エル様漫遊記・覇軍の策動偏

一日のうちに、以前と…つまりはガーヴがこの国を…この町。
ガイリア・シティを拠点としカタート山脈に攻め込もうとしていたあのとき。
あのときもまた、城内といわず街中にも紛れ込んでいた魔族たちが一瞬のうちにと掻き消え、
大騒動となったことがあったが。
今回のいッ権はあの時よりさらに人々の間に不安と戸惑い、そして混乱をうんでいる。
この街全体が負の気に包まれて、何とも面白い状態と成り果てていたりする。
これ以上、混乱を大きくしないために、とルナの直属の部下たる一応竜王の立場にある存在たちはね
自分達の招待を一部のたち以外には伝えてはいないが。
別に教えてもいいでしょうに……
人間達を媒体とし、具現化していた魔族たちは、あるものは殺され、あるものは消滅し。
そしてある存在は滅び…と、確実に物質世界面より退いている。
まったくもって情けない……
もう少し根性みせなさいよねっ!
完全にその魂すらも吸収され、喰いつくされた人々のその【抜け殻】は、
魂というか本来の人間の意識が戻ることすらなく倒されるとともに大地にと還り溶け消える。
面白いので、魔族と化していたときの記憶を持たせたまま、そんな人間達を生き返らせてみたところ。
ことごとくが発狂し、またはそのまま自殺したりしたものたちも続出したりしたけども。
まあ、後の後始末は彼ら…即ち【人】の手がそもそも行うこと。
結局のところ、そもそも誰も国王が入れ替わっている、ということに気づくことすらなかった。
というのが原因なんだし。
つまりは、この国全体の責任でもあるし♡
ともあれ、後始末はゼラスやダルフィン。
そして、なぜか動けなくなっているらしいヴラバザードの代わりとしてやってきているバールウィンとランゴード。
この世界でいうところの竜王二人とSの腹心二人に後始末はまかせ、あたし達は数日後。
それぞれこの街を出ることに――


「…しかし。どうにも納得いかねぇな。今回の事件……」
「私としては、リナさんに差し出すうんぬん。とかいっていた腹心たちの台詞が気になります」
ガイリア・シティを出るためにと町の出入り口にと向かいながらふとルークがそんなことをいい、
そんなルークに続き、ミリーナもまた何やらいってくる。
「…そういえば、ルークさん達はあのとき一緒じゃなかったですしねぇ」
「だな。リナがSと呼んでいるこの世界の魔王…北の魔王である彼はしばらく俺たちと行動を共にしていたしな。」
とある一件。
というか何を考えているのか北のSのやつは、自力で自らの残りの欠片を探すべく、
力をかなり削いでまで氷から抜け出して旅をしていたところ。
ある村の村おこしに協力してくれ。
と頼まれて、場所が場所であったがゆえにそれを引き受け。
その五。
あたし達がその村にと出向いたときに、アメリアたちもまたSとであったのだけど。
…元々、本体そのものは一つなんだから、それを利用して探せばいいのに……
ほんっと。
無能というか何というか……
どこかSって抜けてるのよねぇ~。
「…おそらく、リナに上司を差し出すことで自分達にくる被害を食い止めようとしているんだろ。
  今はゼロスが主にその役目を負っているようだが」
そんな二人の会話にぽそり、と姿をかろうじて保っているすけた姿をしているゼロスをみていっているゼル。
な~ぜかガウリイの復興作業の手伝いで、ゼロスは精神的ダメージおってるのよねぇ。
竜王たちが来ている。
とミルガズィアの報告をうけてメフィの村でもあるエルフの隠れ里より、エルフたちもまた作業にかかわり、
その中でエルフたちにせがまれてミルガズィアが語った【ある言葉】のせいで……
竜語であったがために、人間達にはさほど被害はでてはいないにしろ。
ゼロスを含めた魔族。
そして神族側にはダメージが残っていたりする。
ほんっとう。
ハタから視ている分には竜族やエルフたちのセンスは面白いんだけどねぇ。
失敗したかなぁ~?
ともかつては思ったりもしたけど、面白いからそのままかつて存続させたことはあるわよね。
ふふ♡
「ともあれ……後は、ディルスの人たちの手によりどこまで復興できるか…ですわね。」
シルフィールが背後を振り返りつつ、ぽつりとそんなつぶやきをもらす。
朝霧に包まれているガイリア・シティの通りには、少しづつ店を開き始めた露天商や、
行き交う人々の姿が垣間見えている。
「この街も大変だろうが。だが案ずるこはない。生きている存在というのもは案外たくましい」
更地なり、荒野と化した大地においても命あるものは自らの存続をかけて行動する。
伊達に千年以上も竜として生きているわけではない。
ミルガズィアは【命の何たるか】を様々な形で目にして生きている一人でもあるので、
その言葉には少なからず含まれている力がある。
疲弊しきったかつての戦いの折…降魔戦争の折からしてみても、
命あるものは、新たな道を作り、そして歩んでいる。
それが判っているがゆえに、彼ゆえの言葉の重み。
言葉には少なからずのちからがあり、ミルガズィアの言葉に何かを感じしみじみとうなづくゼルたちの姿。
「ま。別に街とか大陸とかが消滅したってわけでもないんだし。
  復興。っていってもそれほどのものじゃないわよ」
「確かに。中には星間戦争などで住むべき星を自らの手で消滅させたりする存在達もいたりするけど。
  そんな存在達でもどうにかして命をつなごうとするしね」
「中には自分達が一番なんだ。という傲慢な考えをもったりしてよそに侵略。というのもいるけどね」
「…?何だ?その星…とか何とかって……」
「「自らの住むべき…って……」」
「?リナさん達ってよくその言葉をつかいますわよね。一体?」
『聞かないほうがいいと思(います)(うぞ)。』
至極最もな意見を言うあたしとユニットの台詞に、ルークが首をかしげ問いかけてくる。
一方で、幾度も異界黙示録クレアバイブルに接触しているがゆえに、
意味を図らずとも理解してしまったミルガズィアとメフィはなぜか心なしか顔を青ざめさせ、
動揺を隠し切れずに何やら震える声でつぶやき、
そして意味のわかっていないシルフィールはといえば首をかしげるのみ。
異界黙示録クレアバイブルにて多少の知識を――
即ち、【あたし】のことを質問し、簡単な概要を視ているゼルとアメリアといえば、
言葉すくなにそんな彼らの質問に対し、暗に【これ以上聞くな】という意味合いをこめて言っていたりする。
「ま。そんなどうでもいいことはおいといて。」
『……どうでもよくないような……』
つぶやくルークやミルガズィアの声をさらりと無視し、
「それはそうと。ミルガズィア達はこれからどうするの?
  一応グラウシェラーのやつの計画は計画倒れになったわけだし。」
「あっ!?いっとくけど、いくらミルガズィアさんたちでも。
  俺とミリーナのラブラブ旅路を邪魔するってのはなしだぜ!?」
あたしの問いかけに、ふとそのことに対してミルガズィアにと何やらいっているルーク。
だがしかし、そんなルークをさらりと無視し、
「ルークの戯言はともかく。わたしたちはまた遺跡探しなどをしつつ宝探し屋トレジャーハンターを続けるつもりです。
  この依頼を受ける前に向かっていたところもありますし。
  リナさん達やミルガズィアさん達はどうなさるんですか?」
街の出入り口の門をくぐり、足をとめ、ざっとあたし達に視線をむけてミリーナがいっくてる。
「……戯言って……」
淡々というミリーナの横でルークが何やら多少いじけていたりするけども。
そんなあたし達の言葉をうけ、
「――うむ。今回の一件で魔族側が新たな欠片を目覚めさせようとしていたのは明らかに明白。
  魔王。そして今後の対策を話し合うためにも今一度、竜王様方と話し合う予定にしている。
  ゆえにお前たちとはここまでだ」
一緒についていき、リナ殿に関しての真実を見極めたいが、結界外の様子も木にかかる。
それでなくても…ここ最近。
どうやら結界のそとでもレッサーデーモン等が出現している。
とミルガズィア達は風の噂で聞いている。
まあ事実だけど。
そんなことを思いつつも、表情一つ変えることなく淡々と言ってくるミルガズィア。
国としてはまさか国王が魔族と成り代わっていた…などという真実は余りに衝撃的なこと。
そう、かつてのレイナードのときもそうだったように。
ましてやそれが赤眼の魔王ルビーアイの腹心の一人である覇王ダイナストグラウシェラーだったなどと。
正直に発表したところで、さらなる混乱を招くことは必死。
まあほとんどの存在はそんなこと信じたりはしないけど。
あたしとしては、素直に発表してみたほうが面白くなりそうなのでそのほうがいいとおもうけど。
ともあれ、幽霊となっているディルス二世とそして、肉塊より開放されたヴェルズ。
そしてそのほかの残った関係者のみで話し合い――
結果。
ヴェルズは【シェーラに操られていた】ということに表向きはし、今回の騒動を丸く治める意向らしいが。
国が落ち着いてから、即位したばかりではあるが国王職を退き、
その身を神殿に帰依することに決めたらしい。
別にそんなことをしてもまったく意味を成さないのに。
人間って本当…我ながら面白い存在を創造ったものだ、と思わずにはいられない。
昼夜問わず続いていたデーモン達の出現もぱったりとやみ、
この近辺からは下っ端魔族の気配は綺麗さっぱりと消えている。
強大な力がこの場に集まっているのを感じ取り、下っ端たちが恐れを抱いて他に移動しただけなんだけど。
「…で?その後は山にかえるのか?」
そんなミルガズィアとメフィに、のほほ~んといっているガウリイに対し、
「『山に帰る』とはいわんでくれるか?」
「その言い方じゃあ私達。何か獣みたいじゃないですか」
ずずいっ。
とガウリイに迫りつつ同時に何やらいっているミルガズィアとメフィの姿。
「でも、人間も竜もエルフも。ある意味動物だし♡」
「そうよねぇ♡」
そんなやり取りをみて、思わずつぶやくあたしに同意しているユニット。
そんなあたしとユニットの視線の先では、
「ああああ。すいません。すいません」
何やらあわてて二人に謝っているガウリイの姿が見てとれるけど。
「でもガウリイさんの言うとおり。ではありますよね。
  言葉の使い方はガウリイさんだから仕方ないとしても。メフィさんのあの村も山の中ですし。
  そして竜たちの峰ドラゴンズピークも。」
「ガウリイのやつが丁寧にいうわけないしな。というかヤツのことだ。
  きっと竜たちの峰ドラゴンズピークという言葉すら忘れているにきまってる。」
「……というより、わたくしとしては。今リナさん達が言ってた台詞のほうがかなり気になるのですけど……」
ミルガズィアとメフィに詰め寄られているガウリイをみながら、そんな会話をしているアメリアとゼルに。
ぽつり、といっているシルフィール。
「そういえば。アメリアさん達はどうなさるおつもりですか?」
未だにその姿を半透明から多少色をつけつつもね
そんなアメリアたちにと質問しているゼロス。
何とか話題をそらそうとしてるみたいだけど。
「何をいってるんですか。ゼロスさん。こうして再び私達が再開し、覇王の企みを阻止したこと。
  これぞ正義の心がよびあったがゆえっ!
  というわけで、まだまだせっかくですから私達はリナさんについていきますっ!
  さらに正義を広めるためにっ!」
「いや俺は……」
「わたくしは……」
そんなアメリアからこそりと逃げようとする二人ではあるが。
そんなゼルとシルフィールの服をがしっとつかみ、
「ねっ!ゼルガディスさん!シルフィールさんっ!」
いともきっぱりと有無を言わさず言い切っているアメリアだし。
そんなアメリアに対し、
「……どうやら逃げられそうにないな」
はぁ~……
アメリアの父親のフィルよりアメリアのことを頼まれているゼルとしては、
アメリアを放っておいて別行動…つまり【個別に行動する】というのは彼の本意ではない。
説得は無理そうだ……
と瞬時に判断したがゆえに、盛大にため息をつきつつ言ってるし。
くすっ。
「あらゼル。そのため息はどういう意味かしらねぇ♡
  それに、何『あたしに関わったら命がいくらあっても足りない。』とか考えてるわけ?ん?」
「だぁ!だ・か・らっ!勝手にお前は人の心を読むなっ!」
「……わたくしは。……そうですね。しばらくリナさん達とご一緒させていただきます」
何か一緒にいないと後悔しそうな気もしますし……
虚無が具現化し、全てを飲み込む。
といった内容の神託を以前受けているシルフィールとしてはそれが気になってしかたないみたいだけど。
ま、それはそれで事実だけど。
というかすでに【あたし自身】がこうして今【人間】やってるんだし♡





              -続くー

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あとがき:
薫:♡覇王ダイナスト

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