まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

こんにちわ。またまたやってきました(こらこら
漫遊番外編ですv
このたびは、セイルーンの二度目に向かう途中。
つまりは、ザナッファーの一件が終わった以降のお話で。
セイルーン領内へと向かう途中のお話となっております。
正確にいうならば、白銀の魔獣編が終わって…しばらくして…からですね。
この後、食べ放題(まて)にいって、それからセイルーンに向かう・・という形です(笑
何はともあれ、いくのですv

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エル様漫遊記・番外編 ~復讐の刃編~

自然の調和。
様々な条件が重なった下では自然は様々な形を成してゆく。
それはどの場所においてもいえること。
そう。
それがどのような惑星上であろうとも、その外部においてもまた然り。
「白き世界に煌き集うは光の舞 夜の星星の煌きと 昼間の煌き 二つが手を取り合い……」
「?……あの?リナさん?」
さくさくと銀色に輝く大地を踏みしめつつ進むあたしのつぶやきに、
なぜかついて外に出てきたアメリアが話しかけてくる。
ひとまず無視することにして。
「光の舞は 昼と夜の狭間を照らしたまわん。」
これは一つの実験。
聞かれても問題ないようにポエムのように聞こえはすれども。
「あの~。リナさん?さっきから何を……」
宿の外にある木の幹に手をあてて、しばし目をつむり、
直接【ある命令】をこの辺りの精霊達にしていると、またまたアメリアたちが問いかけてくる。
とりあえず、命令もどきはし終えたので。
「何よ。アメリア。さっきから。」
そんなあたしの問いかけに。
「何よ。じゃないですよ。朝早くから出て行くからてっきりこの雪の中。
  盗賊でも懲らしめにいくのかとおもって。急いで着替えて出てきたのに。
  さっきから何やってるんですか?」
なぜか多少声を振るわせつつアメリアが聞いてくる。

ラウド公国に続く裏街道。
公国といっても規模は小さく、また山間部に位置していることから余り名も知られていない。
とはいえ、
その国を抜けて裏街道ともいえる道になっていない道を超えれば、セイルーン領内に普通よりも早くつける。
というのでこちら側からセイルーンに向かう人々にとっては、ある意味貢献している。
といっても…この辺りの地理的条件などに加え、さらには地層の含有物など。
それらなどの影響もあり、さらには多少の標高もあることからほぼ一年のほとんどが雪にと覆われていたりする。
それゆえに、あまり旅人…という人間達などはあまり見えなかったりもするのだが。
あと余談ではあるがこの山を越える道を選べば、セイルーン、カルマート、そしてラルティーグ…と。
三つの国とつながっていたりするのだけども。
つまりは、国境近くの小さな公国…といったところ。
周りの国々の名前でこの国は有名になっていない…という事実もまた然り。

「あら?何って。みてわかるでしょう?ちょっぴり雪景色だし。ポエムを作ってたのよ♡」
嘘ではないし♡
事実はポエムに見せかけた実験だけど♪
そんなあたしの言葉に。
「……ぽ…ポエ……」
なぜか恐ろしいものをみたかのように目を見開き。
そして次の瞬間。
「びぇぇ~~~!!」
いきなり泣き始めていたりするアメリア。
その声をききつけ。
「何だ!?」
「どうしたんだ!?」
なぜかそれぞれ寝巻きのままだ、宿から出てくる二人の姿が。
「何があったんだ?」
青い上下の星柄の寝巻きのの上にマントを羽織ったゼルがそんなことをいいつつも、
なぜかこちらをみてしばし硬直。
「?…何か空気が異様に怯えてるようなきがするんだが……」
きょろきょろと周囲をみて、何やらそんなことを言っているゼルと同じく宿備え付けの寝巻きを着ているガウリイ。
「びぇぇ~リナさんがぁぁ!」
未だになぜか泣いているアメリア。
「リナ。おまえアメリアに何かしたのか?」
「アメリアのやつ。ひどく怯えてるぞ?…おまえ何をしたんだ?」
まだ朝も早い。
というので普段身につけているコルセットなども身に着けておらず。
赤い上下の寝巻き代わりにしている服があたしの全身にぴったりとまとわりつき、
スタイルのよさを外部にも知らしめているけど。
そんなあたしに交互に何やらいってくるゼルとガウリイ。
「あら。別に何もしてないわよ。ただ、この雪景色のポエムもどきを作ってたのよ♡」
嘘でもないし♡
「びぇぇ~~!!」
そんなあたしの言葉にますます泣き喚くアメリア。
「何…!?ポ…ポエム!?」
「…どうりで空気が怯えてるわけだ…って。ポエムだぁ!?リナがか!?」
何やら二人してそんなことをいってくる。
「あら?あたしがポエムとか作ったらおかしい?そういえば以前もそんな反応したやつらがいたわねぇ。」
そんな態度をとった部下たちはそれなりにお仕置きはしたけども♡
「いやまて。ガウリイ。もしかしたらこいつはリナじゃないのかもしれない。
  いくらどう考えてもリナの中にポエムなんてものを作る感性があるとは思えんっ!」
きっぱりと言い切っているゼル。
ほぉ~……
「いや。リナには違いないぞ?というか。いつものコルセットをつけてない…というはあるにしろ。
 それに何か空気そのものが怯えているような感じだしなぁ~……」
「びぇぇ~!!リナさんがぁぁ!!」
「よしよし。怖かったな。かわいそうに。こんなに怯えて。」
口々にすき買ったなことをいっている、ガウリイ・ゼル・アメリアの三人。
ほほぉぉぅ……
「んっふっふっ……あんたたち。いいたいことはそれだけかしら?」
にっこり微笑み。
ぱしっ!!
「「「~~~!!???」」」
小さな音と同時に何やらその場でもがき苦しみ始めている三人の姿がなぜかあるけども。
「しぱらく反省しなさいな♡」
空気中に球体を作り出し、その中に三人を閉じ込め、ちょっと水圧なども加えておく。
何やらもがき苦しんでじたばたしてるけど。
ま、この程度じゃ死ぬこともないでしょ♡
なぜかもがき苦しんでいる三人をそのまに、あたしは一人先に宿にと戻ってゆく。
さってと、そろそろ服を着替えておきますか…ね♡
なぜか三人が三人とも、あたしは本物だったの!?
というようなことを今さらながらに思っているけど。
あたしはあたしに決まってるじゃないのよね♡
空中に浮かんでいる水の球体を引き立てるかのように風が吹き、
雪が舞い上がりきらきらと煌きながら空中にと舞ってゆく。
とある星では【ダイヤモンド・ダスト】と呼ばれている現象。
これが晴れた日とかにも起こるように、ちょっとした【命令】をしていたのよね♡


「「「は~くしょっんっ!!」」」
「あらあら。三人とも。風邪?」
にっこりとテーブルにすわりながらも何やらカタカタと震えている三人にと話しかける。
なぜか、ゼル・アメリア・ガウリイの三人は仲良く同時にくしゃみをしているし♡
「誰のせいだっ!誰のっ!!」
「う~……死ぬかと思いました……」
なぜか抗議の声を上げてくるゼルにアメリア。
そして。
「いくら何でも雪の中でいきなり水におぼれさせることはないだろ!?しかも何か息苦しかったぞ!?」
何やら文句をいってきているガウリイ。
「あら?水中でもきちんと息くらいはできないと♪」
「水の中で術が唱えられるかっ!」
「う~…凍えそうですぅ~……」
ほんのしばらくほうっておいただけなのに、そんなことをいってくるし。
ガウリイがどうにか根性でゴルンノヴァで発動させて、水の壁を切り開き。
彼らは水の球体から出てきているんだけど。
「あら?普通できるわよ♡それに、モトを正せば自業自得じゃない♡」
『・・・・・・・・・・・・・・・』
にっこり微笑み、いいきるあたしの言葉になぜか三人とも無言になり。
「でもいくら何でも……」
などとづふやくアメリアに。
「あら?ならギガスレイブとかのほうがよかったかしら?」
ぶんぶんっ!
あたしのナイスな提案になぜか三人とも同時に首を横に振ってるし。
まったく。
あの程度のことで何を文句をいってるのやら♡
そんなほのぼのとした会話をしていると。
「…あの?あなた…見たところ魔道士よね?」
同じ宿の一階で食事をとっていたポニーテールをした赤い瞳の女性が話しかけてくる。
鎧はつけていないものの、背中にはとある形式の長剣を。
そして腰には長剣とショートソードを一本づつさしている。
彼女はざっとあたし達を見渡して。
「実はあなたたちに頼みたいことが……」
むろん、彼女がもっている剣はその三本だけではないにしろ。
「?」
ハテナマークを飛ばし、その女性を未だにがちがち震えつつ見つめていっているアメリア。
彼女はざっとあたし達を見渡して。
「実はあなたたちに頼みたいことが……」
などといってくる。
別に引き受けてもいいけど、ここはやっぱり♡
「い・や♡」
即座に返事を返し。
「追加注文をお願いするわ。トーストサンドセットを追加ね♡」
まったく無視して食事を注文する。
そんなあたしの言葉にしばし言葉を失い、そしてもう一度挑戦…とばかりに。
「いえあの…できれば話だけでも……」
「減るからねぇ。だからいや♡」
きっぱり再び言い切るあたしの言葉に、驚愕の表情を浮かべ。
「わ…技が深いっ!」
などといってるけど。
というか実はあたし、彼女には以前この姿でないときに一度あったことがあるのよね~♡
当人、そのことに気づいてないようだけど♡
あたしも別に言う必要もないので言わないけどね♪
ちなみに彼女の兄とはあたしもガウリイも面識あるし。
「――わかったわ……邪魔したわね。」
自ら敗北を悟り、そのまま二階へともどってゆく。
そんな彼女の後姿を見送りつつ。
「今のって……どういうやりとりだったんですか?」
首をかしげて何やらいっているアメリア。
ひんなアメリアに。
「つまりだな。今リナがただ単に【やだ。】と答えていたとすれば、
  『聞くくらいならいいでしょ。別に減るわけではないし。』
  という反し技をあの女性はいうつもりだったんだが。
  だが先にリナがそこまで読んで答えた…というわけだ。」
「なるほど。ま、リナさんは相手の考えを読むのは朝飯前ですしね。
  でも、リナさん?何かあの人…困っていたようですけど?
  でもどうして話も聞いてあげなかったんですか?」
ゼルの説明をうけて納得し、あたしに聞いてくるアメリア。
「あら。別に今きく必要がないからよ♡それに今は食事中だし。」
「そういや。リナ。オレ達どこにむかってるんだっけ?」
「あのな~。ガウリイ。俺たちは今からライド公国に向かうところだろうが。
  その途中の森が『旅人が抜けられないからどうにか原因を突き止めて元通りにしてくれ。』
  という依頼だったろうが。」
とぼけたことを言うガウリイにゼルがため息をつきつつ説明する。
そんなゼルの説明に。
「そうだっけ?」
きょとん、とするガウリイに対し。
「まあ。ガウリイさんですから仕方ないですけど。でも街道沿いの森に何があったんでしょうか?」
ガウリイに対しては一言ですまし首をかしげているアメリア。
「ま。とにくか。いってくるしかないでしょ♡」
ここ数年、というか1,2年ばかり森に足を踏み入れた人々が森を抜けることもできず、
そして森の中で迷った挙句に元の場所に戻ってしまった。
という報告は近辺の村々などにも伝わっており。
ゆえに、旅人の姿も遠のいているこの現状。
そんな会話をしつつも、とりあえず朝食をすませてあたし達は問題の森にと足を向けることに。


「…これは……」
「何かここの空気…というか、気配、おかしくないか?」
歪んでいるというか何というか……
ラウド公国に続いているちょっとした森。
小さな丘…というか森を越えた先にラウド公国はあるのだが。
その森に足を踏み入れしばらく進むとゼルとガウリイがそんなことをいっていたりする。
ガウリイにいたっては野生の勘で空間が捻じ曲げられている、
というかねじれている、ということに気がついて的確なことを思い言っていたりするけども。
「たしか。ここの森の道ってそんなに長くはないはずですよね?」
そんなアメリアのつぶやきに。
「そりゃあね♡」
くすっ。
いってその辺りの石をふわり、と浮かせ手ににぎり、かるくその辺りにと投げてみる。
と。
どごっ!!
「ってぇぇ!!?」
なぜか背後から出現した、今あたしが投げた石がまともにガウリイの頭に直撃する。
あらあら。
それくらいよけられないと♡
「と。まあ、今のでも判るとおり。今、この森はどうやら魔法の迷路マジック・メイスになっているようだし♡」
「なるほど。」
その様子とあたしのこと場にぽん、と手をうち納得しているアメリア。
「…だから、人々がこの森を抜けられなくなっていたのか。案外あの話も嘘とはおもえないな。」
かつてある魔道士がこの森に【写本】を隠し、その影響かこの森は迷いの森となった。
という話がまことしやかに近隣の村などでは言われていたりする。
そういった話もあり、ゼルもまた今回の依頼に同行する形でついてきているのだけど。
今の行動と説明で、しみじみと納得しているアメリアとゼルとは対照的に。
「というかっ!今のは何なんだ!?またリナが何かしたのか!?」
なぜか未だに頭を抑えつつ、何やらいってくるガウリイ。
「あら?あたしは別に何もしてないわよ♡
  ただ、その辺りの石をかる~く投げてみただけだし♡
  ガウリイの背後に石が出現したのは、この森そのものが空間が歪んでいて。
  さらには幻影の術などともアレンジされて森に入った存在の方向感覚が麻痺されたり。
  また、空間湾曲によって生じた誤差で偶然にもそうなっただけだし♡」
そんなにこやかなあたしの説明に。
「リナさん。ガウリイさんにそんな説明をしても無駄でしょう。」
「だな。…それより、どうやら降ってきたぞ?」
今日は降らないだろう。
と宿のオヤジはいっていたが……
そんなことを思いつつも空を見上げてつぶやいているゼル。
昨日まで降っていた雪のため、辺り一面銀世界。
街道沿いを歩いていた…というのにも関わらず、どんどんと森の奥。
つまりは森の奥からつづいている、ちょっとした小山にと踏みいっているあたし達。
浮遊レビテーションで空に浮かんでアメリアが確認しようも、先ほどあたしが説明したとおり、
この森の空間はねじれているので上空にすらも浮かび上がれなかったりする。
初めはちらほらと降っていた雪も間をおかず、視界が真っ白になるくらいに降り始めていたりする。
「みたいね~♡あら、視界も悪くなってきたわね。でもこのあたしに一言の断りもなく降り始めるなんて。
  お母さんはそんな子に育てた覚えはないんだけど♡」
そんなあたしの言葉に。
「わけのわからん愚痴をこぼすな。リナ。…って……」
ぴたっ。
あたしのつぶやきと同時、なぜか降り始めていた雪がぴたりと止む。
それをみて何やらゼルが言いかけていた言葉を途切れさせていたりするけど。
「…世の中ってすごい偶然がありますよね。」
雪が止んだのをうけて、そんなことをいっているアメリアに。
「「……本当に偶然か?」」
空を見上げて何やら同時につぶやいているゼルとガウリイ。
「あら?偶然って怖いわねぇ。とりあえず、今のうちにどこか雪をしのげる場所にいきましょ♪
  ちょうどこの先に何か建物らしきものがあるみたいだし。」
あたしの言葉に。
「お~、本当だ。何かあるな。いってみようぜ。」
手を額にあてて、その姿を認めていっているガウリイ。
そんなあたし達の台詞に。
「「…どこに?そんなものが?」」
なぜか二人して顔を見合わせて首をかしげているゼルとアメリアの姿があったりする。
くすっ。
「ともかく。いってみましょ♪」
そんな彼らと共にひとまず、この先にとあるとある建物へとむかってゆく。
だってこのほうが楽しめるし…ね♪


「…本当にありましたね。リナさんやガウリイさんが言うとおり……」
「だな。リナやガウリイにかかると、普通の常識が通用しないな。…どうやら城塞のようだが……」
目の前にでん、と建つ建物をみて、しみじみとそんな会話をしているアメリアとゼル。
百年ばかり前にと建てられた城塞。
しかし、一部を除いて壊れている様子はまったくない。
「…なあ?リナ?これって……」
その壊れている一部、というのが入り口の扉。
何やらすっぱりと切り刻まれており、建物の中が外からも見てとれる。
入り口の扉の様子と、建物の中をみて何やら言いかけてくるガウリイ。
「……これは……」
「……何かすごい殺伐とした風景だなぁ~……」
ガウリイの言葉に、ひょい、と壊れた入り口から中を覗きこみ、
そこにある光景をみて何やらいっているアメリアとゼル。
足元に倒れている切り刻まれた跡がくっきりと判る樫の扉。
その先に死屍累々と横たわる食人鬼グール生きた死体ゾンビ、そして骸骨戦士スケルトン
「…誰かが殴りこみでもしたんでしょうか?」
「…生きた死体ゾンビはともかく……骸骨戦士スケルトン食人鬼グールまで……」
その光景をみて何やらつぶやいているアメリアとゼルに対し。
「でもこれらって元々死体だろ?」
「ええぇ~!?ガウリイさんがまともなことをいってますっ!」
「だからか。雪がまた降り始めたのは。」
ガウリイの言葉に交互に言っている二人の姿。
「あ…あのな…おまえら……」
ガウリイが言いかけると同時。
ギィィ…ンッ……
建物の奥のほうから風にのり、刃の音が聞こえてくる。
「あら?誰かいるみたいね。いってみましょvまた雪が降り始めたことでもあるし♪」
先ほどまで一時止んでいた雪は再び降り出し、
風とともに、一般に吹雪と呼ばれる状態に空模様はなりかけている。
すでにあたし達が歩いてきた元の道の姿も、アメリアたちの目には見えなくなっていたりするのだが。
周囲の天候がどうなろうと、また何が起こっても、普通の元の姿って視えるものなのに…ね♡
「それもそ~ですね。」
「だな。」
「…って、おまえら……」
ガウリイをあっさり無視し、
あたしの言葉に同意するアメリアとゼルの言葉に、ガウリイが抗議の声を上げているけど。
とりあえずそんなガウリイはほっといて、あたし達はそのまま音の聞こえてくる方向にと進んでゆく。

奥に進んでゆくことしばし。
風にのって聞こえてきていた刃の音がだんだんとはっきりとし始める。
そして。
とある部屋の前の廊下にと出たとき、目に飛び込んでくる光景が一つ。
どうやらそろそろクライマックス…といっても過言でないのかもしれないけど。
「……あれ?あの人……」
「さっきの子だな。」
あたし達の視線の先には、ロングソードでどうみても、【鎧】と対峙している女性が一人。
その女性の姿をみて、アメリアとゼルが同時にいっているけど。

「くうっ!」
かきぃぃっ!
鎧の…つまりは、動く鎧リビング・メイル対峙しつつ、
それの放った一撃をかろうじて頭上で受け止めるものの。
一応腐っても相手は動く鎧リビング・メイル
パワーは彼女よりも上なのでたまらず彼女はそのばに膝をつく。
続いて動く鎧リビング・メイルの放った蹴りが彼女の胸板を叩き、
「くっ!!」
息をつまらせ、それと共に体勢を崩していたりする。

烈閃槍エルメキア・ランス!」
ざむっ!
一瞬あきれてみていたものの、見かねたゼルが呪文を唱え解き放つ。
動く鎧リビング・メイルは彼女にまさに突きを繰り出そうとしていたところ。
その状態でまともにゼルの放った光の槍に貫かれ、しばし一瞬硬直したのち。
カラ…ン……
硬い静かな音をたて、動く鎧リビング・メイルであったそれは、むなしく鎧ごと床にころがり崩れてゆく。
鎧にその辺りにいる低級霊などを憑依させて作り出す【動く鎧リビング・メイル】は、
一応、一般的には人間達の間などでは番兵などによく使われていたりする。
最も、その辺りの木の枝などでつついてもあさりと消滅するようなものが憑依している。
という場合がほとんどだけど。
「…やっぱり中はがらんどう…ですね。」
崩れた鎧をみてつぶやいているアメリア。
そして。
「大丈夫ですか?やっぱり、あなたは今朝の……」
未だに荒い息をついて起き上がろうとしている女性のほうにと声をかけていたりする。
そこでようやくあたし達にと気づき。
「…あっ!あんたたち!?…どうして!?」
面白いまでに驚いてざっとあたし達を見渡していたりする彼女だけど。
「あら?あたしたちはこの森に用があってね♡」
にっこりと微笑み、返事を返すあたしの声に。
「…道に迷った…とかではなくて?」
眉をすこし顰めていってくるけど。
ともあれ、剣を鞘にとおさめつつ。
「ともかく。とりあえず助かったわ。ありがとう。
  どうもあの動く鎧リビング・メイルって奴、苦手なのよねぇ。」
などといってくる。
そんな彼女の台詞に。
「あれを普通の武器だけで倒すには延々とかなり根性をいれてどつかないといけないしな。」
「正義の心があれば問題ないですっ!」
つぶやくようにいうゼルに、きっぱりと言い切っているアメリア。
そんな二人の言葉は何のその。
「何しろ下手に斬りかかれば刃こぼれするし。いくら斬っても血もしぶかないし……
  それにのたうちまわって苦しんだりもしないから、何かこう…張り合いがないのよね。
  やっぱり、こうごりっとした感触がないと…ごりっとした……」
などといってるし。
そんな彼女の言葉に。
「…何かずいぶんと殺伐としてますね。」
ぼそり、と横にいるゼルに言っているアメリア。
「…な~んかどこかであったような気配なんだけどなぁ?」
などとつぶやき、首をかしげているガウリイ。
くすっ。
「あら?ガウリイにしては珍しく覚えてたわね♡彼女、レミーっていって。
  ほら。あのアトラス・シティでのロッドの妹よ♡」
彼女のことは、あのときちょっぴりガウリイには説明してるし。
「…って、貴方たち、兄さんをしってるの!?…って、私…名乗ったかしら?」
ふとあたしが名前を言ったことに関して首をかしげているけども。
「ちょっとまて。リナ。ロッド…というのは、もしやあの。あの【人斬りロッド】か!?」
裏の内情にも多少は通じているのでゼルが思い出し、何やらあたしに聞いてくるけど。
「そ♡そのロッドよ♡アトラス・シティでちょっと知り合ってね♡で、彼女がその妹♡」
「…人斬りって……。それはともかくとして。ええと…レミーさん…でしたっけ?
  こんなところで何をしてるんですか?」
あたしやゼルの会話にぽそり、とつぶやきつつも、気を取り直し、
そこにいる彼女――【レミー】にと話しかけているアメリア。
「そういえば、そうだな。この森は何らかの力で魔法の迷路マジック・メイスになっているのにわざわざ……」
アメリアの言葉に腕を組み、そうつぶやくゼルの言葉に。
「それはケルンの仕業よ。ここの魔道士。……私の父さんの仇なのよ。」
「「?ケルン?仇??」」
レミーの言葉に、思わず顔を見合わせているゼルとアメリア。
…思い込みって本当、面白いわv
とりあえず。
「仇…って、まさかよったおまえの父親が通りすがりの魔道士をどついたのが原因とか?」
「どこの世界にそんな話があるのよ?」
思わず確認のために目を点にして問いかけるゼルの言葉に、一瞬呆気にとられ言い返してくるけど。
実はいるのよねぇ~。
そういう人間も♪
彼女ではないにしろ。
アメリアもゼルもあの一件には関わってるし。
まあ、それはそれとして。
「私たちの父は魔道士だったのよ……」
いって、聞いてもいないのにうってかわって遠くをみつつぽつり、ぽつりと話し出し。
「今からおよそ一年ばかり前。魔族の研究をしていた父さんが、
  知り合いのケルンという魔道士に殺され。ケルンは父さんの研究を奪ったわ。
  そして逃げたの。私はそれからずっとケルンの行方を追って……
  そして…やっとこの森にケルンがいることを突き止めたのよ。
  兄さんに連絡しようにもどこにいるかわからないし…
  ……何よりもこの私が留守中にケルンは父さんを殺したのよ。
  この仇は絶対に私の手でっ!!」
いってぎゅっと剣を握り締める。
そんなレミーの言葉をうけ。
「なるほど。…だからリナ。…つまりは、あのとき俺たちの声をかけたのか。
  相手はプロの魔道士だしな。」
「でもこれで判りました!何て悪党なんでしょうっ!
  この森に変な術わかけているのも、そのケルンという輩の仕業ですねっ!
  自らの身を守るためっ!わかりました!レミーさんっ!
  そういうことなら喜んで協力させていただきますっ!
  あ、私アメリアっていいます。さあ!その悪の権化、魔道士ケルンを退治しにいきましょうっ!」
ゼルの言葉をさえぎるように一人、拳を握り締め、びっと天井部分にある天窓のほうを指差して、
そして高らかに言い切るアメリア。
「確かに。…その魔道士がこの森を迷いの森にしているのならほっとけないな…それに……」
そんな力をもっている、となればアレをもっているのかもしれないし。
などと思いつつ言っているゼル。
「とりあえず♡あたし達の目的はこの森の異変を突き止めて元の森にすることだし♡
  ついでだから協力するわ♡」
「……何かまたやっかいなことに巻き込まれたような気がするなぁ~……」
あたしの横で何やらぽそり、とつぶやいているガウリイ。
あら、別にそんなことはないのにね♡
そんなあたしの言葉に。
「貴方たち、この森の異変を調べに来たの?今朝は話も聞いてくれなかったのに……
  ともかく、そういうことなら理由はともあれ、目的は同じね。
  こちらからもお願いするわ。えっと……」
いってざっともう一度あたし達を見渡してくるレミーに対し。
「あたしはリナよ。でもってこっちがガウリイ。で、ゼルガディスにアメリアよ。」
そんなあたしの簡単な説明に。
「なるほど。ちょっとかわった柄のバスターソードをもっているのがガウリイさんで。
 ゼフィーリア製のショートソードをもっているのがリナさん。
  そしてエルメキア製のロングソードをもっているのがゼルガディスさんで。
  そして何ももっていないのがアメリアさんね。」
そんなレミーの言葉に。
「何かかわった見分け方をする人ですね……」
何やら目を点にしてつぶやいているアメリア。
「私はレミー。でもって、それでこの子が……」
いって腰にさしていたロングソードをちゃっきっと抜き放ち、前にと突き出して。
「私の愛剣ジャック君。ライゼールの産まれよ。
  で、こっちの腰のショートソードはディルス王国製のリパー君。刃のラインがかわいいのよ♡
  でね。背中の異国風のがカルマ君。綺麗なラインしてるでしょ?それからねぇ~……」
懐から、袖から背負い袋から。
大小合計三十本近い刃物を引っ張り出し、うきうきとウレシそうに製造場所と名前を紹介してくる。

「こ…この人って……」
「どうやら……刃物マニア…らしいな……」
その様子をみて、目をパチクリさせてつぶやくアメリアに、ため息をつきつつも何やら言っているゼル。
そして。
「……そういや…リナが前にそんなことをいっていたような気も……」
額に一筋汗をながし、ぽつり、といっているガウリイ。

「このカルマ君あたりで、父さんを殺したあの魔道士をざくうっとやるのを想像しただけで…
  うふふふふ……」
いって、ペロリ、と刃を舐めるレミーをみて。
「…な…何かもしかして私たち…危ない人と知り合ったんじゃあ……」
「というか。そんなに剣があっても普通つかわんだろうに。」
「失礼ねっ!私は全部使ってるわよっ!」
じと汗を流しつつつぶやくアメリアに、ため息交じりに言っているゼル。
そしてそんなゼルの言葉にすかさず抗議しているレミー。
「それもどうかと……。あ、そういえば剣といえばガウリイさんもかわった剣をもっていますよ。」
とりあえず、話題を変えようとガウリイにいきなり話を振っているアメリア。
あまりレミーさんについては突っ込みをしていったら何ですし…
などと思っているみたいだけど。
別に気にすることでもないでしょうにね♡
「まあよのなかにはいろんな人がいるし♡」
にっこりと微笑みガウリイにと視線をむけ。
「せっかくだし、ガウリイ。見せてあげたら?その烈光の剣ゴルンノヴァ♪」
「だから…これは光の剣だって……。それにおいそれと意味もなく……」
あたしの言葉に何やら剣の柄に手をかけて言ってくるガウリイだけど。
「あら。いいじゃない。別にvそれともあたしが発動させてあげましょうか?」
にっこり微笑むあたしの言葉に、
「…リナが使った後ってこいつ何かかなり威力が落ちるから遠慮しとく……ま、まあすこしなら……」
なぜかあたしが手にしただけで、ゴルンノヴァのやつは弱体化するのよねぇ……
まったくもって情けないったら。
そんなことを言っている最中。
今のあたしの言葉になぜかびくりっ!と精神体そのものを震わせているゴルンノヴァ……
ああもうっ!
本当に情けないわよっ!
後でみっちりとお灸をすえておきますか…ね♪
何やらガウリイはそんなことを言いつつも、なぜか人間達は【光の剣】と呼んでいるそれ。
つまりはゴルンノヴァを手に取り、
「光よっ!」
ヴッン……
ガウリイの掛け声とともに、光の刃が出現する。
だがしかし、それをみて指を顔の横に持っていき左右に振りつつ。
「ダメよ。そんなの剣じゃないわ。剣っていうのはやっぱり頬ずりしたときひんやりとしてて。
  そして舐めたら鉄の味がして…鉄の味って血の味に似てるのよね。
  そしてこう物を斬ったときにこう、ごりっ!とした手ごたえを感じるものじゃないと。
  それが剣ってものよ。うふ…うふふふふっ……」
ガウリイの光の刃をみつつ、【ロングソードのジャック君】をペロリ、と舐めてそんなことを言っているレミー。
そんなレミーの様子をみて。
「…この姉ちゃん…かなり度を越してるぞ……」
「…一線を越えちゃってますね……」
すこし後ずさりし、ぽそぽそと二人して話しているゼルとアメリア。
レミーはレミーで剣を舐めつつうっとりし、瞳の色まで変わってるし。
ま、レミーだしねぇ。
「…どうも近寄りがたいな。…コレクションの域を超えてるぞ……」
「危ない趣味ですよね……」
そんな二人の会話には耳にもくれず、未だにうふうふいいつつ剣を舐めているレミーの姿。
このレミーっていわゆる【刃物マニア】なのよねぇ♡
ちなみにただ集めている、といったコレクション集…というだけでなく。
集めた全てを実際に使ってその感触を楽しむタイプだし。
兄のロッドも似たようなもので、彼は人斬りマニアだしねぇ♡
「……何かとんでもない姉ちゃんだな……」
そんなレミーをみつつ、剣を鞘に収めてつぶやいているガウリイ。
それはそれとして。
「それはそうと。さってと。挨拶はこれくらいにして。先にいきましょ♡」
「「「…今の、挨拶といえ(るのか)(るんですか)?」」」
あたしの言葉に何やら同時に言ってくるゼル・アメリア・ガウリイ達。
「いえるわよ♡さ、いきましょ♡」
「「・・・・・・・・・・・・・・・」」
一言のうちにと済まし、とりあえず廊下の奥にと足を向けてゆくあたしに続き。
「とりあえず、深く考えないことにして。そうですねっ!
  悪の魔道士ケルンとやらに正義の鉄槌を下さねばっ!!」
一人そんなことをいいつつ、レミーのことは深く考えないようにし、その矛先を別にと向けているアメリア。
「…ま、まあ確かに。そのケルンってヤツをどうにかしないことには…な。」
「ようわからんが。つまりはこの姉ちゃんの仇討ちを手伝うってことか?
  何かまたやっかいなことに巻き込まれたような気がするなぁ~。」
何やらそんなことを言っているゼルとガウリイはひとまず無視し、あたし達は廊下の先にと進んでゆく。

しばらく進んでゆくとちょっとした広い部屋にとたどり着く。
その部屋からはうくつかの道が伸びていたりする。
そして、部屋の中央には――
「って!?ゴーレム?!」
「こういう場所の定番…だな。」
「そうね♡」
でんっ!
と石像に擬態しているゴーレムが中央に一体。
「ここは私に任せてっ!」
いうなりダッシュをかけ、
「ジャック君~!!」
ざっんっ!
動き出した人間の大人の二、三倍ほどの大きさの白いゴーレムを一撃の下に倒しているレミー。

それをみて。
「ほう。ただの刃物マニア、というだけでなく腕もいいな。」
「いやあの…それより……」
その剣捌きをみて、感心した声を上げているゼルに。
そしてまた、レミーの行動に気づいて目を点にしてつぶやいているガウリイ。
視線の先では。

「次っ!カルマ君っ!でもってリパー君っ!でもって!!」
等といいつつ、もっている全ての剣でゴーレムをざくざくと切り刻んでいるレミーの姿が。

「…ほ…本当に全部使ってますね……」
「何だかなぁ~……」
そんなレミーをみて目を点にしてつぶやいているアメリアに、ぽりぽりと額をかきつつつぶやいているガウリイ。
やがて、全ての剣においてゴーレムを粉砕し、それぞれの剣をしまいつつ。

「何かこう…斬り応えがないわねぇ。ゴーレムって。ゴリッとした感触もないし。どばっと血も出ないし……」
などとぶつぶつレミーは言っていたりするけど。
そんなレミーの様子等をみつつ。
「…やっぱり危ない人ですぅ~……」
「と…とにかく、先に進もう。」
半ば泣きべそをかいているアメリアに、みなかったことにして気にしないことにしていっているゼル。
「そうね。」
一言のうちに賛同し、そして今いる部屋から外に面している扉にと向かいすたすたと歩き出す。
そんなあたしに。
「?リナ?どこにいくんだ?」
首をかしげて問いかけてくるガウリイ。
くすっ。
「こういうタイプの城塞はね。侵入者対策に大回りするように建設されているのよ。」
「そういうことだな。だが、確か住んでいるもののために、いろいろなちょっとした……
  つまりは、見た目わかりにくい近道があったりするはずだが……」
あたしに続き言ってくるゼル。
「そういうこと♡ここからだと中庭辺りかしら?」
そんなあたしの言葉に。
「あ。本当です。何か人がよく通った跡のようなものがのこってますっ!
  さあ!悪の魔道士ケルンっ!今こそ正義の鉄槌をっ!」
「あ。アメリア、ちょっとまてっ!」
窓から外をみてそのまま駆け出してゆくアメリアを、ふとあることに気づいて止めているゼルに。
「…って、うわぁ~!!?」
何か変だなぁ~?
と思いつつ、同じく中庭に出たガウリイが何やら叫び声を上げてるけど。
「…って、何?!」
アメリアとガウリイに続き、中庭に出ようとしたレミーが思わず足をとめ、
「あ、そうそう♡言い忘れてたけど♡ここの中庭に生えている植物って。み~んな食虫植物だから♡」
「ってことは早くいぇぇ~!!」
「んきゃぁぁ~!?」
なぜか必死で絡まってくる蔦をなぎ払っているガウリイに。
ちょっとした大きさのうつぼかずらに飲み込まれそうになりかけ、何やら叫んでいるアメリア。
「…そういうことは先にいっといてやれ……」
横でゼルが何やらいってくるけど。
「あら?ゼルだって何もいわなかったじゃない。」
そんなあたし達の視線の先では、
「どうでもいいが!何とかなんないのか!?これっ!?」
ざわざわとよってくる蔦を必死で裁いているガウリイに、
「やっ!」
ごめっ!
ボゴッ…
溶解液の中に入れられかけるが、術を唱えて浮き上がり、
蓋がすでに閉じられた状態になっているので仕方なく、自らの横を拳で叩き破ってそこから出ているアメリア。
そして。
氷の矢フリーズアロー!!」
こっきぃんっ!
ぴしっ!
アメリアの言葉と同時、氷の矢が降り注ぎ、一角の植物たちを氷付けにする。
「ビクトリ~!!」
凍った植物の中心でそんなことを言っているアメリアに。
「…凍った植物って…すこしは斬り応えあるかしら?」
などといっているレミー。
「…お~い?…ガウリイのやつまで氷付けになってるぞ?」
なぜか蔦もどきを裁くのに必死で氷をよけられなかったガウリイは、
そのまま植物と一緒に氷付けになっていたりするけども。
「まだまだね。ガウリイも♡」
くすくす。
そんなあたしの至極最もな意見に、
「…そういう問題か?」
などとあたしをじと目でみて突っ込みを入れてくるゼル。

とりあえずそのまま、中庭の先にとある木のうろの中に作られている隠し通路より、
あたし達は先にむけて進んでゆく。
ガウリイはなぜかくしゃみを連発しているけど、ま、関係ないし♡


「ここですねっ!」
「ケルンっ!とうとう追い詰めたわよっ!」
バタンっ!
進んでゆくことしばし。
城塞の一番最上階にとある一つの扉の前にたどり着くあたし達。
何やら勢い込んでアメリアとレミーが扉を開け放っているけども。
そこはちょっとした書斎となっており、その先にある机の上にも様々な書類や書物が山となっていたりする。
そしてそんな中にいるのは一人の老魔道士。
「悪の魔道士ケルンっ!観念なさいっ!」
扉を開け放つと同時に言い放つアメリア。
だがしかし。
「…というか…どうみたってただのお年寄りだぞ?」
「人を殺してまで研究を奪うような爺さんにはみえないな。」
ぼそぼそとそんなことを言っているガウリイとゼル。
くすくす。
「そりゃあね。だってあれケルンじゃないし♡」
さらり、といったあたしの言葉に。
「…ってこらまて。リナ。」
なぜか頭を抱えて言ってくるゼルに。
「…レミーさん?」
戸惑いつつもレミーをみつつ問いかけているアメリア。
目の前にいるのは、白い髭に白い髪。
一見よぼよぼとしている老人。
「いや、というか、この爺さん、人じゃあないし。」
あたしに続き、さらり、とこれまたいうガウリイの言葉に。
「「・・・・・・・・・・・」」
なぜか一瞬黙り込むアメリアとゼル。
一方で。
「…ん?何じゃ?おまえたちは?」
そんなあたし達に気づいてこちらを見てくるその男性。
そんな彼に対し。
「すいません。家を間違えました。」
いってペコリ、と頭を下げて謝っているレミーだけど。
ちなみに、この男性。
人間の年齢で示すならば二百三十一歳。
ちなみに一応エルフ♡
見た目の年齢は六十そこそこだけど。
「ちなみに、彼はエルフのレグレスよ♡」
ガウリイは気配でエルフって見抜いていたようだけど♪
「「…って!?エルフ!?」」
あたしの説明に、なぜか同時に叫んでいるアメリアとゼル。
「?どこかでお会いしましたかの?いやはや…歳をとるともの覚えが悪くて……」
あたし達をみつつも、首をかしげそんなことをいってくるエルフのレグレス。
一応この建物に住んでいる張本人。
「ま、最近はエルフの間でも若ボケが流行っているらしいし。」
「…レミーさん?じゃあ、この人はケルンじゃないんですね?」
さらり、と流すあたしの前でレミーに確認しているアメリア。
「ええ。違うわ。…まったく、こんな紛らわしいところに住んでいるなんて…斬るわよ……」
ぽそり、と最後のほうはつぶやくように言っているレミー。
「?何事かのぉ?一体?」
一人、事情が理解できずに首をかしげているレグレスだし。
「…ちょっとまて。というか…この爺さん…エルフ…といったが本当か?
  というか、エルフがこんなところで何をしている?」
こめかみに手をあてて、何やら確認をこめて問いかけてくるそんなゼルに対し。
「うん?お若いの。わしがここにいるのは研究のためじゃよ。植物の品種改良の…な。」
いって。
「時に。おまえさんがた、何しにここへ?人間なぞついぞ久しいが……?」
などとかわりに聞いてくるレグレス。
そんな彼の問いかけに。
「あ。すいません。実は私たちこのレミーさんのお父さんを殺害した悪の魔道士を探しているんです。
  どうもこの近くにいる…ということらしいんですけど。
  ここに住んでいるのでしたら何か心当たりはありませんか?」
ぺこり、とひとまず頭を下げて、それでいて説明をしているアメリア。
そんなアメリアの言葉に、しばし考え。
「その人間かどうかは知らんが…確かにこの森にすこし前から人間が住み着いているらしいが。
  そやつ、面倒なことに、ときどきレッサーデーモンなどを呼び出して。
  このわしのところから食料を奪ってゆくのでな。もしかしたらそやつのことではないのか?」
…自分が動くのが面倒だからって…レッサーデーモンなどを呼び出して…
召喚したそれらに食料…とってこさせてるのよね…あいつは……
「「…レッサーデーモンが食料を奪うって……」」
思わず同時に何やらつぶやいているガウリイとゼル。
「きっとその人間がケルンだわっ!」
一人確信をこめて叫ぶレミーに。
「すいません。その人の住んでいる場所ってわかります?」
問いかけているアメリア。
そんなアメリアたちの問いかけに。
「ちょっとまっておれ。地図をかいてやろう。」
いってざっと簡単な地図を書いてアメリアにと渡しているレグレス。
「そうとわかればっ!まっていなさいよっ!ケルンっ!」
一人何やら叫んでいるレミー。
とりあえず、ゼルはそこの書物が気になるらしく手に取ってみていたりするものの、
書物に書かれている文字は全て古代文字や古代エルフ文字…とここでは呼ばれているもの。
このレグレス。
ここで寒さや熱さ、そして病気にも強い植物の研究をしているからねぇ。
ここ百年くらい♪

ともあれ、あたし達はレグレスから地図を受け取り、その場所を後にしてゆく――



「……完全に迷いましたね。」
「……というかこの地図って……」
先刻、レグレスから受け取った地図は目安として様々な植物の名前が記されており、
例えば、【○○から○○が生えている方向へ。】といったような説明書きがなされている。
ちなみに、森の中の道…などといったものは知るさていない。
「大丈夫よ。気にしなくても。そりあえず一度休憩しましょ。」
「それもそうですね。」
「だな。」
そんな会話をしつつも、ひとまず一時ほど休むことに。

パチパチ…
むぐぐぐ…
何やら火の爆ぜる音とともに、聞こえてくるくぐもった声がしてくるけど。
とりあえず無視。
「…しかし…おいリナ……」
「でも、リナさん。それ便利ですよね。いろいろと収納できて。」
とある方向をみつつ、つぶやいてくるゼルに、しみじみといってくるアメリア。
とりあえず、休憩がてら食事でもとろう、ということで。
次元式収納スペースを利用している袋より料理危惧などを取り出して、
シチューを作り食べているあたし達。
「でもああいうのをみていたら斬りたくなるんだけど…ちょっと斬ったらダメかしら?」
『ん~!!!』
バタン、バタン。
レミーの声に何やらもだえている簀巻き状の物体が一つ。
「というか、何でガウリイをああやってつるしてるんだ?」
つう…と額に一筋の汗を流しつつ、あたしに聞いてくるゼルだけど。
「あら?人間極限状況に陥ったら更に野生の本能って研ぎ澄まされるものよ♡
  それとも何?精神世界面アストラルサイドから移動してケルンのところにいってみる?
  あたしは迷うことはないけど。いっとくけど迷っても手助けはしないわよ♡」
「――……ま、まあ何だ。たしかにガウリイのヤツの勘で移動するのがベストだな。」
「この森そのものに変な空間干渉が起こっている以上、下手にリナさんがよく使う、
  例の瞬間移動とか空間移動でもしたりしたら…それこそどうなるかわかりませんしね。」
そんなあたしの言葉に、何やらそんなことをいってくるゼルとアメリア。
「それはそうと。レミー。
  刃を舐めつつ木に吊るしているガウリイをみてるけど。別に斬りかかってもいいわよ♡」
「…って、リナさん、それはあまりにガウリイさんが気の毒なんじゃあ……」
「あら?いい敏捷性の訓練になるじゃない♡」
「……死ぬなよ。」
にっこりとアメリアの言葉をうけ、即答するあたしをみつつ、
ゼルがガウリイのほうをみて何やらぽそり…といってるけど。
『~~~!!??』
ちょっとまてぇ~~!!??
グルグルに蔦や縄で縛られ、その辺りにと生えている木の枝に、
蓑虫よろしくぶら下がっているガウリイが抗議の声を出そうとして呻いているけど。
ちなみにしっかりと布で口元を押さえているせいか、なぜか声を出すことが出来なくなっているガウリイ。
あの程度のことで…ねぇ♡
「ふっふっふっ。なら遠慮なく♡」
『~~~~~!!!!!』
ペロリ、と刃を舐めてそしてガウリイに向かっていっているレミー。
そんなレミーをみつつも、
なぜか木にくくりつけられた状態でバタバタと必死にもがき逃げようとしているガウリイの姿。
そんなほのぼのとした光景がこの場において見受けられていたりするけど。
くすくすくす。
レミーが繰り出した一撃を必死になってもがいて交わしているガウリイ。
「ほらほら♡ガウリイ、きちんとよけないと危ないわよ♡」
「ちょっと!暴れたら斬れないじゃないのよっ!」
のどかに食事をしているそんな中。
なぜかレミーが刃を振るう音が辺りに響きわたり。
そしてまた、反動をつけては必死にその刃を交わしてゆくガウリイの姿がしばし見受けられていたりする。
ま、ガウリイにとっては、いい訓練もどきにはなるでしょう♡



「そういえばレミーさん。ケルンって悪の魔道士はレミーさんのお父さんの研究を盗んだ。
  とのことですけど…いったいどんな研究なんですか?」
なぜかしばらくの間抗議してきたものの、
『あれくらいどうってことなていでしょ♡』
というそんなあたしの一言に黙り込み、そしてまた、
『ケルンの住処に着いたら何か食べてもいいし、それにすこし休んでもいいから♡』
とガウリイに言ったところ、
しぶしぶながらその本能のままに、ケルンの住みかがある方向に向けて進みだしているガウリイ。
「結局斬れなかった……、斬りたかったのにぃぃ!!」
吊るされていたガウリイ相手に一太刀も浴びせられずにぶつぶつつぶやいているレミー。
そして叫ぶと同時に辺りにある木を先ほどから手当たり次第に切り倒していたりする。
そんなレミーを見かねて話題を変えようと話しかけているアメリア。
「自然は大切だってば♡」
ある程度レミーが木々を切り倒したのをうけて、にっこりと微笑みながら指を鳴らし、
瞬時に切り倒された木々を再生していっているけど。
「レミーさん?」
それをみて一瞬目を丸くしているレミーにと再度問いかけているアメリア。
「…え?…ええ……。父が研究していたのは主に召喚術に関してなの。
  その中でも一度召喚したレッサーデーモン等の中に更にへへツの魔族を憑依させて力を強化する。
  というのもあったんですけど……」
「元々レッサーデーモンとかって呼ばれているヤツラは自力で具現化すら出来ない、
  下っ端以外の何ものでもない力ないヤツラだからねぇ。確かにそれは可能ね♡」
「…まあ、それはそうだろうが……しかし、それはやっかいだな……」
「大丈夫ですよ。ゼルガディスさんっ!正義は常に私たちの味方ですっ!」
そんなゼルのつぶやきにきっぱりと言い切るアメリア。
「…まあ、正義うんぬん…というのはともかくとして…しかし…雪…どんどん酷くなってないか?」
ぽつり、とつぶやき空を見上げているゼル。
空より降り注ぐ雪は視界を白く染め上げ、すでに雪も多少積もっている。
先をゆくガウリイが行きをかきわけて道を作りつつ、
そんなガウリイがかきわけた雪の中の道の後ろをあたし達は歩いていっているのだけど。
「ま、気にしても始まらないって♡」
そんな声を聞きながら、あっさりかわし雪を掻き分けすすんでゆくことしばし。
やがて。
雪の降りしきる中。
「…なあ。何かみえてきたぞ?」
ぐぎゅるぅぅぅ~~……
お腹を盛大にならしつつ、ガウリイがそんなことをいってくる。
「あら。さすがガウリイ♡ガウリイの食欲は侮れないわね♡」
ガウリイが指摘するとおり、視界の先にと見えているのはちっょとした何かの建物の影。
その姿を捉え。
「……食い意地と天性の野生の勘がプラスされ…こうも早く見つけるとは…な……」
「まあ、ガウリイさんですしっ!ともかくっ!今度こそ悪人退治ができるのですねっ!」
「ふふ…ケルン。まってなさいよ。スパーと斬ってあげるから。うふふふふ……」
視界の先にある建物の影を認め、口々にそんなことを言っているゼル・アメリア、そしてレミー。
人間、極限状況に追い込まれたら面白い能力を発揮する。
…というこのガウリイのはいい例ね♡
「リナっ!ついたら本当に何か食べ物もらえるんだろうなっ!」
ガウリイからしてみれば、気になるのはその一点のみらしく、あたしに確認をしてくるけど。
「塔に行けば食料くらいはあるってば♡」

そんな会話をしつつも、あたし達は見えている建物の影のほうに向けて進んでゆく。



木々と、そして真っ白な雪景色の中にぽつん…とそびえている黒い塔。
「ここよっ!間違いないわっ!ケルンのいる塔よっ!」
いって、ぎゅっと腰にさしている剣に手をかけているレミーに対し。
「本当に間違いないのか?」
先刻のこともあるし…な…
などと思いつつ念を押して確認を入れているゼル。
「とりあえず♡入ってみれば判るわよ♡」
にっこりいって塔の入り口である扉の前に立つ。
そんなあたしより先に一歩前に踏み出て。
「ケルーンっ!」
ざっんっ!!
叫びとともに、木製の扉を叩ききっているレミー。
その扉のすこし先に今度は別の金属製の扉が。
暖房対策用に幾重かになっていたりするのだけど。
「あら、そんなことしなくてもいいのに♪」
言って軽く手を突き出して指を鳴らすと同時。
ギ~ィ……
バタン。
いともあっさりと扉の全てが開いてゆく。
「…リナさんの手にかかったら身も蓋もないですね。」
「だな。」
その光景をみて何やら二人してつぶやいているアメリアとゼルだし。
どういう意味かしらねぇ~v
「とにかく入ろうぜ。」
そのまますたすたと何も考えずに塔の中にと入っていっているガウリイ。
どうも空腹と寒さとで早く中に入りたい…というのもあるようだけど。
別にこのくらいの気温、寒くも何ともないでしょうにね♪
雪が積もっているという程度で気温はとある世界で示すところの氷点下一度くらいだし♡

明かりライティング。」
中の薄暗さを見てとりゼルが呪文を放ち、天井部分に光球を打ち出し、
それと共に部屋の中が明るく照らし出される。
塔の中の一階部分のロビーにあたる部分。
そして正面の置くに上にと続く階段がらせん状にと見てとれる。
そしてその階段の入り口付近に立ちふさがるように建っている二体の石像と、
そして動く鎧リビングメイル
ちなみに近づいたものに攻撃を…という命令を受けているそれらだけど。
「…いかにも、っていう感じの配置ですね。」
「みえみえのトラップだな。」
それをみてしばしそんなことを言っているアメリアとゼル。
一方で。
「…また動く鎧リビングメイル……
  ごりっとした感触のヤツはいないのかしら…ごりっとした……」
などとぶつぶつ言っているレミー。
あたし達が中に入り内部を確認するとほぼ同時。
『……何ものだ?』
部屋の中に低く声が響いてくる。
ここにある石造は侵入者対策にもなっており、
誰か着たら中に仕込んであるレグレス版が反応し、術者とつながるように設定されていたりする。
『何者だ?ここに何をしにきた?』
その声をうけ。
「その声は…ケルンッ!!」
いって何やら叫んでいるのはレミー。
『…ほう。このわしをしっておるのか?』
レミーの声に声のみの反応が返ってくるが。
「忘れたとは言わせないわっ!自分が殺した男の娘をっ!」
『…ふ…ふははは。そうか…その声…
  ……どこかできいたことがある…とおもったら。グルザムの娘かっ!?』
などといってるけど…すぐにわかりなさいよね……
「そうよっ!ふふふ。やっと見つけたわよっ!覚悟なさいっ!
  私がこの剣ですぱぁ…と斬ってあげるから、すぱぁ…って、うふふふふ……」
いいつつ、剣を抜き放ち、ぺろり…と刃を舐めているレミー。

「…どうやら間違いないようだな。」
「…というか寒いですぅ~……」
そんなやり取りを聞きつつも、何やらそんなことをいっているゼルとアメリア。

『面白い。どうやら仲間を連れてきているようだが……わしはこの塔の五十一階におる。
  果たしてここまでたどり着けるかな?まああてにしないで待っておるぞ。』
そういいプツリ…と途絶える声。
「う~!!寒いですっ!」
我慢の限界らしく何やら声が途絶えると同時に叫んでいるアメリア。
そんなアメリアをみてため息一つつき。
炎の矢フレアアロー。」
つい今まで声を出していた石像に向かって術を解き放っているゼル。
石像に炎の矢が当たった部分が一瞬赤く染まるがすぐさまに元の色にと戻りゆく。
だがしかし、そのまま続けざまに。
炎の槍フレアランス。」
別の術を解き放ち石像にとあて、
「ほら。こいつですこしは暖をとれ。」
などとぶっきらぼうにアメリアに言っているゼル。
ゼルに言われ、石像の近くにより、
「わ~。暖かいです。」
石像に近づき手をかざすアメリアに。
「お~いっ!リナっ!こんなにあったぞ~!食い物っ!」
先ほどから静か…であったようなガウリイはといえば何のことはなく。
中に入るなり、すこし先にとある食糧庫にと気づき、
お腹がすいていた…ということもあり、一人でそこにいき食べ物を物色していたりしたのだけど。
口にウィンナーをくわえ、なおかつ両手一杯に様々な食べ物を持って戻ってくるガウリイの姿。
「…おまえ…どこにいったのかとおもったら……」
そんなガウリイの姿をみてあきれてつぶやいているゼル。
「あ。ちょうどいいですし。あくを退治しにいく前に腹ごしらえをしておきましょうっ!」
ガウリイが手にしている食材をみて、ぽん、と手を打ち言ってくるアメリア。
「でも生肉もありますけど……」
ガウリイ、丁寧に生肉までもってきてるからねぇ。
「そこの動く鎧リビングメイルを倒して鉄板代わりにすればいいのよ♪」
レミーのつぶやきに、にっこりと答え、そのまま荷物の中からいくつかの料理器具を取り出す。
器具、といってもフライパンや鍋…といった品物だけど。
動く鎧リビングメイルをもってきてそれを熱して火の代わりに取り扱う。
なぜか素直に言うことを聞いてくれるのでこちらとしては楽だけど。
たかが少~しばかり憑依している存在に対して力をこめて話しただけ、というのにね♪

ぐつぐつぐつ……
なぜか赤く鈍く光る鎧を前にして、とりあえず暖を取りながら食事タイムにとあたし達は突入してゆく。
熱された鉄は程よい温度を生み出し、肉や魚…といった食材もほどなくいい具合に焼けてゆく。
果物などを搾ったジュースもあることから、
しばし雪の中歩いていたために体がかじかんでいたアメリアたちはほっと一息ついていたりする。
そんなに寒くなかったのにね音符
「おいしいです。」
嬉しそうに食事をほうばりつつ言っているアメリア。
「……いっても無駄だろうからあまり突っ込まないが……」
なぜかそんな光景をみつつ、ため息をついていっているゼル。
「ん?ゼル?食べないのか?」
一人黙々と食べているガウリイ。
「でもレミーさんのお父さんって、何か…こう、何というか…」
「まあ、確かに。悪役みたいな名前ではあるな。」
言いかけたアメリアにぽつり、と言うゼルに対し。
「…あなたたち…斬るわよ?」
いって抜き身の剣を構えてペロリ、と舐めているレミー。
「まあまあ、そんなことより。上にいるケルンってやつ、どれくらいの弱さなの?」
にっこりと判っているけど問いかける。
そんなあたしの言葉に。
「…強さの間違いじゃあ……。とにかく、ケルン本人はそれほど強くはないはずよ。
  ただ…ケルンが父の研究を使って生み出しているであろうデーモンがやっかい、というくらいかしら。」
「…例の魔族の上にさらに別の…というやつか。…しかし…何であんたの父親はそんな研究を……」
レゾは以前、自らの目を治したい、というのと、半ば腹いせと実験をかねて、
自らのコピーに魔族を合成していたことがあったが。
そんなことを思いつつも問いかけているゼル。
「世界のため。と聞いているわ。」
一言の元に済ましているレミー。
まあ、ある意味嘘ではないけどねぇ。
その力を使っての世界征服を本気でグルザムは考えてたし。
本当、無知って面白いわよね~♪
「とりあえず、しっかりと食べて、体も温まったらケルンのところに向かいましょ♡」
「異議なしっ!」
「あ。こっちのお肉、焼けたみたいです。」
一人張り切っているレミーの横ではもくもくと肉や野菜を焼いては食べているアメリアと。
そして、焼けたモノをただもくもくと食べ続けているガウリイの姿が見受けられていたりするけど。
まあ、人のことわざの中に、【腹が減っては戦はできぬ。】という言語もあることだし…ね♪


「…何かありきたりだなぁ~……」
などとぼそり、とつぶやいているガウリイ。
「もう少しひねりがあっても……」
などとこれまた不満そうに言っているアメリア。
「平たく言えば芸のないやつなんだろう。」
一言の元に的確な表現で言い表しているゼル。
食糧庫兼備蓄庫にあった食材を全て平らげ、
先ほどケルンが言っていた塔の五階にと向かっているあたし達。
「というか考えがないのよ。」
そういうあたし達の目の前には一枚の扉が。
生きた死体ゾンビ食人鬼グール骸骨戦士スケルトン動く鎧リビングメイル低級悪霊ゴースト
そしてお約束の石人形ストーンゴーレムなど。
それらをあっさりとなぎ倒して五階にたどり着いているあたし達。
レミーはレミーでゴースト相手に何の力をもこめずに剣を振り回していたりしたけどそれはそれ。
「悪の魔道士ケルンっ!街道の森を迷いの森にしただけでなくっ!
  何の罪もない人の研究を奪い殺した罪っ!言語道断ですっ!今こそ正義の裁きをうけなさいっ!」
「ついに追い詰めたわよっ!ケルンっ!」
バタンっ!
扉を開け放つと同時に何やら言っているアメリアとレミー。
扉を開け放った先にある部屋には、窓辺の机に体を預けのんびりと立っている男が一人と。
そして、その左右にはブレスデーモンが一体づつ。
「ふっ。ここまでよくたどり着けたな。
  よくあの警護者ガーディアン達を突破できたな。時間はかなりかかったようだが。」
などと鼻で笑いながらいってくる。
くすっ。
「ああ、時間がかかったのは食事してたからよ。
  備蓄庫兼食糧庫にあった食糧は全てあたし達でいただいたし♡」
「お腹もいっぱいで百人力ですっ!さあ!悪の魔道士ケルンっ!観念なさいっ!」
あたしの言葉に続けてアメリアがぴしっと指をつけつけていっているけど。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
なぜかあたしの言葉に一瞬黙り込み。
そして。
「何ぃぃ!?ちょっとまて!今全部といわなかったか!?全部とっ!!
  まさか、あの食糧庫にあったものを全て食べたんじゃあ!?」
なぜか思いっきり叫んでくるケルン。
「お~。うまかったぞ~。」
そんな彼に対してのんびりとさらり、と返事を返しているガウリイの言葉をうけ。
「ゆ…許せんっ!
  人がせっかくデーモン達に命じ、こつこつと盗んできた食糧を備蓄していたというのにっ!
  しかも自分の食事も節約していた、というのにっ!」
何かどうでもいいところで怒ってるし♡

「…というか、デーモンに盗みって……」
「スケール小さいですね……」
ぽそり、とそんなケルンの言葉に至極最もな感想を漏らしているゼルとアメリア。

「おのれっ!ケルンっ!父の研究を使って盗みを働くなどっ!」
こちらもまた違うとコロで何やらいきまいているレミー。
「そうはいうが、そもそもおまえの父は世界征服のためにしていた研究だろうがっ!」
そんなレミーに対して突っ込みを入れているケルンだけど。

「…レミーさんのお父さんって……」
「…何か頭痛くなってきた……」
そんな親だからこそ、このレミーやあのロッド…といった子供が育ったんじゃあ…
などと思いつつ頭を抑えているゼル。
ケルンの言葉に一瞬目を点にしながらも。
「ともかくっ!悪の魔道士ケルンっ!経緯はどああれ、レミーさんのお父さんを殺害しっ!
  あまつさえこの森を迷いの森マジック・メイスとかして人々の足を奪うなど!
  例え太陽さんが許してもこのアメリアは許しませんっ!正義の名の下に成敗しますっ!覚悟なさい!」
今のレミーとのやり取りはひとまず聞かなかったことにして、
ぴしっと再びケルンに指を突きつけ言い放つアメリアの姿。

「…ええいっ!人がせっかく節約して食事していたものわ!許さん!やれぃ!」
なぜか違うところで怒りつつわめいているケルンだけど。
ケルンの言葉に従い、ケルンの左右にいたブラスデーモンが同時に咆える。
と同時。
バシュッ!!
あたし達の目の前の視界がちょっぴし明るくなってゆく。

「ほぉ~。さすがだな。」
それをもて思わず感心した声をだしているゼルだけど。
くすっ。
「あら?たかが九十三本程度の炎の矢のどこが【さすが】なのかしら♪」
「…十分すごいとおもうぞ?」
至極当たり前な感想をいうあたしに、なぜか突っ込みを入れてきているガウリイ。

あたし達に向かってくる炎の矢。
当然あたしにはかすりもしないけど。
というか向かってもこないし。
「何のっ!」
すばやく術を唱え、魔力をこめた拳でそんな炎の矢を殴っては霧散させているアメリアに。
「ふっ。こんなものっ!颶風斬!!」
気合の一閃と共に居合いに抜いたレミーの長刀が、彼女めがけて降り注ぐ炎の矢全てを凪ぎ斬る。
が。
ぼひゅっ。
…ぼてっ。
そのまま炎は剣を素通りし、炎に撒かれて決めポーズのまま床にと倒れているレミー。
くすっ。
「まだまだねぇ。居合いだけで炎くらい掻き消さないと♡」
辺り構わず炎の矢が飛び交い、その辺りにある家具などもなぜか燃え始めていたりする。
「ああっ!?私の財産が!?」
それをみていまさらながら叫んでいるケルン。
ムギュッ…
「ああ!?レミーさん!?」
倒れているレミーを踏んづけて、ようやく彼女が倒れているのに気づき声をあげ、
「あなた!父親だけでなく娘さんなまでっ!許せませんっ!」
などといっているアメリア。
「…いや…というか…今踏んづけたのはおまえじゃあ……」
むぎゅっ、とレミーを踏んづけて、あわててその場を飛びのいてケルンに言い放っているアメリアに、
ポソリ、と突っ込みをいれているゼル。
一方で。
「だぁぁ!キリがないっ!」
いいつつも、向かい来る全ての炎の矢をいともあっさりと叩ききり、
その全てを霧散させているガウリイの姿が見受けられていたりするけど。

霊縛符ラファスシード!」
アメリアの言葉に伴い、一瞬デーモン達の動きが停止する。
「あらあら、アメリア。それくらいじゃあそれには効かないわよ♪」
にこやかに、静観もとい、傍観しつつ、そういうあたしの声と共に。
『あぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
雄たけびを上げると同時にまったく何事もなかったかのように動き始めているデーモン達。
「ちっ。さすが並のブラス・デーモンじゃあないな。」
剣に魔皇霊斬アストラルヴァインをかけて炎を斬っているゼルが何やらつぶやいているけど。
くすくすくす。
「ほらほら♡どうにかしないと周りはもう火の海よ♡」
トコロ構わずに炎を解き放っているブラスデーモンたちの炎により、
あたし達のいる部屋は面白いことに燃え上がっていたりする。

「…って、しまったぁぁ~~!!!?」
いまさらながらにあたしの指摘に気づいて、何やら頭を抱えてケルンが叫んでいるけど。
気づくの遅いってば。
ガラ……

ガラガラガラ…
ガラガラガラッ…
ずっずぅぅ~~んっ!!!!!

燃え広がった炎はいともあっさりと、あたし達のいる部屋全体を包み込み。
そしてまた、ついでにそのまま部屋は崩壊し。
さらには他の階にも燃え広がっていた炎の影響もあり。
塔そのもの。
つまりは、塔自体、そのもの全てが瞬く間にと倒壊してゆく――


「あ…危なかった……」
「ですね。」
「まったく。ドジよねぇ~♡」
崩れ落ちる塔の中。
窓からあわてて外に飛び出しているゼルとアメリア。
あたしにいたってはあわてることなんかまったくないけども。
「あら?レミーだけでなくケルンとガウリイまで一緒に巻き込まれてるわね♡」
みれば崩れ落ちる塔の中。
逃げ遅れたレミーとケルンはそのまま一緒に瓦礫と共に地面におちていき、
ガウリイにいたっては何やら意味不明な掛け声と共に、自分に向かってくる瓦礫を叩ききりつつ、
崩れ落ちる塔の瓦礫を利用して崩壊する塔の内部より脱出を図っていたりするけども。
「あ、本当だ。…そういえば、忘れてました。レミーさんとガウリイさん。」
空中に浮かんだ状態で崩れてゆく塔をみてそんなことを言っているアメリアに。
「…しかし…あいつは相変わらず人間離れしてるな……」
塔の崩壊に巻き込まれながらも、瓦礫をぴょんぴょんと飛んで上に上にと移動しているガウリイの姿を認め、
何やらぽそり…とつぶやいているゼル。
「あら。あんなの誰でもできるって。というか。石をいきなり熱したり冷やしたりしたら。
  どうなるかくらい判るでしょうにねぇ。というか確実に脆くなるのはわかりきったことだし♡」
くすくすくす。
何のことはない。
それでなくても脆くなっていた塔を構成していたレンガが、炎の直撃などをうけ脆くも崩れた。
というだけのこと。
まあ別の要素もあったりはするけど、それはそれ。
やがて。
ズズ~ンっ!!
雪を周囲に舞い上げながら塔は静かに完全に倒壊してゆく。
後にはただ、元塔を構成していた瓦礫の山が残るのみ。

「お~い。レミーさぁん。どこですかぁ~?」
瓦礫の中、声をかけているアメリア。
「…というか、生きているのか?あの姉ちゃん……」
すっかり崩れ落ちた塔の名残り…ともいえる瓦礫の山をみてぽつり、といっているゼル。
そして。
「でも気配はしてるぞ?」
「…おまえ、本当に人間か?」
瓦礫の中。
無傷で地面に降り立っていたガウリイの言葉にじと目で突っ込みを入れているけど。
「いやぁ。褒められても。」
「褒めてないっ!…それより…リナ…おまえ、塔が崩れるってわかってただろ?
  だから何も手出ししなかった…違うか?」
「あら?何のことかしら♡」
そんなゼルの言葉をさらり、とかわし。
「それよりも♡何をそ~と立ち退こうとしてるのかしらねぇ♡ん?」
びくぅぅっ!
何やらここの様子を見に来て、そしてあたしの姿を認めてそっと立ち去ろうとしていた影に向かって声をかける。
崩れ落ちた塔の残骸。
その後ろの木々の陰に隠れている人陰一つ。
あたしの声に、ものの見事に反応して硬直し、びくつき固まっているけど。
そして。
「…あ…あはは…こ…こんばんわ…です……」
何やら声を擦れさせつつも木々の陰より出てくる黒い物体。
その姿を認め…
「なっ!!?…ゼロスっ!?」
「あれ?ゼロスさん?」
「お~。ゼソス。」
「ゼ・ロ・スですっ!」
その姿をみて、なぜか構えて警戒を強くするゼルに、ふとその姿をみてきょんとした声を出しているアメリア。
そしてまた、お約束にも名前を間違い手いうガウリイにすかさず突っ込みを入れているのは…
どこにでもあるような錫杖に黒い神官服を身に纏い。
そして始終にこやかな笑みを浮かべている自称、【謎の神官ゼロス】その当人。
そんな黒い影――ゼロスに向かい。
「なぜおまえがここにいるっ!?」
先のクロツ達の一軒にもこいつは絡んでいた…
そんなことを思いつつ、警戒色を強くして問いかけるそんなゼルに対し、
「そういわれましても……と、ところで?どうしてこんなところにエルさ…とと。
  リナさんたちはどうしてこんなところに?」
……今【エル様】って言いそうになったわね…こいつは……
「私たちは悪の魔道士ケルンを成敗しにきたんですっ!」
きっぱりと瓦礫の山の中を探索しながらゼロスに言っているアメリア。
そんなアメリアの言葉に。
「…え゛っ!?」
なぜか短く声をだし一瞬固まり。
そして。
「…あ…あのぉ?もしかして…もしかしなくても…この塔の中に…いました?」
なぜかかなり恐怖しつつ聞いてくるけど。
くすっ。
「いたわよ♡当然♡で?というか、あたし達が中にいたのに、あんたは何をしてくれたのかしらねぇ~♡」
「でぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?」
あたしの言葉に面白いまでに驚いてるし。
じ・つ・は♡
あの塔の中心。
つまり塔を支えていた柱に異界黙示録の写本が隠してあったのよねぇ。
で、こいつ処分がてらにその柱ごと消滅させたのよねぇ~。
あたし達が中にいた、というのに♡
そのおかげもあって、あっさりと炎の矢をあんな雑魚が放った程度であっさりと塔は倒壊したんだし♡
面白いまでに狼狽しつつも。
「ひ…人の気配はまったくしませんでしたよっ!?」
何か叫んでくるゼロスだけど。
「隠してたもの♡」
「…エル様ぁぁぁ~……!!」
どすっ!!
面白い迄にうろたえて、何やら叫んでいるゼロスはなぜか、
ゼロスの頭上より落ちてきた氷のツララによってそのまま大地…というか、雪の中にと倒れてゆく。
「……あ、レミーさんっ!」
とりあえず、みなかったことにして、レミーの探索を続けるアメリアに。
「…もしかして塔が崩壊したのもあいつがかかわっているんじゃあ……」
ゼロスに対する警戒を解かずに何やらつぶやいているゼル。
あら♡
確かにその通りではあるけどね♡
ガラガラと瓦礫の中からレミーを見つけて引っ張り出しているアメリア。
そして。
「う…ううぅん……あれ?はっ!?そうだっ!?ケルンは!?」
アメリアにひっぱりだされ、しばらくして気がつき。
きょろきょろと周囲を見渡してぱっと起き上がっているレミーの姿が。
「ケルンならたぶん。その瓦礫の下のどこかだ。」
……生きていれば…な。
という最後の言葉は押さえ、淡々と言い放つゼル。
「あら、ゼル♡たかが建物の崩壊に巻き込まれたくらいで死んだりはしないって♡」
「…十分にありえると思うなぁ~……」
にこやかに返すあたしの言葉に、なぜか突っ込みをいれてくるガウリイ。
耐久力が乏しいせいか、崩壊した建物などに巻き込まれ、
また押しつぶされたりして死亡する存在って実はけっこういるにはいるのよねぇ~。
多少防御力を自力で上げればどうとでもなることなのに。
「だ・か・らっ!人の考えを勝手に読むなっ!!…それはそうと…何だってゼロスのやつが……」
あたしに一応抗議しつつも、
ゼロスのやつ…今度は何をたくらんでいる?
などと思い、最後のほうはつぶやくようにして言っているゼルだけど。
「仕事でしょ♡そんなことより夜露をしのぐのにさっきの建物に戻りましょ♡」
「?リナさん?…って!?」
「うわっ!?」
「またかぁぁ!?」
にっこり言うあたしの言葉と同時、あたし達の姿はその場から瞬時にと掻き消える。
後に残るは、瓦礫の下に埋もれたままのケルンと。
そして瓦礫の中にぽつん…とたたずむレミー。
そして雪の中に突っ伏しているゼロス。
この三人のみ。


「リナさんっ!いきなりの移動はやめてくださいっ!心臓に悪いですっ!」
「…というより…ここ…どこだ?」
何やら周囲は焦げ臭い。
四方の壁は未だに多少の煙がくすぶっていたりするけど。
あたし達が出現したのはちょっとした小さな部屋。
といっても、先ほどが先ほどだけに部屋の中は未だに多少アメリアたちからしてみれば暖かい。
何やら文句をいってくるアメリアに、周囲を確認して言っているゼル。
そして。
「…つ~か…あの姉ちゃんたち…おいてきてるけど…いいのか?」
一人首をかしげているガウリイ。
と。
「…うん?…な?あんたがた…いったいどこから……!?」
ガコン…
という音とともに、明かりが差し込み、聞こえてくるのは聞き覚えのある声。
「あんたは――!?」
「ああっ!?たしかエルフのレグレスさんっ!?」
その姿をみて驚きの声を上げているゼルとアメリア。
隠し扉を開いてここ、隠し部屋の中にと入ってきたのは他ならない、先刻のエルフのレグレス。
「何であんたが……」
いいかけるゼルに、
「あんたらは…いったいどこから入ってきなさった?…まさかさっきのやつの仲間か?」
多少警戒を含めて問いかけてくるこのレグレス。
今あたし達がいるのは、レグレスが住んでいる、先刻初めに訪れたある建物。
その中の一角にあるちょっとした隠し部屋。
「?さっきの?とは?」
レグレスの言葉に眉を潜めているゼルに。
「私たち、いきなりリナさんにここに移動させられたんです。
  レグレスさんがいる…ということは、もしかしてここってあの建物ですか?」
そんなレグレスにと返事を返し、あたしにと聞いてくるアメリア。
くすっ。
「まあね。だってケルンのやつが住んでいた塔は壊れたし。雪の中野宿するのも何だしね♡」
さらっと答えるあたしに。
「…いきなりつれてこられたって……」
何やらつぶやいているレグレス。
「それはそうと。さっきのヤツ…とは?それにこの部屋……」
あきらかにこの中で何かが燃えたような痕跡が残っている。
壁についたススや未だに残る炎の熱気。
それらを感じ取りつつも、ひとまず疑問を解決しようと問いかけているゼル。
そんなゼルの問いかけに。
「…先刻。何ものかがこの部屋に侵入してな。この部屋には貴重な【写本】を保管していたんじゃが……」
「何っ!?」
レグレスの言葉にまともに目の色を変えているゼルだし。
まあこの部屋に炎を放ったのは言うまでもなくゼロスなんだけど。
それは別に説明することでもないからおいとくとして♡
「あら、ゼル♡どうせここにあった写本は【植物に関する知識】のばっかりだったし。気にすることはないわよ♡」
「リナっ!おまえ……っ!!ここに写本があったのしってたのか!?」
「あら?当たり前じゃない。普通わかるでしょうに?近くにあればなおさらに♡
  まあ、気にしない、気にしない。みたところ何でか燃えちゃったみたいだし♡
  それより、ここから近くの村にでも移動してゆっくり休みましょ♡
  確かここって地下に村に続く隠し通路があったと思うし♡」
そんなあたし達の会話に。
「……いったいあんたらは……」
なぜかしばし戸惑いを隠せないレグレスの姿が見受けられていたりするけど。

結局のところ、あたし達は簡単にレグレスにと説明し。
そしてレグレスも使用しているとある隠し通路でもある抜け道より、
森の先にとある小さな村にと移動することに。
ここの写本とそして塔の中にあった写本。
そしてそれをも含め、この森に自然発生していたとある力の【場】は、
塔の崩壊と写本の消滅とともに消滅していたりする。
ゆえに森にかかっていたとある【術もどき】は消え去っていたりするんだけども。
とりあえず…アメリアたちが気づくまでは黙っているとしますかね♡


「…ま…まさかここに来ていらっしゃったとは……」
よろよろと背中になぜか未だに氷のツララをつきたてたまま立ち上がる黒い物体。
と。
「そこのあなたっ!」
「は…はいいぃ!」
いきなり呼ばれ、なぜかその場に立ち尽くす。
そんなゼロスに向かって、
「リナさんたちはどこにいきましたの!?というかケルンは!?」
何やらそんなことを叫びつつ、剣を無意味に構えてじりじりとゼロスに向かって進んでいるレミー。
あたし達の姿が消え、さらには塔もなく。
仕方ないので周囲を確認していたところゼロスの姿をその視界に捉え。
あたしが先ほど話しかけていた…ということもあいまって、それもあっての行動らしいけど。
「あ…あのぉ?」
ゼロスからすれば、何がどうなっているのか情けないことにも理解できないらしく、
とりあえずこの人間に聞いてみましょうか?
などと思っていたりするけども。
「ああっ!ケルンを斬りたかったのにぃぃ!塔までなくなるなんてっ!
  …というわけで、仕方ないからあなたっ!この私にすぱぁっ、と斬られなさいっ!
  そう……すぱぁっ…と。ふふふふふ……」
「…え?…いやあの…ええぇぇぇ!?」
ペロリ、と刃を舐めて近寄るレミーをみて何やら一瞬驚きの声を上げ、
「いやあのっ!どうして僕があなたに斬られないといけないんですかっ!?」
「ケルンを斬れなかったからよっ!」
「そんな理不尽なっ!?」
何やらそんなやり取りをしつつ、ぶんぶん剣を振り回すレミーを避けつつも、
ゼロスもまた、その場を遠のいてゆく。
そんなほのぼのとした光景が、あたし達が消えた後、見受けられていたりする。
その事実は、ゼルやアメリアたちは知る由もない様だけど。


「とりあえず。終わりよければ全てよし。ですねっ!」
「……い~のか?」
「……も、好きにしてくれ。ともかく。先を急ぐぞ。」
次の日。
森が元通りになったのを確認し、そんな会話をしているアメリア・ガウリイ・ゼルの三人。
「そうね♡とりあえず道も広くなってるみたいだし。いきましょ♡」
昨日。
ゼロスが逃げ回り、そんなゼロスをレミーが追いかけ、木々を軒並み切り倒しているので、
ちょっとした道が今現在は新たに出来上がっていたりする。
今回のコレはみているだけだったけど、すこしは楽しめたわね♪

そんなほのぼのとした会話をしつつも、あたし達は森を抜けて次なる目的地にと向かってゆく。
さってと。
本体そのものに突き刺さっている氷のツララすら未だに消さないゼロスには、
後ですこしお灸を据えにいきますか…ね♡
森の異変を何なく解決し、あたし達は次にと向かってゆく。
もう少ししたらどうもゼロスのヤツも合流してきそうだけど…ま、どうでもいいか♡
そろそろセイルーンで面白いことがあるし…ね♪


                     ――復讐の刃編・完了――


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あとがきもどき:
薫:そういえば。
   今まで出てきたエルフの年齢法則からいくと・・・
   「お子様クエスト」のモリーンが見た目年齢五歳程度。実年齢十九歳。
   ゲームに出てきた「ろいやる1,2」のラークの見た目が七歳程度。実年齢二十六歳。
   それらを統計すると実年齢に約0.26を乗算したら見た目の年齢・・という法則が(こらまて)
   それからいくと…メフィの年齢も大体の予測・・つきますよねぇ(笑
   これ打ち込みしててそういえば…お子様クエストの漫遊編もまだ打ち込みしてなかったなぁ・・
   と今さらながらに思ったり……
   あの回は、白銀の前なのでゼルがでてこないんだよなぁ(まて
   何はともあれ、ようやく「復讐の刃」編は完了です。
   一番気の毒だったのは…誰なのでしょう?(笑
   エル様…わかっているがゆえにこのたびは傍観主義に徹していたようですが…
   まあ、みていたほうが楽しい・・・ということもありますから…ねぇ(タブン…
   ゼルたちにとってはラッキー!?だった・・かも!?
   何はともあれ、ここまでお付き合いいただきましてまことにありがとうございました。
   それでは、また次回にてv
   (さて…いい加減に何かの連載の続きをやらなければ…汗)
   
   2006年2月17日某日


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