蒼き水晶の歌姫  第19話



キュィィィィン・・・・。
静かに飛行機が空港にと降り立つ。
ざわざわざわ。
「ずいぶんと人手が多いのね。」
空港に降り立ちそんなことをもらしている由香子。
「というか、今回、百合香が初めて海外撮影をする。というのでかなりの数の追っかけもいるみたいよ。ほら。」
などといいつつ空港にいる数個の団体を指差している悦子。
そこには。
「はい。こちらは百合香ちゃん撮影見学ツアーです。皆さん、忘れものはないですかぁ?」
『はーい!』
などといっている旅行客の姿が見て取れる。
「・・・・・・・げ……。」
さすがに慣れてきている・・・とはいえ。
こうまであからさまに追っかけのファンたちを目の当たりにすると。
思わず引いてしまうのは・・・仕方のないことかもしれない。
くすくすくす。
「ま、仕方ないわよ。何しろ今まで由香子、海外撮影なんてしなかったでしょ?」
くすくす笑っていう洋子のその言葉に。
「だって海外といったらパスポートが必要だし。私、正体というか本名、教える気・・・ないし。」
「・・・・・ばれたら大変でしょうね。」
「聖凰学園世界的に有名になるんじゃない?」
「というか勉強どころじゃなくなるとおもうなぁ。」
由香子の言葉にうんうんとうなづいている悦子と洋子。
確かに、すでにデビューして一年以上がたつというのに。
いまだに謎のアイドル歌手として人気である星空百合香。
本名、そのほか一切不明。
唯一わかっているのは年齢も・・・それも定かではなく。
そして出身地もただのうわさのみで蓬莱町の出身ではないか?
といわれているという状態の、まさに謎に包まれているアイドル歌手。
「・・・・・やめてよ。本当になりそうじゃないのよ……。
  私だって好きで歌手やってるわけじゃないんだし。そうなったら私やめるし。歌手。」
そういいつつ頭を抑える由香子に。
「それだけは絶対にだめ!」
「そんなのは絶対に許さないから!」
二人同時にその由香子の台詞に待ったをかける洋子と悦子。
「え〜……。でもそもそも私は歌手になるつもりでなったわけじゃなくて。」
そもそもほとんどだまされというかハメラレタといっても過言ではない。
由香子・・否、百合香のデビューは。
「でもいつかは歌手、私…やめないと…とは思ってるんだけどなぁ。」
ぼつりとつぶやく由香子。
そう。
いつまでも歌手をしているわけにはいかない理由が彼女にはある。
今はまだいい。
だけども。
まず絶対に怪しまれ始めるであろう。
それこそ時間がたつにつれて、年月が経過するにしたがって。
不思議な魅力もまた彼女が世界的に人気が出ているひとつではあるが。
『それは絶対にだめ!』
「・・・・・・あぅ……」
二人同時にはっきり言われて思わず口ごもる由香子。
そんなほのぼのと会話をしている三人ではあるが。
まあこんな広い空港内部。
たかが観光旅行客の言葉など誰も気に留めるはずもなく。
まあ聞いていてもまさかこの由香子があの百合香だとは。
まさか誰も気づかないだろうが。
どうしてたかが眼鏡をかけてそれでいて髪型を変えているだけだというのに。
・・・・・まったく気づかれないほうが不思議ではある。
「そ・・・それはともかくとして。先にホテルに入る?」
とりあえず話題を変えようと話をふる由香子。
「そうね。とりあえず荷物を置いてこないと。あ、そういえば。由香、国際免許もってるんだっけ?」
「うん。ついでに車ももってきたから。」
国際免許とはいわゆる海外でも乗り物の運転をしてもよいという公式的な免許のこと。
ちなみにこれは15歳から所得することはできるが。
その所得はかなり難問とされており、いまだに数える人しかこの免許は持っていない。
「・・・・・それ、乗ってたら目立たない?」
「そう?私の町ではほとんどこれにのってるけど?」
きょとんとしつつ小さなカプセルを取り出していっている由香子。
「・・・由香子の町はそうかもしれないけど…」
何しろカプセル式の様々な品物を開発&発売したのはほかならぬ由香子の故郷である、蓬莱町のとある企業。
だがしかし。
あまりの機能とそしてまた、他の品物などに考慮され。
一般市場ではかなり高値で取引なされているがために。
はっきりいって一般市民では太刀打ちできない品物となっている。
簡単に説明すれば由香子が今もっている小さな小指程度のカプセルの中には。
俗にいう車がはいっている。
だがしかし、市場の車などがガソリンなどで動くというのとはまったく異なり。
蓬莱町の企業が開発したこれは太陽エネルギーで動くというもの。
しかも、変形自由。
・・・・つまりは空をも飛べるのである・・・・これは。
さらにいうならば水上運行も可能・・・ということである。
見た目は普通の車と変わらないのでまずすぐにはわからないのだが。
「ま・・・まあでも確かに足はあったほうがいいけどね。」
そんなことをいう悦子に。
「でしょ?とりあえず先にホテルに向けて出発しない?」
「そ〜ね。」
「そうしますか。」
などといった会話をしつつ、荷物をコンベアーから受け取り。
そのまま入国手続きをする三人の姿。



今はちょうど夏休みに学校がたいていの国がはいっているためか。
かなり家族連れなどの姿が目立つ。
それでなくても、ここアテナは世界的にも遺跡などが有名で。
観光名所のひとつとなっている。
「じゃ、はじめはどこにいく?」
空港を後にし、そのまま由香子が用意していたカプセルの中にあった車に乗り込み。
移動を開始する彼女たち三人。
「えっと、とりあえず私、ここにいきたい!」
ガイドブックをそういいつつ指し示した場所は。
「なるほど。んじゃ、そこに決定ね。」
そこはかつての文明の名残か。
石柱などが立ち並ぶとある場所。
ここアテナの観光名所のひとつである。
そこにかつては都市があったとかまたは神殿があったとかいわれているが、真実は定かではない。
洋子の意見に従って。
人里はなれた場所にあるその遺跡にと向かってゆく由香子、悦子、洋子。
この三人。

「しっかしここってやっぱり映像とかで見るよりすごいわよね。」
目的地にとたどり着き感嘆の声を上げている悦子と洋子。
「昔の人ってこんな石とかどうやって運んだんだろ?」
「かなりの人力を使ったって史実ではなってるけどね。」
くす。
そんな二人の会話に思わず笑みを漏らす。
それはただ単に何もしらない現代人がそう考えただけのこと。
実際はかなり簡単。
・・・・何しろこの文明が栄えていた当時。
人々は自然と共存していたのだから。
緩やかな山にそうように立てられている白い柱。
そこにかつては何かの建物があったという名残。
正確に計算された用水路や階段などといった代物は。
いまだに現代の歴史学者たちの間で論点が分かれているところ。
計算する技術があったのだとか。
または偶然だとか。
「・・・・あの当時、まさか人々が宇宙に進出できる力をもっていた。なんて知ったら・・・驚くでしょうね。」
くすくすくす。
一人でそんなことを小さくつぶやき笑みを漏らしている由香子。
この文明が滅んだのは。
それは・・・。
「・・・・・行き過ぎた力は・・・この星を滅ぼす・・・・か。」
今の文明がかつての文明のような道を歩んでいることも彼女にとっては不安のひとつ。
今までに自らの手でいったい幾度ともなく文明を滅ぼしたであろうか。
そのたびにやるせない思いを抱きつつも。
だがそうしなければ。
間違いなくこの星は・・・・行き過ぎた文明人の手により・・・・滅んでいた。
中には自らの失敗で滅んだ文明もあったりはしたが。
今この世界で知られている文明はほんの一部。
この星の歴史は・・・それよりもかなり長い。


ざわり。
ざわざわざわ。
目を閉じればいつでもかつての光景が目に浮かぶ。
それは長い時間の中では一時の夢。
夢は現実となりまた目が覚めればすべてが幻。
この星がある限り。
命はつながる。
そして星がある限り自らは死ぬことはない。


「ねえねえ!頂上にまでいってみよう!」
「あ、それいいね!」
などといいつつ横にてきゃいきゃいとはしゃいでいる悦子と洋子。
その声にはっとわれにと戻る。
「それもそうね。んじゃ、いきましょうか。」
「賛成!」
三人の意見が一致し。
そのまま遺跡の頂上にと向かって歩いてゆく。



「うわぁ。」
頂上から見える景色はまた格別。
そう観光ガイドに書かれているとおり。
少し小高い丘の上。
そこにはかつて神殿があった名残なのか。
各場所にて白い石柱の姿が見て取れる。
そこから見える景色はちょうど今は夕焼けがきれいに見える。
白い石の間から景色が見える様はまるで絵そのもの。
「夕焼けはいつも変わらないんだけどね。」
ぽつりとつぶやく由香子のその言葉に。
「そうもいえないんだけどね……。今環境破壊とかいろいろと問題になってるし。」
綺麗な自然の景色を見るたびに思い出されるのは各地で起こっている自然破壊。
ここ最近はその破壊は何らかの影響で収まっているらしいが。
「・・・人って自らの住む地をいつの時代も汚すからね……。」
それはいつの時代においてもどんな進化を遂げたとしても。
ぼつりとつぶやく由香子のその言葉は。
「由香子、まるで見てきたようにいうのね。でも・・・そうよね。」
確かに由香子の言うとおり。
人間は罪深い。
それはいわれなくてもわかっている。
このようにすばらしい自然に触れれば触れるほど。
どこかで人がしている罪深いことを認識する。
「・・・・そうね。」
そんな会話をしつつ、それでいて全員で夕焼けを眺めてしばらくそのままたたずむ彼女たち。


気づけば空に一番星が輝き始め。
「あ、もう夜になるよ?」
「あ、ついつい夕焼けに見とれてた。」
「あ、本当だ。」
気づけばすでに回りは暗くなり始め。
かなりいた観光客などももうまばら。
今いるのは夜の景色を写真に撮ろうとしている人々のみ。
「暗くなる前にホテルに戻ろうか?」
そういう由香子のその言葉に。
「でも、今から戻ったら・・・かなり時間かからない?」
ここにくるまでに二時間以上をかけて道路を進んできた道のりを考え。
そんなことをいっている悦子。
「あ、大丈夫よ。飛んでいけば早いから。」
・・・・・・・・・・
「・・・いや、飛んでいけばって……」
「・・・そーいえば由香子の車…って、空も飛べるあれだっけ……」
かなりのお金持ちかまたは身分がある人ですら持っているかどうか。
といわれているそれは。
画期的な発明なのではあるが。
いまだにその仕組みがわからずに世界中の科学者たちの頭を悩ませていたりする品物。
それゆえにその品を作れるのはこの惑星上でただ一社のみ。
まあ、まだ大量生産をしていないのは。
ひとえにそれが大量に出回り、万が一犯罪などに使われるのを考慮してのこと。
それでも蓬莱町の人々は普通車として扱っているのだが。
「そ。それじゃ、いきましょv夜空の散歩をかねて!」
にこやかにいう由香子の声にくすりと笑みを浮かべ。
「ま、それもいっか。」
「それに早く戻らないと明日は由香子、撮影初日だもんね。」
そんなことをいいつつ階段を下りていき。
そしてちょっとした広場にてカプセルにと戻していた車を出現させる由香子。
そのまま三人は車に乗り込む。
「さ、んじゃ、出発!」
その声とともに。
悦子たちからはわからないが何かの動作を由香子がしたかと思うと。
ヴン!
ゆっくりと浮かんでゆく彼女たちが乗っている車。
タイヤはその車体の下にと収まりゆく。
ゆっくりと空を浮かんでゆく元車。
今の姿は見た目はほとんどまるで飛行機のごとくに外見の様子も変わっていたりする。

「・・・・しっかし…本当に飛ぶんだ……この車……」
「・・・・ま…まああの町…何しろ謎に満ちてるから…」
などと窓から外を眺めて眼下に地面が見えているのをみつつ。
そんな会話をしている二人の姿が。
「そんなに謎でもないんだけどね。」
そんな二人にそんなことをいっている由香子。
『それは絶対にない!』
きっぱりとそういいきる悦子たち。
何しろ由香子の出身地である蓬莱町は。
はっきりいって謎だらけ。
何しろ衛星にすら映らない町なのだから。


そんな会話をしつつ。
空を飛んでいるがゆえに障害物なども何もなく。
ただ一直線にとホテルがある場所にむかってと進んでゆく。


彼女たちがホテルにと戻ったのは。
遺跡を出発してから三十分もたたないうちであった。


                                         −続くー


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  あとがきもどき:
       薫:さてさて。
         次回でようやく撮影開始v
         そろそろちらほらと由香子の正体にと触れてますけどね(笑)
         さって。
         問題・・・・テロ事件・・・・あるんだけど・・・・。
         ・・・・問題あるかなぁ?(汗)
         テロとは変えて、ちょっと何かの事件にするかなぁ(こらこらこら)
         ・・・・ま、んがえて見よう、うん(おーい・・・笑)
         それで二人が由香子に対して?と思うというきっかけになる。
         というところなんだけど。
         何はともあれ、それではまたv


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