まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
pivixさんに投稿していた話の区切りとは変えてあります。容量的に……
今回は雪まつりにはいる序章と、そして雪まつり当日。
それらに一気に話しがとびます(マテ
え?聖地のイメージ?判る人にはわかるかと。
そもそも、エイト・センチュリオン。
あと一人いれば、九体になるのでキリがよかったんですけどね…
近い位置になるといえば、ヴェリウス、かな?
人の心の精霊、なので、夢に近いし。
某女王様の守護聖様達は九人…なんですよねぇ(マテ
で、ラタトスクは樹の精霊。
つまり…ここまでいえば、聖地のイメージ、はい。わかりますねw
あれにも巡礼の旅、というのがありますし(だからマテ
さて、今回、ラタトスクやミトスの独白シーンのようなものが入ります。
前半はファンダムやスキット、そしてオリジナルの回想シーンが主ですけどね。
さてさて、ようやく登場!ラタトスクの騎士からの参加者さらに三名!(マテ!
つまり、今ですら十三人なのに、
三人追加で十六人PTに。
ほんとうに、旅業というか旅の一行、としかみえませんね。これだけいると。
リフィルがほとんどツアーコンダクターのような扱いになってたりするのは、
彼女の性格からしてまあ仕方がない、かと。
他がまとめたらぜったいに収集がつかない。絶対に(確信
ロイド・ジーニアス・リフィル、コレット(シルヴァラント組)
しいな、ゼロス、プレセア、リーガル(テセアラ組)
マルタ、セレス、タバサ、エミル、ミトス(オリジナル組)
アステル・リヒター・リリーナ←New
ちなみに、これ以降増えるとしたら、クラトス達しかいませんよ←?ん?達?ふふふw
さて、今回もまたまた、ラタトスクのネタバレ入ります。
というか、番外編のラタトスクの騎士の小説設定なども含まれてます。
つまり完全ネタバレ、です。
そういえば、話数もすすんできたからなぁ…
目次、つけるべきか?一覧的に。
自分ですら、このシーンは何話あたりだったっけ?と確認する状態だしな…
ちなみに、このあたりでついにメモ帳の量は3.5m突破してます。
うぉい(汗
~一言メモ~魔装備一覧表~※この武器は倒す数の敵によって強力になっていきます※
闇の装備品は敵を倒すたびに攻撃力が上がっていきます。
(ステータスに変化はありません。)
大体2000匹程度たおしたくらいで
一撃約1500ダメージほど与えられるようになります。
別に闇の装備品を装備した状態で倒さなくてもいいらしい。
(つまり手にいれている状態だけでどんどん強くなる?)←いつも装備させてたので不明
○魔剣ソウルイーター :装備者;ゼロス&クラトス
ゲーム終盤で砂漠の花トリエットの広場にいる男性から巨大ミミズの話を
聞いた後、北の砂漠の境目あたりの丘の裏側にある光に触れます。
ここでシルルル(ミミズの巨大な魔物もどき)と戦闘になるので勝利します。
○ 魔剣ネビリム 装備者;ロイド
「魔剣ソウルイーター」イベント後雪景の街フラノールに行き、建物の入り口
付近に倒れている人に話しかけます。「ネビリムの鍵」も同時に入手します。
○ 邪剣ファフニール 装備者;ゼロス&クラトス
「魔剣ネビリム」イベント後ガオラキアの森に行き、封印された宝箱を調べます。
選択肢では「辛抱してくれ」を選択します。
○魔符黒翼 装備者;しいな
「魔剣ネビリム」イベント後地の神殿に行き、封印された宝箱を調べます。
○魔斧ディアボロス 装備者;プレセア
「魔剣ネビリム」イベント後ラーセオン渓谷に行き、封印された宝箱を調べます。
○魔眼イビルアイ 装備者;コレット
「魔剣ネビリム」イベント後
トイズバレー鉱山に行き、ナプルーサ・バキュラの残骸を調べます。
○魔装アポカリプス 装備者;リーガル
「魔剣ネビリム」イベント後神聖都市ウィルガイアに行き、封印された宝箱を調べます。
ヴィルガイアの何階もある建物の一階の左側
○ビジャスコア 装備者;ジーニアス
「魔剣ネビリム」イベント後海の楽園アルタミラに行き
宿屋に泊まって「はい」を選択します。
カジノ&劇場行きのエレメンタル・レールに乗って、橋の上にいる人に話しかけます。
すると1000ガルドで入手できます。
(またそれ以外のときはカジノコイン250枚にて購入)
○魔杖ケイオスハート:装備者;リフィル
上記全てのイベント後雪景の街フラノールに行き、アビシオンに話しかけます。
ハコネシア峠に行き、コットンに話しかけます。
ロイドの機転にて手にいれる、(通行証と交換)
もしくはリフィルのもってる(遺跡物)品物と交換のどちらかで手にはいります
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重なり合う協奏曲~雪まつりと出会い~
「ふい~」
何とも間のぬけた声がきこえる。
フラノールに戻ってきたはいいものの、街の中が騒がしい。
よくよくみれば、ところどころに街の中だというのに雪の塊が。
先刻の地震よってことごとく屋根や木々につもっていた雪。
それらが落ちてきたらしい。
ようやく揺れもおさまり、人々はその後始末でいそがしい。
街にもどってきたのは、ちょうど人々が雪の後始末を始めた直後。
ロイド達が乗っていたスノーボートもまた、雪を運ぶソリにと早変わり。
そのままソリなどにのせては、雪を街の外へと運んでゆくことしばし。
「地震なんて…滅多とないのに」
「この間も大きな地震があったばかり、なのよね。こわいわ~」
そんな会話がきこえてくる。
その地震はしいな達がヴォルトと契約を交わしたのちにおこった地震。
大地を移動させてゆくのにあたり、ゆっくりとしかし確実に、
地上においては頻繁に地震がおこりゆく。
それはプレートそのものを移動させているがゆえにおこりえる現象。
が、当然一般の人間達はそんなことをしるよしもない。
事実を知っているのは、世界につながりし関係者達のみ。
動植物などにはラタトスクからの命によりその旨をつたえているがゆえ、
自然界にはさほど混乱はおきていない。
そもそも地震の少し前には特殊な波動を世界に満たしているがゆえ、
動植物達はその前兆をしることができるようにしていたりする。
かつての人々はそれらも気付くことができていたのだが。
今の人間達は、こともあろうにエルフ達ですらその波動に気づけなくなっているらしい。
「…あれ?」
ふと、宿の前に雪をソリにのせつつも、その先にとある家の前。
その扉の手前でうづくまる男性の姿にきづき、
「大丈夫ですか?」
心配そうにうづくまる男性にと声をかけているコレット。
「うん?コレット、どうかしたのか?」
そんなコレットの様子にきづき、ロイドもまたそちらのほうにとちかよってゆく。
「……う……」
みるかぎり、うずくまっている男性の顔色はわるい。
それゆえに、
「先生、先生~!」
リフィルはリフィルでどうやら雪が落ちてきたときに怪我をしたらしき人々。
そんな人々の治療を施していたのだが、ひとだんらくつき、
雪かきを手伝っていた最中、いきなりロイドに叫ばれ、
「もう、何?いきなり叫ばないの。他人の迷惑でしょう?!」
半ばあきれつつも、そんなロイドのほうにとちかよるリフィルの姿。
治癒術は基本的にハーフエルフではなくても使用ができる。
というのが王立研究院の研究、であるらしい。
媒体さえあれば誰でも使用ができるゆえに、今は少しづつではあるが、
ここテセアラにその術を使えるものは多少なりともひろがってきているらしいが。
いまだまだ実験段階らしく、さほど治癒術士、とよべるものはいないのが現状。
神子がいることもあり、神子の共だから治癒術士がいるのだろう。
というのが人々の認識。
さすがに神子ゼロスを知らないものばかり、というわけではない。
公式業務、もしくは他所、すなわちアルタミラやメルトキオ。
そういった場所からやってきている人々は神子ゼロスの容姿を見知っている。
だからこそハーフエルフだ!とか騒がれることなく、
神子の連れだから、という認識で受け入れられている今現在。
「大丈夫ですか?しっかりしてください」
リフィルがちかよってゆくと、どうやらロイド達はうずくまっている男性。
その人物を心配して声をかけているらしい。
「すいません…魔の気にあてられてしまったようです……」
ゆっくりと、それでいてふらり、とよろけつつも立ちあがるその男性。
「魔の気?」
魔の気、という台詞をきき、リフィルが思いだしたのはハイマでの出来事。
あの黒き霧のような何か。
近くで作業をしていたプレセアとジーニアスも何ごとか、とおもったのであろう。
この場にやってきているのがみてとれる。
ふらふらとした様子で立ち上がりつつも、そして集まってきている子供達。
そしてその視線をリフィルのほうにむけたとたん、はっとしたような表情となり、
「もしや…あなた方はもしや、闇の装備品とよばれるものをもっていませんか?」
それは唐突な問いかけ。
彼からしてみればなつかしき波動のそれが目の前の銀髪の女性から感じられる。
だからこその問いかけ。
「?闇の装備品?何だ?それ?」
ロイド達はエミルがパキュラから取り出したかの装備のことをまじまじとはみていない。
トイズバレー鉱山において、エミルが内部よりとりだしたそれは、今はリフィルの手元にある。
ロイドが首をかしげてといかけると、
「…もしかして、これのことかしら?」
闇、といわれすぐに連想したのが、リフィルがエミルからあずかったあの品物。
どこかまがまがしい感じをうけた、チャクラム。
エミルからは気をつけてくださいね、といわれていたそれ。
リフィルがそれを取り出したのをみて、目を丸くし、
一瞬、にやり、とその口元に笑みをうかべるものの、
すぐさまその表情を引き締めたのち、
「あなた方がおもちのそれ。それは魔瞳イブルアイ。闇の装備品といわれています」
リフィルが手にしたそれをみて、淡々といってくるその男性。
「あんたは一体?」
そんな男性にたいしロイドが首をかしげさらにといかけるが。
「いきなりなんだっていうの?この人?」
「?」
ジーニアスも意味がわからずにただただ首をかしげていたりする。
一方、プレセアはどこからともなくきこえてくる何かの囁くような声。
それを耳にし、不思議そうに首をかしげていたりする。
そんなロイド達の問いかけに、はっとしたように姿勢を正し、
「申し遅れました。私はアビシオン。魔を狩る一族の…生き残り、です」
何やらそんなことをいってくるが。
「俺はロイド。仲間達と旅をしている途中だ。こっちは俺達の先生」
「…まあ、間違ってはいないけども…それにしても、魔を狩る一族…ですって?」
何やら不穏そうな言葉がでてきた。
ゆえに、リフィルが注意深く男性にたいし警戒しながらも問いかける。
いくら街の中、とはいえよからぬ輩がいない、とも限らない。
そんなリフィルの警戒を知ってか知らずか、
「魔を狩る一族ってどんなことをする人達なんですか?」
コレットが首をかしげつつ、目の前のアビシオン、と名乗った人物に問いかける。
そんなコレットの問いかけに、
「かつてこのテセアラを支配しようとしたネビリム、という男がいました」
この場にミトスがいれば、男?と顔をしかめていたであろう。
というよりは、なぜに女性が男性にとってかわっているのだろうか。
人の噂というか伝承とは面白いもの。
そもそも、かのハロルドに関しても、いつのまにか男性、ということで後世に話が伝わっていた。
「男はやがて、一人の剣士に倒されましたが。
その怨念は彼の装備していた九つの装備品に宿り剣士の子孫を呪っているのです」
このあたりからもまた語弊がある。
そもそも、かの装備品といわれているそれこそが魔族の一員である魔族そのもの。
どうやらそのあたりの事実もねつ造されているらしいが。
当然、ロイド達はそのような事実を知るはずもない。
呪い、という台詞をきき、
「おっかねぇ話しだな。それ」
おもわずまじまじとリフィルが手にしている武器をみつつ、
「たしかに。いわれてみたら、なんかこう、これ、へんな模様だけどさ」
見た目はチャクラムの武器。
しかしその模様が巨大な目玉モドキ。
さらにいうならば、なぜか原色にちかしいどぎつい紫いろが入り混じっている品。
「魔を狩る一族とはネビリムを倒した剣士の末裔のことです」
コレット、そしてロイドの疑問にこたえるかのように、男性はいってくるが。
リフィルはそんな男性に対し、警戒の色を解いてはいない。
そもそも、リフィルがもっていたこの品は、
エミルがトイズバレー鉱山にて、あのバキュラから取り出していた品。
マナの塊ともいわれている品から取り出された。
裏をかえせば、その中に封印されていた、とも捕らえることができる品。
リフィルが目の前の男性、ネビリムと名乗った男性の挙動を見逃すまい、
と警戒を強めていると感じているのかいないのか、
「…私の家族はみな、闇の装備品の呪いで命を落としました」
淡々と紡ぐその言葉からは悲しみがまったくもって感じられない。
表情こそは悲しそうにみえるが、心から悲しんでいない、というのは、
おそらくリフィルの気のせいではないであろう。
しかし、どうやらコレットは違ったらしく、
「…そんな、どうにかならないんですか?」
相手が悲しそうな表情をしたのをうけ、自分のことのように悲しみ、
声を震わせつつもコレットが目の前の男性にたいしそんなことを問いかける。
どんな人が相手であろうと、その痛みを自分のことのように感じ、そして悲しむ。
それはコレットの美点でもあり、また同時に欠点でもある。
ヒトはそんなコレットの優しさにつけこむことをリフィルは嫌というほどに思い知っている。
もともと、そのように育てられているから、なのかもしれない。
死ぬために生かされていた命。
物ごころついたときに聞かされた自分の命の制限。
だからこそ、コレットはきづけば他人のことを最優先するようになった。
自分はどうせ死んでしまうのだから、せめて生きているほかの人々は、と。
悲しそうな表情を…それこそ心から浮かべ、心配そうにといかけるそんなコレットの台詞に、
「全ての武具を揃え、一か所に集めて封じてしまえば我が一族にかけられた呪いはとけます。
そのように伝えられています」
そんな男性の台詞に、
「ああ。だからいきなり闇の装備品とかいうやつのことをきいてきたのか。
先生がもってるそれがそうなら、たしかにきになるよな。うん」
ロイドもようやく納得した、というようにそんなことをいってくる。
「うわ。姉さんがもってるそんななんか見た目もまがまがしい装備が九個もあるの?」
ジーニアスがおもわず一歩下がりながらそんなことをいっているが。
この場にエミル、否、ゼロスがいれば間違いなく突っ込みをいれていたであろう。
おまえさんがつかっている剣玉、あれにちかいやつもあったぞ、と。
実際、アルタミラでエミルは剣玉の形をしているソレをすでに手にいれている。
手にしていないのは、目の前にいる人間がもっているとある品のみ。
「ええ。ですが呪いの進行は思ったよりも早く…私もネビリムのもつ魔の気にあてられて……
もうこの体では闇の装備品を集めるのは難しいでしょうね。
何とかここ、フラノールまではたどり着いたのですが……」
「助けてあげようよ!ロイド!」
そんな男性の台詞をきき、すかさずコレットが横にいるロイドにと問いかける。
コレットからしてみれば、死ぬかもしれない、といっている人をほうっておけはしない。
そしてまた。
「そうだな。どうせ闇の装備品をもってるんだ。俺達で残りをあつめてやろうぜ!」
ロイドもロイドできっぱりといきなり何の相談もせずにそんなことをいい始める。
「また、あなたは…」
リフィルがそんなロイドをたしなめようと声を出そうとするが、
「いいんですか?途方もない仕事ですよ?」
一応形だけ、なのではあろうが、目の前の男性がそんなことをいってくる。
が。
「何いってるんだよ。先生。ドワーフの誓い、第二番!困っている人がいたら必ず力をかそう、だ!」
きっぱりはっきり、リフィルに相談することなく、いいきっているロイド。
「あ~あ。また始まったよ…」
そんなロイドをみてジーニアスはどこか諦め顔。
こうなってしまったロイドを止めることができないのは、ジーニアスは身をもって知っている。
「ありがとうございます。では、この剣と鍵を私のかわりにもっていってください」
いいつつ、差し出される鞘にはいった二双の剣と、そして何かのカギらしきもの。
真赤で、それでいて何かのとげのようにもみえなくもないそれは、
どこからどうみても鍵、という形ではない。
「これは?おお。二双の剣か。俺に装備できそうだな」
「「そんな危険なものを装備する(んじゃないよ!ロイド)(んじゃありません)!」」
ロイドの台詞にすかさずジーニアスとリフィルの声が重なる。
そんな物騒な代物。
装備して何かおこればどうするというのだろうか。
そんな思いがリフィルとジーニアスの脳裏に同時によぎっていたりする。
そもそも、相手が呪いとかいっている時点で何かがありそう。
とおもうのが普通であろうに。
「そもそも、呪いのかかった品は装備したとたん。
身につけたら最後、その命をしぼりつくすまで身からはなすことはできない。
という品もあるのだから、きをつけなさい!」
ぴしゃり、とロイドに対しいいきっているリフィルだが。
この場合、リフィルの意見が正しい。
誰が何といおうとも。
この場に他のメンバーがいてもリフィルの意見に皆が皆、同意するであろう。
「これはそのようなことはない、とはおもいますが……
とりあえず。闇の装備品はネビリムの意思をつぎ互いに引き合います。
この剣が反応するところにきっと闇の装備品もあるはずです。
装備品を全てそろえたらここ、フラノールへ戻ってきてください」
先ほどまできこえていた声がゆっくりとではあるが収まってゆく。
頭がいたい。
その痛みがどうにか収まってきたのを感じ取りつつも、
「…闇の装備品の呪いは…魔を狩る一族という人達以外にもかかる…んでしょうか?」
「いえ?それはないはず、ですが」
そのプレセアの台詞にアビシオンが首かしげるが。
一瞬、プレセアを見定めるようにして
ざっとその体をなめまわすようにみたことに気付いたのはリフィルのみ。
彼からしてみれば、新たな傀儡となりえる器。
声がきこえたらしき、素質のあるヒトの子。
ぱっとみたかぎり、この器としている人よりは力がありそう。
しかし、怪訝すべきことは、その身にエクスフィアを身につけているというところか。
かの品は下手をすれば彼ら精神生命体である魔族達にとって脅威となりえるもの。
何しろ力が弱いとはいえマナの塊たる微精霊達の卵。
下手に力のないものであればそのマナによって瘴気が失われてしまう。
逆に力さえあればマナを穢し、利用することもできはすれど。
「?プレセア?どうかしたの?」
「プレセア?」
プレセアの様子に気付いたのか、コレット、そしてジーニアスが交互に話しかける。
「いえ、何でも、ない、です」
そう、何でもない。
それはきっと気のせい。
そうプレセアは自分にいいきかせるが、不安はよぎる。
脳裏に聞こえてきたあの声は、苦しいのだろう?つらいのだろう?
ならば、お前をそのような目にあわせたものたちを同じような目にあわせろ。
妹を殺したやつら、そしてそれをおこなったものを許したそいつらをお前はゆるすのか?
そのような、まるでプレセアの心をえぐるような声がたしかに、
先ほどまでプレセアの耳に聞こえていた、のだから。
「よし。それじゃあ、集めたらもってくるよ。アビシオン!」
「ったく。またあなた達は安請け合いをして…はぁ…
いっておきますが。私たちの旅に不都合があるようなことはしませんからね?
あくまでも旅の中でそのような品があったら、ということを忘れないで」
「もう、先生。困ってる人をほっとけないだろ?」
「そうです。先生」
「…今はあなたのほうが優先、なのだけどもね」
「え?」
リフィルもまたコレットの変化に気づいている。
彼女は隠しているつもり、なのだろうが。
時折みせている彼女の変化。
だとすれば、アルテスタがいっていた懸念とおり、症状が進行している可能性がある。
精霊との契約も大事かもしれないが。
とにかく今は、コレットの要の紋。
クルシスの輝石に対する正確なその力をおさえるための品。
それを手にいれなければ手遅れになってしまう。
そうおもうがゆえのリフィルの台詞。
ジルコンはリーガルがどうやらアルタミラにてことづけていたらしく、
船の中ですでにリーガルより手渡されている。
きけば、ジルコンはレザレノの会社に納品されていたらしく、その残りがいまだに残っていたらしい。
マナの欠片もまた心当たりがあるがゆえ、探させている、といっていた。
マナリーフはエルフの里でしか手にはいらないがゆえに時間がかかるであろう、とも。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
目の前の先生、とよばれている女性のいい分はアビシオンにはわからない。
しかし、彼らが集めてくれる、というのならば好都合。
集めることにより、自らに力が満ちる。
そのときこそ。
この世界を再び我がものに、かつて失敗した、というネビリムにかわって。
「うわ~、たのし~!」
マルタの嬉々とした声がこだまする。
「ええ。雪遊び、というのはたのしい、のですわね」
どことなく気分がふさぎこみがちであったセレスだが、
マルタに誘われ、エミル達とともにかまくらつくりのお手伝い。
街からこれでもか、というほどに雪が外にはこばれてきており、
ならこの雪をつかってかまくらをつくればいいんじゃない?
という意見もあり、今現在、ひたすらに雪をかためては、小さなかまくらをつくっている。
「それにしても…エミルさん、器用ですね」
その手にもっているソーサラーリング。
その性能をつかいつつ、ゆきで形をつくっては、ある程度とかし、
どうやっているのかはわからないが、雪から氷へと変化させ分厚い氷と雪の壁をつくりだし、
ちょっとした宿泊設備もどきをつくりあげている。
ちなみに、泊まるところだけでは面白くない、という理由からか、なぜか台所に近しい設備。
それもまた氷でつくりあげていっているのが何ともいえない。
エミル曰く、ころはロイズアイスバー、という代物であるらしい。
深々と降り続く雪と風。
しかし、氷で囲まれた建物の中はしんと静かでとても暖かい。
氷でできた机や柱、様々な家具。
それらをほぼ短時間のうちにつくりあげるエミルの器量をほめるべきか、
そもとも、その事細かに施されてゆく細工を褒めるべきなのか。
あっというまに一棟、二棟、とつくりだされ、
今エミルが手掛けているのは四棟目。
普通の雪像とは異なり、実用的であるのが何ともいえない。
「…というか、なぜに魔物達がこぞってお手伝いのようなものをしているのでしょうか?」
どうみても魔物としかおもえない動物達。
それらがエミルの周囲をちょこまかとしており、
エミルがベットをつくりあげれば、そこに彼らの皮?なのかどうかはわからないが、
とにかく毛皮、そしてまた羽毛などをしきつめて、
あっというまに部屋という形をととのえていっているのがみてとれる。
このことに対し、他の街の人々が不思議におもわない、という事実を不思議におもいつつも、
ふとセレスがそんなことをつぶやいていたりする。
実際問題として、そもそもこの魔物達の姿は、街の人々には認識されていない。
セレスもまた認識できているのは、
ゼロスから手渡されている精霊石の存在があるがゆえ。
その石の内部にやどりし微精霊の力の影響もあり確認できているといってもよい。
簡単な目くらましの幻影の術がこのあたりにはソルムの力によってかけられており、
ゆえにエミルが魔物を使役していても人々には気づかれていない、という事情があったりする。
窓もまたことこまかに氷を削り、
ちょっとした一つの芸術品をつくりあげていっているエミル。
そもそも足りない部分はエミル自身が生み出しているがゆえ、
まったくもって素材には影響がない。
もっとも、その事実にマルタもセレスも気づいてはいないようではあるが。
マルタとセレスはかまくらの周囲の装飾品を何かつくって、
とエミルにいわれ、こうしてそれぞれが雪でつくった何かをつくっているところなのだが。
いかんせん、つくったことがあるといえば、ゆきだまる、もしくは雪うさぎくらいなもの。
それでも、雪をぺたぺたとさわっていれば童心にかえったような気持ちになってくる。
「…わたくし、雪というものはあまり好きではありませんでしたが…
そう、ですわね。雪とはどこまでも本当は穢れのないもの、なのですわよね」
「セレス?雪、嫌いなの?」
「…昔は、好き、でしたわ。けど……」
顔をふせるセレスの様子に何か感じた、のであろう。
「雪に何か嫌な思いででも?」
「私よりも…お兄様のほうが……」
兄が目にした、という真っ赤な雪。
この雪景色にかこまれた地で、兄はまたあのときのことを。
兄の母ミレーヌ、
セレスにとっては母の姉にあたる彼女が死んだときのことを思い出しているのだろうか。
そうおもえばセレスは気持ちが沈んでしまう。
そうこうしているうちに、いつのまにか魔物達の姿がきえたかとおもうと。
いつのまにか、エミルはあっというまに六棟の宿泊設備を作り上げていたらしい。
相変わらず仕事がはやい、というか何というか。
しかもその一つ一つが仕様がことなり、中にはいってからのお楽しみ空間。
となっている。
ちょっとやそっとの熱などでは簡単にはとけない、とはエミルの談。
「とりあえず、こんなものかなぁ?」
そろそろ宿も予約がはいっている日が近づいており、部屋をあけなければならないはず。
つまるところ、エミルのつくりしこれは、これから後のための宿泊場でしかない。
自分達が使ったあとでもおそらく需要があれば人間達は修繕を繰り返しつつも、
この設備をつかうであろう。
別にさほど問題があるようにつくったわけではないがゆえ、
このまま自分達がたちのいたあと、壊されてもエミルからしてみれば痛くも何ともない。
「ふえ~。エミル、お前いつのまに……」
まず中にはいっての第一声が呆れもふくまれたロイドの台詞。
「ロイドもここまでのものはできないよね」
「なんだとぉ!明日になったらみてろよ!俺ももっとすごいのをつくってやる!」
エミルがつくりし、巨大なかまくら。
巨大、といっても内部には氷でつくられた椅子とテーブル。
エミル曰く、集合場所をイメージしてつくったらしいその建物は、
その入口に何かの動物の皮がたれかけられており、それをくぐって中にはいる仕組みとなっている。
内部は外よりも暖かく感じ、
これまた氷でできているらしき入れ物に、蝋燭がともりゆらゆらとゆれている。
ちなみに、氷の中にガラスがはいっており、ゆえに外の氷がとけたとしても
蝋燭の炎は消えない仕組みになっていたりするのだが。
細かな細工がほどこされた氷の机に氷の椅子。
夜が更けてきてもなかなか街にもどってこないエミル達をきにし、
やってきたロイド達がめにしたは、唖然とする光景。
すなわち、エミルがつくりあげた、という氷の建物の数々。
ぱっとみためはかまくら、とよばれし品でしかないのだが。
その内部が圧倒的なまでに凝っている。
しかも宿泊ができるようになっているのもまた興味深い。
それにきづいた街の人、というより特にリーガルがこれは使えるとか何とかいっていたが。
「それで?リーガル。やってきたひとの話、というのは?」
物資を送り届けにやってきたレザレノの社員だという、
またリーガルへの伝言を言付かってきたという社員。
「うむ。何でも我らが異界の扉を目指すというのをきいたからか。
王立研究院のほうから案内係りがこの地にむけて出発したらしい」
それが誰なのか、までは聞かされていないが。
何でもそういった研究においては一任者なので役に立つだろう、ということらしい。
また、国からも神子達の旅に協力するように、という打診が研究院にあったらしく、
ゆえに研究所としても断るにことわれない状況となっているのが今現在の事情らしいが。
「その人物はいつごろこちらにやってくるのかしら?」
「今から数日後…おそらくは、雪祭りの前日か、その翌日だろう。
それまでは、国の意見ということもあり、この地にてしばらく滞在する必要があるが」
「仕方ないわね。…国に逆らってまで行動しても、ろくなことにはなりかねないわ」
ゼロスのあの申し合わせたわけでもないというのにあわせたあの台詞があってこそ、
自分達の旅は自由がきいているといってもよい。
それに何より案内係りがくる、というのはかなり助かる。
かの地は今や未開の地といってもよい。
突如として発生した木々によってその島はあと少しで鬱蒼とした森へと姿をかえるであろう。
というのがリーガルがもたらした意見。
実際、すでに木々も一気に成長しており、またその成長速度に国もまた目をつけてるいらしい。
さらにいうならば、異様にふえた魔物達の様子にも興味を抱いているらしいが。
「つまり、どういうことなんだ?先生?」
今の会話でもどうやらその流れがつかみかねないらしく、
ロイドが首をかしげつつリフィルにと問いかけてくる。
「つまり、あとしばらくはこの地に足止めということよ」
「よっしゃ!そういうことなら。俺達も何かつくろうぜ!
エミルにまけてられないしな!というわけで、ジーニアス!ミトス!明日から俺達も何かつくるぞ!」
「って僕はともかくミトスまでまきこむの!?」
ロイドの台詞にジーニアスが思わず叫ぶが。
「え、えっと、僕は……」
いきなり話をふられ、困惑気味な表情をうかべているミトス。
ミトスからしてみれば折をみて一度、あちらに戻りたいというのに。
この前から誰かが傍に必ずいるがゆえ、いまだにそれは果たされてはいない。
「何なら誰がいちばんすごい雪像とかつくれるか競争しようぜ!競争!」
「…いっても無駄、みたいだね。はぁ。ミトス、ごめん……」
「え?う、ううん。いいよ。…僕、そういえばこんなふうにあそんだこともないし」
よくよく考えて見れば、昔からこれまで、このような遊びすらしたことない。
そもそもこんな雪で何かをつくって遊ぶなど。
かつてからしてみれば考えられないこと。
それだけ今がたとえ自分達の管理下のもとでも平和である証拠であろう。
つまり、戦いの心配すらせずにこのようにして雪であそべる、ということは。
「すまんな。私はしばらく雪祭りの開催が近いがゆえに。
この地にやってきている以上、レザレノのものとしての役目があるからな」
そもそも、リーガルがこの地にやってきているのをききつけて、
フラノールのレザレノ支社の責任者がすでに繋ぎをとってきている以上、
何もしない、というわけにはいかないであろう。
「ならさ。それぞれメンバーを組んで、誰の雪像が一番出来がいいか。やってみない?
コレットは私たちと一緒に。女の子メンバーと男の子メンバー。そんな感じでわかれてさ」
「あ、それ面白そう!!やろうよ!ね!セレス!」
マルタの意見にコレットが同意し、
「わ、私は遠慮しておくわ。…この氷の建物も興味深いしね。
エミル。この創り方をおしえてもらってもいいかしら?」
「え。ええ、かまいませんけど」
リフィルはどうやらエミルがつくりしこれらの建物に興味があるらしい。
「あんたらお子様は元気だねぇ。あたしゃ、外にでているだけで寒くて凍えそうだよ。
この中は氷と雪の中というのにそうでもないけどさ」
しいながそんな彼らの会話をききつつ首をすくめていってくる。
「?しいなが暑い、寒いで文句いうのはそういえば珍しくない?」
ジーニアスがふと気付いたようにそんなしいなにいってくるが。
ちなみに、全員が全員、
エミルがつくりし、氷の椅子にすわり、これまた氷のテーブルをはさみ、
今現在、こうして会議もどきをひらいていたりする。
「あ、あたしは暑いのは好きだけど寒いのはもう全然ダメなんだよ。
だからアノトリエットでもさ…何だって裁くっていわれてるのに雪だったんだよ!
本当はあんたらと接触するのは遺跡でともってたのに、すぐに挫折したよ!」
しいなが思いだしたかのようにそんなことをいってくるが。
「ああ、だからあなた。オサ山道で私たちと接触してきたのね」
リフィルが納得がいった、とばかりにうなづきながらいってくる。
実際、リフィル達がしいなと出会ったのは、イズールドに向かうオサ山道の中。
当時はラタトスクが覚醒したこともあり、イグニスの影響によって、かの地には雪が降り始めていた。
それは数日もたたないうちにあっというまに大雪となり、砂漠地帯を雪景色にかえていた。
「それは僕にもわからないよ。僕たちも驚いたんだから」
そもそも砂漠であった場所が雪景色など。
何の冗談だ、とおもったのはジーニアスとて同じこと。
「なら。しいなさん。もっと暖かい格好をすればいいのに」
マルタのそんな意見に。
「これってないほどにしてるよ」
実際、しいなはあまりに寒いがゆえに、この地にあるという、
ペンギニストフェザーをつかっている、というローブを着こんでいる。
ちなみに、手袋も、また帽子もかぶっており、
ちょっとした服をきこんだ雪だるま状態。
「うひゃひゃ。しいな。その格好であるいてたら雪だるまにまちがえられるぞ?」
「うっさい!このあほみこ!というかあんたのその格好みてるだけで寒いんだよ!」
ゼロスはこんな寒さだというのあいかわらずのいつもの格好のまま。
ゆえにしいなが叫ぶが。
「ちっちっ。わかってないなぁ。しいな。
俺様が服をきこんだりしたら、この俺様の華麗さが半減どころか消滅するだろ?」
「とっとと消滅してこい!」
そんなやり取りをながめつつ、
「そうかなぁ?僕はこの寒さ、もう大分なれたけどね」
「…子供は風の子だねぇ」
ジーニアスの台詞にしいながあきれたようにそんなことをいっている。
「おに…神子様。たしかにしいなさんのいうとおりですわ。
その格好は下手をすればみているものに余計な寒さをあたえてしまいますわ」
「しかしなぁ。セレス」
「・・・・・・・・・・・・・」
じっとゼロスをみつめるセレスの目には、いつのまにかじわり、と涙がうかびはじめている。
それはセレスなりに、そんな格好では兄が風邪をひくのでは。
という心配から、なのではあるが。
じっと見つめてくるセレスの瞳には当人は自覚しているのかいないのか。
おそらく無自覚なのであろうが、うっすらと涙がたまりはじめている。
「う!わ、わかった!善処するよ!すりゃあいいんだろ!」
さすがにこの場でなかれてはたまらない。
というより、いくら暖かいといえど、内部の気温もエミルいわくマイナスのはず。
たとすれば、涙が凍ったりすればそれこそセレスの体にさわる。
だからこそ、ゼロスはあわてて肯定する。
ここで泣かれてはたまらない。
いくら外よりはこの内部は暖かい、とはいえマイナス五度くらいはあるはず。
ならば、涙が凍りついて、セレスが凍傷にでもなりでもすれば、
ゼロスからしてみればそれこそとんでもないこと。
「うわ。このあほ神子がいうことをきいてるよ」
その光景をみて唖然としたようにしいながつぶやき、
「わかったわ。ゼロスに意見するときにはセレスにこれからは頼みましょう」
「え?」
その言葉の意味がわからずに困惑し、首をかしげているセレスの姿。
「…リフィル様ぁ。そりゃないよ……」
「とりあえず。じゃあ、数日はここに滞在。ということでいいんだよね?」
「そうなる、わね」
どうやらあと数日はこの地で足止め、となるらしい。
…ちらり、と確認したかぎり、国が命をだしてやってくることが決まったのが彼らである。
というのがかなり気になりはすれど。
…絶対に何かいわれるな。
それがわかるがゆえに、エミルは一人ため息をつかざるをえない。
それは、かつての世界において、エミルが苛立ちまぎれに殺めてしまった…ヒト。
そして、自分の行いゆえに、魔族に付け入るすきをあてえてしまい、
もう少しで世界を滅亡にいざなおうとしていた人間達。
そして、その後、自らの身をもってして、千年かの地に縛り付けた…人間。
「皆器用だね~」
マルタが感心したような声を出す。
結局のところ、ここ数日、この地において足止めされるのならば、
せっかくだから、今回の祭りに参加しよう。
というロイドの意見もあいまって、雪まつりへの参加を登録し、
それぞれ割り当てられた区画にて、様々な雪像をつくっている今現在。
「プレセア…器用なんだね」
「そりゃ、プレセアちゃんはその腕で生活してたからな。
前にもいったとおもうけど、プレセアちゃんのつくるアクセサリーは人気だからな」
プレセアがつくっている区画には、
以前プレセアがいまだ感情を取り戻していなかったとき。
淡々とつむがれたことがある、トンガリマダラトビネズミの雪像。
さらには、木彫りの熊。
ちなみに本来は木彫りでつくられたそれは、
このたびは等身大をもってしてプレセアは器用にも雪を固めてつくりだしている。
鮭を咥えている熊の等身大の雪像。
その制作時には周囲をみていた人々が思わず足をとめてみいってしまうほど。
また、あ、幸せのお守りの像をつくってる!
という子供の声すらもきこえてきたが。
マルタはどうしても器用にものがつくれずに、結果として皆のてつだい、
という形におちついていたりするのだが。
さすがにあれから二日目が過ぎたこともあり、
それぞれがつくりし雪像は、それぞれ形になってきていたりする。
「うわ~。ミトス、それ、何?綺麗な女の人だねぇ」
「でも、どこかであったような?」
ミトスもまた、何かの雪像をつくればいい、といわれ、困惑しつつも、
結局、ジーニアスに押し切られ、この大会に参加の運びとなったのだが。
何かをつくれ、といわれてもすぐにはおもいつかず。
ぱっとみたところ、それぞれおそらくは家族なのであろう。
家族の雪像などをつくっているものもあることからして、
思いついたのが姉の雪像をつくる、ということ。
マルタがそんなミトスがちまちまとつくっているそれをみて、思わず感心した声をだしているが。
コレットはそれをみて、どこかでみたような、と首をかしげていたりする。
この場にタバサがいれば、そっくり、といわれていたであろう。
それはミトスの記憶にある、ありし日のマーテルの姿。
ミトスが切に望んでいるもの。
自らを膝枕している姉の姿。
それはありし日の、過ぎ去りし幸せであった日々の記憶。
つくりあげたはいいものの、こんなのは姉様じゃない。
と壊しそうになっては、やはりでも姉の面影もあり、
壊すにこわせなくなってしまった、その品は、
ミトスにとって何ともいえない代物となっていたりする。
「これ、ミトスだよね?ってことは、これ、ミトスのお姉さん?」
「・・・・・・・・・・・・」
マルタが指摘したとおり、優しい表情の女性らしき人物に膝枕されている少年。
それはどこからどうみてもミトスそのもので。
しかしそんなマルタの台詞にミトスは無言のまま。
「でも、ミトスまで器用だなんて。…男の子って器用な人がおおいのかなぁ?エミルも器用だし」
む~、と多少ふくれつつもマルタが呟くが。
「まあ、その子は一人暮らしをしてたんだろ?
嫌でも器用にならざるをえなかったんじゃないかい?
何しろ街にすらでるのも命がけだったはずだしね」
オゼットの村の外れに隠れ住んでいた、といっても、
あのオゼットの村人がよそものに簡単にものをうったりするはずがない。
だとすれば自然と自給自足、という生活になるであろう。
その過程でどうしても腕は磨かれざるを得ない。
そんなしいなの台詞に、
「あ。そっか。…エミルもそうだったのかなぁ?」
「さあね?すくなくとも、あの子があまり人とかかわりがなかった。
というのはリフィル達の話しからして予測はしてるけど」
リフィル曰く、誰かに食事を食べてもらったことすらなかったという。
つまり、そういう生活をしていた、ということ。
自身の歳すらもわからない、というのだからどれほど人のいない生活をしていたのか。
それはしいなにすらわからない。
最も、そのかわり、なぜかエミルは精霊達と顔見知りっぽいような、
というか知り合いのような態度をとっていたのが気がかりではあるにしろ。
しいなもしらなかったあの言葉。
不思議な旋律をもつあの言葉は。
ウンディーネの祭壇で、そしてシルフの祭壇の地で。
エミルと精霊たちはたしかにしいなの知らない言葉で会話を交わしていた。
「でも。そっか。人でもいいんだったら、私、エミルの像をつくる!」
「あ…あはは。まあ、がんばりな?」
リフィルとしいなは寒いのでこの大会の雪像創りには直接参加していない。
どちらかといえば、参加するといったロイド達を見守る位置にと居座っている。
リフィル曰く、ロイドは特に釘をさしたりして止めるものがいなければ、
とことん暴走しつきすすんでしまうから、ということらしい。
そんな中。
「皆~。ご飯できたよ~」
エミルの声が響いてくる。
その声をうけ、わらわらとどこからともなくあつまってくる参加者達。
中には見物客達の姿もみてとれるが。
結局のところ、皆が雪像をつくるのならば、料理を担当するね。
とエミルがいい、こうしてエミルが料理を始めた、はいいのだが。
その味、そしてその細工の見事さもあいまって、
いつのまにか人が増えていき、しかも安い。
エミルは無料で配ってもいいのでは、と申し出たのだが、
食材分だけでももらわないと、といってしいながはりきり、
結果としてかなり安くはあるが、一人十ガルド。
それをもってして、料理をふるまっていたりする。
ちなみに器としているのはこれまた氷の器であるがゆえ、
食器類についてもお金はまったくかかっていない。
いつのまにかどこからあらわれたのかはしらないが、
白い髪なのか銀色の髪なのか、そんな長い髪をもつ一人の女性が、
エミルの手伝いをしているのもまたマルタからしてみれば気がかりではあるにしろ。
「そういえば、先ほど、伝書鳩がとどいたらしい。
何でも合流してくる人物は、雪まつり開催の翌日にやってくるらしい」
つまるところ、あと三日はこの地に足止め、ということらしい。
エミルが料理を配り終え。
先日、エミルがつくりだした会議室もどきのかまくら。
その場にあつまりて、エミルがつくりしデザートを前にして、
リーガルがこの場にやってきたのち報告を開始する。
そんな中。
「なあ。ふとおもったんだけどさ。
今は各個人でいろいろとつくってるだろ?記念に全員で何かつくらないか?」
それはちょっとした思いつき。
皆で旅をするような機会などこの先あるかどうかすらわからない。
そんなロイドの台詞に、
「あら。あなたにしてはいいことをいうわね。けど、私は嫌よ。寒いもの」
きっぱり。
リフィルがきっぱりとロイドの台詞を否定する。
「あ、なら、リフィルさんは監修とかしたらいいんじゃないですか?
でも、ロイド、するにしても。きちんと何をつくるか方向性をもったほうがよくない?
たとえば…そうだね。皆が皆、心の中におもっている、
あるべき形の聖なる地をつくってみる、とか。絵にでもおこしてさ」
それは前からおもっていたこと。
かの地にそのような設備をつくるにしても、彼らの意見を取り入れた代物をつくったほうが、
彼らも受け入れやすいであろう。
こういう形で提案できるとはおもってもみなかったが。
ロイドの提案は、エミルが温めていた計画の一端を手伝うには十分すぎるもの。
「聖なる地って?」
「ロイド達って、よく旅業、とかやってる、というか皆やってるんでしょ?
でも、結果として最終的に訪れる地とかきまってないよね?」
それはマーテル教の経典のおしえにある、という旅をせよ、という教義。
それが悪い、とはいわない。
ミトスがうみだした偽りの宗教、とはいえおしえ自体におかしいところはほとんどない。
というか、全ての命が平等、と説いているあたりは、
かつてのミトス、そしてマーテル達の理想をそのまま形にしている、といえる代物。
「でもな…マーテル教は……」
ロイドがその台詞に表情をくもらせる。
クルシスがつくった、という偽りの宗教。
「聖地といえば、救いの塔、のようなことをいうのかしら?」
リフィルの問いかけに、
「いえ。何となく僕のイメージなんですけど。何か大切なものを守っている地、みたいな?」
かつての惑星、デリス・カーラーンにもあったかの地。
大樹カーラーンを取り囲むようにしてあったかの地は聖なる地、として、
また聖なる神殿、として成り立っていた。
樹を中心とし、周囲を壁で覆ったその地は、世界の聖地、としても有名であった。
不可侵の地、とも定められていたかの地。
しかし、たび重なる争いの中でかの神殿も破壊された。
それはかつての遥かなる過去の記憶。
「何か大切なものを守る場所、というのは必要だ、とおもうんですよね。
皆の今までの意見をもってしても、そういうイメージは大切かなぁ、とおもって。
なら、ついでにそういうのを実際に形にしてみるのもわるくないんじゃないかなって」
それは嘘ではない。
実際、ロイドたちが大樹をよみがえらそうとしたとして、
かつてのように、人間達がまた再び大樹を利用しようとするのは目にみえている。
特にテセアラ、という国が。
シルヴァラント側はそのような技術もまた軍事力もないであろう。
かつて、ミトス達が彗星の力をもってして種子を芽吹かそうとしたあのとき、
互いの軍事力をもってして、大いなる実りを我がものとしようとした二つの国のように。
何とかして彼らにその提案をして彼らの理想のような地の原型。
それを聞きだそうとおもっていたエミルにとっては、
ロイドのこの提案は渡りに船、といってよい。
「なるほど。つまり、理想の地を雪像、という形で表現、というわけか」
エミルの言わんとするところを察し、リーガルが何やら顎に手をあてうなづいているが。
「それだと、ロイドのいうところの、皆で、というのもうまくいくかなって。
それぞれの理想像をつくっていけばいいだけなんだし。
何かつくったりするときって、たしか一つのテーマにしぼったらいい、と聞いたことがあるし」
それはかつてエミルが、否、ラタトスクがディセンダーとして表にでていたときに言われた台詞。
「理想の地か…面白そう。ね。ロイド、それでいこうよ!」
「そう、だな。…クルシスとか何も関係なく。自分にとって理想の場所。か。面白いかもしれないな」
「なら、私はそれぞれの意見をまとめていくわね。
いきなりそういったものを形にする、というのも何でしょうし。
なら、皆に課題をあたえます。それぞれその理想とする場所のイメージ。
それをこの用紙に今日中にかきだしてきなさい。期限は明日の夜までよ」
この地、テセアラには普通に紙が低価格で普及しているらしく、
シルヴァラントのように高級品、としては取り扱われてはいない。
子供達の独創性。
それを育てるにしても、エミルのこの提案はたしかに効果的であろう。
クルシス、という懸念をもちし宗教を前にだすのではなく。
あまくでも自分にとっての理想の地を形にする。
それはロイド達がよくいっている、理想の世界にするために。
漠然としているだけのその願いを形として示すことにより、
彼らにも頑固たるイメージをもたせることにも役立つはず。
エミルがどうしてそんな意見をいってきたのか、というのはかなりきになりはすれ。
この提案に何か意味があるような気がするのだが。
それが何かはリフィルには判らない。
直感的に、何かある、と思えたのも事実なれど、詳しいことまではわからない。
「当然、ミトスも参加してくれるよね?」
「え?僕…も?」
「そりゃ、全員で参加しなきゃ意味がないからミトスもあたりまえだろ!」
エミルにいわれ戸惑いを隠しきれないミトスであるが。
そんなエミルの問いかけにかわりにきっぱりと断言しているロイドの姿。
「理想の地…ねぇ。みずほの民が示すところの理想でもいいのかい?」
「十人十色、ってたしかヒトはいうんでしたよね?
いろんな意見もあって、それを一つにすることがどれほど難しいか。
ロイド達もよくいってることを作りものではあるけども、
実際に実践してみる、というのも面白くないですか?」
にっこり。
しいなの台詞ににこりと笑みをうかべ提案してくるエミル。
これでミトスが種族など関係なく、差別は心が生み出している。
そのことに簡易的でも気付いてくれれば、というエミルの思惑はあるにしろ。
ロイド達もまたかの地、ガオラキアの森を抜ける時にいっていたらしいが、
いまだミトスはかの計画、精霊石にそれぞれの精神を閉じ込めて、
さらには人々を無機生命体化する、という構想を諦めている様子はない。
むしろ、どうすればそれが達成できるか、と日々考えてる様子がうかがえる。
同じヒト同士でも、それだけ意見が異なる様を目の当たりにすれば、あるいは。
それはエミルからしてみても、一石二鳥ともいえる事柄。
後に創ろうとおもっている聖地、その原型を彼らに考えさせる。
ということもありはするが、一番は、ミトスに今一度思い起こしてほしい。
という思いもあるがゆえの提案。
人はそれぞれ、異なる思考をもっているのだ、ということを。
つまるところ、同じ種族にしたとしても、根本的な解決になどはならないのだ。
ということを。
心の奥底でもとめてやまなかった理想の地。
それは漠然と心の中にはあったが、エミルのいうように、
そういえばきちんとした形におこしたことは一度もなかったな。
そんなことをふと思う。
誰もがおびえることなく平和にくらせる世界。
そんな世界が当たり前。
そうでなければいけないんだ、といいきっていたロイドですら。
だからこそ。
「うう…いざ、何か形にしるとしたら難しいもんだな」
家族連れ向けにつくったらしく、一棟にあたり、三人が休めるようにとなっている、
ここ、氷の寝所。
雪と氷でつくられているわりにとても暖かい。
とはいえ薄着になれば寒いことには違いないのであろうが。
ふわっふわの何かで編み込まれてつくられているっぽい毛布。
肌触りのよいシーツ。
シーツはちなみにクロウラーの糸で編み込まれており、弾力性にも優れている。
これらはクロウラー達がそれぞれに口から糸をはきだして、それらを用意したからに他ならない。
エミルがそういうのをつくりはじめたことをしったセンチュリオンが、
魔物に命じ、それらを用意させたにすぎないのだが。
そして、部屋の中は氷でつくられたこれまた天窓が位置しており、
その真下には太陽の光を蓄えることができるとある光石が設置されている。
つまり、夜になっても、石がほのかにひかるがゆえ、
わざわざ蝋燭などをともすひつようもなく、部屋の中は適度な灯りに包まれている。
ちなみに、その石の名をかつての人々はこう呼んでいた。
すなわち、太陽石、と。
灯りがきになるのであれば、用意されているカバーをかけることにより、灯りは極力抑えられる。
もっとも、そのカバーをかければ明るい光が今度は青白い灯りとなりて、
うっすらとした青白い灯りに部屋全体が照らし出されるのだが。
氷と雪でつくられているがゆえ、真っ暗となれば、
何か不測な事態がおきたときに対処にこまるだろう、ということもあり、
エミルがそのように仕掛けをほどこしているのだが。
エミルからしてみれば真っ暗でも普通に視えるのでそうでもないが。
普通の生命体はそうではないがゆえの処置ともいえる。
「理想の地。かぁ。姉さんはきにせずに、自分達が住んでみたい。
とおもうような景色とかでもいいから一度かいてみなさいっていってたけど」
難しいかもしれないけども、あなた達が目指す理想とはどういうものなのか。
それぞれの頭の中でまとめるためにも、だからこそのこの課題よ。
そういって手渡された数枚の紙の束。
ちなみに、何枚などという制限はない。
せめて一枚は何かかいてみなさい、という意見が昼間にだされた。
そして今。
すでに今日の作業、すなわちそれぞれつくっていた雪像つくり。
それもひと段落し、また宿を引き払い…というのも、
すでに予約客がはいる日付が迫っているとかで、
いつまでもロイドたちが部屋を独占するわけにはいかないがゆえ、
こうしてエミルのつくったという宿泊場に移動してきているのであるが。
エミルはそのことをみこしてこれをつくったのかどうかは定かではないが。
ちなみにすでに一行が旅だったとき、この設備をレザレノが管理していいか。
という許可はすでにリーガルはエミルに打診していたりする。
エミルも自分達がいなくなったあとは好きにしてかまいませんよ。
といったことから、本格的にこの設備を、新たな宿場場。
としてレザレノ・カンパニーの観光部としては考えているらしい。
絶対に目玉の一つになりえる、という確信のもとに。
「そういえば、ミトスは?」
一緒であるはずのミトスの姿がその場にはない。
現在、同じ部屋で割り当てられているのは、ロイド、ミトス、ジーニアスの三人。
そしてその隣の棟にはリフィル、しいな、コレットが。
その隣の棟にはマルタ、プレセア、セレスの三人が。
そしてまた、リーガル、ゼロス、エミルの三人。
計十二名でもってして、四棟を使用している今現在。
エミルがつくりし残りの二棟は利用性を確かめるため、レザレノの従業員が今現在使用している。
何でも使用するにあたり、いろいろと調べたいことがあるらしいかららしい、のだが。
エミルが使用していた石もかなり気になりはすれど、その入手方法。
それが彼らからしてみれば絶対に不可能に近い方法であったこともうなづける。
エミル曰くさらり、ともってきてもらった、といっていたが。
それが魔物である、と瞬時に判断したリフィルがどうにかその追求をのがれさせたのは、
いろいろな意味でリフィルの英断、といえるであろう。
「何かミトス、外の空気をすってくるって」
ジーニアスも一緒にいきたかったのだが。
少し一人になりたいから、といわれ、ジーニアスも何にもいえなかった。
「理想郷…か」
いつか、世界が一つになったとき、新たな大地がきっと自分をまってくれている。
そうおもい、大地を元の姿、すなわちかつて一つであったという世界を夢みているが。
本当に?
本当にそんな世界ができるのだろうか。
あらためて姉から課題、としてその光景を絵におこせ、といわれてみて、
その不安定さというか不確実さがよくわかる。
「そもそもさ。理想の場所、なんて、その人がそこが理想の地だ。
とおもえばそこが理想の地であってどこでもいいしなぁ」
ロイドからしてみれば、どこで生活していても、そこが自分にとっての大切な場所。
そう思うだけでいいのでは、ともおもう。
すくなくとも。
「…お互いが、お互いに暗黙の了解で譲り合う心がある世界…か」
嫌いなものは嫌いでかまわない。とおもう。
嫌いなものを好きになれ、というのは難しいとおもうから。
でも、そこにいてもいい、とおもえるような、そんな世界。
ただ、種族が違う、というだけで排除しようとするのではなく、
互いに足りないものを補っていけるような、そんな世界。
それが理想の姿、なのであろうが。
それを絵にする、となるとまた話しは別。
「そもそもさ。エミルのやつも何だってあんなこといいだしたんだろ?」
「さあ?エミルも何か考えがあるんじゃないの?」
そもそも、聖地、という言葉をだしてきたのにも何か意味があるような気がする。
それはジーニアスの直感でしかないが。
「…とりあえず、住んでみたいような世界。それを絵におこしていこうよ」
自然があり、そして人々が自然と種族関係なく笑いあえる世界。
それが一番の理想。
そんな世界においてどんな場所で自分がすごしたいのか。
形としておこすのがこれほどに難しい課題もない、とおもう。
もっとも、リフィルからしてみれば、この課題によって、
それぞれが思うところの形、その難しさ。
それらを再認識させる、というのが一番の理由であるがゆえ、
彼らがきちんと絵におこせる、などとはおもっていない。
「……ミトス?」
「…え?エミル?」
絵におこせ、といわれ、自分の想っている光景を思い浮かべた。
自然に囲まれ、そして…誰の声もきこえない、静かな世界。
ただ、そこにあるだけの、そんな世界。
心も何も関係なく、ただ流されるまま、感じるだけのそんな世界。
それが本当に自分達の望んでいた世界なのだろうか?
改めて形として絵としておこしてみよう、といわれてふと思ってしまった。
だからこそ、一人外にでた。
皆が皆、心を失い、無機物になれば差別はなくなる。
同じ種族になればなくなるとおもい計画した千年王国の計画。
ヒトなんて、必要ない、ともおもった。
それでもクラトス達の意見を取り入れていたつもりであった。
ミトスの心にうかびしは、自然豊かな大地にて、姉とクラトス、そしてユアン。
四人で自然を満喫しているその光景。
それは、かつての旅の中、とある森の中で水浴びしていたときの記憶の光景そのままに。
無意識、なのであろう。
自らがつくった雪像。
その場所に向かっていたことに自分のことながらもおどろきつつも、
その場にエミルの姿をみとめ、ミトスはおもわず目を見開く。
しかも、いきなり名を呼ばれたことにより、エミルがそこにいたことに今気がついた。
気配も何も感じなかったのに。
それこそエミルがそこにいた、ということにすら、
ミトスは声をかけられなかったら気付かなかったであろう。
月灯りの下。
エミルの姿はいつもミトスが見慣れていた姿、ではない。
おそらくは夜着のつもり、なのであろうが。
ふわり、とした真っ白い服を着こなしている。
いつもみつあみなどでくくられているその長き髪もまた、
今はどうやらそのまま流すがままになっているらしい。
ぱっとみため、その白き服と月灯りに淡く輝く金の髪からして、
どうみてもエミルは少年、ではなく少女にみえなくもない。
否、少女、というよりは、どちらかといえば…
ヒトあらざるもの。
一瞬、ミトスの脳裏に浮かんだのはそんな言葉。
そこにいるのが自然で、まるで自然の一部のようなそんな感覚。
そんなまさか、とおもうが、しかしその思いはミトスからどうしてもぬぐい捨て切れない。
「エミルはどうして、ここに?だって……」
だって、ここには僕がつくった雪像しかない、のに。
周囲には他に何もない。
少し離れた場所にミトスは雪像をつくっていた。
街道から少し離れた場所にあるこの地にエミルがいる理由がミトスには判らない。
そんなミトスの問いかけにただエミルは頬笑みながら、
「…これって、ミトスと、そのお姉さん、なんだよね?」
それはありし日の彼らの姿を模した雪像、なのであろう。
この雪像からミトスが姉マーテルを思っているのがひしひしとつたわってくる。
人間に殺されてしまったというマーテル。
しかし、なぜ。
なぜそのあと、自分を頼ってこなかったのだろうか、ともおもう。
マーテルのマナを紡ぎ、新たな器を創りだすことくらいたやすかったのに。
なのに、どうして。
ミトスは大いなる実りのマナと彗星のマナを用い、自分達でどうにかしよう、という方法を思いついた。
今はまだマーテルの精神体は死んではいない。
しかし、確認したかぎり、やはり高濃度のマナに満たされていたがせいか、
マーテルの精神体はどちらかといえば、人工精霊に近いものにと変化してしまっている。
すなわち、器なくしても生存してゆけるその生命体へと変化してしまっている。
四千年、という年月はヒトでしかなかったマーテルの魂を変化させてしまうには、
十分すぎるほどの年月であったのであろう。
自分達精霊にとってはほんの一瞬でしかない時間であったとしても。
だからだろう。
あのとき、数多の少女達の魂と融合し、かの精霊として生まれ変わった精霊マーテル。
その誕生の欠片はすでにこのときからあったということがうかがえる。
あのとき、エミルはかの地に捕らえられている少女達の魂を解放した。
かの救いの塔の中に閉じ込められているこれまでの四千年にわたり滞っていた魂の解放。
あるものは、転生を望み、あるものは世界に還ることを望んだ。
これまで犠牲になった数多といる少女達の魂。
自分達に負担をかけたくなかったのかもしれない、ともおもうが。
どちらにしても、忠告はしていたはずなのに。
大いなる実りを彼らに託したとき。
この力をもとめ人間達が結託し力をもとめようとする可能性もわすれるな、と。
最後の最後にその忠告が現実となってしまい、今にいたっている。
「・・・・・・・・・・・・・・」
エミルの問いかけにミトスは何ともいえない。
それはたしかに自分と姉ではあるがなぜか答えることができない。
「……ヒトはいつでも愚かだよね」
「え?」
「いつだって、自分達の欲のために他者を、そして自然をないがしろにしていく。
それが自分達の首をしめている、ということすら忘れてしまっている」
「そう、だね」
その言葉にはうなづかざるを得ない。
ひとは愚かだ。
愚かでしかない。
そんな人のために姉は殺された。
だから、その姉を救うために、あのコレットという少女を…
「…でも。そんなヒトばかりじゃない。それはミトス。君もわかってるでしょ?」
「……それは……」
「ヒトの心は複雑怪奇。でも…だからこそ、捨てがたいものでもある。違う?だからこそ……」
だからこそ、ヒト、という種族は絶滅していない。
どのような世界においてもそれに近い種族は必ず産まれている。
それこそ、精神生命体としてしか存在していない世界においても、
彼らもまたヒト以外にはありえない心をもちえている。
「ヒトは自分達と違うものを恐れる。なのにその力を欲していく。
そして、その身にて扱いきれない力すら求めようとする。
でも…いつもあらがおうとするものは必ずうまれてきている。違う?」
そう。
あのとき、ミトス達があまりにつづく戦乱をどうにかしよう、と立ち上がったときのように。
今また、ロイド達が二つの世界のありようを正そうとして動いている。
できうれば、ミトス自身に精霊達との契約。
その過ちを正してほしかった。
しかしそんな時間も残されていなかったのもまた事実。
自分がこうしてこの場にて先の記憶をもっているからこそいえることではあるが。
そうでなければ、人間など滅ぼしてしまえばいい。
という結論に至ってしまっていた。
人は、幾度も自分を裏切った。
大樹を枯らしただけでなく、ミトスの魂がやどり、種子すらうばい、
その守護の座と名すら奪いまったく別物にとかえて。
今一度人を信じてみよう、と理をかきかえたというのに、勃発したラグナログ。
そして…新たな世界において、滅びをむかえた世界樹ユグドラシル。
そもそもダオスがかの地にやってきたのもまた、彗星によって移動していった彼らがかの地に降臨し、
余計な知識をもってして、かの地に再び戦乱が巻き起こってしまったがゆえであることを、
今のラタトスクは理解している。
どのような世界においても、滅びを望む…それがたとえ意識していなかったとしても。
豊かさをもとめ、世界を破滅においやるものもいれば、それにあらがうものも産まれてくる。
どうもこの四千年の間、ミトスはそのようなものをことごとく排除していたようではあるが。
そんなものたちが、かつての自分達と同じである。
そのことに思い当たることすらなったのであろうか。
それとも、実際に触れ合っていないがために、知識でしかしらないがゆえ、
そのあたりの感覚がマヒしてしまっていたのか。
それはエミルにはわからない。
人は、直接に自らがかかわっていなければ他人事、として捉えてしまう傾向がある。
自分には関係ないのだ、とこれはよそでおこっていることなのだ、と。
そして、その現象が自分にふりかかったとき、こうおもう。
どうして自分が、自分だけはありえなかったはずなのに、と。
ありえるはずがない、というものほどありえるはずがない、というのに。
「…あっちにあった雪像の元になった勇者ミトスと女神の像、だっけ?
…千年以上にもわたる争いを食い止めた彼ら達もまた、
ほとんどの存在達があきらめている中、あきらめず、そして停戦にまでこぎつけた」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
エミルは何がいいたいのだろう。
この言い回しはまるで自分がユグドラシル、とわかっているような言い回し。
それとも、世間一般の話し、としていっているのか。
しかし、エミルの言葉はミトスに過去の記憶を揺さぶり起こすには十分すぎるほど。
初めて訪れたテセアラの地。
進言したシルヴァラントの進行。
信じてもらえずに、炎に染まったテセアラの首都。
そして、自分の理想を信じ、国を出奔したクラトス。
シルヴァラントの幹部であったユアンとの邂逅。
「…ロイド達は気づいているかわからないけど。というか失念してるとおもうけど。
世界を一つに。といっているけど。どうして世界が二つにわけられたのか」
ミトスをみながらいっているわけではない。
じっと雪像をみつつ呟くようにいうエミルの言葉に、ミトスはなぜか反論ができない。
ゆえに、ぽろりと、
「…どうして?」
思わずといかけてしまう。
それは無意識からといかけた台詞。
ロイド達もこのことをしっているのだろうか。
そこまでミトスは詳しく彼らから聞かされていない。
精霊達と契約していたとしても、精霊達は契約に関することは伝えられないはず。
契約に関することは話せない、それが精霊達がもっている理であったはず。
「――大地を存続させるため。…ヒトを存続させるため」
「――え?」
あのまま、ほうっておいて、全てを浄化、もしくはヒトが自らの愚かさに気づき、
もうこれ以上とないほどに…それこそかつてのデリス・カーラーンのように。
人工の半数以上が死に絶え、そして種の存続があやしくなるまでほうっておくか。
それとも、ヒトによって穢されまくった大地を浄化させるために起こそうとしていた大洪水。
――、一度、降り立ったときのごとく、全てを、無に。
それを止めたのは、ミトス達が、というよりミトスが必死に自分を説得してきたからこそ。
人がおこせし過ちは人の手で解決をすべきだ。
ミトスはそう、自分にたいし、そういってきた。
かの魔族の進行の一件のときですら、そのようにいってきたあのときのミトスの心。
あれが嘘であったとはおもえない。
だから。
「……ロイド達はユグドラシルが悪い、といってるけど、僕はそうおもえないんだ」
そう。思えない。
裏切っているのは事実でしかないが。
でも、まだ完全にミトスの心は堕ちきってはいない。
まだ、全てに絶望しているわけではない。
そう思えるからこそ。
だから。
「……ロイド達が大樹をどうにかして復活させたとしても。
それを守るべき組織、また場所がなければ、きっと人間は過ちを繰り返すと思うんだ」
「……そう、だね」
それこそ、あのときのように。
エミルが何をいいたいのかわからないが、ミトスはその台詞にうなづくしかできない。
実際にそのために姉は殺された。
大いなる実りのマナを独占しようとした二つの勢力の国の人間によって。
「ねえ。ミトス。ヒトってどこにむかっていっているのかな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
エミルの問いかけにミトスは答えられない。
「…変なこといっちゃったね。ミトスもそろそろ寒くなってくるし。戻ったほうがいいよ。じゃ、また明日ね」
「あ。うん」
そのままその場を離れてゆくエミルの後ろ姿を何ともいえない思いで見送るミトス。
「…エミルは……」
何をいいたかったのだろうか。
まるで自分がミトス・ユグドラシルだ、と確信をもっているかのようなあの言い回し。
でも、完全にそういっていたわけではない。
エミルも何を言っているのかわからなかった可能性もある。
でも。
「…どこにむかっているのか…か」
その言葉は、ずん、とミトスの心に重くのしかかる。
自分は…今、自分はいったいどこにむかっている?
まるでそう。
そう問いかけられたように、心が、なぜか苦しい。
それはなぜかミトスにはわからない。
まるで、そう。
信じてほしい、そう自分がいった相手を自らが裏切ったかのごとくの後味の悪さ。
クラトスに裏切られた、とおもったときの自分の心と、
なぜだろう。
エミルにいわれると、自分が…
「……僕は、忘れたわけ…じゃ、ない。ないんだ。けど……」
ぎゅっと手を握り締める。
友達になろうよ!
そうしつこくいったあの台詞は嘘ではない。
なぜか思いだした、精霊ラタトスクに約束したあの言葉。
安定しているマナ。
デリス・カーラーンのメインコンピューターの結果とは異なる地上の様子。
そして…ありえない魔物達の変化。
これまでは人とみれば魔物達は人間達を少なからず襲っていたはず、なのに。
ミトスが合流してこのかた、一度も彼ら一行を魔物が襲ってきた形跡すらない。
そういえば、とおもう。
どういう手段を用いたのか、結局クラトスから聞き出せてはいないが。
クラトス曰く、空を移動する手段があったから、といっていたので深く考えなかったが。
噂にある神鳥として勝手に利用した魔物の目撃談。
天使スピリチュア再来の噂のほうはまあわかる。
そもそもコレットにも、またゼロスにも証となりえる天使の翼があるのだから。
しかし、かの魔物はイセリアの聖堂にて、
あの地を試練の場に設けてからいつのまにかすみついていたあの魔物。
あの魔物がかの地以外で目撃されているなど…
ミトスが覚えているのは、かの扉の前にいくまでに、
あの長き道のりの中、あの空間を飛び交っていた魔物の優美なる姿。
かの地からでることがないであろう、とおもわれていた魔物の目撃情報。
特に、こちら側、テセアラではかの地からでなければ目撃されるはずすらないのに。
シルヴァラント側ならばまあわかる。
あの聖堂にあの魔物は住みついている、のだから。
それもまたミトスのもとにまで報告があがってきていなかった事実のうちの一つ。
一体どこまで自分のもとに挙げられていない報告が地上においてあるのだろうか。
「次なる目的地は…異界の扉、といってたな」
かの地にでむけば何かわかるかもしれない。
かの地は…かの精霊が眠る地。
すなわち、ギンヌンガ・ガップに通じている唯一の道、なのだから。
――ミトス。…我はお前のあのときのあの言葉が偽りである、とはおもえない。
それはラタトスクとしての本音。
過去の記憶が上書きされ、ミトス達のあのときの態度が鮮明にわかるからこそ。
そしてまた、死しても結果として自分から種子を奪うことになったとはいえ、
種子をこのまま死滅させてはいけない、という無意識の行動の表れであったのであろう。
…あのとき、人工精霊と化したマーテルがロイド達に新たな名さえつけさせなければ
ラタトスクの加護のもと、ミトスもまたその魂を蘇らせていたかもしれないのに。
新たな名をつけられたことにより、変質してしまい、それも不可能になってしまった当時の記憶。
…そうでなくては、とっくに、あのラグラログ勃発時のごとく、
すでに世界、すなわち地上は瘴気に満ち溢れた世界に成り果てている。
それこそ、自らの記憶をも取り込んで、かの魔族と契約交わし。
「――ヴェリウス」
「珍しいですね。あなた様が私に頼みごとなどとは」
くすり、と笑みを浮かべる様子はかつてのまま。
「力のほうは問題なさそうだな」
「今はラティス達にかわり、かの聖殿に私はいますので」
そして、かの救いの塔にも。
人々の祈りの心がむかっているその場がヴェリウスのありようをより確実にしてくれる。
「しかし、変わったお願いですね。…人々の心が望む、帰りたい場所。故郷…ですか」
「ああ。…お前のその心を司りし力と、そしてこいつの夢を司りし力。それをあわせればたやすかろう?」
傍に控えしは夢をあやつりし魔物。
「しかし、なぜですか?ラタトスク様?」
しかしなぜこんなお願いをする、のだろうか。
いきなり呼ばれ、この場にやってきた。
どうやら少し意識をむけてみれば、この地にはかつての契約者しいなや、
そしてこともあろうにあのミトスまでもいるではないか。
だからこそ不思議におもわざるをえない。
センチュリオン達がミトスが傍にいることにより、
ミトスがまたラタトスク様を裏切るのでは、と心配していることを、
ヴェリウスは知っている。
「――本格的にしいなに、精霊達の契約の楔を解き放たせる。
それにより、大地の移動も行う。その結果地上は地震が頻発するだろう」
それはもう決定事項。
解放にあわせ、一気に、しかし確実に大地は移動させてゆく。
少しでも動植物達に世界が再び一つの大地にもどったときに影響がないように。
そしてまた、海における生物などに対しても。
いくら新たな種が誕生していない、とはいえ、四千年。
という時間は生体系に多大なる変化を産みだしている。
だからこその処置。
もしも自分が目覚めていなければ、自然界において多大なる被害も出ていたであろう。
それこそ聖獣たちが目覚めていればともかく、として。
聖獣たちはいまだに眠ったまま。
というか今起こしても確実に、間違いなく暴走するであろう聖獣が一柱。
そして、厄介なことに聖獣たちは精霊達よりもより瘴気に弱いという欠点もある。
すなわち、簡単に狂わされてしまう。
かつての、ユグドラシルのマナにて生み出された、
力弱き精霊達がいともあっさりと瘴気に狂わされてしまっていたように。
聖獣たちを目覚め差すにしても、かの書物、そしてかの装備品とよばれし品々。
それにかかわる魔族をどうにかしてからのほうが好ましい。
「――おそらく、それで人間達は不安におもうはずだ。
その不安の心、負の心を糧として魔族達が活性化しない、ともかぎらない」
だからこその、希望の地。
夢であるがゆえ、彼らの心には残らないが、深層意識には残る。
それは希望の光景、として。
「そのために、夢の形として彼らの深層意識にみせてみよう、とおもってな」
少なくとも、やっているのといないのとでは、混乱した人々の恐怖などといった負の念。
その念が生み出される確立が格段に違ってくるであろう。
ヒトはなぜかじぶんで理解ができないようなことがあれば、
その憤り、不安を力なきものに向ける傾向がある。
それこそ心にゆとりがないままに。
「あなたさまにしてはめずらしくヒトにあまい、ですわね」
苦笑せざるをえない。
ラタトスクがここまで人にたいしそんな思いをいだく、など。
そんなこの場にあらわれている数本のふさふさの尾をもつヴェリウスの台詞に、
「いえ。ヴェリウス。ラタトスク様はいつもこのように人の姿を模された場合。
なぜか甘くなられる傾向がつよいのですよ。それはもう昔から」
しみじみ。
ふと真横からきこえてくる声。
「グラキエスか。しっかりと言い聞かせておいたか?」
「ええ。それはもう」
余計なことをいいかねなかったセルシウスとフィアレスにはしっかりといいきかせておいた。
ついでにシルフの長女、次女をも呼びだして。
「しかし…我はあまくなっているつもりはないつもりだが?」
『いえ。甘くなられます』
それはもう異口同音。
いつのまに、というべきか。
いつのまにかこの場にあらわれしエイト・センチュリオン達の声が、重なる。
「…?」
そんなにきっぱりといいきるほどに甘いだろうか?
思わず首をかしげるエミルであるが。
そんな主の姿をみて、センチュリオン達はため息をつかざるを得ない。
無意識でおこなっているのであろう。
だからこそ、センチュリオン達からしてみれば心配となってしまう。
こうして表に人の姿を模して外にでたとき、いつもラタトスクは人によって傷つけられる。
それを心配しているがゆえに、彼らからしてみればラタトスクにこれまでのように、
かの地にて世界を身守るだけにしてほしい、というのが本音。
少なくとも、これ以上、主が悲しむような事態はさけたいのだから。
「――わかりましたわ。やってみますね」
「しかし、あまり無理はするなよ?」
「…お気づかい感謝いたします。それでは」
その台詞とともに、一瞬風が吹き抜けたかとおもうと、その姿はその場からかききえる。
しばしヴェリウスが消えていった場所をながめつつ、じっと虚空をみつめる主に対し、
「――ラタトスク様。この地にクラトスもまたやってきていますが、いかがなさいますか?」
近くにクラトスの気配がある。
何かしてこよう、とおもっているわけではなさそうだが。
「ほうっておけ。というか、ロイドのつくった雪像をあいつは手直ししてただろ?…実害はない。おそらく、な」
なぜ夜になっては、ロイドのつくった雪像を手直ししていっているのだろうか。
あのクラトスは。
変なところで子煩悩になっているな。
思わずそんなクラトスの行動に呆れざるをえないが。
「…まあ、あいつは昔から面倒見、だけはよかった、からな」
だからこそ、あのミトスもなついた。
マーテル曰く、かなり人見知りをしていた、というのにもかかわらず。
困惑。
「あの声は…なぜ……ミトスが…?」
ロイド達の様子を確認しにきた。
ロイドが何やら雪像をつくっているのをしり、こっそりとこうしてみにきている。
雪像におかしな部分があったりしたので、こっそりとこうして夜に手直しをしているのだが。
ふと何やら聞きなれた声がし、そちらに視力を強化し視線をむけてみたところ、
あれは…エミルか?
まるでエミルではない何か、のような雰囲気をもつエミルと、そしてその目の前。
この場にいるはずのない、どうしてミトスがここにいる?
「…様子をみたほうが、いい、か」
どうやらエミルの口調からして、今であった、というような口調ではない。
『ねえ。ミトス。ヒトってどこにむかっていっているのかな?』
そんなエミルの声がクラトスの耳に聞こえてくる。
「どこに向かっているのか…か。本当に、な」
それはクラトスにもわからない。
そしてクラトス自身も。
自分は何をしたいのか。
いまだにミトス、そしてロイド、どちらも選べない。
そうこうしているうちに、どうやらミトスとエミルはわかれた、らしい。
どうやらミトスがじっとみているのは、雪像、らしい。
ぱっとみため、マーテルと…そして、あれはミトスか?
ありし日の二人の姿の雪像。
あのミトスがあれをつくったのか?
というかあんな光景をつくりだすことができるのはミトスしかありえない。
ふと脳裏に浮かびしマーテルの台詞。
『あの子は同年代の友達もいない。他人との付き合い方がよくわからない子なの。
あなたに頼むのは卑怯かもしれないけど、あの子はあなたを信頼しているから』
そんなミトスが、雪像を?
だとすれば、ロイド達がこの雪像をつくっているのをみるかぎり、おしきられた。
というところか。
「…そういえば、私はあの子に遊びという遊びなどをおしえたことはなかったな」
いつも戦いばかりで。
戦いがおわり、人々の意識改革をするために、彗星が飛来してくる間。
世界各地をめぐっていた。
自分達を探す国からの追手をあざむきながら。
「…うん?」
ふと誰かが近づいてくる気配を感じ、思わずそちらを振り返る。
みれば、こちらにむかってくるロイドの姿が。
「だぁ!俺もちょっと外にでてくる」
「あ。うん。だったらミトスにもそろそろ戻るようにいってきて。
たぶん、ミトス、自分がつくったお姉さんの像のところにいる、とおもうから」
「ああ。わかった」
考えていてもやはりわからない。
ゆえに少しばかり外にでて外の空気をすってこよう。
そうおもい立ち上がったロイドにたいし、ジーニアスがいってくる。
「ジーニアスはいかないのか?」
「ミトスやロイドがもどってきたとき。体が冷えてたらいけないしね。何か暖かいものでも用意しておくよ」
この建物からでてすぐ外に、これまたどうやった、のかはわからないが。
エミルはレンガでつくりし小さなかまどをそれぞれ、一棟につき一つづつ。
しっかりとかまくら、とよばれしものの横につくりだしている。
そして、部屋の横には薪をいれるスペースがおいてあり、
これまたどこから準備していたかわからないが、しっかりと薪も常備されている。
ジーニアスを部屋にと残し、部屋の外へ。
見あげた空は満面の星空。
まるで星が降ってきそうだな。
そんなことをおもいつつ、さくさくと雪をふみしめつつ、進んでゆくことしばし。
「……あれ?」
ふと、ロイドかつくりし雪像付近のあたり。
この場にありえないはずの、みおぼえのある人影が。
月灯りの下、その人物はじっとどこかをみつめている。
ぱっと見た目、空をみているようにも、虚空をみているようにもみえなくもないが。
「…クラトスだ」
なぜ、クラトスがここに。
ここはフラノール。
まさか、コレットに何かをするつもりか!?
そんなことはさせない!
クラトスがこんな場所にいる理由はコレットのことしか考えられない。
だからこそ。
「何をしてるんだ!クラトス!」
いつでも剣を抜けるように鞘に手をあてたまま、
警戒しつつその人影にむかいゆっくりとちかづき声をかける。
近づいてくる気配に気づいていたのかいないのか。
ゆっくりと近づいていき、声をかけるロイド。
しかし、そんなロイドをちらり、とそこにいるはずのない人物、クラトスはちらり、と一瞥を向けただけで、
「…お前か。…空をみていた」
あながち嘘ではない。
クラトスにとって、ミトスとは、空、すなわち希望の象徴だった。
自由に、どんなことがあってもあきらめることのないその姿勢は、
まさにクラトスからしてみれば眩しいばかりの希望そのもの。
狂ったのはマーテルが死んでからのち。
あのとき、自分達がミトスの意見に同意してしまったがゆえに、
歪んでしまったミトスの理想。
おそらく拍車をかけたのは、クラトス自身にも理由がわかっている。
それはすわち、クラトス自身がオリジンの封印をしよう、
と申し出てしまったがゆえ。
それがなければ、まだ違っていたのかもしれない。
それはもしも、ありえたかもしれない出来事。
もしも、でしかないが。
過去は取り戻せない。
たとえかえられたとしても、それはもはや自分達のしる歴史ではなくなるであろうから。
「はぐらかすな!」
そんなクラトスの思いを当然しるはずもなく、
クラトスの台詞にかっとなりつつ思わず叫ぶ。
そんなロイドの声はしん、としずまりかえった夜の空気にやけによく響きわたる。
「…ふっ。ではユグドラシル様の障害となるのを排除する段取りをしていた。とでもいえばきがすむか?」
「くっ」
今の自分ではクラトスにかてない。
それでも、コレットを渡すわけには。
「あんたは、あんたは、どうして…っ」
どうしてあんなユグドラシルなんてやつに仕えてるんだ!?
どうしてあのとき、俺を助けた!?
聞きたいこと、言いたいことはたくさんあるのに。
実際にクラトスの姿を目の前にすると、ロイドは言葉を紡ぎだせない。
「……元気なよう、だな」
「…は?な、なんだよ。いきなり」
いきなりそんなことをいわれ、ロイドからしてみれば戸惑いを隠しきれない。
こちらは警戒ばりばり、なのに、クラトスにはそれがない。
だからこそロイドはとまどわずにはいられない。
というか、なんで元気なようだな、とかいわれないといけないのか。
なぜクラトスは自分を気遣うような声をかけてきているのか。
もう何が何だかわからない。
そう、あのとき、コレットを救出にいったあのときですら。
なぜかクラトスはロイドをかばった。
倒れてくる柱の下敷きになるところを、その身を挺して。
「……ロイド。心を許しすぎるな。
お前の近くで悪意をもつものが牙をむいているかもしれんぞ」
ミトスが何故この場にいるのかはわからない。
何を考えているのか、可能性として彼らの一行にどうにかして紛れ込んだ。
その可能性がはるかに高い。
そういえば、ユグドラシルの命でオゼットが破壊されたとかいっていたが。
一度、確認のためにウィルガイアにもどるべきなのかもしれない。
そんなことを思いつつも、それが誰かはいわず、
どうも誰でもかまわず信用しようとするロイドが心配なこともあり、
無難な忠告をほどこすクラトス。
「…それはあんたのことだろう」
ロイドからしてみれば、クラトスがまさにそうとしかいえないであろう。
自分達の旅に、コレットの護衛としていながらも、コレットをマーテルの器。
とかわけのわからないものに利用しようとしている、クルシスの天使。
「ふ。どうだろうな。…せいぜい、壮健でいることだ。これからも、な」
「・・・・・・・・・・・・」
「では、失礼する」
それだけいい、その場からたちさるクラトス。
そんなクラトスの後ろ姿を見送りつつ、
「…壮健ってどういう意味なのか聞きそびれた……」
壮健でいることだ、といわれロイドがだまっていたのは、
その言葉の意味がわからなかったがゆえ。
「ああもう!あいつはいったい何だっていうんだよ?
…あれ?俺、こんなに細かくつくってたっけ?…ま、いっか」
何となく自分がつくった雪像がさらに細工が細かくなっているようなきがするが。
それはおそらく夜の月灯りの下でみるからそうなのだろう。
そう一人勝手に解釈し、
「さてと、ミトスはたぶんあっち、だな」
夜の空気はとても冷たい。
雪は今は降って入るが、粉雪らしく、手をのばせばさらさらと手袋の上にてとけてゆく。
月がでているにもかかわらず、雪がふっているなんて。
なんか不思議な光景だな。
そんなことをおもいつつも、
「お~い、ミトス!」
ミトスがいるであろう方向にむかい、かけだしつつも声をかける。
いくら街に近い、といってもミトス一人では心配なこともある。
それにクラトスもいた。
仲間に何かする、とはおもえないが、油断は…禁物。
「へぇ。皆、いろいろと面白いね」
エミルがいう皆、とはここにいるものたちだけではない。
昨夜、ヴェリウス達に頼んだかの依頼により、ヒトが心の奥底で望んでいる光景。
それを夢として深層意識の奥底から世界中のヒトの中からひっぱりだした。
そのほとんどは大概は家族とともに過ごす光景であったり、
もしくは自然に囲まれていたり、というようなものが大半であり、
あの欲にかられまくっているであろう教皇とよばれし人間ですら、
その心の奥底では、すでに亡き妻と、そして自らが利用している娘。
家族三人で小さな家で平和にくらしている光景。
それを心の奥底で望んでいた。
皆が皆、争いを望んでいるわけではない。
心の奥底ではみながみな、平穏を望んでいる。
なのに、ヒトはそのこと自体に目をつむり、また気付かないふりをして、
欲を満たそうとつきすすむ。
その結果何がおこるか考えもせず。
また、わかっていてもつきすすむ。
それがたとえ自分達の首をしめる結果となろうとも。
「でも、何か形づくるのには、資料にはならない、ね」
ぱらばらとそれぞれが簡単に描いた、というそれぞれの絵。
それぞれがやはり、聖なる地、といっても漠然としたイメージ、しかもっていなかったらしい。
それでも十分。
「じゃあさ。こんな場所があったらいいな。とかそれぞれ意見だしていったらどうかな?
私はさ。こんな場所とかだったらステキだなぁ。とかいうのかいてみたんだ」
マルタがいくつかの紙をとりだしいってくる。
昨夜、プレセアとセレスを巻き込んで、こんな所にすんでみたい。
またいってみたい、というような光景をそれぞれかきとめている、らしい。
「マルタ、これは?」
その中の一枚。
巨大な樹らしきものが描かれており、
「それ、大樹カーラーンだよ。お伽噺の大樹があれば、マナ不足にならないんだよね?
だから、大樹を守るようにして、こんな教会とか考えてみたの」
「マルタさんの意見も一理ある、と私はおもいました。でもそれでは心元ないので…」
それ以外にもプレセアの意見、らしいなぜか罠の数々もいくつか描かれていたりする。
「わたくし、は、自然に囲まれている光景がおもいうかびましたので」
セレスが描いたは、それはおさなき日、ゼロスに遊んでもらっていた光景。
咲き誇る花の中で、兄とともにかくれんぼなどをした記憶は、セレスにとては宝物。
「パルマコスタにもメルトキオみたいな壁というか城壁っていうんだって?
あれはなかったし。でも、たしかにあの壁は侵入者というか。
へんな輩などをよせつけない上でもいいな、とおもったんだよね」
ざっと簡単ではあるがかかれているのは、ぐるり、といくつもの壁に囲まれた街並み。
「しいなさんのほうは…これは?」
「ああ。それは城っていうんだよ。あたしたちみずほの民が…本来まもるべきもの、さ」
かつての島国においてあった、という主君の住まう場所。
その下にある屋敷のような何か、が本来の主君がすまう場所なのだが。
城にすまいしは、主君に全権を依頼され、国をおさめしものの住み家。
盾となりて、皇家をまもるべくつくられし建造物。
もっとも、しいながその絵をかいたとき、リフィルが興味深々で、
しいなにいろいろと質問ぜめをした、という光景が昨夜、
リフィル、しいな、コレットが休んだかまくらの内部にて見受けられていたのだが。
「私は前にゼロスがいってた、金と銀でつくられてる建物~。それを想像してかいてみたよ?」
しいなにいろいろと残っているという知識をききつつ、かきだされたそれは、
ちょっとした小さな建物のようなもの。
周囲を湖にかこまれ、その中心にぽつり、とある建物は、
たしかに実際にあればどこか幻想的、としかいいようがないであろう。
「でもさ。これらをつくるにしても、かなりの場所が必要、だよね?」
「とりあえず、小さいものでつくらない?
時間的にも大きなものをつくっても、時間間に合わないだろうし。
それぞれが、どれをつくっていくかとかきめてさ」
細かい一つ一つの雪像もどきならば、そう時間はかからない。
そしてもちより、形にしていけば、ある程度は出来上がるであろう。
「樹を守る…場所、か」
それをみて、ぽつり、とミトスがつぶやく。
そんなこと、これまで考えてもいなかった。
たしかに普通にそこに大樹があれば、ヒトはあのときのようにおしかけるであろう。
「エミル…これは?」
ふと、エミルがかいたとある一枚の絵をとり、リフィルが問いかける。
「え?ああ、昔、ちょっとみたことがあるんですよ。そういうものを」
「…ふむ。どこかの遺跡ででもみた、のか?こんな街なみは……」
石創り、なのであろう濃厚とおもわしき門。
石創りの建物がその中には並んでおり、さらにその中心地。
そこには巨大な建物が。
エミルの記憶にある聖堂。
それはデリス・カーラーンにおいて、かつてはあった大樹を祀る聖殿。
天まで届きそうな高い天井。
天窓からは計算された太陽の光がふりそそぎ、より厳かな雰囲気をつくりだしていた。
床や柱、そして天井に細かな文字、そして細工が施されており、
その一番奥には、自らの象徴ともいえる蝶の模様と、
そしてセンチュリオンたちの紋様。
今でも目をつむればくっきりとあの光景はおもいだせる。
愚かなるヒトの争いによって、かの聖殿は壊れてしまったが。
それでも、完全にヒトの心が疲弊したというわけではなかったのであろう。
あのような、生命体が生存するのもやっと、というほどにマナが涸渇しはじめた大地において、
かの聖殿のみはなぜか人間達は率先して保存につとめようとしていた。
上空からの攻撃をするものも、かの地には遠慮していたようなきがする。
もっともその奥に大樹カーラーンがあったからなのかもしれないが。
「しかし。聖なる地…ねぇ。名をつけるとしたらどんな名になるのかねぇ」
ふとしいながそんなことをいってくる。
この地は、セレスティア、といわれていた。
セレス…とは、古代デリス・カーラーン語において、【冬の女神】を指し示す。
なぜかそういえば当時も自分が女性形態の精霊だ、と疑われてすらいなかったな。
ふとそんなことを思い出す。
実際はどちらにもなれ、どちらでもない、というのが正しいが。
冬は、新たな命を産みだす前兆の季節、としてその名がつけられた、
とは当時きかされた言葉。
目の前のセレスという少女の名、それを彼女の両親がしっていたかどうかはともかくとして。
「聖地カーラーンでいいんじゃないのか?」
「それは、でも、今救いの塔がある場所の名でしょ?」
ロイドの台詞にすかさずジーニアスが突っ込みをいれる。
「じゃあ、まんま。聖地、はどうだ?」
「…ロイド、それ、意味になってないから」
ロイドの台詞にジーニアスがあきれたようにいい、
「まあ、名前はともかくとして。どうする?やってみるの?」
どちらにしても、
「まあ、どっちにしても、あと数日はここで足止めなんだろ?
少しばかりの休息ってことでやってみてもいいんじゃないかね?」
どちらにしろ、ここでじっとしていても仕方がない。
そもそも合流してくるという国からの使者がやってこないことには身動きがとれない。
マルタが首をかしげ問いかけるとともに、しいなが首をすくめていってくる。
「やるのはいいけど、皆、体調管理にはきをつけなさいよ?」
これだれ寒いのである。
外で遊ぶのもまあいい。
しかしそれで風邪でもひいてしまえば、もともこも…ない。
「ところで。エミル?」
「はい?」
それぞれが、どんなものをつくるのか。
わいわいとロイド達が騒ぎ始めているそんな中。
ふとリフィルがエミルをみつつ問いかけてくる。
「何ですか?リフィルさん」
「あなたが、トイズバレー鉱山でバキュラから取り出していたこれなんだけども」
いってリフィルが机の上におくは、イビルアイ。
「それがどうかしたんですか?」
「あなたに聞こうと思っていて今までなかなか聞きそびれていたからね。
これのことをしっている、という人にあったのよ。
彼いわく、これは闇の装備品とよばれている品の一つだ、そういっていたわ」
ぴくり、とその言葉にゼロスが反応する。
ゼロスの脳裏に思い浮かんだは、あの日のアルタミラの光景。
エミルの手の中で朽ちていった木箱と、どこかおどろおどろしい感じをうけたあの剣玉らしきなにか。
「全部で九つある、とのことらしいのだけども……」
リフィルがそういいかけると、
「おいおい。エミルくん。ひょっとして、おまえさんが、千ガルドで譲り受けた。
あの剣玉モドキもそれと同じなんじゃあ……」
「?何だい?それは?」
しいなはそれは初耳で、ゆえに思わずゼロスにといかける。
「ん?ああ、アルタミラにいったときなんだけどな。エミル君をつれて俺様達、カジノへ……」
「あんたはぁぁ!エミルをどんな場所につれてってるんだいい!」
ゼロスがいいかけると、しいなが憤慨したように、思いっきりゼロスにどなりちらす。
「お、怒るなよぉ。しいな。別にへんなところにつれてったわけでも……」
「そもそも、エミルを夜遊びにつれあるくんじゃないっ!ったく」
目をはなしていた好きにこの男は何をしでかしていたのやら。
「……エミルを夜遊びに連れ出していた、というのがかなり気になるけども」
おもわずそんな二人のやりとりをききつつも、頭がいたいわ、とおもいながら、
こめかみに手をあてつつも、しかしきになるのはそこではない。
「エミル?その品物、というのをみせてもらってもいいしら?」
「え?あ。はい。かまいませんけど」
ポシェットの中からとりだした…あいかわらずあのポシェットはいろいろとはいるわね。
おそらくは何らかの空間の力が加わっているのであろうが。
原理としてはこの地にあるテセアラのウィングパックにちかしいもの、なのであろう。
古代遺跡からときおり、そういう不思議な道具がみつかることがある。
というのはリフィルはしっている。
だからこそ、エミルが遺跡のことなどに詳しかったりしたこともあり、
エミルのもっているそれは、遺跡の一つからみつけだした古代の遺産のうちの一つであろう。
そう勝手に解釈していたりするのだが。
エミルがとりだしたそれは、たしかに形的には剣玉…にみえなくもない。
紫と緑が交互にいりまじりねじったような取っ手。
そしてまるで何かの牙、のような球らしきものをうけとめる二つのでっぱり。
頭部分にある針のようなそれは、ものすごくとがっており、
少し触れただけですらすぐさま血がにじんでしまうほど。
「ビシャスコア、というらしいですよ」
エミルがリフィルのおいたイビルアイの横におくとともに、
手も触れていないのに、それそれの品がいきなりかたかたと震えはじめる。
「……プレセア!?どうしたの!?」
ふとみれば、それにあわせ、プレセアがその場にうずくまる。
「声が……」
プレセアの心、もしくは脳内にひびいてくるような声。
「――バアエティ ウス ワエディウンド イオティ?」
まったく、懲りないというか何というか。
自分がこの場にいるというのに、何をしでかそうというのだろうか。
この魔族達は。
何をしている?と少し力をこめて問いかけるとともに、
突如として二つの品は手も触れていないのにその場に一瞬、
飛び上がったかのごとく浮かんだかとおもうと、そのままぴくり、とも動かなくなる。
エミルが何やらぽつり、とまたまた意味不明の旋律の言葉を呟いたかとおもうと、
それまでかたかたと振動するように震えていた二つの装備品はぴたり、と制止する。
そしてまた。
「あ……」
「どうしたの?プレセア?具合がわるいの?」
プレセアをまるで苦しめるかのように突如としてきこえてきた声。
それが一瞬のうちにきえさったことをうけ、困惑した声をあげているプレセア。
そんなプレセアを心配し、コレットが声をかけているが。
「今、へんな声が……」
「?何もきこえなかったよ?」
プレセアの困惑したような声にたいし、コレットが首をかしげつついっているが。
「きのせいじゃないのか?」
コレットにもきこえなかったというのならば気のせいだろう。
そう一人勝手に判断し、そんなことをいっているロイド。
「…エミル、あなた、今、何をいったのかしら?」
たしかに、今、エミルが何かをした。
それは何なのか、リフィルにはわからない。
しかし、二つの武器らしきものを並べるとともに、
まるで惹かれあうにうに、触ってもいないのにこの武器はいきなり震えだした。
つまるところ、これらの武器に何かがある、という証拠といえる。
だとすれば、あのアビシオンとか名乗っていた男性。
彼がいっていたことはあながち嘘である、とはいいきれない。
「これについて知っていることをおしえてもらえないかしら?」
ともかく、情報がなさすぎる。
ゆえに、エミルがしっているかどうかはわからないにしろ。
しばし、エミルに意見をもとめるリフィルの姿が、その場においてみうけられてゆく――
フラノール雪まつり。
数年前にレザレノ・カンパニーが発足したというこの祭りは、
この時期、世界各地から様々な観光客をむかえるほどに、
すでにこの地域において目玉の一つともなっている観光名所。
投票に参加したいものは、受付場において投票用紙をもらい、
そして気にいった雪像を、一から十まで順位をつけてそこにかきいれ、
そして投票箱に投票する、という仕組みとなっている。
ちなみに、投票参加者は幾度も投票を重ねてするのを防ぐために、
参加ナンバープレート、というものが配られ、
必ずその番号を記入するようになっており、ゆえに重複したものはおこらなくなっている。
そもそも投票箱にいれるときに、係りのものがおり、
その番号プレートと同じか否か、きちんと確認されてからのち投入されるので、
不正はなるべくできない仕組みとなっているらしい。
ちなみに最終日までいれば、その番号において、抽選があり、
レザレノ・カンバニー特製の様々な品物が当たるくじひきがあるらしく、
ゆえにそれを目当てにこの地にやってくるものもすくなくない。
「ふえ~、すごい人だなぁ」
思わず呆れたような、それでいて興奮したような声をだす。
そんなロイドにたいし、
「本当…人で酔いそうなほどにすごいひとだよね」
どこを見渡しても、ヒト、ひと、ひとの群れ。
そう、群れ、というのにふさわしい。
雪まつり開催時はこれまたレザレノの子会社である花火会社が提供した、
という打ち上げ花火が盛大にいくつもあげられて、祭りの開催をつげている。
開催日から主に七日にわたり、お祭り騒ぎになるというこのイベントは、
世界各地から様々な旅業者のツアー客などもやってくるテセアラが誇りし巨大イベント。
「すごい綺麗だったね。ミトス。火であんなのができるなんて。信じられなかったよ」
「そ、そうなんだ」
ジーニアスがいっているのは先ほどの花火。
音もすごかったが、空にさく、火の花、それで花火、とはよくいったもの。
聞けば夜にも再びあがるらしい。
昼間とは違った美しさがある、とのことらしい。
そんなジーニアスにミトスは何ともいえない表情を浮かべていたりする。
ミトスの記憶にありしは、なぜか手先が器用であったユアンがつくりし、
線香花火、といわれしもの。
こよりを練って、その先に火薬をつめた小さな花火。
四人であつまり、それに火をともし、楽しんだ昔の記憶。
「本来、破壊などに使用するであろう火をああいうものにつかうのも、ヒトだからこそ、だよね」
エミルのさりげないものいいに。
「それはわかるけどさ。エミル、ほんとあんたときおり、
ヒトを客観的にみてるような言い回しをするねぇ」
それはシルヴァラントから共に旅をしているときからおもっていたこと。
「それで?その国から依頼をうけてやってくるっていう人は……」
待ち合わせは街の入口、となっているらしく、
そちらにむかっている今現在。
そんな中。
「もう!アステル!というか、リヒターも何とかいってよ!」
何だろう。
ものすごく聞き覚えのある声が。
ふとみれば、何か白衣をきている女性が隣にいる赤い髪の人物に対し何やらいっている。
…まさか、こんなところであうとはな。
思わずその姿をみとめ、エミルは何ともいえない気持ちになってしまうが。
しかし、今の彼らは自分のことを知るはずもない。
否、知ってはいるであろうが、結びつけてはいないであろう。
「あれ?リリーナちゃんじゃねえか」
ふとその姿をみつけゼロスがそんなことをいっているが。
そんなゼロスの声がきこえたのであろう。
「これは神子様。そしてお久ぶりです。皆さまがた」
雷の神殿で出会ったリリーナ、と名乗りし女性がその場におり、
なぜかぺこり、と頭をさげてくる。
というか何故に彼女がここにいるのだろうか。
「あなたが、国からの?それにそっちは……」
ちらり、とみるかぎり、あきらかに同胞であることがうかがえる。
眼つきが多少なりとも悪いようにみえなくもないが、
外見でその人となりは判断ができはしないことをリフィルはよく理解している。
「ええ。少しでも面識があるほうがいいだろう。
という院長の意見もあって、私もなぜか選ばれたのですけど……」
そういう目の前の女性、リリーナはどこか困惑ぎみ。
「…おい。リリーナ。というか、アステルのやつを放っておいてもいいのか?」
やれやれ、といったようにつぶやく赤い髪の人物であるが、
その首に何やら首輪?にもみえるチョーカーのようなものをつけているのがみてとれる。
「あ!いけない!まったく。あの子は目をはなしたらどこにいくのかわからないんだから!
リヒター。あなたは神子様方とともにここでまってて!
まったく、アステル!いい加減にしなさ~い!」
何やら叫びつつ駆けだしてゆくリリーナ。
一方、その場に残された赤い髪の男性が、改めてふりむきつつ、
「ふむ。神子とそしてシルヴァラントの一行。か。…うん?
……リリーナから話しをきいていたが、本当によく似ているな」
ふとその視線をエミルにむけて、目を見開き驚いたようにいってくる。
このあたりはこのリヒターも変わらないな、そんなことをふとエミルは思うが。
「えっと、あなたは?」
「俺はリヒター。リヒター・アーベント。国からいわれ、お前達に協力するようにいわれてきた。
精霊研究は俺とアステルが半ば共同で研究しているようなものだからな」
国の命令に従うのはあまり気がすすまないが、命令は命令。
しぶしぶながらてはあるにしろ、それでもあの陰気臭い研究院から外にでられるならば。
という理由もあって引き受けた。
一番の理由は即答したアステルを心配して、ということもあるにしろ。
「ほう。では貴殿らが、国からの?」
リーガルが報告のあった資料。
そこには三人の名が記されていた。
約一名は監視が必要、とかかれていたそれは、
そのうちの一人がハーフエルフであることをうかがわせている。
「そういえば。よく似てるって。そんなにアステルってヒトとエミルってにてるんですか?」
マルタがずっと気になっていたこと。
雷の神殿において、また王立研究院においてエミルがよく似ている、似ている。
といわれていたがゆえに気になっていたといってもよい。
「髪の長さや雰囲気は違うようだがな」
もしもこれで髪が短ければ見分けはつかないかもな。
そんなことを小さくいってきている目の前のリヒター、となのりし男性。
かつてのとき、自分を一度殺し、そしてコアを破壊しようとし、
さらには自らをコアにしたのち扉の封印を破り魔族と契約し、
当人は自覚していなかったであろうが、世界を瘴気に包もうとしていたヒト。
そもそも、彼がヒト柱としてクルシスの輝石とよばれしそれを手にしたとして、
扉の封印になりえるはずもない、というのに。
トビラの封印はラタトスクが生み出すマナをもってして封じられていた。
そのラタトスクのコアを破壊すればどうなるのか。
どうやらそこまで思い当たってすらいなかったらしい。
また、今この場にいるセンチュリオン達にしろ、
ラタトスクのコアが破壊されれば、彼らもまたその存続が不可能となる。
つまるところ、リヒターがあのとき、あの行為を行っていたとしても、
間違いなく世界は瘴気に包まれてしまっていたであろう。
魔物達が人を絶滅させるよりも、世界が瘴気に満ち、確実に人間達は滅んでいた。
まあかの千年の間、そのことについては説明してもしかたないのでしてはいなかったが。
そもそも、この場のコアが破壊されたとしても、時間をおけば、ラタトスクは再び復活する。
それこそ、主核ともいえる大本があるかぎり。
そしてラタトスクがいる限り、センチュリオン達もまた消滅することはない。
アクアもおそらくわかっていながらリヒターに当時、協力したのであろう。
もう、あの地は救いようがない、そう判断し。
「わくわかんねえけど。俺はロイド!ロイド・アーヴィング。よろしくな!」
にかっと笑みをうかべ、手をすっとさしだすロイドに。
「?どういうつもりだ?」
警戒した口調でそんなことをいってくる目の前の男性。
「何って、挨拶。握手だよ」
そんな彼にさらり、といいはなち、逆に首をかしげているロイド。
しかし、リヒターとなのった人物は警戒をとかない。
そもそも、ハーフエルフである自分に手をさしだしてくる人間がいる、など。
彼からしてみれば信じられないこと。
もっとも、アステルだけ別、だが。
「…まあ、国からの派遣なのだから問題はない、とおもうけども。
私はリフィル・セイジよ。こっちは弟のジーニアス」
「…なるほど、同胞、か。そっちの子供も、だな」
ぴくり。
その台詞にぴくり、とジーニアスが肩を震わせる。
マナの流れからしてこの目の前の眼つきのわるい赤い髪の男性が同胞。
すなわちハーフエルフであることはわかっていたが。
まさかいきなりそんなことをいわれるとはおもってもいなかったらしい。
「…しかし、神子が共に行動している、とはな。
リリーナから聞かされたときは半信半疑であったが」
表面上はハーフエルフを保護する、と明言している神子ゼロスであるが、
母親がハーフエルフに殺されている以上、
ハーフエルフを好ましくおもっていなかったであろうに。
それがわかるがゆえに、リヒターは苦笑せざるを得ない。
「ま。俺様にもいろいろと事情があるってことだ。
で、国から派遣されてきたのは、あんたと、リリーナちゃんと、あと一人は、
ってことは、例のアステルくん、か」
彼がこの場にいる、ということは残りの一人は彼、なのであろう。
世界の異常気象がおこり始め、神子ゼロスに接触をとってきたかの研究者。
何でもクルシスからの何か神託はないか、とおもいあたり、接触をとってきたらしい。
そのときのことを思い出し、ゼロスは首をすくめつつ言い放つ。
そんな会話をしている中。
「もう!まったく、あなたは…」
「あはは。ごめんごめん」
何やらまたまた聞きなれない声が。
ふとそちらに視線をむけてみれば、
『…え?』
その声は、エミル以外のほぼ全員。
同時に間の抜けた、それでいて唖然としたような声をだす。
白衣をきている、金髪の、そして緑の瞳の少年。
どこからどうみてもエミルそのもの。
その頭にあるちょっと特徴のある少しとびでているアホ毛のようなそれも。
異なるのは雰囲気と、そしてその髪の長さといったところか。
エミルがこの場にて髪をゆいあげ、一つにまとめて白衣をきれば、
間違いなくぱっと見た目見分けがつかないほどによく似た…人間がそこにいる。
歳のころは十六かそこら、といったくらいか。
そのあたりもまたエミルの見た目の年齢とよく似ている。
というか身長自体もほとんど同じであるらしい。
まあ、エミルからしてみればそれはそれで当たり前、なのだが。
すくなくとも、この姿はかつてのアステルを模したものであり、
また、あのとき。
かの島に捜索にきていたアステル達がいたのもまた事実。
だから、模した、といえばセンチュリオン達も納得するであろうとも。
実際、影の中より、
『ああ。なるほど。ラタトスク様の今のお姿はあの人間を今回は模されたのですね』
『いつもは平均値で器をつくられるのに、かわった方法とられたんですのね』
『てっとり早かったんじゃないのですか?』
何やらそんな会話がきこえてきているが。
どうやらセンチュリオン達もまた、その姿が似ている、ということを、
その人間の姿を模した、という意見で一致団結しているらしい。
実際に模したことは事実なので間違ってはいないが。
リリーナと会話をしてたエミルそっくりのその人物は、
なぜかその両手にりんごあめをもったまま、
そしてエミルの姿をみるとぱっと満面に笑みを浮かべ、
「君がエミルって子!?はじめまして!僕はアステル!」
「あ。こちらこそ。えっと。エミル、です?」
いきなりぶんぶんと手をにぎられ、
満面の笑みで挨拶され、エミルとしてはとまどわずにはいられない。
エミルの記憶にある彼は、自分にマナの流れを正してほしい。
といっていってきたあの彼の表情しかない。
もっとも、必死に意見してくる彼を煩わしいと感じ、
一撃で殺した自分がいうことではないかもしれないが。
そもそも、あのとき。
ミトス達に完全に裏切られた、と判明した直後でそれでなくてもいらいらしていたのに。
そんな中で、人間も世界に必要な一員だ、などといわれ、ぷつり、と切れたのは否めない。
そのヒトが何をしでかした!という思いが当時はかなり強かった。
大樹を枯らし、さらには再び世界を滅亡においやっていく人。
信じてほしい、といっておきながら、
新たな名をつけることにより自らとの繋がりを断ちきった、ユグドラシル姉弟達。
「うわ~。本当に僕そっくりだよ!…僕の両親、他にも子供いたのかな?」
アステル、となのった少年が目をぱちくりさせながらもそんなことをいってくるが。
「それはないんじゃないのかい?こいつはすくなくとも。
シルヴァラントであたしらと合流してるんだからね」
もっとも、リフィル達の事例もある。
かの地からあの地に流されていた、という可能性もなきにはあらずなれど。
そんなしいなのいい分に、
「世の中には似た人間が三人はいる、とはいうけど。本当によくにているわね。…興味深いわ」
「あ、あの?リフィルさん?」
どうやら違うところの変な意味で興味をもたれてしまったらしい。
そっくりなのはあたりまえ。
人の姿になるにあたり、エミルがそのままアステルの姿を模したのだから。
もっともかつてのときは瓜二つ、それこそアザから何から何まで模していたが。
今はあるいみ、大樹の分身体として地上にでていたときの形をとっている。
ゆえに、多少、あのときよりは形をかえはしているが。
いい例が、あの星型の字は、自らを示す蝶のあざとなり、そして、髪の長さもまた然り。
鎖骨の上のあたりにある、というアステルの星型のアザ。
そこに今現在、エミルは蝶のアザをもっている。
それこそが、ラタトスクである証であり、またディセンダーの証、ともいわれていた模様。
もともと、地上に実体化してでていたときは、
かならず体のどこかというか、胸の上辺りに常にラタトスクは自らの紋様を描いていた。
視るものがみれば、そこから巨大なマナを感じるそれを。
いまだにエミルの手をにぎったまま、
きらきらした眼差しでエミルに話しかけてきているアステル。
そんなアステルとエミルを交互にみつつも、リフィルがそんなことをいってくるが。
「エミルが二人…これぞ眼福!!」
マルタが何やらそんなことをぐっと手をつきあげて叫んでいるが。
「はいはい。馬鹿なことをいってないで。
とりあえず、じゃあ、あなた達三人が国からの、でいいのかしら?」
とりあえず、このままではラチがあかない。
ゆえに改めてといかけるリフィルの台詞に。
「あ。すいません。改めて、自己紹介します。国より、というか王立研究院より派遣されました、
精霊研究を主としています、精霊部署所属、アステル・レイカーといいます。
こっちは共同研究をしているリヒター・アーベント」
「私は以前自己紹介をしているとはおもいますが。もう一度。リリーナ・マロリーといいますわ。
神子様、そして皆さまがた、よろしくおねがいいたします」
アステル、と名乗った男性はいうまでもなくエミルの姿の元となっている人間。
もっともそんな事情をこの場にいる誰もが知るはずもないのだが。
そして、リヒターと名乗りし人物とは、ラタトスクからしてみても、
何ともいろいろな因縁をもっている相手、ともいえる。
もっとも、この時間軸というか世界においてはそんな因縁はまったくないにしろ。
リリーナとは雷の神殿の一件で同行したこともあり、
逆をいえばあのとき、同行したがゆえ、テセアラ、という国から命令をうけた、
といったところ、なのであろう。
「とりあえず。こんなところで立ち話しも何ですし…移動、しません?」
人数が人数。
それに今は雪まつりの真っただ中。
さすがにあるいみでトップシークレットともいえる話しあいというか国が絡んだ話しあい。
「そうね。エミルのいうとおりね。とりあえず、
エミルがつくってたあの大人数が収容できるあの机のある会議室にいきましょう」
それゆえに、どこぞの食堂などを貸し切るよりは、
エミルがつくりし会議室もどきのかまくらを利用したほうが情報も外にはもれない。
「あれ、会議室というわけでもないんですけど……」
まあたしかに、そのようにも利用はできるが。
少なくとも、広間感覚でつくったことには間違いは…ない。
ばさり。
氷の机の上にとひろげられた資料の束。
「ひとまず、いわれていました、精霊の神殿に関する資料。これはこちらになります」
詳しい話しは聞かされていない。
が、神子が精霊の神殿に出向くゆえに、その協力を、という国の命令が下った。
そして、精霊研究の一任者としても名が売れてきているアステルにその白羽の矢がたった。
「なるほど。陛下も少しは考えてくれてるってことか?」
こちらが依頼したわけではない。
にもかかわらず、精霊と契約云々、というのは一応あのとき伝えてはあった。
もっとも、あのときは口から出まかせでリフィルに話をあわせた、のだが。
精霊研究所が集めているという精霊の資料はたしかに助かる。
国の許可を得て、彼らは精霊の神殿をさまざま調査していたはず。
今後の精霊との契約に必ず約にたつであろう。
「こっちのこれは……」
アステルとなのった少年。
どうも話しを聞く限り、アステルは十六歳、であるらしい。
つまるところ、コレットやロイドと同い年。
ウィングパックの中に資料をいれていたらしく、必要な書類以外にも数多に書類はあり、
その中のひとつ。
何やら分厚い紙の束にふと目をむけたリフィルがふとそれを手にとりといかける。
その表紙には、
【カーラーン~その構造と機能~その新約】
そのようにかかれている文字がうかがえる。
カーラーン、という言葉にひかれた、といってもよい。
「ああ。それですか?それは元々、あった書物における解釈。
それらを改めての視点で見直した翻訳版です。
元々はその書物の原書でもあるそれらは、大樹全般ついてまとめたものなんですけど。
しかもかなり古い本で間違った知識にもとづいて解釈されていたんです。
それを僕なりに解釈しなおした翻訳版、といったところですね」
そもそも、かの書物をみたとき、その解釈が間違っている、とアステルはおもった。
「そんな本があるの?」
リフィルの興味深そうな問いかけに、そしてまた、
「大樹の解釈本って…こっちにはあるんだ。
シルヴァラントではお伽噺でしかありえない、といわれてたのに」
ジーニアスもそのことに驚いたのか目を丸くしながらいってくる。
「ええ。興味があるなら簡単に説明しますね。その本にはこうかかれていたんです。
【マナのもの。王によって紡がれし流れの礎となりてキを整えんとする】と」
アステルが目をつけていたのは大樹カーラーンの精霊。
レネゲード、となのりし存在達から知らされていた世界の仕組み。
繁栄世界と衰退世界。
それをどうにかするためにも、と目をつけて研究をしていた。
ゆえに、アステルは当時、やってきたリヒターの論文にと目をとめた。
「僕たちの研究テーマの基本は、大樹カーラーンの精霊とは何か。
これの要約につきたんですよね。
そもそも、世界から古に失われたという大樹がよみがえれば、
レネゲード達のいうところの、繁栄世界と衰退世界。
互いに繁栄と衰退を繰り返しているというこの世界の仕組み。
それを変えられるんじゃないかって。ずっと研究していたんです」
その台詞に思わずミトスが目をまたたかせる。
よもやテセアラでそのような研究をしているものがいようなど。
これだから、繁栄世界がつづいていればろくなものはあらわれない。
ミトスがそんなことを思っている中、
「…当然、マナを無限に生み出す樹なんてものはお伽噺だ。
といって皆が皆ほとんど笑い飛ばしていたけどもね。
でもこの子は昔からあきらめなかった」
リリーナがそんなアステルの説明に苦笑しながらも追加説明してくる。
どんなにあきれられても、アステルは持論をかえることはなかった。
必ず大樹が存在していた、と妙な確信をもっていた。
大樹カーラーンの精霊、とは何か。
世界から失われたという大樹を蘇らせることができるのならば。
その方法を探すための研究でもあった。
「大樹が実在したか否かについてはいまだに王立研究院でも意見はわれてるけどね。
でも、僕もリヒターも大樹の存在を確信していたんだ。
僕の持論でもあるんだけど。
この世の中の万物全てに精霊は存在する、というのがあってね。
だとすれば、大樹にも精霊がいたのではないのか。
そして、もしも大樹の精霊が実在していたのならば、
大樹が失われたあと精霊はどうしたのか」
どうしたもこうしたもない。
そもそも、大樹…地表のそれが失われても、根はのこしていた。
人が愚かなことをして、取り返すのつかなくなるところまでいったところで、
いっきに地上を浄化しよう、とあのとき確かにラタトスクはそう思っていた。
このままでは、かつてのように。
かの地、デリス・カーラーンの二の舞になってしまうから、と。
「僕は、もしその精霊が消えてしまっているのならば、
何とかして蘇らせることができないか。ずっとそうおもって研究していたんだ。
どこからどこまでが虚偽で真実なのか、それはいまだにわからないけども。
でも、すくなくとも、大樹があった、と確証にいたる痕跡も確かに世の中にはあるしね」
それこそ、以前みつかった
とある洞窟の中にぴっしりと、樹の根らしきものがはりめぐらされていた。
そしてまた、地の神殿、と言われし場所にも。
そこには樹などはないというのに、たしかに壁には樹の根らしきものが存在している。
「一人の力でどうにかできる、とはおもっていないけど。
けど、すくなくとも、マナを失っている世界で苦しむ人々を救う手段の一つ。
小さいことかもしれないけど、何か約にたつんじゃないかって」
「…俺のほうはアステルにしつこく意見をきかされては、
また自分の持論をアステルがききたがっていたからな。
…いつのまにか共同研究、という形になっていたが……」
それこそもうなし崩し的に、きづいたらそのような形になっていた。
いまだにアステルがハーフエルフである自分とつるんでいることを好ましく思っていない。
そんな人々が大勢いるのはしっている。
それでも、リヒターと意見が合うのはあるいみでアステルが一番近いといってよい。
すくなからず、精霊が実在している、と信じているものは、
あまりにも研究所では少なすぎた。
そう、コリン、という人工精霊が産まれ、そして藤林しいながその【孤鈴(コリン)】
と彼女がなづけたという人工精霊と契約するとのとき、までは。
精霊の存在に疑念的なものが多かったのもまた事実。
「精霊とそれが守護するものは一心同体。それがいまの定説。
そして守るべき大樹がないのに精霊が存在しうるのか。
リヒターが提唱している考えというのが、
精霊があって守護するものが産まれた、というものなんだ」
「俺のほうは、万物の始まりは精霊だ、と考えていたからな。昔から。
が、守るべきものの消滅と同時に精霊もきえる、というのが俺のほうの考えだが」
確かに万物の始まりはラタトスク自身なので、精霊である、といって過言でない。
そもそも、大概の世界はラタトスクが生み出した大いなる実りから、
何もない空間で芽吹き、そして惑星、という世界を構成していっている。
種子という形をとっていない場合でも、基本的には、
力が集い、形をなすという点ではさわどかわりがない。
直接にかかわっているか、いないか、という差異のみであり、
この空間そのものがラタトスクの抱擁する【世界(宇宙)】そのものであることに疑いようはない。
「この元となった本の解釈ではこうあったんです。
マナのもの、王によって紡がれし流れの礎となりてキを整えんとする。
始めの解釈は、王という言葉は、すなわち、キを整える礎。
すなわち、大樹カーラーンの精霊だ、とおもわれていたんですけど。
でも、僕は、こうおもったんです。マナのものにそれはかけているんじゃないかって」
「つまり…マナのものの…王、ということ、かしら?」
リフィルが少し考えたのち、ぱらばらとアステルのもっていた資料をめくりつつ、
すこし考えるそぶりをしながらそんなことをいってくる。
大樹カーラーンの精霊、そしてそれに仕えているというセンチュリオン。
「今現在、世界が二つに分けられている状態でもマナは存在していますよね?」
「そうだな。…シルヴァラントのマナは少ないけど」
「でもさ。ロイド。風の封印をといたあたりから、たしかにマナは安定してたよ?あっちでも」
アステルの問いかけにロイドがうなづき、
そんなロイドの台詞に思いだしたようにジーニアスがいってくる。
それこそ薄かったマナが一気にこくなった、とはっきりとわかるほどに。
「マナのモノの王。すなわち、マナを司る精霊、ですね。
大樹カーラーンの精霊にはマナを調整する役割があった。
あるいは大樹カーラーンの精霊とおもわれているものは、マナを司る精霊」
まあ、あながち間違いではない。
というか、マナを産みだす過程にて、大樹、という手段をとっていたにすぎない。
それこそその気にれば、今のように。
そう、自らの身だけでマナを産みだすことは可能なれど。
「王立研究院に古い書物が結構のこってたんですよね。
それこそリストにのっていない古い書物を片っ端から調べた結果なんですけど」
・・・・・・・・・・何やら話しが不穏な方向に流れていないか?
エミルがふとそのことを懸念し始めるとほぼ同時、
「大樹の精霊の名は、ラタトスク」
その言葉にぎゅっと手をにぎりしめたミトスの様子にきづいたのは、エミルとそしてゼロスのみ。
「その古書によればその精霊はギンヌンガ・ガップというところで眠っているらしいんですけど。
ちなみに場所は不明です」
どうやらいまだあの地からあの場にはいれることまではつかんではいないらしい。
「しかし、お前は。昔から精霊のことを調べていたのだろう?
前からその精霊のことにいきあたらなかったのか?」
素朴なるリフィルの疑問。
というかいつのまにか口調がいつものリフィルのそれではなく、
ロイド達曰く【遺跡モード】のそれにと変化しているリフィルの姿。
「ええ。その点が盲点だったんですよね。
というかこのたびの異常気象がなければ僕もそこにたどり着けなかったとおもうんですけど。
というか古書の閲覧も許可されなかったとおもうんですけどね。
精霊ラタトスクは精霊でありながら、そして魔物の王でもあるらしいんです。
盲点ですよね。魔物を支配する精霊がいるなんて」
「魔物を……」
「支配?」
一瞬、ロイド達の脳裏にうかびしは、エミルがたやすく魔物達を使役していたあの光景。
率先してエミルの料理の手伝いをしていた魔物達。
そして、エミルが呼びだしたいくつかの魔物達。
さらにいえば、みたこともない魔物すら、エミルは使役していなかったか?
それは、ロイド達がまだシルヴァラントにいたころの出来事。
なぜにいくつも足があるような馬のような何か、まで
エミルのいうことをきいていたのであろう。
さらに、どうも気のせいではないような気がするが、
そんな魔物達はエミルにたいし、どこかかしこまってはいなかったか。
そもそも、リフィル曰く伝説でもある魔物を呼び出していたこともある。
それは、人間達が魔物の卵を強奪し、それゆえに追いかけられていた男たち。
彼らがロイド達に保護をもとめてやってきたあのときに。
あのとき、エミルはロイド達がみたことすらない魔物をどうやったのかはしらないが、
魔方陣らしきものとともに呼びだした。
「そもそも、魔物に目をつけたのは異様なまでのマナの数値の安定、なんですよね」
シルヴァラト側で再生の動きがある、といわれはじめて。
そして、一瞬マナが減少していったかとおもうと、すぐさまマナの数値は安定しだした。
それこそ、たしかに以前よりは少ないかもしれないが、
これまで観測されなかったはずのマナの属性すら観測し始めた。
ふとアステルはそのことに思いあったそのときのことを思い出す。
テセアラ各地にて小さな異常が発生し、それはまたたくまに世界に普及していった。
そのころには互いの論文のための調査結果と資料だけでも膨大な量になっていた。
特別な牽引をつけることにし、その整理作業におわれていた。
そして、異常がみつかったのは、そん調査結果をまとめた論文の中から。
その多くはちょっとした天候不良。
それはセンチュリオン達が覚醒するにあたり、
その先駆けともいえるマナの反転における世界の異常現象。
エミル、否、ラタトスクが先に目覚めさせたはこちらの世界のセンチュリオン達。
トニトルスはしばしこちらにとどめ置いていたが、
グラキエス、そしてソルムは迎えにいったのち、
それからラタトスクはシルヴァラントの地へと移動した。
たまにはセンチュリオン達を自ら目覚めさせに出向いてもいいだろう。
そんな思惑のもとに。
センチュリオン達がコアとなりて眠っている間、どうしても世界に異常はおこってしまう。
そう、ルインの地が闇に覆われていたように。
かの現象はまた、こちら側、すなわちテセアラ側でもみうけられていた。
それこそ闇の神殿を中心として。
それは大きな異常であったのだが、これまでにも幾度か不思議な報告はあった。
それはほんの小さな違和感。
研究者や林業、農業に従属しているもののごくわずかはきづいていたであろう違和感。
気象の異常に気をくばりはじめたとたん、それはおさまってしまう。
しばらくするとまたごく短期間の冷害や日照りがつづく。
月の満ち欠けを含めた自然現象が世界の全てに影響をあたえていると前提した場合
そこにマナの干渉がはいるとしたとしても、
たとえ精霊の強い影響下だから、という理由からしてみてもブレがでる
集めたデータは誤差が大きくて役に立たなくなるであろうはず、であるのに。
マナの推移が確かにおかしかった。
専門外の力が働いている。
当時、アステルとリヒターが定点観測しているいくつかの場所。
そこにおいてもマナの不安定な増量がおこっていた。
テセアラのもともとの成り立ちをかんがえれば、
衰退世界にマナがもっていかれてるのかともおもったが、
そしてたどり着いたのが、魔物、という存在。
そのときはあくまでも仮説、でしかなかった。
魔物がマナの調整役を担っているのではないか、とおもいついたのは。
「えっと…リヒターさんは何の専門、なんですか?」
とにかく、エミルからしてみれば話題をかえたい。
アステルが精霊を専門にしている、というのはよくわかった。
というかそもそも資料もほとんどろくにない状態で、
あのときですら、ミトス達ですらルーメンからきいて、自らの元にやってきたのに。
自力の考えだけでかの地にまで彼らはたどり着いた。
もっとも、アクアの案内があってこそあの地にまでやってきたのではあろうが。
「リヒターは歴史学研究室で衰退世界を専門にしているのよ」
そんなエミルの問いかけに答えるかのように、リリーナが返事をかえしてくる。
「マナを制御するものは世界を制す。とはよくいったものですよね」
アステルがしみじみとそんなことをいっているが。
「とりあえず、僕があやしい、とおもっているのは、異界の扉、なんですよね。
シルヴァラント側にて世界再生が行われる、といわれていた時期。
かの地から不思議な光がとびたった、という目撃情報もありまして。
しかも、今、何もなかった不毛の大地でしかなかたはずのそこは、短期間にもかかわらず、
木々がおいしげる、ちょっとした原生林のごとく島全体が木々に覆われてしまっていますし」
それこそ本来ならばありえない。
たかが数カ月で一気に木々が成長する、など。
「木々が成長って……」
「…まるで、ハイマ、だな」
ジーニアスとロイドの脳裏に浮かんだのは、赤茶色の土でしかなかったはずのかの地が、
次に訪れたときは緑豊かな大地と変化していたあのときのこと。
…たかがあの程度のマナの解放で一気に木々が成長するとは、さすがの我もおもわなかったからな。
ロイド達が想い浮かべたのがかの地であることをさっし、思わずエミルはかるくため息をついてしまう。
本当にどこまでマナが涸渇していたのだろうか。
たかがあの程度のマナの解放でああもあっさりと草木が育つ、など。
それはまあ、かの地、異界の扉とよばれし、
ギンヌンガ・ガップへの出入り口にあたるかの扉。
あの地があるあの場所でもにたようなものではあるが。
なぜに自分が外にでたときに降り注いだあの程度のマナだけで、
ああもいともあっさりと、木々が生い茂る結果となってしまったのであろうか。
そんなジーニアスとロイドの呟きをうけ、
「ほう。シルヴァラントでもそのような現象が?」
どうやらその台詞に思うところがあったのか、
リヒターがづいっと顔を前につきだし問いかけてくる。
彼からしてみればシルヴァラント側、すなわち衰退世界の情報はほとんどなかった。
そこにそこからやってきた者たちがいる、ときけば。
自身の研究がより発展するかもしれない、という思いがあるのもまた事実。
「とにかく。僕はこの急成長した木々のこともありますし。
異界の扉、といわれている所があやしい、とおもっているんですけど。
ちょうどそんなとき、国から命令が下りまして……」
「つまり、一石二鳥ってか」
しいなが首をすくめつついってくる。
たしかに、そこに向かおうとおもっていたのならば。
そこに向かうことにきめている自分達のもとにいけ、というのは、
彼ら研究者からしてみれば、いい研究材料の一つであろう。
「そういえば、アイフリードさんの船の上で精霊ラタトスクに仕えてるとかいう、
八体の紋様みせてもらったね~。ロイド」
「そういやそう、だな。…あ、そういえばわすれてた」
「?」
「あいつから、アイシャに手紙を渡してほしいってまた預かってたんだった」
アイシャから預かっていた手紙をアイフリードに手渡しはしたが、
その返事として再び手紙を預かっていたことを今さらながらにロイドが思いだしいってくる。
そんなロイド達の台詞にエミルは首をかしげるしかない。
エミルが知らない、ということは、
おそらくは、ロイド達がパルマコスタにやってくる前の出来事、なのであろう。
どうやらエミルが彼らと出会うまえに何かがあった、らしい。
「そんなものがあるんですか?!興味深いです!
ぜひともみてみたいですね!八、という数値はこちらの研究結果にも一致しています。
そもそも、精霊ラタトスクはセンチュリオンという八体の水や火、そして風。
ともかく、それぞれの属性を司る部下をもち、彼らが世界にマナを運んでいたらしいんです」
しきりに王家の許可をえて、エルフの里にでむきその事実はアステルは確認済み。
もっとも、エルフ達はそれ以上のことをアステルにはおしえてくれなかったが。
おしえた、というか沈黙は肯定、ととらえ、アステルが納得しているに他ならないのだが。
「元々、この可能性にきづいて、僕はリヒターを巻き込んで、
フィールドワークに出かけようとおもってたんですよね。
そんな時、国からのこの命令で、これだ!とおもったんですよ。
ということは、国からの援助で、しかもシルヴァラントの人々?ですか?
つまりあなた方の衰退世界にくらすものの意見もきける!
これはもう立候補する以外にない!と!」
ぐっと力をこめて力説するアステルの瞳はきらきらと輝いている。
というか、そんな理由でこの旅に参加をきめたのか。
この人間は。
…どうも、かつてあの千年の間にて、
リヒターから聞かされていたアステル像とかなり違うような気がするのだが?
リヒターが語るアステル像と何かが違う。
それが何なのかラタトスクにはわからないが。
ゆえにエミルは思わず無意識のうちにため息をその場にてついていたりする。
そのため息の意味はロイド達からしてみれば、
この人もリフィルさんと同じ人種に近いのかも、
とおもっているため息、とみられていたりする。
確かにある意味でリフィルとアステルは同じ、といえよう。
研究に没頭してゆく、という点においてはなおさらに。
…もっとも、リヒターとリフィルの共通点もありはするが。
「…センチュリオン…ね」
もし、もしもであるが。
あの魔物でも、精霊でもない、不思議なマナをもつ、あのアクアとかいっていた少女。
そして、犬のような猫のような何か達がそれだ、とするのならば。
そんな彼らが様づけしているエミルとは。
エミルは彼らを家族だ、といっていた。
魔物の王だ、という精霊ラタトスク。
そして魔物を使役するエミルの存在。
そして、パルマコスタでみたエミルがもっていた、不思議な小枝。
その枝からたしかに膨大なマナが注がれ、
クララが元に戻ったのをリフィルは目の当たりにしている。
あのとき、エミルはこれは自分用だから、そういっていた。
一方で、ミトスは何ともいえない表情を浮かべていたりする。
ラタトスクに関する文献は、そこにたどりつく人間がでないように、
かたっぱしから破棄したはず、なのに。
まだテセアラにのこっていたのか、という思いがどうしてもつよい。
そもそも、ラタトスクの場所にたどりつき、自分が行っていること。
それを精霊に伝えられては面倒、という思いもあった。
しかし、しかしである。
自分達ですら精霊達、
そしてセンチュリオン当事者から聞かされてたどりついたというのに、
目の前のこのアステル、という人間は自力でそこまでたどりついている。
しかも、かの場所が入口かもしれない、という予測すらたてて。
危険でもあるが、逆にその知識はクルシスにほしいかもしれない。
今、クルシスにいるドワーフ達ですらその知識に陰りがみえている。
まともな要の紋をつくれるドワーフも今やアルテスタ一人のみ。
そんな中で自力で、いくら文献がのこっていた、とはいえ。
そこまでたどり着けるその知能。
五聖刃も二人かけた今、人材不足なのは否めない。
それにここまで地上のマナが異様に安定しているのならば、
万が一、契約の資格をもちしみずほの民が精霊達八大と契約を交わしたとして、
精霊の楔が抜けてしまったとしても、大いなる実りがどちらかにひきずりこまれる。
そんなことがおこりえるのだろうか、という思いもある。
かの精霊の楔は二つの空間の間においている大いなる実りを安定させるもの。
そうでなければ、マナのすくないほうに実りはひきずられてしまい、
やがて大いなる実りを巻き込んで互いの世界が消滅してしまう。
それがかつて、この仕組みを考えだしたとき、
彗星内部にあった設備において、コンピューターがはじき出した答え。
おそらくかのコンビューター類はかつて、あの彗星にて、
この大地におりたった、という伝承からして、
大地におりたった先祖たるエルフ達が住んでいた名残の品、なのであろう。
そうミトスとしては予測をつけている。
確かにその通り、ではあるが。
もっとも、そこに多少面倒だから、という理由で機械まかせにしていたラタトスクの意思。
そういったものがあったということまではさすがのミトスも気づいてはいないらしい。
アステルが何やら変なところで力説しているのをききつつも、
「異界の扉…といえば、かの地において教皇騎士団の姿が目撃された。という噂もあるんですよ。
それで国は教皇を探すべく兵士を派遣する段取りをしているとか」
いまだに国をあげて、手配をかけたはずの教皇と、その手足となりえている教皇騎士団。
彼らの行方はいまだにつかめていない。
教皇の故郷だ、というオゼットの村は、すでに壊滅状態。
そもそも生き残りはといえば、たまたまあの日、村をでていた一部のものしかいない状況。
どうやらあの日、たまたまアルタミラのほうに遊びにいっていたものがいたらしく、
そのものはかの惨劇?から免れてはいるらしいが。
「騎士団、が?それはまことか?」
リリーナが思いだしたようにいえば、その台詞にリーガルがすかさず反応する。
教皇とヴァーリ、そしてロディルは繋がっていた。
「今はかの地には潜伏場所は多々とあるゆえに。
島への出入りがかなり制限されているらしいんです。
そのために、島に入るための許可証なるものをいただいてきましたわ」
島に教皇達が潜んでいるかもしれない。
その可能性にたどりついたテセアラ王家は、島にはいるにあたり、
許可証なるものをもっていないものは島に近づけることなかれ。
という命をだしている。
ゆえに、海軍が島の付近を常にうろうろとしているらしい。
だからか、ともおもう。
ここ最近、なぜかあの地に軍艦らしきものがよくよくみうけられているな、とはおもっていたが。
実害がないのでほうっていたが。
あまりにひどいようならば、かの地をそれこそかつてのように。
特殊な障壁で覆うことも考えたほうがよさそうである。
それこそ常に竜巻などを発生させておけば、ヒトは簡単には出入り不可能となるであろう。
「騎士団…ヴァーリもそこにいるんでしょうか?」
「それはわからぬ。わからぬが……ほうっておくことはできそうにないな」
彼らを野放しにしていれば、いつまた犠牲者がでてくるかわからない。
「それで、えっと、会長」
「リーガルでかまわぬ」
「あ。はい。リーガルさん。そちらの船はいつ準備ができますか?」
「いつでも出港は問題ない、という報告だ」
本当ならば、リーガルは雪まつりの開催中、この場にのこり
いろいろと指示を出してほしいのがレザレノの会社としての思惑なれど、
しかし、どうやらリーガルの旅は神子が一緒であることから何かある、
とおもっていたら案の定というべきか。
国からのとある密命、すなわち重要機密にかかわっている節がある。
だからこそ、レザレノのフラノール使者の責任者は強くいえない。
「…また、船の旅、なのね。でも、まああの船ならば揺れないから気にしなければいいわね」
リフィルが何やらぶつぶつと独り言をいいだしているが。
「そういえば、リフィルさんといいましたよね?
あなたはシルヴァラントの学者だ、とリリーナからききました。
シルヴァラントの学者としての意見をいろいろときいてもいいですか?」
その台詞にぱっと顔をあげ、
「うむ。それはこちらからもお願いしたいところだ。
ぜひともこちら側の研究者達の話しもきいてみたい、とはおもっていたからな」
いつのまにかまたまた遺跡モードに変化しているらしきリフィルの台詞。
「?えっと…リフィルさん?」
ミトスはこんなリフィルの変化を改めてまのあたりにし、
困惑したような表情浮かべているが。
「ああっ。み、ミトスにまでばれかけてるぅぅっ」
がくり、と頭わかかえ、机につっぷすジーニアスに、
「…あきらめろ。遅かれはやかれ、絶対に気づかれることなんだからな」
「うう……」
どこか諦めたように、そんなジーニアスをなだめるようにいっているロイド。
「…たしかに。リフィルさんの変化は初めてみたら驚くよねぇ」
「まったくだよ」
そんな二人の会話をききつつ、マルタがぽそり、とつぶやき、
しいなもまたしみじみとうなづいていたりするが。
「それで?出発するとして、いつ、出発するんですか?」
こういう場合は、センチュリオンや自分のこと、すなわち精霊ラタトスクに関して、
あまり深く追求されずに話題がかわったことを喜ぶべきなのか。
ともあれ、このまま話題がそれていくのはエミルとしても好都合。
だからこそあえて先ほどの話題にふれることなく、無難なといかけをするエミル。
「うむ。準備ができ次第の出発でよかろう。
おそらくは、何があるかわからぬからな。いろいろと準備は必要だろうしな」
異界の扉、とよばれし場所で何があるかわからない。
すくなくとも、その扉を調べたあと、精霊の神殿にでむき、
再び精霊と契約をする必要がある。
とするならば、
「あ、ブルーキャンドルはもってきてますから。闇の神殿も問題ないですよ」
…どうやら、かの神殿にでむくにあたり、そのあたりはぬかりはない、らしい。
リーガルのいわんとするところを察したのか、にこやかにアステルがいってくる。
「では、今日のところは自由行動にして。出発は明日、にしましょう。
今からここを出発したとしても、港につくまでに夜になってしまうわ」
下手をすれば雪のど真ん中で一夜を過ごすことになってしまう。
やってきたときは乗り物があったので問題はなかったが。
リフィルの意見に反対するものもどうやらいないらしく、
結局のところ、今日はこれから自由行動、そして旅の準備をするように。
という意見がだされたのみで、ひとまずこの場は解散、ということに。
~スキット・エミルとアステル~
アステル「しかし、本当によくにてるよね。ねね。兄弟とかいるとかきいたことは?」
まじまじとエミルをみつつ、アステルがそんなことをきいてくる。
エミル「え、えっと。すいません。僕にはそういったものはいないので……」
ロイド「そういやお前。前、親もいないっていってたよな」
ジーニアス「ロイド!」
さらり、という内容ではない。
絶対に。
ゆえにすかさずジーニアスがそんなロイドをたしなめる。
アステル「じゃあさ。エミルって、今、なんさいなの?僕は十六だけど」
エミル「え、えっと。すいません、それもよくは……」
この地に降り立ってから、というのならばかるく万はこえている。
…まあ、かつての記憶にある時間帯は削除するとしても。
ついでに、惑星デリス・カーラーンから移動してきた時間も加えれば、
それこそ億どころではない。
さらにいうならば、何もなかった空間に世界、すなわち惑星類を産みだしていった。
そのころから考えれば…それこそもう数えるのもばからしい。
アステル「ええ!?」
ロイド「…そういや、エミル、お前歳もわからないとかいってたよな」
ジーニアス「いってたね。前」
ロイド「よし!なら、エミル。お前は今日から俺達と同い年だ!」
エミル「・・・・・・・・・・は?」
なぜそんな話題になるのだろうか。
ゆえに、おもわず、問いかけるエミルは間違っていないであろう。
ミトス「え、えっと?少しいい?何でそうなるの?」
会話をきいていたミトスもまた思うところがあるのか、
目をぱちくりさせながらも、ロイドにとといかける。
ロイド「だって、アステル、お前も十六なんだろ?で、俺もコレットも十六。
しいなは十九でゼロスは二十二だけど。エミルは二十歳こえてるようにはみえないし。
だったら、俺達と一緒でいいじゃないか、な!」
エミル「え?え?」
だからなぜ、そんな結論にいたるんだ?このロイドは?
ゆえにエミルとしても戸惑わずにはいられない。
ミトス「…どういう原理でそんな考えにいきつくのさ?」
このロイドって、本当にクラトスの息子なのか?
思考状態がさすがのミトスも理解できないらしく、戸惑いを隠しきれない。
そもそも、エミルも理解できず、ただひたすらに首をかしげていたりする。
ロイド「よっし!じゃあ、エミルの誕生日きめないとな!」
コレット「わからないっていってたし。ならエミルと出会った日とかは?」
マルタ「え?エミルの誕生日ってわからないの?
じゃあ、エミルが私を助けてくれた記念すべき日を記念日に!」
…何だかエミルの意見を無視してどんどん話しがまとまっていっている。
何だろう。
この無駄につかれてくるようなこの感覚は。
思わずエミルが遠い目をしているのにきづいたのは、影の中にいるセンチュリオン達のみ。
ジーニアス「…そういえば、
マルタってエミルに男たちに絡まれてるところを助けられたんだったっけ?」
マルタ「そう!あのときのエミル、かっこよかったなぁ!」
エミル「・・・・・・・・・・・・・・・・(やはり助けたのは失敗だったか?)」
コレット「でも、あれ?だとしたら、それをいうなら、エミルが人助けをしたのは。
私たちがパルマコスタでショコラさんのお母さんをたすけたときだよね。ね。ロイド」
ロイド「そういえば、あの処刑場でエミルと初めてであったんだもんなぁ。
まさか牧場でまた出会うとはおもわなかったけど」
エミル「そ、そうだね」
というか、俺としてはまさかあそこでお前達と出会うとは、という思いの方が強かったが。
エミルはそうはおもうがそれは口にはださない。
そもそもエミルがあのときからすでに彼らを知っている、
そのこと自体が本来ならばありえないこと、なのだから。
アステル「よくわかんないけど。なら、僕と同じ誕生日にしよう!」
一同『・・・・・・・・・・・は?』
アステル「ここまでそっくりだと、絶対エミルと僕って双子で通用するとおもうんだよね。
うん、そうしよう!僕、家族ってほしかったんだよね!
エミル!僕のこと、アステルお兄ちゃんってよんでいいからね!」
エミル「え、えっと…何でそうなる…んでしょうか?…リヒターさ~ん……」
リヒター「……あきらめろ。エミルといったな。
アステルは思い込んだら一直線。何をされようが意見を曲げないぞ。
実際この俺もかなり邪険にしまくっていたのに、こいつにつきまとわれて、
結局きづいたら共同研究なんてものをしているハメになってるからな……」
遠い目でいうような台詞ではないとおもうぞ。
おい。
というか、お前、あのときですらそんな説明してなかったよな!?
思わず内心、リヒターに対し、突っ込みをいれるラタトスクだが。
そんなラタトスクの心情は当然誰にもわからない。
アステル「僕より年下の研究者ってなかなかいなくてね。お兄ちゃってよんで、さあ!」
ジーニアス「…なんか、アステルさん、期待をこめて目がきらきら、してるね」
ロイド「…だな」
エミル「うう。二人とも、そんなこといってないで、アステルさんを説得してよぉ~」
ジーニアス「いいじゃん。エミル、よんであげれば?」
ロイド「そうそう」
エミル「…じゃあ、ロイド達がよべば?」
ロイド「お。それいいかも」
コレット「え?ロイドって、このアステルさんと兄弟だったの?しらなかった~」
ジーニアス&ミトス「「いや、違うから」」
思わず素でつっこみをいれたあと、自分のことばにきづき、
はっと口元に手をあてているトミスの姿。
どうやら無意識のうちに突っ込みをいれてしまっていたらしい。
リヒター「…あきらめて呼んでやったほうがいいぞ?
でないとこいつは下手をすれば、寝ているときですら。
寝ている耳元でいつのまにか寝室にまでしのびこんできては、
延々といろいろとしてくるからな」
その色々って何だ!?
というか、リヒター、お前、あの千年の間でそんなこと一言もいってなかったぞ!
そこまで思い、ふとそういえば、と思いだす。
そういえば、リヒターはアステルのことをふと話すとき、
どこか虚無な目をしているときが時折なかったか、と。
自分がそんな呼び方をすれば、センチュリオン達だけでなく、
精霊達ですら目をまるくする。
その自覚があるがゆえ、エミルからしてみれば何ともいえない。
そもそも、兄、とよばれるとすれば遥かに年上である自分のほう、であろうに。
エミル「…は~……」
マルタ「憂いをこめたエミルもまたすてき!きゃっ!」
アステル「マルタさんだったよね?エミルとはお付き合いを?」
マルタ「はい!」
エミル「?」
たしかに一緒に旅をしているが、なぜに付き合いというような台詞がでてくるのやら。
そういえば、前のときもしいな達にそんなようなことをいわれたような気がする。
記憶を失っていたあのとき、女の子との付き合いがわからない、といっていたが。
裏をかえせば人間達との付き合い方がわかっていなかったのもまた事実。
アステル「じゃあ、マルタさんはアステル義兄さんとよんでくれればそれで!」
マルタ「はい!アステルお義兄さん!」
エミル「えっと?なんか二人してなんで呼び方で盛り上がってない?あれ?」
ミトス「…エミル。僕がいうのは何かもしれないけど。…面倒な子に好かれてるんだね…」
思わず素で同情してしまう。
エミルの意見などお構いなしな様子のこの少女。
相手の気持ちなどおかまいなし。
こういう女性はあまりミトスは好きではない。
もっとも、表向き上手に付き合う方法は、嫌でもミトスは磨かれはしたが。
エミル「まあ、マルタよりもアステルさんのほうが年上なのだから、
たしかに、兄、という呼び方は間違ってない、のかな?」
実際、マルタは今、十四歳。
すなわち、十六であるアステルより年下。
エミル「でも、それだと。マルタって、ロイドのこともお兄さんってよばないと」
マルタ「え~?ロイドはなんか、お兄さんって感じじゃないよ」
ロイド「どういう意味だ!」
コレット「ええ!?マルタってロイドの妹だったの!?」
エミル&ロイド&ミトス&ジーニアス「「「「いや、違うから」」」」
コレット「でもいいなぁ。姉妹、兄弟、かぁ。私もほしかったなぁ。
私、一人っ子だし。親戚にもおばあさま達しかあったことないし」
どこかにいるであろう親戚ともコレットはあったことがない。
ロイド「俺なんか、そんなの一人もしらないぞ?
そもそも、母さんは死んでるし。父さんは…生きていればいいなぁ。とはおもうけど」
ミトス「・・・・・・・・・・・・・(クラトスは伝えていないのか。父親だと)」
ジーニアス「…いたとしても。姉さんみたいに炊事洗濯、料理はダメだったりしたら。
それこそ死ぬ目をみるよ!?僕が姉さんの料理でどれだけ死にかけたかっ!」
ジーニアスの言葉には実感がこもっている。
ロイド「せ、先生の料理、はなぁ」
コレット「なんか独創的、だよね!」
ジーニアス「…そもそも、あのクラトスさんですら、姉さんの料理食べたあと。
必ず、アンチドートやら、ファーストエイドやらかけてたしね……」
それこそ、体が麻痺するような料理すらあったがゆえのジーニアスの台詞。
…なぜにあそこまで壊滅的になるのだろうか。
それがエミルからしてみれても理解不能。
ミトス「・・・・・・・(クラトス、苦労したんだな。姉様も料理苦手だったからなぁ)」
ミトスの脳裏にうかびしは、姉マーテルの料理。
マーテルもまた壊滅的に料理がダメだった。
だから、ミトスが自然と料理が上手になっていっているのだが。
そのあたりもジーニアスとミトスは似ているといえる。
ロイド「それを思えば、エミルが合流してくれてたすかったなぁ。
エミルが料理をしたい、といいだしてくれて、先生の手料理がなくなったし」
ジーニアス「うん。それは同感」
エミル「えっと、料理はその趣味だし。やっぱりつくって誰かにおいしい。
ってたべてもらえたらそのほうがいいとおもったし」
それは嘘ではない。
もっとも、あのとき、リフィルの料理の腕をしっていたから、ではあるが。
そういえば、ともおもう。
リヒターが合流してくるのならば、絶対に、
リフィル、そしてリヒターには料理をさせるわけにはいかない、と。
そもそも、あのとき、リヒターの料理をたべて、コアにもどりかけた記憶がある。
本当にそれだけは洒落にならない。
ある意味で、リヒターとリフィルの料理の腕はどっこいどっこいなのではなかろうか。
…どちらの料理が上手か、とかそんなことをロイド達が言いださないようにしないとな。
そう一人内心固く決意する。
もしもそうなった場合、こっそりとその場は脱出しよう。
エミルがそんなことを思っている中。
アステル「で、エミルくんも僕のこと、兄さんってよんでね!
僕も弟のことをくんづけするのおかしいから呼び捨てするから!」
エミル「・・・・・・・・・・は、はは……」
諦めてなかったのか。
きっぱりいいきるアステルの台詞にエミルとしては脱力せざるを…得ない。
pixv投稿日:2014年2月8日某日(Hp編集:2018年4月22日(日)
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あとがきもどき:
~雪と氷の宿泊施設・参考資料~
氷と雪で作られたアイスホテル(inスウェーデン←北海道のは閉鎖中)
雪と氷でできたアイスホテル棟
通常の2人用のお部屋、ファミリー、グループ向けのお部屋、
そして素晴らしい氷の彫刻で飾られたアートスイートのお部屋が用意
氷のホテル棟、暖かいホテル棟の代表的なルームタイプとにわかれているらしい。
○アイススイート
/ アートスイート
室内の温度は-5℃前後に保たれており、
外の温度に比べれば、意外と寒くないかも。
お部屋には雪と氷でできたベッドの上にトナカイの毛皮が敷かれ、
その上に寒冷地対応の寝袋(-15℃位まで対応)に入っての就寝。
スイートとデザイナーによって作られたアートスイートの2種類。
○スノールーム
シンプルですがゆったりとした雪のお部屋。
スノールームは内の温度は-5℃前後に保たれており、
思ったほど寒くないかも。
氷と雪で作られたベットの上にはトナカイの毛皮が敷かれ、
寒冷地対応の寝袋(-15℃位まで対応)に入っての就寝。
参考HP
○○○○://www.nettravel-jp.com/hd/htl/pickuphtls/Icehotel.html
興味あるひとはぜひともくぐってください!とっても幻想的で綺麗ですよーv
フラノールにもだからこれあってもいいじゃないv(マテ
写真もあるのでとっても綺麗ですよ。ええ…いってみたいなぁ(ぽそり…
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