ザザァァァ・・・・・。
だ・・・・・だぁぁぁぁぁ!
どうしていきなりぃぃ!?
旅にでて少ししたときにいきなり振り出した土砂降りの雨。
姉ちゃんの【世界を見て来い。】の一言で始まったあたしのこのたび。
しかし・・・・まだ13にもならない、11になったそこらの子供を。
何の手土産も持たせずに旅立たせるうちの家っていったひ・・・・
ま・・・・まぁ、いいけどね・・・・。
しかも、旅立ちのときに持たされたお金は・・・何と銅貨一枚。
・・・・・どないしろっていうのよ・・・・
そんなこんなで仕方がないので、趣味と実益とそしてストレス発散をかねて。
盗賊いじめ・・・・もとい退治にと出かけ。
当面の資金をかねてそれと、彼らが二度と盗賊などをしないように。
そこにいた盗賊さんたちのみぐるみすべて剥ぎ取って。
魔力の縄でしばって転がしてきておいたのが数分前。
奪った・・・とと、没収したお宝さんの数々を背中に背負いつつ。
山の中を進んでいるといきなりのこの土砂降りである。

ドンガラガッシャン!
ピシャァァァァン!!!

あたりから響いてくるのは・・・雷の音。
・・・・うーん、やばいわね。
「どこか・・・・、雨宿りできるような場所は・・・・」
そうは思うがこのあたり・・・洞窟といった場所もなく。
ただ無意味に木々が広がるのみ。
そんなことをつぶやきつつ道なき道をゆくことしばし。
ふと視界が開け、
「・・・・あれ?きゃぁぁ!ラッキーv」
そこにあったのはなぜかこんな山奥だというのに。
かなり寂れてはいるものの確かにどうやら民家らしきもの。
急いでそこに駆け込んでゆくあたし。
近くまでゆくと、そこには。
【森の憩い】と書かれている看板が。
・・・・ど〜やらここはこんな山奥だというのに俗にいう山奥の宿。
といったところらしい、うーん、やっぱり日ごろの行いがいいからよね。
そんなことをおもいつつ。
門をくぐる。

「すいませぇぇぇん!」
声をかけることしばし。
シィィィン・・・・。
誰もいないのかな?
うーん、確かに・・・でもちょっとは手入れくらいしてもいいでしょうに・・・・。
みれば庭などもかなり草が生い茂り、人の手がここ数年は入ってない様子。
「すいません、ごめんください!」
さらにドンドンとドアをたたくと。
パッ。
とある小さな明かりがともる。
何だ、人いるんじゃないのよ。
ガララ・・・・。
そんなことを思っているとやがて開かれる扉。

出てきたのはかなり色白の美人さん。
着物姿がにあってるぞ、おい。
出てきた女性はしばしあたしを眺めて目をしばたきつつも。
「まあまぁ、こんな雨の中、どうされました?」
どこか?と違和感を感じるがま、気のせいであろう。
「すいません、山を越えているとこの雨で。一晩とめてもらえません?ここ・・・宿ですよね?」
そういうあたしのその言葉に。
「え・・・ええ、でも今は宿としては機能してないですけど。
  ゆえに手入れが行き届いていませんが。困ったときはお互い様です。どうぞ?」
そういいつつ家の中にと招きいれてくれるその女性。
やれやれ、これで今晩は・・・ま、こんな状態だし。
ぬくぬくの布団とかではないだろうけど。
とりあえず雨にぬれたり野宿をする心配はなくなったというわけで。
促されるままに宿にと入るあたし。

「・・・・あの?本気で手入れ・・・してないんですか?」
ぎしぎしとなる廊下は今にもはっきりいって朽ちかけ寸前。
・・・しかも天井には大きな黄金蜘蛛なんかが・・・・巣・・・張ってるし(汗)
う・・・うーん・・・こんなところにお金払うの・・・何か気がのらないぞ・・あたしは・・・
そんなあたしの心情を悟っているのか。
「あ、お金は要りませんから、もうここ宿として機能してませんし。
  あ、お風呂はこの奥になってます。天然の露天風呂が沸いてまして。」
そういいつつ奥を指差す。
「え?温泉!?ラッキーv」
しっかし、温泉があるのにここ・・・何でこーなったんだ?
こんな山の中。
といっても一応この山は結構まともな道を行けば人通りはある。
何しろ主要たる街道のひとつなのだから。
それを少し離れた位置にある・・・・というだけで。
あたしが首をかしげて周りを見渡していると。
「実はここがこんなになったのは・・・・山賊のせいなんです。」
何でも部屋に案内されるがら聞いた話しによると。
その主要街道というのに宿はここにはここを含め街道筋にあるひとつしかなく。
当然、人の心理として温泉などにとまって山の幸で一息つきたい。
というのは当然のごとくにあるわけで。
昔はここも繁盛していたらしいが。
それをみこしたのか、はたまたここを通るのは結構お金持ちとか、
商人とかが多いせいか、山賊が住み着いたらしい。
そーいや、このあたり、今日あたしがつぶした悪人さんたちのアジトだけでも七つ以上はあったわね。
しかもかなり値打ちものとかあったから。
あたしにしかわからない場所に奪った・・・じゃなく没収した品物は隠し品として保管しておいたけど。
そんな説明をうけつつ、部屋にと通される。

「へぇ。すごい!」
どうやら昔はかなり繁盛していた、というのはうそではないらしい。
かなり広い部屋である。
装飾品とかがないのは・・・おそらくは宿を経営するうえで売り払ったのであろう。
「あ、お客さん、お食事はこちらに持ってきますので。お先にお風呂にどうぞです。」
「あ、どうも。」
先ほど案内してくれた人とは別の女性。
どうやらここの仲居さんらしいが。
そんな女性があたしにと言ってくる。
その言葉をうけて。
ぱたぱたと奥にあるという温泉にと向かうあたし。

「・・・・・すごっ!」
思わず感嘆のため息が漏れる。
確かに温泉には違いがないが。
だが、しかし、特質すべきは・・・その温泉が。
・・・・透明なガラスで覆われているのである。
うわさに聞く温室みたいな感じになっているのだ。
こ・・・・この透明なガラスを作る方法・・・かなり技術がいるらしく、しかも・・・・かなり高いんですけど?
何しろガラスというものはとことん割れやすい。
どうやら雨などが降っても外の景色が見れるようにとの配慮らしい。
見たところ特殊な物質をそのガラスに塗り、
割れにくくしている・・・というよりは何らかの魔術をかけて、
ガラスに強化耐性を持たせているのが魔道の天才でもあるこのあたしには。
少し観察すればそれは理解できる。

ゆっくりと温泉にとつかり。
そして出された食事もかなりのもの。
しかも・・・これでただ!
うーん、やっぱり日ごろの行いがいいとこうもいいことあるのよねv

雨がやむ翌日まで。
あたしはその宿でかなり満喫しほくほくしつつ次の日。
その宿を出発してゆくのであった。




「・・・・それで?」
ばくばくばく。
食事をしつつ、なぜかまたまたあたしにくっついてきている金魚の糞に、
昔の話などをしつつかるく食事をとっているあたしとナーガ。
ふと思い出してあたしが旅に出た当時に親切な宿があった。というのを話したのだが。
「うーん、あんなにいい場所がどうしてつぶれかけてたのかな?と思ってね?」
そういうあたしの言葉に。
カチャリとナイフをお皿において。
「・・・・リナ?その宿の名前、【森の憩い】に間違いないわけ?」
なぜかずいっとあたしに向かって聞いてくるナーガ。
「そうよ?そう書かれてたもん。」
そういうあたしのその言葉に。
「・・・おかしいわね?その宿は・・・十年前にすでにもう解体されてるはずだけど?」
・・・・・はい?
「確か十年前に近くにいた山賊に襲われて、で宿にいた従業員、客すべて。
  ・・・・そうね。確か百人以上だったかしら?全員惨殺されてね?
  それでそんな場所は壊そうという当時の領主の判断で壊されて。
  今あるのは・・・そこにかつて宿があったと見える、天然の温泉だけのはずだけど?」
そう説明してくるナーガのその言葉に。
「・・・・な゛!?何馬鹿なこといってるのよ!?あったわよ!」
がしゃん!
思わずテーブルに手をおくあたし。
「じゃ?今からいってみる?近いし?」
確かに、あたしたちがいる場所はその宿からほとんど離れていない場所。
「望むところよ!」


かくして。
そこにいったあたしとナーガ。

「・・・・・・う・・・・そ・・・・」
そこには・・・・・まったく宿があった痕跡すらも見当たらずに。
しかも・・・・温泉と呼べるのか、赤くどす黒い岩に囲まれたひとつのちょっとした、湯の穴が。
・・・・どうみてもこれは、たかが二年やそこらでこんなになるはずもない様子が。
「・・・・・じ・・・じゃぁ、あたしがとまった宿は・・・何だったののぉぉぉぉ!!!」
あたしの叫びがただ森の中にとこだましてゆくのであった。

「・・・・ゆうれ・・・・」
「だぁぁあ!いうなぁぁあ!そんなことは絶対にあるはずがない!そーよ!あの宿は確かにあったのよぉぉぉお!」
断じて違うにきまってる!
あ・・・あの宿そのものとかあの食事とかがすべて幽霊がもたらした仕業だったなんてぇぇぇぇ!

ナーガの言葉に否定の言葉を送り続けるあたしであった。

しっかし・・・・・たったの数年でここまでに何もなくなるものかしら?
うん、そう、そうにきまってる。
あたしは自分に言い聞かせ、そこを後にしてゆくのであった。

・・・この一件はあまり深くかんがえないようにしよっと・・・・・。



                                     −終わりー

####################################

  説明という名前のあとがき:
       薫:古い宿といったら定番でしょう。
         幽霊宿(笑)
         リナ、怖がりのために断じて認めてませんが、はい。
         リナがとまったのは・・明らかに幽霊宿です。
         つまりもうこの世には物質としてないはずの宿が。
         そこに勤めていた人たちの思いで具現化したものです。
         彼らは・・・・宿がなくなっても、そこで宿を経営しております。
         そして・・・・自分たちが死んだ原因となった雨の夜などに。
         その宿は姿を現します。
         雨で路頭に迷う旅人が、
         自分たちと同じように山賊などの被害にと会わないためです。
         リナがそこでみた仲居さんなどは・・・全員幽霊です。あしからず。
         ちなみに岩が赤黒くなっているのは・・・すべて返り血がこびりついて。
         岩に浸透しているからです。
         ・・・・風呂場での惨劇も当然・・・あったという設定です。



   
TOP     BACK    NEXT