コズミック・サブリナル ~第17話~
今回、女王試験が行われるにあたって。
作られたのが、ここ、女王候補寮。
住み込みで働いているメイドさんなどが数名いるものの。
基本的にここに住んでいるのは彼女たちのみ。
何しろ、今回の女王試験のためだけに。
この場所は作られたのだからして。
もっとも。
時期をおかずに作られたこの建物については、
誰がいうこともなく、女王陛下の力によって創られている。
ということは、暗黙の了解となっているこの聖地。
聖地では、何が起こっても、まず不思議、というよりは納得される。
それは、神秘なる空間ゆえに。
食堂にて、朝食をとりつつ。
「レイチェルは今日はどうするの?」
「とりあえず。力の飽和状態。それを見越して。
まず、容量的に、あの球体に力を能率よく注ぎ込んでゆくためには。
まずは、リュミエール様のところと、あとはジュリアス様のところに行く予定よ。
あまり多量の力を一気に注ぎ込んだら、球体が飽和状態になってバンクするかもしれないし。」
いいつつ、ばくりと。
ハムサンドを口にとしているレイチェルのそんな言葉に。
「へぇ。レイチェル、すご~い。そこまで考えてるなんて!」
心底関心した声をだしているコレット。
「あ、あのねぇ!『すごい』でなくて!あなたもそれくらいのことを考えないと!
……って、聞いてるの!?アンジリェーク!?」
パクパクパク
「あ、うん、聞いてるよ?とにかく、お互いがんばろうね。レイチェル。」
ぱくぱくと。
そこにだされている、果物サラダを口にとしつつ、にっこりと微笑むコレットのそんな言葉に。
「…まったく、この私と同じく候補に選ばれたんだから。
もう少し張り合い、というものをみせてよね……」
そんなことをつぶやきつつ、ため息ひとつ。
「あ、レイチェル、それ食べないの?なら、頂戴v」
「って、アンジェリーク!それは私のサクランボぉぉぉぉお!」
和気藹々としつつ。
今日もまた、朝も早くからにぎやかに。
女王候補たちのにぎやかな声が、寮の中にと響き渡ってゆく。
「お~、マルセル、朝も早くから元気だなぁ。」
いいつつ、片手を挙げているそんな金色の髪が、まぶしい男性の声に思わず顔をほころばせる。
「おはようございます!カティス様!」
いいつつ、元気に挨拶をする同じく金色の髪の少年。
歳のころならば、十四くらいであろうか。
そんな少年のその言葉に。
「おいおい、マルセル。だから、俺に『様』なんてつけたらおかしいだろう?」
いいつつも苦笑しているそんな彼の言葉に。
「いいえ!これだけは譲れません!あ、カティス様。今日もお手伝いさせてください!」
いいつつ、元気よく挨拶しているそんなマルセルの言葉に思わず苦笑する。
「ふっ。変わらんな。マルセルは。よっし。わかった。なら、お願いしようかな?」
「はい!」
そんなカティス、と呼ばれた青年の声にぱあっと目を輝かせ。
転げるようにと駆け寄り。
そして、持ってきたシートをカティスの横に敷きつつ、ちょこんと腰掛ける。
「…毎日、毎日、よく続くなぁ。マルセルも。」
半ばあきれつつ、それでも、そんな後輩の姿に目を細めつつ、そういうカティスのそんな言葉に。
「ふふ。僕、とってもうれしいんです!だって、またカティス様と一緒なんですもん!」
いいつつ、横にいる男性にとすりよっているマルセルの姿が。
本来ならば、聖地を去った前守護聖と、そして交代した新守護聖。
そんな二人が同時に聖地にいることなど、引継ぎ期間以外にはありえるはずもなく。
普通ならば、力を失った守護聖は、それぞれに。
聖地を跡にして新たな人生を歩み始める。
それが恒例。
そして、このカイティスも例外ではなく。
このマルセルとの引継ぎを終え。
聖地を後にして旅の行商などをしつつ、生活をしていたのだが。
まあ、その最中。
とある隠里にとより、彼もまた、アンジェリーク。
……すなわち、現女王陛下と同じ一族になったことから。
歳を普通の人並みにとることもなく、こうして守護聖であったときのように。
同じようにその肉体的な時間率は流れているのだが。
マルセルとしては、大勢の家族の元から離れ。
そして、いろいろ教えてくれたこの前任者であるカティスは。
ある意味尊敬する人であり、そしてまた、お兄さん的な存在な人。
ゆえに、甘えたくなるのは、
彼がまだ守護聖になって、その時間率から数ヶ月もなってないせいか。
だが、このまま甘えてばかりでは彼の今後が大変。
というのもまた。
前任者である元緑の守護聖カティスだからこそ。
それはよくわかっている。
そもそもは。
これから、この地というか、新たな時代にむけて。
動乱のさなかに移ることは、彼は女王より聞かされて知っている。
そもそもは。
長である『アンジェリーク』が長となり、そして女王になるとき。
それは、宇宙に何らかの大事があるとき。
そう、代々、クリスタル一族の中では伝えられている。
事実。
すでに、先の元自分たちのいた宇宙空間は寿命を向かえ。
こうして今は新たな宇宙空間にすべての星星を移動させ。
この宇宙空間が安定してまだそれほどの年月は流れていない。
そしてまた。
これから行われる試験では。
新たなあの『宇宙』の女王を選ぶ、いわば『創生の女王』の誕生。なのである。
まだ、その事実は、ほかの守護聖などはほとんど知らないが……
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