蒼き水晶の歌姫  第9話


あまり、強く断ると余計に疑問に思われる。
「眼鏡はやめてよね。」
そういいつつ。
あわてて、眼鏡を奪い取る由香子に。
「・・・・・ねえ?由香?誰かに似ているって言われない?」
―どきり。
思わずその言葉にどきりとする。
似ているも何も本人である。
だがしかし。
「そう?別に何もいわれないけど?」
そういいつつ。
眼鏡をかけたまま。
洋子や悦子と共に。
服を脱いで、そこの宿にある、岩の天然露天風呂にと。
前を少しタオルで隠し、入ってゆく由香子。

ピシャン。

冷たい感覚が、足に落ちてくる。

露天風呂とはいえども。
きちんと天井と、そして、ガラスは張り巡らされて。
中からは外が見えるが。
外からは中が見えないようなガラスで構成されている。
続にいうマジックミラーに近い品物なのであるが。
それとは少しことなり、その硬度もかなり高く。
ちょっとやそっとのことでは割れないそれは。
結構いろいろな場所で重宝されている代物。


見上げれば。
そのガラスに近い物質で形勢されている、天井から。
部屋に漂う水蒸気が、水滴となり。
足を踏み出した由香子の足元にと落ちてきてのが見てとれる。


その透き通るまでの白い肌。
染み一つない、まっさらな肌は。
同性である洋子や悦子たちですら、思わず見惚れてしまうほど。
こうして、彼女と共にオフロに入るなどとは初めてのことである。
まあ、まだ。
プールの時期ではないから。
水着姿などもみたことなどあるはずもなく。

「・・・どうかした?」
お湯につかる由香子のその言葉に。
「う・・ううん。由香って・・スタイルいいし・・色・・白いのねぇ。」
「ほんと、うらやましい・・。」
そういいつつ、つんつんとその肌をつつく二人。
「こら!二人とも!お返し!」
ばしゃり!
そんな二人に向かって。
両手でお湯をすくって浴びせかけてゆく由香子。
「ああ!やったわね!由香!」
「ええい!眼鏡を集中的にねらってやるぅぅ!」

バシャバシャ。

キャッキャッキャ。

女の子三人の騒ぐ声が。

風呂場にとしばし響いてゆくのであった。



「・・・・うー・・・・疲れた・・。」
ばたん。
「・・おなじく・・・・。」
「・・・・・・・・意味もなく・・・遊んだ・・からね・・・。」
きゅう。
どさり。

・・・・気付いたら。
数時間以上。
風呂場でじゃれあっていた三人であった・・。


さすがに、湯冷めをするまではいかないまでも。
かなり疲れて。
そのまま、部屋に戻り。
すでに仲居さんが敷いていた布団にと。
倒れこむようにと布団の中に崩れてゆく三人。
「・・今日はもう寝ましょ・・。」
「・・賛成・・・。」
無意味に風呂場で遊んだもので。
三人が三人とも。
無駄に体力をつかい。
そのまま。
三人は三人とも。
一時もしないうちに、深い眠りについてゆくのであった・・。



ちゅんちゅんちゅん・・・。
チチ・・・。
朝もやのかかる中。
ゆっくりと起き上がると。
まだ眠っている洋子たちの姿が横にとみうけられる。
そのまま。
宿に備え付けられている浴衣を着こなして。
ゆっくりと外に視線を向け。
二人を起こさないようにと。
窓の方にと向かってゆく。

がらり。
窓を開ければ。
二階より見下ろす宿屋の裏庭では。
朝もやに包まれた、庭園の景色が。
そして。
視界のかなたに広がる青い海。

ぱさり。
昨日はそのままに眠ったこともあり。
アップしていた髪をばさりと下ろしてゆく。
そのまま、風にとなびくように。
漆黒の長い黒髪がさらりとなびく。
起きたままの姿なので。
当然、その顔には。
眼鏡などをかけているはずもなく。

その黒い瞳が蒼く一瞬変化したのを。
もし誰かがそれを見ていれば。
おや?
と疑問に思ったであろうが。

「・・・・とりあえず、あそこは・・また・・。」
そういいつつ、溜息一つ。
あきらかに空気が悲鳴を上げている。
どうしてこんな狭い一つの惑星の中で。
こうして争いが耐えないのか。
人の愚かさには明らかに幻滅するものがある。
だけどそれが人の全てでないことも、よくわかっているから・・。
「・・・とりあえず。また空気の浄化・・・・しないと・・ね・・・。」
有害物質が空気中に漂うのは、あまり好ましくない。
他の生態系にも影響を与えるから。
だから。
今の立場は・・。
彼女にとっては好都合・・ともいえるのである。


彼女が向けた海の向こうのある場所で。
そのころ。
とあるそこに住む人間達が。
無意味な争いを繰り広げていることを。


なぜか、遠く離れた由香子に分かるはずもないのに。

それをはっきりと捉え。
そうつぶやく由香子。

由香子には、この惑星上で起りえたことならば。
どこにいようと知ることができる。

それは、一部のものにしか知られていない事実・・・。






「・・・・んっ・・・。」
ふと、視線を向ければ。
朝の冷たい空気が部屋にと流れ込んだためか。
身じろぎはじめている二人の友達の姿。
「・・あ、そろそろ、締めないと。」
バタン。
そういって、窓を閉め。
窓際にある鏡台に向かって髪をとき。
あみあみあみ。
すぐさまに髪を二つにわけてみつあみをゆってゆく。
そして。
部屋にある洗面所にて。
パシャパシャと顔を洗い。
歯を磨き。
服を着替え始めてゆく由香子。
「・・・・ん・・・」
あれ?
ふと見開いたその目に。
なぜか。
見覚えのある姿が一瞬映りこんだような気がしたのは。
気のせいであろうか?
・・・寝ぼけてるのかな?
そうおもいつつ、けだるい朝の眠気に身を任す洋子。
洋子の目に映ったのは。
黒い髪をさらりと下ろしている・・。
浴衣を着た・・どうみても、百合香の姿。
それ以外の何者でもなかったのであるが。

ふ・・・ふわぁぁぁぁ!

明るい日差しに包まれて。
心地よいすがすがしさに。
すっきりと目を冷ます。
おもいっきり伸びをする彼女・・・洋子の視界に。
「あ、お早う。」
すでに着替え終わっている由香子姿が目に止まる。
「お早う、早いわね・・由香・・・ふわぁぁぁぁぁ・・・・。」
そういいつつ、同じく起きた悦子が、あくびをしつつ。
そんな由香子にと朝の挨拶を交わし。
「そろそろ着がえないと。仲居さんが朝のご飯をもってくるわよ?」
そういいつつ。
すでに荷物の整理を始めている由香子。
ふと時計をみれば・・。
「あ・・・ああ!もう七時半!?」
あわてて、未だに布団の中にいた、洋子と悦子は飛び起きる。
朝食を頼んでいる時間は。
八時より少し前。
あわてて、布団から飛び起きて。
準備をしてゆく二人をみつつ。
くすり。
そんな二人をみて、軽くくすりと笑う由香子。

こんこんこん。

「失礼いたします。そろそろお食事をお持ちしてもよろしいでしょうか?」
扉の向こうから聞こえてくるその声に。
「あ・・・はい!少しまってください!」

ばたばたと。

あわてて、服を着替えて。

隣の部屋にあるテーブルのある部屋にと移動する。

カララ・・・・。

「失礼いたします。」

純和風。
そう表現するのがしっくりくるであろう。
そんな彼女達の泊まっている部屋の扉が横にと開かれて。

宿屋の仲居が、彼女達にと食事を運んでくる。


白いご飯に卵。
そして、味噌汁に。
魚の焼き合わせ。
おひたしに山菜を浸した青い菜っ葉。
そして。
かちりと、彼女達の前で火がともされる。
小さな一人用の土鍋。
小さな鍋の中には。
様々な具が入っているちょっとした鍋。
朝から豪華ともいえるそんな朝ごはんを前に。

「それでは、ごゆっくり。」
そういって。
立ち上がり席を外してゆく仲居を見送り。

『じゃ、いっただきまぁす!』
元気よく。
朝ご飯に手をつけてゆく三人の姿。



食事を済ませて。
あと一日は。
この宿に泊まり。
明日にまた違う場所にと移動する。
そのまま。
とりあえず、出かける用意をし。
荷物を持って外に出る。


「お早うございます。」
そんな彼女達を玄関にて出迎えるのは。
彼女達を案内している瞳の姿。
すでにもう車の用意も終り。
後はもう出発するだけ。

プロロ・・・・・・。

車に乗り込み。
移動してゆくその先で。

「あ、今日は私、ちょっと半日くらい。別行動してもいい?」
とりとめのない会話の中で。
そんなことを言ってくる由香子に。
「別にいいけど?何?何か昨日いいところでも見つけたの?」
由香子が気に入った場所を見つけたら。
そこ場所の絵などをかいたりすることを、彼女達は知っている。
「ふふ。それは内緒♡」
車の後頭部の座席に並んで座っている彼女達。
そんな会話をしつつ。


本日の目的地でもある。
虹の滝にと。

まだ九時になったばかりではあるが。
すでに。
そこには、たくさんの人だかり。

駐車場に止めて。
外にでる。


「じゃ、後からここで集合・・それでいい?」
「由香、人が多いから、迷子にならないようにね!」
そういいつつ。
別行動をするという由香子に向かって。
交互にいっている洋子と悦子のその言葉に。
「二人も気をつけてねv」
そういって、くるりと彼らとは違う方向にと進んでゆく。


今日は。
ここ、『虹の滝』にて。
世界的なアイドル歌手でもある、星空百合香の。
映画の撮影のワンシーンが執り行われるのである・・・。
そのために。
国なども関係なく。
彼女のファンがここ、虹の滝にと押し寄せているような状況。

やがて。
人ごみに紛れ。
由香子の姿が見えなくなるのを確認して。

「じゃ、昨日見つけた場所から、レッツゴー!」
元気よく、腕を上にと上げて言っている洋子に。
「そうね。じゃ、いきますか!」
「あまり無理はいないでくださいよ?」

・・・・瞳は。
昨日二人が見つけたというその場所を。
聞いているので知っている・・・。


少し人気のない方向にむかって。
あるいてゆく二人の姿をみつつ。


「・・・さて、私も見学者に混じるとしますか♡」
そういって。
うきうきと。
写真片手に人ごみの方向に向かってゆく瞳の姿が。

その虹の滝の駐車場にて。
見受けられてゆく・・・。



「百合香はまだかぁぁぁぁぁ!」
思いっきり叫ぶが。
叫んだところでどうにもなるものではない。
「呼びました?」
いきなり。
ひょこっと。
車の陰から出てきた百合香に。

思わず。

『うわっ!!!』

関係者全員の驚きの声が上がったのは・・。

いうまでもないこと。

そこにいたのは。
一体いつのまに来たのやら。
まぎれもなく【百合香当人】以外の何ものでもない姿であるのであった。


                                         -続くー


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  あとがきもどき:
       薫:・・・・・・・・よっし!
         撮影シーン・・・・入れるか入れざるか・・・。(こらまて!)
         ま、いっか(だからまて!)
         とりあええず。
         さて、洋子と悦子がたくらんでいる、
         撮影シーンを近くでみる方法とは?(まてまて!)
         んではでは・・またvvv



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