「あ、まだ動いたら…」
そういうエミルを片手で制するかのように、
「何用だ!プロネーマ!」
きっと、階段の先の台座の上にいるプロネーマにと語りかけているミトス。
ちらり、とみれば、さきほどみえたはずの亀の姿をしているそれ。
その気配は間違えようもなくセンチュリオンのもの。
ミトスの上空にいつでも何らかの対処ができるように浮かんでいるソルムは、
ミトス、そしてその視線の先にいるプロネーマにいつでも対処できるように、
常に警戒をといていない。
「え、あ…例の件がうごきだしました故……」
まさか身を挺してあの子供をユグドラシルがかばうとはおもっていなかったがゆえ、
自らの攻撃が直撃してしまったプロネーマは戸惑いの声をあげざるをえない。
そして、そんなユグドラシルにエルフの血筋でもないであろうに、
回復術らしきものをかけている金髪の少年にも。
「……わかった」
それだけいい、その場にすくっとたちあがる。
「……ミトス?」
そんなミトスにエミルが声をかけるが、ミトスはじっと目をとじ、そして。
「覚えておけ。ロイド。全てを救える道がいつもあるとは限らない。
世界とは、犠牲のうえにどうしても成り立つことが必要である、ということを。
精霊達には悪い、とはおもっている。しかしこれしか方法が……」
それだけいい、すっとエミルに視線をむけ、そして静かに再び目をとじたのち。
「…ロイド。お前のおいかける道は幻想だ。
理想を抱くはいい。しかしその理想にたどりつくまで、
数多の犠牲もありえることを忘れるな。お前はその理想で全てを巻き込むだろう」
預言にも近しいミトスの台詞。
たしかに、かつてロイドはマーテルやユアンにいわれるまま。
世界が、大地が消滅することなど考えもせず、ラタトスクを封じようとしていた。
ゆえに、今のミトスの預言めいた台詞はあるいみ正しい。
いいつつも、そのままその場から光とともにかききえる。
「あ。…まだ、完全でなかったのに」
「…ですから、甘すぎるかと」
「…ソルム」
そんなラタトスクの間横にふわり、とおりたつソルムがそんなエミルにいってくる。
ソルムからしてみれば、気持ちはわからなくもない。
あの子供達に主であるラタトスクが心を動かされていたのを知っていたがゆえ。
裏切られている、とわかっても、それでもやはり思うところはあるのだろう。
それはセンチュリオン達とて理解していた。
それでも、ミトスが裏切っている以上、ラタトスクを利用しようとする。
その可能性が否めない以上、センチュリオン達からしてみれば、
正体を気付かれるような行為はしてほしくない。
本当に、いつもおもう。
どうもこうして人間形態としてディセンダーとして表にでた主は、
どうしても他の命にたいし甘くなってしまっている、と。
ふとソルムが視線を下にむければ、そこにはみおぼえのある笛が一つおちている。
それはミトスの笛。
「…どうして俺達を見逃したんだ?」
ロイドのとまどったような声。
しかし、それ以上に、
「…エミル。今度こそ詳しく聞かせてもらうわよ?
あなたは、今、ユグドラシルに何をききたかったの?」
まるで、そう、エミルは彼をしっているかのような口ぶりだったような気がする。
というか、たしかにエミルはユグドラシルにむかい、ミトス、と呼びかけていた。
たしかにミトス・ユグドラシルという名で勇者ミトスだ、とはきいている。
それこそエグザイアなどにおいて。
でも、どうしても勇者ミトスとあのユグドラシルが同一だ、などとなかなか信じられない。
それもリフィルからしての本音。
リフィルの言葉にエミルはただじっと目をとじるのみ。
微精霊達を利用しようとしている、というのは間違っている。
そうミトスは今いった。
その結果、何がおこりえるかわかっていたはずなのに。
なのに、なのにどうして。
そこまであれから迫害がひどくなっていたのだろうか。
それこそ、種族が統一してしまえば問題ないとおもえるように。
それとも…四千年の間にそのように思えることがあったのか。
でも、今ので確信したこともある。
ミトスの石に直接触れたがゆえにわかったこと。
あの石はかなり【負】におかされていた。
だとすれば、ミトスも半ば負に侵されているとみてほぼ間違いはないであろう。
完全、ではないが狂いかけ。
ならば、どうにかしなければ。
本当に、どうしてデリス・エンブレムを常に身につけていなかったのだろうか。
あれさえ肌身はださず身につけていれば、
すくなくとも負に侵されるようなことはなかった、というのに。
エミルがただじっと目をつむっているのをみて、答える気がない、とわかったのか。
リフィルは盛大にため息をつかざるをえない。
得体が知れないとはおもっていたが、ここまで、とは。
それに、エミルの横にいるそれ。
あきらかに精霊でも魔物でもない気配のマナをもちしもの。
コツン。
「…これ…」
ふと、そんなエミルの横に近寄ろうとし、ふとジーニアスが何かを蹴飛ばしてしまい、
それにきづきそれをその場から拾い上げる。
それは、ジーニアスにとってもみおぼえがある一つの笛。
たしかあのとき、エミルが壊れたそれを修繕したはずの、ミトスの…
ミトスの姉の形見だ、という笛。
一瞬、同じ形の笛か、ともおもった。
しかしそこにみおぼえのある文字のはいったタグのようなものをみて、
思わずジーニアスは笛を手にしたまま固まってしまう。
「…まさか…まさか……」
「どうかしたんですか?ジーニアス?」
そんなジーニアスの様子をただならぬもの、と感じたのか、
プレセアがこれまで経緯をじっと見定めていて黙っていたが声をかける。
たしかにエミルについてはいろいろと思うところがありはする。
するが、エミルに敵意が感じられない以上、
また知られたくないことは誰しも一つや二つはもっているもの。
そうプレセアはおもっているがゆえ、今のやりとりをエミルに問い正す。
そんな考えはおもいつかない。
というか思えない。
そしてジーニアスもエミルのことを疑問におもいはしたが、
笛を拾ったことにより、それらの考えはもののみごとに吹き飛ばされてしまう。
ミトス。
勇者ミトス。
ミトス・ユグドラシル。
そして、この笛は、かつてミトスがジーニアスに預けてくれたもの。
まちがいない。
同じ品だ。
エミルが直したあのとき、ジーニアスはそれを目撃している。
壊してしまったと負い目を感じていたがゆえ、それだけは鮮明にジーニアスは覚えている。
信じたくはない。
けども、つじつまがあってしまう。
あのとき、オゼットでたったひとり、無事であったことも。
そして、なぜか自分の名を呼ばれたことも。
それでも、ロイド達に気づかれるわけにはいかない。
ゆえにジーニアスは咄嗟にその笛をポケットに隠す。
ふとみてみれば、
「コレット!大丈夫か!?」
「へい、き」
「輝石化が進んだ、というわけではなさそうだけど。
とにかく、早く休ませてあげることが必要ね。あと、早く残りの材料。
マナリーフを手にいれて一刻もはやく、コレットの治療を施す必要があるわ」
ちなみにコレットが崩れ落ちたのは、急激なる重力変化。
それによってコレットの意識が一瞬遠のきそうになったにすぎない。
下手に無重力状態にてマナを解放し翼を展開していたコレットは、
その器におけるマナの消費量が半端なかった。
それゆえの副作用がいまさらおそってきた結果であったりするのだが。
ふとジーニアスがコレットのほうをみてみれば、
コレットを必死で看病している姉リフィルと、
あわててコレットを抱き起そうとしているロイドの姿が目にはいる。
そしてジーニアスの少し前では、いまだに何か思うところがあるのか、
じっと目をつむったままたちすくんでいるエミルの姿も。
「――とにかく。ここからでねえか?
ここじゃ、コレットちゃんを休ませることすらできないし、な」
そんな彼らの様子をみつつ、ゼロスが深いため息をつきつつもいってくる。
「では、アルタミラにむかおう。あそこならかなりの医療設備もととのっている」
「そうね。のこしてきた彼らのこともきになるしね」
「……」
僕のこの考えが違うことを祈ってるよ。
ミトス。
ミトスはアルタミラにいっているはず。
なら、今この時間帯にミトスがアルタミラにいた、という裏付けがとれれば、
この笛はあのユグドラシルが自分をはめるために用意した偽物。
そう結論つけられるから。
それぞれ思うところはあるにしろ。
コレットの身のこともあり、一行は一度救いの塔をでて、アルタミラへと向かうことに。
~スキット・救いの塔にて、ミトスが消えたあと外にでる間~
ロイド「…エターナルソードが目の前にあったのに何もできなかったなんて」
しいな「あたしとしては、ただの魔剣っておもってたあれが。
精霊だというのにびっくりだよ」
リフィル「そうね。精霊は基本、精神生命体。ゆえにどんな姿にでもなれるからね。
見かけにだまされてすっかりだまされるところだったわ」
マルタ「でも、精霊ならいつものようにしいなが契約できないの?」
しいな「たぶん無理だろうね。オリジンの契約も関係してるんだとおもう」
リフィル「おそらくはそうでしょうね。
だからこそ、私たちにはどうにもできないとしっているからこそ、
彼はここにおいていったのよ」
アステル「というか、まだ知られていない精霊がいたことに驚きです!
あの精霊の本質はどんなのなんでしょうか!」
リヒター「…はじまったぞ。アステルの精霊講座が……」
リフィル「たしかに。私も聞いたことのない精霊の名だったわね」
アステル「他にも精霊っているんでしょうか?というか、僕がきになってるのは。
さっきエミルがいってた微精霊とか何とか……」
エミル「・・・・・・・・・」
マルタ「?エミル?」
エミル「あ、ごめん。ちょっといろいろと考えることがあったから」
ジーニアス「そういえば、以前から、エミルはエクスフィアは精霊石っていうものだ。
っていってたっけ?…あまり意識してなかったけど」
エミル「うん。本来、君たちがつけているそれは。
世界に満ち溢れている微精霊達。それらの卵ともいえるものなんだよね。
本当ならばマナがみちて、その石から微精霊、として孵化し、
世界に解き放たれるはずなんだけど。ヒトがよりによって、
そのコたちを穢すことによって、その力を悪用しているようだしね。
微精霊を無理やりに狂わせて本当にヒトは何がしたいんだか」
ソルム「まったくです。そもそも精霊の力がヒトにあつかえるはずもないでしょうに」
リヒター「で、お前はいったい、何なのだ?」
いいつつ、すっとソルムに指先をむけ、怪訝そうにといかけているリヒター。
どうやらその思いは同じらしく、他のものも、こくこくとうなづいていたりする。
どうやら皆、ソルムのことは一応気にはなっていたらしい。
ソルム「私ですか?私はエイトリオン・ブラウンのソルムです」
エミル「だ・か・ら!何でおまえらはまだそのネタをひっばるんだ!」
まだいっているのか。
というか、まさか八柱全員、このネタでいくつもりか!?
ラタトスクとしては思わず叫ばずにはいられない。
たしかにセンチュリオンと名乗るな、といったが。
ソルム「我らはエイトリオン戦隊の一員ですので。あ、ちなみに司令官はエミル様ですよ」
エミル「だ・か・ら!俺はそんなものになった覚えはない!」
ソルム「いえ。でも昔、そのようなことをしたことが」
エミル「あれは!ノルンがどうしてもというからの演技だろうがぁぁ!」
まだノルンを産みだしてまもないとき。
たしかにそういったことをしたことがある。
あるが、いつまでそのネタをひっぱるつもりだ。
と切実にラタトスクからしてみればいいたい。
テネブラエ達だけではなくソルムまでこのネタをひっぱってくるとは。
まさか、とおもいラタトスクは嫌な予感が捨て切れない。
まさか、こいつら、八柱があつまってはこのネタのことで相談してるんじゃないのか!?
と。
なぜかふわふわといまだに横にうかびし亀のようなそれにむかい、
おもいっきり力説するように叫んでいるエミルの様子は。
いつもの温和なエミルの態度ではない。
絶対に。
マルタ「え、えっと?エミル?」
アステル「…何か、エミル、いつもと口調がちがうね?何か荒々しい?」
リヒター「…お前らとおなじで、エミルも二面性をもっているんじゃないのか?
リフィルにしろアステル、お前にしろお前達は二面性が強いからな」
アステル&リフィル「「どういう意味(かしら)(かなぁ)?」」
ジーニアス「・・・・・・・・・・・・・」
プレセア「?ジーニアス。さっきからどうかした、ですか?」
さっきから、ジーニアスは黙り込んだまま。
そんなジーニアスにきづき、プレセアが心配したように声をかける。
ジーニアス「う。ううん。何でもないよ(違うよね?ミトス。これは何かの間違いだよね)」
そんなジーニアスとプレセアとは対照的に、
エミル「……はぁ。とにかく、名だけなのっておけ。いいな」
どうやらかなり脱力したようにうなだれつつも、そんなことをいっているエミルの姿が、
ジーニアス達の視界に映りこむ。
ソルム「ええ?!決めポーズなどそろったときには必要では!?」
エミル「せんでいい!!」
コレット「…ぷ。あはは。なんだか亀さんとエミルって仲良しだねぇ」
そんな彼らのやりとりをみて、コレットが思わずふきだし笑ってしまう。
たしかに体に倦怠感を感じはするが、今のやり取りですこし心が軽くなったような。
そんな感じがしてしまうほど。
ロイド「コレット。平気、なのか?」
コレット「うん。なんかさっきめまいみたいなようなものがしただけだから。
大丈夫だよ」
ロイド「…お前の大丈夫ほどあてらにならいものはないんだよ」
嘘をついているようではないが。
しかし、コレットの大丈夫、ほどあてにならないものはない。
とロイドはこれまでの旅で身をもってして知っている。
マルタ「めまい、といえば。あの塔を移動しているときも頭がくらくらしてたけど」
プレセア「それは私も、です」
マルタにしろプレセアにしろ、頭がくらくらし、そして頭がいたかった。
リフィル「それはおそらく、空気の密度や重力に関係しているのだとおもうぞ。
いいか?そもそも、人体とそういったものの関係は……」
ロイド「うげ!?先生、いつのまに遺跡モード!?」
リヒター「というか、なぜに皆、この不思議な輩に突っ込みをしないのだ?」
いいつつも、すっとソルムに指をさしながらもいってくるリヒター。
かなりソルムの存在に疑問を抱いているらしい。
アステル「興味深いよねぇ。本当に。ねえ、解剖してもいい?」
ソルム「断固として拒否させていただきます。
しかし、髪の長さ以外、本当にエミル様にそっくりですねぇ」
アステル「でしょ?だから、エミルには僕の双子の弟設定になってもらって。
お兄ちゃんってよんでほしいのに、よんでくれないんだよねぇ」
ソルム「・・・・・・・・・・・・・」
エミル「…アステルさん、まだそれあきらめてなかったんですか……」
リヒター「あきらめてよんでやればどうだ?」
エミル「それは何か違うとおもうんですよ。ものすっごく」
ゼロス「さて、アルタミラで美人なお姉さんがたがまってるぜ~」
セレス「そうですわね。お兄様。タバサさんやリリーナさんがまってますものね」
しいな「…たぶん、ゼロスがいってるのは違う奴らのことだとおもうけどねぇ」
リーガル「神子。妹御の前でみだらな行為だけはやめておくのだぞ?」
ゼロス「どういう意味よ!俺様は何もいつてないっしょ?
ただ、アルタミラにいくなら海にはいったりするのも定番ってだけで」
セレス「海、ですか?お兄様、わたくし、すいかわりというものがしたいです」
ゼロス「よっしや!まかしときな!スイカを十個でも百個でも買い占めて…」
しいな「この、あほ神子!そんなに買い占めてどうすんだよ!」
コレット「すいかわり?なんだかおもしろそう~」
ロイド「…本当に大丈夫なのか?コレット?」
コレット「ロイド、スイカをわるんだって。どうやってわるのかなぁ?
ロイドがよくやってた手套でわるのかな?」
マルタ「…ロイド、村でどうやってスイカたべてたの?」
ロイド「いや。野生のスイカをみつけたら、冷やしてそのまま手でわってたべてたから」
ジーニアス「村でもつくられていたけど、よく魔物に被害にあってたんだよね」
エミル「…え?えっと、ごめん?」
ジーニアス「何でエミルがあやまるのさ」
エミル「何となく?」
コレット「被害をよくだしてたのはもぐらさんだよ。
そういえばあのもぐらさんって姿形からノームの親戚なのかなぁ?」
ロイド「そういえば、あのノームももぐらだったな」
リーガル「…なにか、また話しがずれまくってないか?」
しいな「ああ!?」
ロイド「な、何だ!?どうかしたのか?しいな?」
しいな「あたしとしたことが!あの無重力状態をどうにかするのに。
ノームを召喚しとけばあんな面倒なことにはならなかったんだよ!」
ロイド&ジーニアス「「あ」」
エミル「(今さらきづいたのか。まあいいが)」
リーガル「しかし、貴重な体験ではあったな。無重力空間、か」
アステル「人工的につくれないか、という実験がどこかで行われていたらしいんですけど。
その施設があったらしい、と噂があった場所には、
なんか巨大なクレーターが残ってるだけなんですよね。
何かがあったらしくて」
リヒター「おおかた、実験に失敗したのだろう」
プレセア「…だから、絶対に話しがずれている、とおもいます。
なぜ、アルタミラの話題からスイカ、そして無重力になるのでしょうか?」
ソルム「人の話題の変貌ぶりはヒトの世界の変貌ぶりに通じるところがありますね」
エミル「まったくだ」
マルタ「そういえば、あのユグドラシルがいっていた資格とはなんなんだろう?」
リフィル「きになるわね。けど、今は早くここからでましょう」
pixv投稿日:2014年8月18日某日(Hp編集:2018年5月6日(日)
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あとがきもどき:
ラタ様とミトスの邂逅でした。
ミトスがラタ様をかばったのは、本当に無意識です。
無意識下では、ミトスはエミルにものすっごい親近感もってますので。
伊達にラタトスクのところに通い詰めていたわけではないのですよ。
無意識ではあるけど、もしかして、とはおもっていたりするのです。
原作ゲームでは、狙われるのはジーニアス、でした。
あれってたぶん、一番”値”が大きい人が狙われるのかな…とかおもったり。
そういえば、リヒター視点の漫画がついに六月に発売されているにもかかわらず、
…何で、原型のままのラタ騎士の漫画がでないんでしょうか?謎です。
ラタ(エミル)視点の漫画もつくってもいいじゃない!
とおもっているのは私だけではないはずです。絶対に。
TOPすら、中途半端なところではあったけど(世界にもどってダオスと戦闘)
でおわってたけど、漫画版、あったのに……
あれもあれでおわってしまってたからなぁ。
やるならラストまでやってほしかったわ。
さらっと仲間達がくわわった、みたいに流されてたけど。
初期のころのはよく漫画でてたけど
(デスティニーがいいれい、いろんなパターンでてるし)
後半になっていくに従い、
テイルズ作品の漫画版がなくなってるような気がするのはこれいかに?
リヒター視点のがよくうれたから、という理由で原作のまま漫画版。
ナムコさん、つくってくれないかなぁ。というか許可してくれないかなぁ。
できればシナリオライター書きおろしのきちんとした公式設定で(かなりまて
そして、できれば古代勇者達とラタとのかかわりを描き下ろしとして、
漫画版としてでも掲載してくれればいうことなし!(かなりまて
でも、古代勇者編…あれってぜったいにゲーム化、もしくはOAV化しても、
絶対に人気でるとおもうんですよね。
ラストは、マーテルが死んだところで、組織をつくりあげる、というあたりでとめて。
そして、歪められた二つの世界の歴史ははじまった、みたいな感じで(こらこらこら
何しろ主人公が死んでおわったという、前例(コードギ○スのルルーシュ)
があるんだから、許される範囲だとおもいます。切実に。
古代勇者さんのMADをつくってシンフォニア案内つくってた作品がありましたけど。
あれの出来はすばらしかったしなぁ。
あれ、絶対に公式設定でつかってもいいんじゃないか、という出来だったし。
(興味ある人は、ニコさん動画で検索してみましょう。絶対に気にいりますv)
ラストの壁画タペストリーに「new Game」
と文字がでてて、本当にクリックしそうになったというのは私だけではないはずですv
実際にコメントにもそんなのが多数乗ってましたしね。
あと、復讐のリヒターの漫画をよんで、
あの場にラタトスクがアクア達を迎えにいってたら?の妄想話がとまりません(笑
蝶でセンチュリオン達がなかなかおきない(テネブラエ除く)
なので移動してて、アクアが危険になってたから、たまたまそこにいたアステルの姿。
それをもして具現化するラタ様、みたいな(マテ
で、アクアがラタトスク様~v状態で(かなりまて
いきなり現れたアステルに瓜二つの彼をみてアステルもリヒターもびっくり(だからまて
何で僕と同じすがた?きかれて、たまたまだ、ときりすてるというラタ様だったり。
大樹のことをきかれ、マナをあれはうみだしてないのだから仕方ない。
楔の役割ははたしているようだが、とあきれぎみのラタ様です。
なのに、マーテルはラタが世界を破滅させようとおもっているとおもって、
ロイドに依頼をだしてたりするのですよ。ラタはそんなきないですのにね。
というか、もう面倒だから新しい世界でもつくって精霊ひきあげるか?状態だったり
そんなまたまたIf話を思いついては楽しんでますv
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