またまたらんさんから頂きました(はあと)
  エル様、漫遊です(はあと)




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~霧にひそむ殺人者~


 


1888年―――イギリス・ロンドン

ヴィクトリア女王即位50周年を向かえ
世界的に有名になる『シャーロック・ホームズ』を誕生させた翌年
後の世に最悪の殺人者と言われる『切り裂きジャック』が現れた・・・・・・・・



「殺人(マーダー)だ!殺人(マーダー)だ!また『切り裂きジャック』が現れた!!」
新聞を売っているのは、まだ幼い少年で行き交う人に新聞を売りつけている。
辻馬車があわたらしく町の中を駆け巡り、人手が多く盛んに活気のある町だ。


「ずいぶんと、変わったわよね。Dの世界も♪」
日傘をさし花をモチーフにした帽子。衣擦れの音を立てて街にいる一人の女性。
見事なまでの綺麗な金髪に蒼い瞳。
端正な整いすぎた顔立ちは、辺りの人達を圧巻させる。
先ほどからあまりにも優雅な仕草や顔立ちに人々が目を奪われている。
その後ろには、一人の男性が多くの荷物を抱え控えている。



「次は、ホワイトリー百貨店に行くわよ♪」
「え・・・・エル様~~~~~~~~!!!!まだお買い物なさるのですか!!」
「あら♪文句あるの?S?」
「・・・・・・・ないです。」
彼はむなしくただ、涙を流してついていく。


「疲れたからあそこので休みましょうか。もちろん勘定よろしくね♪S♪」
「しくしく・・・・」
Sと呼ばれた彼は、むなしく涙を流すのみ。
上司に逆らうことが、出来ない彼はただ従うしか方法はないのである。
逆らったら最後、とんでもないことになることをわかっているため・・・・・・


からん・・・からん・・・・


店に客が来たことを告げる、ベルがなる。
エルが入ったお店は、かなりの高級なお店である。
「よ!綺麗なねーちゃん。何か飲むかい?後ろのは、あんたの彼かい?」
「違うわよ♪部下よ。これは♪」
「こ・・・これ・・・・・」
「偉く顔立ちがいいなぁあんた・・・」
「当然よ。」
エルは絡まってくる男性の手を跳ね除け、席に付く。
「あたしは占いが出来るんだけど・・・占ってほしい人居るかしら?」
エルの手には、タロットカードらしきものが握られている。
「へぇ!じゃあ、無くした指輪がどこにあるのか教えてくれない?彼から貰ったものだからどうしても見つけたいのよねvvvv」
そう言って来たのは、派手派手な衣装を身に纏った女性である。
エルは静かにカードをおもむろに一枚引く。
「・・・貴方が持っているカバンの小さなポケットの中ね。」
「たったそれだけでわかるの?」
「勿論よ♪」
占われた女性は、自分が持っているカバンの中を探り出すが、その顔に驚愕の色が表れる。
「嘘!本当にあったわ!!」
そのセリフでエルに更に人が集まってくる。
「・・・じゃあ、私の恋人が戻ってくる?私のところに・・・」
「ふうん。あんたの彼氏って、複数の恋人が居るのね。そして、身分違い。
  ここから西のほうに住んでいて・・・そうね・・・明日辺り貴方の所に戻ってくるわ。
  この恋を実らせるのも、なくすのも貴方次第ね。」
「本当に!」
「それじゃあ、今度は切り裂きジャックについて占ってみてよ!!」
「悪趣味~~マレン。」
エルは笑みを深めてカードを引く。
「ロンドンの闇が生んだ、殺人鬼。」
「・・・・・異端者かい?」
「違うわよ。」
「それじゃあ・・・・スラムの連中か?」
「違うわよ。」
「それじゃあ・・・・貴族・・・・?」
「さぁ?」
「・・ま・・まさか・・・・」

かん!

エルが座っているテーブルにお酒が置かれる。
置いたのは、若くて金髪の女性。年齢はまだ20代前後といった感じである。
「私のことも占ってくれない?」
彼女はエルの目の前の席に座る。
エルはカードを一枚一枚並べていき、伏せていた一枚のカードを開く。
「・・・以前、パリに居たことがあったようね。」
エルのセリフで辺りがざわめく。目の前の女性も驚きを隠せない。
そんなことはお構いなしに、再び一枚を開く。
「そして、そのとき関係を持った男性を亡くしている。」
「なっ!」
「それと、貴方お酒は飲まないほうがいいわよ。妊娠しているから。ご感想は?」
エルは意地悪そうな笑みを深め、彼女の出方を待っている。
「完敗だわ。妊娠しているのかは、知らないけど。」
「そう。って!部下S!あんた、あたしの荷物を落とすんじゃないわよ!!」
エルはそういうなり、Sに向かってコップを投げつける。


ばしゃん!
がっしゃん!!

派手な音を立てて、割れるコップ。


「この程度のものをよけきれないなんて・・・あんたって相当鈍いのね。」
「エエエエ・・・・ルル様ぁぁぁああぁぁぁあぁぁぁぁあああぁぁぁ!!!今・・今・・・コップに混沌のちか・・・・ぶっ!!!」


ばきっ!!


「あの・・・・いいのですか?この人・・・・・・・・・・・・・・」
「いいのよ♪気にしない。こいつは死なないから♪それに下手に死んだらお仕置き♪」
「は?」
「いいのvこっちの話なんだから♪それと、体大事にね。エレナ?」
「ええ!私の名前をどうして・・・!!」
エルは笑みを深め、店から出て行く。
それに続いていくのが、先ほどからエルに足を踏まれたり勘定を払わせたりしていたSである。
「ううう・・・エル様―――――!!何もそんなに飲まなくてもいいじゃないですか!?」


どごぉぉおおおぉぉおおおんん!!!!


振動と共に倒れ付すS。
周りの人達は、Sに哀れみの視線を送っていた。
エルに肩まで髪を伸ばしている、銀髪の男性が近づく。
「ところで、先ほどの続きは・・・?レディー?」
「そうね・・・殺人鬼は貴方のすぐ傍にいるかもしれないわね・・・失礼。」
エル様は上機嫌で、店から出て行く。
エルを占った女性は、暫しエルが去っていったドアを見つめていた。
「妊娠・・・・?」
この呟きは、ひっそりと店に溶け込んだ。



「エ・・・エル様―――――!!一体どれだけ買うんですか―――――!!」
だくだくと涙を流しつつ、更にかさばった荷物を持ち歩いている。
全く前が見えない状態で、よたよたとふら付きながら、荷物を持ち歩いている。
「言っておくけど!S!!あんた、それ落としたら・・・お仕置きだからね・・・・」
「そ・・・そんな―――――!!」
「勿論!異空間に置くのも却下!」
「しくしく・・・」
彼は涙を流しつつ、エルの後を付いていく。
「今度は・・ちぃ!全く彼女に手を出すなんていい度胸しているじゃない・・・」
エルはそう言うと姿がすっと消える。
そこには、しくしくと涙を流しながら突っ立っていた。
荷物を落とさないように気をつけながら・・・・



ロンドンの夜の街
霧が立ち込めり、活気のあった街が一転して変わる。
ぼんやりと薄くらい街灯の明かりが、ロンドンの闇をひっそりと潜ませる。


「離して!離してってば!!」
エレナである。彼女は腕を柄の悪い男性に捕まえられている。
「エレナ!!」
エルがエレナのもとに駆け寄る。
酔っ払いは、舌打ちをしてこの場から去っていくが、エレナは荒い息をつく。
「大丈夫?」
「ええ・・・エル。ありがとう。」


エレナは急におなかを抱え込み、倒れこむ。
勿論エルが倒れる寸前に、支えているのだが・・・・
「参ったわね。エレナ・・・相当気にしているみたい・・・・S、エレナを抱きかかえなさい。
   勿論リナの子供を落とすような真似をしたらどうなるかわかっているわよね?」
「うううう・・しくしく・・・エレナ様を絶対に落としたりはしません・・・・」
泣く泣く、彼はエレナを抱きかかえる。



「エレナ大丈夫?」
エルは、ベットに横になったエレナに飲み物を手渡す。
「何?これ・・・」
「薬草よ。飲めば楽になるから。」
エレナは手渡された飲み物を口に運ぶ。
「貴方って不思議な人・・・・一体何者なの・・・?」
「くすっ。ずっと貴方が誕生してから見守っていたのよ。あたし♪」
「それはありがたいわね。」
エレナは顔を緩ませて微笑む。
「貴方の占い当たっていたの。私、3年前からパリにいたの。
  そこで出会った人がいて・・・・その人は若い医者の男性で・・・私はその人に惹かれていたの・・・・・・」
「それで?」
「でも、貴方の言ったとおり亡くなったわ。私を庇って・・・・馬車に引かれたの・・・」
彼女は目を閉じる。そこからあふれてくるのは、涙。止まらない・・涙。
「彼が死んだのは、私のせい・・・だからパリにいたくなくて・・・ロンドンに来たの・・・・仕事をやりながら・・・・
  でも、ちゃんと言っておくんだった・・・大好きだったって・・・・」
「もう、寝なさい。大丈夫。」
「・・・赤ちゃんどうしよう・・・」
「それも大丈夫よ♪あたしがいるから♪」
「・・・ありがとう・・・・」
エルはエレナが寝付くまで傍にいた。

「殺人(マーダー)だ!殺人(マーダー)だ!また『切り裂きジャック』が現れた!!


今度は、一晩に二人の娼婦が殺された!!」
「新聞をくれ!」
「おい!押すな!!」
新聞売りの威勢のいい下町なまり。


「御者!急いで出してくれ!料金の3倍出す!!」
仕事場に出かける紳士方。


活気にあふれかえった街の風景が目に入ってくる。

 「さて、今日も買い物が終ったらエレナのところに行きましょうか。あ、S?荷物持ちちゃんとするのよ?」
「はい・・・しくしく・・・」
「鬱陶しいわよ!!」

ばこん!

エルは持っていた、新聞でSを殴る。
それによってまたまた倒れ付すS。
「エル!」
「エレナ!!」
「エレナ体調は、大丈夫なの?」
「ええ。エルから貰った薬のおかげで楽になったの。ありがとう。」
「ならよかったわ。・・・・ちぃ。余計なことを・・・」
エルの顔が一瞬真剣な顔になるが・・・・
「え?」
「あ、こっちのこと。それよりも早くロンドンから出なさい。」
「どうして・・?」
「危ないからよ。」
「そうか・・・でも、エルを信じる。今すぐ荷造りするわ・・・」
「そうしなさい。」


二人の様子を見ていたものがいた。
明らかに、そのものの視線はエレナを見つめていた。
「見つけた・・・あの女が!弟を!!」
その人物は、ぎゅっと手にあるものを握り締める。
果物ナイフぐらいの血が付着した代物を・・・・・・・・



エレナが夜の街を歩く。
辺りにはこつこつと自分自身が歩いている音が鳴り響く。
エレナの前に一人の男性が、現れる。
以前エルに切り裂きジャックについて聞いた男性である。
優雅に笑顔を浮かべ、かぶっていた帽子を軽く取り挨拶をする。
「こんばんは。お嬢さん・・・お送りしましょうか?この辺は物騒ですよ。」
「ご親切にどうも・・・」
エレナは何も疑いもなく彼の接近を許す。
「随分とお急ぎのようですが・・・?」
「ええ。私今日でロンドンを離れる予定なんです。」
「そうなんですか・・・・しかし、貴方には・・・・」
エレナは息を呑む。
何しろ目の前の男性が掲げたのは、血のへばり付いた小型のナイフ。
それがエレナに向かって降ろされるが・・・・
「いい度胸しているじゃない。エレナに手を出すなんて・・・・」
Sが男性の手首を掴み、それをねじってナイフを落とさせる。
「貴様は・・占い師か・・・」
「お久しぶりね。ジョン。それとも切り裂きジャックと呼んだほうが的確かしら・・・?」
「・・・・・貴様には、関係ない。その女は俺の弟をたぶらかして殺したんだ!」
「ふぅん。たぶらかすね。殺したね・・・それで、エレナを探すために切り裂きを続けていたわけ?」
「多少の犠牲はつき物だ。こうして目的の女が見つかったんだからな。」
「エレナが殺した?ふざけんじゃないわよ。あんたの弟の死は、エレナのせいじゃないわ。不幸な事故のせいよ。」
「黙れ!」
「そして、あんたは殺人を楽しんでる・・・ただの殺人鬼。復習と言う名を単に掲げているだけのね・・・・・・・」
「黙れ!!」
「エル!!いやぁぁぁああぁぁぁ!!」


どん!

「うが!」

このセリフが気に入らなかったのか、エルに向かってナイフを振り落とすが
反対に男性が向こう側の壁に吹き飛ばされ、軽くうめき声を出す。
「あたしにナイフをつき刺そうとするなんて、いい根性しているじゃない。」
エルはゆっくりと靴の音をわざとあたりに鳴らし、男性の下へと歩み寄る。
「ひぃ!」
「・・・・あなた自身が持っている闇にそのまま焼き尽くされるといいわ。」
エルはぐいっと男性の顔を持ちあげる。


ザシュ!
ザシュ!!

彼の感覚では今自分自身によってその身が切り裂かれたような感じである。
「や・・やめろ!!やめ・・・!!」


バシュ!!
彼の身体が二つに引き裂かれる。
そう真っ二つに。
現実ではそうではないが・・・
「ああああああ!ひ・・ひひひ・・あははははははは!!!!」



エルはその様子を認めた後、エレナに近づく。
「エル?貴方は一体・・・・?」
エルはエレナの様子に苦笑しつつ頭を撫でる。
「いずれ、わかるわ。それと・・・・ベリックも生きているわよ。」
「え?」
「本当よ。それじゃあ、また逢いましょうね♪エレナ。」
「うん・・・ありがとう・・・・」



その後、エレナは生きているベリックと再会し
時々遊びに来るエルを迎えつつ楽しい人生を送った。
一方、ジョンは身元不明の精神異常患者として終生監禁され・・・


・・・・・そして、後々歴史上最悪を呼ばれた切り裂きジャックの正体は
謎のままにされるのであった。



                           -終わり♪ー

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管理人よりのあとがき:
エレナ、リナとガウリイの子供だそーです♡
ふふふふ♪やっぱり、力・・・もってるんですかねぇ?
らんさん、素敵な作品、ありがとうなのです♡
ではでは♪
あ・・アップしたの連絡しなきゃ!!(まて!!事後連絡かい!!!)