降魔への旅立ち



ドォン!

静かなはずの空間に。
何ごとかと思われるほどの爆音が鳴り響く。
「何ごと!?」
「何だ!?何だ!?」
「・・・・って・・・・魔王様!?」
「・・・・・・・・・・あ゛~・・・・・。」
「・・・・ええと・・・・救急箱、救急箱・・。」
それぞれにつぶやいているのは。
その爆音を聞きつけて。
その音が起こった場所にあわてて駆けつけている五人の姿。
まず見た目、十より少し下の愛らしい黒くウェーブの入った肩の辺りまで、伸びている髪にくりっとした大きな瞳の男の子。
それが、それをみて。
しばらく言葉を失っていたりする。
そんな少年から少し遅れてやってきたのは。
赤い髪に野性味を帯びた体格のその背に大きな剣を背負っている、男性に。
その倒れている黒く長い髪の男性を見つめて。
叫んでいるのは、淡い金髪を短くまとめている女性。
その目つきは多少鋭く、まるで肉食獣の目を連想させる。
何を言っていいものか。
つぶやくように言葉を発しているのは。
銀の髪を少し長く肩の辺りまで伸ばしている、
同じく銀色の瞳をしている見た目、二十代前半の、その格好は、どこぞの騎士のような姿をしている。
見た目、どうみても、まだ若い紳士的な武人。
そして。
なぜか、楽しそうに、うきうきと。
その長く漆黒の艶やかな髪をかきあげつつ。
にこにこしながら。
何処からか、なぜそんなものが?
というような代物。
つまりは、必用などあるはずもないのに。
応急手当の道具が入っている、曰く、救急箱を取り出している、黒い髪を長く伸ばし、青いドレスを身にまとい。
その首や手には、真珠の装飾品や、服の胸元に。
いかにも高級そうなカメオがあしらわれた珊瑚のブローチをあしらっているものをつけている、まだ若い見た目二十代前後の女性。
そんな彼ら・・五人が。
口々に。
聞こえるはずのない爆音を聞きつけて。
今ここに。
音がしたと思われる、とある場所に集まってきたのだが。
そんな、彼ら。
少年一人に男性二人。
女性二人の前で見受けられている光景は。

彼らの前には。
なぜか、その背と頭に。
背中にスコップ。
頭に大鎌を突きつけられて。
完全に色を失い倒れている、彼らにとっては上司にあたり。
そして。
彼らを生み出し、創りだした、父親というか主でもある、黒く長い髪に紅い髪をしているまだうら若い男性の姿が。

「・・・・あ゛~・・・・・。お母様が来られていたようだね・・。」
そういいつつ、どこか遠くを見つめてつぶやく少年の言葉に。
「・・・・・そういえば。ルビーアイ様・・・。この前、呼び出し受けてたわよねぇ。そのことかしら?」
そういいつつも、どこか楽しそうな表情の青いワンピースを着ている女性。
「・・・ダル・・・楽しそうだな・・。」
そんな彼女をみて軽く溜息ついているのは。
彼女の同僚でもある淡い金の髪を短くまとめている女性。
動きやすい服装を纏っている。
「あらvそんなことはないですわよ?ゼラス♡」
くすくすくす。
そういいつつ、目が完全に笑っていて、しかも。
くすくすと笑いながらでは、説得力などあるはずもない。
「・・・・とりあえず。今のこのままだと・・。どんどん・・・・・・・
   それでなくても。今、赤瞳の魔王(ルビーアイ)様は物質化できないように赤の竜神に封印かけられているんだし?
   ・・・・どんどんこの精神世界(アストラルサイド)においても。・・・・・弱体化してしまうのではないか?
   そうなったら、われらの身も危うくないか?」
『・・・・・・・・・・・。』
的確な意見を言ってくる銀色の髪の男性の言葉に。
『あ・・・・ありうる・・・・・・・(汗)』
なぜか。
その場五人の声が。
完全にと一致していたりする。

今、彼らがいるこの場所は普通の空間ではない。
だが。
見た目はそんなに普通の・・ともかく、地上の物質空間とまったく代わりがない。
それはそういうようにするように。
創られた当時から。
その本質からそうするように創られている彼らだからこそ。
言われなくてもそのように、無意識のままに。
そのように活動しているこの現状。
ここは、物質世界。
つまりは、属にいう、生き物が目に見える形で生活している、空間の次元とは異なる。
その目には見えない空間の次元。
ここは、精神世界(アストラル・サイド)。
彼らは、基本的には。
ここ、アストラル・サイドにその本体を置く。
いわゆる、精神生命体。
その自分自身の力で。
その姿形を形成しているに他ならない。
そして。
今、彼らの前で。
完全にその力そのものをそがれつつ倒れているのは。
彼らの主であり、王でもある。
彼らの王。
この世界の闇を統べている、闇の王。
魔族の王。
赤瞳の魔王(ルビーアイ)シャブラニグドゥ。
その当人。
ここ。
物質世界に関係のない。
この世界の中心たるこの場所では。
かつての戦いにおいて、彼が相対する存在である、光の王。
この世界の光の王。
赤の竜神(フレアドラゴン)スィーフィードよりかけられた封印は用を成さない。
あの封印は。
あの世界・・つまりは。
あの惑星に限ってのことであるがゆえに。


「・・・・ふぅ。助かりましたよ。ゼラス・・。」
そういいつつ。
頭と背中に。
ぐるぐるになぜか包帯を巻きつけている淡い金髪の女性に、感謝の言葉を述べている黒い髪のその男性。
そのゆったりとした服装が、異様に似合っていたりする。
「・・・・・で?お父様?一体お母様は何と?」
そういって疑問をぶつける少年の言葉に。
「ああ。スイマセンね。フィブ。あなたにまで心配を掛けまして。・・・・私は父親失格ですねぇ。」
そんな少年をぎゅっと抱きしめている彼。
・・・あいかわらずの親ばかぶりだな・・。
そんな自らの主であり、父親ともいうべき創造主である、彼らを生み出した存在でもある彼・・シャブラニグドゥをみつつ。
内心そんなことを思っているのは。
紅い髪をした野性味を帯びている男性。
「それで?魔王様?どうやら、『あの御方』が見えられていたようですが?・・一体?」
そう淡々と聞いてくる、銀髪の男性の言葉に。
ふと。
思い出したように手を叩き。
「あ。そうでした。いやぁ、エル様からの命令でですねぇ。」



「いつまでずっと干渉もせずに遊んでいる気!?S!!」
どががすっ!
普通ならば、精神体が実体化しているというか。
その形だけを取っているこの空間で傷など付けられるはずはない。
そう。
普通ならば。
だが、今。
彼―Sと呼ばれた男性は。
その体から、黒い何かを流しつつ。
その場に転がっていたりする。
対して、そんな彼の前にいるのは。
金色の光を纏っている、スタイルもかなりよく。
その、まるでその身長よりも長い、凄烈なまでの金色の髪に。
それに対を成すように煌く金色の瞳。
彼女のことを表現するに辺り。
まず絶世の美女。
そういう言葉がまず頭に浮かぶであろうが。
その手にしている、なぜか棘月スコップなども。
彼女が持っている。
それだけでかなり高価な品物に見えてしまうほどに。
それほどまでに。
いいようのない、雰囲気を纏い、近寄りがたく、それでいて。
その姿を見ただけで畏れを抱くようなそんな感覚に襲われる女性が。
Sと彼女が呼んでいる男性に。
なぜか、頭に彼女が手にした大鎌が。
そのまま振り下ろされて。
その次に。
男性の背中に、棘の突いたスコップが突きたてられて。
そのまま。
そこに倒れている黒い髪の男性。
「少しは根性みせて、何かしなさい!・・もし、数年以内に何もしなかったらv
    全体責任で、D達にも責任負わせるからねvそれと♡スペシャルお仕置きv」
そういって、にっこりと微笑む絶世の美女。
ふと彼女が気がつくと。
「ああ!こら!S!この程度で気絶するんじゃないのよぉ!」
ドォォン!
その言葉と同時に。
辺りに響くはずのない。
爆発音が響き渡っていたのであった。



「・・・・とまあ、そういうわけで。ここ、数年以内に何とかしないと・・。
   下手すると、永久にお仕置きフルコース決定ですねぇ。今のままでは。
   とりあえず、私は。あちらの世界にこの精神そのものを移しまして・・。
   ・・・・どうにかあの世界の物質世界に干渉できるように。頑張ってみますよ・・・・。」
そういいつつ、なぜか軽く溜息ついている魔王、シャブラニグドゥ。
まず、誰が見ても。
この男性が。
魔を統べている王。
魔族の王であるなどとは。
たとえどんな存在でも夢にも思わないであろう。
そういいつつ、集まっている彼の子供達でもあり。
彼の腹心の部下でもある五人の姿をみつつ。
「そういうわけで。私はしばらく、あちらの世界にかかりっきりになりますから。ここは、私の子供達も協力してくださいね?」
そういって。
にっこりと。
集まった、彼にとっては、愛しくてたまらない。
子供でもあり部下でもある、彼ら五人に語りかけているシャブラニグドゥ。
「任せてください!お父さま!この僕もしっかりと!お手伝いさせてもらいます!」
その言葉に。
元気よく答える少年の言葉に。
「・・とゆーか、スィーフィードの方が問題なんじゃないのか?」
的確なことを言っている紅い髪の男性。

・・・・あちらも。
同じようにどうやら命令されてるようですけど・・・。
そうは思うが。
あえて、いえば何か恐ろしい予感がよぎり。
あえてそれを説明しない魔王。

「・・・・まあ、スィーフィードも。
   魔王様と同じく・・魔王様を分断したときに。自らも分断したからねぇ。」
そういって、うんうんうなづく少年に。
「ま、なるようにしかなりませんよ。とりあえず・・・・。
   ここ数年以内で・・・私もどうにかまともな器を見つけて降臨しますので・・。
   後は・・・スィーフィードが掛けている封印だけが問題ですねぇ。
   とりあえず、人の心をそのまま、乗っ取って誕生することは簡単ですけど。
   それでも、彼女がかけた封印はその程度では解かれないでしょうしね。」
そういって軽く溜息一つつく。
「それは、僕に任せてください!ルビーアイ様!」
元気よく答える少年に。
「頼みましたよ?フィブリゾ♡」
そういってにっこり微笑み。
「さて・・・では、子供達?これから、お互いに頑張っていきましょうね。私達家族の平穏のために♡」
・・・・・どこか。
的がかなり外れている台詞をほざいている、魔王シャブラニグドゥであった・・・・。


かつての。
光と闇の決戦から。
およそ・・・・・約一万年という年月が・・・・・。
ひそやかに、ここの世界では。
過ぎようとしていた、とある日の出来事・・・・。



                                     -第1話へv-

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まえがき:

  こんにちわ♪
   何を考えているのかv
   しばらく隠しておきますねv
   この小説君v
   ちなみに。
   誰の視点でいこうかな?(まて!)
   おそらく、只今チャレンジしている客観的な視点か。
   もしくは・・・・やっぱりエル様になるかもしれない・・・という・・・(汗)
   ・・・・始めに考えてたのは・・。
   いろいろな視点で考えてたからなぁ(だからまてってば・・)
   んではでは!
   いっきます!

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あとがき:

    ・・・・どうしよっかな?
    フィブの一人称だと・・。
    レイ少年の感情とかが出来ないしな。
    ・・・レイが誕生するまでに。
    下地を作る彼らの動きもあるし・・・・。
    ・・・・・やっぱり。
    客観的視点。
    もしくはエル様視点・・・どっちにするかな?うーむ・・・・。


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