If ~もしも…~月夜の闇に……~
「ここにいたの」
まるで何もなかったかのようにいたって気楽にいいながら部屋に入って行く私。
「おわったのか?」
そんなレナンの問いかけに、こくりと無言でうなづく私。
「……いきなり、見知らぬ男の格好をした女がやってきたのがそもそもの始まりだ……」
瀕死の重傷を負っていた数名の用心棒たち。
まだ息があるそれらのほとんどをどうにか見つけ出し回復させている今現在。
タリムの姿は未だに見つからない。
彼等から話をきいたほうが一番の近道。
というのもあり、回復させたそんな彼等一人ひとりから簡単に事情説明を求めている私達。
未だに異形のものの襲撃が行われているそんな中。
一人でやってきた男性の格好をしている女性。
当然彼等は構っている暇などはないとおもったのだが。
その女性があっさりと襲撃者たちを撃退すれば話しは別。
お金をもらい雇われている自分達より、いきなりやってきたその女性が撃退した。
ともしタリムの耳にでもはいったら、それこそ契約金を返すはめにもなりかねない。
それゆえにどうするか彼等が思案しているそんな中。
一人、そんな思案する人々とは異なり、その女性に近づいていったのがロッド。
そして…何やら、しばしロッドとその女性は話し込み。
そして……話が終わったのか、ロッドが歩き始めると同時。
悲鳴が周囲に響き渡ったとか。
そのまま、ロッドは手近にいた仲間を斬り捨てたらしい。
そして…女性はゆっくりとロッドに道を斬り開かせて屋敷の中にと進んでいったらしい。
屋敷の中にいた彼等もまた、ロッドの手にかかり命を落としたり、また重症をおったりした。
かろうじて命がたすかっているものたち。
すなわち、今私達が話しをきいているモノたちは女性が屋敷を後にしたあと。
ロッドから逃げようとして隠れていたのをみつかり斬られたものたちだけらしい。
役目を果たそうとした人々はすべてどうやら命を落としている。
裏を返せばそういうこと。
そして……私達が男たちの案内でタリムがいたであろう。
屋敷の奥の部屋にいったときに目にしたものは……
乱れ、壊れた家財道具の散らばる中に転がる一つの物体。
紫のローブをまとう、太った男の死体……
おそらく、まちがいなくそれは紫のタリムの死体。
断言できない理由はいたって明白。
その死体には…首がなかったのである…
生き残った人々もまた私達とそれをみつけ、顔面蒼白と成り果てていたりするが。
そして…唯一。
こちらの考えを肯定するかのごとくに、
「……あの人はみたことがある。たしか…あれが白のハルシフォムのはずだ……」
一人の生き残りが目にしていた、屋敷にきたという女性。
その女性の姿に見覚えがあったらしく、がたがたと震えながらも答えてくる。
「…つまりは……」
つまり、ハルシフォムはレナンとウィルとルルちゃんによってこの屋敷の前までやってきて、別れたのち。
この屋敷の中にはいって…そして……
「それで?その白のハルシフォムはどこに?」
私達がきたときにはすでに姿はみえなかった。
かろうじて命を永らえた男たちもまた隠れていたがゆえにそこまでは詳しくはないらしい。
が、しかし。
「…おそらく、家にもどったんだろう。作り物の娘が待っている、家に……」
…作り物の娘。
その台詞に思わず眉を潜める。
「……それって……」
「以前。俺の知り合いがハルシフォムの屋敷に勤めていたときに聞いた話だ。
…ハルシフォムの娘、ルビアはハルシフォムの実験によって命をおとしたらしい。
だがしかし、ハルシォムは娘の
死んだ娘の脳を使ったらしい。…と。それより先は詳しくはきいてないが。
何しろその知り合いはしばらくして行方不明になったからな……」
一人の男の言葉で何となく視界が開けたように思考にかかっていたもやが開けてゆく。
「……まさか……」
一番、魔道士としてやってはいけないこと。
不死の探求…以上に、死者の生き返り。
もし、それをそのハルシフォム評議長が願っていたとすれば……
「つじつまはあいますわね。おそらくそれで魔族と契約したのでしょう」
ルルちゃんも同じ考えにいたったらしく、こくりとこちらの表情をみつつもうなづいてくる。
「…とにかく。一度ハルシフォムさんと話す必要がありますね」
ウィルが顔色もわるくぽそりとつぶやく。
彼とて信じたくないのだろう。
自分が助けたとおもっていた人物がこのような事態を引き起こした元凶であった。
というその事実を。
とりあえず…私達は後始末を彼等に任せ、全ての決着をつけるべく。
ハルシフォムの屋敷にむけて向かってゆく。
すでに外は真夜中。
空気がやけに重く感じるのは気のせいではないであろう。
だがしかし、屋敷の中にいるよりは外をあるいていたほうが気が楽といえば楽である。
何しろ外ではあのむせかえるような血の臭いがしないのだから。
言葉すくなに夜道を歩きながらも、迷い無くハルシフォムの屋敷にとむかってゆく。
「…で。どうします?」
真夜中である。
しかも、相手のほうには魔族がいることは請け負い。
ハルシフォムの屋敷の前にたどりつき、ひとまず軽い作戦会議。
庭にはいるはずの警備担当の人々の姿すらみえない。
とりあえずぐるりぐるりと丹念に家の周囲を確認し、入りやすそうなところを物色する。
手入れのよく行き届いた庭先。
夜鳥の声が低く周囲に響き渡っている。
「ここくらい。かな?」
地下室の明り取りの小さな小窓。
むろんそれほど大きなものでは何にしろ、少し手を加えれば全員が通れるくらいにはなりそうである。
回りの桟をどうにかすれば全員そのまま屋敷の中に入り込めそうだ。
「あ。これなら私にもできそうですわ」
そんなこちらの思惑が伝わったらしく、それをちらりとみてララちゃんがにこやかにいい、
そしてやおら腰の剣を引き抜き、かるく刃を一凪ぎする。
闇に閃く一筋の銀光。
キッン。
そのまま静かに再び剣を収めるララ。
「?ララさん?何をしたんですか?」
そんなララに首をかしげながらウィルが問いかける。
「なるほど。たしかにこれなら……」
ルルちゃんもまた感心しながらも、今ララちゃんが斬った小窓の桟にと手をかけてくいっと軽くひっぱる。
くぽんっ。
それとともに、小さな音をたてて窓は回りの桟ごとひっこぬける。
「まあ、ララの腕なら音を立てずに斬ることは可能だろうし。さ、いくぞ」
リナンもレナンも昔、ルナさんに音を立てずにモノを斬る特訓をさせられてはいるが。
おもうように上手にできずに死ぬ目をみたことがあるのはここだけの話。
ひとしきり感心しているウィルをそのままに、私達はその窓から屋敷の中にと入ってゆく。
窓から漏れている細い月の明かりのみがこの場にある唯一の光源。
下手に呪文を使い明かりを確保でもしてあいてに見つかってはもともこもない。
それゆえに、闇に目をならしながらも屋敷の中を進んでゆく。
闇夜にも目を慣らすという姉ちゃんの訓練がまさかこんなところで役にたとうとは。
いや、まあ盗賊退治をするときにもかなり役立ってはいるにはいるが。
回りに気をつけながらも進んでゆく。
壁にはりつけてある大きなタペストリー。
そこに大きな木のテーブルが一つおかれてはいるが、テーブルの上にも下にも何もモノはおかれていない。
ということは、即ち、ごく最近に片付けられたのか、そうでなければ頻繁に使われているかのどちらか。
そのままつかつかとその壁にかけられているタペストリーのところにいきそのままそれを引っぺがす。
壁をなでるように手を這わせると、指先にこつんと小さな感触が。
よくよく視線を凝らしてみれば、それはちょっとした扉の形を成していたりする。
よっしっゃ!
ビンゴ!
「隠し部屋。ですか」
「まあ。魔道士の家にこういうものがあるのは珍しくないですし」
それをみて感心したようにつぶやくウィルに、続けざまにそんなウィルにこたえているルルちゃん。
「たしかに。うちにもよくありますよ。城を抜け出すのに重宝してますし」
「…いや、それとこれとは違うような気がひしひしとするんだが……」
何やらどこかかなり論点がずれているウィルの台詞に突っ込みをいれているリナン。
セイルーンのような大きな城の中においては確かに隠しの避難通路などがいくつもあってもおかしくない。
というかないほうがはっきりいっておかしいし。
魔道士は大抵何かしらの研究をしていることが少なくない。
まあ、中には他人の研究を盗んで自分のものにしてしまう。
というたわけた魔道士も一時は結構いたりした。
それゆえに、そういったことを防ぐためにも魔道士たちは自分の家や研究所に、
それぞれ隠し部屋を作り、その中でモクモクと研究にふける。
という何とも不健康きわまる構図が出来上がっていたりするのが今の実状。
まあ、おおっぴらにそういった研究施設を衆目にさらするのもどうかとはおもうが。
「…開閉装置は…あ、あった」
こういう場合、隠されている開閉装置のありかなどは大抵決まっている。
横にある本棚に一つだけ不自然な置物が。
それを軽く手前にひっばると同時。
がこっん。
音がしてゆっくりと扉が横にとすべるように開き、その先に続く長い廊下をさらけ出す。
「とにかく。いってみるしかない。ということですわね」
ルルちゃんが周囲を確認しながらも、そっとその中に一歩足を踏み入れる。
それに続いて私達もまた、その壁の向こうの廊下にと足を踏み入れる。
天井と床が淡い光を放っている。
一瞬洞窟なんかに生えているヒカリゴケを植えつけているのかともおもったが、
よくよくみればどうもそうではない。
どうやら土壁に使う石の中にヒカリゴケを混ぜて壁や床を構成してつかっているらしい。
そのまま中にはいってゆくと、今度は扉を閉めるための装置をみつけそれで扉を閉めておく。
タペストリーは外したままだが…まあ、気づかれたら気づかれたときである。
道は思っていたよりも遥かにながく、延々と私達は足音を殺して廊下を進んでゆく。
二度目に角を曲がってしばらく進んでゆくと、そこでようやく道は終わりをみせる。
そしてその突き当たりの右側に観音開きの扉が一つ。
どうやら鍵はかかっていないようだ。
中に人の気配はないとおもったが、
「?リナン?中に何か…いますけど。でも、これは……」
ララちゃんが扉の前で少し足をとめすこし顔をしかめて話しかけてくる。
「?気配はないですけど?」
そんなララちゃんの台詞にルルちゃんがいい。
「いや小さいけど何かの気配がするわよ?」
私がいい。
「?とにかく、あけてみましょう」
いってそのままウィルが扉に手をかけてぎいっと扉を左右に開く。
大きく開かれた扉の奥の部屋の中をみて、
『――なっ!?』
私達はそのばにしばし硬直する。
広い。
広大、といってもよさそうなほどの広い部屋。
その死ツン意に天井近くまで、所狭しと並べ立てられている大小様々のクリスタルの水槽。
そして、ありとあらゆる魔道の実験機材。
しかし、当然私達が驚いたのはそれらに対してではない。
手近に並んでいる大きな水槽。
そこには体に無数の棘を生やしている紫のウロコをもっている狼もどき。
さらには何やらみたことがあるような大男たち。
いうまでもなく、タリム邸を襲ってきた刺客達である。
それらが『生命の水』――生命活動に必要な成分を含んだ培養液の中で、体を丸めて静かに眠っている。
「…これは……」
「どうやら。タリム邸にしかけてきたのと同じ素体のようですね」
それらをみてつぶやくウィルに、淡々と状況を分析してさらっといっているルルちゃん。
「つまり。あれもハルシフォムの思惑の一つ。ということか……」
てっきり、デイミアが送って来た刺客だとこちらはおもっていたが。
どうやら、ハルシフォムという人物、舐めてかかると面倒な人物のようである。
そのまま、立ち並ぶ水槽に視線をはりつせたまま、部屋の奥にと進んでゆく。
そこはさながら、
ルルちゃんがかなり顔をしかめているのは仕方がないことであろう。
ルルちゃんとてレゾに
翼ある毒蛇、虫のような足をもつ肉食魚。
果ては竜とトロルのハーフ、などという物騒なことこのうえない代物までそろっている。
以前、リナンやレナンとヒドラを掛け合わせた
とかいってたとんでもないやつがいたのをふと思い出すが。
そ~いや、あのディオルが作り出したあの十人の彼女はどうしたんだろうか?
…あまり深く考えまい。
ここにいる全ての
全てが戦闘向きの
と。
「――ん?おお。誰かとおもえば。リナン殿たちではないか――」
唐突に後ろのほうからくぐもった声が聞こえてくる。
とっさに振り向く私達であるが、そこに人の姿は見当たらない。
が。
「…リナン。あれ……」
先にどうやら声がどこから発せられているのか気づいたらしく、ララちゃんが静かに一点を指差しながら、
私達に対してつぶやくようにいってくる。
そんなララちゃんの指差した方向に視線をむけてみれば…
そこには。
「――何だってこんなところにいるんじゃ?」
くぐもってはいるが、聞き覚えのある声。
最初、それが一体誰なのか頭で理解するのに一瞬の時を要する。
というか信じたくなかった。
というほうが正解なのかもしれないが。
ウィルにいたってはその場にぺたん、とその姿をみてへたり込んでいたりする。
「……な……」
さすがのルルちゃんですら驚愕したように絶句し声を出せないでいるようだ。
「まあ…驚くのもむりのないことじゃわな……」
などと、私達が見ている先でそれはいってくる。
ちょっと大きめの金魚蜂ほどの水槽。
水槽一杯に満たされている生命の水。
そして床にと伸びている幾本ものチューブがその中にあるものとつながっていたりする。
そう。
まだ生きている、紫のタリムの生首と……
「…ミスター・タリム……」
静かなリナンの問いかけに、それはなぜか胴体についていたときよりも起用にウィンクしてみせ、
「そう。まぎれもなくわしじゃよ。まあ大分見栄えはかわったじゃろうがの。
まちいがいなく紫のタリム、本人じゃ」
「頭だけになっても生きていられるんだ……」
どこか違うところで感心しているララちゃん。
つうか問題はそこじゃないっ!
といつもの私なら突っ込みをいれたいところだが、今はそれどころではない。
「いやいや。まさかあのハルシフォムの封印を解くことができるとはの。
きちんとお前さんがたにあらかじめ全てを説明していなかったわしの落ち度じゃがの。
きちんとおまえさん達を信用して、
本当の事情を説明しておけばこんなことにはならなかったじゃろうが。
あんたたちの中の誰があのハルシフォムを開放したのか、それはもうどうでもいいことじゃ」
どこか自嘲気味にいってくるそれ。
まあ、レナンとウィルとルルちゃんの話によれば、タリムとデイミアが共謀してハルシフォム評議長を封じ込めた。
ということらしかったが。
「わしとデイミアの二人であやつを封じ込めた。それはたしかに本当じゃ。間違いはない。
じゃがの、評議長が邪魔、というだけでなぜ封じ込めたか、というのは……」
そういってくるそれの台詞に、しばし沈黙し、
「つまり。殺そうにも殺せなかった。…かりそめの不死をすでに手に入れていた。…違います?」
出てきた魔族たち二体。
魔族は本来、契約を交わしたものか、自分より強いものにしか従わない。
おそらくは、契約を交わしている魔族はあのセイグラムという魔族のはずである。
そんなリナンの静かな答えに、
「ほう。さすがじゃの。さすがはあのリナン=インバースじゃ。
そう。ハルシフォムのやつがやっていたのは、『生命の研究』と。
あいまいにわしはあんたたちに説明したが。あれのやっていたのは『不死の探求』じゃよ。
そして…あやつはすでにかりそめの不死を手に入れていた」
そこまでいってかるく目をつぶり、
「デイミアのやつも不死の研究はやってはおった。
デイミアを福評議長につけたのもハルシフォムのやつじゃからの。
おさらく自分の研究をサポートするなら福評議長にしてやる。
などという裏取引でもしおったんじゃろう。
デイミアの強力な魔力と、常人とは違った発想が、あるいは何らかの糸口を見出せるかもしれぬ。
そうおもったんじゃろうな。じゃが、思惑にはずれてデイミアのやつは愚にもつかん、
気色悪い
そんなこんなで二人はだんだん互いを疎ましくおもうようになってきたらしい。
そんなときじゃった。わしがハルシフォムの研究のことをしったのは……」
淡々と説明する首のみのタリムの説明に、
「いったい……」
かすれる声で問いかけているウィル。
どうやら未だにショックが抜けてないらしい。
まあ気持ちはわかるが。
「つまり。どういうことですの?」
戸惑いながらもそれでいてどうにか平常心を保ちながら問いかけるルルちゃんの台詞に、
「ハルシフォムのやつの研究は表向きは長寿延命。健康保持の研究。などとはいっておったがの。
ある日、一人の魔道士がわしのところに転がり込んできての……
ハルシフォムの研究を盗むために、屋敷に忍び込み。
そこでとんでもないものをみた。というんじゃ。
つまり…やつのやっているのは、健康法などではなく永遠の命の探求だった、とな。
あやつは不死の研究がもっとも盛んじゃったころ…何百年か前のことかの。
そのころの書物をどうやってか手にいれ。
そこに記された様々なことを自分なりに研究、実験していたらしい」
水の中で淡々と語ってくるタリムの首。
……何やら嫌な予感がするのは気のせいだろうか?
「実験?まさか……」
かつてのとある国ぐるみの実験が頭をよぎる。
あれはまあ結果的に叩き潰すことができたが。
そんな私の台詞にしばし目を閉じ、そして静かに。
「……そのころ、街では妙な失踪事件が連続していての……
わかるじゃろう?それをきいてわしが何を想像したか……」
あうっ。
「つまり…それって……」
自分が開放したハルシフォムがなぜ閉じ込められていたのか。
そのおおむねともいえる事情をきき、恐る恐る問いかけているウィル。
「つまり。ハルシフォム評議長は、街の人たちを誘拐して。
不死の研究のための実験台にしているんじゃないか。ということですね……
当然、確認はしたんでしょう?」
「むろんじゃ。そいつの話ではいろんな人間が実験材料に使われていた。
ということじゃったんじゃが。その話だけでは使われていたのが失踪した住民なのか。
はたまたそういった実験のために造り出された人造人間(ホムンクルス)なのかはわからん。
そこでわしはあやつの屋敷に密偵を送った。結果は…思っていたとおりじゃった」
住人ならまずいが、
という意識も私としてはどうかとおもうが。
『――なっ……』
タリムの首から語られたその言葉に絶句しているルルちゃんとウィル。
「いや。それ以上に悪いものじゃった。というしかないんじゃがの。
そのときすでにあやつはかりそめの不死を手に入れておったのじゃよ。
あやつの娘が以前、研究に巻き込まれて死亡し…
あやつは娘を生き返らせようと研究にのめりこんでいた。おそらく、全てはそのためだったんじゃろう」
そういえば、タリムの屋敷でかろうじて息があった用心棒の一人がそんなことをいっていたような。
「…ってまってください。つまり…あのハルシフォム評議長は…すでに契約をしていた。というのですか?」
ルルちゃんがその言葉の意味を理解して、恐る恐るタリムの首にと問いかけている。
「契約?」
意味がよくわかっていないらしいウィルが首を横にかしげながらつぶやいてるけど。
「つまり…魔族との契約」
「簡単に言えば、かりそめの不死…よ」
とつぶやく私とリナン。
-続く?-