まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

とりあえず。気分転換に先に打ち込みなのですv(こらこらこら)
今回は、スレイヤーズSP25巻。騎士道のススメ編です。
漫遊の番外としては何話にしようかなぁ(こら・・・汗
ちなみに時間軸の設定として。
サイラーグの事件がおわり。セイルーンにと向かう途中の話となっていますv
それゆえにルナが出てきますが(笑)
ルナを伴い、リナと合流したナーガとともに。
シルフィールをひきつれて、セイルーンに向かう途中のお話ですv
意味のわからない人は薫のHPの漫遊本編を参考にしてくださいな(他人任せ・・
何はともあれ、いっきますっ!

#####################################

エル様漫遊記~騎士道の勧め編~

砂時計の落ちる音は、フェォークがお皿にあたる音によって掻き消える。
「…あ、あのぉ~……」
「シルフィールさん。邪魔をしたら後が怖いですわよ?」
「あら?ルナ?どういう意味かしら♡」
びびくうっ!
あたしの言葉になぜかびくり、と震えるルナの姿に。
「すげ~!四度目のおかわりだぜ!?」
「もう片方の色っぽい姉ちゃんも頑張れ~!!」
あたし達のテーブルの周りには、やんややんやと喝采を上げている人間達の姿。
そしてその後ろにはなぜか顔色を悪くしたこの店の店長も混じっていたりする。
「しかし…さすがというか……」
何というか…
そこまでいいかけ思いつつ、言葉を区切っているシルフィール。
サイラーグからシルフィールをつれて、ルナを含んでセイルーンにと向かっているあたし達。
「リナ。……おまえ、それもう四皿目……」
一皿をすでに食べ終えているガウリイが何やらいってくるけど。
「あら?どうってことないでしょう?」
「お~ほっほっほっ!こっちもあと一口よっ!」
いってナーガが最後に残ったパスタを一口。
サイラーグを出て最寄の港町から、
ここ、ラルティーグ王国の片隅にある海辺の城下町にとやってきているあたし達。
今この場にいるのは、あたし以外には野次馬たちと。
そしてまた、一緒に行動しているガウリイにルナに。
そしてシルフィールにナーガ。
この四人。
あたしを含めて五人だけど。
高台にはこの地一帯を任されている領主、ルールディンの城が垣間見えているここ、ベロゥル・シティ。
俗に一般にいう、海辺の城下町。
「すげ~!全部たべたぜ!?」
「さって。約束だし。そこのルナとシルフィールの二人の食事代も無料でいいわよね♪」
あたしの言葉に、なぜか顔色を真っ青にして砂時計をみていた店の主人。

この町についたのがお昼ごろ。
ふと目に入った食事の看板に。
【当店名物。大盛りパスタ。時間内に食べきった方は無料】
とかかれており、表向きは資金の節約にもなるし。
ということで、それに挑戦しているあたしとガウリイとナーガ。
なぜかルナとシルフィールは参加せずに普通の食事を頼もうとするので、
面白半分に、
『一人でもし二皿以上たべられたら、二人の普通の注文分の食事も無料にならないかしら?』
と掛け合ってみたところ、店の主人は、そんなことは出来るはずもないから。
と笑いつつもあっさりと、『出来たら無料にしてあげるよ。』といってきたのはすこし前。

まだ半分以上砂時計の時間は残っている。
「すげ~な!」
ざわざわとざわめくギャラリーたち。
とりあえず…っと♪
「…そんな……」
がっくりとうなだれる店主の声とともに。

にゅるにゅる…にょぷんっ!

『うどわぁぁぁ~~!!??』

なぜか、店のドアから窓から換気口から。
とにかく突如として部屋の中に数百匹のマナコが投げ込まれ。
騒いでいたギャラリーたちが何やらそれをうけてさらに騒いでいたりする。
「ちょっとぉぉ~!!」
ぷにゃっ。
…あ、ナーガがナマコに埋もれてるし♡
抗議の声を上げようとして、そのままナマコの波に飲み込まれているナーガに。
「…エル様…これ知ってましたね……」
なぜか小さくつぶやいているルナの姿が。
ルナは刹那、自らのテーブルの回りには結界を張り、
ナマコが自分が座っているテーブルには来ないようにしていたりする。
一方では。
「…はうっ!」
なぜかルナと同席して座って食事をしていたシルフィールはといえば。
たかが、ナマコの姿をみてそのま卒倒して気絶していたりするけども。
「って!オレ、ナマコは注文してないぞ!?」
そんな店に埋もれるほどに投げ込まれたナマコをみていっているガウリイ。
「…ガウリイさん……そ~いう問題じゃあないと思います……」
なぜかため息まじりのルナの声がしていたりするけど。
「ナマコって新鮮さが命なのよね~。」
死亡したナマコは何かペタっとなるし。
なぜかナマコに埋もれ、店内にいた人々は面白いまでにパニックと化してたり♡
これがわかってたからこの町によったのよねぇ♡
ふふ♡
ちなみに、当然ながらあたしの周囲には投げ込まれたナマコはかかってもいないけど。
「……ふぅ。…あの?これ処分してもいいですか?」
「好きになさいな♡」
パニックになっている人々とは対照的に、そんな人々をみつつ紅茶を飲むあたしにルナが聞いてくるけど。
そんなあたしの言葉をうけ。
ルナがちいさくつぶやき。
次の瞬間。
店内のマナコの姿はことごとくかききえてゆく。
どうやらナマコたちは元いた海に戻したらしいけど。
どうせだったら、投げ込んだ当人たちの家に瞬間移動させたらよかったのに♡



「…そりゃあ。『真なる騎士団ライトナイツ』さ。」
「…騎士団?」
お皿を磨く手も休めずに言う男の言葉に、眉をひそめているシルフィール。
現場となった食堂の近くにある別の食堂。
夕方でもなく、昼時でもない時間であるがゆえに店の中には客が少ない。
「もちろん。正規の騎士じゃねぇ。自分達でそう名乗っているだけの連中さ。」
「つまり…ごろつきってことか?」
テーブルカウンタにこしかけて店の主人にと話しているガウリイとシルフィール。
シルフィールはなぜか未だに顔色わるいけど。
ガウリイの言葉に。
「まあ。そうともいうな。」
いって苦笑する。

あの一件の後。
なぜかあたし達は店の人に感謝され、ルナがすこし残っていた臭いとかも取り除いていたせいか。
その辺りのことに関しても感謝してきていたらしいけど。
ナマコが吐き出したモノをみて気絶したナーガと、ナマコをみて気絶したシルフィールをつれ。
ひとまず宿をとり二人を寝かせてしばらくし。
目をサメ舌ナーガが何かわめき、犯人をみつける!
とかいって外に出て行こうとしたので、とりあえずナーガにはルナを同伴させている。
今ここでナーガがまた道に迷っていなくなったら、セイルーンで待っている事柄の楽しみがなくなるしね♡
何かナーガの荷物にナマコが二匹ばかり入っていてナーガが意地になった。
というのはあるにしろ。
ともあれ、しでかしてくれたことはきちんと本人たちにけじめをつけてもらう。
ということで意見はまとまり。
とりあえず二手に分かれ、気がついたシルフィールをつれてひとまず聞きこみをしているあたし達。

「何かよ。『今の騎士団はなっていない。自分達こそが騎士としてふさわしい。』とかいってるらしいけどな。
  で、騎士団の回りにちょくちょく嫌がらせをしてるみたいだぜ?
  このへんの店には結構騎士団の連中が出入りしているからな。
  今回、というかさっきはあの店が標的にされたんだろう。あんたたちはそれに巻き込まれたってわけだ。」
「…子供じゃあるまいし……」
店の主人の説明につぶやくガウリイに。
「ここの騎士団は一体、何をなさっているんですか?!」
未だに多少顔色も悪くシルフィールが何やら問いかけているけども。
「いや。野放しにしてる。ってわけじゃあないんだけど……」
男の言葉をさえぎって、バタン、と店の入り口の扉が開く。
外の明るさによって戸口にたった人物が逆行となり、その姿を影と化している。
がちゃり。
と鋼のかすれる音。
鎧兜を身につけた男性は、店すらもあたし達以外にはいない店内にと踏み入って、店内をぐるりと見渡すと。
「すこし前。この近くで真なる騎士団ライトナイツを標榜するものたちが騒ぎを起こしたらしい。
  何か事件に関係ありそうなことを知っているものはいないか!?」
などといって朗々と声を張り上げていたりする。
どうでもいいけど…メンバーはとっくにわかっているんだから、そこからどうにかするのが彼の役目でしょうにねv
「…もしかしてあの人も偽者?」
小声で顔をしかめ、問いかけるシルフィールの言葉に。
「鎧の胸に鹿の紋があるだろ。さっきいった連中を追っている正規の騎士殿だよ。」
などといって、店の主人は答えてくる。
「へ~……。野放しにしてるわけじゃないんだ。」
ガウリイがそんなことをいっているけど。
「あら?野放しにしているようなものよ。誰がやっているかわかっていて。何の手もうてないんだし♪」
にこやかにいうあたしの言葉に。
「…リナさん?『誰がやってるかわかっている。』って……」
声を震わせ問いかけてくるシルフィール。
「まあそれはそれとして。とりあえずあたし達も巻き込まれたんだけど♡
  状況説明くらいはしてくれるわよねvコルド=バンキンス♪
  いやっていうんだったらルナを通してラルティーグ国王にかけあうけど♡」
そんなあたしの問いかけに。
「?きでんは?見たところ旅の魔道士殿と見受けるが?そちらは剣士殿に巫女殿か?
  いや、それ以前にどうしてわしの名前を……」
「あら♡誰でもみればわかるってば♡」
あたしの即答に。
「リナさん。わからないとおもいます。」
「…いや、そ~でもないぞ?シルフィール。このおっさん…胸のところに名前入りプレートついてる……」
「……あ……」
『…………』
鎧の紋の下に小さくプレートに名前を刻んで胸につけていたりするし♡
この男って♪
ガウリイの突っ込みに互いに顔を見合わせて思わず無言になっているシルフィールと店主。
「おお!これに気づくとはさすがっ!」
いってすらっとなぜか剣をひっこぬき、そのまま剣を天へと突き上げ。
どすっ!
とうぜん切っ先が天井に刺さるかそれにもかまわず。
「騎士とは即ちっ!全てをさらけだし己が剣にて道をゆくものっ!ゆえに名を公然と名乗るのは道理っ!」
などといってるし。
「どうでもいいけど。状況を説明してくれない?でないとあたし暴れるわよ♡」
「お、おいっ!リナっ!それはまてっ!」
「そうですっ!りナさん!えっと…ゴルド=バンキンスさん。といいましたわよね?
  わたくしたち、先刻食事をしていたらあれに巻き込まれたのです。いきなりのことでしたし。
  聞くところによれば真なる騎士団ライトナイツという集団の仕業らしいですけど。
  調査は順調なのですか?
バンキンスの行動に、多少ひきながらシルフィールが問いかけてるけど。
そんなあたし達の問いかけに一つうなづいて。
「なるほど。それは災難でしたな。淑女レディ
  しかし、心配にはおよびません。調査はすすんでおります。
  これまで聞き込んだ話によれば犯行が行われた直後。
  被害にあった店の周りを大量のナマコを抱えた青年が二十人ほどたむろしていたとか……」
「つうか……それって、かなり不自然だろ~が……」
「都会人の周囲の無関心ぶりは嘆かわしいものがありますな。」
「そういうレベルの問題ではないかと……。そのときに通報していれば犯人を捕らえることもできたのでは?」
ガウリイにつっこまれ、さらっというゴルドの言葉に、とまどいつつも問いかけているシルフィール。
「というか。そもそもあの店といわず、
  この一帯の店にメンバーが出入りしているのにも関わらず、取り押さえていない。というのが問題よね♪」
こしかけたままで続けていうあたしの言葉に。
「そうはいわれるが……。では貴殿達が店にはいられたときにはその青年たちはいなかった…と?」
「背中に籠をしょっている人はみましたが。普通は商品納入者と捕らえるとおもいますわね。」
「普通。いやがらせをする…とはおもわんよな。」
ゴルドの言葉にシルフィールが答え、何か挙動不審っぽい人たちはいたけど気にしなかったし。
などと思いつつ言っているガウリイ。
「とりあえず。人の食事を邪魔してくれた彼らにはそれ相応のお灸は必要よね♪」
「今の話からすれば…その真なる騎士団ライトナイツという人たちは、二十人程度の規模。ということですわね。」
にっこりと微笑むあたしに続きそういっているシルフィールの言葉をきき。
「それを確認してどうなさるつもりかな?
  それにお灸…とかいっていましたが。その点は遠慮願いたい。
  これは私の任務。領主より拝命しております。くれぐれも手出しなきように。」
いいつつも天井に突き刺さったままだった剣をひっこぬき、鞘に収めて軽く会釈をし。
そのままこちらの言葉も聞かずにくるり、ときびすを返して店を出てゆく。
本っ当、融通がきかないからねぇ。
あの人間って♪

「…ま。あんなかんじだ。」
ゴルドの姿が見えなくなるのを待ち、カウンターの奥から店の主人があたし達にと声をかけてくる。
そして。
「おまけにこの事件の担当をしているのはどうやら今の一人だけ。って噂もあってな。」
「「一人!?」」
面白いまでにガウリイとシルフィールの声が重なる。
食事中の出来事とあって、ガウリイも珍しく話しについてきてるのよね♪
あと食べ物を粗末にしたらいけない云々……とガウリイは祖母から散々言われているのもあって♪
そんな二人の声に肩をすくめ。
領主ロードには本当に事件を解決する気があるのやら……
  まあ、真なる騎士団ライトナイツ達の活動っていうのもイタズラに毛の生えたようなもんだからな。
  捜査に本腰を入れるまでもない。って思っているのかもしれんが……うちらにとってはいい迷惑だよ。
  前にもこの辺りの店主たちが少しずつお金を出し合って傭兵でも雇ってごろつきたちをどうにかしよう。
  って話が出たこともあったんだが……さっきの騎士様がやってきて。
  『そういうことは騎士団にまかせろ。おまえたちの手出しは無用。』とこうさ。
  ……で、それで未だにごろつきどもは野放しってわけだ。」
いってしみじみと。
「…しかし…今回被害にあった店…運がいいというか、うらやましい…というか。
  『力る旅の人』がいたおかげで店の被害はなかったとか……
  いやはや、世の中。すごい力の持ち主が噂の赤法師レゾ以外にもいるもんだねぇ~……」
などとそんなことをいっているけど。
「あら。それって誰でもできるってば♪」
「できませんって。リナさん。…それができるのはリナさんやルナさんくらいかと……」
「ま。リナだし。」
あたしのしごく当然なつぶやきに、なぜか突っ込みをいれてくるシルフィールとガウリイ。
「ま。何にせよ。人の食事の邪魔をしてくれたお礼はお礼だし♪
  あなたたちは騎士に止められたからって手出しできなくなっているようだけど。
  別に悪いのはあっちだし♪文句をいってきたら即刻消滅させ…もとい、国王にいえばいいんだし♪」
「……リナ。おまえ今…消滅させる……とかいわなかったか?」
「気のせいよ。」
ガウリイの突っ込みはさらりと返しておいて…っと。
「「…国王って……普通無理なのでは……」」
なぜか同時につぶやいているシルフィールと店の主人の言葉とほぼ同時。
ドッン!!
『わきゃぁ~~!!!』
何やら店の外のほうから鈍い物音とと、人々の悲鳴が聞こえてくる。
「…な、何だ?!」
それをうけ、戸惑いの声を上げているガウリイに。
「どうせまた。あの真なる騎士団ライトナイツとか名乗っている奴らが何かしたんじゃない?」
さらり、というあたしの言葉に。
「ありえるな。何しろ先刻被害にあった店は、
  『旅の人のお力添えで何ごともなかったかのように元通りになった』…と聞いたし。
  意地になってまた何かしでかしたんだろう。……本当にいい迷惑だよ。」
などとため息をつきながらいってくる店の主人。
「幼子でもこんなイタズラはしないわよね~。さって。とりあえず外にいってみましょ。
  あ。キリク、話ありがとね。いくわよ。二人とも♪」
いいつつも店の主人の名前をよび、お金をカウンターの上にとおき外にでてゆく。
「あ!まってください!リナさん!」
「あっ!お…おい!リナ!」
そんなあたしの後をあわてて追いかけてくる二人。
そして。
「??名前…いってないのに……何であの嬢ちゃん…私の名を?」
なぜか一人首をかしげまくるキリクの姿が見受けられていたりする。
名前なんて誰でもわかるのにね♪

あたし達が店の外に出るのと同時。
どかんっ!
またまた別の爆発音。
空に立ち上る一筋の煙。
「あら?何かあったみたいね♪」
「…十分何事かありだとおもうぞ……」
「…一体?」
その煙をみて、何やらいっているガウリイとシルフィール。
「とりあえず♪一気に近くまでいってみましょ♪」
パチン♪
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
にっこり微笑み、かるく指を鳴らしたその刹那。
あたし達三人の姿はその場から掻き消え。
次の瞬間には、何やら内部からの爆発で粉々になり。
さらにはその壊れた内部の残骸に、面白いまでに【もずく】がへばりついている光景がみてとれる。

「……あ、あんたら…一体どこから……」
何やらあたし達が出現したのをうけて、腰に剣を下げた近くにいた警備兵が声をかけてくるけど。
近くにいたならいたで、すこしは手をうたないと♪
「…こりゃひどい…・・・ 」
「…というかリナさん…今の……」
「え?たかが瞬間移動しただけよ?」
あたしの言葉とほぼ同時。

「…んっふっふっ…ふ……」
吹く風に聞き覚えのある含み笑いが混じり始め。
そしてそれはどんどんとトーンをあげ。
「お~ほっほっほっほっ!二度もこの私にこんな真似をしてくれるとはっ!お~ほっほっほっ!
  真なる騎士団ライトナイツとかいう輩!許しておかなくてよっ!お~ほっほっほっ!」
壊れたテーブル、壊れた椅子。
周囲に倒れ伏した人々。
その全てが黒い海草…もずくまみれになっていたりする。
壊れた店の中心にすくっとたっているもずくまみれの影一つ。
そして、そのすこし先では。
トイレから出てきたルナが頭を抱えていたりするけども。
「あらあら♪本日二度目ね……ナーガ。それくらい投げ込まれた直後によけないと♪」
そんなあたしの言葉にこちらに気づき、
「リナ達じゃあるまいしっ!
  しかし…この白蛇サーペントのナーガ様をたてつづけに狙ったそのつけはっ!
  きっちりつけさせてもらうわよっ!お~ほっほっほっほっ!」
もずくまみれのまま、高笑いをし言い放つナーガの姿に、
周囲にいた子供などは泣き出していたりするけども。
そして野次馬たちですらその場に固まっていたりする。
「……ま、まさか私がトイレに行っている間に…しかも店を吹き飛ばすとは……」
いいつつもナーガをみてため息をついているルナ。
「とりあえず♪この【もずく】は邪魔ね♪」
とりあえず人目があので指先に光を灯し、壊れた食堂の上にとほうりなげる。
その光に吸い込まれるようにして、
その辺りをうめつくしていたモズクたちはどんどんと上空にと舞い上がり、
やがて綺麗さっぱりモズクたちはこの場から消滅してゆく。
といっても、ちょっとここにあったモズクは別のところに移動させただけだけど♪

「あ…あのぉ?ところで?エ…でなかった。リナさん…これ…どうしますか?」
ため息をつきつつも、あたしのほうに近寄ってきてつぶやくように聞いてきているルナ。
ルナとナーガはこの店にと聞き込みにやってきており。
そして、ルナがトイレにたったそのてきに、店の中にモズクが投げ込まれたのだけど。
ちなみに…乾燥させてあったわかめ付き♪
つまり、投げ込んだ後、水をちょっと加えればあっという間に増える、という寸法。
昔やったわねぇ~、これ。
暇だったから、部下たちの体を一時普通の人間にしておいて。
クリスタル・ケースの中に十数名ほど閉じ込めて、増えるわかめの中で水泳大会っていうのを♪
なんでかその程度で死んだものもいたりしたけど。
死んだ部下にはそれなりに制裁は加えたし♪

「…とうとう建物まで壊しやがったか……」
「いったいいつになったらあのごろつきたち…どうにかしてくれるのかしら?」
などといった非難の声が、町の人々からその場にいる騎士のメンバーに向けられていたりするけど。
というか、この建物を吹き飛ばしたのはナーガなんだけどね。
面白いから黙っときましょっと♡

「そうねぇ~。とりあえず♪元に戻しますか♪」
パチ♪
いってかるく人差し指と親指をはじく。
と。
ぶわっ!
なぜかその辺りに散らばっていた瓦礫が浮き上がり、次の瞬間には、一瞬の光の後。
そこには何事もなかったかのような一件の建物が。
「なっ!?」
それを見て何やら固まるシルフィールに。
なぜか町の人たちにいたっては、気を失うものや、その場に立ち尽くしている存在たちまでいたりする。
「ほらほら。ナーガ。いつまでも笑ってないで。真なる騎士団ライトナイツ達にお灸をすえにいくわよ♪」
壊れた建物が元通りになったことすら気づかずに、延々と高笑いを続けていたナーガにと声をかける。
ちなみに、元通りになった食堂の扉や窓は開け広げている状態にしてみたり♪
「お~ほっほっほっ!…って、あら。リナ。いつのまに?この建物を元通りにしたの?」
「今♡」
「そ…そう。」
ナーガはこういった類を見るのはもう慣れてるからねぇ。
あたしの一言にそれですまし。
「ふっ!この白蛇サーペントのナーガ様に喧嘩を売ったことを後悔させてあげるわっ!
  真なる騎士団ライトナイツまってなさいよっ!お~ほっほっほっ!」
青空にナーガの高笑いが響き渡る。

「…一体リナさんって……」
「あら。シルフィールさん。私にもできることですから。」
シルフィールのつぶやきに、あわててルナが言っているけど。
その額に流れている一筋の汗は何かしら?ルナ♡

あたし達は再び合流し、何やらざわめくその場を後にして、
おいたをした存在ものたちにお灸をすえるべく動き出す。
じわじわと逃げ道をたってゆく…というやり方が一番効果的だしね♪


口笛が潮風にまじり流れる。
男はポケットに手をつっこんだまま、浜の坂道を上がり…そして、ぴたり、と口笛がやむ。
「ひゅ~♪あんたは?」
とりあえずシルフィールに目立つ位置にとたってもらっている。
ゆえに、シルフィールの姿をみとめ、かるく口笛をふき、じろじろとシルフィールをみてるけど。
ま、シルフィールは一見したところ、【どこかいいところの娘さん、もしくはお嬢様。】
と大概の人間は捉えるからねぇ。
ここ、ベロゥル・シティは海に面しているが為に漁で生計を立てている人間も多少いる。
港には些細な数の漁船が連なり波にとゆらゆらゆれている。
そのすこし…というか、すぐ近くに山が海に面している場所があり。
その山の横は波に削られ、ちょっとした絶壁となっている。
そんな中に、いくつかの平らな場所もあり、何かすこし力が加わればあっさりと崩れる。
そんな場所。
そんな場所のひとつにあたし達はいたりする。
はっきりいって家ともいえないか~なり貧弱な建物が、ぽつりと一軒たっている。
ここがこの男…ミックの住まい。
「おまちしてました。」
そういうシルフィールの言葉に。
「こんな美人にまっていてもらえるなんて。俺も罪だね~。あ。俺はいつでもOKだから♪」
とことん勘違いしまくってにやっと笑っているミック。
「勘違いしないよ~に♡あたし達は真なる騎士団ライトナイツのメンバーであるミック。
  あんたをまっていたんだから♪」
家の周囲にはあたしとシルフィール。
すこしはなれたところにガウリイ。
そしてルナはナーガのお守り♡を言いつけ…もとい押し付けて。
この周囲を取り囲むようにして待機していたあたし達。
「…な……」
ふわっ。
すたっ。
屋根の上に座って様子を見ていたのだが、どうやら勘違いをしているようなのでふわり、と降り立ち。
シルフィールの横にと着地して目の前の男性――ミックに言い放つ。
「…なっ!?……何をっ!わけのわからないことをいってやがるっ!俺はっ!」
おもいっきりうろたえてるし。
というか…隠すの…下手よねぇ~……
「ナマコ。というのは失敗でしたわね。」
そんな男に向かってシルフィールが一歩前にでて言い放つ。
「ど…どういう意味だ?」
それって、思いっきり認めてる台詞だけど♡
露骨に眉をひそめ、つぶやくようにいっているミックの言葉に。
「ナマコはこの辺りでは一般には食されませんもの。かくいうわたくしも食べたことはありませんわ。」
すこし顔色もわるくシルフィールが言ってるけど。
ああいう姿形のモノって…シルフィール、ダメだからねぇ~……情けないことに。
「な…何がいいてぇ!?」
そんなシルフィールの言葉に、露骨にうろたえているミック。
「つまり♡このこの辺の猟師にとってはナナコが売り物にならないからジャマものってことよ。
  おいしいく食べるのは鮮度が命だからねぇ♡
  猟師が港にもってかえらないものを手にいれるとしたら。
  わざわざ遠出してまで手にいれる。ってことはないだろうし。
  かといって即席で創造りだすこともあんたたち人間ってなぜか出来ないからねぇ。
  なら残る方法はメンバーの中に猟師がいて、自分でとれば問題ないし♡
  というか間抜けよね~。そんなものを持って帰った時点で。
  あんたが真なる騎士団ライトナイツのメンバーかもしれない。
  というので、他の人たち、あんたに仕事を回さないらしいわよ♪」
にっこり微笑むあたしの言葉に続き。
「お~ほっほっほっ!」
上から響いてくる高笑い。
ミックの家のすこし上の崖の上。
そこにすくっと立ち無意味に胸をそらして高笑いをしている人物のシルエットが逆行に浮かび上がる。
「…あ。シルフィール。飛んで?浮遊レビテーション♪」
「?…あ、はい。」
その姿をみとめ、ふわっと浮き上がるあたしに続き、
首をかしげつつも言われるままにふわり、と呪文を唱えてシルフィールが浮き上がると同時。
火炎球ファイアーボール!」
ナーガの放った術がものの見事に、家の横の茂みにと炸裂する。
ミックを狙ったらしいけど、一瞬崖下をみてしまい、立ちくらみをおこしかけたがゆえに、
どうやら狙いが外れたようなんだけど。
「ふ…ふははっ!よくわかったなっ!」
…というか、ナーガは失敗してそこに呪文を叩き込んだんだけど♪
多少ちょっぴしこげつつも、中には服に日がついて斜面から転がり落ちているやつもいるようだけど。
別にそれは関係ないし。
などといいつつも、茂みの中から出てくる影三つ。
他にもいた後の二人はといえば、何か燃えつつ地面をごろごろしてるけど、それはそれ。
腕を組みたたずむ真ん中の一人は、全身鎧に兜にマントの騎士姿。
彼を挟んだ左右の二人は黒服に黒ジャケット。
どこぞの制服っぽいいでたちではあるが。
三人とも黒字のハンカチで鼻から下を隠しており、ちょっぴり髪の毛などがこげていたりするのは。
先ほどのナーガの術ともいえないものの影響。
「いろいろとかぎまわっている奴らがいるる…とはきいたが。
  しかしまさか、これだけ早くミックの下にたどり着くとはな。」
とかいっているけど。
というか♪
あんたたちのメンバーがまだ、誰しも家には帰っていない、というのが問題よね♪
全員の家、あたし知ってるし。
「あ…あの?リナさん?彼らは……」
戸惑いつつ、空中に浮かんだままあたしに問いかけてくるシルフィール。
真なる騎士団ライトナイツとそのリーダー♪」
「…え?!」
「ふははっ!私こそ真なる騎士団ライトナイツのジルバ!
  ロードの飼い犬と堕ちた今の騎士団を排し、真の騎士道を実践せんっ!と望むものっ!」
「お~ほっほっほっ!この白蛇サーペントのナーガ様に恐れをなして姿をあらわしたわけねっ!」
…会話、かみ合ってないし♡
「ふっ。わかってないな!真の騎士道というものが!騎士たるもの弱きを助け強きをくじくべしっ!
  つまりは反体制、という意味だっ!」
いいつつも、剣を抜き放ち、天にむかって高々と掲げて言い放つ。
そんなジルバの言葉に。
「…ロードの飼い犬…って…普通騎士団とはそういうものでしょう?
  というか、神や魔。世界そのものがあるいみそ~ですし……」
その後ろからぽつり、といっているとある声。
「うおっ!?不意打ちか!?」
…って、後ろに出現していたルナに今さらづいて何かいってるし。
そして。
「…あのぉ?リナさん?これどうします?」
いってすこし上空を見上げてあたしに聞いてきているルナ。
「それより♪避難しないとね♡」
くすっ。
「?」
「…あ!?グレっ!?」
くすり、と微笑みつぶやくあたしの声に男たちは首をかしげ、
ルナはようやくあることに気が付いて即座にこの場から姿をかき消していたりする。
「お~ほっほっほっ!この白蛇サーペントのナーガ様の実力をみせてあげるわっ!地撃衝雷ダクハウトっ!!」
タッン!
早口で呪文をまくしたて、地面に手をついて力ある言葉を解き放つ。
…さて、問題です♪
それでなくても不安定な山の中腹。
大地に干渉したらどうなるか♡
ガラ…ガラガラ…ズズ~ン!!
「うわっ!?」
「お~ほっほっほっ!…って、んきゃぁぁ~!?」
あ♡
ナーガの足元も崩れて一緒にナーガもおちて言ってるし♡
ナーガの放った 術によって斜面が崩れ、面白いことにがけ崩れが発生していたりするけども。
「…むちゃくちゃするなぁ……」
すこし離れた場所で待機していたガウリイが、土砂から逃げつつもそんなことをつぶやき。
「あ~らら。ついに真なる騎士団(ライトナイツ)はやっちゃったわねぇ~♪」
わざと聞こえよがしに大きめな声でいいつつ、すとん、と大地に降り立つあたし。
「…今のは違うのでは……」
何やら横でシルフィールが突っ込んでくるけど、ひとまず無視。
ガララ……
「お~ほっほっほっ!よくもやってくれたわねっ!真なる騎士団ライトナイツのジルバ!」
無傷で土砂の中から立ち上がり、
間一髪、仲間に助けられ上空に浮かんでいた真なる騎士団ライトナイツの三人に、ナーガが高らかに言い放つ。
「というか!今のはおまえがっ!」
何やら相手もわめいてくるが。
「ふっ。みぐるしいわね!不意打ちでこの白蛇サーペントのナーガ様をどうこうできるとでも!?」
すでに何ごとか!?
というので野次馬たちもちらほらと集まりだしている。
「…お~い、リナ?ほっといていいのか?」
「リナさん?」
そんなあたしの横にきて、その光景をみつつ聞いてくるガウリイに、
移動してきていたルナが聞いてくるけど。
「面白いし。しばらくみてましょ♡」
『……面白いって……』
あたしの即答に、なぜか声を重ねるルナ・ガウリイ・シルフィールの三人。
一方で。
「お~ほっほっほっ!そっちがそういうつもりならば!こっちは!火炎球ファイアーボール!」
ごぶばあぁん!!
ナーガが上空のジルバたちにと放った光球は、本来ならばジルバたちを吹き飛ばすもの。
だがしかし。
その一撃がはじけたのは、彼らにたどり着くすこし前。
炎は大気を灼き、そのときに生じた爆風で三人は地面に何か落っこちてきてるけど。
ナーガの放った光球は、すこし横手から飛んできた小石にて空中で撃墜されていたりする。

「あら♪」
「あ。さっきのおっさん。」
「確か…ゴルドさん…でしたっけ?」
小石が飛んできた方向に佇んでいるのは一人の男性。
全身鎧の一人の騎士。
「…ひょっとして彼が?」
ルナも聞き込みで、一人の騎士が捜査に当たっている…というのは聞いているのでつぶやき、
そしてふと気づいて。
「…なるほど。エル様がここに来られた訳がよ~くわかりました……」
小さな声で何やらぽそり、といっていたりするけど。
「お~ほっほっほっ!ずいぶん愉快なまねをしてくれたわねっ!そこのあなたっ!」
「手出し無用。これは私の任務だ。レディ・ナーガとやら。」
ナーガに対してまで一応『淑女』という言葉を使っているのはいうまでもなく。

「ふっ。久しぶりですね。父上。」
「「・・・・・・・・・・・・・・」」
集まっていた数名の野次馬たちがその言葉に一瞬無後になり。
そして。
「「な…何ぃぃ~!?」」
あ、何か人々が叫んでる♪
今まで気づきもしなかった…というのがそもそもおかしいわよね♪
「…え?あの?…父って……」
「そういや。気配がそっくりだな。このおっさんとあのに~ちゃん。」
戸惑いの声を上げるシルフィールに、ぽん、と手を叩いていっているガウリイ。
「ふっ。今日こそは観念するがよいっ!ジルバ=バンキス!我が不詳の息子よっ!
  騎士道を教え育てたはずなのに、何ゆえか騎士の教えをことごとく間違って解釈し。
  道を誤った愚か者よっ!」
「何をおっしゃるっ。!父上!父よ。あなたは教えてくれた。騎士道とは己を貫くことなり。と!
  つまり!途中で『俺ひょっとして間違ってる?』とか思うと負け!」
何やら互いに剣を抜き放って言い合っているこのバンキス父子。

周りでは。
「…解釈間違ってるよなぁ…つうかはた迷惑な……」
「子育ては難しい。という典型よね~。」
何やら集まっていた野次馬たちがそんな会話をしていたりするけども。

「あながち間違いでもないが!だがジルバ!
 いずれにしろ!わが子の不始末はわしがしまつをつけるのが道理!
  騎士たるもの、己の行動に責をもつべしっ!」

「あ~…それであの騎士様…一人で突っ走ってたのかぁ~……」
「というか。親子喧嘩に巻き込まないでわしいわね。」
「まったくだ。」
何やら人々の不満の声が大きくなり…それと同時。

「お~ほっほっほっ!事情はどうあれ!この白蛇サーペント様におそれを抱き、崖もろとも崩して抹殺しようとはっ!
  あまつさえモズクやナマコまみれにしてくれたというのは間違いないわよっ!
  覚悟するのねっ!お~ほっほっほっ!」
一瞬目を点にしていたナーガが、高笑いとともに言い放つ。
その言葉をうけ。
「…そういえば……」
「ああ!山の形がかわってる!おのれっ!真なる騎士団ライトナイツっ!」
「今までは子供の悪戯に毛の生えたようなものだったけど。こうなればもう許せないわっ!」
「ああ!家が土砂におしつぶされてる!?けが人とかいるんじゃないの!?」
…今さらながらにそのことに気づき、騒ぎ始めている人々。
「お~ほっほっほっ!覚悟するのねっ!炎の矢フレアアロー!!」
ナーガが唱えた呪文を解き放ち、生まれた十数条の光の矢は、エセ騎士たちに向かって突っ込み…
そんな中、無造作にジルバが一歩前に出て。
「はあっ!」
気合とともに一閃。
自分のマントをつかみふり、炎の矢を打ち払う。
「へぇ~…まあまあやるんだ。」
「ダメねぇ。動かずにどうにかしないと♪しかもマント燃えてるし♪炎くらい消滅させればいいのにねぇ♪」
「…あ、あの?ガウリイ様?リナさん?今の…そう簡単にできることではないと思うのですが……」
「人間にしてはまあまあ。といっても。たしかにまだまでですね。」
「でしょ?」
ガウリイとあたしの台詞に、なぜかシルフィールが突っ込みを入れてくるけど。
そんなシルフィールに続けていっているルナ。
「ジルバ!今日こそは!」
いってゴルドが駆け出すと同時。
「お~ほっほっほっ!なめてもらってはこまるわねっ!石霊呪ヴ・レイワー!」
ごぼっ……
ナーガの声にしたがって、崩れていた岩から岩人形が出現する。
ちょっぴしいつものごとくにデッサンが狂ってるけど。
「邪魔をするなっ!女性といえどもすておかんぞ!?」
ほえるゴルドだが。
「やっておしまいっ!ゴーレム!」
ナーガの命令によって、ゴーレムは近くにいた人間達に向かって手当たり私大に岩を投げつけだす。
「っ!?」
ボンッ!
それをみて、すかさず懐からあるものを取り出して地面に叩きつけているジルバと、
そしてジルバと共に一緒にいる人間達。
音とともに周囲に煙が立ち込め、人々がむせかえる。
それにともなって、ゴーレムが手当たり次第に投げている岩のせいか、
なぜか集まってきている野次馬たちからも悲鳴が上がっているけども。
「お~ほっほっほっ!この程度で逃げられるとでも思っているのかしら!?お~ほっほっほっ!」
ナーガの高笑いがそんな中、響き渡っていたりする。

「…で、どうします?」
「きまってるじゃない♡おいかけるわよ♡」
煙を利用して、仲間の力で空をとばせてもらい、その場から逃げ出している三人を確認し、
ルナがあたしに聞いてくるけど。
「…あのぉ?あの人はどうするんですか?」
「ほっといてもくるわよ。ナーガだし。」
「…あの姉ちゃんの扱いって……」
あたしの言葉に戸惑い気味のシルフィールに、ぽかん、としつつ言っているガウリイ。
とりあえず、なぜか騒がしいその場を後にして、あたし達は男たちをおいかけてゆく。
当然のことながらすぐさまに男たちに追いつくあたし達。
「…ななな!?」
「何でおいかけてこれた!?」
まったく自覚も何もない台詞をほざいている三人。
「あのくらいで逃げられるとでもおもったの?
  さってと♪人の食事の邪魔をしてくれたそれなりの償いはしてもらわないとねぇ♪」
にっこり微笑むあたしの言葉に。
「な…何のことだ!?」
今さらとぼけなくても…ねぇ♪
炸弾陣ディルブランド♡」
どごが~んっ!
…あら?
「あ~らら。かぁなり威力を抑えてゼロ以下にしたのにねぇ。」
「…どこがですか?」
その場にできたちょっとした深さのクレーターをみつつも、
なぜかつぶやき突っ込みをいれてくるシルフィール。
「リナにしては。これ、威力はないほうだぞ?シルフィール。」
「・・・・・・・・・・・」
「あのぉ?一応気の毒なので忠告しますけど……あなたがた、勘違いしてません?
  この御方や、あの人は、『間違った方向に進もうとしている青少年たちの歩む道を正したい。』
  …などとは、ほとんどあまり考えておられませんよ?
  そもそも、これくらいですんでいるのが奇跡……」
「ル~ナ♡何がいいたいのかしらぁ~?ともあれ♪聞き分けのない子はお仕置きしないとね♪」
びくうっ!
あたしの言葉に、なぜか男三人とルナが同時に震え固まり、そして…
ダッ!
それぞれ男たちは三方向にと駆け出して行く。
「逃げられるわけないじゃない♪」
とりあえず、一人…っと♪
ぐいっ、とひっぱり…といっても、傍目には、じたばたしている男がこちら側に、
後ろ向きで走ってきているように映るけど。
氷結弾フリーズブリット♪」
コッキィィン…
そのままの姿勢で男があたしの言葉と同時に凍りつく。
ちなに、凍り付いているのはたったの二十日足らずほど。
根性がなくても、それくらいで死んだりはしないしね♪


「…それで?どうするんですか?リナさん?」
シルフィールがあたしにと聞いてくる。
なぜか海に浮いていたナーガをルナが拾って宿屋につれてきていたりするけども。
結局のところ。
ナーガが作り出したゴーレムは、ナーガまでも押しつぶし、ナーガは海の中に落ちていたりv
当然、ナーガの悲鳴とそして煙が晴れたそこには。
ナーガの姿も、真なる騎士団ライトナイツの姿もないわけで。
人々はゴルド=バンキスに詰め寄るものの、
「わしの騎士としての務めだ!」
などといってとりつくしまもないゴルド。
一人のメンバーを氷付けにしたそのあとで、何かルナは町全体に回復術をかけてたけど。
ついでにこの町の魔道士協会にも顔を出して何やら身分を証明していたし。
残りのメンバーのうちの一人は、本能的に家にもどろうとしていたところを、
家の一部と一緒にちょっぴり叩いておいたので、
家族に『メンバーの一員。』というのがバレて、かなりおとがめうけてたし♪
気づかない放任主義の家族にも責任はあるから。
関係者の家などについては、あたし修理をルナにしないようにいっておいたし♪
「それじゃ。シルフィールは何もなかったことにして。町をでて。とっととセイルーンにといく?
  いっとくけど。ルナが何にもしなかったら、シルフィールもナマコまみれになってたのよ♪」
「……何とかしましょう。あんな人たち。野放しにしてはおけませんわ。」
あたしの言葉に、その光景を想像し、真っ青になりつつも即答してくるシルフィール。
「そうよねぇ~♪乙女をナマコまみれにした罪は償ってもらわないと♪」
「ふっ!もずくの恨みもあってよっ!お~ほっほっほっ!」
「…なあ?ルナさん?……いいのか?」
「ガウリイさん。リナさんの言葉には逆らわない。これが何よりも重要ですわ。」
「…そんなもんか?」
「ええ!」
どうしてそこで力一杯肯定する必要があるのかしらねぇ、ルナは♪
とりあえず…っと。
「それじゃ♪とりあえず、明日から真なる騎士団ライトナイツのメンバー潰しね♪」
「これ以上の被害を出さないためにも頑張りましょう。」
「お~ほっほっほっ!まっていなさいよっ!ジルバ!と仲間たち!お~ほっほっほっ!」

静かな夜に、あたし達の声に混じりナーガの高笑いが響き渡る――


どぐわんっ!
ちょっとした些細な音が町の中にと巻き起こる。
「…な、何だ!?おまえら!?俺に何の恨みがあって!?」
逃げ場をなくした男が一人。
裏通りの塀に背中をおしつけて、おびえた眼差しをこちらにとおくってくる。
「ふっ。しれたことよっ!ナマコとモズクの恨みっ!それに昨日海に落とされた恨みもあってよっ!」
ナーガがきっぱりと言い切っているけど。
海に落ちたのはナーガの自業自得だし♪
真なる騎士団ライトナイツのメンバーは三十人弱。
どうでもいいけど、この町の若者の大多数を占めている。
まったく…いるのよね~……
他人に便乗して、騒ぎたがる存在って。
「悪いことはいいませんわ。今からでも遅くはありません。
  足を洗って迷惑をかけた人々に誠心誠意真心こめて謝り。行動で示すべきですわ。
  例えば一生町のゴミ拾いをするとか。」
あたしとナーガのすこし後ろで両手を合わせ、祈るような形でいっているシルフィール。
目の前にいる男性は、今、このベロゥル・シティで騒ぎを起こしている真なる騎士団ライトナイツの一人。
騎士団と名乗ってはいても、ただのごろつき。
しかもその騒ぎ方といえば、小さな子供の嫌がらせ以下。
いぶりだし方としてはいたって単純。
昨日、彼らがある店にと投げ込んでいたモズクと海草を、
投げ込んだ当人たちの家に瞬間的に送り返していたので。
男たちが家に戻ると家の中がモズクまみれであったり、部屋というか家の中そのものが埋もれていたり…
一緒に住んでいる家族がいる者などは、なぜか鉄やで家族に気づかれないように、
それを処分しようと朝早くから籠等に入れたそれをもってうろうろとしていたりする。
今いる男もそんなうちの一人。
「…な、何のことだ?」
露骨にとぼけて籠を手にしたままおびえる男。
ちなみに面白いものでこれで七人目。
とりあえず先の六人は反省させる目的もかねて、ひとまず蚊などに姿を変えてみたり♪
中にはナーガの術で氷付けになったり、なぜか全身黒漕げになって動かなくなってたり。
などといったものたちもいたりしたけど、まあそれは別にどうってことないし。
「お~い?そうとぼけても、逃げたのはおまえさんだぞ?」
「こっちから真なる騎士団ライトナイツのメンバーよね。
  って話しかけたら逃げたのはそっちだし♪」
「あのぉ?素直になられたほうがいいですよ?先ほどからしらを切りとおした人たちって…
  蚊とかゴキブリに姿を変えられていたりしますし……」
そんなガウリイとあたしの言葉に続いて、ルナが何やらため息まじりにといってくる。
シルフィールはなぜかそれらは自分の中では見なかったことにしていたりするけど。
別に誰でもそんなことはできるのにね♪
「しらないもんはしらねぇ!」
なおもしらを切る男の言葉に。
「あらそう。まずは右足に一発お願いしてくるわけね。お~ほっほっほっ!」
無意味に髪をかきあげ高笑いをするナーガに。
「誰もそんなことはいってねぇだろうがっ!」
「あら。全身がいいみたいね♪」
「ふっ!まかせてっ!」
にっこり微笑むあたしの言葉に、ナーガが聞こえよがしにと呪文を唱え始め。
「わ…わかった!しゃべるっ!しゃべるからっ!」
男の叫びにもナーガの呪文の詠唱は止まらない。
「きゃ~!!変質者!烈閃咆エルメキアフレイム!」
ふと、シルフィールが屋根の上にと視線をむけ、そこにうごめく黒い姿を見咎めて、
早口で呪文を唱えて何やら術を解き放っているけど。
「はいはい。あんたはとっとと話すのね♪まさか他のお仲間、六人と同じ目にあいたくないでしょ♪」
ちなみに、正確にいうならば、昨日の二人を含めたら只今お灸をすえているのは八人だけど。
彼らはどうやら目立つことが好きなようなので、
この町の広場にちょっとした柵もどきをつくって一般公開していたり♪
ちなみに本名と説明書きプレート付き♡
小さな虫などに姿を変えたものたちも、それぞれ一緒にいれて。
体験コーナーのようにしてハエやゴキブリたたきをご自由に♡
というのも書いていていたりするけど。
朝から設置しているせいか、未だに挑戦者はどうやらいないようだけど。
無視になった彼らは数千回以上潰されたりしないと元に戻れないようにちょっぴしいじくってるし。
その旨も一応説明として書いておいてはいるけども。
「「……ぎゃっ!?」」
何か屋根の上のほうで悲鳴が聞こえたようだけど。
どうやら完全に直撃したみたいねぇ。
あれくらいよけないと♪
「話す!話すからっ!やめてくれぇぇ~~!!」
「お~ほっほっほっ!」
カッキィィン……
男がいうまもなく、ナーガの呪文が完成し、その場になぜかその場に氷付けになるこの男。
ちなみに名前をライ、っていったりするけども。
…ま、この状態じゃあ情けないことに話せないでしょうねぇ。
氷のオブジェとなっても話す根性くらいはもちなさいよね♡
「あらあら♡ナーガ、聞き出す前に氷付けにしたり意味ないじゃないのよ。
  とりあえず、これも同じく広場に送って…っと♪」
軽く指を鳴らすと同時、目の前の氷の彫像が掻き消える。
「…あ、あの?ルナさん?本当にリナさんって……」
「え?リ…リナさんはリナさんですわよ。シルフィールさん。ほほほほほ……」
シルフィールの問いかけに、何やら上ずった声で言っているルナ。
どうでもいいけど、目が泳いでいるわよ♪ルナ♪
しかもびちりと脂汗までかいてるし……
「ま。い~わ。次いきましょ。次。」
「お~ほっほっほっ!この白蛇サーペントのナーガ様にかかれば!
  メンバーの名前なんてすぐさまに造作もなくわかるわよっ!」
「…つ~か…リナが教えたんだろうが……何でかリナのやつ、メンバー全員の名前…知ってたし……」
ナーガの声にぽつり、と突っ込みを入れているガウリイの姿。
何はともあれ、一人づつ説得とお灸をすえるのをかねて挨拶にいきますかね♪

人の考えは人それぞれ。
とりあえず話しがある。
といわれたのであたし達はメンバーへのお仕置もどきの続きをしつつ。
ルナに代表して駐留所までいってもらっているけども。
別にナーガの術や妨害しようとした真なる騎士団ライトナイツのメンバーが家屋とかをちょっぴし傷つけた。
ともいえないそんな些細なことで話があるとか何とか。
別に関係者以外の住宅はその場で再生しているんだから問題ないでしょうに♪
ゆっくりと、じわりと確実に、一人ひとりにお灸をすえてゆくあたし達。
ジルバも何か邪魔しにきたりゴルドもまたやってきたりはしたものの
とりあずその辺りをうろついていた野良犬をけしかけ…もとい、なつかせたら、
なぜか悲鳴…でなかった、歓喜の声を上げてはしゃいでいたし♪
何かルナやガウリイ、そしてシルフィールやナーガ曰く、あれはおびえている。
といっていたけど。
だってたかが野良犬だし♪
「…いや…本当に勘弁してほしいのですが……」
「私にそういわれましても……」
あたしたちのところにと話があるから、とやってきたのは。
この町に駐留する、一応ルーディンナイツの騎士団長、カロッゾ。
駐留所に向かいつつ、一緒に歩いているルナにと話しかける。
あたしがルナに話をきいといてね♡
といったので、ルナはひとりこうして別行動をしているのだけど。
兜はつけていないものの、鎧に剣、といういでたち。
鎧の胸に刻まれた鹿の紋が金細工なのが団長っぽい。
「もちろん。我々も承知しています。そもそもはあのエセ騎士達が野放しになっている。
  そのこと事態が問題なのだ…と。あなた方があの連中をどうにかしたい。
  そう思うのも通りでしょう。ましてや貴殿はかの赤の竜神の力を受け継いでいる。
  という赤の竜神騎士スィーフィードナイトとか。
  見逃すわけにはいかない。というのもよくわかります。」
いってルナと並んであるきつつ、カロッゾはため息一つ。
すこし離れた後ろに、お供の別の騎士が二人ほどいたりするけど。
「…しかし…昨日の今日でここまで騒ぎが大きくなると……しかも建物とかも壊してますし……
  それもエセ騎士のメンバーとおぼしき家ばかり……」
「私としては、リナさんがちょっかい…もとい、関わりをもたれて、今のところこれですんでいる…
  というのが奇跡以外ないんですが……」
ルナの戸惑い気味の言葉に。
「まあ、我らとて貴女の妹御の噂は聞いております。あの白蛇サーペントのナーガという人のも。
  それに小さな女の子が加わった時などは、もう言葉に言い表せないようなことが常に起こる…というのも。」
いって深くため息をつき、なぜかその瞳の色に恐怖をたたずえて。
「リナ殿とナーガ殿。二人合わせてチーム、リ・ナーガ。
  二人が組めば町すらも一瞬にして壊滅する…という……」
「あのぉ?…お願いですから…リナさんの前では…その名前を合体させた呼び方……
  …言わないでくださいます?下手をしたらとばっちりが…いえ……」
いいかけて、はた、と口をつぐむルナの様子に。
「?リナ殿は貴殿の妹…ときいておりますが?」
「…え、ええ。恐れ多い…もとい、そのようにしております……」
「……『しております。』って……」
「カロッゾ殿?…といいましたわよね?…世の中、説明できないこともあるのですわ……
  唯一いえることは…私なんかでは、あの御方をお止めする…というのは。
  死よりも、消滅するよりも恐ろしい…ということです……」
下手したらこの世界そのものがそこで一瞬のうちに終わりますし。
そんなことを思いつつも。
「と…ともあれ。あなたたち騎士団があのメンバーのことを。
  あのゴルド=バンキス殿一人に任せているから解決できていない。
  それがあるから楽しんで、あの御方…もといリナさんは首を突っ込んでいると思われるのですが?」
「??…何か異様に妹御のことを畏れているような?…まあ確かに、貴殿のいうことも最も……
  騎士団の指揮権と人事は私に任されているのでバンキスを外して別の……
  と、言いたいところなのだが。いろいろと事情があってな……」
「?事情?」
その言葉に足をとめ、問いかけるルナの言葉に。
「…バンキスのヤツも…腕はよいのですが…。
  変に責任感が強すぎる…というか…頑固なところがありまして……
  『息子のことは自分で何とかする。手出しはしないでくれ。それが聞いてもらえないならば騎士団をやめる。』
  といっていまして……」
「辞めさせればいいんじゃないですの?…というか、他にも何か?」
ルナの問いかけに深く再びため息をつき。
「…あのゴルド=バンキスは今回のことで多少暴走気味なものの。古株で人望はあり腕は確か。
  それに昔、彼は領主の命を救ったこともあり、以来領主のお気に入り。
  これまでの真なる騎士団ライトナイツの活動も、所詮子供の悪戯に毛が生えたようなものだったし……
  こんなことで失うには惜しい人材なわけで……」
「…中間管理職の悲哀…ですか……」
それ…ものすごぉぉくわかるんですけど……
などとなぜかルナは心でつぶやきつつ。
「ですけど…そちらで何とかしていただかないと……領主どころか国王交代。
  ということにもなりかねませんわよ?まだあの御方は退屈しのぎに介入している程度なので……
  これで今のところはすんでいますけど。しかも、昨日の今日ですし…まだ二日目ですし……」
「…町の広場にいきなりあんなものが出現したり…
  どうみても腐乱した犬が真なる騎士団ライトナイツをおいかけていても…
  …まだ『この程度』…なのですか?」
ルナの言葉に、なぜかびっしょりと油汗を流して問いかけるそんなカロッゾの言葉に。
「今は本当に。大人しい目だとおもいますけど……
  その気になれば、あの御方にとっては、メンバー全員を一瞬もしないうちにどうにかする。
  なんてことは簡単すぎるほどに可能ですし……まあ、私も出来なくはないですけど……
  その場合。記憶操作とかの後始末をするのは必ず私なので……
  あの御方は、わざとそういうことはあまりされませんからね……」
「…いや、だからどうして妹御のことを…『あの御方』…と……」
「聞かないでください。」
「…ふ、深くはききませんが……で、ではどうすれば……」
ルナが本気でおびえ、恐怖の色を瞳に浮かべているのをみてとり、
一瞬口をつぐみつつも、うなるカロッゾに。
「ともかく。巻き込まれた店の方は、話を聞く限りかなり今までに被害をうけているようですし。
  中には騎士団は何をやっている。という声もききましたし……
  このままでは、リナさんも面白がって更に何かする可能性も否めないですし……
  そういえば?先ほどカロッゾ殿は人事権をもっている。とかいっていましたわよね?」
「あ…ああ。」
「…でしたら。こういうのはどうでしょう?」
ルナから耳打ちされた言葉に目を見開いているカロゾ。
そのくらい早めに気づきなさいよね♪
しっかし…ルナには後でちょっぴりお仕置きしておきますか♡

そんな彼らを視つつも、とりあえず約十五人目のメンバーはといえばモグラにと変えているあたし。
町の広場に、モグラたたきコーナーを新たに設けておきますか♪
一万回以上、数万回ほど叩かれたら元に戻るようにしておいて…と♡

その日の夕方近く。
戻ってきたルナと、そしてカロッゾの言葉をうけ、ひとまず、なぜかシルフィールもルナに言われて。
セイルーンへは急いだほうがいいとおもったらしく。
とりあえず、ここはこれ以上遊んでいても面白くなさそうなのでその意見を聞きいれ…
そしてあたし達から真なる騎士団ライトナイツへとあてた手紙を、街中にとばらまいとおく。
ちなみにこれ、ある程度の時間がたったら消えるもの♪
ルナに命じて作らせたんだけど、それはそれ♪

人の言葉を話すゴキブリにモグラにエトセトラ……
何かお仕置きとお灸をすえたメンバーたちはといえば、町の広場で見世物と成り果てていたりするけど。
別にあたしのしったことじゃないし♪


「…本当に来るのか?」
「人間の心理としましては、来ざるを得ないでしょう。」
「ま、のんびりいきましょ♡」
「お~ほっほっほっ!この白蛇サーペントのナーガ様に恐れをなしたかしら!
  …ってもう一杯おかわりいいかしら?」
「ええ。」
なごやかにそんな会話をしているあたし達。
港からすこしはなれた小さな砂浜にのんびりと敷物を敷いてのお茶タイム。
周囲には大小の岩が多少ごろごろしており、見渡す限りの砂浜。
というわけでもないけども。
「…というか。町から出ようとしたら。問答無用でメンバーは広場いき。あれって本当なんですか?」
多少顔色が悪くも問いかけてくるシルフィールに。
「シルフィールさん。メンバー全員の名前がわかった時点で、
  多少離れていても何らかのつながりはもてますのよ?」
そんなシルフィールに、言い訳…というかごまかすかのように説明しているルナ。
なぜか姿を変えた真なる騎士団ライトナイツのメンバーは。
素直に全員の名前と住処を教えてくれていたりする。
ちょっぴり真実を言わなかったり、嘘をついたら、
『姿が元に戻る期間が死ぬまで、もしくは一生戻らなくなるから♪』
と事実を突きつけただけで、なぜか姿が変わったメンバーたちは素直に教えてくれたりした。
という事実があったりするけども
何かそんな彼らの姿をみて騒いでいた貴族らしき人々もいたりしたけども。
身内の不始末、というか行動は理解してないとね♪
「オレとしては怖くてでてこれないと思うなぁ~……」
そんなことをいいつつ、ちらり、とある方向をみていっているガウリイ。
昨日の手紙で指定した場所はここ。
時間は今日の正午。
ルナ・シルフィール・ガウリイ、そしてナーガを含めた五人でのお茶会もどき。
「それはわたくしも同感ですわ。ガウリイ様。
  でもメンバーが三十人弱もいた…というのには驚きましたわね。
  しかもの貴族の子息なども含まれていましたし……」
昨日聞き出したメンバーの名前と住処などを思い出し、シルフィールがつぶやいているけど。
何か顔色が悪いようだけど、ま、気のせいでしょ♡

「…何だよ?誰もいないじゃねぇか?」
そんな会話をしていると、岩陰の反対側より聞こえてくる声。
「あの昨日のやつ、結局嘘かよ?」
「決闘だ。とおもってきたのにな~。」
「これだと広場の奴らをからかっていたほうがよっぽど面白かったかもな。」
何やらそんなことをいってるし。
当然彼らの中にジルバの姿はない。
…が。
「お~ほっほっほ!まってたわよっ!真なる騎士団ライトナイツっ!火炎球ファイアーボールっ!」
ナーガがその声をきくなり、相手を確認しないまま、ぴょこん、と近くの岩にと飛び上がり。
そして男たちに向けて言い放ち、いきなり呪文を解き放つ。
…が。
「あ。ナーガ♡それただの野次馬♡」
「……え?」
ドガァァン!!
あたしの言葉に振り返ったナーガの術は、
男たちの後方にあるちょっとした不出来な岩もどきにと炸裂する。
時刻が昼に近づいているので『面白そう。』というのでやってきている野次馬のうちの一組が、
砂地に足を踏み入れてきただけのこと。
他にも数組ほどそんな人たちがやってきていたりするけど。
暇な奴らって結構いるのよね~。
気持ちはわかるけど♪
何やらナーガに間違えられて攻撃もどきをうけそうになっていた男たちは、
情けないにもてんで悲鳴をあげて転げるようにはなれていっているけど。
「…ふっ。人間細かいことをきにしちゃあ……」
ダメよ。
ナーガがそういいかけたその刹那。
「ふ…ふはははっ!呼び出して不意打ちをしかけてくるとはっ!
  しかぁし!よくも我らにきづいたな!女子供には似合いの手とでもいうべきか!?」
ナーガが放った術が炸裂した場所。
つまりは、不釣合いな岩もどきがごろごろしている場所より声がしてくる。
何やら岩もいくつか燃えてるけど♪
あわててそんな岩…つまりは、即席のハリボテの岩の中から出てくる人影。
いうまでもなく、ジルバとそして真なる騎士団ライトナイツの面々だったりするんだけど。
ジルバ以外は全員黒い服。
なぜか全員が布で顔の半ばを隠しているのはお約束…とはいうものの、
なぜか全員震えており、しかもなぜかこっちをみておびえているし。
「…というか…不意打ちをする気だったのはそちらでは?」
そんな男たちをみて突っ込みをいれているシルフィール。
「まあ、岩のふりをしているのはわかってたけど。」
「あら。ガウリイさん。さすがですわね。でも怖くてそのまま隠れていたみたいですわね。彼ら。」
しみじみといっているそんなガウリイとルナの言葉に。
「決してそうではないっ!これは単に相手が卑劣な罠をはっていたときのために用心として。
  昨日の晩からこうしてじっと岩のふりをしてまっていたのだっ!」
「家にかえるのが怖かったとみた♡」
しごく最もなあたしの指摘に。
「というか…それなら、私たちが昼前からお茶会を開いていたのに気づかなかったの?」
ジルバたちをみて眉を潜めて問いかけているナーガ。
ナーガにまで突っ込まれてどうするのよ♡
「笑止っ!騎士たるもの覗きのようなこそこそとしたまねはせんっ!
  よって覗き穴というものも元々作ってはいないっ!」
そんなジルバの言葉に。
「…作り忘れてたんじゃないのか?」
「ガウリイ様。それはわたくしもそう思います。」
ぼそぼそと何やら言っているガウリイとシルフィール。
あら、正解♡
「それはそうとして。不意打ちをかけようと思ってたようだけど。何でかかってこなかったのかしら♡」
あたしの問いかけに。
「しつこいっ!不意打ちなどとは思ってもないっ!」
「嘘をついたら即座に広場の仲間たちに仲間入り♡にするけど♡」
「実は不意打ちをしようとおもってました。」
あたしの言葉に、なぜかいともあっさりと認めるジルバ。
「だ…だが!心得にも、『騎士たるもの、任の完遂を目指し万全をもってあたるべしっ!』とあるっ!
  即ち!任のためなら罠も不意打ちも何でもありっ!」
『うわっ。卑怯なっ!』
野次馬たちより上がる非難の声。
「ふっ。何とでもいうがいいっ!考えが浅い一般人どもよっ!
  確かにこれは、『騎士たるもの正々堂々たれ。』という心得と矛盾してみえるが。
  相手を十分に弱らせてから堂々と勝負を挑めば問題なしっ!」
そうしないと摩訶不思議な術をどうやらこいつらは使ってくるようだし……
などと高らかにいいつつも、そんなことを思っているこのジルバ。
「すごい問題あると思いますが……」
「…といか。リナにかなうわけないけどなぁ~……」
ぽそり、と何やらつぶやいているシルフィールとガウリイはひとまず無視。
「ふっ。騎士道の何たるかもわからぬものと話していても埒はあかぬっ!
  ともあれ!貴様らのよびだし…もとい脅迫…いや、挑戦状!確かにうけとっ!」
言うとジルバは背中から一枚の紙のようなものを取り出し、あたし達に向かってかざし広げる。
それはいうまでもなく昨日ルナが町中にばら撒いた紙。
そこには。

【子供の悪戯以下しかできない真なる騎士団ライトナイツっておばかさん。
  意義ある場合は明日の正午。港東の砂浜にこられたし。
  お馬鹿集団と自覚がある人はこなくてもかまわないですが、その場合。
  正午をすぎれば全員名前も住所もわかっているので広場の人たちの仲間になってもらいます。
  逃げようとしたりした場合は、死ぬまで姿がかわったままになるのでそのつもりで♡】

そう書かれていたりする。
ちなみに、この手紙が掻き消える前に彼らがあたし達の前に姿を現さなかった場合。
実は問答無用で姿がかわり、次の瞬間には唐突に広場に移動する。
という事実もあったりしたんだけど。
握る手をぶるぶるさせながらも、なぜか多少震えつつ。
「…我々に対する挑戦状とうけとったが。というか!お馬鹿さんとは何だ!?
  それにっ!広場の仲間の現状。あれは何だ!?」
などと叫んでくるけど。
「あら?別にたいしたことじゃないでしょ?
  たかが別の生き物とかに姿を変えて、ついでに見世物にしてるだけなんだし♡
  あんたたちの所業で離れていた観光客とかも寄り付くようになるわよ♪
  人の言葉を話す蚊とかゴキブリとかモグラとか、そんな生き物がいる町だって♡」
「…魚とかにかえてたのもいただろうが……」
「…蟻もいましたね……」
あたしのにこやかな声に、何やらぽそっといってくるガウリイとシルフィール。
「お~ほっほっほっ!お馬鹿さんだからお馬鹿さんだ!といったのよっ!
  子供の悪戯みたいなことばっかりやっていて。自称【騎士団】っていっている限りっ!
  あなたたちは子供以下の何ものでもないわっ!お~ほっほっほっ!」
「まあ。普通は幼児期まででしょうねぇ。そういうことをするのは。
  でも姿を変えられただけですんでいるんですから。いいとおもいますけど?私は?」
「…よくないとおもいます。ルナさん……」
しみじみというルナに、なぜか突っ込みをいれているシルフィール。
「何だとぉ~!?というかっ!目の前で仲間がいきなり姿を変えた我らの驚きがわかるか!?」
「だからぁ。驚くほどのことじゃないでしょうに♡」
至極当然なあたしの言葉に、他のメンバーは黙っているものの、
なぜか恐怖心を抱いてカタカタと小刻みに震えていたりする。
そんなあたしの言葉をうけ、ジルバは何やら叫びつつも、しゃりん、と剣を抜き。
そしてその切っ先でこちらを指し。
「騎士たるもの。女子供は傷つけぬこと。と心得にはあるっ!しかぁしっ!
  確固たる意思をもって我々に挑戦してきたものにあってはそれにはあたらずっ!
  ゆえにっ!おまえたちの挑戦状うけたっ!
  姿を変えられた仲間のためにも殲滅あるのみっ!ゆけいっ!」
「「おおっ!!」」
ジルバの声に一斉を上げて他のメンバーたちもまた、手に手に剣を抜き放つ。
どうでもいいけど、剣でなくてナイフやなぜか木の枝をもっている輩もいるが。
…しかも全員なぜかしり込みしてるし……
「お~ほっほっほっ!この白蛇サーペントのナーガ様にたてつこうとは!百年はやいわよっ!」
言い放ち、呪文を唱え。
風魔咆裂弾ボムディウィン!!」
ぶごっ!!
ナーガの放ったちょっとした風の力ともいえないもので、なぜか大半吹き飛ばされ。
そして砂に埋もれて先頭不能状態となっていたりする。
「…普通。砂場に呼び出された時点でわかりません?」
「あいつらは何も考えてないのよ♪」
「…納得。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そんな彼らをみてため息まじりにつぶやくルナの言葉に答えると。
ガウリイが横でうなづき、シルフィールは無言になっているけど。
「お~ほっほっほっ!ぶざまねっ!真なる騎士団ライトナイツ!」
ナーガの高笑いが響き渡る。
みれば残っているのは三人のみ。
そんなナーガの高笑いの声をさえぎり。

「ふははっ!無様よなっ!ジルバ!
  騎士団を標榜しておっても、所詮は魔道士の小細工も切り抜けられぬ程度よっ!」
ナーガの声をさえぎって響く挑発の声は、無論、あたし達でも見物に聞いてる野次馬たちのものではない。
野次馬の中にとある、別の岩もどきが、声と友にパカン、と割れ破れ。
そして中から姿を現してくるのは、全身鎧フルプレートに長剣姿の初老の男性。
そういやこいつも覗き穴…作り忘れていたっけ。
どうでもいいけど。
一応真なる騎士団ライトナイツの活動取締りを任されている正騎士で、
ついでにいえばジルバの父。
「あ、あのおっさん。」
「…というか、もしかしてあの人も息子さん同様にハリボテに隠れてじっとしていたんでしょうか?」
「親子よね~♪」
そんなあたし達の会話にる
「いったはずだっ!手出し無用!と!それなのにっ!何なのだ!?広場のあれは!?
  人の邪魔をするでないっ!それにっ!街の治安を守るのは我ら騎士団の努め!
  私闘のような真似はゆるさんっ!」
「お~ほっほっほっ!いってくれるわねっ!ゴルド=バンキス!
  そもそもあなたがきちんとしていないせいで、あいつらをのさばらしていたんでしょう!?
  それで治安も何もあったものじゃあないわねっ!
  人の親としても、騎士としてもあなた、未熟以下の何ものでもないわよっ!お~ほっほっほっ!」
「…つ~か、んな姉ちゃんに指摘されているぞ?あの騎士?」
「でも確かにそうよねぇ~。」
高々と言い放つナーガのこと場に、野次馬たちからもそんな声があがっているけど。
「未熟とは何だ!?未熟とはっ!こうして今儂が過ちを償わせるために参上したのはっ!
  騎士として、そして父としてであるからこそっ!
  ジルバ!おまえたちのなした数々の過ち。今ここで償わせてくれるっ!」
「笑止!飼い犬として安寧に浸った騎士団など。いかほどの道があるっ!」
何やら親子していっているけど。
「ゆくぞ!ジルバ!」
「おおっ!」
ゴルドとジルバの二人が剣を抜き放ち、吠えて砂をけりかけより……

「そこまでだっ!!」
朗々とした一喝が響き渡る。
ばさっ!
布を剥ぎ取る音が同時にいくつか響き渡る。
何のことはない。
ちょっぴり人間にはそれを纏っていれば見えなくなる布を貸しておいたルーディン騎士団の面々が、
布を取り去り投げ捨てていたりするのだが。
ちなみに、同じ布をもっているものであれば、それがどんなに力ない存在でも姿を確認、
視ることは可能。
一件したところ、人の目には何もなかったと傍目には見えていた砂地から突如として出現する騎士団の姿。
それゆえに、なぜか人間達の目には何もなかったはずの砂地から突如として、
人間が出現したよに見えていたりするんだけど。
布は大地に触れると同時に砂となり、周囲の砂と同化する。
体から離して投げ捨てたら砂に還るようにしてたんだけど。
ともあれ、砂地地帯に現れたのは鎧兜の騎士たちの姿。
というか、真なる騎士団ライトナイツやゴルドも、
自分達を包囲して固めるために移動していた彼らにまったく気づいてなかったしねぇ。
情けない……
騎士団の胸には鹿の紋が刻まれており、それが本家のルーディン騎士団だ、とものがたっている。
いともあっさりと包囲されている真なる騎士団ライトナイツの面々。

「…普通あれ…驚きますわよね……」
何やら多少顔色もわるく言っているシルフィールに。
「でも、足音はしてたぞ?あいつらそれにもきづかなかったのか?普通わかるぞ?」
最もなことをいっているガウリイ。
音を掻き消す効果まではあれには持たせてなかったからねぇ。
あの布は♪

「…な、何だ!?」
なぜか狼狽して驚愕しつつ周囲をみて何やら言っているジルバの叫びに。
「知れたこと!我らルーディン騎士団の名において!
  昨今行動が目にあまる真なる騎士団ライトナイツを取り締まるために参じたにきまっておろうっ!」
高々といっているのは、ルーディン騎士団のカロッゾ。
一応騎士団の団長を務めている人間。
「お…お待ちください!騎士団長!約束が違いますっ!この件は私に任せると……」
困惑の声をあげるゴルドの言葉に。
カロッゾは平然と。
「おまえの息子の件に手出しはせんっ!その約束はたがえぬっ!さて……」
そういいつつもジルバのほうに向き直り、懐から取り出した一枚の書状をかざし。
「ジルバ=バンキス!本日只今をもって、貴公を我らルーディン騎士団の正騎士として採用するっ!」
高々に響くカロッゾの声。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
何やら一瞬、その場がしずまりかえり。
そして。
『ええええぇぇぇぇぇぇぇぇ~!?』
あたし達と、騎士団以外の全員の驚愕の声が野次馬たちをも含めて響き渡る。
ゴルドやジルバもまた同じく叫んでいるけど。
「尚、その教育係にはゴルド=バクキスを任命するっ!
  息子の教育指導の任。責任をもって果たしてみよっ!
  ……約束どおり、息子の件には手出しはせんよ。口出しはするが…な。」
ゴルドはカロッゾの言葉にどう反論していいかわからずに、面白いことに口をぽかん、とあけっぱなし。
「わ…私は飼い犬などにはっ!」
一方でうろたえつつも抗議の声をあげるジルバに、カロゾは笑みを浮かべ。
「だが、今のやりかたでは何もかわらんぞ!真の騎士どころか塀の外で吠える犬とかわらんわっ!
  現在の騎士のあり方が不服だ、というのなら中からそれをかえてみせよっ!
  飼い犬たるを拒み、体制たるを拒み、それでもなお騎士としていきてみよっ!」
「……うっ……!?」
傍目にもジルバの心が揺れているのが丸判り。

「お~。揺れてるなぁ。つうか、さすがリナの姉ちゃん。スィ何とか。」
そんな光景をみてのんびりというガウリイに。
「ガウリイ様。ですから幾度も説明しましたが。赤の竜神騎士スィーフィードナイト様ですって……」
そんなガウリイにため息をつきつつも、突っ込みをいれているシルフィール。
今カロッゾが言っていることは、昨日ルナがカロッゾに提案し。
そしてあたしに了解…というか承諾を求めてきたもの。
あまりこの街に長く滞在していれば確実に【あたし】のことがごまかしがきかなくなってしまう…
という危機感をなぜかもっていたようだけど。
カロッゾに人事権があると聞いてルナが提案したのがこの手。
一種の【飼い殺し案】と、一部にはいう存在もいるけども。
だけど、ルナに指摘されるまでこんな手すら思いつかないなんて……
管理職にはあのカロッゾ、向いてないわね。

「これは正式な命令であるっ!騎士たるもの、命令には従うべしっ!」
「・・・・・・・・・・・」
カロッゾにそういわれ、ジルバは面白いまでに沈黙している。
そんな戸惑い、状況についていけずにダマリコンダジルバに。
「ちょっ!?ちょっとジルバさん!?どういうことです!?」
「まてよ!?親のコネで騎士様かよ?!」
「あんたまさか、こんな話受ける気じゃねえよなっ!?」
などと口々に騒ぎ始めている真なる騎士団ライトナイツのメンバーたち。
そんな彼らにジルバが答えるよりも先に。
「騎士二人の処遇が決定したところで!
  次は真なる騎士団ライトナイツの諸君の処遇だっ!
  ジルバ=バンキスがいなくなったあともその志をつぎ、活動を続けてゆく。
  というのならば、我ら騎士団、厳しい決断せねばならんっ!
  しかしっ!これを機に真なる騎士団ライトナイツを抜けるのであれば、
  我ら騎士団としてはその罪を不問とするっ!
  団をぬける意思のあるものは今すぐ口元の布を外し素顔をみせよっ!
  見せぬものは団に残ると解釈する。いかにっ!?」
実際はゴルドもジルバもこの展開についてゆけずに、ただ呆然としているだけなんだけど。
黙っているジルバをみつつ、そんなカロッゾの呼びかけに、
「……あ~あ。ジルバが抜けるんじゃあな~……」
「意地はって広場の仲間入り…はなぁ~……」
「な~んかしらけちまった……」
一同に口々に何やらいいながらね次々と布を取ってゆく元メンバー達。
ちなみに、【広場いき】とすでになっているメンバーの面々も、なぜか。
姿を変えた時点でメンバーを抜けるからっ!と悲鳴ながらにいってきていたりしたけども。
だけど、街の評判を多少面白…もとい、悪くしたというのもあることから。
約数ヵ月後から半年間くらいの間はそのままで。
という合意は彼らにもとってあるし♪
この場合、砂に埋もれていた真なる騎士団ライトナイツの面々も含め。
全員が布を取り素顔を見せるまでにさほど時間はかからなかったりしているけど。

ルナがジルバを【正騎士】に…と提案した真の狙いは即ち、このこと。
ジルバの考えはともかくとして、他のものたちはただジルバに便乗してやっていただけ。
それこそ幼子のようなのりで。
だけどもあたし達を巻き込んだことにより、彼らにとっては信じられないような出来事。
即ち。
何やら彫刻や銅像もどき。
さらには姿の変貌…などといった些細な出来事うけて、逃げ出したり足をあらおうとし。
その時点で行動に移したものは、メンバーの目前で軽やかな音ともに姿を変え、広場に移動。
そんな些細なこともあって、彼らはなぜかタイミングを探していた…というのもあったりするんだけど。

「うむっ!」
メンバー全員が布を取り去るのを見届けカロッゾは鷹揚にうなづいて、
お供の騎士ともどもゆっくりと後ろに退きつつ、
「では!全員退団とみなすっ!
  ここに真なる騎士団ライトナイツの完全解隊を宣言するっ!」
後ろに退きつつ、そういうカロッゾの声が一つの合図。
「お~ほっほっほっ!火炎球ファイアーボール!!」
ドバッン!!
その声を合図にナーガが呪文を唱えていたものを解き放ち。
炸弾陣ディルブランド♪」
つっど~んっ!!
なぜかにっこり微笑んでいうあたしの言葉と同時。
ジルバたちの周囲の砂がまきあがる。
砂が舞い上がり、そして……

「は…話が違う…許すって……」
何やらびくびくと痙攣しながら寝言をつぶやいているけど。
なぜかそれぞれ、様々な虫や昆虫、そして動物。
つまりは人とは異なる生き物もどきになった元団員のひとりがいってくる。
そんな彼らの問いかけに、カロッゾはしれっとしつつ…といっても額に一筋汗を流しつつ。
「いや。約束どおり我ら騎士団としては貴公らの罪を不問とするぞ?」
多少何やら震えるように答え、
「つまりは。あなた方がこれまで街の人たちに迷惑をかけた…というのは別問題。ということですわ。
 よりによってリナさんをも巻き込みましたし。」
そんな彼らをみつつ、ため息とともに言っているルナ。
「昨日。商店街の人たちと、リナさんたちは話しをつけておられますわ。
  確かに、リナさんの言うとおり。
  あなたたちの所業で遠のいてしまった観光客などを呼び戻す。
  というのは慈善活動ともいえますわ。」
魔力を使えば、というか術を使えば姿を変えることなどはたやすい。
と、ルナが弁解のようにシルフィールに説明しているので、
赤の竜神騎士スィーフィードナイト様がいうのならばそうなのでしょう。
と、納得しているシルフィールがルナに続いて何やら元メンバーたちにといっているけど。
「ま、そういうことで♪しっかりと【客寄せ】してよね♪
  そのほうが下手に手伝ってもらうより能率がいい、っていう話だったし♪」
人の顔をしたままのいわば人面もどき。
それらが言葉を話し、観光客を呼び込む。
というのがあたしの意見。
街の人たちも、面白そうだから。というので、昨日の夕方の話し合いできまってたし♪
街の人全員が全員、知らないことにしろ。
そんなあたしの言葉に、なぜか砂に埋もれたまま、
自らの姿に気づいて驚愕を通り越してパニックになっているものや、呆然としているもの。
つまりは元真なる騎士団ライトナイツのメンバーの面々。
「…何か人事とは思えないなぁ~……」
オレなんかリナにあったときに…蟻にかえられたし……すぐに戻してもらったけど…
そんなことを思いつつ、何やらつぶやいているガウリイ。
「な…何で私まで……」
なぜか焦げた塊。
犬となっているゴルバ=バンキスが何やらいってるけど。
「…元々、おまえの不始末とわがままかでこのお人たちまで巻き込むことになって。
  こんな事態になったのだ。おまえとてリナ=インバース殿の噂は知っていように……
  いずれは元に戻れるらしいから、大人しくあきらめてあまんじてうけておけ。バンキス。」
…いつ元に戻れるのかは正確には聞いてはいないが……
そんなことを思いつつも、体のみ顔を除く全てが犬となっているゴルドに話しかけているカロッゾ。
なぜかイヤな汗をつぅ…と流していたりするけど。
ちなみに、集まってきていた野次馬たちはといえば。
たかが、元メンバーたち全員の姿がかわったのを目の当たりにし。
何やら騒いだり爆笑したり…という行動をしていたりするけど。
ま、関係ないし。
「…うっ……」
カロッゾの言葉に、なぜかあたしに対して恐怖を抱き押し黙るゴルド。

「とりあえず。一件落着ね。」
「お~ほっほっほっ!この白蛇サーペントのナーガ様の実力がわかったかしら!?」
「…あんたはあまり何もしてないと思うが……」
「お~ほっほっほっ!細かいことを気にしたらダメよ!お~ほっほっほっ!」
あたしの言葉と、ナーガの高笑いがあたりにと響き。
そんなナーガにと突っ込みをいれているガウリイ。

「…あ、あの?ルナ様?こんなことが一瞬で可能なリナさんって……」
「え?リナさんはリナさんですわよ。シルフィールさん。
  と…ともあれ、私たちはセイルーンに急ぎましょうっ!」
だらだらと冷や汗と脂汗を流しつつ、どこか別の場所をみて、どうにか話題を替えようとしているルナ。


何はともあれ、海辺の町を騒がせていたエセ騎士団騒動は穏便にと幕をおろしゆく。
形としては騎士団の采配で、全てが収まり、騎士団は面目回復。
オブジェなどになっていた存在たちも姿をかえておき。
広場に設置したちょっとした次空間テーマパークは結構人々に人気がでて、
街の人たちからの評判も上々。
なぜか元メンバーの団員たちは、泣きながら
『元の姿にもどしてください。もう悪さはしません。』
といっているとか。
ちなみにバンキス親子はといえば、騎士団の文字通り、
姿が戻るまでは、『騎士団の飼い犬』としてすごすことに決定していたりするけども。

「さってと。すこし時間すぎちゃったから。急いでセイルーンにいきますか♪」
「お~ほっほっほっほ!」
「…ガウリイ様。もしかしてリナさん…ってこれまでもこんなだったのですか?」
「ま。姿を変えられるのはオレもやられたし。」
「―――………」
何かそんな会話をしているガウリイとシルフィール。
「…リナさん。あまり派手…もとい、無茶はしないでくださいませ……」
なぜか疲れたように言ってくるルナ。
とりあえず、あたし達は数日ぶりにベロゥル・シティを後にして、セイルーンの首都へと向かってゆく。
「…と、ともかくいきましょう……」
いったい本当にリナさんって……
何かお姉さんだ、というルナ様までおびえているように見えるのですけど……
そんなことを思いつつ、シルフィールがいってくる。
くすっ。
「あら。シルフィール。あたしはあたしだってば♪」
「リナさん。いきなり心を読まれるのは……驚かれますよ?」
「あら?誰でもできるじゃない♡この程度は♡些細なことで驚いていたらどうにもならないわよ♡」
「…人間にとっては些細ではないと思うのですが……」
「ふっ。愚問ね。シルフィール。こんな程度でおどろいていたら。
  リナと一緒に旅というか行動なんてできないわよっ!お~ほっほっほっ!」
そんなのどかな会話を繰り広げつつも。
あたし達が向かうはセイルーン。

ま、すこしは楽しめたかしら♡

ちなみに、その後。
ルーディン騎士団の心得に、
【最低限の常識、マナーは身につけるべし。】
というのが追加されたらしいけど。
ま、しばらく、彼らはあのままにしておきますかね♡

死んだら元に戻るし…ね♡


                 ――騎士道のすすめ編・終了――

HOME   TOP    BACK    NEXT


#######################################

あとがきもどき:
薫:・・うにゅぅ……
  なぜか最近、編集や打ち込みやってたら・・ルナが邪魔してきますわ……
  それまでいい子にねてたんだからずっと寝ててほしいのに……
  なぜに手にまとわりついたり、あげくはキーボードの上を歩くかなぁ・・うちのネコ(汗・・
  でもって、なぜか手をあまがみしたり舐めたりしてくるので・・なかなかに作業がはかどりません……
  何はともあれ。ちなみに。これ、元は25巻の騎士道の勧め。です。
  時間的には、前書きにも触れていたとおり。
  サイラーグからセイルーンに向けてリナ達が移動している最中のこと。
  となっております(笑)
  なのでルナもいるんですけどねぇ…サイラーグの一件の後始末させられたもので(まて
  この当時のガウリイ、まだリナ(エル様)のこと…よくわかってない状態です(笑
  なので金色の王…というのは当然知るはずもなく(爆!
  でも気の毒なのは…シルフィール…かな?
  何の免疫(?)もなく巻き込まれてる~・・・(こらこら。
  なぜか、次はオールディズだといっていたのにもかかわらず。
  先に別なのを打ち込みした薫ですが(自覚あり)
  ・・・ま…まさか100Kを超えるとは…あなおそろしや(滝汗……
  でもメモ帳でいえば72Kなんですよねぇ。ルビフリとかがあるからなぁ…HPのは(まて
  …二つに分けるかどうかは…しばらく考えますのです…はい(滝汗…
  何はともあれ、ではまた次回にて。
  ではでは。
  2006年1月15日某日


HOME   
TOP    BACK    NEXT