まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

こんにちわ。
またまたやってきました番外編v
今回は、水島飛鳥様のリクエスト。
SP25巻分。ブレイク・オブ・ディスティニー編なのですv今回は、ガウリイ達はでてきません。
つまりガウリイ達と出会う前のお話・・となっております。
あしからず・・・
出てくるのは当然リナ(エル様)とそしてスミレちゃん。
そして回想シーンに・・某お人(?)・・(笑

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エル様漫遊記~ブレイク・オブ・ディスティニー編~

ざっざっざ……
積もる落ち葉を踏み分けて響く足音が二つ。
どうでもいいけど、足音くらい消して歩きなさいよねぇ~……
あたしの横にいる長い漆黒の黒髪を結わえて頭の上のほうでポニーテールにし、
赤いレースのようなリボンで蝶々結びをしている見た目十歳前後……というか。
どう見ても十歳より年下。
よくていえば、八歳程度。
そんな彼女もまたあきれて小さくため息を吐いていたりする。
あたし達は足音すらも立てずに歩いている…というのに……
まったくもってなってないったら。
あたし達が見ている【彼ら】は一応山道にはなれているがゆえに、呼吸も歩みのリズムも乱してはない。
一見普通の旅人風…に見えなくもないが。
その目の前の男二人のうちの一人が抱えている麻の袋がもごもご動き。
くぐもった呻きがもれていたりする…というのを除けば。
普通こういった山道などで、人とすれ違った場合、軽く挨拶くらいはする。
というのが、人間達の中では一応常識。
…まったく……
「こんな寒い山の中。子供を抱えて何してるのかしら♡重そうだし♡」
ぴくくっ!
あたしの横にいる少女――ユニットの言葉に、
面白いまでに一瞬凍りつき、はじかれるようにこちらをみてくる男たち。
一応この辺りを人々曰く。
『雪も深い。』…ということなので、別に着なくてもいいけども。
とりあえず軽い防寒用の服を身につけているあたしと。
膝の上辺りまでレースのついたひらひらのスカートにの下にズボンを穿き。
もこもこの毛のついたブーツと手袋…ついでにローブを纏っているユニット。
一見したところ、あたしとユニットは【旅の姉妹】。
もしくは、あたしの格好からして、【少女を護衛している魔道士】と見られなくもなかったり。
あたしの姿をみて、魔道士、とみるか旅の女の子のハッタリ、と捉えるか。
その判断基準は人それぞれ。
「たいしたことはねえさ。それにこれは子供ではないぞ?」
荷物をもっていない男がにやけたような、
見る人からすれば獰猛の笑みとでもとれるような、そんな笑みを浮かべていいながら、
麻袋を担いでいる男のほうにと『先にいけ。』と手で合図なんかおくっているけど。
そして、あたし達のほうをみて。
「人手は足りてるから心配するな。帰って飯くってぐっすり眠って忘れちまいな。ここでみたことは。」
などといってくる。
どうやら旅の姉妹がハッタリをかねて、姉のほうが魔道士の姿をしている。
…と捉えているようだけど。
そんなことをいいつつ、男は右手で荷物を担いでいる仲間にかるく手をふり、
そして左手をそっと後ろに回していたりする。
どうもこちらの不意をついてナイフを取り出すつもりのようだけど。
……見え見えだし……
男の左手が動くより早く。
氷の矢フリーズアローv」
こっきぃぃん!
あたしのつぶやきと同時に、そこにいた二人の男たちめがけて冷気の矢が出現し。
一瞬もしないうちに男たちをその場に氷のオブジェと貸してゆく。
「あら?これくらいのことすらよけられないなんて♡」
「本当♡」
そんな至極当たり前な会話をしつつ。
とりあえずそのまま…というのも気の毒なので、その上から数キロばかりの重さの雪を積もらせておいて。
とりあえず雪の中にと埋めておく。
ふよふよふよ……
今埋めた氷のオブジェとは別に、何やらどこかに埋まってしまった男たちがもっていた麻袋のみが、
ユニットの目の前にてふよふよと浮かんでいたりするけども。
「さってと♪…とりあえず近くで火でもおこしましょ♪」
「賛成♡」
ひとまず、雪のどこかに埋まった男たちはほうっておき。
とりあえずあたし達はなぜか凍り付いて固まりと化している袋と共に、一度この場を離れることに。


「…あ…あじがとう……」
袋の中から取り出した女の子がなぜかガタガタ震えつつも、声を震わせてあたし達にといってくる。
一瞬、ユニットをみてぼ~となっていたりしたけど、それはそれ。
見た目の年齢は五つか六つ。
実際はまだ五歳になって間もない少女。
栗色の髪を頭の左右でくくり、きている服もいたって普通。
まあ、髪の色はあたしも栗色…にしているものの。
あたしは明るめの栗色、この少女は暗めの栗色、といった違いがあるけども。
どこをどうみてもただの人間の女の子。
まずこんな格好の子供を身代金目的で誘拐…つまり攫うものがいるとすれば。
その相手は、『何も考えていない人間』というより他にはない。
まあ、この子の場合はそういったコトとはまた違う事情だけど。
「もう大丈夫よ。今のところは。」
そんなあたしの言葉に。
「……ぞ~でなくて……ざぶい……」
カタカタと震えつつ、両手を肩と肩とに組み合わせ、何やらいってくるけど。
「ま、なぜかいきなり凍ったしねぇ。」
「そうね。」
「・・・・・・・・・」
少女としては、袋の中にいたために何が起こったのかわかっていなかったりするので。
彼女からすれば、自分がなぜここまで寒いのかわかってなかったりするこの現状る
ま、一緒に凍らせたほうが、そもそもその方が、あの男たちも『この子を人質にする』。
……ということも出来ないしね♪
「あらあら。自分で周りの温度くらい調節できなきゃ♡」
にこやかに言い放ち。
「えい♪」
パチン。
と軽くユニットが指を鳴らすと同時。
ごうっ!!
少女の周囲に炎の柱が出現し、そのまま少女を取り囲む。
「……って!?んきゃぁぁ~~!!??」
何やら炎に囲まれて悲鳴をあげてるけど。
別にやけどするような炎を出現させているわけでもないのにねぇ。
「さってと。で?名前は?どこに住んでるの?」
わかっているけど、ひとまずなぜか真っ青と成り果てて硬直している少女にと問いかける。
そんなあたしに対し、
「……殺されるかとおもった。でも、また今のをやられても嫌なんで答える。」
炎の収まりと共に、なぜか今度は寒さに…ではなく、恐怖でカタカタと震えながら。
「名前はマリリン。おと~さんと一緒にリシアルドの村にすんでる。」
ついでに暖を取るために暖めていた岩にと手をかざしつつ、顔色も悪く質問に答えてくる。
そんな少女、マリリンの声に。
『リシアルド?』
思わず同時につぶやくあたしとユニット。

リシアルドの村。
それは知るものぞ知る小さな村。
といってもあたしには知らないことなんてないんだけど。
人口が微々たる村ではあるが、その地方でしか取れない野菜。
雪アスパラガス、と呼称される品物が名産品の一つ。
というか、それしか名産品はないんだけど。
昨日たちよった麓の町でも本来は出回っていたりするのだが、今現在は売り切れ状態。
店の人や町の人いわく。
「いつもは山の中にあるリシアルド、という村でとれたものを町まで運んでいるのだが。
  最近その山に野盗たちが居座って、困ったことに物資の流通がママらなくなっている。」
などといっていたりする。
とりあえず、せっかくだから…というのと、何やら面白そうなことが起こっている。
ということもあり、こうして直接、リシアルドの村に出向いてゆくべく。
山道をてくてくと歩いていたあたしとユニット。

「山の中でね。ウサギ追いかけてたらあのおじさんたちに攫われたの。
  何でかはわかんない。丸焼きにされるのもいやだから答えるけど。
  うちの財産は…大きいタンスとベット…くらいかなぁ?」
などといってくるこのマリリン。
そういえば、このマリリンの父親…家のいたるところに【あるもの】を隠している。
ということ、このマリリンには教えてなかったりするのよねぇ。
まあ、別にいいけど。
「どうやら身代金目的ではなさそうね。」
判っているくせに、しれっとにこやかに笑みを浮かべて言い放つユニットに。
「みたいね。とりあえずあたし達もどうせ村にいくつもりだったし。家までおくっていくわよ。」
そんなあたし達の言葉に。
「…一人ででも帰れるけど……何か断ったら今度こそ丸焼きにされそ~なんでお願いする……」
いってこくり、と小さくうなづくマリリンの姿る
そしてふと。
「…そういえば、あのおじさんたちは?」
今さらながらにふと気づき、問いかけてくるけども。
「ああ。何かいきなり吹雪が起こって。それでそのまま雪の中に埋もれてたけど。」
「……ふぶき?」
雪は積もっているものの、空は晴れ渡っている。
雪が降った…という痕跡すらない澄み切った空。
「そんなことより。とりあえず村にいきましょ♡」
一人首をかしげるマリリンを伴い、あたし達はリシアルドの村にとむかってゆく。


山道をすすんでゆくことしばし。
山間に身を寄せ合うかのように集まった屋根の群れがみえてくる。
二十件にも満たない小さな家々。
それが目指すリシアルドの村。
家が近づくにつれ元気を取り戻したマリリンは、とてとてと村のややハズレにとある一軒屋にと向かってゆく。
他と変わらぬ小さな木の家。
近づくにつれ、コーン、コーン…と家の中より誰にでもわかるほどに響き渡っている音。
「おと~さ~ん!!」
マリリンの呼びかけと共に、音はやみ。
「ただいま~。」
いい加減に直せばいいものを、ガタのきた玄関の扉をあけて中にと飛び込むマリリン。
そんな彼女の後ろに続いて入る、あたしとユニット。
小さな部屋に小さな暖炉。
小さなテーブルに椅子二つ。
奥にある扉は寝室にとつながっている。
そして、暖炉のそばの低い作業椅子に腰を下ろしている男が一人。
年の頃は手入れもせず伸び放題にしている髪とひげのせいで、外見上の見た目は四十前後に見えていたりする。
実際はこの人間は三十に入ったばかりなんだけど。
まあ、そんなどうでもいいことはおいとくとして。
人間の中でいうならば大柄で、多少ずっとりとした体を粗末な袖長ズボンのモコモコした服にて包んでおり、
彼の前には、いままでやっていた木彫り細工の像やらクズがあたりにちらばっていたりする。
男の手に握られているのはノミと木槌。
「マリリン。」
入ってきたマリリンに気づき、手にしていたノミと木槌をおき、低く響く声で娘の名前をよび。
そして、ちらっとあたしとユニットに視線を走らせ。
「…?そちらの人たちは?」
などとマリリンに聞いていたりする。
「丸焼きつくろうとしてた人~。」
「?丸焼き?」
未だに、先ほど自らの周囲を囲んだ炎が忘れられないようだけど。
体を温めるのにはてっとり早いのにね♪
マリリンの言葉に首をかしげている父親。
ちなみに、名前はクライヴ。
「説明すると長くなるから。簡単に説明するけど。
  さっき山の中で、そのマリリンを攫おうとしていた奴らと出くわしたのよ。」
「何!?」
あたしの説明に、面白いまでに驚き。
そして。
……まさか!?あいつらは娘にまで!?
等と思っていたりするこのクライヴ。
普通、あ~んなことをしていたら、それくらいじゃすまないでしょうに♡
あの人間がこの彼にと追っ手をかけなかったのは、退職金がわり、と思えばいい。
ということだった様だけど。
それまでこの人間ってほとんどお金とか使うこともなかったからねぇ。
他のメンバーと違って。
まあ、それはそれとして。
「そ…それで?」
多少顔色も悪くといかけてくるクライヴに。
「それで、たまたま通りかかったあたし達が助けた。それだけのことよ。」
「あと寒くて丸焼き~。」
あたしの言葉に続けてマリリンが何やらいっているけど。
でも、その言葉じゃあ、クライヴには意味は通じないってば♪
本来なら、相手が何を訴えたいのか、というのは瞬時にわからないとダメなんだけどねぇ。
「…そ、そうか。それは…世話になった。」
ちょこちょことかけよったマリリンの頭をなでながら。
「私はクライヴ=ドゥワーズという。この村で炭焼きをやってくらしておる。」
などといってくるこのクライヴ。
そんな彼の言葉に。
「炭焼き…ねぇ。どうせなら細工物にしたほうが収入あがるのに♡」
にこやかに、的確なことをいっているユニット。
まあ、確かにその通りだけど。
暖炉の傍には、いくつかの木彫りの像がならべられたり、または転がっていたりする。
竜神や竜王を一応モデルにしている細工物、と見る人がみれば一目瞭然。
超一級の出来…とは到底いかないものの、彼独自の味がそれぞれに反映されている。
好みにもよるにしろ、手ごろな値段ならば欲しがるものもそれなりにいる、といえなくもない。
「あれを炭にする。面白い、といってくれる者は多いが、あまり売れん。」
そんな細工物たちにと目をやり答えてくるクライヴ。
まあ、人間の自称金持ちや、とある宗教団体がらみの者たちの間では、
こんな像、すなわち一般に言われている【神像】を炭にしているところなどが他にあまりないゆえに、
それゆえに、ある筋ではちょっとした珍しさからも価値がでている現実があったりするけども。
一応売りに出されている品物も、通常の炭よりすこし高めとなっているがゆえに、
あまり一般には知られていない。
「ま、とりあえず。そっちが名乗ったことでもあるしるあたしはリナよ。リナ=インバース。」
「ミリアム=ユニットです♡」
びくっ!
あたしの名前をきき、まともに体わ一瞬震わせているクライヴ。
そして。
「……リナ=インバース…?どこかで聞いたような名だが……」
まさか…あの?
などと思いつつ、小さくつぶやくクライヴだけど。
「まあ、よく似たような名前はあるし。とりあえず、見てのとおり旅の魔道士よ。
  今この子と一緒に、この村に雪アスパラっていう名物野菜がある。
  というのでちょっと食べによったんだけど。」
「そういうのが食べられる食堂などはこの村にはなさそうですね。」
交互にいうあたしとユニットの言葉に。
「ああ。そういう店はないな。」
娘が攫われかけた、ということを気にしつつ、淡々と答えてくる。
「なら、ちょっとわるいんですけど。適当な…もとい、村長さんとかに私たちのことわ紹介してもらえませんか?
  今夜の宿もどうにかしたいし♡」
にっこりと微笑み話しかけるユニットに続き。
「そうね。この辺りに居座っているっていう野盗たちをどうにかできるかもしれないし♡」
というか、関わる気だけど。
そんなあたしやユニットの言葉に。
びっくんっ!
……やはり、この少女が…あの?!
などと思い、またまた一瞬体を震わせる。
そんなに怖がらなくても…ねぇ♡
そして、だがしかし、今の私には関係ないはず…そう思いつつ。
「……野盗を……」
小さくつぶやき。
「……わかった。まっていてくれ。」
いいつつも、一旦奥の部屋にとひっこみ、そしてほどなく姿をあらわす。
どうせならばついでに着替えくらいすればいいものを。
この人間、この辺りのことはルーズなのよねぇ。
「案内しよう。――マリリン。来なさい。」
「うん。」
駆け寄るマリリンを従えて、彼はあたしのほうにと歩み寄り。
「それと。リナさんたち。これは娘を助けてくれた礼だ。うけとってくれ。」
いって、先ほど部屋からとってきた小さな麻袋をあたしにと手渡してくる。
袋の中には金貨が十八枚ほどはいっていたりするけども。
まあ、アレがあるから、生活には困っていない。
というのはあるんだけど、この家族は。
彼の妻のドロシーが生きているときは、彼女…アレを使わさなかったんだけど。
元々、そのお金がたとえ盗みなどで蓄えられたお金…といっても、お金にはかわりがないのに。
かといって役人に届けるわけにもいかず。
結果としてタンスや床下などにしまいこんでいたりするんだけど。
マリリンはその辺りのことは詳しく知らされてないし。
「あら。でも。」
とりあえず形だけ断るフリをするあたしにと。
「うけとってくれ。娘を助けてくれた礼だ。」
真剣な顔をしていってくる。

とりあえず、どうしても…ということもあり、それを受け取り懐の中にと収め。
そして、あたし達はクライヴに案内され、ユニットとともにこの村の村長の家にとむかってゆく。


山の中はいたって静か。
それが夜ともなればなおさらに。
これが夏場ならば茂る木の葉が風でざわめき、動物たちなど…
…といった鳥や虫達の奏でる賑わいが闇を満たすのであるが。
この辺りは未だに冬の気候。
別にあたしやユニットには気温などは関係ないものの、
なぜか一般的に人々にもわかりやすいようにいうなれば、
たかが、気温の一度や氷点下零。
そしてマイナス何度…という程度の気温で人々は家々に閉じこもり暖を取っていたりする。
というか、家の中より外で家など…例えばカマクラや氷の家をつくったほうが暖かいでしょうにねぇ。
雪をあまり上手に扱ってないわよね。
ほんと♡
ともあれ、クライヴから村長に紹介されたあたし達は、
【盗賊達を追い払い、すこしの謝礼と雪アスパラ食べ放題をその報酬とする。】
という旨の約束をとりつけ、宿もないこともあり、村長の家にと泊まることに。
本当は宿とかなくても、そのようの代用のモノはもっているんだけどね。
あと外に雪などで家を創ってもいいし。
でもやっぱり泊まったほうが何かと楽しそうだし…ね♡

一般的に、雪アスパラ。
という名前から人々が連想すること…といえば、単に白いアスパラのようなもの。
だがしかし、実際のところ、収穫時期はもとより、見た目まで異なっていたりする。
まあ、アスパラそのものが、元々いろいろな種類として出回っているうちの一つだし。
夕食時、目をきらきらと輝かせるユニットに、村長の妻である女性が見せたその現物は。
茎の長いブロッコリーににた物体。
まあ、アスパラもブロッコリーも同じ種ではあるんだけど。
色もブロッコリーと同じく、緑が鮮やかに反映されている。
ユニットって、あたしの【世界】の様々な代物…見聞きするの楽しみとしてるからねぇ。
自分のトコにはないものもあるからって……
で、気に入ったら取り入れたりするのよね。
まあ、あたしも同じことをしているから別に何もいうことないけど。
ともあれ、緑の茎の皮をむくと真っ白な芯が現れ、その部分を塩で湯がいたり、バターソテーにしたり。
…と、様々なアレンジを施して食べるのが雪アスパラの定説。
ユニットは面白がって茎の皮をむく手伝いをしてたけど。
ああいう作業って…彼女…好きだからねぇ。
わざわざ手間隙をかけるのが。
……ま、気持ちはわかるけど。
味としては一般の人々にも知れ渡っているアスパラをまろやかにした様な風味で、
何もつけなくても天然の甘みが十分にと味わえる。
ゆえに、子供や家族のために…と、この品物を買い求める人間達はすくなくない。
というか、食べられる品、と位置づけられている品全てに天然のおいしさがあるんだけどね♪

ともあれ、あたしも多少は手伝わったそれらの料理を食べ終えた後。
用意された一室にてのんびりとすごすあたしとユニット。
これから何があるらかわかっているがゆえに、たわいのない会話をすることしばし。
と。
どう~ん!!
静かな夜空に響き渡るちょっとした爆発音。

「い…いったい!?」
その音に何やら飛び起きて、それぞれの家の中で同じように叫びつつ、
何やら外を見ていたりする村人たちの様子が視てとれる。
人々を窓をあけ、外をみてみれば、村のハズレのほうから立ち上る炎の名残り。
「あ♡きたみたいね♡」
「そうね♡」
いいつつも、あたし達は部屋からひとまず出てゆくことに。
みれば、今では寝巻き姿の村長がおろおろしていたりするけども。
そして、あたしたちの姿をみとめ。
「……い、いったい!?」
戸惑い、混乱しつつも問いかけてくる。
「たいしたことじゃないですよ。
  ただ野盗さんたちがどこかの家にでも襲撃をかけてきた。というだけでしょうし♪」
にこやかに、軽くさらり、といったユニットの言葉に、なぜかそのままの姿勢で硬直している村長の姿。
別にそこまで驚くこともないでしように♪
とりあえず、あたし達はそのまま瞬時にと、音のしたほうにと移動してゆく。
あたし達の姿が瞬時に掻き消えたことで、なぜか卒倒している村長だったりするけども。
本当、根性がなってないわよねぇ~♡

とりあえず、精神世界面にそのままとどまり、様子を伺うことしばし。
あたし達が視ているその先では。
「なぜ今さら?!」
村をとりまく村の奥。
対峙している男にと叫んでいるクライブ。
葉の落ちた木々が立ち並ぶその奥に二つの影が対峙しており、一人はいうまでもなくクライヴと。
そして、もう一人は……
「伝えたはずだぞ。クライヴ。おまえの力が借りたい。とな。」
などというその声に。
「断ったはずだぞ!ルゾット!」
いいつつも怒りをあらわにして叫んでいるクライヴ。
「ああ。聞いたよ。けど『イヤです。』といわれて、『そうですか。』なんて引き下がるのは子供の使いだ。
  大人の交渉っていうのは……」
「――ボスっ!」
ルゾット、と呼ばれた男は別のほうから聞こえてきた自分を呼ぶ声に。
どうやら首尾よくいったようだな。
などとおもい、にやり、と笑い。
「大人の交渉だ。クライヴ。」
ゆっくりと後退しながら。
「力を貸せ。…そうすれば、娘は無事に帰してやるよ。」
「何!?……はっ!しまったっ!」
ここにいたり、ようやく自分がおびき出された…ということに気づき、何やらさけんでいるクライヴ。
そして、その直後。
ごうっ!
吹きすさむ烈風がクライヴの足をとめる。
積もった雪が舞い上がり、雪によって目でみえている視界を悪くする。
…というか、あいつら自分達の上司が何を考えているのかくらい見抜けばいいものを……
ルゾットの周りに隠れていた盗賊団の仲間の一人が呪文を使ったがゆえに、雪が舞い上がり、
周囲の視界を白く染める。
そのために、未だに方向をつかめずにいまだもたついているクライヴの姿。
……まったく……
明かりライティングv」
かっ!!
あたしの言葉とともに、辺りがちょっとした昼間程度の明るさにと包まれる。
光の中、空を飛んで逃げてゆくルゾットと、そしてもう一人の姿が垣間見える。
明るい光のした、あたし達二人がいつの間にか自分の真横にいるのにきづき、驚き目を丸くし。
「リ…リナさんたち!?」
なにやら叫んでくるクライヴだけど、別にどうってことないでしょうに。
元々、あたしたちはここにいたのであって、ただクライヴの目にも見えるよに、
物質世界面にと移動しただけなんだし。
くすっ。
「とにかく。クライヴさん。今はそんなことよりマリリンちゃんのほうが先決では?」
驚き何やら固まっているクライヴにと、にこにこと話しかけているユニット。
「あ…ああ……」
今まで気配すらも…というか、近づいてくる気配すらもなかったのに。
この二人…いつのまに自分の真横にいたんだ?
などとおもいつつも、だがしかし、ユニットの言葉をうけ、はっと我にともどり。
そして、あわてて顔色をかえて家のほうにと駆け出してゆくクライヴ。
ちなみに爆発そのものは、おとりとして術が放たれた…というのもあり。
クライヴの家には被害はないものの、家からすこしはなれた位置においてある、
薪置き場の一つからくすぶった煙がいま゛たにもくもくと立ち上っていりたりする。
当然家のほうはといえば被害はなし。
クライヴはそのまま、家に駆け込むと、
その横手においてあるちょっとした子供くらいならば簡単にと入れる大きさのカメを覗き込み。
「……っ!!」
その表情を苦痛と心痛にゆがませる。
いうまでもなく、彼はこの中にマリリンを隠してルゾットのほうにと出向いていったのだけど。
本当、どこかこの人間、抜けてるからねぇ。
どうせならこんな入り口付近の目につくカメの中でなく。
天井裏とか、床下収納庫とかにでも隠せばいいものを。
てっとり場やいのは、姿を他人から見えないように消せばいいんだけど。
なぜかそれはあまりできる人間達って…いないしねぇ~……
しばし、カメの中を食い入るようにとみつめ、そしてカサリと中に入っている一枚の羊皮紙を手にとり、
それをじっと再び穴が開くほどみつめ。
「く…くそっ!くそくそ!よくもマリリンを~!!」
クライヴの慟哭は夜空にとひびいてゆく。
やがて、そんな中。
辺りを照らしていた光珠が輝きを失い、再び辺りが夜の闇にと包まれる。
ともかく、一刻もはやくマリリンを助けないと……
そんなことを思いつつ、出入り口のほうにと向けて、一歩足を踏み出すクライヴ。
「それで?クライヴさんは今から彼らをおいかけるんですか?」
そんなクライヴににこやかに話しかけるユニットに。
「…そういうあんたたちはまさかついてくる気じゃあ……これは私の問題だ。」
あたし達をちらり、とみやり淡々といってくる。
そんなクライヴに対し。
「まあ。たしかにあんたの問題ではあるけどね。
  でもクライヴ。同時にこれはマリリンの問題でもあるわけで。
  たしかあのルゾットってやつ、人身売買も手がけてたわよね~♪ちょっぴり変わった相手にとか♪」
びくっ!
あたしの言葉に、またまた一瞬からだを震わせているけど。
まあ、この人間も昔はな~んも考えずにやってたしね。
趣味等で人を買い取っていたものたちに対しての子供たちの転売。
まあ、今回のルゾットの目的はまったく異なるんだけど。
ナーガの言葉をそのまま実行、という時点ですでに失敗はみえてるのに…ね。
くすっ。
そんなあたし達の言葉に。
「……あんたらは……」
どこまで知っているんだ?
などといいけかて、口をつぐみ。
そしてしばしだまりこんだ後。
「…あんたが、もしあの
盗賊殺しロバーズキラーのリナ=インバースなら……頼みたいことがある……」
いってそのまま奥の部屋にとはいってゆく。
とりあえず、何があったのか気になって…もとい、心配しているだろうから。
とユニットがひとまず村長のところに移動し。
クライヴの娘のマリリンが攫われた、という旨を伝えにいき。
それゆえにあたしよりもすこし遅れて奥の寝室に入ってくるユニットだけど。
彼とて昔は盗賊家業をあのルゾットの元でやっていただけに、
あたしのことは風の噂で聞き知っている。
まあ、あたしも暇だったし。
よくこの世界…というか、ここにきてから盗賊たちで遊んでたりしたしね♡
まあ、それはそれとして。
「……かつて私は盗賊の首領。ルゾットの仲間だった。
  あんたたちが見たかどうかはわからないが。先ほど話していた男だ。」
ガタガタと奥のタンスの引き出しを一つ抜き取りながら、何やら説明してくるこのクライヴ。
「今さら何かりきったことをいってきてるのよ。」
くすっ。
そんなあたしの言葉に、なぜか驚き。
あたし達のほうを振り返りつつ。
「…知っていたのか?」
などと聞いてくるけど。
「まあね。」
ひとまず軽く肯定しておく。
というか、あたしにわからないことなんてないしねぇ。
わざと知らないようにしていない限り絶対にありえないし。
…ユニットとかが絡んでいたらともかくとして……
そんなあたしの言葉に目を見開きつつも。
「……私は呪文を少々扱うことができてな。昔はそれを使ってルゾットたちと共に散々悪事を働いてきた。
  …だが、あるとき、行商の中にいた子供にいわれてな。『何でこんな悪いことをするんだ。』と……
  それで始めて気がついた。自分がどれほど罪深いことをやっていたのかを……」
いいつつも、カタン、とようやくたてつけの悪いタンスの引き出しを抜き取り床の上にとおく。
というか、いるのよねぇ。
自分では何も考えずにただ回りに流されるままに生きている存在って。
特に彼らの場合は物心付いたときにはすでに盗賊団の中にいたわけで。
彼らに限らず、大部分の組織などは攫ったりした子供などを自分達の仲間や後継者とすべく、
何やらいろいろとやっているからねぇ。
ルゾットにしてもまた然り。
そもそもルゾットも元はそんな子供の一人だったんだし。
子供を誘拐し、そして育てた人物はといえば、全て盗賊のメンバー。
ゆえに、正しいことを教える…といったそんな存在もいるはずもなく。
結果、感覚がずれた存在、というか生き物が出来上がっていたりするのだけど。
きちんと教育をそういった場所でも施すものは施しているのにねぇ。
まったく……
「七年前。私は盗賊団を抜け、流れ流れてさまよううちに、一人の女性とであった。
  それがマリリンの母親だ。私と彼女は結ばれ、この村にと移り住み。マリリンを授かった。
  だが…二年前…彼女は流行り病で……私が昔に為した悪事のつけがきた。そう思った……
  しかし…マリリンだけは絶対に守ってみせる。そう決意した。」
いいつつも、抜き取ったタンスの衣服の下にある板をカタカタと外しているクライヴ。
そしてその板を外した下には数枚の金貨が。
「神像を彫りつづけているのもすこしでも昔の罪を償うことができれば。とおもってのこと。
  私は過去を忘れた。だが…ルゾットのやつは私のことを忘れてはいなかった。」
いってゴトリ、とその吸うまいの金貨を手につかみ、そのままさらにその下の板をはずしてゆく。
「半月ほど前。ある日奴は私の目の前に現れ、過去のことは水に流すから力をかせ。
  といってきた。七年前と違い、配下に呪文を使うことのできる奴を多く抱え込んでいるようだ。
  どうやら何か大きなことをたくらんでいるらしい。」
いって、彼が三重底となっていた最後の一つの板を外し終えると、
その視界の先には、びっしりと敷き詰められた金貨の数々。
そこからかるく一掴みわど金貨をつかみ、それを袋につめ。
そして、再び底板や他の板などを元にと戻し。
そしてまたまたガタガタさせながらタンスの中にと引き出しをもどし。
「私は断った。…が、それで奴のとった手はこれ…マリリンの誘拐だ。
  過去との決着は私がつけねばならん。」
いって、金貨の袋をあたしにと差出し。
「あんたたちにはそれを見届けてほしい。
  そしてもし…私の力が及ばなかったら、マリリンを助けてやってほしい。」
いって頭を下げてくる。
「ま、別にいいけどね♡」
「それじゃあとっとと早く、マリリンちゃんを助けにいきましょ♡」
そんなあたしとユニットのその言葉に。
「……恩にきる。」
いってクライヴは深々と頭を下げてくる。
面白いからルゾットが、あの子に危害を加える気はない…というのは黙っておきますか♡

とりあえず、クライヴからマリリン救出の依頼料をうけとり、行動するならばはやいほうがいい。
ということで、そのままあたし達は夜の道なき道を進んでゆくことに。
向かう先はカメの中にと入っていた一枚の羊皮紙に書かれていた場所。


あたし達がそんな会話をしているそんな最中。
「……しかし、ボスのやつは何だってあんな奴にこだわるんだ?」
過去にいなくなった、という元福首領。
その彼を再び仲間に引き入れたい。
『あいつの実力はおまえたち全員を束ねてもおつりがくるほどだ。ようやく足取りがつかめた。』
などと首領であるルゾットがいってきたのは、ほんの半月ほど前。
それからずっとこのあたりで野営しているものの、彼らとしては面白くない。
しかも話をきけば、その元福首領は一味から抜け出るときにお金を持ち去ったとか。
だが、首領曰く、
『彼がかせいでいたお金からすれば微々たるもの。おまえら全店の稼ぎをもってしてもおいつかない。』
との存在。
そうまで一味をすでに抜けた相手を褒めちぎられたならば面白いはずもなく。
…だからこそ、彼を仲間にするのなら彼の実力を自分達で確かめさせろっ!
といったのは誰だったのか……
「くしゅっん!」
夜の闇にまぎれて襲撃してくる、とも限らない。
ゆえに、雪でかるくカマクラをつくり、寒さをしのいでいるこの人間。
ちなみに名前をガトル。
出来れば朝になってから待っていたいのは山々なれど。
ボスに。
『やはりおまえら程度ではおじけづくの仕方ないか。』
そういわれ半ば意地で待ち伏せしているこのガトル。
いつ来るとも判らないクライヴを待ち続け、降り積もる雪の中。
彼はただ一人その場にてじっとクライヴを待ち続けてゆく――


ざくざくざく。
夜更けとともに振り出した雪が元々積もっていた雪の上にと更につもり、
さくさくと進むクライヴの足音を響かせる。
目の前にほのかな明るさの【明かりライティング】を灯した松明を片手にもち。
もう片方の手にはマリリンのかわりに入っていた紙をみつ、足をもつれさせながらも先を急ぐクライヴの姿。
「まあ、でもあのルゾットが多少なりとも心が広くてよかったわね♡」
「というか、大概一味を抜け出るときに【お宝】を持ち逃げしていたりしたら。
  見せしめとして処刑…というのが一般的になってるわよね。なぜか悪人さんたちって♡」
クライヴと共に進みつつ、にこやかにほがらかな会話をしているあたしとユニットの言葉に。
「……?世間の常識…というのもはそんなものなのか?
  …というか、それ以前にどうしてなぜそのことを?
  …私はたしかに、一味を抜け出るとき多少の品を持って出たが……」
袋に詰め込んだオリハルコンや金塊等。
それらをこに人間は一味から出るとき持ち出しているからねぇ。
…あと、とある倉創りの置物とか。
ちなみに中身は当然昔の貴重品等入り。
そんなことを言った後にと首をかしげ。
「……いや、というか…私はたしか、一味を抜け出るときに品物を持って出た…
  とは、説明していないと思うのだが?」
何やら改めて問いかけてくる。
くすっ。
「あら。それくらい誰でもわかるわよ♡あの炭焼き神像もどきが売れたとしても。
  はっきりいってもうからないしね。特注の炭焼き神像でも金貨が数十枚程度でしょうし♪」
そんなあたしの言葉に。
「……いや、だから…その、【炭焼きの特注もうけている。】…ということも話してないのだが……」
マリリンから聞いたのか?
などと思いつつ、またまた首をかしげているこのクライヴ。
そのマリリンはといえば、只今【眠りスリーピング】をかけられ熟睡中。
おきたとき楽しめそうよね♪
「とにかく。まあ誰にでもわかることはともかくとして。」
にこやかに言いつつも、明かりの先の暗闇の中、とある方向を指し示しているユニット。
ユニットが指し示した方向。
すなわち、闇の中に別の明かりが灯っている方向をみて紙を握り締めているクライヴ。
そんな会話をしつつも、あたし達はなぜか焚き火をして暖を取っている男性の元にとやがてたどり着く。
…どうでもいいけど、術が使えるんだったら、自分の力で暖くらいとりなさいよね……

「ついたみたいね♪」
にこにこというユニットに。
「そろそろのんびりと話している場合じゃないみたいね。」
未だにあちらのほうはこちらに気づいていない。
「じゃあ、あたし達の姿はひとまず見えなくしとくから♪」
いうなり、ふいっとクライヴの視界からあたしたちの姿が掻き消える。
別に何てことはなく。
ただちょぴり光の屈折率を変えただけのこと。
目に映りこむ色彩云々…というのは、光の屈折によるものがそもそも主たる要因だしね。
「……なっ!?」
それをみて、何やら小さく叫んでいるクライヴだけど。
そんなクライヴの声に、すこし先にいる男――ガトルもクライヴにと気づきこちらを振り向いてくる。
「…どうなっているのかはしらんが……まずは私一人で何とかしてみせる。」
なぜか多少動揺しつつも、ゆっくりとクライヴはガトルのほうに向けて足をすすめてゆき。
そして。
「マリリンは!?」
あの紙に書かれていた場所はここのハズ。
等と、そんなことを思いつつ、相手に叫びかけていたりする。
ちなみに、あたし達はといえば、ふわふわと空中に座ってのんびりと眺めることに♪
ともあれ、この場に一人だけしかいない…というのに今さらながらに気づき。
「ルゾットはどうした!?」
そこにルゾットの姿が見えないことに対して続けて叫んでいるクライヴ。
そんな彼の言葉に口元をゆがませて。
「…子供は無事だ。ボスはこない。」
そうクライヴにといっているのは、薄い金の髪をざんばらに散らし、
不健康そのもの…といったやせ方をしている男。
そんな彼――ガトルの言葉に。
「ここに来い。と指示があったはずだが!?」
マリリンの姿どころか、ルゾットの姿も見えないので何やら叫んでいたりするクライヴだけど。
そんなクライヴに対し。
「それでいいんだよ。俺はガトルだ。」
いいつつ、ガトルは足元の石を拾い上げ。
それと共に懐から一枚の羊皮紙洋皮の切れ端をくるみ、それを無造作にぽいっとクライヴの足元にと放り投げ。
「……わからねぇな。何だってボスはおまえみてぇなジジイにこだわるのか。どうも気にいらねぇ。」
などといっているし。
そり、あんたたちに支払うお金が惜しいから、に決まってるじゃないのよね♪
そんなこととは、これっぽっちも知らず。
「その紙におまえが次にいく場所がかいてある。」
いってにやり、と口元に笑みを浮かべる。
そんな彼の言葉に。
「……次に?」
意味がわからずに問いかけるクライヴに。
「ああ。ただし!俺に勝てれば、の話だけどなっ!」
言うなり後ろに飛びのき呪文を唱えだす。
……どうでもいいけど、混沌の言葉カオスワーズなしで、力ある言葉だけで術くらい発動させなさいよね……
まったくもって情けない……
「待て!どういうことだ!?説明しろっ!一体……!?」
意味がわからずに叫ぶクライヴの言葉に対し、返事の代わりとして。
火炎球ファイアーボール!!」
どっごぉ~んっ!
周囲にガトルの放った術の音が響き渡る。

「……というか、これ、はっきりいって威力がまったく全然ないんだけど……」
ぼそり、とつぶやくあたしに。
「確かに。気持ち程度ちょっぴり雪が解けただけだし。」
そんな様子をふよふよと空中にと創り出した椅子に座って観戦しているあたしとユニット。
最も、クライヴやガトルからは、情けないことにあたしたちの姿は見えてないけど。

「…問答無用…というわけか……」
その瞬間、その場から飛びのき、身を低く構え、何やらつぶやいているクライヴ。
ほう。
よけたか。
などとそんなクライヴをみて思っているガトル。
「いいだろう。おまえには何の恨みもないが。
  倒すことでしか道がひらけん。というならば仕方がないっ!ゆくぞっ!」
「そうこなくっちゃなっ!」
クライヴの言葉をうけて、『さて、お手並み拝見といくか!』などと思いつつ応えているガトル。
そんなガトルにむて、完結に混沌の言葉カオスワーズを唱え。
炎の矢フレアアロー!!」
クライヴの声とともに、虚空にと出現した炎の矢。
その数たったの二本。
「いけいっ!」
声をうけ、その矢はガトルにむかってゆくが。
ひょい。
それを何なくかわし。
火炎球ファイアーボール!!」
それと共にクライブに向けて術を解き放っているガトル。
だがしかしその直後にも再び、
今度は【力ある言葉】のみで発生している炎の矢二本がまたまたガトルにむかっていき。
ひょいっと再びそれを交わすガトル。
そしてふと。
「……おい。おまえ…今混沌の言葉カオスワーズ…唱えてたか?」
そのことに気づいて疑問に思い問いかける。
そんなガトルの言葉に。
「笑止っ!初めに唱えればそれ即ち心の力によって発動するものなりっ!」
「……いや、無理だとおもうんだが…・・・ 」
何やらぽりぽりと頭をかいてづふやくガトル。
「くっ。このままではラチがあかん。仕方がない。今こそ解こう。封印を!」
一瞬唖然としているガトルの前で、そんなことを言い放ち。
長袖長ズボンの下。
両手両足首から、そこにつけていたバンドを取り外し、足元にと落とし。
「高まれ!わが魔力!受けよ!これぞ真の炎の矢フレアアロー!!」
クライヴがいうと同時。
力ある言葉のみで発動した十九本の炎の矢が、そのままガトルにと向かって襲いかかってゆく。
「…何っ!?…って、馬鹿なぁぁ!!??」
ちゅどごぉぉ~ん……
断末魔の悲鳴と共に、炎に飲み込まれ、いともあっさりとぽてり、と倒れているガトルの姿。
このクライヴ、勘違いしているところはあるにしろ。
基本の混沌の言語カオスワーズは全て把握してるからねぇ。
だから別にちょっとした小さな術ならば、力ある言葉のみで術は発動するし。
というか、普通誰でもそういうことはできるのが当たり前なんだけどね♡
術の威力に大小があれはすれども♡
まあ、それはそれとして。
ふとみればクライヴのほうの多少吹くが焦げていたりするけども。
「まずは一人め♡」
「というか、弱すぎるわよねぇ。」
ふわり、と雪の上に降り立ち交互にいうあたしとユニットの言葉に。
そのまま無言で足元のバンドを拾い上げ、そのバンドを懐にしまいつつ。
「いや。相手は強かった。封印を解かねばならんほどに…な。」
いって空をみあげ。
「これらのバンドの中には重りがはいっている。魔道の師匠から教わった。
  『これを身に着けておき、イザというときに外せばそのときこそ真の力が出せる。』…と。
  だがまさか、ここまで魔力がパワーアップするとは……」
などといってるけど。
「それ、パワーアップの仕方、間違ってるってば♡」
ある意味、力をつける。
という意味ではあってるけど。
「思い込みって面白いわね~。」
そんなユニットとあたしの言葉に。
「何!?」
なぜか愕然としてあたし達のほうを振り向くクライヴ。
とりあえず今はクライヴにも姿が見えるようにしてるけど。
「馬鹿な!?」
などといってくる。
「普通。それでパワーアップするのは。持続力とかスピードとかだし。」
「あと基本的体力♡」
そんなあたし達の意見に対し。
「それは違う。」
いってゆっくりと左右に首をふりつつ。
「かつて私の師匠はいった。魔道とは本来この世界には存在せぬ法則や力を存在させうる技術のこと。
  つまり!魔道とは常識はずれっ!」
あながち違っているともいえないけど、確実に間違い、勘違いしまくっているのよねぇ。
このクライヴは。
まあ、師匠があの自称【千の偽名をもつ魔道士サウザンド】だからねぇ。
くすっ。
「「違うってば♡」」
同時にハモルあたし達を無視し。
「手足に重りをつけていたのに外すとなぜか魔力がアップ!常識ハズレのきわみっ!
  それこそ即ち、魔道の極意!師匠のおっしゃりたかったのはきっとそういうことに違いないっ!」
「だから、それ、思い込みだってば♡」
「人間って精神的な抑制を無意識に施すことがあるしねぇ。」
「そもそも、あの変わったお羊の頭蓋骨をかぶって、さらには自分の名前も実は忘れている。
  という人間のいうことだし♡」
そんなあたしとユニットの言葉に。
「?リナさんたちは師匠を知っているのか?」
「知ってるわよわ♡」
というか、知らないこと事態がないんだけど。
そこまでいう必要もないし。
「ともかく。その魔力のパワーアップの仕方は間違っているから♡」
続けていうユニットの言葉に。
「しかし、実際に炎の矢フレアアローの出現本数は増えたぞ?」
「だ・か・ら♡心理的な問題だってば♡」
「一種のマインド・コントロールみたいなものねぇ。」
「?」
あたしたちの言葉に首をかしげつつ。
「よくわからんが…とにかく。そんなことより次のポイントにむかおう。」
「何か次はもうちょっと見ごたえがあればいいけどな~♡」
「無理でしょ。たかが盗賊なんだし。」
そんな会話をするあたしたちの前で、しばし足元から先ほどバンドと共に拾った羊皮紙をながめ。
「こっちだ。」
いってそのまま木々の奥にと進みだしてゆくクライヴだけど。
ま、別にいいけどね♡


「ほほう。ガトルの奴を倒したか。どうやら多少はやるようだな。」
指定された第二ポイントでクライヴを待ち受けていたのは、なぜか熊の毛皮を纏い、でっぷりと太った男性。
人間でいうならば、【ごつい】とか【筋肉マッチョ】とかいうのがしっくり来るのであろうけど……
筋肉つけていても、当の本人が弱いんだから意味ないと思うし……
そもそも、普通、その道を極めている存在などは、外見上からはわからないようにする。
というのは常識だし。
まあ、本当に極めている…という存在達やつらっていないけど……
とりあえず、あたし達はまたまた空中にて観戦中。
空にいるあたし達に気づくことすらなく。
「だがなっ!それでいい気になるなよっ!ガトルの奴など俺たちの仲じゃあ一番の小物さっ!」
などとわめきたてているけど。
……弱いものほどよく吠える。
とはよくいったものよねぇ。
「……で?娘…マリリンは?」
そんなことはどうでもいい。
クライヴの気がかりはマリリンのみ。
ゆえに憮然と言うクライヴに対し。
「ふん。そうあせるな。」
いって懐からまたまた羊皮紙を取り出して足元におき、そばの石を重しがわりにのせると。
「知りたければ、このメギストに打ち勝ち。記された場所に向かうがいいっ!」
などといってくる。
…どうでもいいけどこいつら……
どうして【ルゾットに図られている。】ということに気づかないのかしらねぇ……
意地と、そしてプライドなどがいりまじり、おかしい…と思いやつもいなくなっているようだし……
「わかった。ならぱいくぞっ!」
クライヴの声を合図に、二人は同時に呪文の詠唱を始め。
「……っ!」
完成直前。
呻いて詠唱を止めるクライヴ。
というか、羊皮紙が燃えるから…といった理由で止めてるけど。
特定のモノのみを燃やさないようにアレンジすればいいだけなのにね♪
人間達がよく使う術で最もポビュラーなものは火炎系のもの。
そしてよく使われるのが火炎球ファイアーボール炎の矢フレアアロー
これらははっきりいって、ただ混沌の言語カオスワーズを丸暗記し、その言葉を唱えただけで誰でも使える。
という一般的なものだし。
メギストからすれば、自分の足元に紙をおくことでクライヴの火炎系の術を封じたというだけのこと。
というか、たとえ紙が燃えたとしても、再生させればいいだけなのに。
その点、二人とも気づいてないし。
なぜか炭から元の物質への変換って…こいつら出来ないのよねぇ。
普通出来て当たり前なことなのにね♪
マリリンの手がかりが途絶えることを畏れたクライヴが詠唱を止めると同時。
メギスト、と名乗った男の呪文が完成する。
気片鏡エアカレイド!」
力ある言葉が放たれると同時。
メギストの周囲が陽炎のように揺らぎ、そしてクライヴを取り巻くように出現するメギストの幻たち。
一種の幻術ではあるがすこし異なる。
風等を利用して光の屈折を利用し、自らの影を生み出すこの術。
だからこそ、この場所の周囲にこいつはいくつも松明を灯しているんだし……
「何!?」
それをみて驚愕の声を上げるクライヴ。
『ふはは!驚いたか!風を操り、姿と声をいくつも生み出すこのメギストの術!
  いずれが本体か見抜けまいっ!』
などといってるけど…
というか、最初の位置に立っているのが本物だし。
そもそも、幻影の人影のほうには影が出てないし……
思いっきり松明の明かりで影…当人には出来てるんだけどねぇ……
そんなことは、子供でもわかることなのに。
「くっ!どれが本物だ!?」
……本気でクライヴは気づいてないし……
そのままきょろきょろと周囲を見渡し。
「はっ!そうか!前に師匠がおっしゃっていた!目で見るな。心の目。心眼をつかえ。と!」
いいつつ、呪文を唱えながらその場にて目をとじる。
気配を捉える…という着眼点はいいけどねぇ。
『こけおどしのつもりかっ!それとも大人しく覚悟したかっ!』
メギストは内懐からナゲナイフを取り出してクライヴめがけて投げはなつ。
そのまま、無言で一歩横に足を踏み出すクライヴ。
ナイフが裂いたのは今までクライヴがいた場所。
『……何っ!?かわした…だと!?』
……というか、たかが一本のナイフくらい…誰でもよけられるってば……
自覚も何もないことをメギストはいってるし……
そして、クライヴは目を開くと同時。
「心眼ボンバ~!!」
つっどぉぉん!!
面白い必殺技名の叫びとともに、クライヴを中心におきた爆発はメギストや幻を含め。
そのまま彼を中心としてゆきを舞い上げつつ広がってゆく。
クライヴを中心として、雪が積もっていたその場所には小さなクレーターが出き大地をさらけ出している。
そんな雪の中にできたクレーターの中心に一人ぽつん、とたたずみ。
そして何やら動けなくなっているメギストにと目をむけて。
「……これが心眼の力……」
「違うってば♡」
「今のはどうみても炸弾陣ディルブランドよねぇ♡ただ自分を中心にして発生させただけで♡」
「そうね。力ある言葉が違っているだけだし。」
ふよふよと空中にて座りつつ、つぶやくあたし達の声に顔をあげ。
「何が違うというのだ?」
などといってくるクライヴだけど。
「そもそも【心眼】というのは、そうものではないし♡」
「何をいう。師匠曰く、『見えない敵を討つための極意。それが心眼。』とおっしゃっていた。
  間違っているとでも?」
「それ自体は間違ってないけどね。解釈が違うってば♡」
「というか、次の場所を書いた紙。雪と土砂に埋まったみたいよ?リナ。どうする?」
にこにこと、そんなあたし達の会話にわって入ってくるユニット。
「まあ。確かに。このクライヴに説明してもねぇ。とりあえず、次いきましょ♡」
パチン♪
説明しても、解釈を捉え間違える。
というのが判っているがゆえに、あえてそのことには余り触れず、軽く指を鳴らす。
と。
ふわっ。
雪と土砂の中に埋もれていた羊皮紙が空中にと浮かび上がり、すとん、とあたしの手の中に収まってくる。
「さ。次ね♪」
本当は、この紙に書かれている場所にいってもマリリンはいないけど♪
「…あ、ああ……」
今の…どうやったんだ?
などと思いつつも、ひとまずうなづき紙をうけとるクライヴ。
ま、あと数人分は楽しめそうね♪

夜の闇の中であった空もやがてしらじらと明け、太陽が上空にもうすぐ差し掛かろうとしている。
先刻からただひたすらに指定された場所にいっては、
そこで待ち受けている盗賊団員の一人とクライヴは戦い。
そして倒して羊皮紙を手にいれ、次の場所へと移動する。
ひたすらそれの繰り返し。
それら全ていちいち律儀に相手をし。
面白いことに勘違いしまくっている技や理屈などで倒していっているクライヴ。
どうでもいいけど…いまだにルゾットの意図…わかってないし……
「聞くが…おまえの後には何人いる?」
対峙した細身の男にクライヴがうんざりして問いかける。
面倒ならいちいち相手をせずに、マリリンの居場所を気配等で捉えて移動すればいいものを♪
あたし達はそんなクライヴをみつつ、空中でお茶とかのんでくつろいでいるけど。
「くくく。心配するな。この余興もここで終わりさ。」
「…なら、次の場所にいるなだな。マリリンと…ルゾットは。」
「そういうことさ。だがなっ!勘違いするなよっ!ここで余興がおわる、といったのは、おまえはここで…!」
ごめっ!
男の言葉を最後まで聞かず、クライヴが投げつけた石は男の顔面を直撃する。
……というか、相手がかがんで石…拾ってるんだから…投げる…ということくらい判断しなさいよね……
余りに時間が経過しマリリンのことが気がかりな気持ちと。
そしてまた、いい加減に面倒くさくなってきた…というのが行動の根底にあるようだけど。
「ようやく終わりみたいね♪」
男が倒れたのをみて、ふわり、と横に降り立ちいうあたしに。
「ああ。そのようだな。」
いって大きくうなづくクライヴ。
「とりあえず、いきましょ♪」
にっこりいって、何やら水晶を虚空から取り出してにこにこしているユニット。
……ま、アレを見せたほうが確かに面白いし。
ということで、あたしとユニットの二人でそのことに関しては同意してるしね♪
クライヴは今だに知らないようだけど♡


連なる山のその奥に、今では使われていない猟師小屋が一つ。
知らないモノがみれば、ただの壊れかけた廃屋に見えるけど。
ともあれ、その戸口を背に待ち受けている男が一人。
体格はクライヴとほぼ同格。
あごや額に刻まれた傷跡。
そしてさらにはあごひげ…さすが幼馴染…というか、同じ時期に攫われて共に育った。
というだけはあり、身づくろいに関して疎いのはクライヴとまったく同じ。
ちなみに年もクライヴと同い年。
「来たぞ。ルゾット。」
「待っていたぞ。クライヴ。」
クライヴと盗賊団の首領ルゾット。
ようやく二人対峙しているこの現状。
後はクライヴが倒した一味のメンバーがそろえば舞台は整うわね♡
「しかし。かわってないな。クライヴ。のりで魔力が上がるところも昔のままだ。
  おまえならやれる…と思ってはいたが。本当に部下達全員を倒すとは、さすがだな。」
親しげにしみじみと話しかけているルゾットだけど。
ノリ、というか正確にいえば気分る
つまり精神的な問題なんだけどね♪
つまりは気分がのらないときには、精神的な抑制がかかり、全力を発揮できない。
というだけで。
今のクライヴのテンションは完全に上がっているけど。
「ご託はいいっ!マリリンはどこだ!?」
時間を考えても、もしも客と取引していれば、マリリンは商品として売られているかもしれない。
そんな不安を心に抱きつつ、怒りを押し殺し問いかける。
そんなクライヴの問いに、ルゾットは口の端を笑みの形に歪め。
「まあそう怒るな。おまえの娘は無事だ。用はすんだ。つれて帰っていいぞ。」
猫なで声でいうと、後ろの小屋の戸をひらく。
「おど~ざ~んっ!」
同時にそこから飛び出してクライヴのほうにと駆け出したのは、だぶだぶパジャマ姿のマリリン。
「マリリンっ!」
そんなマリリンをしゃがんで両手を広げて抱きしめているクライヴ。
「ごわかった~。」
等と言っているマリリンだけど。
待遇はまあまあよかったうちだとは思うけどねぇ♪
小屋の中にはいくつもの小さな松明がともされており、小屋の中の温度はそこそこ保たれている。
さらには、きちんと朝食も出されていたし♪
まあ、そんなことは説明することでもないから言わないけど。
「大丈夫か?酷いことをされなかったか?」
「…うん。丸焼きにもされなかった……」
どうやら未だに昨日のコトが頭を離れないようだけど。
「そうか。…よかった。もう大丈夫だぞ。」
そんな二人をしばしみつつも。
「感動的な親子の再会って奴か。それじゃあ俺はいくぜ。」
いってくるりときびすを返し立ち去ろうとするルゾットに対し。
「――まてっ!どういうことだ!?ルゾット!私の力を貸せ、といったはずっ!?」
言って何やらひきとめているクライヴ。

「だから。力は貸したってば。」
「…ねぇ~……」

ぽそり、と後ろで話すあたし達の声は耳に入らないらしく。
クライヴに問われて肩越しにふりむき。
「知らなくていい。とにかく用はおわった。それだけのことだ。」
まあ、確かに用はおわったけどねぇ。
そんなルゾットに対し。
「そうはいかんっ!おまえがまたいつ同じ理由でやってきて、また同じことを繰り返さない。
  という保証はないからなっ!」
何やらいって食い下がっているクライヴ。

「…未だに気づいてないし……」
「…普通、わかるのにね♡」
そんなやり取りをすこしはなれた後方でみつつ、つぶやくあたし達とは対照的に。

「無用な心配だ。」
「そういわれて安心などできるとおもうか?!それにおまえがマリリンを攫ったことにはかわりはない。
  このまま見過ごすわけにはいかんっ!」
いってゆっくりとマリリンから手を離し、ひたり、とルゾットを見つめるクライヴ。
そんなクライヴの言葉にため息一つつき。
「ならばどうする?」
いって足をとめてクライヴのほうにと振り向くルゾット。
ここまで言われても、本当の理由に気づかないなんて…本当、面白いったら♡
「マリリン。すこし離れておいで。いい子だから。」
「……うん。」
言われて、彼女はこくん、と小さくうなづくと寒かったらしく、
またまた小屋の中にとはいり、そっと扉の影にと身を隠す。
確かに中のほうが温度は高いけどね。
それを見届け、ルゾットのほうに静かに歩み寄り拳を振り上げ。
「これはマリリンのぶんっ!」
ばきゃっ!!
繰り出された一撃をルゾットはよけることもなく、ただ後ろに身を引いて威力を殺し頬でうける。
そして半歩さがってにらみつけ。
「…これで気がすんだか?」
などといっているけど。
理由説明しないと、このクライヴは鈍いから分からないってば♪
理由が分かっていないがゆえに、クライヴが納得するはずもなく。
「まだだっ!」
いって踏み込み再び拳をくりだし。
「これはドロシーの分っ!」
「誰だ?!それっ!?」
そういや…ルゾットはクライヴの妻の名前…知らなかったわねぇ。
クライヴの言葉に突っ込みをいれつつも、今度は身をかわして後ろに退って距離をとる。
「そんなことはどうでもいいっ!」
「よくねえだろ!?普通!」
何やら叫びつつ。
そして。
「いい加減にしろ。これ以上やるなら俺も手出しせざるをえん。
  そうなればおまえの娘を巻き込むことにも……」
「――ボスっ!!」
言葉をさえぎり響く声に、愕然と振り向くルゾットとクライヴ。
ちっ!
動けるくらいに手加減していたかっ!クライヴのやつはっ!
などと内心思いつつ。
「「…くっ!!」」
その姿を認め、小さく呻いているクライヴと、そんなことを思っているルゾットの声が重なる。
数人ほどは未だに起き上がれなかったり、雪の中に埋もれたままになっていて、脱落しているものの。
この場に律儀にもやってきている十五名の人間達。
「思ったよりやるようだな。ジジィ。それは認めてやる。だが、これだけの人数相手じゃあ勝てないだろ?」
などといってくるのは一番初めに戦っていたガトル、という人間。
そんな彼に続き。
「そうそう。大人しくボスのいうことを聞いたほうが利口ってもんだぜ?」
などと別の男性もそんなことを言っているけど。
くすっ。

「すご~い。本気で今の今まで気づいてないんだ~♡」
パチパチパチ。
そんな彼らをみつつも、ふわり、と手にしていた水晶珠を頭上に浮かべた状態で、
パチパチと手を叩き褒めているユニットだし。
「まあ、ある意味確かに。褒めたくもなるわねぇ。ここまで分かってないと。」
思わずあたしとしても本音が出るけど。
やっぱり、わかっていても近くで見るのとでは気分的にもかなり違うし。
「ここまでわかっていない。っていうのが面白いし♡
  あなたたち、そのルゾットさんに何をされたかわかってないでしょう?」
「というか。そもそも【お宝】を独り占めにしたくての行動だもんねぇ。これ♡」
そんなあたし達の会話に、いまさらながらにあたし達にと気づき、
「何だ!?貴様らは!?」
とかいってくる盗賊メンバーのうちの一人。
「な…何を訳のわからんことを!?」
そんなあたし達の声をうけ、面白いまでにあからさまに動揺しているルゾット。
「あら?なら説明できるの?ルゾット。ここまで来たクライヴに人質…つまりマリリンをあっさりと返して。
  そして、『もう用はすんだ。帰れ。』だなんて♡
  しかも、その小屋の中、寒くならないようにしっかりと暖房をかねて火はおこしてあるし♪」
「商品にするとしたら、逆に寒さで感覚を麻痺させて騒がなくなったところで行動するでしょうしねぇ。」
至極最もなあたしとユニットの会話に。
あたし達が『誰』なのかは気にはなるが、だがしかし。
彼らとてそんなあたし達の言葉をきき、ここにいたりようやく疑惑を抱いていたりする。
だから、気づくの遅すぎだってば♡
やってきてルゾットの部下たちが一斉にとルゾットに視線をむけ。
「そういや。確かに妙だったな。理由を聞いても答えてくれないし。
  自分も早々に立ち去りたがっていたようにみえた。」
いいながら、じりじりとルゾットから距離をおきつつ、マリリンを小屋の中より手招きして呼び寄せ、
あたし達のいるほうにと後退してくるクライヴ。
そんなクライヴに対してにっこりと。
「あら?クライヴさん?もしかしてまだわかりませんか?
  つまり、クライヴさんたちはきちんとそこのルゾットさんに力を貸してるんですよ♡」
「そうそう。つまり平たくいえば、収入を独り占めするのに部下たちが邪魔だから。
  っていうんでクライヴを利用したのよ。」
「…な…何を……」
そんなあたし達の台詞にあからさまにうろたえているルゾット。
ざわり。
そんなあたし達の会話をきき、ルゾットの部下たちがざわめき立つ。
「つまり♡もし違う。それは嘘だ。っていうんだったら。
  どうしてわざわざ攫ったマリリンをあっさりと戻したのか。
  わざわざ部下たち全員にクライヴと戦わせて、彼が部下たちをやっつけるのを見越して、
  それで、『部下たちにお金を払うまいとしたんじゃあないっ!』っていうんだったら。
  きちんと説明してみてよね♡」
くすくす笑いながらいうあたしの言葉に。
「て…てめえに説明する必要はねぇ!」
狼狽しつつも叫んでいるルゾット。
「あら?でもそれで、その人たちが納得するかしら?」
にっこりと、ダメおしをしているユニット。
目の前では、面白いまでにルゾットに詰め寄っている彼の部下たちの姿があったりする。

「…ボス。本当のところ…どうなんですか?」
「このジジイをさんざん褒めちぎって俺たちをけなしていたのは……」
「オレなんか『おまえなんかクライヴの足元にも及ばない。』とまでいわれたぞ。」
「説明してもらいましょうか。ことと次第によっては……」
そんな部下たちの剣幕に押されつつ。
「…だ、だからだな。俺はただ、最近慢心していたおまえたちに、世の中は広いんだ。
  ということを教えるために……」
目を泳がせながらいっても説得力はないってば♡

「…つまり、どういうことなのだ?」
未だに理解していないクライヴがあたし達の後ろにと移動し終わり聞いてくる。
くすっ。
「は~い♡ここにちょっとした記録映像があるから映しま~す♡
  ある酒場でのやり取りを収めた記憶珠メモリーオーブ♡」
元気に手を上げて、にこやかに言い放ち。
それと同時に、ふわふわと浮かんでいた水晶が、大気中にとある映像……
つまりホログラフ…もとい、立体映像を映し出してゆく。


「お~ほっほっほっ!あなた、話がわかるじゃない。」
「姐さん。ささっ。遠慮しないで。」
映し出された映像は、とある酒場の中の風景。
棘付きショルダーガードにどくろのネックレス。
そして意味もなく高笑いをしている女性。
言うまでもなくナーガに対して何やら食事を勧めているルゾットの姿。
ナーガからすれば、食事を奢るかわりに相談に乗って欲しい。
といわれ、一緒にいたりするのだけど。
きっとこの姐さんは名のあるお人に違いない。
そんなことを思っているルゾット。
デカイことをするために呪文を扱えるモノたちを招き入れた。
だがしかし、彼らへの分け前が割高となり、このままでは軍隊が本腰を入れて討伐に来かねない。
そんなことを思案していたそんな中。
ちんぴら…といっても過言でない者たちが旅の商人を襲っており。
それを商人もろとも呪文で吹き飛ばして撃退し。
そして落ちていたお金を拾い、立ち去る彼女をみて、
この人だ!この人にアドバイスをしてもらえばっ!
などと思い、それを実行しているルゾット。
その辺りの経緯はクライヴたちにはわからないようだけど。
「ふっ。それで?何が聞きたいんだったかしら?」
こんな格好をしているからには、絶対にどこか名のある組織の一員のハズ!
いや、もしかしたら闇の組織の首領かもしれない。
そう勝手に一人思いこんでいるがゆえに、
「実は困っていまして。配下のものが余り使えない。というのにも関わらず。
  分け前は術が使える分、かさばりやして……何とかならねぇかと……」
そんなルゾットの言葉を、盗賊のこと、とは捕らえずに。
「ふっ!甘いわねっ!そんなことで人に相談するなんてっ!お~ほっほっほっ!
  でも、食事のお礼としてアドバイスはしてあげるわっ!」
「本当ですかいっ!?ささ。遠慮なさらずにどんどんやっちゃってください。」
「お~ほっほっほっ!悪いわねっ!」
いいつつも、追加注文をしばしした後。
「つまり。そのつかえないやつら。という人たちには、それを自覚させればいいのよ。
  誰か一人にその人たちが全員倒されれば、支払いはしなくてすむし。
  万が一、それで何かいってきたとしても、
  『慢心しているおまえたちに世間は広い、とわからせるため。』とかいって、
  自己を見つめなおす機会とかいって、はぐらかせばいいのよっ!」
「……なるほどっ!」
ナーガの台詞にぽん、と手をうっているルゾット。
「でも。そのとき、その『誰か一人。』というやつに支払いをするのも馬鹿らしいからね。
 そう、お金とは関係ない人を使うのがベストねっ!」
まあ、その辺りは上にたつものとしての力量にもよるけど。
そんなことを思いつつ、ただひたすらに延々と高笑いをし続けているナーガの姿。

しばし、そんな光景がその場にて映し出され……


「これ。すこしまえに、そこのルゾットさんが何やら話していたのを記録していたやつなんだけど♪」
にっこりと映像を映し終えた水晶をちょこん、と両手でもち言っているユニット。
そんなユニットの言葉と、今の映像をうけ。
ざわっ!!
「ボスっ!?」
「どういうことですか!?」
などとルゾットに詰め寄っている彼の部下たちの姿が。
くすっ。
「お宝を持ち逃げする。という手もあるけけど。それだと後々追い掛け回される恐れは濃厚。
  けど…部下たち全員が。今の映像でも言われていたとおり。誰かに倒されれば。
  当然、そんな心配もなくなる。なおかつ、お金とは関係ないもの…
  つまり、そこで昔の仲間のクライヴのことを思い出し、調べればすぐに居場所がわかった。
  そ・こ・で♡クライヴを仲間にいれる。と宣言し、皆の前で彼をとことん褒めちぎる。
  当然、それはそこにいる人間達にとっては面白いはずもないし。
  散々対抗心を煽られ…つい、『自分達でクライヴの力を試させろっ!』と。
  メンバーの内の誰か一人がいうと、それにあっさりと面白いまでに全員同意した。
  とまあ、こんなところかしら?」
あたしの言葉に、さらに一味のざわめきが大きくなり――
「あ♡もしかして、もうルゾットさん。品物を別のところに移動していたりするとか♡」
まだ、ここのアジトの品は移動させてないようだけど。
実はいくつかあるほかの場所のはルゾットはもう移動させてるしねぇ~。
部下たちの目を盗んで♡
そんなユニットの言葉に。
「そ…そんなわけがあるかっ!ちゃんとアジトにあるっ!
  おまえらっ!そんな女子供の口先にだまされてどうするっ!
  俺たちを仲間割れさせよう、ってのが見えみえだろうがっ!」
説得力がまるでないことを何やらわめいているルゾット。

「どうかしらねぇ。きちんとアジトにいって確認するべきだと思うけど♪」
「たしか。この近くのアジトは……」

そんなあたしとユニットの言葉に。
「杉の谷の向こうだ。」
一味の内の中の一人がルゾットに詰め寄りながらもポロッと漏らす。
いるのよねぇ。
アジトの場所をつい言う人間って。
注意が他のことに向いていればなおさらに。
「おいこらっ!何をばらしてんだ!?おまえ!」
別の人間があわててたしなめているけど、遅いってば♪
それに、元々あたし達はしってたし。

「あと。確か三箇所だったっけ?リナ♡」
「あら。五箇所よ。ここを入れて六ヶ所♡」

そんなあたし達の会話に。
「…なっ!…し、始末するしかねぇなっ!」
何やらうろたえつつもいってくるけど。
くすくす。
クライヴはといえば、なぜかあわててマリリンを抱きかかえ、そのままずざっと後ろのほうに走りぬけ。
そして距離を多少あたし達からとりながら。

「そうそう。皆に紹介するのが遅れたが。
  …こちらの女性は、今回、私に力を貸してくれることになった。
  ……リナ=インバースさんと、ミリアム=ユニットさんだ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
『……げっ!!??』
そんなクライヴの説明に、なぜか一瞬ルゾット一味は黙り込み、そして小さな叫び声をあげてくる。
なぜか全員から戸惑いと、恐怖…といった負の感情が撒き散らされているけど。
「…まったく。普通みただけで【誰か】くらいはわからないと♡」
「さっきから。私も【リナ】って呼んでたのに…ね♡」
にっこり同時に微笑み。
そして。
なぜか逃げようとしているルゾットたちにとむけ。
「とりあえず。ルゾット一味には報奨金というか懸賞金もでているし♪」
パチン♪
軽く指を鳴らすと同時。

どすすすすっ!!

ルゾットたちの頭上より、氷のちょっとした槍…というか柱のようなものが出現し。
そして、そのまま彼らの頭上よりそれらは降り注いでゆく。
ついでに炎の槍らしきものも同時に降っていたりするけど。

「あ♡地面が何か融解しかけてる♡」
「あら~。あの程度で体が溶けかけてるわねぇ。」

『~~~~○X△!!??』
なぜか多少温度が上がった地面に触れて、思いっきり体の一部などを溶かし始めている彼らだけど。
…ま、別に死ぬようなことでもないし…ね♪

しばし、なぜか声にもならない男たちの悲鳴が周囲にと響き渡ってゆく。



山間の小さな村にひさかたぶりの平和と活気が戻っている。
近くに居座っていた野盗は壊滅し、ふもとの町との行き来を邪魔するもの…といえば。
積もっている雪くらいなもの。
名物、雪アスパラの出荷も再開され、町から買い付けに来た人間達などで村は多少にぎわっている。
ルゾット一味は役所に突き出し、彼らにかけられていた懸賞金をうけとり。
そしてまた、アジトに監禁されていた商品…となるはずだった子供たちも保護し。
それゆえにそれをも含めて役所のほうから礼金をうけとり。
それ以外の品物などの一部は没収し、
あとどうでもいいものはルゾットたちとともに、役所に届け出ておいたけど。
ふもとの、いくつかの食堂や宿では『子供を助けてくれた礼。』または、
『家宝を取り戻してくれたお礼。』などといって滞在中は無料としてくれるらしいけども。

「世話になったな。」
「せわにな~。」
そんなこんなであたし達はリシアルドの村を後にしてゆく。
そもそも、ルゾットもナーガの意見をそのまま実行しようとしたのが運のつき…よね♡
くすっ♡
本当、いろんなところでナーガは種をまいてるから。
だから面白いんだけどね♡

さって、次はどこにいきますか…ね♡


                             ~ブレイクオブデスティニー編完了~


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あとがきもどき:
薫:・・・・・ようやく打ち込み完了です・・・・
L:というか。これ、あたしとユニットのパターンでいってるけど・・・
姫:たしか。二部の形で・・・ルークとミリーナがかみ合ってくる・・というのも考えてたわよねぇ?
薫:・・・・ぎくっ!・・・まあ、それはそれとして(滝汗・・・
  ともあれ!ここにブレイク・オブ・ディスティニー編をお送りしましたのですっ!
  今回一番被害・・もとい、とばっち・・もとい、不幸せ・・もとい、幸運だったのは誰でしょう(汗
L:あら?その幾度も言い直しているその言い回し・・どういう意味かしらねぇv
姫:というか、そもそも、あたしもリナも活躍してないし?
L:そうよねぇ。
姫:そうそう。
薫:んきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
  と・・とりあえず、私は次にいくのですっ!
L:というかっ!はやく連載中の続きとか、あたしの本編の続きいきなさいっ!
姫:あと、私のほうもねv
薫:・・・あうあうあう・・・・・・・・・・
  何はともあれ・・・・・・・・・
姫&L&薫:それでは、また次回で・・・・


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