スレイヤーズSTS プロローグ
いったいどれだけの時間、同じ場所をさまよい続けているのだろうか?
意志を持った何者でもない、姿がなし得ないそれは思ったかもしれない。
思わなかったかもしれない。
それは暗い闇の中にいた。
闇は嫌いではない。むしろ力がみなぎる。
それはいつもの姿とはかけ離れたほどに弱々しい。
かつては破壊的な力が体中みち満ちていた。
それは当時の姿と今の姿を思い比べると突然苛立ち始めた──
あれからさらにどのぐらいの時を得たのだろう。
それは、初めて時間と言う物に興味を示した。
自分には時という物はあまりにも意味が無いはずなのに。
あの時より力は随分戻ったようだ。それでも本来の姿にはほど遠い。
それは少し苛立っていた。
それはあの時の苛立ちほど激しくはない。
けど、苛立っているのは間違いなかった──
苛立ちは完全になくなっていた時、ふと、それは気付いた。
闇の中に影が覆った。光という影が。
光は苦手だ。けど、嫌いじゃない。
かつては光は嫌いだった。あれを思い出す。
だが今は、それの半分はあれであるために嫌いじゃなかった。
光が強くなった。
それは光の先をみた──
神でもなく、魔でもない者──
小さき者、命ある者──
それら数多くが休んでいた。
どれもこれも同じ者に見えた。
あの時のあれらとは全然違う。
同じ、小さき者、命ある者、なのにだ。
あれらは言っていた──
──?──
なんと言っていた?
それは何者だ?
わからない。
それであり、それでない者が見て聞いたように思う。
覚えていない。
それなら意味のない事だ。
そう思うとそれはその光から離れた──
離れようとした──
だが、それはその先にいる者たちが気になった。
消えていた苛立ちが、ぶり返してきた。
それは動いた光へ。
出ていこうとしたその世界へ。
その世界がどのような世界なのかそれは知らない。
でも、出ていきたかった。
そして壊してみたくなった──
そして──その世界に闇が覚醒した──