誰もついてこないのを確認し、周囲に他に誰もいないのをかなり念を押して確認し、 「陛下!?それに猊下!?…本当に!?というか何で!? というより、陛下、女性になっちゃったんですか!?」 あ~…… 「…オレも夢だとおもいたい……」 叫んでくるヨザックに対して素直な感想を漏らす。 「先日、ここも光に包まれただろう?あれやったのユーリでさ。 で、その反動で身体に負担がかかりすぎちゃってね。 その結果、ソフィアさん側の血が表に出てきちゃって、ユーリこの姿になっちゃってるんだよ」 あっけらかんとしながらも、さらっと説明するそんなアンリの言葉に、 「……なるほど。あれは、つまり陛下の……いやもう、パニックでしたよ。 捉えられていた人々がいきなり戻ってくるわ。人々が銀の光に包まれて気絶するわ…… 噂によるとここだけではない。ということでしたけど…… しかしまあ、陛下が女性になっている。というのはまあ理解できるとして」 「できるの!?何で!?」 ヨザックの台詞に思わず突っ込む。 「え?だって陛下はソフィア様のお子様ですし。 誕生したときには男でも女でもなかったらしいですしね。 そもそも天空人は伝説では運命の相手を見つけてからその性別を固定する。 …というきわめて特殊な種族らしいですしね。別に男になれても女になれても驚きませんってば。 あんまりソフィア様に生き写しなので、一瞬ソフィア様ご本人!?と思いましたがね~」 さらりと何でもないようにヨザックがいってくるけど。 「……うそぉ~!?」 それっオレは初耳だよ? アンリのほうをみれば何か笑ってうなづいてるし。 ……えっと。 何かまたまた頭がさらに混乱してきたぞ? 「それはそうとして、まさかお二人だけなんですか?隊長は?」 「それがさ。国で襲撃をうけちゃったらしく。それでユーリも力を使っちゃってね。 力の大きさの反動でここに移動してきちゃったらしくてさ。 とにかく今は状況が状況だろ?ユーリには国に戻っといてもらわないと。 いつ力を悪用しようとするものがでてくるか……」 ? 力を…悪用? 「…襲撃…って。では、大シマロンのやつらは国にまで入り込んでいたんですか?
しかし…こまりましたね。今は船はろくにでていないんですよ。 ――それはそうと、猊下?その瞳と髪の色は?」 「イメチェンのつもりで、染めてみたんだよ。目はコンタクト。 …ま、こうなっては動きやすいからよかったけど。ここってそういえばどの辺り?」 「ギルビットの商業港ですよ。猊下。…そうですねぇ。そうだ。領主にいえば何とかなるかもしれません。 ここの領主はウィンコット家、縁のものですからね」 「?…ウィン…コット?…って…あれ?」 何かどっかできいたことあるぞ? 「なるほど。たしかにそのほうが早いかもね。ユーリ、ウィンコット家の徽章もってるし」 二人して何やらオレのわからない会話をしているヨザックとアンリ。 …… 「だぁぁ~!!オレにも判るように説明してぇ~!!」 「ユーリ。せっかくだし。女の子らしくしようよ。今の君の身体は女の子なんだし」 「やだっ!オレはオレだもんっ!」 アンリのやつ、絶対に楽しんでる…… というか、何でこんなことになってるんだよっ!? 「わかりました。んじゃ、とりあず。オレが道を聞かれたことにして案内します。 ウィンコット家の関係者、といえば領主とも面会が可能でしょう。 しかし、気をつけてください?猊下?陛下? オレがここにいるのは、ここギルビッドが大シマロンと何やら密に連絡を取り合い、 手紙をやり取りしているらしい。というので調査をしているんですから」 外をちらちらと警戒しつつ、ヨザックがいってくる。 「わかった。ユーリはどんなことがあっても、何があっても守るって」 「オレは。んじゃあ白鳩便で閣下たちに連絡いれときますわ。んじゃ、いきますか」 何かオレが口を挟む間もなく、話は決まってるし……
「……は?」 「だから。ユーリの名前はユリアナでいくよ?フォンウィンコット卿ユリアナ。 い~い?僕がアンリ・レノン。君の護衛、兼、従者って形にするから」 領主の館に向かう道すがら、その道のりにてアンリがオレにといってくる。 「くれぐれも、陛下?目と髪の色がばれないように気をつけてくださいね? 今はまだ、一昨日、いきなり奴隷や捕虜として連れて行かれていたもの達が一気に戻ってきて、 ここもですがどこもかしこも混乱していますし」 アンリに続いてヨザックがいってくる。 何でも一昨日の夜。 銀の光とともに、大シマロンに連行されていたはずのひとびとが、 いきなり空から降ってきて戻ってきたとか何とか。 アンリがいうには、それもオレの仕業らしい。 まてまてまていっ! 地図をヨザックに見せてもらったけど、眞魔国とかなりここは離れているってば。 大陸も違うし。 そんな…惑星規模の何か、なんてオレにできるはずないじゃんっ! 「つ~か。オレにそんなことができるわけが……」 「できるよ。だから身体に負担がかかっちゃって女性になっちゃったんだよ。 何しろユーリってば。惑星規模でやっちゃってるようだしね~」 「―――・・・・・・」 な…何か、即座にしみじみといわれたら、信じざるを得ないというか何というか…… オレがそんな力をもっているわけない…と切実に思うんだけどなぁ~…… ああ。 何か自信なくなってきた…… 「あれが領主の館です」 「ユーリ。帽子は深くかぶっててね」 「あ…うん」 ヨザックの指差す先にはちょっとした大きさの館がそびえたっている。 この地は元々、ウィンコット家発生の地らしく、人間達に追われてかの家は眞魔国に移動したとか。 強大な力をもつ魔族の力を恐れて人々が追い出したということらしい。 この地を復興させたのは…一族に連なる人々と魔族との混血。 今ではもう人としての力しかないとか何とか。
「し…失礼いたしましたっ!すぐにお取次ぎいたしますっ!」 アンリがオレがいつも下げているネックレスの石を門番にとみせて何か言ったところ。 なぜかすんなりとオレとアンリは中に通される。 案内の男性はここまで…といって、ヨザックは門の前で止められてたけど。 彼のことだから忍び込んでくるだろ~な~……きっと。 オレとアンリの二人だけ。 しかもオレ今…認めたくないけど、女の子になっている。 ということもあって何かあったら隊長や閣下。 それに国民の皆に申し訳がたたない! とかいってたし…… アポイントなしだ。 というのにすんなりと領主と対談することに。 ……船、貸してもらえたらいいけどなぁ~……
「お待たせいたしました」 カチャリ。 と扉が開き入ってきたのは…… 「うわっ!?仮面?!」 思わずびっくり。 何か仮面をつけた…女の人だし。 格好は男性の格好をしているけど。 オーラと気配で女の人ってわかるし…… 「我が主、ノーマン・ギルビット様は三年前の事故により声があまり出ず。 顔も酷い怪我を負っておられますので、私が主の言葉を代用いたします」 横にいる執事さんと名乗った人がいってくる。 「え?怪我?…だったら……」 「ユーリ」 オレが言いかけるのをアンリがなぜか押しとどめてくる。 怪我だったらオレでも治せるとおもうけど? ……多分。 「突然の来訪なのに、対談をお受けくださりありがとうございます。 こちらはフォンウィンコット卿ユリアナ。 この僕は護衛、兼従者をかねてます、アンリ・レノンといいます。 実は僕達がのっていた船がちょっととらぶっちゃいまして。 お恥ずかしい話ですが船ごと持ち逃げされてしまいましてね。 たしかこの地がウィンコット家、縁の地だと思い出しこうして頼らせていただいた次第です。 あ、この方は肌が弱いので帽子をかぶったままでの謁見ですがどうかお許しください」 「……持ち逃げ…って……」 そんな事実はどこにもないぞ? 「いいから僕にまかせて」 アンリの言葉に思わず目が点。 だから、そんな事実はどこにもないってば。 お~い…… 「それは災難でしたな。お力にできるならなりたいのですが。 なにぶん、今は先日ちょっとしたことがありごたごたしております。 よろしければおちつきまして、あなたがたを目的の場所に送り届ける。というのはいかがでしょう? その間、我がギルビットに滞在してもらいまして……」 仮面をつけた人が執事さんに伝え、それをオレ達へ。 ――と。 「困りますっ!ノーマン様は今!」 バタン! 何か勢いよく扉が開かれる。 みれば、 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「……げ!?」 何であいつがこんなところに!?
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