パチパチパチ…… 焚き火の音が周囲に響く。 とりあえず、アンリがいうように、近くの大陸の沿岸の砂浜にと船は到着した。 ニルファが海底から引き上げたという宝箱から人々に多少のお金もいきわたった。 各自、それぞれ逃げてくれるだろう。 オレたちは一緒にいると目立つし。 かといって行き先を変更する気もない。 ゆえに彼等とは船を降りてから別れたし。 「どうやら。今のところ追っ手はいないみたいですよ~」 周囲を見回っていたヨザックが戻って言ってくる。 船から降りて一時間ばかり。 歩いてゆく先にとあった海岸沿いの岩肌の、その中の無数にとある洞窟の一つ。 ここなら見つかることはないだろう。 ということで。 今日はひとまずここで休むことにしているオレ達一行。 火はキャンプで培われた技術もあり結構簡単についたし。 あと、フレイが寒くないようにとこの洞窟内部の気温を上げてくれていたりもする。 まさに至れりつくせり…だとおもう。 本っ当~に、ど~して、大精霊っていったら普通すごい存在でしょ? 契約交わしたりして手伝ってもらう…とかでもないし。 これ。 な~んか、みんなあからさまにオレやアンリに敬意をもって接してきているような…… ……不思議なことに…… 「とにかく。もう少ししたらフォンビーレフェルト卿たちもこっちにつくだろうから……」 「―――…げっ!?」 ずざざっ! アンリの言葉に思わず座ったままでビタンっと岩壁に思わず張り付いてしまう。 「ヴ…ヴォルフラムも…くるの?…つ~か!絶対に嫌だっ! こ…こんな姿みたら何をいわれることかぁぁ~~!!!」 オレの血を吐くようなその叫びに、 「あら~。そういえばそうですね。今の陛下の姿だと押し切りそうですね~」 何やら面白おかしそうにヨザックがそんなことをいってくる。 「うわぁぁ~!ヴォルフがくるまでにどうにかして男にもどんないとぉぉ! ってどうやったら元に戻れるのかすらもオレわかんないしぃ~!!」 誰かたすけて…いや、まじで…… そんなオレに対して、よざっくがぽんっと肩をたたきながらにこやかに微笑み、 「ま、あきらめも肝心ですよ?」 などといってくるし。 「いやだっていうのっ!」 そんなオレ達のやり取りというかオレの叫びをきき、 「…え?へい…?それに男…って…え?」 戸惑いながらも何やらつぶやいてきているフリンさん。 そ~いえば、フリンさんにはオレのこと詳しく説明してなかったっけ? だけど、今のオレはそれらを説明する余裕がない。 どうにかして解決策を考え出さないと…こ…このままだと… 下手するとおしきられていきなり結婚…というのもありえそうで怖い…… どうもオレの意見って…却下されそうな気がひしひしとするし……うううっ…… 一人頭をかかえてうなるオレにとかわり、 「あ。ユーリはどっちにでもなれるんですよ。男にでも女にでも。 といっても今まで十六年間ずっと男の姿だったんですけどね。
あるきっかけで力を使いすぎて女の子の姿になっちゃってるというだけなんですよ。 でも、さっすがソフィアさんの血だよね~。うんうん」 フリンさんに説明しつつ、一人しみじみといっているアンリ。 ……って…… 「アンリっ!そういう問題じゃいだろうがっ!というか、うわ~!!どうしよ!?」 叫びつつも、ふとあるとことに今更ながらに気づき、 「は!?まさか、あいつからいくらオレが礼儀作法を知らなくて、 間違って求婚行為をしゃったの断らないって、 まさかオレが男にも女にもなれるの知ってるから!?」 まさか!?うわ~!!そういや、ツェリ様もソフィア母さんの子だから問題ない。 とかいってたような~!?」 そのことに今さらながらにきづいてもはや頭の中は完全にパニック状態。 「求婚行為…って…それに…男にも…女にもなれる…?そんな人なんて……」 そんなオレとは対照的に戸惑い気味のフリンさん。 「天空人はそれが当たり前ですから。それよりユーリ。騒いだら追っ手にみつかるよ~?」 「アンリ!お前ならオレを元にもどせるんじゃぁ!?」 「無理。この前もいったけど。そもそもの原因は君にあるんだし。 君の体に負担がかかりすぎたから回復するために肉体が女性体になった。って。 身体の状態が全てにおいて正常に戻ったら元にもどれるよ。 そうしたら次からは自分の意思で男にも女にもなれるようになるはずだって。 しばらくは…あの力の放出量からして、その姿は一週間か二週間以上。 もしくは一ヶ月くらいは覚悟しとかないと」 「まじ!?わ~!!このさいだから!とかいわれたら嫌だぞ!?オレ!? そもそも!いくら女にもなれるっていわれても!? これって未だに悪い夢としか思えないしっ!」 コンラッドのことも気がかりな上にオレの身の上もあるいみ危機だ。 「……あの~?」 そんなオレ達に戸惑いの声をかけてきているフリンさん。 「ま、ものごころついたころからずっとユーリは男の子だったしねぇ。 ま、いいじゃん。別に今までもずっと女の子と間違われてばかりだったんだし。 それに、別に見た目もかわったわけでもないし。なるようになるよ。 いいじゃん。ランマ1/2みたいだし」 「あれは漫画だから面白いんだってばっ!」 叫ぶオレにとにこやかにいってくるアンリだし。 こ…こいつ、完全に面白がってる…… ちらりとみればヨザックも何やら面白がっているようだ。 そして、ふと。 「あの~陛下?だから騒いだら…ちょっと外をみてきますわ」 何やらいって外にでてゆくヨザックの姿が…… ともあれ、しばしアンリと言い争っていると、しばらくしてヨザックが戻ってきて。 「どうやら今のところ大丈夫そうですけど。 何か向こうのほうに気配を感じます。移動したほうがよさそうっすよ?」 外を気にしながらもそんなことをいってくる。 「だって。さ。ユーリ。とりあえず火を消して。もう少し先にいくよ? フォンビーレフェルト卿のことはそのときになればどうにかなるよ。さ。急いで」 「……アンリ、人事だとおもってないか?おもいっきり?」 「まっさか~」 パタパタとオレの問いかけに手を振りつついってくるアンリの顔は笑っている。 …絶対にこいつ間違いなくたのしんでる…… 「ま。ともかく。今はユーリは何も考えないほうがいいよ。あまり気を高ぶらせたりしたら危険だ。 色々な意味でね。生まれながらの肉体なら負担はなかっただろうけど。 今のユーリの身体は普通の人とほとんど代わり映えがない。 下手に翼でもだしたらそれこそ奴等に気づかれ…狙われる」 それまでの口調から打って変わって真剣そのものの表情でそんなことをいってくるアンリ。 ? 「…やつら?」 そんなオレの問いかけは、 「さ。早く。何か急がないとやばそうだ」 ヨザックが促してくるその声にもののみごとに無視される。 仕方ない。 後からアンリに聞くとしよう。 とりあえず、そのままその場の後片付けをして外にと出てゆくオレ達一行。 すでに外は満点の星空が広がっている。
戻る →BACK・・・ →NEXT・・・
|