灰色の髪をポニーテールにしている三十そこそこの男性と。 どっかでみたことがあるようなアメフトマッチョ。 ちらりとオレ達と、そして仮面をつけた人のほうをみて、 そしてさらにオレに目をとめて何かつぶやいているけど。 小さく。 だけどそんなはずはない! とかいって頭を横に振ってるし…… 「……ど~やら。認めたくないようだね。彼……」 それをみてため息をついてつぶやくようにいっているアンリ。 ? 「こちらは小シマロンのサレルギー様の命令でやってきた。 カロリアは小シマロンの属国。だが大シマロンとよからぬやり取りをしている。 と聞き及んだ。その旨を確かめにこさせてもらったまで」 「主は大シマロンとは何の……」 「五月蝿い!私はノーマン殿にきいておるのだ」 いいつつ、つかつかと歩いてくるカリアゲポニーテールの男。 「主は声がっ!」 あわてた様子の執事さん。 そのまま手をのばし、仮面をハズすと案の定、仮面の下から女の人の顔が。 「あ。やっぱり女の人。でも何で?」 それをみて戸惑いの声をあげるオレに、 「多分。ノーマンってひとの奥さんだね。 …よっぽど心配だったんだろうね。ユーリ?見えない?」 「?見えないって…何が…って…げっ!?」 アンリに言われ、よくよく目を凝らしてみてみれば、仮面をつけていた女の人の後ろ。 そこに姿が透けている男の人の姿が。 「ゆ…ゆゆゆゆゆ!?」 思わずガタンと席を立ち上がる。 まさかこんなところで幽霊さんを見るハメになるとは。 どんっ。 と席を立ち上がるとほぼ同時、何かにぶつかり見上げてみればそこにはアメフトマッチョの顔が。 「うわっ!?アーダルベルト!?」 思わず一歩はなれ叫ぶオレに、 「……やっぱり貴様か。…ん?何で女の格好をしている?双黒の魔王さんよ?」 ……ばれてるし。 「うるさいなっ!オレだってとまどってるよっ!気がついたら女の身体になってたんだからなっ! そういうあんたは何でこんなところにいるんだよっ!?」 「ユーリ。落ち着け」 そんなオレを立ち上がりかばうようにしてアーダルベルトとの間に割ってはいって言ってくるアンリ。 「『視せた』はずだよね?……それでもまだユーリに危害を加える気?」 「う…うるさいっ!オレは…オレはみとめんっ!」 ??? 視せた…って、何? アンリの言葉に激しく首を左右に振りながら言っているアーダルベルト。 そして。 「そうか。そういってくる…ということは。そうか。きさまあのときのもう一人の……」 何かアンリに対して身構えてるし。 ……えっと? 何かあったのかな? 「わたくしは、ふりん・ギルビット。ノーマン・ギルビットの妻です。 わたくしと夫との間には子供はいませんでした。夫は三年前の事故で他界いたしました」 きっとカリポニーテールの男性にといっている仮面をつけていた女の人。 どうやらフリンさん、というらしい。 「奥様は、このカロリアの地を守るため。仮面をつけて旦那様ま変わりとなり生きることを決めたのです」 弱々しくも、それでいて目頭をおさえながら執事さんがいってるし。 何かいろいろとあるらしい。 「ふん。そんなことだろうとおもった。 だが。私が聞きたいのはそこじゃない。大シマロンと何をたくらんでいる!?」 いいつつも、剣をフリンさんにつきつけているその男。 おいっ! 「おいこらっ!そこのカリポニっ! 女の人に対して何てことするんだよっ!危ないだろ!?剣をしまえよっ!」 オレの叫びに、 「部外者は黙っていてもらおう。言わぬのなら……」 何か蜘蛛の糸…というか、ピアノ線のような細い糸を取り出して、いきなりフリンさんの首を絞めてるし。 っ! 「何すんだよっ!!―――滅っ!」 無意識にと手をかざし叫ぶと同時。 ぽろっ…… 「なっ!?」 男の持っていた細い糸が瞬時にぼろぼろになり崩れ去る。 男が何やら驚愕した声をあげてるのが気になるけど。 「……あた~……ユーリ。おちつけ。な?」 額に手をやりつつ、オレの肩にと手をおいてアンリが何かいってくるけど。 「げほっ!ごほほっ!」 「フリンさん!大丈夫ですか!?」 かがみこみ、むせこむフリンさんに駆け寄り、抱きかかえるようにして手助けする。 と。 「ん?マキシーン!追っ手だ!」 アーダルベルトが窓の外をみて何やら叫び、 「今のは……ちっ!これで済むとおもうなっ!」 何やら言い捨てて二人して窓のテラスにと駆け寄り、そのまま飛び降りていたりする。 「あ!?…ここ、二階……」 オレの叫びは何のその。 「またあおうっ!双黒の魔王っ!」 それだけいってアーダルベルトもまた飛び降りてるし。 「…そう…?」 フリンさんがつぶやくと同時。 バタバダバタ! 何やら数名が階段を駆け上がってくる音。 そして。 バタンっ! 「――賊はどこだ!?」 バンっ! 再び扉が開かれる。 ドク…ン。 ドクン…ドクン。 ドクドクドク…ドッドッドッ…… 記憶が…光景がフラッシュバックする。 あの日、オレ達を襲ってきた人たちと同じ格好…同じ武器…… 「あ…あ…うわぁぁぁぁ~~~!!!」 「っ!!しまっ!ユーリ!おちつけっ!」 ごうっ! 自分でも風というか突風にちかい嵐のようなものが起こったのが理解できる。 自分で自分を制御できない。 身体が……熱い……
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