リモージュの秘密の大作戦♪ ~第二十五話~
「でも、ここって、ある意味、子供達の遊び場所が少ないのよねぇ……」
一人の母親が、子供の付き添いにきていたほかの母親たちと世間話をしている。
「この前、カフェテラスが出来たり。と、いろいろと娯楽場所があったりもするけど。」
一般人用の守護聖たち用と二つできていたりする。
気兼ねなく行かれるようにと、
守護たちの憩いの場として、新たにカフェを作ったのはリモージュの意見でもあり。
それは、まだ、前女王がこの聖地にいた時に、真っ先に行ったことでもあったのだが。
「ねえねえ。それじゃあ、例えばどんな場所があったらいいと思う?」
ひょこ。
そんな母親たちの足元から話しかけてくる少女が一人。
深く帽子をかぶってはいるが。
その帽子からは、金色の髪が見え隠れしている。
「アンジェちゃんに言っても仕方ないけど。そうよねぇ。たとえば、遊園地とか……」
口に指をあてて考えるようにいっている母親。
「……なるほど。確かに、ここ聖地には娯楽施設が少ないわね……」
ふと考え込む少女。
「あらいやだ、そんなに真剣に考えないでよ。
ここが聖なる場所だって分かってるんだし。遊園地なんてただ言ってみただけなんだしね。」
ひらひらと手をふる母親達。
「……いや……でも……」
考えてみる価値はあるわね。
というか。
聖なる場所だから。
といって、これまで、そういった娯楽施設を作らなかったわけではない。
何代か前の女王のときには、そういったものも創っていたりする。
ただ。
それらは、大概、様々な惑星に寄付という形で。
いろいろな星星にとある程度の時間が過ぎると無償で提供していて。
だいたい、この聖地の中には面だった、娯楽施設。というものは、ほとんどない。
住んでいる一般の人々のために、一応あるにはあるのだが……
ここ、聖地は。
一応、居住区と、神殿の区域がはっきりと別れている。
それは、市民の安全を守るためでもあるのだが。
何しろ、聖地に住んでいる。
といっても、普通の人々は守護聖や女王たちとは、あきらかに違い。
普通の時間率で歳を取ってゆくのだからして。
聖地にいても、やはり雲の上の存在なのには変わりない。
宇宙の均衡を保つべく力を司っている守護生たちと。
それを制御し、保っている女王達などは。
一般の人々からみれば、まさに神様的な存在だからして。
コンコンコン。
……まずっ!?
神経に直接、私室の部屋をノックする音が部屋においてある水晶から響いてくる。
「じゃ、またね!」
「え~、もう戻るのぉ?アンジェちゃん?」
今まで遊んでいた子供達が寂しそうにいう。
「うん。またいつかね!じゃあね!」
とててててっ。
いって、公園から駆け出してゆく。
「……ねえ、あの子って、一体何処に住んでいるの?マイちゃん?」
先ほどまでリモージュと話していた母親が娘に聞いている。
「知らない。」
マイと呼ばれた、くりっとした瞳の女の子が母親に首を横にふる。
「……あの子が行く方向って……宮殿がある方向だけど……
宮殿で働いている誰かの子供なのかしらねぇ??」
いつも神出鬼没に現れては、子供達としばらく遊んでいく、いつもの女の子。
その後ろ姿を見おくる母親達。
「なんか、あっちのほうからいつもくるっていってたけど……」
子供が指差した方向にあるのは、女王が住むという、宮殿のみ。
「まさか。あっちには一般人が住むような場所ないから勘違いよ。」
いって。
子供の手をとる母親の姿が、うららかな午後のひと時、公園の中で見受けられてゆく。
サラサラサラ……
噴水が、きらきらとその午後の日差しをうけて煌いてゆく……
「……このあたりには、人いないわよね?」
きょろきょろきょろ。
あたりを見回す。
――陛下?入りますわよ?
「……まずい!」
今にも、部屋に入ってこようとするロザリアの姿が視えている。
「急がないと!」
ふわっ。
リモージュが手を広げた刹那。
その体は。
淡い金色の光に包まれて。
シャラララン……
鈴の音を転がしたような音をのこし。
そして。
ふわ……
はらはらはら……
残像に、白い羽の幻を残し。
一瞬の間にその場からリモージュの姿は掻き消えてゆく。
かさ……
「……今の……何?」
「いや……この白い羽をもっているとするのは……」
まだ若い二人の男女。
婚約したので、その報告を。
王立研究院本部にと、その連絡に来ている若いカップル。
二人して、とある惑星にと転任していた、王立研究員の研究者。
今、目の前で起こったことに対して目を丸くする。
確か小さな女の子が金色の光に包まれて、そのまま姿が掻き消えた。
そんなことが、この聖地で起こりえるのか。
いや、聖地だからこそ。
といえるのかもしれないが。
互いに顔を見合わせる。
白い羽は、その手に触れると、幻のごとくに掻き消えるが。
二人とも、伊達に研究員はしていない。
それが何を意味するのか。
その羽をもっているのは誰なのか。
よくわかっている。
「……ともかく、主任にお会いするのが先よ。」
「そうだな。ロキシーさんにもあいたしい。」
互いに顔を見合わせて話し合っている二人。
主星の中の首都に位置する王立研究院のふたりともメンバーであり、
かなりの切れ者としても評判である。
「そうか、二人が結婚か!これはめでたいな!」
金の髪の男性の言葉に。
「お久しぶりです。ロキシーさん、そして、エルンストさん……。いや主任。」
ぺこり。
頭を下げている金髪の女性に。
「いやいや、ロキシーでいいよ。主星のほうの研究院もつつがないようですね。」
「あのなぁ、エルンスト。いつもながら。もうちょっとうれしそうな顔をしろよな!
せっかくの、かつての同僚がわざわざやってきたっていうのに!」
めがねを上げつつ。
淡々といっているエルンストに突っ込みを入れている男性。
「……ロキシー、うれしそうにしていませんか?私は?」
「してないって。」
くす。
くすくすくす。
「主任、全然してませんって。」
「ロキシーさんのおかげで主任も人間らしくなってますしねぇ。」
くすくすくす。
「な゛!?私のどこが人間らしくないっていうんですか!」
「よくいうよ。機械人間って、あだ名がついてるの。もう忘れてるのか?お・ま・え・は?」
「ロキシー!!」
じゃれあうかつての仲間。
今は、王立研究院主任と、そして、そこに勤務する研究員となったものの。
大切な仲間には代わりない。
というか。
彼らも、ちょっと前までは、ここ、聖地にて勤めていたのだからして。
「こ……こほん。それで?ジュノー?他にも何か言いたいことがあるんじゃないですか?」
こほん。
ロキシーとの言い合いに負けて、少し顔を赤くしているエルンスト。
まず、ロキシー相手以外では、彼を任せるものなど誰一人とてみたことがない。
「さすがだな。顔色だけで、分かったか?」
「あのですねぇ。デマントイド。そういう言い方は……」
言いかけるエルンストに。
「まあまあ、折角、親友の二人が尋ねてきたんだ。今夜は飲もうぜ?な?」
「私はまだ勤務中です!」
ロキシーの言葉を即座に断っているエルンスト。
「ちぇ。だそーだ。ジュノー=ハート=グリューン。デマントイド=スカッシュ=ブランテッド。」
ロキシーが舌打ちする。
くす。
その代わらない様子に安心する。
ここは、いつ来ても平和である。
-続くー
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