蒼き水晶の歌姫 第15話
会場となっている講堂の前では。
悦子たちが用意していた百合香グッズなどの販売などもおこなわれ。
そしてまた。
会場の中に入れない人のために、備え付けられた簡易テレビが、
学園の広場にて巨大スクリーンにて映し出され。
そしてまた。
広いとはいえ、この学園の敷地内部にはすでに人が埋め尽くさんばかりに、押しかけていたりする。
ワーワーワー。
まさか、こんな普通の学園に。
しかも、結構そのコンサートチケットを手にいれるのすら難しい。
星空百合香のコンサートが、単なる学校の文化祭で見れるなどと、一体誰が想像できようか。
押しかけているファンから歓声が上がり。
ステージ上の百合香に声援が飛ぶ。
「えーと、では、これより流れを説明させていただきます。」
ピンホンパーン。
講堂の放送室より、学園内部に説明のアナウンスが流れ始める。
― これより、星空百合香、文化祭ファイナルコンサートを開催いたします。
その言葉とともに。
わっ!
人々の歓声があがり、作業をしていた生徒なども一斉に手をとめて。
スクリーンや学園のいたるところに設置されている画面にと釘付けになってゆく。
「それでは、しばらくみんな、私につきあってくれるかな?」
『オッケー!』
百合香の人気はこういった気安さなどにも影響しているのであるが。
マイクを振り上げてにっこりと笑う百合香のその言葉に。
会場中が一気に盛り上がる。
やがて。
会場の中に、スピーカーを通して音楽が流れ始める。
それまでざわめいていた会場と。
そして、学園内部が一気にと静まり返る。
ゆるやかな旋律の序奏が奏でられ。
そして。
ゆっくりとステージの中心に立ち尽くす百合香。
そっと両手でマイクを握る。
― 希望のその輝きは誰のため 命の輝きは誰のため 忘れないでいて
その輝きを 全ての輝きは慈しまれ 遥かな未来と過去より続く
永遠の回帰 忘れないでその輝きを 輝きはときにはつらく 時には悲しみ
その輝きをのりこえて 忘れないでその輝きは あなたたちに託されたメッセージ ―
ゆっくりとした旋律の中。
百合香の澄み切った声が響き渡る。
あれほど熱気にみちていたファンや生徒たちも。
歌が始まると同時にシンと静まり返っている。
百合香の歌は・・・どのようなものにしろ。
なぜか人々の心を捉えて・・・放さない。
噂では全て作詞から作曲まで百合香本人が作っているらしい。
それは噂でなくてファンの間ではすでに常識。
このように心に染み入る旋律のものもあれば。
何か心を駆り立てるような旋律の歌もあり。
そして・・また。
まるで全てを包み込み慈しむようなそんな旋律のものもある。
ゆるやかなそれでいて心に染み入る旋律とともに。
澄み切った百合香の歌声が・・静かに響き渡り。
しばし。
全ての人・・否、生き物たちは、その歌声にと魅了されてゆく。
一つの歌が終り。
次の歌にそのまま入る。
ここもメインの一つ。
ちゃ、ちゃ、チャv
旋律が代わり。
そして、ステージの下からドライアイスの煙が噴出し。
一瞬、百合香の姿を多い尽くす。
ファンの間でどうやってそんな早業を!?
といわれているそれ。
百合香のはや代わり・・・・。
普通、コンサートなどを行う歌手などは。
服装を変えるときなどには一度引っ込む。
だがしかし、百合香はそれをしない。
ほんの一瞬の姿を隠す煙とともに次に煙が退いたときには。
違う服装になっているのは。
すでに常識となっているから人間というものはなれというものは恐ろしい。
― ときめく心の旋律は あなたのための私のための それは誰にもわからない
宝石の小箱 ほらそこに あなたがもとめる宝石が 心の宝石
緑と大気につつまれて 心の奏でる宝石の小箱―
由香子の歌にあわせて。
会場が揺れる。
全員歌に聞きほれているので、未だに気付く人々は少ないが。
ざわっ・・・・。
歌が響いているそこ。
木々が・・・生長しているなどということは、未だにあまり気付く人はいない。
百合香の歌には全てにおいてとある力が含まれており。
それは、全てのものを浄化する力であったり。
または成長を促すものであったりとその効果は様々。
・・・未だにこの歌声が神秘的である。と気付いた各世界の科学者たちが。
百合香の歌声を分析などしていたりするが、未だにその正体は不明のまま。
百合香の歌を聴いて不死の病が治った・・という逸話は・・世界各地にあったりする。
それがよけにい百合香の神秘性を高めている原因でもあるのであるが。
先ほどとは違う、今度はまるで心が躍るような旋律とともに。
振り付けなどをこなしつつ、歌ってゆく百合香。
「・・・うーんvヤッパリ生は違うわよねぇ♡」
そんな様子をステージの端からみていっている悦子に。
「というか・・・わかんないわよね・・・・」
はっきりいって。
百合香・・・いや、由香子は。
学園内部でも・・・かなりの優等生。真面目でそして清楚。
・・・まさかそんな由香子が、アイドル歌手百合香本人であろうとは。
一体誰が想像できようか。
まあ、めがねを外せば似ている・・というくらいは分かるかもしれないが。
・・・・・まず、間違いなく。絶対に。
・・・・・・・・・同一人物などとは、すぐには思わないであろう。
そんな会話をしつつ、今目の前にいるのは、
クラスメートの由香子でなく、アイドル歌手の百合香となっているその姿をみつつ。
てきぱきと裏方の仕事をこなす悦子と洋子の姿が。
ステージの裏方で見受けられてゆく。
「えっと。サイン会はこの程度で・・・っと。」
コンサートの最中。
会場となっている講堂の外に、即席のテントをはり。
そこに机などを設置してゆくコンサートの実行委員でもある洋子たち。
「・・・・あれ?由香子は?」
ふと。
一人が由香子がいないのに気付いてそんなことをいっていたりするが。
「ああ、由香子なら別の仕事をしてるから。」
「そうなんだ。」
あっさりとそれで、そんな悦子の台詞で納得するクラスメート。
何しろ、仕事は山ほどある。
外からやってきている人々の誘導。
それらは、いざこざが起こらないようにとの気配り。
迷子センターなどからの案内。
それでなくても、ここ、聖鳳学園はかなり広く、・・・・何しろ生徒ですら迷うほどの広さを誇る。
はっきりいって迷子がでるのは日常茶飯事。
それにもまして。
今は一般客などもこの学園にきているのである。
当然それに伴い実行委員の生徒たちの仕事も多量に増える。
そしてまた。
百合香を招いていることによって、暴走するファンなどがでないように、それらを監視するのもまた実行委員の役目。
そのような危険性があるファンなどは。
即刻退場・・いや、退園を迫り。
聞き届けない場合はそのまま、警備につきわたす。
といった行動もともなっているのだ。
・・・・まさか、その仕事というのが、百合香としてのコンサートそのもの。
などと思うメンバーは・・・・誰一人として存在するはずもなく。
やがて。
『アンコール!アンコール!』
一通りの歌を終えたらしく、会場の中から聞こえてくるファンや生徒たちの声が。
「あ、そろそろ準備はいい?」
すでに我先にとサインを貰おうと。
会場に入れなかった人々が。整列を始めていたりする。
このために警備員などもすでに配備され、準備は万端。
やがて。
会場となっている講堂の中が。
ひとしきりに・・・・賑わい。
「皆、お付き合いありがとー!これからはサイン会兼握手会。
あと、グッズ販売などもおこなわれるようだから。みんなこぞって参加してね♡」
歌を終えた百合香のその言葉に。
『わ~わ~!百合香ちゃぁぁぁん!』
熱を帯びた人々の声が・・・・溢れかえってゆくのであった。
そんなこんなで。
熱気を帯びつつ。
多少、暴走しかけるファンなどもいたものの。
滞りなく・・・文化祭最終日のイベントは、つつがなく進行してゆく。
「ふう!!!おわったぁぁぁぁあ!」
百合香の姿を一目みようと、コンサートやイベントなどが終り。
帰る姿を見ようと溢れ帰る人々を、どうにかうまくごまかして。
すでにもう髪も結ぴめがねをかけて制服にと身を包んでいる由香子。
控え室の前にはかなりの人だかりが出来ていたのもの。
生徒の姿になれば、人々は・・・完全に生徒は問題外。
何しろ。
「え?百合香ちゃんなら、そこからでたけど?」
そういって。
二階のその部屋の窓を指し示し、その先に・・白い服がなびく様子が見られれば。
何しろ、百合香が身が軽い。
というのはかなりの間でファンに知れ渡っている。
百合香が出演などする映画やドラマ。
そういったアクションシーンなども百合香はエキストラを使わずに、全て自分でこなしている。
それもまた意外性を呼び、百合香の人気を高めている一つでもある。
「おいかけるわよ!」
ドドド!
せめて、一緒に写真を!話を!
などと思うファンの心情は当然といえば当然なのかもしれないが。
・・・・コンサートが始まる前にその手で。
記者たちなどが同じ手で、会場から引き離されていることを、彼らは知るはずもなく。
由香子の思惑のままに、由香子が創り出した幻影を追いかけて。
そちらにむかってゆく人々の姿をみつつ。
くすくすと一人笑う由香子の姿が。
しばし控え室内部で見受けられていたのは・・・数時間前のこと。
「おつかれさまぁ!」
後は事後処理と会場の片付け。
すでに文化祭も今日で最終日。
後は夜の打ち上げキャンプを残すのみ。
「あv由香vこれ、お願いねv」
どさり。
そういってにっこりと洋子が由香子の前においたのは・・・。
数十以上にも及ぶ紙袋の中に入っている・・・・サイン色紙・・・・・。
「・・・・あ・・・・あの?洋子?(汗)」
ここにいるのは、今は由香子と悦子、洋子のこの三人。
「いや、手伝ったくれたほかの学校の人達から。
お礼は全員が全員ともサインがいいvっていわれてたの言うの忘れてた♡」
そういってにっこりと微笑まれ。
「・・・・そーいうことは私に話しをとおしてよぉぉ!」
よおぉぉ~…よぉ・・・・・・・・よぉ・・・・。
むなしいまでの由香子の絶叫が・・。
教室内部に響き渡ってゆくのであった。
結局。
約一時間以上もかけて・・・・サイン色紙とにらめっこするハメになる由香子であった。
今日は文化祭最終日。
打ち上げキャンプ。
外では赤々とキャンプファイアーが燃え滾り、夜の闇を赤くてらしている。
「・・・つ・・・つかれた・・・・。」
キャンプに参加する由香子に。
「でもよくあんなアイドルを呼べたわよねぇ。」
別のクラスメートが実行委員である由香子達にと話しかけてくる。
「ま、それは理事長の力もあるし。」
無難な返事をしている由香子。
まあ・・・・あたらずとも遠からず・・であろうが。
何しろ、あの理事長がここをやっているから。
由香子はここに在学しているのであるから。
他の一般のところにいくといったときの、町の人々の・・・大反対が目に浮かぶ。
― もし、何か万が一のことがあったら!どうなさるんですか!?タイニー様!
本気で心配している町の人達の心が分かったからこそ・・・・・。
ここに由香子はいるのであるが。
・・・・・私に何かあるはず・・ないのにね・・・・。
あるとすれば・・・・・・。
それは人によって・・・・・この惑星が穢されること・・・・。
そうおもいつつ。
がさりと新聞を開きそこにかかれている記事を読む。
必ずどこかで行われている戦争。
・・・・どうしていつの時代も・・・同じ種族で人は・・争うのか。
「・・・・・また同じ過ち・・・・繰り返してほしくないんだけどね・・・・」
ふっとつぶやく由香子のその表情は。
誰もそれを見ることなどはなかったが・・・。
あきらかに・・・・人とは異なる雰囲気をかもし出しているのであった。
・・・・そう。
以前のときのようにまでにはいかない。
・・・・・・・・あのとき。
・・・・・・・・・・・・全てを無に戻したのは・・・・他ならない・・・・自分・・・・。
誰も覚えてない・・・遥かな過去のことを思いだし。
少し寂しそうにする由香子であった。
・・・・それは。
人類が誕生した・・・とされているより遥かな以前の・・・出来事。
膨れ上がり膨張した人口と・・そして、絶え間なく続く争い・・・・。
・・・・・・決断が下されたのは・・・あのままでは。
この惑星が・・・滅んでしまうとわかったから。
・・・・だから。
滅ぼした。全てのものを・・・・。
そして・・・一からの再生。
・・・・あのとき様な思いは・・・二度としたくはないわよね。
などと思う由香子の心情は・・・誰にもわかるはずもない・・・。
-続くー
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あとがきもどき:
薫:・・・コンサート内容。私はこーいったコンサート知りませんから(漫画でしか)
・・・・不都合あるかと思いますが。・・・・きにいないによーに(こらまて!)
ちなみに。
下から突き上げる煙によって、服が変わる様子はv
クリーミ○マミの最終回のような感じとおもってくださいなv
・・・ちなみに。
文化祭にアイドルが来る内容・・・・。
ええ、ネタはグリーン○ッドですv
あれを参考にして多少話を組み替えてますv
結構あれも面白いですよぉvふふふふv
2003年6月19日某日
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