ふわり、ふわりと雪が舞う。
「今年も無事に雪まつりができてよかったわねぇ」
「本当。いきなり雪が溶けだしたときにはどうなってるのかと」
そんな会話が聞こえてくる。
「?この雪がとけてたのかなぁ?」
「うん。そうみたいだね」
自由行動、といわれても何をしよう、というのが正直なところ。
しかし、エミルが日々安く料理を配布していたのをしっていたこともあり、
運営側からぜひとも時間制限があってもいいから、露店を開いてほしい、といわれ。
ならば、簡単なデザートをつくっては配っている今現在。
ロイドはコレット、ジーニアス、セレスとミトスをひきつれて、
雪まつりの会場内をぐるり、とめぐってくるらしい。
プレセアはさすがにメルトキオで貴族の中で人気となっている細工師だけのことはあり、
かの品の制作者とわかれば、それこそ貴族の女性たち、
そしてまた新作をもとめる人々にいつのまにかたかられてしまい、
結果としていつのまにか用意されていた…というか、
エミルが常にかまくらの横に常備していた木々をつかい、
細かなプローチなど、といったものをつくりだしていたりする。
ちなみに、さすがに一人で、というのも問題があるゆえに、
同じコーナー、すなわちスペースにてプレセアの製作所と、
そしてエミルの露店があり、この場はすでに人だかり状態。
リーガルはフラノールの開催責任者と話しがあるらしく、この場にはおらず、
ゼロスはゼロスで女性たちに神子様、神子様、といって囲まれていたりする。
「まったく。皆元気だねぇ」
子供達だけで移動するのに祭りなので問題はないだろう、というリーガルの意見もあり、
何でも祭りの期間中はレザレノの社員でもある祭りを開催している係り員。
そういったものが常に見回っているらしく、トラブル回避にもつとめているとのこと。
リフィルはせっかくこの地にやってきたのだから、という理由から、
時間があるのならば氷の神殿を改めて調べにいく!といいだしたアステルとともに、
再びリーガルとリリーナをひきつれて、氷の神殿にむかっていたりする。
マルタとしいなはあぶれた、というか、しいなは寒いので歩きまわるのは避けたい思いもあり、
マルタはマルタで料理をつくっているそんなエミルのお手伝い。
理由として、エミルの手料理をかった人々が、エミルにいいよったりする、
という光景をみたから、なのだが。
もっとも、エミルは言い寄られている、という感覚はゼロ、なのだが。
「しっかし。ついに旅も大所帯になったねぇ」
「そういえばそうですね。僕が彼らに同行したとき。
ロイドにコレットにジーニアスにリフィルさん。それからクラトスさん。
途中からマルタやしいなさんも加わりましたけど」
「…あれは、加わった、というより、コレットにあたしゃ押しきれらたようなもんだよ」
一緒にいく、とはいっていないのに、コレットがにこやかに一緒にいきましょう。
といってきて、あとはもうなしくずし。
コレットにアスカードにて魔物の襲来?から助けられたことは事実であるがゆえ、
その借り返す、といったのが運のつきか。
「あはは。僕もにたようなものですよ。
何しろ目的地をいったら、なら目的地が一緒なら一緒にいこうよ!
といってきたのは…他ならぬコレットですからねぇ」
まさか、あのとき、あの牧場といわれている施設の前でそんなことをいわれるとは。
エミルからしてもおもってもいなかったのだが。
そもそも、よくもまああのクラトスやリフィルが反対しなかったものだよな。
とおもう。
それともそこまで、彼らはコレットを護衛するにあたり、戦力を欲していたのだろうか。
そのあたりはいまだにエミルにも判らない。
少し前のことのはずなのに、しいなからしてみれば、かなり昔のことに感じてしまう。
それほどまでにあれからいろいろとあった。
元々、シルヴァラントの神子暗殺、という任務は乗り気ではなかった。
それでも、里のもの、そしてテセアラを守るために引き受けた任務。
まさかこうして、任務を達成することなく、彼らとともに行動をともにするようになる。
とは夢にもおもわなかったが。
そして、信じていた天界クルシスの真実も驚愕に値した。
…一番驚愕したのは、里にもどったとき、祖父イガグリが目覚めていた、ということだが。
聞けば、何でも精神体だけずっとかの地…雷の神殿にいた、らしい。
ゆえに目覚めることがなかったのだ、と。
どうやってもどってきたのかきけば、何でもかの地にやってきたある人物によって、
かの地から解放されたらしいが、その人物は結局だれなのか。
それはしいなは聞かれていない。
イガグリとしては魔物達を使役し、さらには普通とは違うエミルのことを、
滅多と言いふらすべきではない、と判断したがゆえ伝えていないだけらしいが。
もっとも、それはエミルからしてみればかなり助かったとしかいいようがない。
そもそも、シルヴァラントで合流していたはずのエミルが、
なぜ、テセアラでイカグリと面識があるのか、と問い正されていたことであろう。
「…まあ、マルタも同行してきたのは押し切ってたからねぇ。あんたは……」
あのときのことを思い出し、しいなが思わず苦笑まじりにいってくる。
エミルもあのとき、マルタがいたことにたいし、唖然としたものである。
てっきり、この世界においてはマルタとかかわることはないだろう。
とおもっていた、というのに。
あのとき、絡まれていたマルタを助けたのは早計であったのかもしれない。
マルタの実力ならば、あんな男の一人や二人、簡単に投げ倒していたかもしれない。
まあ、あのとき、なぜかいらっとしたのはおいとくとして。
「よし。できた。これ運んでくれる?」
「は~い」
エミルがプレセアがつくりし氷の器。
それにデザートを盛り付けしてゆく。
プレセアが片手間に頼まれていた細工ものと同時、氷で器をつくり、
その器にエミルが料理を盛っていき、それをしいなとマルタが配膳する。
エミルに手渡されたいくつかの氷の器をお盆にいれ、
そのまま注文をうけていた人々のところにもってゆくマルタの姿。
「リフィル達は今ごろ何してるかねぇ。…あたしゃ何だか心配だよ」
「あ、あはは…まあ、問題はないんじゃないですかね?」
ひとまず、かの地の魔物達には、グラキエスを通じ、
やってくるであろう人間達に危害は加えるな、近づくな!という厳命をだしている。
ゆえにリフィル達が魔物と接触することは絶対にない、といいきれる。
何しろヒトというものは、研究、という名目で魔物達にすら平気でどんことでもしてしまう。
そのことをエミルは十分に理解しているがゆえの命令。
彼らがそう、とは限らないが、念には念をいれておいたほうが…よい。
「しっかし、すげえよなぁ」
祭りの開催。
すなわちそれは、つくりかけであった雪像も全て完成している、ということ。
除雪用に改良されている、という小型エレカーがひっきりなしに街道を移動しており、
常に街道沿いにはこの時期、雪がつもらないように気をつけられているらしい。
つまるところ、きちんとした街道によって、また、それぞれの雪像がある場所にも、
小さな道がその手前にまできちんと確保され、投票するにあたり、
どの雪像がみれなかった、という不公平が起こりえないようになっているらしい。
聞けば本来はもっと大型の雪像なども毎年あるらしいが、
今年は一時、雪が全て溶ける、という異常気象もあり、
例年よりは規模がどうしても小さくなってしまっているとのこと。
結局、エミルが提案した皆の心にあるであろう希望の地。
それらはどうやったのかはわからないが、
雪で細かな細工をほどこしたそれらは、いつのまにか氷に変化しており、
そしてそれらは、エミル達が利用していた長机のあるかまくらの内部。
その机の上にひっそりとおかれていたりする。
エミル曰く、中ならば雪とか温度変化とか関係ないだろうから、ということらしいが。
さらにそれらをいれる入れ物すらいつのまに、といいたかったが、
巨大な氷の器らしきものをつくり、その中にいれており、
ゆえに簡単に持ち運びが可能となっている。
もっとも、それぞれ細かな細工のものがその中に並べられて…
これもまた場所が決定したとき、水をつかい、
貼り付けるようにして形を整えていっているので少々では壊れないが。
それでも所詮は氷。
さすがに強い衝撃などを加えれば簡単に壊れてしまうであろう。
…もっとも、そのつくりしそれらが何ともすこしばかりカオスになってはいるにしろ。
しいな曰く、和風、そして洋風、というらしいが、それらが入り混じったものとなっている。
しいなが絵におこしたお城、というものは当然のことながら。
さらに特徴的なのは中心にある氷でできた事細かな細工が施されている、
どこからどうみても、樹としかみえないそれ。
樹の麓にある状態にするか、それとも樹を小さくするか、という意見で、
すこしばかり意見がわかれたが。
結局のところ、さすがに樹の枝を大きく設定すれば、細工の品々がみえなくなる。
という意見もあいまって、小さくすることで話しはまとまっていたりする。
最も、エミルがつくりしかまくらそのものが一つの芸術品でもあるがゆえ、
かなりの人々がその内部にはいってはその構造を見物し、
さらには実際にその場に宿泊できる、というのをききつけて、
すでにいくつかの問いあわせがカンパニー側にはいっているらしい。
「たしかに、すごいよね。雪でこんなものをつくっちゃうんだもの。
…シルヴァラントでは考えられないよ」
時間をかけてこんな雪で何かをつくる、など、ありえない。
そんなことをしていれば、まちがいなくすぐさまにディザイアン達が襲撃してくる。
それほどこちらの世界はそういった脅威がないがゆえに平和なのであろうが。
みあげるほどに巨大な雪像の数々。
今回、一度雪が溶けてしまったがゆえに準備期間は短かったが、
それなりの数の雪像はそろえることができた、とはリーガルの談。
「…雪でこんな祭りするなんて、たしかに信じられないよね」
ミトスも思わず同意する。
地上のことには興味がなかったというかあまり関心がなかったがゆえ、
ここ数年でこんな祭りを開催していたことすらミトスは知らなかった。
こういった細かな情報まではミトスの元にはあがってきていない。
しかし、気になることもある。
テラアセの民曰く、一度、雪が完全にとけたことがある、という。
聞いたところによれば、それはちょうど、コレットに神託を下した時期と一致する。
その直前に一気に雪がとけ、神託のその日を境にどうやら雪が再び降り始めた、らしい。
それは幾人かの人々にミトスが話しかけ、判明している事実なれど。
この地が、そもそも雪が解ける現象になるなどありえないこと。
特にこの場にはセルシウスを捕らえていた。
元々、その場にあったという氷の神殿。
氷の精霊を祀っていたというその神殿を利用し捉えた精霊達の檻。
精霊がこの場に完全に囚われていたにもかかわらず、雪がとけた?
そんなことはありえない。
しかし、実際にありえないことがおこっていた模様。
そんな報告はミトスはうけていない。
ユアンが報告を怠っていたのか、それとも。
クルシスのメイン・コンピューターですら把握しきれていなかったのか、
もしくはコンピューターがどこか狂っていているのか。
かのコンピューターはミトス達からしてみても高度な技術でつくられており、
いまだにその完全なる性能は把握しきれていない。
四千年、という年月を得ても、なお。
「でもさ。僕たちがここからいなくなったとして。
もしも誰かの像が入賞したら、賞金と賞品はどうなるの?」
ありえない、とはおもうが、もしかしたら、という思いもある。
「特に!プレセアのつくった鼠の雪像とかすごいし!」
だからこそ、ジーニアスは疑問を口にする。
初めて目の当たりにしたが。
トンガリマダラトビネズミとかいうその雪像というかその姿を。
幸せの象徴、ともいわれているというオゼット付近に生息しているという鼠。
…リアルすぎる熊の像にはおもわずジーニアスは一歩ひいてしまったが。
ロイドが調子づいて、どこからもってきたのか食紅をもってきて
その熊の周りに口元にそれを塗ってしまっているからこそ余計に本物か!?
と思われるほどに精巧なつくりとなっている熊の雪像。
「話にはきいていましたけど。雪まつりって…すごいんですのね」
雪でさまざまな雪像をつくり、それをみせる祭りだ、とはセレスはきいていた。
雪景の街とよばれしフラノール。
その地で雪をつかった祭りがある、ということは。
それでも、体が弱いこともあり、またかの地からでることすら許されていなかった。
もっとも、こっそりと王都までは幾度か抜け出していたことがあるにしろ。
そもそも、かの離れ小島にやってくる運搬用の船にこっそりと隠れての密航。
もっとも船員達からしてみれば暗黙の了解、というものであったのだが。
自分がこうしてこの場にずっといても国から何の音沙汰もない、
ということを考えれば、トクナガがいっていた、考えがある、
といっていたその考えが国に許可された可能性もなくはない。
セレスは修道院が襲われたという現実を知らない。
知っていれば間違いなく、その場において気絶してしまっているであろう。
いまだにその事実はセレスに伝えられてはいない。
「あ。それなら。リーガルさんが。もしも一行の中の人が受賞したら。
きちんとゼロスの屋敷にとどけてくれるって」
神子の屋敷ならば問題ないだろう、とリーガルはいっていた。
ゼロスは何で俺様の家!?と思わず反論していたようだが。
そんなコレットの台詞に、
「そっか。しかし、次は異界の扉…とかいわれてるところ、だっけ?」
「うん。…でも、心配、だよね」
アステル達がかたっていた、その地において教皇騎士団とおもわれし人物。
そんな彼らがみられた、ということ。
そして、かの地からリフィルがシルヴァラントに移動したことを、
ジーニアスは聞かされている。
もしも、教皇達がシルヴァラントに目をつけて、その地からシルヴァラントに移動しよう。
としているのならば。
それは予測、でしかない。
なぜ彼らがそんな場所にいたのかは。
それとも、かの地ならば隠れるのにうってつけ、とおもわれたから、なのかもしれない。
どちらにしても、現状がわからない以上、警戒するにこしたことはない。
そんなことを思いつつ、ロイドの台詞に答えるジーニアス。
「……異界の、扉…か」
ミトスの脳裏にうかびしは、かの地から内部にはいり、たどり着いた扉の間。
そこで出会った精霊ラタトスク。
もしも、もしもであるが。
雪がとけたり、またこのマナの安定が、ラタトスクが目覚め、センチュリオンが覚醒していた。
とするならば?
それを確かめるためにも、ミトスとしてもあの地には出向いておきたい。
中に入れるかどうかはともかくとして。
すくなくとも目安にはなるであろう。
…精霊ラタトスクが目覚めているか否か、という目安くらいには。
「うん。やはりこの奥にもありそうなんですよねぇ」
「何だと?それはどういうことだ!?」
何やら何かの機械?らしきものを手にし精霊の祭壇の間。
その先の壁にむけてしみじみといっているアステル。
リフィルはすでにこの氷の神殿に再びたどり着いた直後から、
口調がリフィル曰く、学者のそれになってしまっており、
その変化に一瞬、リリーナやリヒターが驚いた、ということはあったにしろ。
もっとも、そんなリフィルの変化を何でもないようにうけとめ、
普通に会話をつづけていたアステルをみて、こいつやっぱりおかしい。
とリヒターが内心思っていたことなど、アステルはしるよしもない。
「この装置は特殊な電波にてそれが反射してもどってくる時間によって、
その奥行きを調べるものなんですけど。この先にもどうやら何かがあるらしいんですよ」
数値からしてみれば、この先にもまだまだ道はつながっている。
一時、アステル達が調べようとして、扉を破壊しよう、とおもいたち、
爆薬などを運び込み、今すこしで爆発をさせる、というときに国にきづかれ、
こっぴどく怒られた、という経緯が昔あったりしたのだが。
「地の神殿、闇の神殿、そしてここ、氷の神殿、雷の神殿。
それぞれ、精霊の祭壇、といわれている場所の奥にもさらに先があるみたいなんですよ」
しかも、全てにおいて特徴的なのは。
その数値があらわれしは、それらの祭壇の壁にと描かれている紋章の奥から。
どうやってもその奥にいけないことから、何か仕掛けがあるのでは、
と今現在、精霊研究所においてもそれは研究されている一つのテーマ。
その奥にいければ何かあらたな発見があるのでは、という考えのもと、
どうにかしてその奥にいけないか、といろいろと試行錯誤されているらしい。
もっとも、神殿にはいる場合はどうしても国の許可、というものが必要となるがゆえ、
アステルなどはこっそりと無許可でこうして神殿にやってきていたりするのだが。
…無許可、とはいえ研究所をでるときにはかならず外にでる外出許可。
というものが求められるがゆえ、そこに外出目的などを書きださなければ、
きちんとした理由でなければその外出許可は認められない。
それを考えれば完全に無許可、というわけではないのであろうが。
「つまり、隠された満ちがあるかも、ということか。
ふむ。アスカードのあの祭壇と同じようなものか?」
リフィルが風の精霊を祀る儀式という踊りをこなしたのち、あのアスカード遺跡の石舞台。
その円陣の上に新たに浮かび上がった紋様。
そこから地下にはいれたあのとき、街の人すらその存在をしらなかったといっていた。
だとすれば、この精霊の神殿にもあのような隠された何かがある、ということなのか。
「アスカード、ですか?」
リフィルの呟きに、すかさずアステルが反応する。
どうも姿がエミルとそっくりなので、エミルにいわれているような感じになってしまうが、
雰囲気が異なるし、さらにはマナの流れも異なっている。
アステルのそれは人間のそれ。
そういえば、とおもう。
エミルのマナの流れは時折、自然界に溶け込んでいるような感じがするのはそれはリフィルの錯覚か。
「うむ。私たちの世界のほうなのだが。
クレイオ三世が一週間続いた嵐を沈めるため生贄をささげたという祭壇。
その石舞台といわれている場所がアスカードとよばれし街にのこっていてだな」
「ほうほう。それで、それで?!」
「ふむ。興味深いな。シルヴァラントの歴史、か。こちらには資料がないからな」
リフィルの説明に興味ふかそうにアステルが目をきらきらさせ、
リヒターはまた別の意味で興味深そうにしていたりする。
「うむ。そもそも、その石舞台という石がこれまた特殊で。
マナを大量に含んでいる、といわれている石でな。
石に含まれていたマナが大気中に気化するときに香りを放つのだが…」
「あ。その石はもしかしたら、異界の扉にある石とおなじかもしれません。
かの場所にごろごろある、まるでサークルを形とっているそれらの石は、
マナの測定機をもってしても計測不能、とでるほどですから」
「ほう。それは興味深いな。シルヴァラント側とテセアラ側で同じような石、か」
「ええ」
「フィラメント効果、ですわね」
そんな三人の会話に割って入るように、リリーナがうなづくようにいってくる。
「ほう。こちらでもフィラメント効果、という言葉があるのか?」
「ええ」
この場にはあるいみで学者気質のものばかり。
ゆえに、その手の話題になったとき、止めるものがいないこの現状。
ゆえに、しばし、彼ら四人によるそんな会話が、精霊の祭壇の間において、
しばし見受けられてゆく――
フラノールの港から、異界の扉、と呼ばれし島にいくためには海を南にと下る必要がある。
「おそらく今夜あたり、異界の扉が開く条件というものが整うとおもわれます」
船の中。
フラノールから乗り物にとのり、港にでむき、待機していた高速艇へ。
とりあえず、かの島の周囲は岩礁がおおいがゆえに、小舟にのって、
その島までは移動する、ということらしい。
「条件、とは?」
とりあえず、今後の話しあいもかねて、ここ、食堂に集まっている一行、計十六名。
首をかしげ問いかけるロイドの台詞に、
「かの地は、満月の夜、マナがどういうわけか石にみちたとき扉が開く、といわれているんです。
…もっとも、姿をけしたものはいますけども。
もどってきた、という話しをきかないがゆえに、正確なところはいえないのですが」
「一節には黄泉の国への入口、ともいわれている。それが異界の扉。
といわれているストーンサークルを抱擁した島の名称だ」
かの地においては、マナの測定値が常に降り切れてしまっている。
さらに、あの島にある全ての石はマナが多々と含まれている石らしく、
その関係もあるのでは、というのがもっぱら研究者達の総意。
かの地から流され、この地にもどってきたものはこれまで皆無といってよい。
リフィル達姉弟が初めての症例、といえるであろう。
「本来ならば、その島は見渡す限りの草原…だったんですけども」
ひとまず、軽く休憩したのち、あと少しで目的地。
というときに簡単な打ち合わせをかねて話している今現在。
「…もしかして、あれ?」
窓の外にみえるは、大小様々な岩礁の先。
生い茂る木々に覆われた島らしきものが視界にはいってくる。
空はいつのまにか完全に日はくれ、夜空にはこれでもか、というほどに星が輝いている。
まるで星がふってきそうなほどの澄み切った星空。
もっとも、それはまやかしであり、彗星の背後にみえている宇宙空間。
その光景を反射というか転写して空のようにみせかけているこの世界。
そもそも、あそこまで彗星を接近させなくてもよかっただろうに。
とおもってしまう。
月よりも手前に接続させており、完全にこの惑星の引力圏内にとはいっている。
「ええ。あれが。目的地。――異界の扉のある、島、です」
アステルがそういうのとほぼ同時。
ピ~
『目的地に到着いたしました。皆さん、甲板のほうへ移動してください。
小舟にて、皆さんを島のほうに案内いたします。繰り返します。目的地に到着いたしました……』
船の壁にと設置されているスピーカーより甲高い音とともに、そんな声がきこえてくる。
「異界の扉…いきましょう」
その言葉をきき、リフィルの表情が少しばかりけわしくなる。
リフィルにとっては、始まりの地であり、そしてまた、別れの地。
常にかの場所を探しつつ、遺跡調査にあけくれていた。
もしもリフィルの考えが正しいとするならば。
探してもなかったはずである。
こちら側、テセアラ側にかの石の遺跡はあったのだから。
数隻の小舟にわかれ、岩礁地帯をくぐりぬけた後、
鬱蒼と生い茂る木々にかこまれし島へと上陸する。
本来、かつてこの島は、見渡すかぎりの平原で、
巨大な岩がごろごろとしていた地、であったはず、なのに。
今はどこからやってきたのか分からないが、様々な木々が生い茂っている。
しかも、アステルがいうには、半年以上前までは、
この地にはこんなものは生えていなかった、というのだから驚愕せざるを得ない。
「ここもハイマみたいに何かがあった、のかな?」
「ハイマのあの地も不思議だったよね。僕たちが一度立ち去って次にいったときは緑に覆われてたもん」
ロイドがつぶやき、ジーニアスもハイマの光景を思い出したのかそんな事を言ってくる。
木々の間に隠れ、岩もまた埋もれているがゆえになかなか分かりにくくはあるが、
この島にある全ての岩には様々な模様が刻まれており、
その模様に何か意味があるのでは、と王立研究院にてもいまだに研究されている。
アステル達のいうことを信じるとするならば、この地に緑が生え始めたのは、
どうやらコレットに神託を下した日とほぼ重なる。
あの日はシルヴァラントのほうにばかり全ての注意をむけていたがゆえ、
このテセアラの地で何がおこっていたのかまではミトスは知らない。
そもそも、スクリーンにあの地を映し観察していた。
クラトスがきちんと同行が許可されるかどうか、という確認もありはしたが。
いつもならば、遺跡モードとよばれる状態に変化するであろうに、
リフィルの表情はどこか固く、口調にもいつものような変化はみられない。
「でも、これだけたしかに木々があったら、隠れるのにはうってつけってか?」
ゼロスがきょろきょろと周囲をみわたしいってくる。
いつのまにか生い茂ったという木々は、完全にもはや見上げるほどに成長しており、
ゆえに、木々の合間から星空は確認できるが、それは木々の合間のわずかな隙間から、
でしかないがゆえ、月がでていなければ、この地はほとんど真っ暗で足元すらみえないであろう。
かろうじて満月の月灯りで足元がみえているが。
「その、遺跡の中心地帯…は?」
木々の間にある岩に書かれている模様。
それはリフィルの記憶にある石にかかれていた模様によくにている。
だからこそ、自然、声が震えてしまう。
あのとき、家族とこの地にやってきたとき、
この島には何もなかった。
ただ見渡す限りの草原で…巨大な岩がごろごろしていたかの島。
そして、その岩の中心にジーニアスを手渡され、
そして光につつまれ、家族と離れることになったあのときの記憶。
そのときの記憶がまざまざとリフィルの脳裏にと蘇る。
この地にある全ての石はきちんと法則にもとづいてその場にあるのであり、
上空からみれば、それは一つの魔方陣を形成していることがよくわかる。
もっとも、地上からみればただ岩がごろごろとある、としかうつらないであろうが。
やがて、進んでゆくことしばし。
やがて、ぽっかりと、木々が開け、その木々に囲まれたような開けた空間があり、
そこにもいくつかの巨大な石柱軍が並んでおり、
このあたりには木々はさすがに生えてはいないらしい。
最も、この場こそが、かの地、ギンヌンガ・ガップに通じている地上からの道であり、
それ以外の道は、センチュリオン達の祭壇から、
ラタトスクの関係者しか移動できない道しかない。
つまるところ、第三者からしてみれば唯一、通じている道とよべる場所。
「…ああ、やはり、ここ、だったのね」
ふと、その石の並びをみて、一人、ぽつり、とつぶやくリフィル。
そして、そのままゆっくりと岩の一つにとちかづいてゆく。
「姉さん?」
「先生?」
「リフィルさん?」
そんなリフィルの様子がおかしいことにきづいたのか、ジーニアス、ロイド、
そしてミトスまでもが同時に声をだしていたりする。
「…ここが、異界の扉…私とジーニアスがシルヴァラントに流された地……
間違いないわ。この石の模様。今でもはっきりと覚えている。あの日、私は……」
ジーニアスを抱いて、この中にいなさい。
いわれ、素直従っていた。
追手がせまってくる声。
そして、月から伸びてきた光につつまれ、手をのばし母を求めたあの日の記憶。
この地にたてば、まざまざと昨日のことのように思いだせる。
「え?」
「じゃあ、ここが………」
エグザイアにて、ロイド達はリフィルがどうしてシルヴァラントに流されることとなったのか。
かの日記を読んでいるからこそ知っている。
「先生?」
コレットはそのときの記憶は完全にはない。
ゆえに首をかしげているコレットと、そして思わず目をみひらいているミトスの姿。
そして。
「えっと。リフィルさん達って…シルヴァラントの人間じゃないんですか?」
「そっか。そういえばミトスには説明してなかったね。
うん。僕は覚えていないけど、いろいろあったらしいんだ……」
ジーニアスにはこの地から移動したときの記憶はない。
というか、一歳にも満たない子供に覚えているか、と問うほうが間違っているであろう。
「…コレットを助けにいったとき、たまたまこの地が目にはいって、
ずっと気になってはいたの。でも、木々があるから違うって…でも、間違いないわ」
なぜ木々すらほとんど生えていなかった地にこれほどまでに木々が生い茂っているのか。
それはリフィルにはわからない。
だけども、この場所だけはかつての、否、当時のまま。
「かの地で聞かされた、いえ、書かれていた言葉。
そして、二つの世界をつなぐという二極だ、という話」
二極の話がでなければ、完全なる確信はもてなかったであろう。
リフィルの記憶には、かの島にはこんな森、などはなかったのだから。
それでも、確信を完全にもったのは、
アステル達からかの島がいきなり木々に覆われた森と化した、という話しを聞いてから。
フラノールにてその話しをきかされ、ずっと考えていた。
そして、答えは今、ここにある。
「リフィルさん?」
「セイジ、といったな。だとすれば、やはり……」
リリーナが首をかしげ、リヒターが思い当たるところがあるがゆえ、
何やら意味ありげにそんなことをつぶやいているが。
それは今から十一年前に、ここテセアラでおこったとある一つの事件。
「…ずっと、探していたわ。記憶の中にあるこの石の遺跡を探して、ずっと…
間違いないわ。ずっと私がこの十一年間、探し続けていた遺跡は、この場所だわ」
「えっと…つまり、ジーニアスとリフィルさんは、テセアラの産まれっていうことですか?」
首をかしげ、問いかけるミトスの台詞に、
「ええ。私とジーニアスが産まれたのはエルフの隠れ里。ヘイムダール。
けど、私たち家族は、里を追われてしまって、そしてここにたどりついた……」
「…僕、そのときのこと覚えてない」
飛行都市において、心を病んだという母バージニア。
人形を姉、とおもい、自分はまだお腹の中にいる、と思い込んでいたあの母の様子。
ふとその母のことを思い出し、ジーニアスが顔をふせつつぽつり、とつぶやく。
「あなたは、あのとき、まだ一歳になるかならないか、だったものね。
私たちは、ここ。そう、ちょうど今私が立っているここに……」
捨てられた、とおもっていた。
けど、今は事実を知っている。
母達は命をかけて自分達を逃がそうとしたのだ、と。
「ここが、伝説の地、シルヴァラントに続く道だ、と信じらていたから……」
リフィルの言葉に、おもわずミトスはぎゅっと手を握り締める。
同じだ、とおもう。
ミトスとマーテルもヘイムダールで生まれ育った。
そして、戦争の悪化とともに、里を追い出された。
一番の理由は、マーテルが怪我をした人を助け、その人物が混乱を里に招き入れたから。
そんな当時のミトスからしても納得がいかない理由にて。
里を追われた姉と弟。
マーテルとミトス。
そして、リフィルとジーニアス。
当時、すでにミトス達には両親はいなかった。
すでに死んでしまっていた。
ミトスにとって姉はたった一人の肉親であった。
そして、戦争の終結。
戦争終結の最中、精霊ラタトスクより授かりし万能の加護。
その加護をうけた、とわかったとたん、エルフの里の人々は、あっさりとこれまでの態度を覆した。
やれ、自らの里から精霊の加護をうけたものが現れたのは目出たい、など。
中にはハーフエルフなどがそんなものをうけとる資格はない。よこせ。
といってくる傲慢なものもいたりしたが。
そういったものは、なぜか突如として魔物に襲われていた。
それはミトス達の知らないところで、ではあるが。
もっとも、そんな傲慢な意見をいった直後、だまりこくったこともあり、
ミトス達はあまりきにしてもいなかったのだが。
あまりにも傲慢すぎるそんなエルフの姿をみて、
そのようなことをいったものからラタトスクがそのものから加護を取り上げたに過ぎない。
つまるところ、自然との繋がりがぷつり、といきなり途絶えてしまい、
暴言を吐いた男は茫然自失となってしまった、という事実なれど。
自分達のせいで誰かが死ぬ、というのは彼らは好まないだろう、というのもあり、
彼らの目の届かないところで魔物達にそういったものは始末させた。
そんな傲慢な考えをもつものがいてもロクなことにはならないだろう。
そんな思いのもとに。
「エルフの里……あのエルフしか入れないという秘密の村、のことですね……」
大地を存続させるためだ、というのに、世界を二つにわけることにすら反対していたエルフ達。
ラタトスク、そして精霊オリジンの許可がある、というのに。
そんなことは冒涜だの何だの、といって、自分達はかかわりがない、とばかり、
お前達で勝手にやれ、と全てをミトス達にかの地にすまうエルフ達はおしつけた。
そして、何もしないままに、ミトス達をなじり、その名を呼ぶことすら禁忌とした。
さすがにそんなエルフ達の様子を視てラタトスクはあのとき、思わずあきれ
全てのエルフから加護を取り上げようか、と幾度おもったことか。
それでも一部のものが、ミトス達を擁護していたこともあり、
様子見、としてとどめおいていたのだが。
今のエルフ達の様子を視る限り、あのとき、エルフ達をも見限っておけば、
あのような傲慢な者たちは生まれなかったやもしれないな、ともエミルはふと思う。
ミトスはミトスで、二人もまた自分達と同じように、
あの里を追われたのだ、ときき、自分達姉弟に共通する部分をみつけ、
何ともいえない表情をうかべ、ぽつり、とリフィルに対しそんなことを問いかけていたりする。
「ええ。詳しいいきさつは…ずっと判らないままだったわ。
まだ一歳にもみたないジーニアスとともに、私はここに置き去りにされた……」
ぎゅっと懐にいれている母の日記を握り締める。
この日記の存在がなければずっと、自分達は両親に、母に捨てられたのだ。
そうおもっていた。
でも、事実は違った。
全ては、自分達を守るために。
国につかまってしまえば、リフィルはともかく、まだ赤ん坊でしかなかったジーニアス。
その命は保障されていなかったであろう、と今だからこそリフィルは確信が持てる。
それほどまでに、ここテセアラでのハーフエルフの扱いは、ひどい。
きゅっと目をつむり、母のあの様子を思い出す。
人形を…リフィルがかつて手作りで産まれてくる弟か妹のために、といってつくったあの人形。
あれを自分、とおもいあやしていた母親。
自分達すら理解できていなかったが、それでも、あの地で出会ったものがいうには、
彼女があのように普通に会話ができるだけでも奇跡に近い、ともいわれた。
いつもは、話しかけてもその声すら届いていないのに、と。
でも、きちんとバージニアはリフィルの問いかけに応じていた。
言葉の駆け引きができていた。
リフィル達を自らの子、と気付かないままにも。
リフィルの独白に何ともいえない空気が一瞬、その場を覆い尽くす。
「では、今度こそ黄泉の国へ送りこんでやろう」
その声は突如として。
少し離れた木々の合間から。
「誰だ!?」
思わず声のしたほうを振り向けば、夜の闇、そして夜の森を背にし立っているのは、
特徴のある、一度みたらをすられない服をきている一人の男性。
忍び服、と呼ばれしその服をきているその男は……
「くちなわじゃないか!いったい、何をいいだして……」
ロイドの叫びとともに、しいなもそちらを振り向くが、
そこにいたのはしいなにとってはみおぼえのあるなじみのある人物。
だからこそ、彼が何をいているのか、しいなには理解ができない。
そもそも、今、黄泉の国へ送りこんでやろう、とか物騒なことをいわなかったか?
このくちなわは。
しいながそんなことを思いつつ、一歩、彼のほうに近づこうと歩みだそうとするが、
ゼロスがすかさずそんなしいなの手をつかみ、しいなの歩みを止めている。
「一体、何をいいだし……」
しいながそういうのとほぼ同時。
わらわらと、周囲の森の中から、がしゃがしゃという音がする。
そして。
それらはロイド達にとってもみおぼえのある姿。
鎧を着込んでいるそれらの人影は、どこからどうみても、
今現在、テセアラの国が手配をかけている教皇騎士団のまさにそれ。
「ようやくチャンスがめぐってきた。今こそ両親の仇を取らせてもらう」
森の中に潜んでいたらしき男たちはぐるりとこの場をとりかこむ。
この地にいる魔物達に少しでも害意をむけていれば、これらも排除されていただろうに。
しいながもっているくちなわより手渡された、お守り袋の中にとある【式神】。
その波動から、ここにくるのをしり、どうやら待ち伏せしていたようではあるが。
「…両親の…仇?」
しいなが何をいっているんだ、という表情をうかべ、唖然として思わずつぶやく。
アステル達も何がおこっているのかわからないらしく、
そしてまた。
「…教皇騎士団が教皇とともに何か馬鹿やってる、という話しはきいたけど……」
「まったくだな」
「囲まれて…しまってますわね」
ぐるり、と周囲をみてみるが、数十名この場にやってきているらしく、
完全にこのストーンサークルを取り囲むようにして騎士団達は取り囲んでいる。
最も、強行突破して騎士団をすり抜けて森にさえはいってしまえば、
彼らもまた追ってくることなどはできはしないであろうが。
というか、むしろこちらに敵意をむけた時点で、この地にいる魔物達。
彼らにもまた敵、とみなされることにどうやらこのものたちは気づいてすらいないらしい。
「そうだ。お前がヴォルトを暴走させたがために、巻き込まれて死んだ両親と、
そして里の仲間の為にもお前には死んでもらう!」
高らかにそんなことをいってくるが。
「…そもそも、ヴォルトと契約にいこう、というのに言葉もわからないものしか同行してなかった。
というのがおかしくもありますよね。イガグリさんがいってましたけど。
しかも、ノームとヴォルト、セルシウスが候補にあがってたのに。
その中でもヴォルトを、といって聞かなかった存在達がいるとか」
それらは、しいなを排除しようとしていた一派であった、とイガグリはいっていた。
あの当時、イガグリはしいなの身の上を話してはいなかった。
しいなが精霊の契約をこなしたのち、里のものに伝える気であったのだが、
結果として、イガグリの精神体はかの地にのこってしまい、
しいなは一人、里のものの冷たい視線をあびながら、育つことになってしまった。
「そ…そんな……」
恨まれている、とはおもっていた。
それでも、くちなわも、おろちもお前のせいじゃない、といってくれたあの言葉。
当時のしいなにとってはそれがどれほどすくわれたか。
しかし、今、目の前のくちなわから発せられるは、それらを否定する言葉。
「それは事故だったんだろ!」
「どうして、今ごろになって……」
そんなくちなわの台詞に、ロイド、そしてとまどったようなマルタの声が同時に重なる。
雷の神殿、雷の精霊ヴォルトとの契約にあたり、コレット以外。
しいながかつてどんなことを行ったのか、皆が皆、聞かされている。
そしてまた、アステル達テセアラ組のものたちは、
ほとんどのものがみずほの里の悲劇は聞き及んでいるがゆえに知っている。
そこにどういった裏事情があるのか、までは知らないにしても。
里のものがほとんど精霊との契約に失敗して死んでしまった、という話しは。
だからこそ、しいなは、テセアラの上層部のものたちの一部からは、死神、
というあだ名をつけられていたりする。
貴族の女性達からは、神子様に死神がちかづくんじゃありませんことよ。
と、幾度もしいなは言われてきている。
そんなロイドの台詞に反応したのか、
「事故だと!?こいつが精霊と契約できないできそこないならまだ満足もしたさ!」
そう、だからあのとき、どうせよそもの。
失敗するにきまってる、という思いもあの当時あった。
そもそも、両親があの子の契約は失敗するにきまってるんだから。
といって出かけていったのもくちなわは覚えている。
それがどうだ。
頭領が目覚め、しいなの血筋を里のものに伝えられた。
しいなが本来、自分達が守るべき、使えるべき主君の血を宿す唯一の末裔だ、などと。
ふざけるな!、そうおもった。
そして、だからこそ、しいなを次期頭領に、といっている頭領も。
そのことをきき、手の平を返すようにしてしいなを認める発言をしている里のものの態度も。
しいなを罪にととえない。
イガグリが保管していた、当時のしいなを陥れるためにつくられた、という密会時の血判状。
だからあのとき、何かあってはいけない、というのでイガグリ自身も同行した。
間違った嫉妬に彩られ、守るべき血筋を里のものが害さないように。
結果として、それは裏目にでてしまったのではあるが。
「しかし…それがどうだ!シルヴァラントの神子暗殺に失敗しておいて!みずほを危機に陥れて!」
国の許可があった、とはいうが、あやしいが、神子が傍にいる以上、それは嘘ではないのだろう。
それがよけいにはらただしい。
シルヴァラントの地にてやばんなるもの、ディザイアン。
そいつらに喰い殺されればいいのに、とおもっていたのに。
それがどうだ。
神子暗殺を失敗したどころか仲間となり、その神子をこのテセアラに連れもどり、
さらには、テセアラの神子まで味方に引き入れて、国すら説得させ、
ふざけるな!
それがくちなわの抱いている心情。
「そのくせ、本人はいえばちゃっかり精霊と契約している!」
それがくちなわからしてみれば許せない。
まだ、しいなができそこないで、それでも血筋をもちだされれば、
しかたがないな、手伝おうか、という思いも抱いたかもしれない。
でも、しいなが孤鈴と契約したあのときから。
くちなわの心には疑心が宿った。
あのとき、彼女はわざと精霊との契約を失敗したのでは、と。
そしてそれを裏付けるような、教皇からの接触。
ヴァーリ、そしてロディルとの邂逅。
彼らにいわれるがまま、里の情報を流していった。
くちなわが流した情報で里のものがどれほど死んでいったとしても、
それはしいなを追い出さない里が悪いのだ、と自分自身に言い聞かせ。
そして、裏ではそのようなことをしておきながら、
表では、しいな達にたいしては、従順、しいなには味方のようにふるまっていた。
いざ、というときしいなにこれでもか、という絶望を与えるために。
「お前は最初の契約のときには手をぬいたんだ!そして、親父たちを殺した」
淡々とつむぐくちなわの中では、すでにそれが真実となっていたりする。
教皇からもいわれた。
人工精霊と契約できるものが、ヴォルトとの契約に失敗したのは、
所詮よそもの。
拾われ子、どこのものともわからない、
ましてや契約ができる、ということはエルフの血がはいっている証拠。
蛮族にも劣る血をひきしものなのだから、手をぬいて、おまえの両親、
そして里のものを殺したのだ、と。
「それは違います!」
さすがにその言葉にはコレットも反論の声をあげる。
しいなには罪はない。
くちなわのいっていることは、それこそ逆恨みにもちかいといえる。
精霊との契約は命がけ。
そう、しいなからかつてコレットはウンディーネとの契約のときに聞かされている。
「というかさ。当時のしいなって、イガグリさん達がいってたけど。
まだ七歳、だよね?手を抜くも何も。それに、あの状態だったら。
言葉もつうじなかったらパニックなってもおかしくないんじゃ?」
「そもそも、なぜその当時、ヴォルトが特殊な言葉を話す。というのは知っていたはずでしょうに。
翻訳できるものが傍にいなかったのか、というのが疑問視するところね」
マルタの素朴なる疑問に、リフィルもまたうなづきながらいってくる。
実際に、ヴォルトが特殊な言葉を話す、というのは、
契約に赴くつもりであったならば、情報として知っていたはず。
にもかかわらず、誰も翻訳できなかった、というのは。
あるいは、翻訳できても、あえてそのことをつたえなかったのか。
しいなは、拾われた子だ、と当人がいっていた。
ヘイムダールのように、よそものを排除しようとするような、
そんな傾向があの里にあったとするのならば。
契約にことかけて、わざと失敗させ、責任をとらせる方法を大人たちが選択した。
その可能性もリフィルからしてみれば捨て切れない。
事実、リフィルが予測している通り、なのではあるが。
「くそ。数がおおくて話しにならねぇ」
自分達だけならまだしも。
この場には、どうみても戦えない…とロイドは思っている、
ミトス、セレス、そしてリリーナにアステルもいる。
彼らを守りつつこの騎士団を突破するには数が多すぎる。
それゆえに思わずロイドがそんなことを呟くが。
「手なんか、抜いてないよ、あ、あたしは…っ」
言葉がわからなかった。
そのことに困惑したしいなの目の前で発せられた電撃。
倒れてゆく里のものたち、そして、しいなをかばったイガグリの後ろ姿。
「ちがわねえよ。お前は手をぬいた。そして里のもの。
そして俺の両親を殺した。だから…お前は、ここで、死ね!」
しいながしっているくちなわの瞳とはまったくことなる、憎悪にみちた鋭い視線。
くちなわの台詞とともに、教皇騎士団達がその手にもっている武器をそれぞれ身構える。
「!まっとくれ!くちなわ…お願いだよ。ロイド達は巻き込まないでくれ。
あたしが憎いんだろ?だったら、あたしだけ殺せばいいじゃないか」
「何馬鹿なことをいってるんだ!しいな!」
その台詞にロイドが思わずそんなしいなにくってかかるが。
「いいんだ!くちなわ。たのむよ」
自分のせいで、これ以上、誰も失いたくない。
それがしいなの心の奥底にある本音。
だからこそ、このしいなの言葉に嘘はない。
自分一人の命で全員が助かるのならば。
復讐は復讐しかうまない。
ああ、そうだね。
ふと、かつての旅の最中、シルヴァラントにて、クラトスと会話するときがあり、
そのとき、ぽつり、とクラトスがいったその言葉。
それが、今、すとん、としいなの心の中におちてくる。
というか、このくちなわのいい分はあきらかに言いがかり。
というか、この地でよくもまあ、血を流そう、とおもったというべきか。
すっと目を閉じ上空にある彗星にと意識を同調するエミル。
「…よし、いいだろう」
くちなわの言葉をうけ、くちなわの方に一歩一歩、歩きはじめるしいな。
エミルがすっと目をつむったその直後。
「…あれは?」
夜空の彼方にて、何かがきらり、と光り、
それは空に浮かびし月のほうから。
そのようにみえる光の帯がこの場めがけておりてくる。
光はストーンサークルの上にていくつもにわかれ、
その場にある全ての岩全体にその光は降り注ぐ。
それはマナの光り。
彗星からもたらされしマナは、石の力となり、そして石にマナを満たしてゆく。
岩に描かれし模様が青白く光り、そして岩の中心。
岩と岩の中央。
サークルの中央。
中央に位置している大地の上に、とある模様を浮かび上がらせる。
岩に描かれている模様と文字らしきもの。
それらが青白く、幻想的にと輝き、地面には魔方陣にも似た、丸い何か。
中央は赤身を帯びて日おており、
円周を雲のような不思議な明るみがゆっくりと回転している。
それらが地面の上にと浮かび上がる。
もっとも、この入口は入口にあらず。
かの地と空間を繋げているだけにすぎない。
この中にはいったとしても、強制的にとある場所にと移動するだけ。
つまり、内部にありしギンヌンガ、カップにはたどり着くことはない。
「…冗談じゃねえぞ!アホしいなが!」
ちらり、と背後をみれば、扉らしきものがみてとれる。
ちらり、とエミルをみてみれば、エミルはゆっくりと目をみひらき、
その視線はしずかにちらり、とそちらのほうを示している。
つまるところ、あれは安全ってことか。
聞いたわけではない。
が、すくなくとも、自分の勘は信じられる。
「きゃぁぁぁぁ!!」
「ロイド!こい!セレスもだ!急げ!」
ゆえに、すばやくくちなわのもとに歩み寄っていたしいなの腕をつかみ、ぐっと勢いのままに引き戻す。
そのとき、しいながいきなりのことに思わず悲鳴をあげてはいるが。
片手でしいなをつかみ、そしてもう片方の手でセレスをつかみ。
そのままゼロスはしいなとセレスをひきつれて、
出現している、人間達いわくの【異界の扉】に躊躇せずに飛び込んでゆく。
バシュ、という音とともに、
光とともにゼロス達の姿が、またたくまにその場からかききえる。
「そうか!あれが!皆!異界の扉へ!」
全員を守りつつこの場を突破するのは難しいかもしれないが。
この魔方陣のような何か、がシルヴァラントに通じているのならば。
それはかけ。
ロイドの台詞をうけ、リフィル、コレットが扉の中にと飛び込んでいき、
「いこう!」
すかさずミトスの手をとり、そちらにかけてゆくジーニアス。
プレセアもまた、武器を構えていたが、くるり、と向きをかえそちらにと走ってゆく。
「これは!?いこう!リヒター!リリーナ!」
「って、まてまてぃ!何の準備もなく…ああ、もう!ええい!ままよ!」
その扉らしきものの出現を目の当たりにし、
こんな状況になっている、というにもかかわらず、目をきらきらさせ、
どうやら研究者気質がでたらしきアステルが、
リヒター、そしてリリーナが止めるまもなく、アステルもまた、その魔方陣の中にと飛び込んでゆく。
アステルが消えたのをうけ、頭をがしがしかきつつも、
リヒターもまた、アステルを追いかけるようにその身を投じてゆく姿がみてとれるが。
リヒターに続き、リリーナもまた光の中にとかききえ、
「エミル!お前もいくぞ!タバサも!!」
全員がどうやら無事に扉の中に入ったのをみてとり、
いまだにその場に立ちすくんでいるままのエミルとタバサに声をかけ、
ロイドもまた傍らにいたノイシュのわき腹を叩き、
リーガルとともに力の限り大地をけり、魔方陣の中にと身を投じてゆく。
ロイド達全員がかの中に身を投じたのを確認し、
すっと目の前にいる騎士団達に視線を向けたのち、
静かに、それでいてすっと目を開きつつ言葉を紡ぎだす。
横にいるタバサは一瞬、エミルの瞳の色が深紅にかわったのに気付いたが、
その意味はタバサにはわからない。
「――この地を穢そうとするものに、…粛清を」
ウルォォォォ!!!!!!!
エミルの言葉とともに、周囲に何ともいえない雄叫びのような、唸り声が響き渡る。
「何!?」
突如として、大地から何かがわき上がったかとおもうと、
それらはまたたくまに魔物の形をなし、その場にいた全ての教皇騎士団にむかってゆく。
いきなりのことに何がおこったのかわからずにくちなわが思わず叫ぶが。
「――喰らうのはかまわぬ。が、血はながすな」
それは魔物達にむけての命。
魔物達のみに通じるその言葉の旋律は、くちなわには意味がわからない。
「…タバサさん、いきましょう」
「え?あ、は、はい」
今、たしかに。
エミルが何かをいったとたん、あらわれた、幾多の魔物。
そのことに首をかしげるものの、しかし深く考えることはせず、
タバサもまたエミルにつられ、魔方陣へと。
「な!?何だ!?この魔物は…って、くそ!
式神の反応がきえた!シルヴァラントににげこみやがったか!」
「く、くる…うわぁぁ!」
くちなわが追いかけようとするが、直後、魔方陣は光が収まるとともにかききえる。
そして、それとともに、背後のほうから聞こえてくる悲鳴のような何か。
ぐしゃ、べしゃ。
ふと振り向けば、何やら何かを咀嚼するような音とともに、
一人、また一人、と騎士団の姿が減っていっている。
そして、魔物達の口からはごりごりと何かをかみ砕くような音。
「…く、ここはひとまず撤退するしかない、か!しかし、なんなんだ!?この魔物達は!?」
こんな魔物がこの地にいるなど、きいたこともない。
ふわり、と風が大地を駆け抜ける。
どこまでも続いている若草色の絨毯であったそこは、今は黄金色の絨毯にと変わりゆいている。
どうやらこのあたりに生えていた麦がことごとく実りを迎えているらしい。
遠くには山脈が聳え、裾野まで緑色の草原が続いている。
ところどころ濃い緑色が見えるは森。
反対側をみやってみれば、その視線の先には海岸線。
なぜかこの地に移動してきたからか、完全にあの場所と今現在は繋がっているこの地。
最も、空間がずれているがゆえにおこっている現象なので、
大地を本来あるべく軸に戻せばこの歪みともなっている【道】は消すつもりではある。
先ほどまで夜であったはずなのに、空は青くすみわたっている。
この場所は、惑星上の大陸の位置からして、ほぽかの地、
異界の扉とよばれし場所からはほぼ真裏にと位置している。
ゆえに時差として、先ほどまで夜であったはず、なのに昼間、という形になっている。
惑星は球体の形をなしているがゆえ、そういったことが起こりえる。
もっとも、今の時代にすまうヒトビトがそのことを知っているかどうかはともかくとして。
空の一部。
その場に魔方陣らしきものが突如として出現し、空中の足場より、
どさ、どさどさっ。
地面にたたきつけられるように、その場に空から落ちているロイド達。
ちょうど夜明けが近いらしく、空に白みがかかり、朝の空気が気持ちよい。
「うわ!?」
扉といわれている魔方陣のようなものに飛び込んだ直後、
一瞬、目をつむったが、目をつむっていても感じた強い光。
そして、どさり、とした衝撃にて、思わずロイドが声をだす。
そして、ふときづけば、手に感じる大地の感触。
それぞれ、腰などを抑えつつ、その場から立ち上がる。
みれば、きちんとどうやら着地できたのは、エミルとミトスだけらしく、
それぞれ皆が皆、尻もちをついた形で地面に転がっているのがみてとれる。
「ここは…どこだ?」
尻もちをついていた形であったが、その場から立ち上がり、
きょろきょろと周囲をみわたし、そんなことをいってくるリーガルの姿。
すでに全員が移動してきた扉変わりの魔方陣は空中には存在せず、
ひんやり、とした空気のみが彼ら全員を包み込んでいる。
「ここは…多分、パルマコスタのはずれ…だわ」
リフィルもまた周囲をみわたしながら驚愕したようにいってくる。
このあたりはリフィルは幾度もとおった。
パルマコスタの牧場にむかうとき、またハコネシア峠にむかうとき。
このあたりは街道から少しはずれてはいるが、見間違えるはずもない。
「え?シルヴァラント…ですか?」
ぱたぱたと、地面に横たわっていたがゆえに、服についた土を両手をはらいつつ起き上がり、
首をかしげつつもリフィルにといかけているコレット。
「えっと…相変わらず、マナの量があのときからかわってない。
というか安定してるみたいだけど…間違いないよ」
「げ。パ…パルマコスタ!?もどったらパパ達に何ていわれるかなぁ」
ジーニアスもまた起き上がりつつそんなことをいってくるが。
それをうけ、マルタがきょろきょろと周囲をみわたし、
そんなことをつぶやいていたりする。
ノイシュはノイシュで鼻をひくつかせ、
そのあたりにはえている草をはむはむとおいしそうにむしばんでいる。
「ここが、シルヴァラント!?すごいすごい!ね!リヒター!リリーナ!」
「おまえは!後先かんがえずにとびこむな!」
「そうよ!まったく!あなたは、いつもいつも!」
目をきらきらさせ、はしゃぐアステルに、
おもいっきりどなっているリヒターに、その手を腰にあて、
アステルを見下ろすように強い口調でいっているリリーナ。
「うっひゃあ~。こんな形でこっちにくることになるなんて。おもってもみなかったなぁ」
ゼロスがそんな中、おちゃらけた様子でそんなことをいってくる。
どうやら全員が全員、この場付近にきちんと到着できたらしい。
もっとも、エミルが多少干渉したがゆえ、離れ離れになる、ということはありえないのだが。
「…シルヴァラント……」
ジーニアス達の言葉をうけ、ミトスがきょろきょろと周囲をみわたす。
おかしい。
テセアラのマナと、シルヴァラント側のマナ。
その感覚がほぼ同じ、ということはありえない。
なのに、この身にて感じるマナの容量は二つの世界ともほぼ同じ。
ありえない。
クルシスでマナの数値を管理している以上、こんなことはおこりえるはずがない。
そもそも、途中で衰退世界と繁栄世界の反転作業。
それをとめさせていたとはいえ、テセアラ側のマナの数値は半減していなければおかしかった。
にもかかわらず、マナはテセアラ側にもみちていた。
そして、こちら側。
大樹がない状態でどうしてここまでのマナが?
ゆえにミトスは戸惑いを隠しきれない。
「ゼロス!どうして邪魔したんだいっ!」
そんな中、しいながはっとしたように、ゼロスにつめよりながらも思わず叫んでいるが。
「…あのなぁ。お前だって死にたかったわけじゃねぇだろ?」
「…あ、あの?お兄…神子様、そろそろ……」
地面にたたきつけられるその直後。
すばやくゼロスはセレスを抱きかかえており、セレスはまったく衝撃をうけていない。
つまるところ、セレスを抱きかかえたゆえに、しいなと手が離れたがゆえ、
しいなもまたロイド達と同じように地面にたたきつけられた、のだが。
ゼロスの両手にはいまだにお姫様だっこ状態のセレスがおり、
とまどったように、それでいて顔を多少あからめつつも、セレスが困惑したようにいってくる。
「おっと。そうだな。セレス、怪我はないか?どこかおかしいとこは……」
「も、問題ありませんわっ!」
ぷいっとそっぽをむくセレスの表情は、これでもか、というほどに真っ赤に染まっている。
「そ…それは……」
ゼロスにいわれ、思わずうつむくしいな。
死にたかったわけではない。
でも、のあのままではじぶんのせいで、皆が、とおもったのもまた事実。
「第一。お前が死のうが死ぬまいが。あいつらは俺達を狙ってきたはずだ。…教皇の命令、ならな」
おそらくセレス以外の全員をその場で殺し、セレスをまつりあげるつもりだったのだろう。
そう確信がもてるからこそ、ゼロスは謝る気はさらさらない。
「え…くちなわが…教皇とつるんでるって…いうのかい?」
しいなが困惑したような声をあげる。
それは、あきらかな里に対する裏切り。
「そうね。一緒にいた刺客らしきあの鎧をきこんだ人物達。
あれはまちがいなく、教皇騎士団、とよばれていた人達の鎧だったわ。
つまり、教皇の手のもの、とおもって間違いないでしょう」
「間違いないな」
リフィルの言葉につづき、リーガルもまた、すかさずうなづいてくる。
教皇騎士団の鎧を見間違えるはずもない。
騎士団達が着こんでいる鎧には、かならずマーテル教会の紋章がはいっている。
それは普通の兵士達の鎧にはないもの。
「・・・しいな。むちゃしちゃだめだよ。
私と同じ間違いをしちゃだめ。自分を犠牲にしてもいいことはないよ」
そんなしいなにとコレットが自分にその立場をおきかえて、しいなを説得するように言い放つ。
あのとき、どうみてもしいなが犠牲になったとしても、
彼らは襲いかかってくるのはやめなかったであろう。
それはコレットからみてもわかる真実。
だからこそ、無駄な犠牲は払うべきではない。
というコレットの意見は間違ってはいない。
最も、本格的に彼らが攻撃をしかけてくれば、
かの地にいる全ての魔物があのものたちを敵、とみなし、完全に襲いかかっていたであろうが。
「そういうこと。ゼロスにお礼をいえよ。しいな」
コレットにつづき、ロイドもまたうなづくようにいってくる。
さすがにロイドとコレット、特にコレットにいわれたことがこたえたのか、
「…ありが…とう」
小さく、それでいてくぐもるような声にて、ゼロスに対しお礼をいっているしいなの姿。
「な~にな~に。キスの一つにふたつ、くれてやってもバチはあたらないぜ」
そんなしいなをちゃかすようにして、ゼロスからさらり、と言い放つが。
「不潔ですわ!神子様!そもそも、キスなどというものは、
お休みのときに額にするものだと以前、お兄様…いえ、神子さまがっ!」
セレスが知っている、キス、というのはお休みのキス。
不安で、眠れなかったセレスにかつてゼロスがおしえたこと。
額にかるくキスをおとされるのが、くすぐったかったが、セレスは好きだった。
今はそんなことはできはしないが。
それは、母が兄を殺そうとしたあのときまで、たしかにセレスは幸せだった。
どうして一緒に住んでいないのか、という不思議さはもっていたが。
母親がゼロスと自分とでは違う、というのは幼きころは不思議におもったが、
そもそも、貴族の中では母親が違う子供、というのはよくあることで。
ゆえにあまり疑問にもおもっていなかった。
「…ゼロス。あなた、妹に何をふきこんでるの?」
「まったくだ。嘆かわしい」
「うっ」
セレスの言葉に何やら不審な響きを感じたのか、
リフィルが呆れたようにゼロスをみながら言い放ち、
リーガルはリーガルで深いため息とともにそんなことを言い放つ。
二人のその台詞と、じと目で自分に注がれている視線にきづいたのかゼロスが一瞬ひるむが、
「…ゼロスくん。最低、です」
「うっ…キツい……」
とどめ、といわんばかりのぽつり、としたプレセアの台詞。
どうやらそれがとどめ、となったのか、がくり、とゼロスがその場にとうなだれる。
「でも、これからどうするんですか?」
アステル達はといえば、やれマナの推移がどうの、だの。
ほうっておけば一人どこかにいきそうになるアステルを
必死でリヒターが押しとどめている様子がみてとれている。
「…そういや、結局、ミトスやアステル達もまきこんじまったな~」
ロイドが頭をかきつつもぽつり、とつぶやく。
彼らもまた意図してこちら側にきたわけではないだろう。
こちら側からあっちにいった自分達はともかくとして、
彼らはテセアラ側しかしらないはず。
ゆえに多少、もうしわけなさそうな表情をうかべつつも、すこしばかり目をとじ、そして。
「せっかく。シルヴァラントまでもどってきたんだ。
ロディルのこともあるし。ディザイアンの様子を探ろう。
ロディルとヴァーリ、そして教皇が繋がっているのはわかってるんだしな」
「…ヴァーリ……」
その言葉をきき、プレセアがぎゅっとその手を強くにぎりしめる。
みれば、リーガルもまた無意識、なのであろう。
ぎゅっと手をにぎりしめており、ツメが完全に手のひらにとくいこんでいる。
「ミトス達はどうするのさ?巻き込むわけにはいかないよ。
アステル達もどうみても研究者気質で戦えるようにはみえないし。
…リヒターさんはともかくとしてさ」
どうみても、同胞でもあるリヒターは魔術がつかえるからいいとして。
アステル、そしてリリーナはどうみても戦闘向きではない。
セレスは病弱、というのでテセアラのように、
完全看護が可能な船があればともかくとして、
彼女もまた連れ歩くことには抵抗がある。
こちら側、シルヴァラントの医者の技術力はテセアラと比べれば、
かなり劣っている、という自覚がジーニアスにもある。
だからこそ、いざ、というときに手遅れになりかねないがゆえの懸念。
「パルマコスタの総督府に頼んだらどうかな?」
コレットがふとそんなことをいえば、
「それか、パパ達にたのもうよ。パパ、私のいうことなら絶対に断らないよ!」
マルタの提案に、
「それは助かるけども。でもマルタ、いいのかしら?」
マルタの意見はリフィルからしてみればとても助かるもの。
ゆえにあえて確認のためかマルタに問いかけているリフィルの姿。
そしてまた、
「なるほど。マルタちゃんの父親。か」
リフィル達がいっていたマルタの血筋が真実だとするならば、
つまるところこちら側の王家の血をひく者ということになる。
ゼロスがそれを思い出し、小さくつぶやいていたりする。
「たしかに。さすがに十六人で行動するには大人数すぎるかもだね。
どうみて旅業一行にしかみえないし。このメンバーだと」
そんな彼らの会話をうけ、しいなが首をすくめてそんなことをいってくるが。
リーガルの手枷を怪訝に思うものもいるであろうが、
人数が人数。
ゆえにあえて突っ込みはされないだろう、というのがしいなの感想。
「問題は、しばらくパパに便りをだしてなかったから。何かいわれそうなんだよね……」
旅に同行するにあたり、必ず手紙をとどけるように。
ということもあり、マルタは定期的にネコニン達をみつければ、手紙を届けてくれるようにと頼んでいた。
が、テセアラ側に移動してから、それはしていない。
というより、世界が違うのだから頼んでもしかたがない、という思いもあった。
ちなみに、どちらかといえばネコニン達は種族上分類するとするならば、
魔物のくくりにはいるがゆえ、とある条件を満たした場合、自在に世界の行き来が可能。
その条件、とは世界をめぐっているアスカにたのむ、というものなのだが。
「そういえば、どうして先ほどまで夜だったのに。ここはもう朝なんでしょう?」
ふと思い立ったように、セレスがそんなことをいってくるが。
「おそらくは、大陸の位置に関係しているはずね。私たちがいたのは、ここ」
いいつつ、ぱさり、と地図をひろげ、異界の扉とよばれし島を指差すリフィル。
そして、片手にシルヴァラントの地図をひらき、
「パルマコスタはここ。つまり、この地図を重ね合わせたとしても。
おそらく、ほぼあの地から反対側にこの大陸は位置しているからだわ」
「?何で大陸が違えば時間が違うんだ?」
リフィルの説明に首をかしげるロイドだが。
「ロイド。あなたは地動説、その教えを忘れたのかしら?授業でやったわよね?」
「げ。やぶさめだ」
「…ロイド。もしかして、藪蛇っていいたいの?」
呆れたようなリフィルの台詞。
そんなロイドの呟きにジーニアスもまたあきれたようにつぶやいているが。
「ここから、パルマコスタまではそうは時間かからないはずだし。それに、なんか私もねむいし」
そもそも、先ほどまでは夜だったのである。
いくら外が明るくなったから、といって眠気がとんでゆくはずはない。
属にいう時差ぼけに近い状態に陥っているようではあるが。
さらに、そうかからない、といえど、徒歩で移動するならば、
確実に一時間といわずにそれ以上はかかる距離でもある。
「それか。リフィルさん。このあたりで一度休んで。
それから移動しませんか?皆多分つかれてるでしょうし」
「あ。休むのなら、この中にテント一式いれてありますよ!」
アステルが嬉々としてそんな会話がきこえた、のであろう。
…どうやら今までずっと、リリーナとリヒターに注意をうけていたようであるが。
ともあれそんなことをいってくる。
どうみてもアステルが懲りた様子はない。
「そう、ね。状況判断も必要だわ。昼間ならばそうへんなことになはならないでしょうし」
エミルの言葉にリフィルがしばし考え込む。
ここから歩いて移動するにしても、パルマコスタまでは多少の距離がある。
パルマコスタの外れ、とはいえ、歩きだとかるく一時間以上はかかる距離。
「うむ。強いてはことを仕損じる。ともいうしな。
一度、体をやすめたほうがよかろう。…いろいろと思うところもあるだろうしな」
異界の扉においてあった出来事。
先ほどまで夜であったはずなのに、
あの魔方陣らしきものをくぐった先は朝で、
さらにいえば、ここはシルヴァラントだ、という。
それぞれ考えをまとめるにしても、おちつくにしても時間をおいたほうがよいではあろう。
だからこそ、リフィルの台詞にリーガルもまたうなづく。
「なら、僕、休憩の用意しますね。皆お腹もすいてるだろうし。何かつくりますね」
「エミルさん、私も手伝います」
「ありがとう。タバサさん」
いいつつも、慣れた手つきにて、そのままその場にてかまどをつくりはじめるタバサ。
そしてまた、エミルはエミルで袋の中から料理器具一式を取り出していたりする。
このあたりは街道から少し外れているとはいえ、
ちょうど開けている場所、というのもあり休憩するのにはうってつけ。
パチパチ。
朝とはいえ火をおこし、簡単な休憩場の用意をした場所にて、焚火がハゼ割れる音がする。
「ふさぎこんでるなんて、らしくないな」
エミルがつくったというスープが温かく、体の芯からじんわりとぬくもってくる。
アルタミラで手にいれた、というココナツの実をくりぬいてつくったという器。
もっとも、アルタミラではこのような容器も普通に売られていたのだが。
エミルはそれらを一応購入していたりする。
ココナツの実の器にいれられた容器、そしてココナツの実でつくられた、
という木の実のスプーン。
それらをそれぞれ手にしつつ、焚火を取り囲むようにして、
ひとまずは食事タイム。
本来ならば時間的にこれは夕食にあたるはず、なのだが。
こちらの時間が朝、ということもあり、朝ごはんと夕ご飯、
それが一緒になっているようなもの。
スプーンと、そして器を片手にし、おもいっきりため息をつくしいなに対し、
ゼロスがそんなしいなにと語りかける。
「あんたに慰めてもらおうなんておもってないよ」
傍によってきたゼロスにたいし、しいなが強い口調で言い放つが。
「うん。その調子だ」
そんなしいなを満足そうにみつつ、さらり、といいきるゼロス。
「くちなわのやつ……」
それでも、しいなからしてみれば、くちわなのあの言動。
両親の仇、といわれたのはどこか納得いくものがあった。
どういう事情がありはすれど、自分が里のものを殺してしまったのは事実なのだから。
だからといって、教皇と手をくむ、など。
里のものを裏切る行為。
「ま。そう奴を責めるなよ」
ぽつり、とスープをじっとみつめつつつぶやくしいなに対し、
ゼロスがそんなしいなを慰めるようにと話しかける。
が。
「ほっといてくれ!あたしは裏切りものっていう奴が大っきらいなんだよ!」
そんなゼロスの声をきき、きっと睨みつけたのち、
がっとそのまま勢いのままに器の中のスープをスプーンにて口の中にかきこんでゆくしいな。
どうやら食べることでこの鬱憤にも近い何か、を発散させようとしているらしい。
「お~こわ。女のヒステリーは犬もくわねえぞ」
「大きなお世話だ!」
叫ぶしいなの口にはおもいっきりスープ以外の品物。
エミルがどこからか用意したらしき、野菜炒めが口にふくまれ、
その口調はたしょうもごもごとくちごもっている。
「まず、始めに。誰が裏切ったのか考えてみるんだな」
「何だと!?」
さらり、といわれたゼロスの台詞に、おもわずしいながゼロスを睨みつけるが。
「ひぇ~。退散、退散。っと。お、エミル君。おかわりいいか~?」
「あ。はい。皆、飲み物もありますからゆっくりしてくださいね」
お茶もいれているがゆえ、ほっと一息つくには十分であろう。
ついでにいえば、食事のあとのデザートと、
そして一度それぞれ体を休めるためのハーブティー。
今現在は普通の料理をつくりおえ、デザートをつくっているエミルの姿。
タバサは慣れた手つきでアステル達とともに、ひとまず休む場所。
昼間だから体をやすめるにしても明るすぎて寝られないかもしれない。
という思いもあり、テントをはり、そこに暗幕らしきものをはり、ちょっとした暗闇をつくりだしている。
つまり、テントの中にはいれば暗くなり、少しでも体を休める状態をつくりだしている。
ゼロスがエミルのほうに歩いていったのをみつつ、それでも、ゼロスにいわれた言葉の意味。
それが今さらながらにしいなにも理解でき、
「あたしは…あたしは……」
思わずその場にて再び沈み込んでしまう。
誰が始めに裏切ったのか。
暗殺依頼をうけたのは、どういう事情がありはすれ、依頼は依頼。
忍びは心を殺し、任務を真っ当すべき。
そのおしえにそむき、シルヴァラントの神子の手助けをしたのは、他ならぬ。
ゼロスの機転がなければ、まちがいなく、自分は里を窮地にまた陥れていただろう。
それが今さらながらに理解できてしまい、しずみこんでしまう。
ゼロスとリフィルが機転を利かせ、国王にあのようなこと、
すなわち、世界が危険云々、という台詞をいったがゆえに、
しいなの暗殺失敗の件においてはとがめられることはなかった。
だが、あのとき。
そのままだったとすれば?
暗殺に失敗し、こともあろうにシルヴァラントから神子達をつれてきただけだった。
とするならば。
それは確実に、みずほの里が国に逆らった、とみられても不思議ではない行為。
国は自分達の草、すなわち裏方に徹しないようなものたちならば、
必要ない、といって切り捨てる可能性すらあったであろう。
改めていわれてみれば、自分が行った危険性、というものがよくわかる。
…もっとも、神子を暗殺していたとしても、世界が救われていたか、
というのはあのユアン達がいうことを信じるとすればかなり怪しいが。
暗殺すればいい、それですくわれる。
その考えに賛同していたわけではないが、依頼をうけたのは事実であり、
また、その依頼を失敗したのもまた事実。
しいなは事情をしっているがゆえ、この判断に間違いはない。
そうはおもうが、しかし何もしらない第三者。
すなわち、里の存在達からしてみれば、依頼をうけたのにもかかわらず、任務の失敗。
それはすくなくとも、里の評価をさげ、下手をすれば里の一族の存続すらあやしくなる。
その可能性があったことはどうしても否めない。
それにきづいたからこそ、しいなはゼロスの台詞に反論ができない。
たしかに、彼らから、里のものからしてみれば、裏切ったのはあきらかに、しいなのほう、なのだから。
アステル達がウィングパックの中にいれていた、というテント。
それらはワンタッチ形式を売りとしているテントらしく、
また、これもまたレザレノの製品、であるらしい。
スチール制の枠組みでつくられしそれは、金額もピンからきり、まであるらしい。
ちなみに、アステルが取り出せしは組み立て式のものらしく、
何でも様々な場所に調べにいくにあたり、
大人数は当たり前、すなわち学者達が集まっての実地検証はざら、
ということもあり、大小といったテントは常に外にでるときには常備しているらしい。
エアー、すなわち空気注入にて簡単に設置できるテントもあるらしいが、
それは何でも一つしかない、ということらしく、
それ以外のテント。
すなわち、本来ならば十四人用のテントをさきほどアステル達は組み上げた。
それを興味深そうにリフィルもまたみつつ、手伝っていたようではあるが。
ちなみにこのテント、五十五万八千ガルド、するらしい。
ウィングパックにいれているがゆえ、かさばらないのが最重要、とのことらしいが。
これが開発されてからのち、物資系統の移動が極力楽になった、
とはアステル達の談。
もっとも、この中には生物類をいれることはできず、無機物のみが出し入れ可能。
昼間に仮眠をとるような必要もあるらしく、その中に暗幕も常にいれているらしく、
慣れた手つきでテント周りを黒い暗幕でおおってしまえば、簡易的とはいえ、休憩所の出来上がり。
寝袋が人数分ないのがきにはなるが、
一人当たりのスペースもある程度余裕があるがゆえ、
そこに二人くらい加わっても広さ的にはかなり余裕がある、といってよい。
もっとも、エミルが念のため、外にてノイシュと見張りをしておくから、
皆はゆっくりと休んで、と申し出て。
そしてタバサは自分もまた休む必要がないから、といったこともあり。
実質的にテントの中にはいるのは十四人であるがゆえ、
一応、規格内の人数に収まっているのではあるが。
テントの中は七人が二列にならんで休めるようなつくりとなっており、
それでも一人あたり与えられる幅は、70×200cmであるがゆえ、
かなりゆったりとできるスペースが確保されているといってよい。
軒高は二メートルあり、さほど圧迫感も感じさせないそのつくり。
「テントっていうんだ。これ。便利だなぁ」
ロイド達の感覚からして、こういったテント、というものは存在していない。
というか、こういうものをつくる場所がないがゆえ、
どうしても普通に野営となると、外での寝泊まり、というのが通常。
しかし、テセアラにおいてはこういう品々をつくる場所があり、
また、レザレノ・カンパニー、という企業もある。
旅業のものたちのため、こういった簡易テント、というものもカンパニーは販売している。
それこそ、レザレノの社訓。
ゆりかごから墓場まで、を軸として、日常生活の中にある旅。
マーテル教のおしえにもある旅業。
それにともなう必要品、としてこういったものを開発、販売しているらしい。
天井あたりには複数の窓が装備されており、
喚起調整もその窓を開け閉めすることで自在に可能となっている。
基本の組み立てなども、ワンタッチパックル形式、とよばれている仕組みらしく、
力なき女性達でも簡単に組み立てられる、というのが売りの一つであるらしい。
ちなみに、これは十四人用の巨大テントではあるものの、
一人用から二人用まで、テントの幅はかなりある、らしい。
そのぶん、値段もまた落差は激しいらしいが。
中には百万ガルドを超えるというテントというものも存在しているらしいのだが。
「こっちにはチェーン店みたいな場所なんてないからね」
というか、唯一近いといえば、それぞれの行商人であろう。
もっとも、彼らもまた個人個人で品々を手にいれ販売している以上、
おおきな元締め、というものは存在していない。
そもそも、街や村同士の連携すらこのシルヴァラントでは確立していない。
マーテル教会ですら、かくそれぞれの街、そして村で独立しているほど。
つまるところ、まとめるものが存在していない。
もっとも、それでも祭司になりえるものが、イセリアに修業にでむく、
というのは、天界の決まりというかマーテル教の決まりでもあるがゆえ、
それだけ、は徹底されているらしい。
それぞれが、暗幕がはっているがゆえに、外の明るさを気にすることにく、
思い思いの場所にと横になる。
アステル達はまだ周囲の草花を調べる、といってこの中にははいってきてはおらず、
今、このテントの中にはいっているのは、
ロイド、コレット、ジーニアス、そしてセレスとしいなとミトス。
この六人。
マルタはリフィル達とともに、ミトス達をひとまず保護してもらうにしても、
その段取りが必要だから、というリフィルの意見もあり、まだ外にいるらしい。
ゼロスはシルヴァラントにやってきたのは初めてだから、という理由にて、
見回ってくる、といって、今現在、エミルとともに周囲を見回りにいっている。
タバサは火の始末をしつつ、ひとまず食事の後片付けをしている模様。
「しかし、さっきまで夜だったのに、こっちは朝、というのが。なんか変な感じだな」
先ほどまでたしかに夜だったのに。
魔方陣らしきものに飛び込んだ先が、すでに夜があけているなど。
もっとも、だからこそ、互いの世界が別れているとロイドからしてみれば、
今さらながらにようやくといってもいいのかもしれないが、変に実感していたりする。
「おそらく、惑星の反対側に位置してるんだろうね」
ジーニアス達からしてみれば当たり前ともいえる、世界は丸い。
という知識。
人間の中にはそんなはずがない、といって
この説をいまだに信じていないものも多々といるらしいが。
それを確かめるために海に出向いたものもかつてはいたらしいが、
そういったものたちはことごとく帰らぬものとなっているがゆえ、
いまだにその実証はされていない、とはリフィルの談。
「あ。あの。ジーニアス。やっぱり僕も戦うよ」
「ダメだよ。ミトス。ミトスもなんでかエクスフィアつけてるみたいだけどさ」
船の中で、ともにプールといわれしものに問答無用にミトスをひきつれて、
中にはいったときに、ミトスの胸元にそれらしきものをジーニアスはみている。
びっくりはしたが、ミトスが深くいいたくないような様子をみて、
そしてそれを目撃したプレセアもまた何もいわなかった。
よくよく見ればジーニアス達がつけている石と異なる、というのがわかるのであるが。
どうやらジーニアスはそのことには気づいていないらしい。
昔、姉様と…とミトスがうなだれていったことから、昔に何かあったのだろう。
と予測をつけ、それ以上は聞き出せてはいない。
アステルがそれをきき、かの教皇の指示でたしか、自分が知っているだけでも数名。
何かシュナイダー院長達は実験をしていたはずだ、という台詞もあり、
もしかしたらミトス達もまた、教皇一派の実験の被害者、
もしくは被験者にされ、どうにか逃げ出し、隠れ住んでいたのかもしれない。
それらの意見をきき、しいながその可能性もなくはないね、といったことから、
詳しくジーニアスはなぜそれを身につけているのか聞き出せてはいない。
ゆえに、余計にミトスのことがジーニアスとしては気になっていたりする。
ミトスがつけている要の紋らしきもの。
それが正常なのかどうかすら、それを判断するのはジーニアスには難しい。
下手にはずして、ともいえない。
もしも、不完全なものだったとするならば、はずしたとたん、
ミトスが異形と化してしまう可能性があるかもしれない以上、どうにもできない。
ロイドがいうには、要の紋となりえる抑制鉱石があれば、
どうにかなるかもしれない、とはいわれたが。
ここに抑制鉱石というものもなく、またその要の紋をつくるべく設備も整っていない。
アルテスタの元にて、要の紋をつくる技術はロイドは一応教わっている。
だからこそ、材料さえあれば、ロイドはできる、と断言しているのだが。
ないものをどうこういってもどうしようもないのも事実。
「ずっとってわけじゃないし。ひとまず、安全が確認されるまでは、ね?」
「そういう、ジーニアスだって危険なんじゃあ……」
ジーニアスの台詞に、なおもミトスが言いつのろうとするが。
「とりあえずは、パルマコスタにいってからだな。ミトスの要の紋のこともあるし。
できたら親父のところにもどったら親父に頼めば要の紋はどうにかなるかもしれないし。
それに、マナ何とかだったっけ?親父なら何かわかるかもしれない」
まさかリーガルが頼んでいた、とはおもわなかったが。
リーガルがアルタミラにてジョルジュと話していたというあの日。
何でもリーガルはジョルジュにことづけて、ジルコンとよばれし物質。
それを用意させていたらしい。
それを船の中で手渡されたとき、すっかりコレットの要の紋。
それが今は仮初めのものでしかない、というのを失念していたことを思いだしたロイドだが。
そもそも、コレットが普通にしているがゆえに、要の紋が不完全である。
ということそのものをどうやら完全に失念していたらしい。
もっとも、その失念していたせいで、コレットの症状は日に日に進んでいるのだが。
微精霊達があくまでも進行を送られているとはいえ、
普通の人の器には、微精霊達の、すなわち世界に通じる精霊の力は強すぎる。
ゆえにどうしても、そのマナでできている器は精霊の力にひきずられてしまう。
それが、精霊石となりえる結晶化、という現象。
~スキット・テントに入って少しして~
マルタ「そういえば、ロイドってイセリアにすんでたんだっけ?」
ロイドが要の紋云々、といいだしたのをうけ、マルタがふと思い出したようにいってくる。
しいな「たしかに。そういや、今のコレットの要の紋はアルテスタもいってたけど。
仮初めのものでしかないっていってたね」
必要となるであろうジルコンはすでにリーガルが手配していたらしく手にいれている。
あとはマナリーフとかいうものと、マナの欠片が必要となるらしいが。
ロイド「ああ。親父なら何かそのマナなんとかっていうのがわかるかもしれないしな」
だからこそ、今、とりあえずはパルマコスタにいってから、ということをいった。
ダイクのところにもどれば、すくなからずコレットの要の紋。
すなわちクルシスの輝石の要の紋についてわかるかもしれないがゆえ。
マルタ「それより、エミル、なんでゼロスなんかと…うう、エミルのばかぁぁっ!」
せっかく同じ場所で寝泊まりできるとおもったのに。
とかいいながら、いきなりぶつぶついいはじめているマルタをみつつ、
セレス「えっと…?」
そんなマルタをみて困惑した表情のセレスであるが。
ジーニアス「…きにしないほうがいいよ」
そもそも、ゼロスが始め、しいなを誘おうとしたのだが、猛反対したのはセレス自身。
自分が一緒にいく、と食い下がったのだが、ゼロスにお前はやすんでおけ。
といわれ、セレスとしてはしぶしぶ、ではあるがテントの中にはいることを承諾した。
コレット「でも、これほんとうにすごいね~」
ゆっくりと、雨風を気にせずに休むことができるなど。
シルヴァラントからしてみれば信じられない。
するとすれば、自力で小さな小屋とかでもつくればどうにかなるが。
ロイド「たしかにな。おお!これすごいぞ!なあなあ、みろみろ!」
シャッシャッシャ。
どうやら天井付近にある窓は紐で開閉が可能らしく、それに気付いたロイドが幾度も、
紐を引っ張ったりしては天井付近の窓を開け閉めし始めていたりする。
しいな「こらこら。そんなことしたら、せっかく組み立てる前に暗幕もつけたのに。
はずれたらどうするのさ」
そんなロイドの様子をみて、しいながため息とともにそんなことをいっているが。
そもそも、テントだけでは朝の明るさをどうにかする、というわけにはいかない。
ゆえに、付属品、というよりはアステル達研究者の必需品、というべきか。
組み立てるときにプチプチとはめ込み形式の暗幕をはっているがゆえ、
内部は外とくらべ暗さが保たれている、というのに。
ちなみに、ぷちぷちとはめ込まれている暗幕は、
紐をたぐって、上下に降ろす仕組みのものらしい。
つまり、左右の紐を引っ張ることにより、
暗幕の位置調整が可能、という仕組みとなっている。
ジーニアス「・・・・・・・・あ」
しいな「ほら、いわんこっちゃない……」
ロイドが幾度も暗幕をあげては下ろしては、さらには天井付近の窓の開け閉め。
それらを繰り返していたからか、一番高い付近でとめていたボタンがはずれ、
ぶらん、と暗幕の一部が垂れ下がってしまい、
それをみて呆れたような声をだしているしいなの姿。
セレス「…あんな高い位置、わたくし達ではたわないですわ」
セレスが困惑したようにいえば、
コレット「まかせて!」
ふわり。
パタパタ、プッチン。
その場に翼を展開し、ふわふわと天井付近に浮かんでいき、
外れたボタンを取り付けているコレットの姿。
セレス「…そういえば、あなたもお兄様と同じ…神子、だったのですわね」
シルヴァラントの神子、と聞かされたときは、何、お伽噺の、とおもったが。
そもそもセレス達、テセアラ人にとって、シルヴァラント、とは月の住民。
すなわち、お伽噺の住民であり、またレネゲードがもたらした情報により、
衰退世界となっているという対局した関係にある世界の人々。
セレスがコレットが翼をだしても驚かないのに不思議におもったのか、
ジーニアス「そういえば。セレスってコレットの羽みてもおどろかないの?」
素朴なる疑問をといかけているジーニアス。
セレス「見慣れていましたから。わたくしのお父様もありましたし」
ロイド&ジーニアス「「え?」」
しいな「ああ。セレスの父親は先代の神子、つまり、ゼロスの父親だからね。
儀式のときに神子が天使の翼を展開して儀式を行う。
というのはテセアラでは有名だからね」
しいながそんなセレスの言葉をうけ、苦笑しながらいってくる。
もっとも、時代の神子によっては、その翼が鳥の羽のようになったりすることもあったらしいが。
ジーニアス「ちょっとまってよ!?コレットは儀式をうけたから翼が……」
しいな「だから。あたしらのところでもその儀式はあるんだよ。
神子が一定の年齢になったときに、必ず天の儀式があるんだよ。
引き継ぎの儀式、と別名ではいわれてるけどね」
新たな神子が石をもって産まれ、そして儀式をうけたそのあと。
先代であった神子がもっていたクルシスの輝石。
それはいつのまにか失われている、そうしいなたちは聞かされている。
そして、神子の座を退いたものはそう永くはこれまでも生きてはいなかったり、
もしくは行方不明になっていたり、という事実があるのだが。
行方不明、といっても、人々は神子は天界に戻ったのだ、という認識でしかなく、
よもや何かその身におこったなど、誰もゆめゆめ疑ってすらいない。
最も、繁栄世界の神子が長生きしてもロクなことにはならない。
それはミトスがかつての経験から得た教訓。
かつて、繁栄世界の神子達がクルシスに反旗を翻そうとしたことがあった。
今の時代のものはそんなことすら忘れてしまっているではあろうが。
ゆえに、その器となりし体のマナを無理やりに照射させる機能をつけた、
要の紋。
要の紋にその機能をもつけ、神子に神託とともに託すようにしている。
天使の翼を展開しつづけてゆくと体を構成しているマナが涸渇し、
いずれは死んでしまう、という現状をミトスはつくりだしていたりする。
もっとも、衰退世界における神子へはそのようなことはしていない。
そもそも、姉の器にするはずの体を衰弱させては意味がない。
ジーニアス「…まさか、ゼロスにも…コレットと同じような、翼、が?」
しいな「まあね。あたしはみせてもらったことがあるけどさ。けど、あいつは……」
翼をもっていること自体を当時は嫌っていた。
今はそのようなそぶりはみせないし、
また求められない限りは、儀式においても翼を展開しはしない。
コレット「そっか。ゼロスも私と同じ、神子だもんね」
ロイド「あいつに……」
ジーニアス「翼?」
ミトス「・・・・・・・・・・・・・・」
困惑したようなロイドとジーニアスの台詞をききつつ、
ミトスはただその場にて黙りこむのみ。
コレット「はい。できた!ロイド、もうあまり紐ひっぱったらだめだよ?」
ロイド「お。おう」
ジーニアス「というか、ロイド、もしかしてもうあきたんでしょ?」
それまで幾度も紐をひっぱっていたのに、今はその手を紐にすらかけていない。
ジーニアス「ロイドはあきっぽいからねぇ」
ロイド「何だとぉ!」
しいな「はいはい。ったく。…ああ。あたしもリフィル達とのこればよかったよ。
そういや、プレセアは薪を割るとかいってタバサのもとにいたっけね……」
エミルとゼロスは見回りに出かけたらしいが、
プレセアはエミルがこれまたどこから用意したのかはわからないが、
エミルが手にしていた大小様々な木々を薪にする、といって、
外でその斧を振るっていたりする。
こぎみよい、斧を振るう音が外から時折きこえてくる。
何だか余計にこのテントの中に彼らとともにいたら、疲れてしまうような気がしてしまう。
しかし、これだけはいっておかなければ。
しいな「いっとくけど。ロイド。このテント、壊したりしたら弁償ものだからね?
このテントはたしか、特注品のはずだから。
普通に売られているのでも五十五万ガルドはするんだからね?」
ロイド&ジーニアス&マルタ「「「げ!?」」」
マルタ「さ、さすがにそんな大金…ろ、ロイド!何もさわっちゃだめだからね!」
ジーニアス「そうそう!何か壊すとしたらロイドなんだから!」
ロイド「マルタもジーニアスもひでぇぇ!!」
ミトス「・・・・・・・・・・・・・・・・なんだか賑やかだね」
色々な意味で。
しいな「…はぁ。誰でもいいからあたしに用事とかいって呼びにこないかねぇ……」
このまましいな一人が外にでようとしたら、
この調子ではまちがいなくロイド達もついてきそうな気がする。
だからこそ、しいなはぼやかずにはいられない。
しいなのそのぼやきが、実現するのは、もう少しあとのこと。
ゼロスが呼びにくることにより、しいなのその思いは果たされる。
が、そのことは、今のしいなが知るはずも、ない。
※ ※ ※ ※
「それで?ゼロス。エミルと見回りいってみて、何か変化とかあったかしら?」
ゼロスはエミルと周囲を念のために見回ってくる、といって少し離れていた。
ゆえに、戻ってきたゼロスにリフィルが問いかける。
ロイド達がテントに入ってしばらく、リフィル達はテントの外にて今後の話し合いをしているそんな最中。
見回りにいっていたゼロス達がどうやら戻ってきたらしい。
「いや。しっかし、こっち側はほんっとうに何にもないんだな。俺様改めてそのことにびっくりだぜ」
エミルと周囲を見回ってみたが、建造物らしきものは一切見当たらず。
テセアラでは街道沿いですら、人の手がくわわっている、とよくわかるのに。
こちらのシルヴァラントの街道、といわれているそれは、どちらかといえばけもの道に近い。
つまり、塗装も何もされておらず、地面がむき出しになっている。
テセアラの地では主要都市、または街の付近になれば、
主要街道には必ず、石などかひかれ、整備されている、というのにもかかわらず。
つまるところそれが意味するのは、こちら側の人々は、
そこまでの余裕がない、ということなのか。
それとも、そういう作業をするにあたり、安全が確保されないからなのか。
それはゼロスにも判らない。
おそらくは、両方だろうな、というあたりはつけはしたが。
こういう形で衰退世界にやってくる、とはおもわなかった。
街道一つをとってしても、こちらの世界が八百年もの間、
衰退していた、というのが現実味を帯びている。
「私たちのほうは、マルタと話しをつけたわ」
「とりあえず。私が皆をつれてパパのいる総督府にいくから。
そこで、セレスやミトス達のことをたのもうとおもって」
マルタの説明をひきつぐように、
「こちら側の世界の王家の血をひく、というのであれば。
彼らもまた事情を知る必要はあるだろう、というのがリフィルの意見なのだが。
神子はどう考える?」
リーガルもリフィルの提案には一理ある、と納得しているが。
しかし、いくら彼女のいうこと、とはいえ、簡単に信じられないのも事実であろう。
だとするならば、テセアラの神子という存在を示せば信憑性は増すのでは。
という思いがあるがゆえの問いかけ。
まあ、普通のときのゼロスの行動は何とも言い難いが、
公務の場における神子としての降るまい、それはリーガルも認めている所。
不安は残るが、二人の神子、という存在を示せば、信じざるを得なくなるであろう。
というのが、リフィルの意見。
もっとも、そのためには、
「ゼロス。セレスにあなたはクルシスの輝石を預けている、といったわね?
その輝石を少しばかりあなたが手にして装備してもらえるかしら?
クルシスの輝石は神子しかつけられない。これがこちら側でも常識ですからね」
クルシスの輝石を装備していれば、すくなくとも信じざるを得ないであろう。
「パルマコスタというところでいろいろと情報を仕入れた後。
エレカーで炎の精霊がいる、という大陸に向かうことで一応話しはついた」
精霊の神殿に向かう時、セレス達も同行させるかどうか。
その判断はいまだにできてはいないが。
ともかく、パルマコスタで情報を仕入れてから今後のことを決める必要もある。
今、こちら側シルヴァラントの世情がどうなっているのか、リフィル達は知らない。
だからこそ念には念を、というリフィルの意見。
そしてまた、リーガルもこちらの世界のことをまったくしらない。
知らない場所で情報も何もなくやみくもに歩きまわる、というのは得策ではない。
テセアラ側ならば、すくなからずちょっとした場所などにおいて、
レザレノの息のかかったものがいるのでたやすく情報を手にいれることもたやすかったが。
こちら側ではそうはいかない。
「おお。俺様責任重大ってか。おっけ~、おっけ~、まかしとけって。
きっちりとマルタちゃんのお父様達を説得してみせましょうってか?」
「…果てしなく不安だわ」
「まったくだ。しかしこればかりは、な」
ゼロスの軽い返事をうけ、リフィルとリーガル。
二人してその場にて盛大にため息をつく。
果てしなく不安ではあるが、しかしこれでもゼロスはテセアラの神子。
リーガルもいっていたが、神子としての役目はきちんとゼロスは果たしていた。
最も、冬のみはいろいろと理由をつけて、旅業にでかけ、南の街へ長期滞在する。
ということはあるらしいが。
「そういや、セレスの姿がみえねえけど、あいつはもうやすんだのか?」
ふと、この場にいる人物達。
この場にいるのは、リフィル、リーガル、マルタの三人。
少しばかり視線をずらしてみれば、アステル、リヒター、リリーナが、
少し離れた位置にて、この場にはえている植物などをみて、
何やら興奮したように話しているのがみてとれる。
プレセアはといえば、タバサとともに、薪を手にいれるために、
近くに薪拾いにいっている、とのことらしいが。
「ええ」
「んじゃ、ちょっとみてくるか。…あいつ、ねむくなったりしたら、
布団もかけずによくそのままねちまって。大熱だして寝込むことがざらだからな」
特に体が弱いというのに興奮したあげく、精神が高ぶっているか、なのかもわからないが。
とにかく、睡魔に襲われたセレスはよくそのようなことをしでかすことがある。
そのことをゼロスは知っている。
ゼロスが首をすくめつつ、つぶやきながら、テントのほうに歩いていこうとするのをみてとり、
「ゼロス。なら、しいなを呼んできてくれないかしら。
今後のことをしいなとも話しを詰めておきたいから」
どちらにしても、精霊と契約するのならば、しいなの力は必要。
この地、シルヴァラントにて精霊と契約していないのは、
封印の場にいた精霊が契約すべき精霊だ、というのならば。
すでに風の精霊と水の精霊との契約はすんでいる。
残りは、火の精霊と、月の精霊アスカのみ。
そんなリフィルの言葉をうけ、
「へいへいっと」
かるく手をあげながら、ゼロスは一人、テントのほうへと近づいてゆく――
アステルがもっていたという簡易的に休める、という彼ら曰く、テント、というらしい。
その中において、それぞれくつろぎながら、今後のこともあり話しあっているロイド達。
一方で、リフィル達が外にのこり、テントの中にはいっているロイド達六人はといえば、
彼らは彼らで今後のことについて話し合っていたりする。
エミルとゼロスはどうやらロイド達がテントに入るとき、周囲の見回りにいったらしいが。
「そっか。せっかくこっちにきたんだから。だったらしいなに精霊と契約してもらえばいいんだ。
たしか、こっちで契約してないのは、イフリートとあとはルナだったっけ?
姉さんがいうには、あれはルナだっていってたし」
イフリートは旧トリエット遺跡の精霊の祭壇、そしてルナと邂逅したは、マナの守護塔。
「たしかに。こっちの精霊とも契約しないとね」
ジーニアスの台詞にしいながうなづき、
「そういえば、あの女の人、アスカがどうとかいってなかったっけ?」
コレットがふと、マナの守護塔の封印をといたときのことを思い出し、
首をかしげつつそんなことをいってくる。
「アスカ?とはもしかして、光の精霊、アスカのことですか?」
コレットの言葉にミトスが反応し、首をかしげて問いかけるが。
ミトスからしてみれば、光の精霊、アスカは。
あのとき以来、みつからない精霊の一体。
ルナは捉えることはできたが、アスカは結局捕らえることができなかった。
どうやら互いの世界を行き来し、クルシスの監視システムからも逃れているらしい、
というのは、これまでの予測から判明しているが。
「ミトス、しってるの?」
「古い文献でみたことがあります。たしか、特殊な音をアスカは好むとか……」
テセアラ側のリンカの木々は、ミトスは時間をかけて絶滅させている。
残っているとすればこちら側のシルヴァラント、ではあろうが。
しかし、マナが薄い世界においてかの木々が群生する、とはおもえない。
最も、今自分が感じているマナの濃さ。
この濃さを考えればもしかしたらどこかにリンカの木々が群生している可能性はある。
このあたりも監視システムで調べられればいいが、さすがに木々の種類云々。
そこまでクルシスのコンピューターは探し出す機能はついていない。
否、あるのかもしれないが、それらをミトスはいまだに使いこなせてはいない。
かの彗星にあった設備はどれも複雑で、ミトス達はその一部を利用しているに過ぎない。
「しいな。そのあたりはどうなんだ?」
ミトスの言葉をきき、もしかしたらしいなならしっているかも、
という思いもあり、といかけるロイドに対し、
「精霊アスカ、かい?精霊研究所の研究結果では、
かの光の精霊はリンカの木、とよばれている木の実の音。
それを好んでいた、という研究結果がまとまってはいるけどね。
昔はリンカの木々が群生していた所で光る鳥が幾度か目撃されたことがあるらしいよ。
最も、テセアラでは、いつのまにかリンカの木々は乱伐され、もう絶滅しちまってるけどね」
しいながしっているのはごくごく一部。
「あのアステルって子が精霊研究のテセアラでもたしか、第一任者のはずだし。
精霊のことならあのアステルにきけばいいとはおもうけどね」
「そう。ですね。リンカの木はもう絶滅してしまってますからね」
しいなの台詞にミトスが無意識のうちに、その手を腰にあてつつ、
ぽつり、とつぶやく。
姉のもちし笛はそのリンカの実でつくられている品。
「…あれ?セレス?大丈夫?」
「へ、平気ですわ。でも、なんだかものすごく眠くて……」
それまで彼らの会話を黙ってきいていたセレスであるが、
ふとふらり、と頭を揺らしているのにきづいたのか、ジーニアスが問いかける。
「いわれてみれば…ふわ~、俺もなんかねむくなってきた……」
改めていわれてみれば、なぜか眠気が襲ってくるような気がする。
「…まあ、いろいろあったからね。
少しでもねむくなくても横になって体を休めたほうがいいよ。あたしも少し休ませてもらうよ」
いつのまにか、セレスはこてん、と横になり、その場にてすやすやと寝始めている。
「っと、って、セレスのやつ、これじゃ、風邪ひくじゃねえか」
そんな中、どうやら話しがおわったのか、ゼロスがテントの中をひょい、とのぞき、
どこからこれまたもってきたのか、すかさず敷布団などをその場にひいたのち、
ひょい、とセレスを抱きかかえ、敷布団の上にセレスを横たえ、
さらにはその上にはこれまた毛布までかけていたりする。
どうやらいつのまにか見回りから戻ってきていたらしい。
「…やっぱ、あんた、シスコンだわ」
そんなゼロスをみてしいなが呆れたようにいっているが。
「っと、そうだ。しいな、リフィル様達がよんでたぜ?
今後の契約について話しがしたいってさ。平気か?」
「ああ。わかったよ。じゃ、あたしもちょっと外にでてくるよ」
どうもこの場は子供ばかり。
この中で一番年上…としいなはおもっている。
しいなとしては、こういったものの中で寝るよりは、普通に野宿のほうが気がやすまる。
ゼロスにつれられ、しいなもまたテントの中よりでてゆけば、その場にのこされるはロイド達のみ。
「ミトス。何か体の調子がおかしいとおもったらすぐにいってね?絶対だよ」
「あ、うん」
ジーニアスに促され、ミトスもまた横になるが。
真剣な表情でそういわれ、ミトスはただうなづくしかできない。
自分が調子がわるくなるようなことはありえない。
それでもそれをいえば違和感を感じられるかもしれない、とおもうがゆえに、
素直にいうことをきいているようにふるまっているミトスだが。
しばらくすると、ロイド、ジーニアス、コレット、セレス達から
す~す~、といった寝息らしきものが聞き取れる。
そんな彼らをみつつ、
「…なぜ?」
ふとつぶやくミトス。
コレットの天使化そのものは変化していないはずなのに。
であれば、コレットの睡眠の停止機能。
仮初めの要の紋でそういった生体機能が中途半端ではあるにしろ戻っているということか。
そもそも、クルシスの輝石、ハイエクスフィアが普通の要の紋に耐えられるはずもない。
だというのに、事実、コレットは意思を取り戻している。
大概は、精霊達の力に呑まれ、心を失ったものはそのままで、
自分の自我、というものすらあいまいのままだ、というのに。
報告にあったかぎり、神子コレットの天使化にともなう変化に不都合はなかった。
そもそも、永続天使性無機結晶病にかかっていたことからも、
姉と同じ道を歩んでいるがゆえに、器に相応しい、とおもっていた。
しかし症状が進行しているとなると、このように睡眠すらできないはず、なのに。
そもそも、自分の意思でコレットがそういった生体機能、
それらをコントロールできている、とはミトスは到底思えない。
自分達ならば自在にコントロール可能だが、コレットはそうではないはず。
だからこそ、普通に食事もできて、温度も感じているらしきコレットに、
ミトスは戸惑いを隠しきれない。
「コレット?どうかしたのか?」
ふと、街道にまで歩いていき、コレットが沈み込んでいるのにきづいたのか、
ロイドがそんなコレットに心配そうにと問いかける。
太陽の位置からしてどうやら数時間以上は眠っていたらしいが。
まだ、太陽がのぼった直後くらいであったはずの太陽の位置が、
今では完全に真上あたりにまでのぼってきている。
ロイド達の感覚ではあまり疲れたように感じてはいなかったのだが、
それほどまでにいつのまにか眠っていたことを考えれば、
やはり精神的にも疲れがたまっていたらしい、と当人達の認識。
最も、リフィル達もいつのまにか眠っており、寝ずの番をしていたのは、エミルとタバサのみ。
ミトスもまた睡眠機能を停止しているにもかかわらず、
なぜか気付いたら眠ってしまっており、戸惑いを隠し切れていないようではあるが。
最も、彼らが気付いていないのみで、エミルが少しばかり魔物に頼み、
睡眠効果のある胞子が辺り一帯に飛んでいたがゆえに、
彼ら全員が眠りについていただけ、なのではあるが。
当然、そんなことをロイド達はしるよしもない。
たどり着いたのがパルマスタ付近の街道の外れ。
それからテントをたたんだのち、街道沿いにでて歩いてゆくことしばし。
やがて視界の先にパルマコスタが見えてくる。
ようやく街の姿がみえたころ、コレットがいつになくふさぎこんでいる様子に気づき、
ロイドがそんなコレットに声をかけているようではあるが。
「ロイド…あのね。私…かえってきてよかったのかな」
ぽつり、とコレットが誰にともなく、
また自分自身に言い聞かせるかのごとくにそんなことを呟いてくる。
「コレット?」
そんなコレットの不安そうな声にきづいたのか、マルタが心配そうにコレットの顔を覗き込むが。
「どうしたのさ?急に」
そんなコレットの台詞にジーニアスも首をかしげつつ問いかける。
「だって…私、神子の試練を途中でやめちゃったんだよ?」
あのとき、自分が命をささげることにより、再生は完了する、はずであった。
しかし、コレットはその儀式を終えていない。
だからこそ、コレットはそのことにたいし負い目を感じてしまう。
「…シルヴァラント中の人があんなに応援してくれたのに」
コレットが死ぬことを前提とした人々の応援。
「…仕方ないわ。事情が事情ですもの」
そんなコレットにたいし、リフィルが深いため息とともになだめるように言い聞かせる。
そう、事情が事情。
あのユアンがいっていたことが事実だとすれば、
コレットが再生の儀式を終えたあと、世界がおわる、など洒落にはならない。
それをおもえば、あのときコレットを助けだしたのは、
ロイドや自分達の感情のままの独断であったにしろ、正解であったのであろう。
そうおもうがゆえに、リフィルは事情が事情、としかいいようがない。
「でも…先生。私、心を取り戻したとき…嬉しかったから…
シルヴァントのことを忘れてはしゃいでました。
……この世界の人々がどんなに苦しんでいるのかも忘れて」
あのとき、ロイド達が助けにきてくれたことがとてもうれしかった。
あの一瞬、コレットはたしかに、シルヴァラントのことを忘れていた。
それに対し、神子として育てられたコレットの心は許すことができない。
なぜ、と。
「神子だって嬉しい時は喜び、悲しい時はなくものよ。何もあなた一人で全てを背負うことはないの」
「そうそう。こいつを見習いなよ。こいつ神子としての役目はきちんとしてるけど。
プライベートではみてもわかるとおり、おちゃらけてるだろ?
あんたは、まじめすぎるんだよ。もっとも、その真面目さをこいつも見習ってほしいけどね」
リフィルの言葉に続けるように、しいなが首をすくめ、ちらり、とゼロスをみていってくる。
「おいおい。公私ともいつも同じだと、気づかれするだろうが」
「こうし?ゼロス、どこかで勉学でもおしえてるのか?リフィル先生みたいに」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
どうやら、公私、の意味を、講師、とロイドは捉え間違えたらしい。
一瞬、ロイドの台詞に何ともいえない沈黙が訪れるが。
「え、えっと。ロイド?それってぼけ?ぼけだよね?」
そういえば、クラトスも真面目に時折冗談をいって、
それが冗談、とわからずに困惑したことがあったな。
ふとかつてのことを思い出し、ミトスが思わずロイドに問いかけているようだが。
「?だから、ゼロス。どこでおしえてるんだ?」
「…リフィル。シルヴァラントの学問はいったい……」
「いわないで。リーガル。ああ、頭がいたいわ……」
「お願いだから。ロイドを基準にしないでよね!
今から向かう、パルマコスタは学問の街としても有名なんだから!」
リフィルが思わず頭をかかえ、リーガルがぽつり、とつぶやけば、
そんなリーガルにすかさず反論しているジーニアスの姿。
「…ま。あんたの気持ちもわからなくはないけどさ。
けど、あんたはいつも人のことを思いやってる。それはあたしもよくわかるよ。
だから、あんたが相手を、他人を、この世界の人だけでなくテセアラの人達も。
そんなあんたが他人を思いやる気持ちを無くさない限り、
あんたは再生の神子、といってもいいとおもうよ?
そもそも、こいつだってテセアラの神子、なんだしねぇ」
ため息をつきつつ、ちらり、とゼロスをみてしいながそんなことをいっているが。
「……わるかったな。…好きで産まれたんじゃねえよ」
最後の台詞は、小さく、聞きとりにくいが、しいなには確かにきこえた。
だからこそ、はっと自らの失言に気づき、
「あ、わるい。あたしはそんなつもりじゃ……」
あわてて、ゼロスにたいし、いいわけをしようとするが。
「別にいいさ。どうせ俺様は……」
あんたなんて、産まなければよかった。
最後となった母親のあのときの言葉。
「…そっか。ゼロスもいろいろとあったんだ。うん。そうだよね。
少しはゼロスを見習って、私も自由になろう、かな?」
言葉に含まれた意味はコレットにはわからない。
しかし、おそらく同じ神子同士。
感じていた思いは同じはず。
「自由って、コレット。何するのさ?」
「え?えっと。お料理つくったり……」
「あら。料理なら私が教えて……」
「「「それはやめ(て)(て、姉さん!)(たほうが)」」」
リフィルがいいかけると、すかさず、しいな、ジーニアス、ロイドの台詞が同時に重なる。
一方。
「学問の街!?つまり、そこにいけばここ、衰退世界シルヴァラントに関する資料が!
さあ、いこう!はやくいきましょう!」
「…アステル。いそがなくても街は逃げないと思うぞ」
「…まったくだわ。は~。リヒター。これは街にはいってよく目を光らせていないと。
この子のことだもの。いきなり走り出して迷子になりかねないわね」
「だな」
先ほどジーニアスがいった学問の街。
その台詞をきき、アステルがきらきらと目を輝かせ、
一人、ずんずん街道を先に歩きはじめていたりする。
そんなアステルをみて、リヒターがため息まじりにいい、
リリーナもまた思いっきりため息をつき、リヒターと何やら話しているようではあるが。
「料理を教わるのならば、エミルさんをお勧めします」
それまで黙って会話をきいていたプレセアが、ぽつり、といってくるが。
「エミルみたいにはむりだよ~。
エミルの料理の細工、ものすごいもん。前挑戦したら手、きったし」
ロイドに喜んでもらおうとして挑戦したことはあるにはある。
「え?コレット、手を怪我してるのか!?」
「ち、違うよ。前だよ、前!って……」
ばっとコレットの手をつかみ、じっとコレットの手をみつめているロイドにたいし、
コレットは顔を多少あからめつつも戸惑いながらも返事を返す。
「…青春、だねぇ」
「だから。あんたはこの子にちょっかいだすんじゃないよ。初々しいじゃないか」
そんなコレットとロイドの様子をみて、ゼロスが苦笑まじりにつぶやけば、
しいながそんなゼロスの肩をこづくように、きっぱりと牽制をこめて言い放つ。
「それより。神子様。あの街がそう、なのでしょうか?」
街道の先。
街道を進んでゆくにつれ、潮の香りがただよってくる。
「らしいな。しかし、なんかこじんまりしてる街だな」
すっと目をほそめ、そちらをみてつぶやくゼロスだが。
「あなた達の世界、繁栄世界側とくらべないで頂戴。
ともあれ、コレット。あなたは堂々としていればいいの。
本当の意味でのシルヴァラントを、いえ、この大地を世界を救う旅をしているのだもの」
世界が滅ぶかもしれない、というのは人々に伝えればパニックになりかねないが。
しかし、救いの塔にいったのち、神子がどうなったのか、
もしくは救いの塔にたどりついてすぐに世界が再生されたのか。
そのあたりの記述は残っていない。
神子は救いの塔から天界に誘(いざな)われる、と伝えられてはいるが。
それらが全て偽りでしかなかった、と聞かされている以上、
リフィルとしても意味もなく教え子の命を失わさせたくはない。
「しかし、そいつが結構役にたってるな~」
ちらり、と横を歩調をそろえあるくノイシュをみてぽんぽんと、
ノイシュの体をたたきつつ、いきなりゼロスが話題をかえてくるが。
「たしかに。セレスって体弱いらしいし。ノイシュにのっての移動のほうがいいよね」
マルタもゼロスのいいたいことがわかったのか、
同意を示していたりする。
それでなくても海風というものは、体に障る場合がある。
もっとも、セレスの場合、そんな状態だ、というのに、
国が南海の孤島に修道院をつくり、そこに押し込めてしまっているがゆえ、
あるいみで潮風には慣れっこになってしまっている、という事情があるが。
それでなくても体の弱いセレスは、潮風に常にさらされ、寝込む日々が続いてしまっていた。
それがかわったのは、ゼロスがクルシスの輝石を手渡し、
さらにはどこからともなくエクスフィアを手にいれ、セレスに手渡してから。
それでもこれまでも時折寝込むことが多々とありはしたが。
「わ、わたくしも歩きますわっ」
「無理すんなって。いいからお前はそこにのっておけ」
今現在、セレスはといえば、ノイシュの背にのり、共に移動していたりする。
ゼロス曰く、セレスは長旅などには慣れていないこともあり、
また、長時間歩き続けたりすればそれこそ寝込むこともあるという。
ならば、という理由から、ノイシュの背にのせる、というのでリフィルが提案し、
リフィルとゼロスに説得され、一人のみセレスはノイシュの背にのっている状態。
少し前には早足でずんずんひたすらに突き進んでいっているアステル達三人。
ノイシュはロイド達の足並みにあわせ、ゆっくりと進んでいるゆえに、
だんだんロイド達とアステル達の距離は開いていっていたりする。
「皆~!何してるのさ!先に街の中にはいっちゃうよ~!」
ふとそんな会話をしている中、どうやらいつのまにか、勝手にアステル達は、
街のでいりぐちまでどうやらたどりついているらしい。
風にのり、叫んだアステルの声が街のほうからきこえてくる。
「とにかく、街にいきません?」
おそらくほうっておけば、アステル達は勝手に街の中にとはいるであろう。
それゆえにそう問いかけるエミルの言葉に、
「そうね。私達もいきましょう」
こくり、とリフィルがうなづき、それぞれ街にむかって進んでゆく。
pixv投稿日:2014年2月8日某日(Hp編集:2018年4月22日(日)
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