鏡の迷宮
とりあえず、ヒドラを無事に退治して…まあ、無事、というか、何というか。
とにかく、退治したこともあり。
あたしたちはそのまま、依頼料でもある食事食べ放題をうけとるためにと。
村にもどってゆくことに。
…が!
「「何ですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」
村の中、あたしとナーガの絶叫が響き渡る。
「まったく、あなたたち、何をしに山にいったの?ヒドラはクレア、とかいう魔道士の女の子が倒したそうじゃないのよ。」
村に戻ったあたしたちにと話しかけてきている村の女性。
「ちょっと!?どういうことよ!?ヒドラを倒したのはあたしよ!?」
思わずそんな女性にくってかかるが。
「え?でも、あの子はそんなことをいってなかったわよ?それに、証拠でもある、ヒドラの子供もってたし…」
などといってくるその女性。
んふふふふ・・・・・
「その話、くわしぃぃぃぃぃぃく聞かせてくれないかしら?」
あたしのすわりまくったその声に、なぜかその瞳におびえの色を浮かべつつ。
こくこくと素直にとうなづいて、経緯を説明してくれる村人さん。
話によれば、いたって簡単なこと。
先にもどったクレアが、ヒドラの子供をみせて、ヒドラを退治した。
と村人たちにと触れ回り。
挙句は、あたしたちの依頼料のはずでもあった、食事食べ放題すらをも横取りし。
そして、そのまま村を立ち去ったらしい。
「おにょれ!クレア!ゆるすまじ!」
あたしの至極もっともな意見に。
「ふっ。リナ!クレアを追いかけるわよ!」
などといってきている横にいるナーガ。
人の依頼料を横取りするとは!
おにょれ、クレア、覚えてちょれ!
「でも、追いかけるっていっても…」
あたしの言葉に。
「何いってるのよ。クレアは確か、クリムゾンの魔道士協会に所属していたはずだから。
とりあえず、そこに戻るにしても、まずは、この先のヨハネス・シティか。または、アトラスシティにいったに決まってるんだし。
すぐには戻らないわよ。彼女。おそらくは。今からならまだ間に合うわよ。追いかけるわよ!リナ!」
何やらそんなことをいっているナーガ。
「へー。ナーガ、詳しいのねぇ。」
つうか、ちとやばいなぁ。
どこにどんな町などがあった、というのも、あまり覚えてないし。
あたしは。
それでも、基本、ともいえる大きな町とかは何でか覚えてるのは。
何かよく覚えてないけど、覚えなかったら命の危険にさらされてたような気が…
・・・・・ものすっごく小さいときに…
・・・・・・・・・・・・・・・・・深く考えまい・・・・
「ふっ。当然よ!おーほっほっほっ!だけど、場所はわかってても。
いつも道にまよって、違う場所にいくだけよ!この白蛇のナーガ様は!おーほっほっほっほっ!」
何やらそういいつつ高笑いを始めているナーガだけど。
「つうか、威張るなぁぁぁぁぁぁあ!」
すばこぉん!
とりあえず、懐にとしまってあったスリッパでナーガの頭をたたいておいて。
「んじゃ、とりあえず、この近くだと…ヨハネス・シティかしらね。」
確かクリムゾン・タウンの近くには死霊都市サイラーグがあったはずだし。
でも、確か今、サイラーグ、なくなってるのよねぇ。
…って、あれ?
何でなくなってる、なんてあたし思うんだろ?
・・・・・・・・変なの。
「そうね。まってなさいよ!クレア!」
「右に同じく!おにょれ!人の依頼料を無断で横から奪うなんて。しっかりと慰謝料はせしめないと!」
そんな会話をかわしつつ。
とりあえず、ほかの村人からも情報を集め。
どうやら、やはり、クレアはヨハネス・シティの方にといった。
ということらしいので。
あたしとナーガはそのまま、クレアを追って、ヨハネス・シティにと向かうことに。
んふふふ。
まってなさいよぉ!クレア!
「…あのぉ?リナさん?ナーガさん…私のこと、忘れてませんかぁ?」
何やら横でキャニーがつぶやいていたりするけど。
あ、すっかり忘れてた。
「気にしないのよ。キャニー。さあ!ヨハネス・シティにいくわよ!」
そんな会話をしつつも。
とりあえず、あたしたちはクレアを追いかけてゆくことで合意をし。
次にむかうは、ヨハネス・シティ。
道中、ちょっとした盗賊のアジトなどをつぶしつつ。
数日後。
ようやくたどり着いたヨハネス・シティ。
「ここにクレアがいるかもしれないのね。」
「おーほっほっほっほっほっほっ!まってなさいよ!クレア!」
町にとはいり。
とりあえず、クレアが寄り添うな場所はどこか。
ひとまずは情報収集でも…
そんなことを思っていると。
ガラガラガラ…
何やらあたしたちの後ろから、馬車がやってきている音が。
「あれ?君たち…魔道士さん?」
ふと、なぜかあたしたちの目の前でその馬車を運転していたらしい人物が。
わざわざ馬車を止めて何やらいってきていたりするけども。
「それ以外の何に見えるの?」
まあ、ナーガの場合はどこかの大道芸人に見えてもまったくおかしくはないけども。
そんなあたしたちの言葉ににっこりと微笑み。
「いやぁ、やっぱり?実は、君たちに頼みたいことがあってね。」
などとなぜだかにっこりと微笑みそんなことをいってくるこの男性。
「ちょっと、私たち今急いでいるんだけど?」
何やらナーガが横でそんなことをいっていたりするけども。
そんなナーガの言葉にはお構いなく。
「実は僕、ここヨハネスで古道具屋なんかを営んでるんだけど。
先日、倉庫処理をしていたら、何とでてきたんだよ!古い地図が!
しかも、どうやらそれを町長のところにもっていったら。古い宝の地図だっていうじゃないか!」
何?!
「おーほっほっほっほっ!詳しくきかせてもらえるかしら!?」
「お宝!?」
キラン。
あたしとナーガの瞳が輝く。
「あ、あのぉ?リナさん?ナーガさん?クレアさんのことは…」
何やら横でキャニーが何かいってるけど。
ふっ。
「キャニー、クレアは別に逃げやしないわ。行く先はわかってるんだし。それより今はお宝よ!」
「そうよ、キャニー。お宝よ!昔のことなんか忘れなさい!おーほっほっほっほっ!」
何やらそんなことをいっているナーガ。
「・・・・・・・・・・・・」
あたしとナーガの言葉になぜか無言となっているキャニーだけど。
「とりあえず、詳しい話は何だから。後で僕の店にきてくれないか?
ハンスの道具屋、といえば、町の人たちはたいていしってるから。それじゃ、また後で。」
ガラガラガラ。
そんなことをいいつつ、馬車はそのまま町の中にとはいってゆく。
「おーほっほっほっほ!リナ!」
「わかってるわよ!ナーガ!ハンスの道具屋ね!すぐにいくわよ!」
「…クレアさんのことはいいのかなぁぁぁぁ???」
あたしたちの横で何やら首をかしげているキャニーがいたりするけど。
今は何よりもお宝の依頼が先決よ!
ハンスの古道具屋。
それは町のちょっとした下の方にと位置していて。
何か町の人の話では、彼はかなりお人よし、だとか何とか。
とりあえず、すぐさま店にといき、ハンスから話をきき。
ちょっとした誘拐未遂(?)事件などを解決し。
ようやく手にいれたお宝の地図。
それをもって、ハンスのいうとおりに町長の所にいって、話をきくと。
何でもそれは、この町の東にと位置している、死火山の谷の中のお宝の地図だという。
とりあえず、ハンスの依頼はそのお宝を探してきてほしい。
というもの。
依頼料もそこそこで、しかも、目的のお宝以外はあたしたちの懐にいれてもいい。
というのであれば、ことわる理由はなし!
と、いうわけで。
あたしたちは、今。
ここ、死火山の谷にとやってきていたりするのだけど…
「うーん、この宝箱、どうにかして開かないかなぁ?」
目の前にあるのは、鍵のかかっているちょっとした宝箱。
ちなみにナーガが使ったアンロックの術でもあかなかったし。
まあ、ナーガが使ってるのをみてあたしもまた覚えた…というかはじめから使えたらしく。
あたしもやってみたけど、開く気配なし。
「おーほっほっほっ!ここは、やっぱり、呪文でふきとばし・・・・」
などといいつつ、何やら呪文を唱え始めているナーガ。
「だぁぁぁぁぁぁ!んなことしたら、もし中身が壊れやすいものだったらどうするんのよ!」
すばこぉん!
うーん、いい音。
とりあえず、そんなナーガを懐から取り出したスリッパではたいておき。
目の前の鍵のかかったままのそれをしばし見つめるあたし。
確か、こういうときには、何かあったはず…
うーん??
「あのぉ?ここでのんびりしてたら、夜になっちゃいますよ?まだこの先にあるという、古城の遺跡にいかないと…」
何やら横でそんなことをいっているキャニー。
っと、まてよ?夜?
「あら、本当、そろそろ闇が濃くなってきたわね。」
えっと、夜…闇。
ぱっ。
あたしの中に何かのカオスワーズらしきものが浮かんでくる。
もしかするとv
「もしかしたら、できるかもvやってみよv」
「…凍れる黒きうつろの刃よ …わが力 わが身となりて…」
何となく、これなら何でも切れるような気がするしv
何の力をつかってる術かはわかんないけど。
何となく漠然とならわかるからねぇ。
記憶ない今のあたしでも。
「ちょっと?リナ?それ何?」
何やら横でいっているナーガ。
そんなナーガの言葉をききつつ。
やがて、あたしの力ある言葉が発せられる。
「ラグナ・ブレード!」
ザッシュ!
おー。
何か面白いほどに切れてるわ。
でも、これ、何かものすっごく疲れるんですけど…
出現したのはほんの一瞬ほど。
だけどそれで宝箱の表面を切るのは十分。
あたしの力ある言葉と同時にあたしの手にと出現する短剣サイズの黒い刃。
だけど、あまりに魔力の消耗が激しすぎ。
一瞬でそれは掻き消える。
しかも、何か体がだるいし…
まあ、それはそれとして。
パカッ。
表面だけを切るようにして切りつけたので。
ものの見事に宝箱が中身を残して割れてゆく。
そして…
「・・・・・・・・・・・・・何でかぎ?」
「・・・・鍵だわね…」
なぜかあれほど厳重にかぎがかかっていた、というのに。
中にあったのは、なぜか青い鍵…ちょっとした光沢を放っていたりするけど。
・・・・・・・・・・・・・・え・・・・えっと・・・・・・
くるり。
「とりあえず、先をすすみましょ。」
「そうね。」
とりあえず、気にしないことにして。
せっかくだからその鍵を袋の中にとしまいこみ。
そのまますたすたと、先を進んでゆくあたしたち。
しっかし、何で宝箱の中なんかにかぎをいれとくかなぁ??
あれほど厳重にしてあるんだったら、もうちょっと、いいものがはいっていてもいいのに…
どうやらナーガも同じ思いらしく不満顔。
と。
あたしたちの行く手にとまたまた出てくる何やらあたしたちに対して敵意むき出しの魔物たち。
ま、ちょうどいい。
「んふふふ。今あたし、ちょっぴし機嫌悪いから、手加減しないわよ!」
「おーほっほっほっほっ!飛んで火にいる夏の虫!いくわよ!」
ちょうどいい鬱憤晴らしが目の前にとやってきたので。
そのまま、手加減なく攻撃を始めてゆくあたしとナーガ。
「ちょっとぉ!?リナさん!?ナーガさん!?こんな狭い場所でそんな術をつかったらぁぁぁあ!?」
何やらわめいているキャニー。
と。
がらがらがらららっ!
今あたしたちがいるのは、がけ沿いにと切り開かれている小さな道もどき。
さて、問題です。
そこで派手に爆発や、しかも大地に干渉する大地を切り裂くような術をつかえば?
答えは簡単。
そのまま、あたしたちが今まで足をつけていた地面が。
なぜか音を立てて崩れてゆく。
「んきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
何やらキャニーが叫んでいるけど。
「レビテーション!」
あたしはいち早く呪文を唱え、ふわり、と浮かび上がるが。
そのまま足場とともに一緒くたにと落ちてゆくナーガとキャニーの姿がみえてたりするし。
え…えっと。
ま、いっか。うん。
そのまま、あたしはゆっくりと。
下の方にとみえている、がけの中央付近にとある、しっかりした足場の方にと下りてゆく。
おそらくは。
あれが町長がいってた、古城の入り口…
そんなことを思いつつ。
「へー。こんなところにこんなものがあったんだぁ。」
思わず関心して声を上げる。
「おーほっほっほっ!まってなさいよ!お宝さん!」
などとあたしの横では、足場とともに落下した、というのに。
完全!に無傷のナーガと。
「リナさぁん、ナーガさぁん、無茶しないでくださいよぉ…」
何やら泣き言をいっているキャニー。
なぜかちょっぴし服が汚れていたりするけども。
まったく、落下の衝撃で怪我をしたそれは、きちんと治してあげた。
というのに、今だに何かいってるし。このキャニーは。
古城の入り口にとあたるらしいその場所にと足を踏み入れているあたしたち。
あたしたちの横手では、湖にどうやらここはつながっているらしく。
地底湖の水が涼しいほどにあたりの空気を冷やしている。
この先にしかも、なぜか、地底湖の中心に、ぽつり、とたっている古城の姿が。
それがどうやら、地図に示されているお宝のありか、といわれている古城。
しっかし、何だってんな地下の湖の中にしろがあるんだ?
そんな疑問も頭に浮かぶが。
「おーほっほっほっ!キャニー、何をいってるのよ。お宝は目の前なのよ!おーほっほっほっ!」
「そうそう、さ!お宝めざして城の中に進むわよ!」
かくして。
あたしたちはそのまま、お宝を目指して城の中にとはいってゆく。
ここまであまりいい品物とか手にはいらなかったし。
城の中にはもっといいものがあるはず!うん!
そう、自分自身に言い聞かせつつ。
「いやぁ、ここ、結構いいものがのこってるじゃないv」
「おーほっほっほっ!リナ、またお宝があったわよ!」
どうやら本気でここは、穴場であったらしく。
まあ、あるわ、あるわ。
お宝さんがv
といっても、それほどかさばる代物でもなく。
持ち運びも便利な代物が。
どうもここに迷い込んできた人間とかが、落としていったような、そんな代物もあるにせよ。
どうやらこの城はちょっとしたカラクリ仕掛け仕様にとなっているらしく。
城の中心で、常にローブが上下に動いていたりする。
あとは、ちょっぴり仕掛けの後ろの隠し部屋に。
結構売ればいいお金になるような代物が隠されてたり。
「でも、この地図にかかれているのは、城のどうやら地下のようですけど?」
地図を片手にそんなことをいっているキャニー。
あたしたちが今いるのは、もっぱら城の内部。
地下に降りる階段らしきものは、たったのひとつ。
「うーん、とりあえず、湖の洞窟からここに入るときにあった。
あそこ、地下牢、その先かもね。とりあえず、あそこたたっきってから地下にいく道探してみる?」
あたしの至極もっともな意見に。
「そういえばそんなものもあったわね。何か横でゴーストがぼやいてたけど。」
あたしの言葉にそんなことをいっているナーガ。
この城の中にと入る途中。
この城の地下を通ってあたしたちは入ってきたんだけど。
どうやら地下道からの入り口にとなっているらしい場所にとあった二つの地下牢。
そのうちひとつの牢屋にて、何やら二人のゴーストが、言い合いなんかをしてたけど。
「とりあえず、いってみますか。」
「そうね。」
そんな会話をしつつ。
とりあえず、この城の中にあるであろうすべてのお宝は収集しつくし。
そのまま、袋にと品物をいれて、地下室にと向かってゆくあたしたち。
「ここね。」
「アン・ロック。」
キッン!
ナーガの言葉により、地下牢の鍵が音を立ててはずれ。
牢屋の中にと入ってゆくあたしとナーガとキャニー。
なぜか牢屋の奥には一枚の扉があり。
その先にちょっとした隠し通路が。
そして。
「?何でこんなところに宝箱が?」
その通路のど真ん中にとある宝箱。
そして、あたしたちがそれに近づくと。
−その宝箱をあけるのだ。
何か地下からそんな声が。
「怪しいから無視しません?」
その声をきき、そんなことをいってきるキャニーに。
― お願い、その宝箱をあけて。お願いだから。
何かものすっごく切羽詰まったような声が再び地下より聞こえてきたり。
「…どうする?」
「まあ、あけろ、というんだし、あけてみない?」
「でも、あからさまに怪しいですよね。」
−お願い、ブリーズ!
何かものすごく切羽つまりまくりの声が再び聞こえてくる。
「まあ、どうもこの宝箱、何かの仕掛けになってるみたいだし。
そこの岩の下から、地下より風が流れてるし。とりあえずあけてみましょうか。地図ではまだ地下になってることだし。」
廊下の先の行き止まりにあるちょっとした岩。
その下から漏れてくる風が、まだ下に部屋があることを物語っている。
とりあえず、あからさまにあやしいけど。
地下室があるみたいだし、というので、宝箱にと手をかけるあたしたち。
と。
ガコッン。
ゴゴゴゴゴ…
どうやら宝箱がカギとなっていたらしく。
廊下の先の壁が横にと移動し。
それと共に廊下の先をふさぐ形となっていた岩が横にずれる。
その下より出てくる地下室にと続く階段。
「おーほっほっほっほっ!こんな仕掛けがあったのね。お宝は私のものよ!」
などといいつつ、高笑いし、その階段にむけてかけてゆくナーガに。
「あ!ナーガ!独り占めする気!?追いかけるわよ!キャニー!」
そんなナーガを追いかけて、あたしたちもまた、階段を駆け下りてゆく。
そこは、なぜか棺おけが立ち並ぶ部屋。
そして。
周りにあるのは、薄暗いろうそくの明かり。
「まっていたぞ。よくぞ封印をといてくれた。」
などと至極威張ったような口調で、何やらあたしたちにと話しかけてくる人物が一人。
そして。
あっけにとられているあたしたちをよそに。
「お礼にわれが復活したあかつきを記念して、我自身が貴様たちをやみにと滅してあげよう。」
などとそんなことをいってくるそれ。
「そんなことより!」
「そうよ!お宝よ!?お宝はどこ!?」
そんななぜか格好をつけて威張っている男性にむかい、つめよるあたしとナーガ。
「あ、あのぉ?私たち、キームさんからここに宝がある、と聞いてきたんですけど。
この地図に書かれているの、ここですよね?」
そんな相手にとむかい丁寧にと質問しているキャニー。
そんなキャニーの言葉に。
「キームだと!?ヨハネスのキームか!?」
その声に面白いまでにと目を見開き。
次の瞬間。
ゴウッ!
あたりの空気が震撼する。
「あやつめは!五十年まえにこの私をだましてこの場所に封印しよってからに!
何が人間のハンス、とかいう男をだますのに協力してくれ、だ!この私の宝ほしさに高貴なる私をだますとは!」
何やらひとり叫び始めてるし。
あー、うるさい。
「プラスト・アッシュ。」
ぼびゅっ!
しぃぃぃん…
あたしの放った一撃は。
そんな何やらわめいている男の横の蝋燭台を一瞬のうちにと塵と化す。
「とにかく、あなたもこうなりたくなかったらとっととお宝を差し出すことね。」
にっこりと。
誠意ある説得をするあたしのそんな言葉に。
「お、おのれ!人間風情が!このバンパイアである私にかなうとでも!?」
などとそんなことを叫んでいるこの男。
「吸血鬼!?」
その言葉に驚愕の叫びを上げているキャニーに。
「おーほっほっほっほっ!バンパイアごとき、このナーガ様が恐れるとでもおもって!?
お宝がない、みたいなうそをいってもごまかされないわよ!パンパイア、といえば、当然村人とかからの貢物!
そんなお宝があるのは周知の事実よ!おーほっほっほっほっ!さっさと出し惜しみしてないで、お宝を出しなさい!」
などと高笑いしつつ、そんなことをいっているナーガ。
「そうそう、別にあんたなんて倒しても一銭にもなんないし。それより、お宝はどこ!?」
そんな吸血鬼、と名乗った男に詰め寄るあたしとナーガ。
そんなあたしたちの言葉に。
「お、おのれ!?このシュトラスドルフを愚弄するか!?いいだろう。私の真の実力をみせてやる!」
などといいつつも、魔力を開放しはじめているそれ。
あたりの空気が震撼し。
部屋全体が魔力で揺り動かされてゆく。
そして。
その魔力が収縮していき・・・・・
ポッン。
軽い音ととともに。
なぜかそこにいるのは、小さなこうもり。
その瞳がなにともブリティー。
大きな瞳をうるうるさせて。
「ふはは。どうだ。恐ろしいだろう。」
などとそんなことをいってるし。
つかつかつか。
「あほかぁぁぁぁぁぁぁあ!」
すばこぉぉぉん!
とりあえず、問答無用であたしのスリッパ攻撃が。
そんな手のひらサイズのこうもりとなったバンバイア、シュトラスドルフを床にと叩き落したのはいうまでもないこと。
「…何か名前からして、シュタインドルフとかいう吸血鬼…思い出させるわね…」
そんなことをつぶやくナーガに。
「あなたたち、弟をしってるのですか?」
何やらあたしとナーガに少しばかり攻撃うけて。
なぜかデスマス口調となりおとなしくなっているシュトラスドルフ。
「…お、弟?」
意味がわからずに首をかしげるあたしに。
「リナ、覚えてないの?以前、とある依頼でいった。
遺跡の中で迷子になってた、にんじんサイズのフレア・アローを放ってきた吸血鬼のことよ。」
・・・・・いや、遺跡の中で迷子って…
そんなナーガの言葉に。
「弟は昔から方向音痴でしたからねぇ。それに魔力もコントロール悪かったですし。
そうですか、弟の知り合いですか。ですけど、本当にここにはお宝はないんですぅ。
五十年前、ヨハネスのキームが私をだましてすべてのお宝をうばっていったんですぅ。」
何やらなきながら、ちょっぴし全身をぼろぼろにして、なぜか髪のところどころが焦げていたりもするけども。
あたしたちにと説明してきているこの吸血鬼・シュトラスドルフ。
「あ、あのぉ?リナさん?ナーガさん?どうやらこの人、うそはいってないようですけど…」
そんなあたしたちの会話をききつつも、横から口を挟んできているキャニー。
「どうやらそのようね。んふふふ。このあたしたちをだますなんていい根性してんじゃない。あのヨハネスの長老・キームは。」
「リナ、とりあえずヨハネスに戻ってキームを叩きのめすわよ!」
「意義なし!」
とりあえず。
パンパイアがもっていたなけなしのお金、金貨五枚を奪い取り。
ついでに売ればある程度のお金にはなるであろう。
というので服などをも剥ぎ取り。
下着一枚にしておいて、お宝を奪った、という、ヨハネス・シティの長老、キームの所に向かうことにしたあたしたち。
おのれ!
あの長老、はじめからここにお宝がないのをしってて、説明しなかったわね!?許すマジ!
なぜかないているシュトラスドルフをその場にのこし。
あたしたちは、ここ、古代の城の遺跡をあとにしてゆく。
ヨハネス・シティ。
バッン!
「ちょっと!どういうこと!?」
とりあえず、そのまま、長老の家にと直行し。
直談判をすることにしたあたしたち。
あたしたちが家にいくと。
「はて?何のことかのぉ?」
などと薄らとぼけているこの男性。
ぷちちぃ。
思わず切れそうになるものの。
「いい?世の中には、やっていいことと悪いことがあるのよ?
知ってて隠してた、なんて、当然それなりの制裁は必要なのよ?わかる?」
あたしの言葉に。
「そうよ!私たちのお宝はどこ!?」
などといっているナーガ。
「何のことかのぉ?」
さらにとぼけまくるそんな長老に対し。
ぶっち。
「たそがれよりも暗きもの 血の流れよりもあかきもの…」
なぜか覚えていないはずの何かの呪文の言葉が。
自然とあたしの口から漏れ出してゆく。
「ああ!リナさん、おちついてくださいぃぃぃい!ドラグスレイブはこんな街中ではやめてください!」
何やらあたしに涙目になって訴えてきているキャニー。
「そ、そうじゃ!ドラグスレイブはいかんぞ!ドラグスレイブは!
そんな術などは町全体が吹き飛んでしまうじゃないか!?」
なぜか恐怖の色をその瞳に浮かべ、叫んでいる長老・キーム。
「ふっ。だけど、このまま無事に済む、とおもって!?」
などとそんなことをいっているナーガ。
うーん、それは確かに同感。
「とりあえず、あたしたちをだましてたのは事実なんだし?それなりのお仕置きは必要よね?長老さんv」
にこやかに微笑みかけるあたしたちに対して。
何やらおびえているこのキーム。
しばらく。
部屋の中にキームの悲鳴と、何かを叩きのめす音が響き渡ってゆく。
「そうですか。長老が…まあ、仕方ありませんね。依頼は依頼です。はい。残りの依頼料です。」
とりあえず、キームにしっかりと、物事の道理、というものを叩き込み。
ハンスに報告にと来ているあたしたち。
あたしたちの説明をきき、お宝がなかったのは残念です。
などといって、うなだれつつも、しっかりと、依頼は依頼だからといって。
のこりの依頼料を払ってくれるこのハンス。
いやぁ、いい人だわ。うん。
残りの依頼料をうけとり。
とりあえず、古道具屋を出てゆくあたしたち。
「それで?リナ?これからどうするの?しかし、リナ。・・・・ちょっと、いいかしら?」
?
なぜか何やらつぶやきつつも、あたしのおなかに手をあてているナーガ。
そして、ナーガの手が何やらほのかに光り。
「…なるほど。だからね。」
??
何やら小さくつぶやきつつも。
「とりあえず、リナ、あなた記憶がないせいか、魔力が格段と落ちてるし。
この先にあるアスラト・シティにでもいって、魔法論理でもならってきなさい。
そうすれば、少しはましになるはずよ。あなたもともと実力はあるんだし。」
ナーガにしては至極めずらしくまっとうなことをいってくる。
何が『だから』なんだろう?
まあ、しかし、何よりも。
呪文が使えない、というのは確かに困るし。
結果。
次なる目的地をアトラス・シティにと定めたあたし。
「うーん、それもそうね。それじゃ、アトラスにいくけど。キャニーはどうする?」
あたしの言葉に。
「そうね。もう少しだけご一緒するわ。」
そんなことをいってくるキャニー。
結局。
三人でアトラスに向かうことにしたあたしたち。
しっかし、何か最近、体が異様にだるいよぉぉ……
そんなことをおもいつつも。
とりあえずはアトラスにとむかうことにしたあたしたち。
ま、気にしてもしかたがない、うん。
多分記憶がない、というのと体がだるい、というのとは関係ないだろうしね。
アトラス・シティ。
そこそこに大きな町ではあるものの。
何でも少しまえに、ちょっとしたごたごたがあり。
最近ようやく新しい評議長が任命したとか何とか。
「とりあえず、魔道士協会はこっちよ。リナ。」
ナーガに促され、そちらにとむかって歩いてゆくあたし。
と。
「あれ?リナさん?」
あたしたちにと話しかけてくる一人の女性。
その柔らかな雰囲気に似合わない少しさびしそうなひとみが印象深い。
「?」
首をかしげるあたしに。
「リナさん、お久しぶりですわ。…って、あら?ガウリイさんはどうされたのですか?」
あたしをみて、きょろきょろとあたりをみわたし。
何やらそんなことをいってくるし。
「・・・が・・・う・・・・り・・・い?」
「ちょっと、リナさん!?何泣いてるんですか!?」
あれ?
何であたし泣いてるんだ?
あたしはなぜか自分でもわからないけど、ぽろぽろと涙を流していたりする。
心の奥のどこかで『−会いたい』という思いが募る。
だけども、誰に会いたいのかがわからない。
それがひどくもどかしい。
「あなた、確か、前ここアトラス協会評議長のところの、ルビアだったわよね。」
なぜか涙が止まらないあたしに変わり。
その女性にと話しかけているナーガ。
なぜかとっても懐かしい、今この女性がいった、誰かの名前。
名前をきいただけで、切なくて・・・切なくて、苦しくなってしまうのは・・・・どうして?
「ええ、そうですけど。」
そんなナーガの言葉に答えているその女性。
そんなルビア、と呼ばれた女性に対し。
「今、このリナ記憶失ってるのよ。つまりあなたのことも覚えてないとおもうわ。何しろ大切な人の記憶まで失ってる状態だからね。」
??
大切な・・・・・ひと?
あたしの?
それって・・・・今、このルビアさんがいってた、『ガウリイ』とかいう人のこと?
あたしがどうにか涙をとめつつも、首をかしげていると。
「まあ、記憶を!?それは・・・・もしかして、あれから何かありました?
以前であったときには、またまたリナさんたち、魔族関係のごたごとに巻き込まれてましたけど・・・・」
「・・・・・・・・・はぃ!?」
そんなルビアさんの声に思わず目を見開くあたし。
いや、あのその『また』って・・・・
記憶失う前のあたしっていったひ・・・・・・・
「でも、記憶がない、というのは不便ですわね。
それにガウリイさんがそばにいらっしやらない、というのも気になりますし。何でしたら、何か薬でも調合してみましょうか?」
おお!
この人なんていい人なんだ!?
あたしがそんなことを思っていると。
「あら、ルビアとかいったわね。それは・・・・・」
何やらぽそぼそと、ルビアの耳元でささやいているナーガ。
?
ちょうど二人の声は、あたしたちの目の前を通過してゆく馬車の音にかき消され。
あたしの耳にはとどかない。
「まぁ!それはまた。それではしかたありませんわね。
そうだ。リナさん、とりあえずこれを。少しでもはやくガウリイさんとご一緒できることを、願っておりますわ。」
何やら少しばかり頬をそめ。
何か餞別がわりに、とかいって、金貨の入った麻黒をあたしに手渡してくるこのルビアさん。
いや、あの、あたしとしては薬がほしいんですけど・・・・
そんなあたしの思いとはよそに。
「それでは、リナさん、記憶がもどられましたら、ぜひともに。
ガウリイさんとまたたずねてきてくださいませね。それでは、私はこれで。」
ぺこり、とあたしたちにとお辞儀をし。
そのまま、町外れの方向にむかって歩き始めているその女性…ルビアさんの後姿を見送りつつ。
「ちょっと!?ナーガ!?ルビアさんに何いったの!?」
おおかたこいつが何か要らないことをいったから、薬がもらえなかったに違いない!
そんなあたしの叫びをさらり、と交わし。
「そんなことより、とっとと魔道士協会にいくわよ。
リナ、あなたはとりあえず、魔法論理を基本から習ったほうが、何かといいわよ。
記憶なくて、しかも魔力低下してるまま、というのは何かと不便でしょ?」
うーん。
ナーガにしては、しごくまともな意見のような気がするんだが・・・・
だけど、そうなのよねぇ。
記憶がない、というのもさることながら。
何でかこころならずか魔力が低下してるような気がするし・・・・
うーん、あの日でもないのになぁ??
「そうですよ。リナさん、さ、魔道士協会にいきましょう。」
首をかしげるあたしにとうながすようにいってきているキャニー。
・・・ま、いっか。
とりあえずは協会にいって、魔法論理を習うとしますかね。
まあ、考えてもしかたがない、うん。
「そうね。とりあえず、それじゃ、いきますか。」
そんな会話をかわしつつも。
あたしたちは最近ようやく評議長が決定した、というアトラスの魔道士協会にと向ってゆく。
何でもナーガの話だと、ここアトラスでは以前評議長の地位をめぐって争いがあり。
しかも、それを解決したのが、あたしだったりするらしい・・・・
お・・・おぼえてなひ・・・・・
何はともあれ、あたしたちはここ、アトラスの魔道士協会にと足をむけてゆく。
アトラス・シティ。
ライゼール帝国の中にと位置するそこそこに大きな町である。
リトハーン公の加護の元にと栄えているこの町では。
何か毎回ながら騒動が耐えない町、といっても過言ではないらしい。
そのうちのいくつかにはあたしがどうやら関係してるらしいけど。
あたしは知らないし。
というか、覚えてないしね。うん。
城の少し先にとある魔道士協会。
何でも先のごたごたからようやく評議長がきまったばかり、とはきくものの。
「とりあえず、ここの評議長にでも頼んで、魔道論理を教えてもらいなさい。」
協会の前にてあたしにそんなことをいってきているナーガ。
「あ、うん。」
何か先ほどのルビアさんの話によれば。
あたしはかなりいい待遇をしてくれるであろう、ということだったし。
とりあえず、記憶がない今の状況だと……
ストレス解消のために、盗賊いじめするのにも呪文が使えない!というのはかなり困る!
まあ、というのは冗談にしても。
とりあえず、魔法理論は覚えておくことに問題はないしね。うん。
というか、覚える、というか、以前覚えていたのを再度・・・・というのが正しいんだろうけど。
そんなことを思いつつ、あたしは・・・否。
あたしたち…あたし、ナーガ、そしてキャニーは。
アトラスの魔道士協会の中にと足を踏み入れてゆく。
−続くー
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あとがき:
薫:次回でようやく塔なのです。
そして、今度はレミーさん登場ですな(笑
何はともあれ、次回、いくのです。
2004年6月15日某日
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