たたたたた。
「わぁい。また勝った!」
ここは、聖地。
とはいえ、確かに限られた人々しかすんでいない。
というものの、一応普通の人も多少は生活している。
この聖地に勤めている人々の家族が。
ゆえにこそ。
許可を取っているいくつかの店などが。
聖地の中心地でもある、聖殿を望むその空間。
そこより少し離れた場所にと、ちょっとした店並を見せている。
とはいえ。
ここは聖地。
聖地の外、つまりは外界のようににぎわっているわけでもなく。
主にそれらの製品を取り扱っているのは。
聖地の御用商人を勤めているとある財閥の関係にあたる店などが、
必要な物資関係などは少しは取り揃えている。
つまり日常生活に差し障りのない程度には。
もっとも、守護聖である彼らが必要とするようなものは。
あまり扱っていない、というのが現状なのであるが。
たいてい守護聖たちが望む品物はほとんど取り寄せとなり。
様々な機関などを経て、それぞれの守護聖の手にと渡ることになる。
中には、星星では管理しきれないような危険な物質もまた。
守護聖たちの手により浄化、または管理されるためにと運び困れることもあるのだが。
だがしかし。
そのようなことは、確かにここに住んでいるものの。
一般の人々にとってはそれらは雲の上の出来事のようなもの。
つまりは。
聖地の業務に何かしらと携わっている家族といえども。
そこにすんでいる人々は普通の人々とは変わりがない。
外界の人々よりも恵まれているのは、この聖地には病気、というものが存在しない。
ということと。
常に穏やかな気候である、ということ。
もっとも、下手にこの地で過ごしていれば、間違いなく外の時間にと置いてけぼりにとされ。
ちょっとした時の旅人気分を絶対に味わうハメにとなるのだが…
「カケッコ早いねぇ。ミラ。」
聖地の中心地から少し外れた場所にとあるとある公園。
ここは自然に囲まれた広々とした公園であり。
ちょっとした森の小道や小川などが楽しめるようにとなっている。
ところどころに木陰にと設置されているベンチ。
それらは木の流木や倒木などを利用して作られており。
全てがリラックスできる空間にとなっている。
そして。
何も障害物のない広い草原であるがゆえに、子供たちの遊び場としては絶好な場所。
母親たちが木陰のベンチで見守るそんな中。
彼女たちの子供たちは元気よく、あたりを走り回っていたりする。
子供、というものは自分で遊びを見つける天性の才能をもっている。
今、彼らが行っているのはもっともポビュラーな【かけっこ】というもの。
「だって。最近アンジェちゃん、参加しないんだもん。」
そういいつつも。
珍しくやってきている一人の少女にと視線をむける。
いつも、というか。
聖地に新しい人たち、露店を開いている本人曰く【謎の商人さん。】
彼らがくる前まではよく遊んでいた、というのに。
いったい彼女がどこに住んでいるのかなどは。
彼らは知らない。
子供というものはすぐに仲良くなる。その相手が誰であろうとも。
その正体などを詮索することはなく。
カケッコをしていた子供たちが向けた視線の先では。
木陰の倒木で作られた、それらを少しばかり細工し綺麗にと整えられている椅子にと座っている母親たちと。
何やらにこやかに話し込んでいる金の髪の少女が一人……
「え?意見箱?」
もし何かあったらうれしいな。と思うもの何かあります?
と世間話の一環において。
さりげに住人たちの希望をリサーチしているこの少女。
ふわふわの金色の髪が太陽の光にと照らされキラリ、ときらめく。
「公園とかにおいては。よく守護聖さまがたとお会いするけど。
だけど、意見なんて恐れ多くてできないじゃない?
だったら顔が見えない意見箱みたいなものがあったら。いろいろと意見とかもできるとおもうのよ。
たとえば…この聖地は確かにいつも安定した穏やかな気候だけど。
雪景色とか紅葉とかする光景を子供たちにも見せてあげたい、とかね。」
たしかに。
ここは生活するのに不自由はない。
何しろ、ここにきて、重病であったはずの子供なども治った。という話はざらに聞く。
外界、つまり、外の世界の親族と時間が隔てられても。
親にとっては子供が第一。
体の弱い子供のためにと、子供が生まれてからこのかた。
この地で過ごしている人々も少なからずといるのもまた事実。
もっとも。
ゆっくりとこの聖地は時間が流れている、とはいえ。
一般の人々と守護聖、そして女王補佐官、女王などは、また別の時間を生きる存在ではある。
しかも、毎日のように気候が女王の力の加護により、また。
この聖地は特殊な結界と防壁にと囲まれているがゆえ。
めったとこの聖地から出ることなどもできはしない。
出るときにも必ず許可が必要なのだが。
もっとも。
大概一般の人々に関しては、いつでも出入り可能なパスのようなものが支給されてはいるものの。
そんな目の前にいるとある一人の母親の言葉に。
「……なるほど。」
少しばかりその小さな手を口にとあて、少し考え込むその少女。
金の髪に緑の瞳。
その名前は現女王と同じ、【アンジェリーク】。
母親たちや、そしてまた子供たちは彼女がどこに住んでいるのかなどは知らない。
まあ、当然であろう。
いったい誰が想像できるのであろうか。
この少女が現女王・アンジェリーク=リモージュ。
その当人である、ということを。
「意見箱かぁ…」
確かに、それいいかも。
人々の意見などを様々と聞ける手段ではあるし。
そんなことをふと思う。
そして。
そだv
チャーリーの力を借りて、ちょっとしたアンケートでもしてみましょ。
聖地に四季があったほうがいいか、どうか。
前から思っていたのは思っていたんだけど…
かつても、この聖地にも四季、というものは存在した。
それをなくしたのは、外界との時間の流れを刹那に感じた当時の守護聖。
彼らの気持ちを考えてのことに他ならない。
かつて、自分が創り出した九つの力を宿した珠。
それらにやがて意思が芽生え、そして、それは。
自らを託すにふさわしい人のところにと、その力を託した結果。
誕生したのか他ならなぬ守護聖、という存在。
サクリアの精霊、と一般には呼ばれているそれらの存在は。
常にすべての宇宙空間において、その意思は存在する。
といっても、それらは一般に知られているはずもなく。
当然であろう、何しろ守護聖ですら、その事実をあまり知らないのだからして。
そんなことをつぶやいているリモージュ。
「でも?何でそんなことを聞くの?アンジェちゃん?」
問いかける別の母親のその質問がいい終わるか否か。
ピルルルル。
リモージュの懐より何やら鳥の鳴き声のようなとある音が鳴り響く。
それは。
自分を誰かが探し始めたらなるようにと設定を施しているとある装置。
創り出したのは他ならないリモージュ自身ではあるのだが。
「あ!いっけない!そろそろ戻らないと。あ、みんな、まったね!叔母様方、ごきげんよう。」
いまだに遊んでいる子供たちと、そこにいる母親達にと挨拶し。
そのまま。
くるり。
と向きをかえ、走り出してゆくリモージュの姿を見送りつつ。
「?何か最近アンジェちゃん…忙しいみたいねぇ。」
本当、あの子どこに住んでるのかしら?」
残された母親たちはそんな会話を繰り広げてゆく光景がしばし見受けられてゆく。
「……陛下。今何とおっしゃいました?」
思わず問いかける。
何となく場違いな言葉を聞いたような。
そんな問いかけてくるロザリアのその言葉に。
「あのね。あのね。ロザリア。女王試験も新たに始まって。新たに人も増えたじゃない?
それゆえに、人々の意見を直にと聞くことができる『意見箱』というものを設置したらどうかなぁって思うのよ。
あと。期間限定でこの聖地に四季をめぐらせてみようと思うのよ。」
にこにこにこ。
ここは聖地の中にとある聖殿の更のその奥にとある女王執務室。
宇宙を統べる女王はここにて宇宙の進行状態などの報告をうけ。
また、それらに対しての指示をもだしてゆく。
ゆえに、毎日のように仕事は山ほどあるのであるが。
まあ、彼女の仕事のスピードは。
ロザリアですら驚くほどに、その外見に似合わず適切でスピーディー。
仕事を手早く済まし切り上げたリモージュ。
仕事が終わったがゆえに少し休憩しましょう。
ということになり、互いに二人にて紅茶タイムにと突入したそんな矢先のこと。
そんな爆弾発言、ともいえる台詞がリモージュの口からロザリアの耳にと投げかけられる。
「……陛下。確かに四季うんぬん、というのはまだしもとして。その意見箱、というのは何ですか!?
まったく、あなたは女王としての自覚がいつになっても備わらない、というか。
いちいち一人一人の意見まで目を通してたら、それこそあなた寝る暇もありませんことよ!?」
口は少しばかりきついが、それもすべてはリモージュの体を思いやってのこと。
「あら。誰も私だけ、つまり女王陛下への直接な意見箱、というのではないの。
ここ聖地に住まう人たちでもね。守護聖たちにいろいろと意見とかもあるとおもうのよ。
聞きたいこととか、様々な疑問とか。だけどそんなの彼らは聞けないじゃない?
だから聖殿の中の人々と一般の人々をつなぐ架け橋。そんなものを設置したいの。
人の口にと上るうわさなど、それに重要な意味が隠されている場合も多々とあることだし。
どうかしら?検討してみてくれない?ロザリア?」
にっこりと。
片手に紅茶カップをもちつつ。
微笑、目の前にと向かい合わせで座っているロザリアにと微笑みかけるリモージュのそんな姿に。
「確かに一理あるかもしれませんわね……わかりましたわ。
とりあえず守護聖たちの意見をも聞いてみますわ。……それはそうと。陛下?
意見箱のことばかりいってますけど、四季を起こす。というのはどうなってるのですの?」
「……え?ふふv」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
彼女、リモージュがこのような微笑み。
少しばかり何かを隠しているような、そんな微笑を浮かべて笑うときには。
すでに何かをして隠している証拠。
何かイヤな予感がしますわ……
そんなことを思うロザリアに。
「それは内緒♪」
にっこりと。
口元に手をあてて、にこやかにと微笑むリモージュの姿が女王執務室の中で見受けられてゆく。
「はいはい。いらっしゃぁぁぁぁぃ!」
しっかし。
陛下は太っ腹ですなぁ。
そんなことをしみじみと思う。
今朝方。
というかすでに時刻は昼近くであったのではあるが。
いきなりいつものように、
子供の姿となっている女王・アンジェリーク=リモージュが、ここ、彼が今開いている露店にとやってきて。
彼にととある頼み物をしたのは。
つい先刻のこと。
さすがに目の前にて、品物を大量にと創り出されたのにはたまげたが。
だが、女王の力は創造の力をもつかさどるがゆえに、そんなことができるのは当たり前。
ましてや、今の女王陛下はクリスタル一族の長当人なのだからして。
何があっても不思議ではない。
がやがやがや。
いつもはあまり人がにぎわっている、とはいえないそんな露店。
だがしかし。
――アンケートに答えたらもれなくクリスタルの置物プレゼント!――
というその噂というか事実を、一体全体どこでかぎつけたのか。
それを聞きつけた人々で今この店は大繁盛と化している。
中にはアンケートだけ答えて品物をもらおう、という人もいるにはいるが。
だが、たいていは、何か品物を買ってからそれからアンケートに答える。
という人がほとんど。
アンケート内容はいたって簡単。
この聖地においても『四季を見てみたい。と思う人。』といった内容なもの。
とある筋から頼まれたというこのアンケート内容は。
しかも、それに答えれば、ちょっとした手のひらサイズの何かのクリスタルの置物がもらえる。
というので、この露店は賑わいを見せている。
ちなみに、クリスタルの置物は、多種多様な種類があり。
中には。
お金を出してもいいから、まだほしい。
という人すらでてくる始末。
一番人気のシリーズは動物シリーズなど。
イルカなど、といったものも当然取り揃えており。
全種類をあつめる!と躍起になっている人も少なくはない。
だがしかし。
アンケートは一人一票まで。
ちなみに、誰かを紹介することによっても、再び無料で置物がもらえる。
その結果。
口こみが、人を呼び込み。
そして……今の現状にと至っている。
「しっかし、さすがは長。面白いことを考え付くな。
さっ。アンケートのボードはこちら。気軽に参加してくれ。」
こちらもまた。
いきなり、というかまあいつものことなので、あまり動じることなどはないにしろ。
リモージュより、彼、チャールズの手伝いをしてくれ。
と頼まれたときには何が何だかわからなかったが。
だが、いざ手伝いにきてみれば。理由は明らか。
「どうやら長はこの聖地に四季を巡らせるつもりらしいな。」
悪いことではない。
だがしかし、毎年ずっとやっていれば。
守護聖などに関しては、『自らが時の流れから取り残されている』
という実感を切実に感じられてしまうのもまた事実。
それがわかっているがためか。
アンケートには細かい設定までが質問されていたりする。
また、任意の時間帯にしろ。
アンケートを書いてもらう、というか記入してもらうのはとあるクリップボード。
ここに書かれている、というか書かれた言葉は。
別のクリップボードにと集計され、その結果が表示されている。
今、一番ダントツで多いのは……やはり……
雪が降るのを見てみたい。
子供に雪を見せてあげたい。
というものや。
後は中には夜空に浮かぶオーロラを子供にと見せてあげたい。というものまで。
まあ、お遊び感覚で参加してくれてさるけど。
まさかこれ、陛下が直接目にするとはおもってないんでやろなぁ。
そんなことを思いつつも。
「はいはい。気軽に参加してやってやぁ。一人一票な!」
その才能をいかし。
人々にとアンケートをとってゆくチャールズの姿が、公園の一角にて見受けられてゆく。
「面白そうな企画よね。」
「そうだけど、こんなアンケートとって、どうする気なのかしら?チャーリーさん?」
「さあ?ウォン財閥に関係してるんじゃない?」
アンケートにと参加して。
それぞれに動物のクリスタルの置物を手にいれ。
すでに今日の育成もおわったことであるので。
それぞれにと寮にと戻っている二人の女王候補たち。
「もしかして、陛下の思いつきだったりして。」
「まっさか。」
にこやかに言い放つコレットの言葉を、あっさりと却下しているレイチェル。
だがしかし。
実はコレットの言葉が事実であると。
今の彼女たちは当然知るはずもなく。
そのまま。
参加記念にもらった置物をもちそれぞれの部屋にと戻ってゆく。
「これでいいんでしゃろか?」
「ありがとう。チャーリー。」
三日分のアンケート。
ほぼ、人数的にはこの聖地に住まうすべての人たちの意見。
それらが反映されているはずの人数がそろっている。
すでに時刻は夜も遅く。
周りには人の気配などあるはずもなく。
ほのかの光る噴水の前。
まとめたアンケート結果をチャールズより手渡しでもらっているリモージュの姿。
そんな二人の姿を、ただただ星々は見守ってゆく……
「陛下?当然のお呼び出し、いったい?」
もしや、新宇宙に何かが?
怪訝に思いつつも。
いきなり守護聖全員と関係者。
全員が呼び出されたがゆえに。
何かあったのでは?と不安の色を隠せえない。
「ふふ。そんなに硬くならないで。実はね。
せっかくの女王試験中だから。ちょっとしたイベントを催そうとおもうのよ。」
うふっv
にっこりと微笑むリモージュの言葉に。
「陛下?それはいったい?」
首をかしげて問いかけるジュリアス。
「実は、この前チャールズにお願いして聖地に住まう人々の意見をアンケートしてもらった結果ね。
この聖地に雪を降らすことを決定しましたv」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・
『………は(へ)?』
そんなリモージュの言葉に思わず目を点にとする人々。
「ということで、明日から冬ねv」
「「はいぃぃぃぃぃぃい!?」」
「「えええええええええええ!?」」
謁見室に。
何ともいえない声が響き渡り。
くすっ。
「突発的な突拍子もないことを決める女王陛下か。ほんと、すごく最高だね。」
思わずくすくすと笑っているセイランの姿に。
「………ま、まあ陛下のことだから。 何か考えがあるのであろうが…」
そんなことをつぶやいているヴィクトール。
「……まさか本気で実行されるとは…本当に女王陛下には驚かされっぱなしですがな。」
爆弾発言、ともいえるそんなリモージュの言葉に。
そんなことをつぶやいているチャールズことチャーリー。
「陛下。それは急なのでは……」
そんなリモージュの言葉に戸惑いつつ問いかけるロザリアの声に。
「あらvこういうのは早いほうがいいのよ。エルンスト。
研究院で発行している聖地の天気の案内。明日の朝刊にその旨をのせといてね。」
にこにこにこ。
にこやかに一方てきに言い切られるそんな女王リモージュの言葉に。
しばし、謁見室はざわめきに包まれてゆく。
次の日の朝早く。
日が昇る前より。
聖地に初めての雪が降り注ぎ始めたのは…
それは、人々にとっては驚くべき事実。
「……陛下って、思ったことすぐに実行されるのね。すごいな~。」
「………確かにすごいけど。さすが、短期間で宇宙を安定させただけの力の持ち主だよね。」
さすがというか何というか。
だけども。
その行動力には驚かされる。
「私たちもあんな行動力ある女王になれるかな?」
「あんたは無理かもね。とろいし。」
「あ~。ひっどぉい!レイチェル!」
しんしんと、聖地の空より白い物体が降り注ぐ。
人々は驚き。
そしてまた、初めてみる雪などに子供たちは歓喜の声をあげ。
降り積もる雪のなか。
二人の女王候補は。
今日の育成のためにと聖地の道を進んでゆく。
聖地はなにはともあれ今日も平和である……
-終わり♪ー
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あとがきもどき:
薫:さてさて。これよりしばらくの間。聖地に雪景色が見受けられたり(笑
ジュリアス様の格好は、例のはい。とある漫画でてきたあの格好。
あれに近くなったら面白いかも(だからまて)
リモージュちゃん、四季の設定もこの雪で味をしめ。
二ヶ月の間、四季を再現というか実現したりしてたりします(笑
大体、半月がひとつの四季。つまり。春、夏。秋。冬。それらに区切られます。あしからず。
(意見があったら雪の中の聖地の様子も打ち込みしよう。うん)
何はともあれ、んではまた次回にて。
2004年7月11日某日