まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。
レゾ=シャプラニグドゥ編終わりです。
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If ~もしも…~新たな明日に向かって…~
望んでいたのは…何よりも。
たった一人のこった大切な彼女の幸せ……
私は…彼女を殺すために…いるのでは…ない!
肉親を思う情、というのは、何よりも強く。
そしてまた、何ものにも切れない絆を持つ。
とはよくいったもの。
魔王にほぼ精神をのっとられていたものの、リナンの言葉。
すなわち、『肉親であるルルをも殺すのか。』
という問いかけに、その意識を向上させているレゾ。
『馬鹿な!?邪魔をするな!?邪魔を……』
力が思うように振るえない。
そもそもは、まだ、この器は、レゾのものであるからして。
人の心の中にと封じられし魔王。
それは、人の心の強さにて、封じられている。
だが、人の心とは強いようでもろい。
そう、今回のように……
欲望などに身を任せ…その結果自滅する人間なども多々といる。
だが。
ほとんどの人間において……肉親が絡むと信じられないような力を発揮する。
そう、光と闇の世界をも乗り越えるようなそんな力を。
それはわかっている。
ただ、自分は闇に属しているだけなのだから。
だがしかし。
かといって、このまま大人しくいいようにされていては彼とて彼の思惑がある。
だがしかし。
「……いいえ……魔王……あなたは私と……ルルティー…すいませんでした……幸せに……
あなたの…役に……少しでも……サイラーグの…研究室に……実験資料が……」
『邪魔をするな!!!!このままでは貴様も我も!』
目も開けられない、何やらすざましい力の波動。
それは、リナンが放っている術によるもの。
このまま力に飲みこまれれば……間違いなく、その先に待っているものは……
黒い力がうずまく中、ルルにと聞こえるレゾの声。
それは、かつてまだ幼いときによく聞いていた……どこか優しい曽祖父の声。
「……お爺……様?」
ルルがつぶやくのと同時。
ドグワァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
辺りを……黒い力と紅い力が埋め尽くしてゆく………
重破斬(ギガスレイブ)。
それは、すべての母、ともいえる、金色の王(ロードオブナイトメア)の力を借りた術。
すべてを無に還す威力をもち。
逆にいえば、その力を使いこなせさえすれば、逆にすべてを再生する力をもなしえることが可能。
が、それにはかなりの魔力容量とコントロールを擁する。
だが、その力の使い方を間違えれば、その身自ら、は例外でもなく。
下手をすれば、この星……いや、銀河系そのものすらもすべてを無にと還してしまう、そんな術。
この星に住んでいる人々は、
まだ、銀河、や星、といった言葉すらもあまりというか、まったく身近なものではないにしろ。
まだ、この惑星の文明は発展途中。
いまだ、世界は平ら、と信じているのが多数、といったこの世界。
そんな中で……この術の属性と特徴をきちんと把握し……使いこなすなど……
それは、リナンだからこそできること。レナンとエリーもだが
彼らはそういった知識の根本的なところは、
物心ついたころからルナやユリウスより嫌、というほどに叩き込まれているがゆえに。
チチ……
空を覆っていた雲がゆっくりと晴れてゆく。
そして……
「……う……」
ゆっくりと目を見開く。
目に入ったのは…抜けるような青空。
そして。
『……まさか人間にここまでのことができるとは………貴様らとレゾに免じてこの場はひこう……』
などといいつつも、レゾであった物体がゆっくりと崩れてゆく様子。
ぼろぼろと、まるで土くれのようにと土にと還ってゆく様子。
「……いったい?」
爆風に飛ばされ、一瞬気を失っていたウィルもまた目を開く。
ウィルは飛ばされたルルをその身で受け止め、一緒くたにと飛ばされていたのであるが。
「お、おい!?リナン!?それ!?その髪!?」
ふと。
少し先にとひざをついているリナンに気づき。
声をかけているララ。
ふと、そんなララの声に我に戻れば。
膝をついているリナンの髪は真っ白にと変わり果てている。
魔力を一気に使い果たしたときに生じる現象で。
ある程度、力が元に戻れば復活する。
あの術は、精神力、そしてまた生命力のすべてをもってしてコントロールを成し。
安定させなければ、危険すぎるほどの術。
まあ、この術を使ったのも初めてではないので、その力加減というのもは多少わかってはいるが。
確か以前のときには、入り江を無の空間にしたり。
また、実家の近くの山を一つ、まるまるその場を無の空間にしてしまったり……
という経験をリナンは持っている。
そんなララの言葉に。
ゆっくりと、視線をめぐらせる。
見れば、どうにか多少、疲れているようではあるが。
見た目、大きな怪我らしきモノもしていない五人の姿が。
戦いの中、すでに魔王によって消されてしまった二人の姿は見えないが。
「リナンさん!?」
そんなララの言葉に気づいて思わず目を丸く見開いているウィル。
そしてまた。
「……いったい何がおこったんですの?」
何がどうなったのか、まったくわからずに、ただただつぶやくルル。
「無理するわね。リナン。」
呆れたように言うエリー。
「無事で良かったな。兄ちゃん。」
安心して言うレナン。
「……どうにか勝てたか……みんな、大丈夫か?」
そんなことをつぶやきつつも、ゆっくりと立ち上がり気遣いの言葉をかけるリナンに対し。
「……何がどうなったのか説明してもらえますか?」
リナンに問いかけているウィルの姿が。
しばし、その場において見受けられてゆく………
「まあ、簡単にいえば、魔王より上の存在達の頂点に立つ存在。その存在の力を借りた術を使ったわけだけど……
あ、ララ、悪いけど、しばしこいつ使い物にならなくなってるみたいだからよろしく。」
いって、柄だけとなっている剣のそれをララにと手渡すリナン。
「あ。ほんとだ。何か気配が死んでる。」
それを手渡され、そんなことを言っているララではあるが。
その柄においては、一応人工的なものであるがゆえに。
本体がたとえ死んでいたとして、物質化する力を失っていようとも。
その形は失われることはない。
「「……いや、気配が死んでる……って……」」
そんなララの言葉に思わず突っ込んでいるウィルとルル。
「ほっ、私の剣じゃなくて良かった。」
リナンとララの言葉を聴いて安心した様に言うエリー。
「まあ、それはそうと。とにかく。すべての存在の頂点に立つものの力。
その力を借りた術を魔王に放ったんだ。あれはかなり魔力を消耗するし、精神力もかなり使うから。
こんな現象が起こるわけだが……ひとまずは、どうにか問題は解決したわけ…で。
で?これから、二人ともどうするんだ?」
やんわりと、話の矛先を変えているリナンの言葉。
その誘導に気づくこともなく。
「私はまだリナンさんたちと旅を共にしたいとおもいます。何か正義が私を呼んでます!」
何やら一人でそんなことをいっているウィルをそのままに。
「…そうですね…私は……」
幻聴なのか、はたまた、実際に聞こえたのか……
リナンが力を放ったときに聞こえた…【レゾ】の声。
サイラーグの研究所に実験試料がある、というその声。
おそらくは。
自分の体を元に戻す方法が何かしら書かれているのかもしれない。
そんなことを思いつつも。
「私は……この体を元に戻すべく旅をしようとおもいます。
レゾの最後の言葉もありますことですし。…幻聴かも知れませんが。」
だけど、信じたい。
あのときのレゾは、昔の優しい曽祖父に戻っていた。
ということを。
「なら、ルルさんも私たちと一緒にいきましょう!人数が多いほうが楽しいですし!」
「いえあの…ご迷惑では?」
何やらいってくるルルに対し。
「迷惑どころか大歓迎、といいたいかも。なーんか私の周り、面倒ごとがころがりこんでくるし。
とりあえず、参考になるかわからないけど、姉ちゃんやエリーの兄さんから聞いてる情報に。
いくつか、写本の位置とかも頭に入ってるし。ルルがよければ別にいいけど?」
さらり。
と何やらある意味ではとんでもないことをいっているリナン。
そんなリナンの言葉に。
「ええ!?リナンさん、あの写本の場所とかしってるんですか!?」
何なら驚いているウィルに。
「な゛!?」
こちらもまた絶句しているルル。
「いや、それくらいで驚かれても……」
アレの入り口もしっるんだが……
そんなことをも思うものの。
だがしかし。
滅多と人に教えるな。という姉の言葉もあるもので。
その言葉は飲み込むリナン。
「そうよ。私とレナンも知ってるわよ。写本の在り処。」
誤魔化す様に行っているエリー
「……で?どうするんだ?」
腕を組み…問いかけるレナンに対し。
「…そうですわね。それではお言葉に甘えさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「これで、私たち正義の仲良し六人組みのたびが始まるのですね!」
「「「「「……・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」
一人、自分の世界に入ってゆくウィルをみつつ。
互いに顔を見合し、無言になっているリナン、レナン、エリー、ルル、そしてララの五人。
そして……
彼らは、とりあえず。
今日のところはどこかで宿をとり。
明日からサイラーグにと目的地を定めて行動することに決定してゆく。
彼らの行く手に待ち受けているものは………
……それは、今の彼らのダレにもわからない……
-続く?-
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あとがき:
一巻分終了です。