リモージュの秘密の大作戦♪  ~第十六話~

「ミメイ、綺麗だよ。」
「ありがとう。セルディ。」
花嫁に言っているのは、花婿でもあるセルディ。
水晶のような銀色の髪が特徴的。
花嫁の親族の席には一つだけ開いている席がある。
それは、ミメットがどうしても、といってとってある、聖地にいってしまった姉の席。
姉はここにはこれなくても、きっと見ていてくれるから。
という希望にのっとって。
ミメットの姉である、アンジェリーク=リモージュの席も用意しているのである。
つまりは、絶対にくるはずのない……座る者がいないはずの席を。

知り合ってしばらくしてから、このミメットが、女王候補を出した家柄だと知った。
そしてその後。
特殊な一族の出身だとも。
それらを全てひっくるめて、まとめて受け止める自信が会った彼はミメットにプロポーズをし。
そして、今日の運びとなっているのである。

「綺麗よ。ミメイ。」
両親は、ミメット。 
ミメット=パール=リモージュ=エターニア。
ミメットのことをミメイと呼んでいる。
そして、妹に姉と同じ名前をつけたのは、姉であるリモージュが他ならぬ長であったからに他ならない。

長は、娘であってもいずれは長とならなければならない。
一族の中でも神聖たる存在であるからして。

幼い日。赤ん坊のリモージュのその枕元に、レインボゥ・フラワーが出現したときには。
驚くと同時に、長が誕生し、しかもそれが我が子!?と、驚愕したのも。
それは、もう昔のこと。

母親であるエメラルダが言ってくる。
「アンジェもきっと、見ていてくれるよ。」
そういう父親アメジステン。
「そうね。きっと、聖地から見ていてくれるわね。」
「さ、そろそろ時間だよ。ミメイ。」
セルディの言葉に。
「ええ。お願いね?」
言って会場にと向かってゆく。

席につき。
披露宴が始まるかというその直後。
主役の二人が登場し。
ゆっくりとその表の席にと歩いてゆく最中。
ぱたん。
後ろでドアが開く音がする。
ふわ。
そのとたん。
参加していた人々は、一辺して空気が浄化されたように肌でその空気を感じていたりする。
事実、浄化されているのであるが。
そして……しばしの静寂。
一人が、入ってきた人物に気づき、そのまま呆然とする。
その目にも。
入ってきた少女が。
真っ白いというか淡い金の光をもった羽を背中に持っているように一瞬映していたりする。
その空気にはミメットは覚えがある。
がたっ!!
思わずその姿をみて立ち上がる両親。
その目が見る間に母親の目には涙がたまり。
父親は口をあんぐりとあけている。
「まにあったわね♡」
聞き覚えのある声がミメットの耳にと小さく聞こえてゆく。

まさか……
そんな……
後ろを振り返ると。
聖地に赴いたときとまったく変わらない姿。
ふわふわの金髪も。
いや、違っているとすれば、
それは、よく通常とっていた子供の姿ではなく、歳相応の十七歳の姿である。
ということだけ。
その姿を捉えるや否や、会場中は一瞬、水を打ったように静まり返る。
「ね……」
見る間に瞳に涙がたまり。
「姉様!!!!!」
そのまま、ウェデングドレスの端をもち、その人物の方にと走ってゆく花嫁の姿。

「姉様!姉様!!」
そのまま、胸にしがみつくように抱きつく。
それを皮切りに。
『どよっ。』
会場中が一気に揺れてゆく。

姉って……
じゃあ、聖地にいったという、姉?女王候補に選ばれたという?
まさか?
そんなどよめきが起こるが。
どちらが女王になったのかは、一般の人々には知らされない。
だから。
まさか、この人物が女王であるなどと、誰も夢にも思うはずもなく。

「ミルキー、よかった。間に合ったわね♡」
なでなでと。
自分と同じ金髪をなでるリモージュ。
「……アンジェ……」
エメラルダが声を震わせる。
「久しぶり。母さん。」
にっこり。
「……聖地からわざわざ来たの?」
恐る恐る紡ぎだされる言葉。
さすがに、家族には、リモージュが女王になったことは伝えられている。
「当然♡」
「……あぅ……」
変わってない……変わってないわ……この子……
その言葉に内心汗をかき、一瞬よろける両親。
つまりは、おそらく……
女王ともあろうものが、護衛もつけずに出ることなど不可能。
ということは……
間違いなく、黙って出てきているということに他ならない。
「あら?母さん?父さん?どうしたの?」
「どうしたのって……あのね……」
言いかけてはたと止める。
まさか、女王ともなった人が。
といえるはずもなく。
そんな両親の想いを知ってか知らずか、にこにこと笑っているリモージュ。
「始めまして。貴方が、ミメイの姉ですね。
  私は、セルディ=ラスガ=ラズリセスといいます。お会いできて光栄です。」
すたすたと歩いてくるミレイの相手。
「始めまして。私が、このミルキーの姉の。アンジェリーク=リモージュよ♡」
にっこりと、リモージュが笑ったその刹那。
一瞬その場の空気すべてが、歓喜したように揺らめいてゆく。

「さ、主役は席にいかなきゃ♪ミルキー、私の席もあるんでしょ?」
「え……うん!」
「じゃ、私も参加させてもらうわね。かわいい、妹の結婚式なんだから♡」
そういって、二人を促すリモージュ。
「さ、父さんと母さんも、席に戻りましょ♪」
そういって、すたすたと用意されている席に向かってゆくリモージュ。
歩くたびに、まるで白い羽が待っている錯覚に感のいいものは陥っているが。

ざわざわ。
はた。
「え……え~。飛び入りの来賓がありました。
  何と、花嫁のお姉さん。聖地からわざわざ見えられたようですね。」
進行係も、花嫁の姉が聖地に招集されたということは知っている。
それほどまでに、上流階級においては、エターニア家は有名になっていたりするからして。
しかし、まさか女王本人とは夢にも思うわけもない。
……分かってしまったら、パニック必死である。
ざわざわざわとざわめく会場。
そしてまた、にこにこと妹の花嫁姿をみて喜んでいるリモージュ。

「アンジェ?ちゃんと、ロザリア様たちには言ってきているの?」
小声で確認している母親。
「あら♪いってるわけないじゃない♪」
「・・・・・」
思わず頭を抱えてしまう。
「……女王陛下がこう簡単に聖地から離れてもいいの?」
疲れたような母親の言葉に。
「大丈夫よ。レインボゥ・フラワーを置いてるからvv」
「……そういう問題か?」
あいかわらずな娘のその行動に、あきれるしかない両親の姿がその場にてみうけられてゆく……


                   ー続くー

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