「……う……」
太陽の光がまぶしい。
「…ユーリっ!!」
目を開ければ心配そうなアンリの顔が。
「…アンリ?」
頭がぼ~とする。
「…オレ?…はっ!そうだっ!コンラッド!!」
確か…オレを守って…守ってコンラッドが……
思わず飛び起きる。
さらっ。
……え?
なぜか立ち上がるオレの目に長い長い黒髪が目に入る。
そして…髪の横……オレの胸のあたりに何か膨らみも。
「……え??」
思わず髪をつかみ、ふくらみにと手をやってみ……
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~!!!?」
もはや叫ぶしかない。
なななななんで!?
何でオレにむむむ…胸があんの!?
「ユーリ。ユーリ。おちついて。ちょっと女性態になっちゃってるだけだから。」
そんなパニックに陥っているオレの肩をつかんでアンリがじっと目を見て言ってくる。
「ちょっとまてっ!?何それ!!?って?…うわぁぁ!!」
思わず下にと手をやると、あるべきものすらもがない。
「だ・か・ら。おちついて?」
「これが落ち着いていられるかぁぁ!下がないぃぃ~!胸があるぅぅ~!!
  嘘!?これオレの身体!?本当に!?」
大パニックになるオレの耳に。
「きゃっ!黒っ!!」
何やら後ろのほうから叫び声が聞こえてくる。
みれば女の人がこちらをみて驚愕し、そしてそのまま走り去っている。
「とにくか。ここだと一目につくから。移動するよ?
  …シーラ。近くにいい隠れられそうな建物ない?」
アンリがいうのと同時。
『お任せください。この先に使われなくなった館がございます。こちらへ――』
風が人の形を成し、オレ達をある方向にと誘うべくとある方向を指し示す。
「いやあのっ!?つ~かっ!何でオレ女になってんの!?」
オレの叫びに。
「力を使いすぎたからだよ。天空人サイド側のね。
  そのために、君の身体にかなり負担がかかっちゃったみたいだね。
  女性態が一番安定してるからね。
  身体の防御本能でユーリの身体は女性の姿になっちゃったんだよ」
ため息まじりにアンリがいってくる。
「…って何それ!?うわ~!?嘘!?まじで胸があるしぃ~!?
  って!そだ!コンラッド達は!?」
自分の身体の変化に戸惑う。
というか、混乱するものの。
そういえば……確かあのとき……
「ウェラー卿たちなら無事だよ。君の力でね。
  ……それより、ここを立ち去るよ?さっきの女の人にユーリをみられちゃったし。
  今のユーリの状態で僕が力を使ったら触発されて大変なことになりかねないからね。
  だから空間移動はしばらくできないし。
  かといってその姿で地球に戻るわけにもいかないだろ?」
「……ま、まあ…たしかに……」
何でできないの?
とか聞ける状態じゃあない。
オレの頭の中は混乱とパニックに陥っている。
自分の身体のこともあるが。
何よりコンラッドは…グレタは……ギュンターは?
本当に無事なの?
それに…コンラッドは…確か…腕を……

とにかく。
たしかに、アンリの言うとおり。
ずっとここにいるわけにもいかないので、
シーラに先導されて海辺の少し切り立った崖の上にとある洋館へ――。


ここにはすでに住んでいる人はいないらしい。
とりあえず、アンリがシーラたちに頼んで服などを調達しにいってもらっている。
聞けば、このオレの姿……
ど~みても母さんそのもの。
髪も長いし……
とにかく、今のオレには物質的な色々なこと。
それらの束縛を一切受け付けないらしく、髪を染めるのも、コンタクトを入れるのも不可能らしい。
特殊な力で身体が覆われており、
地上のありとあらゆる束縛を受けつなくなっているとか何とか……
より詳しく、幾度説明してもらっても理解不能だけど……

風呂に入ってやはり愕然。
…健全男子としては、女性の裸体など目の毒だ。
……それが自分の身体だ。
というのだからなおさらに……
さすが剣と魔法の世界。
ありえないことが起こるもんだ……
見た目違和感がまったくない…というのも恐ろしい。
ど~みても、母さんそのもの。
というオレの姿が鏡にと映し出されている。
とにかく目をつむって、シーラが買ってきてくれた品物で体や髪を洗う。
まさか小さいころにスピカを入浴させていたのがこんな形で役立とうとは……
お金は何でも、そのあたりの海底にと沈んでいたものをニルファが収容し、
それを使って購入してきたとか何とか……

「あ。ユーリ。お風呂からでた?」
のんびりとしたアンリの声。
毎度毎度、どうやっているのか知らないが。
オレが風呂にと入っている間に屋敷を綺麗にしているらしい。
先ほどまで小汚かった屋敷がものの見事に綺麗にとなっている。
「…アンリ……オレ、どうなるわけ?」
自分でもわかるほどに、血の気をひかせて問いかける。
「ランマみたいでいいじゃん。それにまったく違和感ないし」
「…あのね。漫画じゃないんだから……」
にこやかなアンリの言葉に思わず脱力。
どうしてこいつはもっと驚かないんだろう?
オレなんかもう、パニックになりすぎて…ある意味、パニックを通り過ぎた状態になっているのに。
「とりあえずは身体が元の状態にもどるまでは女性態のままだと思うよ?
  それより。はい。食べるもの食べて、今日はゆっくりとねて。
  明日になったら近くの町にいって眞魔国に戻る方法を探すよ?
  さっきもいったけど。今の君の状態で空間移動とかは危険だからね。
  船か何かでてればいいんだけど」
……危険って何?
危険って……
そうは思うが、聞くのも怖いのでやめておく。
「あと。服も買ってきてもらったし。これきてね。明日は早くに出発するよ?」
いってアンリが指し示した服は……ど~みても女もの……
がくっ。
…ま、まあ…ズボン付きスカート…というだけましか??
ある意味、現実逃避をかなりしつつ、ご飯を食べてソファーにと横になる。
きっと目が覚めたら夢……であってほしい。
と願いつつ。



「……ここ。何てとこ?」
「さあ?」
服を着替え、髪を結ってアップして、防止で隠し目には眼鏡をかけてとにかく瞳の色をかくし、
小さ目なトランクを用意した。
一見したところ、どこかのお嬢様とお坊ちゃまの二人連れ…といったところかもしんない。
ざわざわと人間達でにぎわっているものの、なぜか女の人や子供ばかりの姿が目立つ。
あとはお年寄りの姿がかなり目立っている。
「さあ…って、なあ。アンリ……」
「そうはいってもさ。人間の国のどの辺りとかとかはわかるけど。
  昔とまったく光景とかかわってるしね。とにかく港にいってみようよ」
そんな会話をしつつも、港にむかう。
やっぱり目に入る人々はほとんどが年寄りばかりだ。
みんな人間のようだから、見た目どおりの年齢の人たちだろう。
と。
「おや~?見慣れない人たちだね~」
ふと何か聞き覚えのある声がかけられてくる。
……え?
この声……
ぱっとして振り向くと、そこには。
青い瞳に羊の頭のような髪。
そんな姿をしている人物が。
だけど。
「ぶっ!?」
思わず何ものんでいないのに噴出してしまう。
「見かけない顔だねぇ。こんな時期に旅行かい?まだ若い男女が?」
とかいってくる。
「って!?…ヨザック!?何でここに~!?」
いくら変装していても、個人個人がもつオーラ…即ち、気の色はごまかせない。
「…は?だ…誰かと勘違いしていませんか?おれはヨッシャ…って……」
あからさまに目を泳がせていっくてるけど。
「オレだよっ!オレ!…ってわかんない!?」
帽子を少し上にとあげてヨザックの顔を上げると。
「…ヘ!?…い、いや!?ぼ…えええぇぇ!?」
あ。
何か驚いてる。
「あ。ヨザック。ここにいたんだ。助かったぁ。ね。国に戻る手段しらない?
  ユーリのやつさぁ。母親側の力を使いすぎちゃって、女性になっちゃってるんだよねぇ~」
オレの少し後ろであっけらかんとアンリが何かそんなヨザックにいってるけど。
「…って!?その声?!げいっ!?…と、とにかく!お二人ともこちらにっ!!」
いって、オレの手をひっぱって何か倉庫らしき場所にとヨザックはオレ達をひっぱってゆく。


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