リモージュの秘密の大作戦♪  ~第八話

「ロザリア!!ごめんなさい!!遅くなったわ!」 
ぱたぱたぱた。
近づいてくる足音とともに。
ばたん。
扉を開く音と共に、入ってくる女の子が一人。
ふわりとなびく金の髪。
服装は、普段着に着がえているので、一目みただけでは、女王とは分からない。
……が。
その雰囲気からして、一目瞭然。
そして、ふと、アルタスとチャールズに視線を向ける。
「始めまして。アルタスさん。確か以前お目にかかりましたね。」
にっこり。
笑いかけるアンジェリーク。
まだアルタイルが幼いとき、水晶の一族の祭りにて。
実はあったことがあるアルタスとアンジェリーク。
外界では、すでにそれほどの年月が経過していたりする。
「え……。あの……どうして……」
どうして、長が??
と、言いかけたところを、アンジェが口に手を持っていき、黙るようにと指示をだす。
伝承では、水晶の一族。
つまり、クリスタル一族の長が女王になるときは、宇宙に何らかの事柄が起こっているときのみ。
確かに、かつての宇宙は滅びの寿命を迎えてはいたが……
まさか、長みずからが関っているなどとは。

クリスタル一族。
かつて、偏見と欲の深い人間達によってすでに絶滅したと思われていた一族。
人とはまったく異なる時間をすごす一族。
言い換えれば、外界の中で、唯一、女王や守護聖と同じ時間を過ごしている一族でもある。
クリスタル一族の平均寿命は……1000年から数万年。
彼らは、各自自分の『花水晶クリスタル・フラワー』をもち、
その力によって姿までも、自在に、子供の姿から大人の姿にまで変化することができるのだ。
そんな中で、唯一、ウォン財閥は、彼らの存在もあり、
創始者のウォンは、ここまで、このウォン財閥を、宇宙一の地位まで、確立できたのである。
つまりは、知られていない種族と唯一、関りのあった接点でもあった。
そして、アルタスは、唯一。
アンジェリークがその一族の長であることを知っている存在でもある。
アンジェリークの属する一族の長は。
実は、同じ魂のもと、つながれている。
つまりは、初代長であり、初代女王であり、
そして……
この仕組みの宇宙の要となっている魂の存在。
つまりは、ずっと同一人物なのである。
長―【アンジェリーク=ユニバース】は。
そして、それは、レインボゥ・クリスタルによって、判明する。
レインボゥ・クリスタルが示すのは、『レインボゥ・フラワー』のみ。
それは、長にしか扱えず、いつ誕生するともない長を、唯一、外部に知らしめる手段でもある。
そして、それに連なる属性で。
花水晶クリスタル・フラワー』が存在する。
これらの頂点に達する力の持ち主。
それが一族の長の力。
かつての伝承では、かろうじて、長の力が女王と同等、それ以上である。
と伝えられていたものの。
今は、その事実をしるものなど……そのような存在はいるはずもない。

しばし唖然としていると、いや、雰囲気に飲まれている、といって過言ではないアルタス。
「ふふ。ここにきてもらった理由はね♡ちょっと、内緒で頼みたいことがあるのよ♡」
「??」
「陛下?」
無邪気にいたずらっぽく話すアンジェリーク。
「実はね、まだ、ちょっと、外界では先の話なんだけど♡
  ふふ♪貴方たち、ウォン財閥に、ここ聖地での行商をやってもらいたいのよ♡」
にっこりというリモージュ。

256代女王。
アンジェリーク=リモージュ。
その力は、誰にも疑えてるようなものでもない。
何しろ、移動した刹那、瞬時に安定を施し。
宇宙を平穏に知らしめた女王の力は……

そしてにっこりと、アルタイルの隣で珍しいお菓子を必死にたべているチャールズをみながら。
「そうね。この子が、二十三歳・・。今から、外界では、二十数年後のことになるけど…ね。」
まだ、それに見合う魂は創りだしてはいない。
あちらの、意思の意見も聞きながら。
それにふさわしい魂を作る必要があるからして。
その準備は、すでにリモージュは整え始めていたりする。
誰にも内緒で。
実は、アンジェリークは、魂といった、根本なる存在を作り出すことも、簡単にできるのである。
知られていないが。
「陛下?すると、まだまだ時間はかかるんですか?例のものが誕生するのは?」
ロザリアの言葉に。
「そろそろ、下地は出来てるから。あとは、意思が育つのをまつだけよ♡
  意思がその力で、形を取れるようなにって、初めて目に見える形で球体が誕生するからね♡」
「そういうものなんですか。」
感心するロザリア。
このアンジェ、自分が知らない知識をいろいろと持っていたりする。
これで、一般生徒と一緒にいたというのだから。
女王候補として、特別生徒としてスモルニィ学園に通っていたロザリアにとって、
まさに驚くべきことではあるが。
いや、というか。
よくまあ、七歳程度の女の子が入試で満点をとり、しかも、ずっと首席を通していた。
という噂は、いやがなくても耳に入っていたのだが。
そんなアンジェの本来の歳相応の姿を知ったのは。
ロザリアが熱をだして寝込んだとき。
つまりは、女王候補に互いが選ばれてから、飛空都市でしばらく日がたったあの日のこと。
アンジェはロザリアの看病をするために、あえて元の姿にもどったのである。
それからは、かなりアンジェとロザリアの距離は縮まった。
というか、その姿をみてからというもの。
ロザリアの心の中には。
――この子なんだ。
という思いが確実に、断定されていたが。
「????」
そんなアンジェとロザリアのみが分かる会話をしている中で、首をかしげるしかないアルタス。
あまり緊張しないというのは、
このアンジェを昔、子供のころ……
つまり、十数歳のころに知っているからに他ならない。
クルスタル一族の祭りで長としてのアンジェをみているのだ。
それは、アンジェがスモルニィ高等部に進級する、少し前のことだったが。
目の前にいるのは、女王というよりも。
かつての、昔なじみの少女にあった。という実感のほうがつよい。
その雰囲気から発せられる神々しさは、逃れられない事実だが。
つまりは、この少女が女王である。
ということは。
――この宇宙を司っている、存在……女王である、ということを……


                       -第9話に続くー


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